説明

暗所用異常高温警告具

【課題】外部から電力の供給を受ける必要がなく、自己完結的に、異常高温を視覚的にはっきりと不可逆的に表示することができる暗所用異常高温警告具を提供。
【解決手段】基板1上に、中央部分が一方側に膨出した透明な合成樹脂フィルム製の成形体2を被せて、基板1上に密閉空間を形成し、該密閉空間内を任意の設定温度で溶解する石油系ワックスからなる隔壁3によって2室に区画し、混合されることによって発光する一対の薬液5、6を、それぞれ各室に封入して暗所用異常高温警告具を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は暗所用異常高温警告具、詳しくは、光量の極めて乏しい、所謂、暗所に設置されている対象物の異常高温に反応し、その事実を不可逆的に表示し、警告を発する暗所用異常高温警告具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象物の温度に反応して設定温度超過の事実を不可逆的に表示する温度表示具は、あらゆる産業分野において広く用いられており、この温度表示具の用途の一つとして、対象物の異常高温の感知警告が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−231212
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
異常高温を感知警告する為に用いる温度表示具のうち、洞状の施設内など光量の極めて乏しい暗所に設置された対象物の異常高温の事実を発光現象によって不可逆的に表示する暗所用異常高温警告具は、予め設定された温度で確実に動作する正確さと共に、視覚的にはっきりと訴えることが出来る良好な視認性を持つことが必要であり、一個当たりの単価が安く、耐久性、信頼性にも富み、しかも外部から電気の供給を必要としない自己完結性を有することも望ましいが、従来の暗所用異常温度警告具においては、電気の供給を必要としたり、視認性が劣っていたり、構造が複雑で、高コストであったり、信頼性、耐久性に欠けるものが多く、必ずしも満足すべきものではなかった。
【0006】
本願発明は、上記従来の暗所用異常高温警告具の問題点を解決することを目的とするものであり、洞状の施設内などの暗所において、外部から電気の供給を受ける必要がなく、自己完結的に、異常高温を視覚的にはっきりと不可逆表示することが出来る便利な暗所用異常高温警告具を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、基板上に、中央部分が一方側に膨出した透明な合成樹脂フィルム製の成形体を被せて、基板上に密閉空間を形成し、該密閉空間内を任意の設定温度で溶解する石油系ワックスからなる隔壁によって2室に区画し、混合されることによって発光する一対の薬液を、それぞれ各室に封入して暗所用異常高温警告具を構成することにより、上記課題を解決した。
【0008】
請求項2に係る発明は、基板上に、中央部分が一方側に膨出した透明な合成樹脂フィルム製の成形体を被せて、基板上に密閉空間を形成し、該密閉空間内を透明な合成樹脂製の隔壁によって2室に区画すると共に、この隔壁に透孔を設け、この透孔を任意の設定温度で溶解する石油系ワックスによって封止し、混合されることによって発光する一対の薬液を、それぞれ各室に封入して暗所用異常高温警告具を構成することにより、上記課題を解決した。
【0009】
請求項3に係る発明は、基板上に、中央部分が一方側に膨出した透明合成樹脂フォルム製の成形体を被せて、基板上に密閉空間を形成し、該密閉空間内に、混合されることにより発光する一対の薬液の一方を収容すると共に、任意の設定温度で溶解する石油系ワックスによって開口部が封止され、内部にもう一方の薬液が収容されている袋体を前記密閉空間内に収容して暗所用異常高温警告具を構成することにより、上記課題を解決した。
【0010】
