説明

暖房システム及び給湯システム

【課題】加熱機構内で加熱された温水を暖房端末に供給する供給流路内の所定位置における温水の温度を、外気温度等の運転状況によらず、正確かつ安定した状態で維持可能な暖房システム及び給湯システムを提供する。
【解決手段】暖房システムは、温水を貯える貯湯タンクと、貯湯タンクから低温側配管を介して供給された温水を加熱部において加熱すると共に、加熱部で加熱された温水を高温側配管を介して貯湯タンク内に戻す加熱機構と、補正量を記憶する補正量記憶手段73と、補正量記憶手段73に記憶された補正量を更新する補正量更新手段72と、貯湯タンク内に貯える温水の貯湯温度を記憶する要求温度記憶手段81と、補正量記憶手段73に記憶された補正量と要求温度記憶手段81に記憶された貯湯温度とに基づいて、加熱機構101における目標出湯温度を決定する目標温度決定手段74と、目標温度決定手段74により決定された目標出湯温度に基づいて加熱機構101を制御する制御手段75とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱機構内で所定の温度に加熱された温水を暖房端末に供給する暖房システム及び給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯配管を介して出湯栓に接続された給湯装置において、装置本体の出湯側に出湯温度センサを取り付けると共に、出湯栓における末端出湯温度を実際に検出する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。このような技術は、装置出湯温度と末端出湯温度の温度差を演算し、演算した温度差を給湯配管での温度降下として装置出湯温度を補正することによって、給湯配管での放熱による影響を補償することを目的とするものである。
【特許文献1】特開平7−180904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、給湯配管における放熱量は、外気温度等の給湯装置の運転状況によって異なる。したがって、上述した従来技術では、このような運転状況に応じて装置出湯温度の補正量を変更できない。このため、出湯栓で所望される温度の湯を正確かつ安定して出湯栓に供給することが困難であるという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、加熱機構内で加熱された温水を暖房端末に供給する供給流路内の所定位置における温水の温度を、外気温度等の運転状況によらず、正確かつ安定した状態で維持可能な暖房システム及び給湯システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明に係る暖房システムは、加熱機構と、加熱機構内で加熱された温水を暖房端末に供給すると共に、暖房端末から排出された温水を加熱機構内に戻す暖房回路と、補正量を記憶する補正量記憶手段と、補正量記憶手段に記憶された補正量を更新する補正量更新手段と、加熱機構内で加熱された温水を暖房端末に供給する供給流路内の温水についての要求温度を記憶する要求温度記憶手段と、補正量記憶手段に記憶された補正量と、要求温度記憶手段に記憶された要求温度とに基づいて、加熱機構における目標出湯温度を決定する目標温度決定手段と、目標温度決定手段により決定された目標出湯温度に基づいて加熱機構を制御する制御手段とを備える。
【0006】
なお、本発明における「補正量の更新」には、「補正量を変更する場合」の他に、「補正量を変更せず前回の補正量をそのまま維持する場合」が含まれる。また、「加熱機構内で加熱された温水を暖房端末に供給する供給流路内の温水についての要求温度」は、供給流路内の所定の位置において要求される温水の温度を示している。
【0007】
この暖房システムでは、加熱機構内で加熱された温水を暖房端末に供給する供給流路内の温水についての要求温度を記憶すると共に、この要求温度と、補正量記憶手段に記憶された補正量とに基づいて、加熱機構における目標出湯温度を決定できるので、供給流路内の所定位置における温水の温度を、外気温度等の運転状況によらず、正確かつ安定した状態で維持することができる。
【0008】
第2の発明に係る暖房システムは、第1の発明に係る暖房システムにおいて、供給流路に配置され、加熱機構から排出された温水の温度を検出する第1温度センサと、供給流路において第1温度センサより暖房端末に近い位置に配置された第2温度センサとを備え、補正量更新手段は、第1温度センサにより検知された温度と、第2温度センサにより検知された温度とに基づいて、補正量を更新する。
【0009】
この暖房システムでは、第1温度センサ及び第2温度センサの各出力に応じて、補正量更新手段による補正量の更新を容易に実現できる。例えば、補正量の更新を、第1温度センサ及び第2温度センサの各出力の差分を求めるだけの簡単な演算で実現できる。したがって、補正量の更新に要する処理時間を容易に短縮でき、更新処理の高速化を実現できる。
【0010】
第3の発明に係る暖房システムは、第1または第2の発明に係る暖房システムにおいて、加熱機構内で加熱された温水を貯える貯湯タンクと、貯湯タンクと暖房端末との間で温水を循環させる循環回路とを備え、加熱機構は、貯湯タンクから低温側配管を介して供給された温水を加熱部において加熱すると共に、加熱部で加熱された温水を高温側配管を介して貯湯タンク内に戻し、要求温度記憶手段は、要求温度として、貯湯タンク内に貯える温水の貯湯温度を記憶する。
【0011】
この暖房システムでは、貯湯タンク内に貯える温水の貯湯温度を要求温度として記憶すると共に、この貯湯温度と、補正量記憶手段に記憶された補正量とに基づいて、加熱機構における目標出湯温度を決定できるので、貯湯タンク内に貯える温水の貯湯温度を、外気温度等の運転状況によらず、正確かつ安定した状態で維持することができる。
【0012】
第4の発明に係る暖房システムは、第3の発明に係る暖房システムにおいて、第1温度センサは、高温側配管において貯湯タンクより加熱部に近い位置に設けられ、第2温度センサは、高温側配管において第1温度センサと貯湯タンクとの間、あるいは、高温側配管と貯湯タンクとを接続する接続部の近傍に設けられている。
【0013】
この暖房システムでは、第1温度センサ及び第2温度センサの各出力に応じて、補正量更新手段による補正量の更新を容易に実現できる。例えば、補正量の更新を、第1温度センサ及び第2温度センサの各出力の差分を求めるだけの簡単な演算で実現できる。したがって、補正量の更新に要する処理時間を容易に短縮でき、更新処理の高速化を実現できる。
【0014】
第5の発明に係る暖房システムは、第1〜第4の発明のいずれかに係る暖房システムにおいて、加熱機構は、ヒートポンプシステムである。
【0015】
この暖房システムでは、加熱機構をヒートポンプシステムとして容易に構成できる。
【0016】
第6の発明に係る暖房システムは、第1〜第5の発明のいずれかに係る暖房システムにおいて、補正量更新手段は、補正量記憶手段に記憶された補正量を第1所定時間毎に更新する。