請求項4に係る発明は、基板上に蓄光材からなる蓄光層を形成し、更に、この蓄光層の上面に、任意の設定温度で溶解する粉末状の石油系ワックスと粘ちょう剤とからなるワックス層を重畳し、これら蓄光層とワックス層とを覆う様に、その上から透明フィルムを被せて暗所用異常高温警告具を構成することにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項5に係る発明は、基板上に、所望の彩色が施された彩色面を形成し、この彩色面の上面に蓄光材からなる帯状の蓄光層を間隔をあけて複数条形成し、その上に透明合成樹脂板を重ね、更にその上に、任意の設定温度で溶解する粉末状の石油系ワックスと粘ちょう剤とからなるワックス層を形成し、これら全体を透孔フィルムで被って暗所用異常高温警告具を構成することにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項6に係る発明は、直列状に配置された一対の流路と、該流路内に位置し、該流路の開閉を行う可動栓とからなる開閉弁の前記可動栓に、ワックスの膨張/収縮作用によってピストンが伸縮するワックスサーモエレメントのピストンを連結して、任意の設定温度でピストンが伸長して可動栓を移動させ、流路を開ける様にすると共に、一対の流路に、それぞれ透明合成樹脂製の袋体の開口部を取付け、該一対の袋体内部に混合することによって発光する一対の薬液をぞれぞれ封入して暗所用異常高温警告具を構成することにより、上記課題を解決した。
【0013】
請求項7に係る発明は、混合されることによって発光する一対の薬液の一方を収容したガラス製アンプルを、もう一方の薬液と共に透明合成樹脂製筒体内に収容せしめたケミカルライトスティックの側面中央部に、ワックスの膨張/収縮作用によってピストンが伸長/後退するワックスサーモエレメントのピストン先端を、ケミカルライトスティックの軸芯に対してほぼ直角方向から当接あるいは接近させて位置せしめ、設定温度超過の際にピストンが伸長してケミカルライトスティック中央部を折り、アンプルを割って一対の薬液を混合する様にして暗所用異常高温警告具を構成することにより、上記課題を解決した。
【0014】
請求項8に係る発明は、筒状をなし、軸芯に沿って流路が形成され、該流路の一端が、任意の設定温度で熔融する低熔融ハンダによって封止された口金の、それぞれ流路出口に、一対の透明合成樹脂製袋体を、それぞれの開口部が突き合わせ状態になる様に接続し、これら袋体内に、混合することにより発光する一対の薬液をそれぞれ収容して暗所用異常高温警告具を構成することにより、上記課題を解決した。
【0015】
請求項9に係る発明は、基板上に、中央部分が一方側に膨出した透明な合成樹脂フィルム製の成形体を被せて、基板上に密閉空間を形成し、該密閉空間内に、混合されることにより発光する一対の薬液の一方を収容すると共に、任意の設定温度で溶解する石油系ワックス製のマイクロカプセル内にもう一方の薬液を収容し、該マイクロカプセルを前記密閉空間内に収容して暗所用異常高温警告具を構成することにより、上記課題を解決した。
【0016】
請求項10に係る発明は、基板上に、中央部分が一方側に膨張した透明な合成樹脂フィルム製の成形体を被せて、基板上に密閉空間を成形すると共に、混合されることにより発光する一対の薬液を任意の設定温度で溶解する石油系ワックス製のマイクロカプセルにそれぞれ別々に収容し、これらマイクロカプセルを前記密閉空間内に封入して暗所用異常高温警告具を構成することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0017】
石油系ワックスあるいは低熔融ハンダの熱による溶解作用を利用しているので、正確に温度に反応し、動作が確実で耐久性にも富み、誤作動のおそれはほとんどない。又、構造が簡単で、部品数も少なく、低いコストで製造することが出来る。更に、それ自体発光するので、外部から電気の供給を受けたり、別途照明手段を用意する必要がない。しかも、一旦設定温度を超過したら、その後温度が低下しても、不可逆的に表示し続ける、等の効果を有し、洞状の施設内などの光量の乏しい無人施設内に設置されている対象物の異常高温の感知警告に、特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例1の縦断面図。
【図2】同じく、その平面図。
【図3】同じく、その斜視図。
【図4】同じく、設定温度に達し、発光を開始した状態の縦断面図。
【図5】同じく、実施例1の他の形態の平面図。
【図6】この発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例2の縦断面図。
【図7】同じく、設定温度に達し、発光を開始した状態の縦断面図。
【図8】この発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例3の一部を切欠いて描いた平面図。
【図9】同じく、その縦断面図。
【図10】同じく、設定温度に達し、発光を開始した状態の縦断面図。
【図11】この発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例4の縦断面図。
【図12】同じく、設定温度に達し、発光を開始した状態の縦断面図。
【図13】この発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例5の縦断面図。
【図14】同じく、設定温度に達し、発光を開始した状態の縦断面図。
【図15】同じく、実施例5の発光前の状態の平面図。
【図16】同じく、実施例5の発光を開始した状態の平面図。
【図17】この発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例6の縦断面図。
【図18】同じく、設定温度に達し、発光を開始した状態の縦断面図。
【図19】この発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例7の縦断面図。
【図20】同じく、設定温度に達し、発光を開始した状態の縦断面図。
【図21】この発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例8の縦断面図。
【図22】同じく、設定温度に達し、発光を開始した状態の縦断面図。
【図23】この発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例9の縦断面図。
【図24】この発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例9の平面図。
【図25】同じく、設定温度に達し、発光を開始した状態の縦断面図。
【図26】この発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例10の縦断面図。
【図27】この発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例10の平面図。
【図28】同じく、設定温度に達し、発光を開始した状態の縦断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
任意の設定温度で溶解し、温度に対する反応も正確である石油系ワックスあるいは低熔解ハンダの特性を利用し、これによって発光物質の発光作用の起動を行う様にした点に最大の特徴が存する。
【実施例1】
【0020】
図1は、この発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例1の縦断面図、図2はその平面図、図3はその斜視図である。
【0021】
図中1は、矩形薄板状をなした基板であり、合成樹脂等を素材として、液体が浸み出さない水密性を有している。そして、この基板1の表面側には、一方側に膨出した透明な合成樹脂フィルム製の箱形成形体2が被せられており、基板1上に密閉空間を形成している。そして、この密閉空間内の中央部には、任意の設定温度で溶融する石油系ワックスによって隔壁3が形成されており、a,b2室に区画されている。
【0022】
更に、これらa,b2室には、シュウ酸ジフエニルと過酸化水素の様に、混合すると発光する一対の薬液5,6が別々に封入されている。なお、図1に示した実施例においては、箱形成形体2内の密閉空間は横方向に区画されているが、縦方向、つまり、基板1と平行な方向に区画しても良い。
【0023】
更に、箱形成形体2は図1及び図2に示す様な形成状のものに限る必要はなく、図5に示すものの様に、中央にくびれ部18が形成され、該くびれ部18に石油系ワックスによる隔壁3が設けられたものでも良い。
【0024】
この実施例1は上記の通りの構成を有するものであり、図4に示す様に、異常高温を感知しようとする対象物4の表面に、適宜手段によって貼付して使用に供するものであり、対象物4が予め設定された温度を超過すると、隔壁3を形成している石油系ワックスが溶解することにより、隔壁3が崩壊し、それまで分離されていた一対の薬液5,6が混じり合い、発光を開始する。
【0025】
従って、洞状の施設内などの光量の乏しい無人施設内に設置されている対象物4が異常高温に晒されたときは、その事実が発光現象によって表示される。なお、その後、対象物4の温度が設定以下に低下したとしても、薬液5,6は混じり合ったままなので発光は継続され、設定温度超過の事実は不可逆的に表示され続ける。