【0017】
この暖房システムでは、補正量更新手段による補正量の更新を、第1所定時間毎に行うことにより、目標出湯温度の決定を高い頻度で実現することができる。したがって、供給流路内の所定位置における温水の温度を、外気温度等の運転状況によらず、より正確に、かつ、安定した状態で維持することができる。
【0018】
第7の発明に係る暖房システムは、第1〜第6の発明のいずれかに係る暖房システムにおいて、補正量更新手段は、加熱機構の運転開始から第2所定時間経過後に更新を開始する。
【0019】
この暖房システムでは、加熱機構の運転開始から第2所定時間が経過後に、すなわち、加熱機構から暖房端末または貯湯タンクに供給される温水温度のバラツキを抑制することによって、加熱機構内で加熱された温水を暖房端末に供給する供給流路内の所定の位置における温水の温度が安定したときに、補正量更新手段による補正量の更新を実現できる。したがって、補正量の更新を高精度に実現でき、目標出湯温度の決定を高精度に実現できる。
【0020】
第8の発明に係る暖房システムは、第2〜第7の発明のいずれかに係る暖房システムにおいて、第1温度センサにより検知された温度と、目標温度決定手段により決定された目標出湯温度との温度差を算出する温度差算出手段を備え、補正量更新手段は、温度差算出手段により算出された温度差が所定温度未満であるときに補正量を更新する。
【0021】
この暖房システムでは、温度差演算手段により演算された温度差が所定温度未満であるときに、つまり、第1温度センサで検知された温度と、目標出湯温度との温度差のバラツキを抑制することによって、加熱機構内で加熱された温水を暖房端末に供給する供給流路内の所定の位置における温水の温度が安定したときに、補正量更新手段による補正量の更新を実現できる。したがって、補正量の更新を高精度に実現できる。
【0022】
第9の発明に係る給湯システムは、第3〜第8の発明のいずれかに係る暖房システムと、貯湯タンク内に配置され、給湯水が内部を流れる熱交換器とを備える。
【0023】
この給湯システムでは、第3〜第8の発明に係る暖房システムと同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0025】
第1の発明では、加熱機構内で加熱された温水を暖房端末に供給する供給流路内の温水についての要求温度を記憶すると共に、この要求温度と、補正量記憶手段に記憶された補正量とに基づいて、加熱機構における目標出湯温度を決定できるので、供給流路内の所定位置における温水の温度を、外気温度等の運転状況によらず、正確かつ安定した状態で維持することができる。
【0026】
また、第2の発明では、第1温度センサ及び第2温度センサの各出力に応じて、補正量更新手段による補正量の更新を容易に実現できる。例えば、補正量の更新を、第1温度センサ及び第2温度センサの各出力の差分を求めるだけの簡単な演算で実現できる。したがって、補正量の更新に要する処理時間を容易に短縮でき、更新処理の高速化を実現できる。
【0027】
また、第3の発明では、貯湯タンク内に貯える温水の貯湯温度を要求温度として記憶すると共に、この貯湯温度と、補正量記憶手段に記憶された補正量とに基づいて、加熱機構における目標出湯温度を決定できるので、貯湯タンク内に貯える温水の貯湯温度を、外気温度等の運転状況によらず、正確かつ安定した状態で維持することができる。
【0028】
また、第4の発明では、第1温度センサ及び第2温度センサの各出力に応じて、補正量更新手段による補正量の更新を容易に実現できる。例えば、補正量の更新を、第1温度センサ及び第2温度センサの各出力の差分を求めるだけの簡単な演算で実現できる。したがって、補正量の更新に要する処理時間を容易に短縮でき、更新処理の高速化を実現できる。
【0029】
また、第5の発明では、加熱機構をヒートポンプシステムとして容易に構成できる。
【0030】
また、第6の発明では、補正量更新手段による補正量の更新を、第1所定時間毎に行うことにより、目標出湯温度の決定を高い頻度で実現することができる。したがって、供給流路内の所定位置における温水の温度を、外気温度等の運転状況によらず、より正確に、かつ、安定した状態で維持することができる。
【0031】
また、第7の発明では、加熱機構の運転開始から第2所定時間が経過後に、すなわち、加熱機構から暖房端末または貯湯タンクに供給される温水温度のバラツキを抑制することによって、加熱機構内で加熱された温水を暖房端末に供給する供給流路内の所定の位置における温水の温度が安定したときに、補正量更新手段による補正量の更新を実現できる。したがって、補正量の更新を高精度に実現でき、目標出湯温度の決定を高精度に実現できる。
【0032】
また、第8の発明では、温度差演算手段により演算された温度差が所定温度未満であるときに、つまり、第1温度センサで検知された温度と、目標出湯温度との温度差のバラツキを抑制することによって、加熱機構内で加熱された温水を暖房端末に供給する供給流路内の所定の位置における温水の温度が安定したときに、補正量更新手段による補正量の更新を実現できる。したがって、補正量の更新を高精度に実現できる。
【0033】
また、第9の発明では、第3〜第8の発明と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の暖房システム及び給湯システムを図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0035】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の暖房給湯システムの構成を示す模式図である。
【0036】
暖房給湯システム100は、ヒートポンプユニット101(加熱機構)及び室内ユニット102(暖房回路)を有している。ヒートポンプユニット101は、CO冷媒が循環する冷媒回路16、電動送風機17、外気温度センサ18及び出湯温度センサ19(第1温度センサ)、室内ユニット102との間で温水を循環させるための往き配管20(高温側配管)及び戻り配管21(低温側配管)を有している。本実施形態では、暖房回路は、貯湯タンク2と、往き配管20及び戻り配管21と、従来の暖房用循環回路4等を含んでいる。
【0037】
往き配管20には、凝縮器13と貯湯タンク2との間を接続する全ての配管であって、かつ、凝縮器13から貯湯タンク2に向かう方向に温水を流す配管が含まれる。さらに、戻り配管21には、貯湯タンク2と凝縮器13との間を接続する全ての配管であって、かつ、貯湯タンク2から凝縮器13に向かう方向に温水を流す配管が含まれる。
【0038】
冷媒回路16は、蒸発器11、圧縮機12、凝縮器13(加熱部)及び膨張弁15を有している。CO冷媒は、蒸発器11において、電動送風機17から送られた空気中の熱を吸収してガス化する。そして、CO冷媒は、圧縮機12で圧縮されて高温となった後、凝縮器13に到達して熱を放出する。これにより、CO冷媒は、凝縮器13に入る前に比べて低温となって膨張弁15を経て蒸発器11に戻る。