【実施例2】
【0026】
図6はこの発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例2の縦断面図である。
【0027】
図中1は、矩形薄板状をなした基板であり、実施例1の場合と同様、合成樹脂等を素材として、液体が浸み出さない水密性を有している。そして、この基板1の表面側には、一方側に膨出した透明な合成樹脂フィルム製の箱形成形体2が被せられており、基板1上に密閉空間を形成している。
【0028】
そして、この密閉空間内の横方向中央部、つまり基板1と平行な方向における中央部には仕切板12が設けられており、この仕切板12によって密閉空間内は上下2室に区画されている。
【0029】
更に、この仕切板12には、その表裏を貫いて透孔13が形成されており、この透孔13は予め設定された温度で溶解する固形状の石油系ワックス14によって封止されており、上下2室には、シュウ酸ジフェニルと過酸化水素の様に、混合すると発光する一対の薬液5,6が封入されている。
【0030】
この実施例2は上記の通りの構成を有するものであり、図7に示す様に、異常高温を感知しようとする対象物4の表面に、適宜手段によって貼付して使用に供するものであり、対象物4が予め設定された温度を超過すると仕切板12の透孔13を閉塞している石油系ワックス14が溶解し、透孔13が開放され、それまで分離されていた一対の薬液5,6が混じり合い、発光を開始する。
【0031】
従って、洞状の施設内などの光量の乏しい無人施設内に設置されている対象物4が異常高温に晒されたときは、その事実が発光現象によって表示される。なお、その後、対象物4の温度が設定以下に低下したとしても、薬液5,6は混じり合ったままなので、発光は継続され、設定温度超過の事実は、不可逆的に表示され続ける。
【実施例3】
【0032】
図8はこの発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例3の一部を切欠いて描いた平面図、図9はその縦断面図である。
【0033】
図中1は、矩形薄板状をなした基板であり、実施例1の場合と同様、合成樹脂等を素材として、液体が浸み出さない水密性を有している。そして、この基板1の表面側には、一方側に膨出した透明な合成樹脂フィルム製の箱形成形体2が被せられており、基板1上に密閉空間を形成している。
【0034】
そして、この箱形成形体2内には、扁平な袋体19の収容されており、この袋体19内部には、シュウ酸ジフェニルと過酸化水素の様に、混合すると発光する一対の薬液5,6の一方が収容され、その開口部20は予め設定された温度で溶解する固形状の石油系ワックス14によって封止されている。
【0035】
更に、箱形成形体2には、袋体19と共に、薬液5,6のもう一方が収容されている。
【0036】
この実施例3は上記の通りの構成を有するものであり、図10に示す様に、異常高温を感知しようとする対象物4の表面に、適宜手段によって貼付して使用に供するものであり、対象物4が予め設定された温度を超過すると、袋体19の開口部20を閉塞している石油系ワックス14が溶解し、開口部20が開放され、それまで分離されていた一対の薬液5,6が混じり合い、発光を開始する。
【0037】
従って、洞状の施設内などの光量の乏しい無人施設内に設置されている対象物4が異常高温に晒されたときは、その事実が発光現象によって表示される。なお、その後、対象物4の温度が設定以下に低下したとしても、薬液5,6は混じり合ったままなので、発光は継続され、設定温度超過の事実は、不可逆的に表示され続ける。
【実施例4】
【0038】
図11はこの発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例4の縦断面図である。
【0039】
図中7は矩形薄板状をなした基板であり、この基板7上には蓄光材からなる蓄光層9が形成されており、この蓄光層9の上面には、任意の設定温度で溶解する粉末状の石油系ワックスと粘ちょう剤とを練り合せてなるワックス層10が重畳されている。なお、このワックス層10を構成する物質は、本件出願人が特開2006−29945として提案したものと同じであり、設定温度超過前の平常状態においては、粉末状の石油系ワックスの作用により白濁した不透明状態を呈している。
【0040】