【0039】
外気温度センサ18は、外気温度を検知するために設けられる。外気温度センサ18の出力は、有線又は無線を介して後述する制御部60に入力される。出湯温度センサ19は、往き配管20において貯湯タンク2より冷媒回路16に近い位置に設けられ、ヒートポンプユニット101の出湯温度を検知する。そして、出湯温度センサ19の出力は、有線又は無線を介して後述する制御部60に入力される。
【0040】
室内ユニット102は、ヒートポンプユニット101で加熱された温水を貯える貯湯タンク2、給湯用熱交換器3(熱交換器)、暖房用循環回路4(循環回路)、沸き上げ用循環回路5、複数の暖房端末8、貯湯タンク2の側面に配置された制御部60、制御部60と有線又は無線で接続されたリモコン61及び入湯温度センサ62(第2温度センサ)を有している。
【0041】
貯湯タンク2は、上下方向の略中央部に配置されたヒータ6を有している。このヒータ6は、貯湯タンク2内の温水を直接加熱するために設けられる。貯湯タンク2内の温水は、上側に高温の温水、下側に比較的低温の温水が位置するように湯層が形成されている。
【0042】
給湯用熱交換器3は熱交換器の一例であり、コイル状のパイプから成って、貯湯タンク2内の下部領域から上部領域に渡ってヒータ6を跨ぐように配置されている。給湯水は給湯用熱交換器3内を流れることによって加熱される。より詳しくは、上記給湯水は、貯湯タンク2の下部から貯湯タンク2内に入って、貯湯タンク2内の下部領域に配置された給湯用熱交換器3を上方に向かって流れる。そして、上記給湯水は、貯湯タンク2内の上部領域に配置された給湯用熱交換器3を上方に向かって流れた後、貯湯タンク2の上部から貯湯タンク2外に出る。
【0043】
また、給湯水の温度を設定温度に調整するために、給湯用混合弁31を開いて、貯湯タンク2から出た給湯水と、貯湯タンク2に流入する前の給湯水とを混ぜ合わせる。これにより、上記貯湯タンク2から出た給湯水の温度を下げることができる。
【0044】
暖房用循環回路4は循環回路の一例であり、貯湯タンク2内に貯められた温水を貯湯タンク2外の複数の暖房端末8を経由させた後、再び、貯湯タンク2内に戻して循環させるためのものである。そして、暖房用循環回路4は、第1暖房往き接続口41、第2暖房往き接続口42(接続部)及び暖房戻り接続口43に接続されている。
【0045】
第1暖房往き接続口41は、貯湯タンク2内の温水を取り出すためのものである。この第1暖房往き接続口41は、貯湯タンク2の上下方向の略中央部に設けられて、ヒータ6近傍かつ上方に位置している。これにより、ヒータ6で加熱された直後の温水を、第1暖房往き接続口41から取り出し、複数の暖房端末8に送ることができる。
【0046】
第2暖房往き接続口42も、第1暖房往き接続口41と同様に、貯湯タンク2内の温水を取り出すためのものである。この第2暖房往き接続口42は貯湯タンク2の上部に設けられている。これにより、貯湯タンク2内の上部領域の温水を、第2暖房往き接続口42から取り出し、複数の暖房端末8へ送ることができる。また、第2暖房往き接続口42は沸き上げ戻り接続口を兼用している。
【0047】
また、暖房用循環回路4には、バイパス配管44、暖房用混合弁45、往き温度センサ46、戻り温度センサ47、暖房用循環ポンプ48及び暖房用三方弁49が設けられている。
【0048】
バイパス配管44は、暖房端末8から暖房戻り接続口43へ流れる温水の一部を暖房用混合弁45へ案内する。暖房用混合弁45は、貯湯タンク2からの温水が流入する入口と、バイパス配管44からの温水が流入する入口とを有している。暖房用混合弁45の各入口の開度は制御部60によって調節される。
【0049】
往き温度センサ46は、貯湯タンク2から暖房端末8へ向かう温水の温度を往き温度として検出し、この往き温度を示す情報を制御部60に送る。戻り温度センサ47は、暖房端末8から貯湯タンク2へ向かう温水の温度を戻り温度として検出し、この戻り温度を示す情報を制御部60に送る。
【0050】
暖房用循環ポンプ48は、第2暖房往き接続口42または第1暖房往き接続口41を介して貯湯タンク2内の温水を吸い込み、複数の暖房端末8に向けて吐出する。暖房用三方弁49は、貯湯タンク2内の温水の高温領域が第1暖房往き接続口41近傍に存在している場合、第1暖房往き接続口41から温水を取り出す。
【0051】
沸き上げ用循環回路5は、沸き上げ用循環ポンプ51及び沸き上げ用三方弁52を有している。そして、沸き上げ用循環回路5は、第2暖房往き接続口42と、沸き上げ用の供給口53と、凍結防止水戻し接続口54(接続部)とに接続されている。
【0052】
供給口53は貯湯タンク2の下部に設けられている。これにより、貯湯タンク2内の下部領域にある比較的低温の温水を、供給口53を介して沸き上げ用循環ポンプ51に供給することができる。沸き上げ用循環ポンプ51は、貯湯タンク2内の下部領域にある比較的低温の温水を吸い込み、この吸い込んだ比較的低温の温水を凝縮器13へ向けて吐出する。凝縮器13ではCO冷媒と温水とが熱交換されて、その温水が高温になる。この凝縮器13を出た高温の温水は沸き上げ用三方弁52へ向かう。
【0053】
沸き上げ用三方弁52は、給湯運転中及び暖房運転中、凝縮器13からの高温の温水を、第2暖房往き接続口42を介して貯湯タンク2内の上部領域に流す。したがって、第2暖房往き接続口42は、貯湯タンク2の供給口53から流出してヒートポンプユニット101の凝縮器13を出た後の温水が戻る接続口となっている。
【0054】
沸き上げ用三方弁52は、凍結防止運転中には、供給口53から沸き上げ用循環回路5を介して流れてきた温水を、凍結防止水戻し接続口54を介して貯湯タンク2内の下部領域に流す。なお、凍結防止運転は沸き上げ運転の停止中に行われる。
【0055】
暖房端末8は、貯湯タンク2から流れてきた温水の熱を直接取り出し、室内に放出する。そして、温水は、低温となり、暖房端末8を出て、暖房戻り接続口43へ向かって流れる。暖房戻り接続口43は貯湯タンク2の下部に設けられている。これにより、暖房戻り接続口43から出た温水を、貯湯タンク2内の下部領域の温水と混ぜることができる。
【0056】
リモコン61は、制御部60と有線又は無線で通信可能に接続される。このリモコン61は、ヒートポンプユニット101の運転開始指示や運転停止指示を受付可能であると共に、貯湯タンク2で要求される貯湯タンク要求温度を設定可能であり、その出力は有線又は無線を介して制御部60に入力される。入湯温度センサ62は、往き配管20において出湯温度センサ19と貯湯タンク2との間に設けられ、室内ユニット102への入湯温度を検知する。そして、入湯温度センサ62の出力は、有線又は無線を介して制御部60に入力される。
【0057】
<制御部の構成>
図2は、制御部60の構成を示すブロック図である。制御部60は、出湯温度検知部70と、入湯温度検知部71と、補正量更新部72(補正量更新手段)と、補正量記憶部73(補正量記憶手段)と、目標温度決定部74(目標温度決定手段)と、ヒートポンプ制御部75(制御手段)と、温度差演算部76(温度差演算手段)と、温度差比較部77と、所定時間を計時可能なタイマ78〜80と、要求温度記憶部81(要求温度記憶手段)とを有している。
【0058】
出湯温度検知部70は、出湯温度センサ19から出湯温度を示す情報を受け取り、受け取った情報を補正量更新部72に出力する。入湯温度検知部71は、入湯温度センサ62から入湯温度を示す情報を受け取り、受け取った情報を補正量更新部72に出力する。補正量更新部72は、出湯温度検知部70及び入湯温度検知部71から受け取った各情報に基づいて、出湯温度と入湯温度の温度差を補正量として演算し、演算した補正量を示す情報を補正量記憶部73に出力する。
【0059】
補正量記憶部73は、例えば電気的にデータの書き換えが可能なEEPROMやフラッシュメモリ等で構成され、補正量更新部72から受け取った補正量を示す情報を格納する。なお、この補正量記憶部73は、制御部60に搭載される電気的にデータの書き換えが可能なROM等で代用することも可能である。
【0060】
要求温度記憶部81は、例えば電気的にデータの書き換えが可能なEEPROMやフラッシュメモリ等で構成される。要求温度記憶部81は、ヒートポンプユニット101内で加熱された温水を暖房端末8に供給する供給流路内の温水についての要求温度として、貯湯タンク2で要求される貯湯タンク要求温度RTを記憶し、この貯湯タンク要求温度RTは、リモコン61を操作することにより設定される。
【0061】
目標温度決定部74は、補正量記憶部73に格納された補正量と、要求温度記憶部81に記憶された貯湯タンク要求温度RTとに基づいて、目標出湯温度を決定し、決定した目標出湯温度を示す情報をヒートポンプ制御部75に出力する。ヒートポンプ制御部75は、目標温度決定部74から受け取った情報に基づいてヒートポンプユニット101を制御し、出湯温度を目標出湯温度に近づける制御を行う。
【0062】
温度差演算部76は、出湯温度と目標出湯温度の温度差を演算し、演算した温度差を示す情報を温度差比較部77に出力する。温度差比較部77は、温度差演算部76から受け取った情報に基づいて、出湯温度と目標出湯温度の温度差が所定温度未満であるか否かを判断する。
【0063】
<ヒートポンプ制御動作>
図3及び図4は、本発明の第1実施形態のヒートポンプ制御動作を示すフローチャートである。この例では、要求温度記憶部81には、貯湯タンク要求温度としてRT(℃)が格納されており、ヒートポンプユニット101における目標出湯温度は、GTout(=貯湯タンク要求温度RT+補正量α)に設定されている。また、この補正量αは、前回のヒートポンプユニット101運転停止時(後述のステップS138時)に補正量記憶部73に格納された補正量を示している。
【0064】
まず、ステップS100において、ヒートポンプ制御部75によるヒートポンプユニット101の運転が開始されると共に、この運転開始に同期してタイマ78による計時が開始される。そして、処理はステップS102に移行する。
【0065】
ステップS102において、タイマ78による計時開始後A分(第2所定時間)が経過した場合、処理はステップS106に移行する。一方、A分が未経過の場合、処理はステップS104に移行する。このA分は、ヒートポンプユニット101の運転開始後から出湯温度検知部70により検知される出湯温度Tout(℃)が安定するまでの時間を示し、例えば10分に設定される。
【0066】
ステップS102でA分が未経過の場合、ステップS104において、ヒートポンプ制御部75は、ヒートポンプユニット101を制御して、ヒートポンプユニット101の出湯温度Toutを目標出湯温度GToutに近づける制御を行う。その後、処理は再びステップS102に移行する。
【0067】
一方、ステップS102でA分が経過した場合、ステップS106において、出湯温度検知部70によって出湯温度Toutが検知される。そして、処理はステップS108に移行する。
【0068】
ステップS108において、温度差演算部76によって出湯温度Toutと目標出湯温度GToutの温度差Td(℃)が演算される。そして、処理はステップS110に移行する。
【0069】
ステップS110において、温度差比較部77によって温度差TdがB℃未満であるか否かが判断される。このB℃は、出湯温度Toutが安定したか否かを判断するために、例えば1℃程度に設定されている。そして、温度差TdがB℃以上の場合、処理はステップS112に移行する。一方、温度差TdがB℃未満の場合、処理はステップS114に移行する。
【0070】
ステップS110で温度差TdがB℃以上であると判断された場合、ステップS112において、ヒートポンプ制御部75は、ヒートポンプユニット101を制御して、ヒートポンプユニット101の出湯温度Toutを目標出湯温度GToutに近づける制御を行う。その後、処理は再びステップS106に移行する。
【0071】
一方、ステップS110で温度差TdがB℃未満であると判断された場合、ステップS114において、タイマ79による計時が開始される。そして、処理はステップS116に移行する。
【0072】
ステップS116において、出湯温度検知部70は、出湯温度Toutを検知し、検知した出湯温度Toutを示す情報を補正量更新部72に出力する。そして、処理はステップS118に移行する。
【0073】
ステップS118において、入湯温度検知部71は、入湯温度Tinを検知し、検知した入湯温度Tinを示す情報を補正量更新部72に出力する。そして、処理はステップS120に移行する。
【0074】
ステップS120において、補正量更新部72は、出湯温度検知部70及び入湯温度検知部71から受け取った各情報に基づいて、出湯温度Toutと入湯温度Tinの温度差を新たな補正量α’として演算し、演算した補正量α’を前回の補正量αと置き換える更新処理を行い、新たな補正量α’を補正量記憶部73に格納する。なお、本発明の更新処理には、変更前後で補正量が同じであれば、補正量を変更せず前回の補正量をそのまま維持する場合が含まれる。そして、処理はステップS122に移行する。
【0075】
ステップS122において、目標温度決定部74は、補正量記憶部73に格納された新たな補正量α’と、要求温度記憶部81に格納された貯湯タンク要求温度RTとに基づいて、新たな目標出湯温度GTout’(=貯湯タンク要求温度RT+補正量α’)を決定する。そして、処理はステップS124に移行する。
【0076】
ステップS124において、ヒートポンプ制御部75は、ヒートポンプユニット101を制御して、ヒートポンプユニット101の出湯温度Toutを目標出湯温度GTout’に近づける制御を行う。その後、処理はステップS126に移行する。
【0077】