又、蓄光層9を構成する蓄光材は、光を貯め込んで、これを放出して光る性質の物質であり、硫化亜鉛系やアルミン酸ストロンチウム系などの既知の蓄光材を用いることが出来る。そして、これら蓄光層9及びワックス層10を覆う様に、その上に透明フィルム11が被せられている。
【0041】
この実施例4は上記の通りの構成を有するものであり、実施例1と同様、異常温度を感知しようとする対象物4に適宜手段によって貼付して使用に供するものであり、対象物4が設定温度を超過した場合には、図12に示す様に、ワックス層10を構成している粉末状の石油系ワックスが溶解して液状化することにより、それまで白濁して不透明であったワックス層10が透明化し、この透明化したワックス層10を透過してその下の蓄光層9が透けて見え、蓄光層9の発光現象が外部から視認出来る様になる。従って、この発光現象によって対象物4が異常高温に晒された事実が表示される。
【0042】
なお、洞状の施設内などの暗所においても、ほとんどの場合、わずかな光が存在しているので、蓄光層9を構成している蓄光材を発光させることは十分可能であり、発光によって、異常高温の事実を感知警告することが出来る。又、対象物4の温度が設定温度以下に低下しても、ワックス層10は透明のままであるので、設定超過の事実は蓄光層9の発光が継続する限り、表示され続ける。
【実施例5】
【0043】
図13は、この発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例5の縦断面図である。
【0044】
図中7は、矩形薄板状をなした基板であり、この基板7上には、所望の彩色が施された彩色面15が形成されている。なお、この彩色面15は、赤色などの目立つ色調であることが好ましい。そして、この彩色面15上には、蓄光材からなる帯状の蓄光層16が間隔をあけて複数条、平行に重畳されており、彩色面15と蓄光層16とによって、所謂ゼブラ模様が基板7上に形成されている。
【0045】
更に、その上に透明なプラスチック板17が重畳されており、該プラスチック板17の上には、任意の設定温度で溶解する粉末状の石油系ワックスと粘ちょう剤とを練り合せてなるワックス層10が重畳されている。なお、このワックス層10を形成する物質は、本件出願人が特開2006−29945として提案したものと同じであり、設定温度超過前の平常状態においては、粉末状の石油系ワックスの作用により、白濁した不透明状態を呈しており、図15に示す様に、ワックス層10に妨げられ、外部からゼブラ模様は視認することが出来ない。
【0046】
又、蓄光層9を構成する蓄光材は、光を貯め込んで、これを放出して光る性質の物質であり、硫化亜鉛系やアルミン酸ストロンチウム系などの既知の蓄光材を用いることが出来る。そして、これら蓄光層9及びワックス層10を覆う様に、その上に透明フィルム11が被せられている。
【0047】
この実施例5は上記の通りの構成を有するものであり、図14に示す様に、異常高温を感知しようとする対象物4に適宜手段によって貼付して使用に供するものであり、設定温度超過前は、ワックス層10は白濁しているので、図15に示す様な状態を呈しているが、対象物4が設定温度を超過した場合には、図14に示す様に、ワックス層10を構成している粉末状の石油系ワックスが溶解して液状化することにより、それまで白濁して不透明であったワックス層10が透明化し、図16に示す様に、この透明化したワックス層10を透過してゼブラ模様を呈している帯状の蓄光層16及び、蓄光層16の間の彩色面15が透けて見え、蓄光層16の発光現象が外部から視認出来る様になる。
【0048】
特に、この実施例5においては、蓄光層16と彩色面15とがゼブラ模様を呈しているので、単に蓄光層16が発光する場合に比べ、より鮮明に設定温度超過の事実を表示することが出来る。
【実施例6】
【0049】
図17はこの発明に係る暗所用異常温度警告具の実施例6の縦断面図である。図中21,21は扁平帯状をなした一対の袋体であり、長手方向一端に開口部22を有しており、下記に述べる開閉弁23を介して、それぞれ開口部22が向かい合う様に、直列状に配置されている。開閉弁23は、直列状に配置された一対の流路24,24と該流路24,24の間に位置し、該流路24,24間の開閉を行う可動栓25とからなっており、該可動栓25には、ワックスの熱による膨張/収縮作用によってピストン26が伸縮するワックスサーモエレメント27のピストン26が連結されており、任意の設定温度に達すると、ピストン26が伸長し、可動栓25を移動させて流路24,24間を開く様になっている。
【0050】
そして、一対の袋体21,21内には、シュウ酸ジフェニルと過酸化水素の様に、混合すると発光する一対の薬液5,6がそれぞれ収容されている。
【0051】
この実施例6は上記の通りの構成を有するものであり、図18に示す様に、異常高温を感知しようとする対象物4の表面に、適宜手段によって固定して使用に供するものであり、対象物4が予め設定された温度を超過するとワックスサーモエレメント27のピストン26が伸長し、可動栓25を押し上げ、流路24,24間を開き、袋体21,21に収容されていた薬液5,6が混じり合い、発光を開始する。
【0052】
従って、洞状の施設内などの光量の乏しい無人施設内に設置されている対象物4が異常高温に晒されたときは、その事実が発光現象によって表示される。なお、その後、対象物4の温度が設定以下に低下したとしても、薬液5,6は混じり合ったままなので、発光は継続され、設定温度超過の事実は、不可逆的に表示され続ける。
【実施例7】
【0053】
図19はこの発明に係る暗所用異常温度警告具の実施例7の縦断面図である。図中28は棒状をなしたケミカルライトスティックであり、透明合成樹脂製筒体29内には、ガラス製アンプル30が収容されており、シュウ酸ジフェニルと過酸化水素の様に、混合すると発光する一対の薬液5,6の一方が前記アンプル30内に封入されていると共に、筒体29内にはもう一方の薬液5,6が収容されている。なお、上記構造は、従来から存在するケミカルライトスティックと全く同じである。
【0054】
一方、図中31は底板32と周壁部33とからなる有底筒状をなしたワックスサーモエレメント固定部材であり、周壁部33を貫通してケミカルライトスティック28が挿入されていると共に、ワックスの熱による膨張/収縮作用によってピストン26が伸縮するワックスサーモエレメント27が、その底面を底板32に接し、ピストン26の軸芯がケミカルライトスティック28の軸芯に対してほぼ直角になる様に、その先端を当接あるいは接近させて、位置せしめられている。
【0055】
この実施例7は、図20に示す様に、異常高温を感知使用とする対象物4の表面に、適宜手段によって固定して使用に供するものであり、対象物4が予め設定された温度を超過すると、ワックスサーモエレメント27のピストン26が伸長し、ケミカルライトスティック28の側面を強く圧迫し、図20に示す様に、これを折り、ガラス製アンプル30が割れ、筒体29とガラス製アンプル30とに収容されていた一対の薬液5,6が混じり合い、発光を開始する。
【0056】
従って、洞状の施設内などの光量の乏しい無人施設内に設置されている対象物4が異常高温に晒されたときは、その事実が発光現象によって表示される。なお、その後、対象物4の温度が設定以下に低下したとしても、薬液5,6は混じり合ったままなので、発光は継続され、設定温度超過の事実は、不可逆的に表示され続ける。
【実施例8】
【0057】
図21はこの発明に係る暗所用異常温度警告具の実施例8の縦断面図である。
【0058】
図中34は、筒状をなし、軸芯に沿って流路35が形成された口金であり、流路35は、任意の設定温度で熔融する低熔融ハンダ41によって封止されている。一方、図中36,36は扁平袋状をなして透明合成樹脂製袋体であり、それぞれの開口部は、前記口金34の流路出口に突き合わせ状態になる様に、接続されており、これら袋体36,36内にはシュウ酸ジフェニルと過酸化水素の様に、混合すると発光する一対の薬液5,6が封入されている。 この実施例8は、上記の通りの構成を有するものであり、図22に示す様に、異常高温を感知使用とする対象物4の表面に適宜手段によって固定して使用に供するものであり、対象物4が予め設定された温度を超過すると、低熔融ハンダ41が熔融し、流路35が開通し、袋体36,36に収容された薬液5,6が混じり合い、発光を開始する。
【0059】
従って、洞状の施設内などの光量の乏しい無人施設内に設置されている対象物4が異常高温に晒されたときは、その事実が発光現象によって表示される。なお、その後、対象物4の温度が設定以下に低下したとしても、薬液5,6は混じり合ったままなので、発光は継続され、設定温度超過の事実は、不可逆的に表示され続ける。
【実施例9】
【0060】
図23はこの発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例9の縦断面図、図24はその平面図である。