ステップS126において、タイマ79による計時開始後C分(第1所定時間)が経過した場合、処理は図4のステップS128に移行する。一方、C分が未経過の場合、処理は再びステップS124に移行する。このC分は、例えば、往き配管20及び戻り配管21内を温水が半周以上する時間を示している。また、このC分は、沸き上げ用循環ポンプ51の最低流量(L/min)や、暖房給湯システム100で許容される往き配管20及び戻り配管21の最大配管長(m)等に基づいて決定される。よって、最低流量を2L/minとし、最大配管長を10L程度の水容量である25mとした場合、C分は5分程度に決定される。
【0078】
ステップS126でタイマ79による計時開始後C分が経過した場合、ステップS128において、ヒートポンプ制御部75は、ヒートポンプユニット101の運転停止指示を受け付けたか否か判断する。ヒートポンプユニット101の運転停止指示を受け付けた場合、処理はステップS138に移行する。一方、運転停止指示を受け付けなかった場合、処理はステップS130に移行する。
【0079】
ステップS128で運転停止指示を受け付けなかった場合、ステップS130において、目標温度決定部74は、貯湯タンク要求温度RTから新たな貯湯タンク要求温度RT’への変更要求指示を受け付けたか否か判断する。変更要求を受け付けた場合、要求温度記憶部81において、貯湯タンク要求温度RTが新たな貯湯タンク要求温度RT’に更新され、処理はステップS132に移行する。一方、変更要求を受け付けなかった場合、処理は再び図3のステップS106に移行する。
【0080】
ステップS130で貯湯タンク要求温度RT’への変更要求を受け付けた場合、ステップS132において、目標温度決定部74が、補正量記憶部73に格納された補正量α’と、要求温度記憶部81に格納された貯湯タンク要求温度RT’とに基づいて、新たな目標出湯温度GTout’’(=貯湯タンク要求温度RT’+補正量α’)を決定すると共に、タイマ80による計時が開始される。そして、処理はステップS134に移行する。
【0081】
ステップS134において、ヒートポンプ制御部75は、ヒートポンプユニット101を制御して、ヒートポンプユニット101の出湯温度Toutを新たな目標出湯温度GTout’’(=貯湯タンク要求温度RT’+補正量α’)に近づける制御を行う。その後、処理はステップS136に移行する。
【0082】
ステップS136でタイマ80による計時開始後D分が経過した場合、処理は図3のステップS106に移行する。一方、D分が未経過の場合、処理はステップS134を繰り返す。なお、このD分は、貯湯タンク要求温度RT’への変更要求受付後から出湯温度検知部70により検知される出湯温度Toutが安定するまでの時間を示し、例えば10分に設定される。
【0083】
一方、ステップS128でヒートポンプユニット101の運転停止指示を受け付けた場合、ステップS138において、ヒートポンプ制御部75によるヒートポンプユニット101の運転が停止され、現在の補正量α’をヒートポンプユニット101が次回起動する際の補正量αとして補正量記憶部73に格納する。そして、本発明の第1実施形態の制御部60によるヒートポンプ制御動作が終了する。
【0084】
[第1実施形態の暖房給湯システムの特徴]
以上、第1実施形態の暖房給湯システムでは、タイマ78による計時開始後A分が経過した後に、出湯温度検知部70で出湯温度Toutを検知することにより、安定した出湯温度Toutを用いて、補正量更新部72は補正量α’を演算できる。つまり、補正量更新部72は補正量α’を高精度に演算できる。
【0085】
また、第1実施形態の暖房給湯システムでは、C分毎に、補正量更新部72が各種パラメータ(例えば、出湯温度Toutや入湯温度Tin)に基づいて適宜補正量を変更あるいは維持できるので、目標温度決定部74による目標出湯温度GTout’の決定を高い頻度で高精度に実現できる。このため、ヒートポンプ制御部75は、高い精度で決定された目標出湯温度GTout’を用いて、出湯温度Toutを目標出湯温度GTout’に近づけることができる。
【0086】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の暖房システムについて説明する。第1実施形態で説明した要素と同一の要素については、詳細な説明を省略する。この実施形態の暖房システム200では、暖房回路が貯湯タンクを備えていない点で、第1実施形態と相違する。図5は、本発明の第2実施形態の暖房システム200の構成を示す模式図である。図6は、図5に示した暖房システムの概要を示す模式図である。
【0087】
<暖房システムの構成>
図5に示すように、暖房システム200は、ヒートポンプユニット101(加熱機構)と、ハイドロユニット201と、ラジエタ202(暖房端末)と、床暖パネル203(暖房端末)と、給湯用の湯を貯留する給湯タンク205と、室内リモコン252とを有している。
【0088】
ハイドロユニット201は、ヒートポンプユニット101で加熱された温水を各暖房端末202、203に供給するための往き配管204a(供給流路)と、各暖房端末202、203で排出された温水をヒートポンプユニット101に戻すための戻り配管204bと、バイパス配管244と、暖房用混合弁245(混合弁)、往き温度センサ246と、戻り温度センサ247と、暖房用循環ポンプ248と、暖房用三方弁249と、流量センサ250と、本体リモコン251と、入湯温度センサ262とを有している。なお、本体リモコン251と室内リモコン252とは、有線又は無線により通信可能に接続されており、暖房システム200は、本体リモコン251によって制御される。
【0089】
バイパス配管244は、各暖房端末202、203から流量センサ250を介してヒートポンプユニット101へ流れる温水の一部を暖房用混合弁245へ案内する。暖房用混合弁245は、ヒートポンプユニット101からの温水が流入する入口と、バイパス配管244からの温水が流入する入口とを有しており、暖房用混合弁245の各入口の開度は本体リモコン251によって調節される。
【0090】
往き温度センサ246は、暖房用混合弁245から各暖房端末202、203に向かう温水温度を往き温度として検出し、この往き温度を示す信号を本体リモコン251に送る。戻り温度センサ247は、各暖房端末202、203から流量センサ250を介して排出された温水温度を戻り温度として検出し、この戻り温度を示す信号を本体リモコン251に送る。暖房用循環ポンプ248は、暖房用混合弁245を介して供給された温水を吸い込み、吸い込んだ温水を暖房用三方弁249を介して、各暖房端末202、203及び給湯タンク205に向けて吐出する。出湯温度センサ19(第1温度センサ)は、往き配管204aにおいて、暖房用混合弁245よりもヒートポンプユニット101に近い位置に設けられており、入湯温度センサ262(第2温度センサ)は、往き配管204aにおいて、暖房用混合弁245と出湯温度センサ19との間に設けられている。
【0091】
また、図6に示すように、ヒートポンプユニット101は屋外に、ハイドロユニット201、給湯タンク205及び暖房用三方弁249は機械室内に、ラジエタ202、床暖パネル203及び室内リモコン252は居室内に、それぞれ設置されている。また、図6に示すように、ヒートポンプユニット101及びハイドロユニット201には、それぞれ、別電源が供給されている。