【0061】
図中1は、矩形薄板状をなした基板であり、実施例1の場合と同様、合成樹脂等を素材として、液体が浸み出さない水密性を有している。そして、この基板1の表面側には、一方側に膨出した透明な合成樹脂フィルム製の箱形成形体2が被せられており、基板1上に密閉空間を形成している。
【0062】
又、この箱形成形体2内には、シュウ酸ジフェニルと過酸化水素の様に、混合すると発光する一対の薬液5,6の一方が収容されている共に、任意の設定温度で溶解する石油系ワックス製のマイクロカプセル37が収容されている。そして、このマイクロカプセル37内には、薬液5,6のもう一方が収容されている。
【0063】
この実施例9は、上記の通りの構成を有するものであり、図25に示す様に、異常温度を感知しようとする対象物4の表面に適宜手段によって固定して使用に供するものであり、対象物4が予め設定された温度を超過すると、マイクロカプセル37を構成しているワックスが溶解して一対の薬液5,6が混じり合い、発光を開始する。
【0064】
従って、洞状の施設内などの光量の乏しい無人施設内に設置されている対象物4が異常高温に晒されたときは、その事実が発光現象によって表示される。なお、その後、対象物4の温度が設定以下に低下したとしても、薬液5,6は混じり合ったままなので、発光は継続され、設定温度超過の事実は、不可逆的に表示され続ける。
【実施例10】
【0065】
図26はこの発明に係る暗所用異常高温警告具の実施例10の縦断面図、図27はその平面図である。
【0066】
図中1は、矩形薄板状をなした基板であり、実施例1の場合と同様、合成樹脂等を素材として、液体が浸み出さない水密性を有している。そして、この基板1の表面側には、一方側に膨出した透明な合成樹脂フィルム製の箱形成形体2が被せられており、基板1上に密閉空間を形成している。
【0067】
そして、この箱形成形体2内には、任意の設定温度で溶融する石油系ワックス製のマイクロカプセル38,39が収容されており、これらマイクロカプセル38,39内にはシュウ酸ジフェニルと過酸化水素の様に、混合すると、発光する一対の薬液5,6のどちらかが封入されている。
【0068】
この実施例10は、上記の通りの構成を有するものであり、図28に示す様に、異常温度を感知しようとする対象物4の表面に適宜手段によって固定して使用に供するものであり、対象物4が予め設定された温度を超過すると、マイクロカプセル38,39を構成しているワックスが溶解して一対の薬液5,6が混じり合い、発光を開始する。
【0069】
従って、洞状の施設内などの光量の乏しい無人施設内に設置されている対象物4が異常高温に晒されたときは、その事実が発光現象によって表示される。なお、その後、対象物4の温度が設定以下に低下したとしても、薬液5,6は混じり合ったままなので、発光は継続され、設定温度超過の事実は、不可逆的に表示され続ける。
【産業上の利用可能性】
【0070】
温度管理を必要とするあらゆる産業分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1.基板
2.箱形成形体
3.隔壁
4.対象物
5.薬液
6.薬液
7.基板
9.蓄光層
10.ワックス層
11.透明フィルム
12.仕切板
13.透孔
14.石油系ワックス
15.彩色面
16.蓄光層
17.プラスチック板
18.くびれ部
19.袋体
20.開口部
21.袋体
22.開口部
23.開閉弁
24.流路
25.可動栓
26.ピストン
27.ワックスサーモエレメント
28.ケミカルライトスティック
29.筒体
30.ガラス製アンプル
31.固定部材
32.底板
33.周壁部
34.口金
35.流路
36.袋体
37.マイクロカプセル
38.マイクロカプセル
39.マイクロカプセル
41.低熔融ハンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、中央部分が一方側に膨出した透明な合成樹脂フィルム製の成形体を被せて、基板上に密閉空間を形成し、該密閉空間内を任意の設定温度で溶解する石油系ワックスからなる隔壁によって2室に区画し、混合されることによって発光する一対の薬液を、それぞれ各室に封入したことを特徴とする暗所用異常高温警告具。
【請求項2】