【0092】
<本体リモコンの構成>
図7は、本体リモコン251の構成を示すブロック図である。本体リモコン251は、出湯温度検知部270と、入湯温度検知部271と、補正量更新部272(補正量更新手段)と、補正量記憶部273(補正量記憶手段)と、目標温度決定部274(目標温度決定手段)と、ヒートポンプ制御部275(制御手段)と、温度差演算部276(温度差演算手段)と、温度差比較部277と、所定時間を計時可能なタイマ278〜280と、要求温度演算部281と、要求温度記憶部282(要求温度記憶手段)とを有している。
【0093】
出湯温度検知部270は、出湯温度センサ19から出湯温度を示す情報を受け取り、受け取った情報を補正量更新部272に出力する。入湯温度検知部271は、入湯温度センサ262から入湯温度を示す情報を受け取り、受け取った情報を補正量更新部272に出力する。補正量更新部272は、出湯温度検知部270及び入湯温度検知部271から受け取った各情報に基づいて、出湯温度と入湯温度の温度差を補正量として演算し、演算した補正量を示す情報を補正量記憶部273に出力する。補正量記憶部273は、例えば電気的にデータの書き換えが可能なEEPROMやフラッシュメモリ等で構成されており、補正量更新部272から受け取った補正量を示す情報を格納する。
【0094】
要求温度演算部281は、各暖房端末202、203の暖房負荷や、外気温度センサ18で検知した外気温度を考慮して要求温度RTを演算し、演算した要求温度RTを要求温度記憶部282に出力する。この暖房負荷は、室内リモコン252で設定された室内設定温度と実際の室内温度との温度差に応じて変更される。また、本発明において、要求温度RTは、ヒートポンプユニット101からハイドロユニット201に供給される温水の温度(供給流路である往き配管204aにおいて、入湯温度センサ262が配置された位置における温水の温度)を示している。要求温度記憶部282は、例えば電気的にデータの書き換えが可能なEEPROMやフラッシュメモリ等で構成されており、要求温度演算部281から受け取った要求温度RTを格納する。
【0095】
目標温度決定部274は、補正量記憶部273に格納された補正量と、要求温度記憶部282に格納された要求温度RTとに基づいて、目標出湯温度を決定し、決定した目標出湯温度を示す情報をヒートポンプ制御部275に出力する。ヒートポンプ制御部275は、目標温度決定部から受け取った情報に基づいてヒートポンプユニット101を制御し、出湯温度を目標出湯温度に近づける制御を行う。
【0096】
温度差演算部276は、出湯温度と目標出湯温度の温度差を演算し、演算した温度差を示す情報を温度差比較部277に出力する。温度差比較部277は、温度差演算部276から受け取った情報に基づいて、出湯温度と目標出湯温度の温度差が所定温度未満であるか否かを判断する。
【0097】
<ヒートポンプ制御動作>
図8及び図9は、本発明の第2実施形態のヒートポンプ制御動作を示すフローチャートである。この例では、各暖房端末202、203の暖房負荷や、外気温度センサ18で検知した外気温度を考慮して、要求温度RTが演算されると共に、演算した要求温度RTが要求温度記憶部282に格納されており、ヒートポンプユニット101における目標出湯温度は、GTout(=要求温度RT+補正量α)に設定されている。また、この補正量αは、前回のヒートポンプユニット101運転停止時(後述するステップS238時)に補正量記憶部273に格納された補正量を示している。
【0098】
まず、ステップS200において、ヒートポンプ制御部275によるヒートポンプユニット101の運転が開始されると共に、この運転開始に同期してタイマ278による計時が開始される。そして、処理はステップS202に移行する。
【0099】
ステップS202において、タイマ278による計時開始後A分(第2所定時間)が経過した場合、処理はステップS206に移行する。一方、A分が未経過の場合、処理はステップS204に移行する。このA分は、ヒートポンプユニット101の運転開始後から出湯温度検知部270で検知される出湯温度Tout(℃)が安定するまでの時間を示している。
【0100】
ステップS202でA分が未経過の場合、ステップS204において、ヒートポンプ制御部275は、ヒートポンプユニット101を制御して、ヒートポンプユニット101の出湯温度Toutを目標出湯温度GToutに近づける制御を行う。その後、処理は再びステップS202に移行する。
【0101】
一方、ステップS202でA分が経過した場合、ステップS206において、出湯温度検知部270によって出湯温度Toutが検知される。そして、処理はステップS208に移行する。
【0102】
ステップS208において、温度差演算部276によって出湯温度Toutと目標出湯温度GToutの温度差Td(℃)が演算される。そして、処理はステップS210に移行する。
【0103】
ステップS210において、温度差比較部277によって温度差TdがB℃未満であるか否かが判断される。このB℃は、出湯温度Toutが安定したか否かを判断するための温度として設定されている。温度差TdがB℃以上の場合、処理はステップS212に移行する。温度差TdがB℃未満の場合、処理はステップS214に移行する。
【0104】
ステップS210で温度差TdがB℃以上であると判断された場合、ステップS212において、ヒートポンプ制御部275は、ヒートポンプユニット101を制御して、ヒートポンプユニット101の出湯温度Toutを目標出湯温度GToutに近づける制御を行う。その後、処理は再びステップS206に移行する。
【0105】
一方、ステップS210で温度差TdがB℃未満であると判断された場合、ステップS214において、タイマ279による計時が開始される。そして、処理はステップS216に移行する。
【0106】
ステップS216において、出湯温度検知部270は、出湯温度Toutを検知し、検知した出湯温度Toutを示す情報を補正量更新部272に出力する。そして、処理はステップS218に移行する。
【0107】
ステップS218において、入湯温度検知部271は、入湯温度Tinを検知し、検知した入湯温度Tinを示す情報を補正量更新部272に出力する。そして、処理はステップS220に移行する。
【0108】
ステップS220において、補正量更新部272は、出湯温度検知部270及び入湯温度検知部271から受け取った各情報に基づいて、出湯温度Toutと入湯温度Tinの温度差を補正量α’として演算すると共に、演算した新たな補正量α’を前回の補正量αと置き換える更新処理を行って、補正量α’を補正量記憶部273に格納する。そして、処理はステップS222に移行する。
【0109】
ステップS222において、目標温度決定部274は、補正量記憶部273に格納された新たな補正量α’と、要求温度記憶部282に格納された要求温度RTとに基づいて、新たな目標出湯温度GTout’(=要求温度RT+補正量α’)を決定する。そして、処理はステップS224に移行する。
【0110】
ステップS224において、ヒートポンプ制御部275は、ヒートポンプユニット101を制御して、ヒートポンプユニット101の出湯温度Toutを目標出湯温度GTout’に近づける制御を行う。その後、処理はステップS226に移行する。
【0111】
ステップS226において、タイマ279による計時開始後C分(第1所定時間)が経過した場合、処理は図9のステップS228に移行する。一方、C分が未経過の場合、処理は再びステップS224を繰り返す。このC分は、例えば、往き配管204a及び戻り配管204b内を温水が半周以上する時間を示している。
【0112】
ステップS226でタイマ279による計時開始後C分が経過した場合、ステップS228において、ヒートポンプ制御部275は、ヒートポンプユニット101の運転停止指示を受け付けたか否か判断する。ヒートポンプユニット101の運転停止指示を受け付けた場合、処理はステップS238に移行する。一方、運転停止指示を受け付けなかった場合、処理はステップS230に移行する。
【0113】
ステップS228で運転停止指示を受け付けなかった場合、ステップS230において、目標温度決定部274は、要求温度RTから新たな要求温度RT’への変更要求指示を受け付けたか否か(室内リモコン252で新たな室内設定温度が設定されたか否か)判断する。変更要求指示を受け付けた場合、要求温度演算部281において新たな要求温度RT’が演算されると共に、要求温度記憶部282において要求温度RTが新たな要求温度RT’に更新され、処理はステップS232に移行する。一方、変更要求指示を受け付けなかった場合、処理は再び図8のステップS206に移行する。
【0114】
ステップS230で要求温度RT’への変更要求を受け付けた場合、ステップS232において、目標温度決定部274が、補正量記憶部273に格納された補正量α’と、要求温度記憶部282に格納された要求温度RT’とに基づいて、新たな目標出湯温度GTout’’(=要求温度RT’+補正量α’)を決定すると共に、タイマ280による計時が開始される。そして、処理はステップS234に移行する。
【0115】
ステップS234において、ヒートポンプ制御部275は、ヒートポンプユニット101を制御して、ヒートポンプユニット101の出湯温度Toutを新たな目標出湯温度GTout’’(=要求温度RT’+補正量α’)に近づける制御を行う。その後、処理はステップS236に移行する。
【0116】
ステップS236でタイマ280による計時開始後D分が経過した場合、処理は図8のステップS206に移行する。一方、D分が未経過の場合、処理はステップS234を繰り返す。
【0117】
一方、ステップS228でヒートポンプユニット101の運転停止指示を受け付けた場合、ステップS238において、ヒートポンプ制御部275によるヒートポンプユニット101の運転が停止され、現在の補正量α’をヒートポンプユニット101が次回起動する際の補正量αとして補正量記憶部273に格納する。そして、本発明の第2実施形態の本体リモコン251によるヒートポンプ制御動作が終了する。
【0118】
[第2実施形態の暖房システムの特徴]
以上、第2実施形態の暖房システムでは、タイマ278による計時開始後A分が経過した後に、出湯温度検知部270で出湯温度Toutを検知することにより、安定した出湯温度Toutを用いて、補正量更新部272は補正量α’を演算できる。したがって、補正量更新部72は高精度に補正量α’を演算できる。
【0119】
また、第2実施形態の暖房システムでは、C分毎に、補正量更新部272が各種パラメータ(例えば、出湯温度Toutや入湯温度Tin)に基づいて補正量を、適宜、変更あるいは維持できるので、目標温度決定部274による目標出湯温度GTout’の決定を、高頻度に、かつ、高精度に実現できる。このため、ヒートポンプ制御部275は、高精度で決定した目標出湯温度GTout’を用いて、出湯温度Toutを目標出湯温度GTout’に近づけることができる。
【0120】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0121】
なお、上述した第1実施形態では、暖房回路に含まれる貯湯タンク2の内部に熱交換器の一例として給湯用熱交換器3を設けた例について述べたが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。暖房回路に含まれる貯湯タンク2の内部に給湯用熱交換器3を設けなくてもよい。
【0122】
なお、上述した第1実施形態では、入湯温度センサ62を、往き配管20において出湯温度センサ19と貯湯タンク2との間に設ける例について述べたが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。例えば、この入湯温度センサ62を、ヒートポンプユニット101から貯湯タンク2へ流入する温水温度を検知可能な第2暖房往き接続口42(接続部)や凍結防止水戻し接続口54(接続部)の近傍に設けてもよい。
【0123】
なお、上述した第1実施形態では、貯湯タンク要求温度RTを、リモコン61の操作に応じて設定する例について述べたが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。例えば、この貯湯タンク要求温度RTを、各暖房端末8の暖房負荷や、外気温度センサ18で検知された外気温度を考慮した演算によって設定してもよい。
【0124】
なお、上述した第2実施形態では、各暖房端末202、203の暖房負荷や、外気温度センサ18で検知された外気温度を考慮した演算によって求めた要求温度RTを、要求温度記憶部82に格納する例について述べたが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。例えば、この要求温度RTを、室内リモコン252の操作に応じて設定してもよい。
【0125】
なお、上述した第2実施形態では、要求温度RTを、ヒートポンプユニット101からハイドロユニット201に供給される温水の温度に設定する例について述べたが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。この要求温度RTを、加熱機構内で加熱された温水を暖房端末に供給する供給流路内の任意の位置における温水の温度に設定してもよく、例えば、各暖房端末202、203の入口の温度に設定してもよい。
【0126】
なお、上述した第1及び第2実施形態では、加熱機構を、CO冷媒を用いたヒートポンプユニット101で構成する例について述べたが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。例えば、CO冷媒以外の冷媒を用いるものであってもよい。また、加熱機構を燃焼ガス式の機器等で構成してもよい。