基板上に、中央部分が一方側に膨出した透明な合成樹脂フィルム製の成形体を被せて、基板上に密閉空間を形成し、該密閉空間内を透明な合成樹脂製の隔壁によって2室に区画すると共に、この隔壁に透孔を設け、この透孔を任意の設定温度で溶解する石油系ワックスによって封止し、混合されることによって発光する一対の薬液を、それぞれ各室に封入したことを特徴とする暗所用異常高温警告具。
【請求項3】
基板上に、中央部分が一方側に膨出した透明合成樹脂フォルム製の成形体を被せて、基板上に密閉空間を形成し、該密閉空間内に、混合されることにより発光する一対の薬液の一方を収容すると共に、任意の設定温度で溶解する石油系ワックスによって開口部が封止され、内部にもう一方の薬液が収容されている袋体を前記密閉空間内に収容したことを特徴とする暗所用異常高温警告具。
【請求項4】
基板上に蓄光材からなる蓄光層を形成し、更に、この蓄光層の上面に、任意の設定温度で溶解する粉末状の石油系ワックスと粘ちょう剤とからなるワックス層を重畳し、これら蓄光層とワックス層とを覆う様に、その上から透明フィルムを被せたことを特徴とする暗所用異常高温警告具。
【請求項5】
基板上に、所望の色彩が施された彩色面を形成し、この彩色面の上面に蓄光材からなる帯状の蓄光層を間隔をあけて複数条形成し、その上に透明合成樹脂板を重ね、更にその上に、任意の設定温度で溶解する粉末状の石油系ワックスと粘ちょう剤とからなるワックス層を形成し、これら全体を透孔フィルムで被ったことを特徴とする暗所用異常高温警告具。
【請求項6】
直列状に配置された一対の流路と、該流路内に位置し、該流路の開閉を行う可動栓とからなる開閉弁の前記可動栓に、ワックスの膨張/収縮作用によってピストンが伸縮するワックスサーモエレメントのピストンを連結して、任意の設定温度でピストンが伸長して可動栓を移動させ、流路を開ける様にすると共に、一対の流路に、それぞれ透明合成樹脂製の袋体の開口部を取付け、該一対の袋体内部に混合することによって発光する一対の薬液をぞれぞれ封入したことを特徴とする暗所用異常高温警告具。
【請求項7】
混合されることによって発光する一対の薬液の一方を収容したガラス製アンプルを、もう一方の薬液と共に透明合成樹脂製筒体内に収容せしめたケミカルライトスティックの側面中央部に、ワックスの膨張/収縮作用によってピストンが伸長/後退するワックスサーモエレメントのピストン先端を、ケミカルライトスティックの軸芯に対してほぼ直角方向から当接あるいは接近させて位置せしめ、設定温度超過の際にピストンが伸長してケミカルライトスティック中央部を折り、アンプルを割って一対の薬液を混合せしめる様にしたことを特徴とする暗所用異常高温警告具。
【請求項8】
筒状をなし、軸芯に沿って流路が形成され、該流路の一端が、任意の設定温度で熔融する低熔融ハンダによって封止された口金の、それぞれ流路出口に、一対の透明合成樹脂製袋体を、それぞれの開口部が突き合わせ状態になる様に接続し、これら袋体内に、混合することにより発光する一対の薬液をそれぞれ収容したことを特徴とする暗所用異常高温警告具。
【請求項9】
基板上に、中央部分が一方側に膨出した透明な合成樹脂フィルム製の成形体を被せて、基板上に密閉空間を形成し、該密閉空間内に、混合されることにより発光する一対の薬液の一方を収容すると共に、任意の設定温度で溶解する石油系ワックス製のマイクロカプセル内にもう一方の薬液を収容し、該マイクロカプセルを前記密閉空間内に収容したことを特徴とする暗所用異常高温警告具。
【請求項10】
基板上に、中央部分が一方側に膨張した透明な合成樹脂フィルム製の成形体を被せて、基板上に密閉空間を成形すると共に、混合されることにより発光する一対の薬液を任意の設定温度で溶解する石油系ワックス製のマイクロカプセルにそれぞれ別々に収容し、これらマイクロカプセルを前記密閉空間内に封入したことを特徴とする暗所用異常高温警告具。
【請求項11】
一対の薬液がシウ酸ジフェニルと過酸化水素であることを特徴とする請求項1,2,3,6,7,8,9,10記載の暗所用異常高温警告具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−214875(P2011−214875A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80863(P2010−80863)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(591139781)アセイ工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】