【0127】
なお、上述した第1及び第2実施形態では、補正量更新部72、272が出湯温度Toutと入湯温度Tinの温度差を新たな補正量α’として演算する例について述べたが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。例えば、出湯温度Toutと入湯温度Tinの温度差の絶対値を補正量α’として演算してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明を利用すれば、加熱機構内で加熱された温水を暖房端末に供給する供給流路内の所定位置における温水の温度を、外気温度等の運転状況によらず、正確かつ安定した状態で維持可能な暖房システム及び給湯システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の第1実施形態の暖房給湯システムの構成を示す模式図である。
【図2】制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態のヒートポンプ制御動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態のヒートポンプ制御動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態の暖房システムの構成を示す模式図である。
【図6】図5に示した暖房システムの概要を示す模式図である。
【図7】本体リモコンの構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2実施形態のヒートポンプ制御動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態のヒートポンプ制御動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0130】
2 貯湯タンク
3 給湯用熱交換器(熱交換器)
4 暖房用循環回路(循環回路)
8 暖房端末
13 凝縮器(加熱部)
16 冷媒回路
18 外気温度センサ
19 出湯温度センサ(第1温度センサ)
20 往き配管(高温側配管)
21 戻り配管(低温側配管)
42 第2暖房往き接続口(接続部)
54 凍結防止水戻し接続口(接続部)
60 制御部
61 リモコン
62、262 入湯温度センサ(第2温度センサ)
72、272 補正量更新部(補正量更新手段)
73、273 補正量記憶部(補正量記憶手段)
74、274 目標温度決定部(目標温度決定手段)
75、275 ヒートポンプ制御部(制御手段)
76、276 温度差演算部(温度差演算手段)
81、282 要求温度記憶部(要求温度記憶手段)
100 暖房給湯システム
101 ヒートポンプユニット(加熱機構)
102 室内ユニット
200 暖房システム
204a 往き配管(供給流路)
244 バイパス配管
245 暖房用混合弁(混合弁)
251 本体リモコン
252 室内リモコン
281 要求温度演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱機構と、
前記加熱機構内で加熱された温水を暖房端末に供給すると共に、前記暖房端末から排出された温水を前記加熱機構内に戻す暖房回路と、
補正量を記憶する補正量記憶手段と、
前記補正量記憶手段に記憶された前記補正量を更新する補正量更新手段と、
前記加熱機構内で加熱された温水を前記暖房端末に供給する供給流路内の温水についての要求温度を記憶する要求温度記憶手段と、
前記補正量記憶手段に記憶された前記補正量と、前記要求温度記憶手段に記憶された要求温度とに基づいて、前記加熱機構における目標出湯温度を決定する目標温度決定手段と、
前記目標温度決定手段により決定された目標出湯温度に基づいて前記加熱機構を制御する制御手段とを備えることを特徴とする暖房システム。
【請求項2】
前記供給流路に配置され、前記加熱機構から排出された温水の温度を検出する第1温度センサと、
前記供給流路において前記第1温度センサより前記暖房端末に近い位置に配置された第2温度センサとを備え、
前記補正量更新手段は、前記第1温度センサにより検知された温度と、前記第2温度センサにより検知された温度とに基づいて、前記補正量を更新することを特徴とする請求項1に記載の暖房システム。
【請求項3】
前記加熱機構内で加熱された温水を貯える貯湯タンクと、
前記貯湯タンクと前記暖房端末との間で温水を循環させる循環回路とを備え、
前記加熱機構は、前記貯湯タンクから低温側配管を介して供給された温水を加熱部において加熱すると共に、前記加熱部で加熱された温水を高温側配管を介して前記貯湯タンク内に戻し、
前記要求温度記憶手段は、前記要求温度として、前記貯湯タンク内に貯える温水の貯湯温度を記憶することを特徴とする請求項1または2に記載の暖房システム。
【請求項4】
前記第1温度センサは、前記高温側配管において前記貯湯タンクより前記加熱部に近い位置に設けられ、
前記第2温度センサは、前記高温側配管において前記第1温度センサと前記貯湯タンクとの間、あるいは、前記高温側配管と前記貯湯タンクとを接続する接続部の近傍に設けられていることを特徴とする請求項3記載の暖房システム。
【請求項5】
前記加熱機構は、ヒートポンプシステムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の暖房システム。
【請求項6】
前記補正量更新手段は、前記補正量記憶手段に記憶された補正量を第1所定時間毎に更新することを特徴とずる請求項1〜5のいずれか1項に記載の暖房システム。
【請求項7】
前記補正量更新手段は、前記加熱機構の運転開始から第2所定時間経過後に前記更新を開始することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の暖房システム。
【請求項8】
前記第1温度センサにより検知された温度と、前記目標温度決定手段により決定された目標出湯温度との温度差を算出する温度差算出手段を備え、
前記補正量更新手段は、前記温度差算出手段により算出された温度差が所定温度未満であるときに前記補正量を更新することを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の暖房システム。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか1項に記載の暖房システムと、
前記貯湯タンク内に配置され、給湯水が内部を流れる熱交換器とを備えたことを特徴とする給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−60270(P2010−60270A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181268(P2009−181268)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】