説明

曇り止め処理剤

【課題】濡れ性およびレベリング性を有し、曇り止めのバラツキ防止、透明性、維持性に優れたガラス、鏡等の曇り止め処理剤を提供する。
【解決手段】ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物を含有する曇り止め処理剤。前記ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物は、水溶性を有する液状、ペースト状およびフレーク状のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物から選ばれる一種または2種以上であるのが好ましい。さらに、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、乳酸、ポリカルボン酸およびそのアルカリ金属塩から選ばれる一種または2種以上の化合物を含有するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曇り止め処理剤に関し、例えば住宅、自動車、電車の窓ガラスやバックミラー、浴場の鏡、その他のガラス、鏡、メガネ等の曇り止め処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
窓ガラス、鏡等の曇りは雨滴または水蒸気が凝結して水滴が付着することにより発生する。特に、油煙や油滴、汚れの付着したガラス表面に水滴が付着すると曇りが生じやすい。
【0003】
ガラス表面、鏡面が撥水性を生じている場合、水滴になりやすく、容易に曇りの原因となり、視界が阻害され、自動車、電車などの場合には安全上大きな問題があった。
従来から曇り止め処理剤については多くの研究なされ、また製品が市販されているが、市販品の曇り止め処理剤はアニオン系界面活性剤を用いたものが多い。例えば、スルホン酸ナトリウム基を有するアニオン系界面活性剤を用いた防曇性組成物(特許文献1参照)、炭素数6〜24の不飽和脂肪酸とアミンの反応生成物(特許文献2参照)等がある。これらは水の表面張力を低下させることにより曇り止め効果を得るものと思われる。
【特許文献1】特開2004−026956号公報
【特許文献2】特開2001−048589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の市販品の曇り止め処理剤について一般的に云えることは、塗布対象表面状態の如何により、濡れ性および特にレベリング性が悪く、それが曇り止め効果にバラツキの大きい原因になっていた。しかも効果の維持性においても実用化に問題があった。
【0005】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、濡れ性および好レベリング性を有し、曇り止めのバラツキ防止、透明性、維持性に優れたガラス、鏡等の曇り止め処理剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するため、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物を含有することを特徴とする曇り止め処理剤からなる。
前記ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物は、水溶性を有する液状、ペースト状およびフレーク状のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物から選ばれる一種または2種以上であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、濡れ性およびレベリング性を有し、曇り止めのバラツキ防止、透明性、維持性に優れたガラス、鏡等の曇り止め処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る曇り止め処理剤は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物を含有することを特徴とする。
【0009】
前記ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物は、非イオン系界面活性剤であり、水溶性を有する液状、ペースト状およびフレーク状のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物から選ばれる一種または2種以上を用いるのが好ましい。
【0010】
本発明に用いられるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物は、下記の構造式(1)で表される構造を有する。その構造式の中間にあるポリオキシプロピレン単位(CO)は分子量900以上が好ましい。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、x、y、zは重合度を示し、xは3以上、yは6以上、zは4以上の整数を示す。)
上記の重合度を示すx、y、zは、数値が大きくなるに従い分子量が大きくなり、順に液状、ペースト状およびフレーク状になる。下記の表1に液状を示す縮合物の一例を示す。
【0013】
【表1】

【0014】
縮合物は全て水溶性であり、フレーク状の分子量は15,000以上である。
本発明において、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物は、水溶性を有する液状のものと、高分子量のフレーク状のものを、重量比で液状:フレーク状=2〜8:8〜2の割合いで用いるのが好ましい。
【0015】
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物の市販品としては、アデカプルロニックF系が挙げられる。
本発明の曇り止め処理剤に含有されるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物の含有量は、処理剤全体に対して0.1〜25.5重量%、好ましくは1.5〜8.0重量%の範囲が望ましい。0.1重量%未満では曇り止め効果が得られず、25.5重量%より多いとレベリングに支障があるので望ましくない。
【0016】
また、本発明の曇り止め処理剤には、耐寒性、濡れ性、レベリング性を向上させるために、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、乳酸、ポリカルボン酸およびそのアルカリ金属塩から選ばれる一種または2種以上の化合物を、処理剤全体に対して0.5〜25重量%、好ましくは1.5〜15重量%の範囲で含有するのが望ましい。
【0017】
さらに、本発明の曇り止め処理剤にレベリング性向上のために、エチレンジアミンのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーを7重量%以下含有させることができる。エチレンジアミンのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーは、(R)N−C−N(R)(Rは、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックを示す。)で表され、曇点は18〜68℃であるが、本発明には曇点は20℃のものを用いるのが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の曇り止め処理剤には、接着力、耐久性を向上させるために、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ハイドロキシエチルセルロースから選ばれる水溶性繊維素、アクリル酸エステル共重合エマルジョン、アクリル酸エステル−2−エチルヘキシルアクリレート−スチレン共重合エマルジョンから選ばれる一種または2種以上を、処理剤全体に対して0.2〜25重量%の範囲で含有するのが望ましい。特に、水溶性繊維素は0.2〜15重量%、共重合エマルジョンは0.3〜20重量%の範囲が好ましい。
【0019】
さらに、本発明の曇り止め処理剤には、溶剤としてアルコールを、処理剤全体に対して0.3〜15重量%の範囲で含有するのが望ましい。
本発明の曇り止め処理剤は水系の溶液からなり、水を含有する。水の含有量は、処理剤全体に対して80〜97重量%の範囲で含有するのが望ましい。
【0020】
さらに、本発明の曇り止め処理剤には、防腐剤として安息香酸ナトリウムを処理剤全体に対して0.2〜3.0重量%の範囲で含有するのが好ましい。
【0021】
本発明の曇り止め処理剤は、ガラス、鏡等の曇り止めに用いることができる。その応用対象として、例えば自動車、電車等の車輌、住宅、家庭内部のガラス、特に窓ガラスやバックミラー、浴室、洗面場の鏡、その他のガラス、鏡、メガネ等に生じる曇り止めに用いることができる。
【0022】
本発明の曇り止め処理剤の実施施工には、スプレー、刷毛、スポンジ、布、ティツシュペーパー等が使用でき、極めて容易に施工することができる。特に、半乾きに近い時に布、ティツシュペーパー等で表面を均一にこすると、一層平滑化が実現し好ましい。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。
実施例1
下記の各成分を、室温(25℃)で均一に攪拌・混合して本実施例の曇り止め処理剤を得た。なお、下記のPOE−POP縮合物は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物を表す。
【0024】
POE−POP縮合物(液状:分子量2000) 0.9重量部
POE−POP縮合物(フレーク状:分子量15500) 2.1重量部
アルコール(99%エタノール) 2.0重量部
乳酸 0.2重量部
水 94.8重量部
比較試料として、アルカノールアミンとラウリル硫酸ナトリウムの混合物(アルカノールアミン4.0重量%、ラウリル硫酸ナトリウム3.0重量%)からなるアニオン系界面活性剤を用いて、下記の組成からなる曇り止め処理剤を得た。
【0025】
アルカノールアミンとラウリル硫酸ナトリウムの混合物 7.0重量部
アルコール(99%エタノール) 2.0重量部
水 91.0重量部
上記の曇り止め処理剤をガラス(凸面、直径100mm,厚さ1mm)および鏡(縦100mm,横100mm)に塗布し、室温(25℃)で7分間乾燥した。なお、比較試料はガラスにだけ塗布した。
【0026】
本実施例の曇り止め処理剤および比較試料の試験結果を表2に示す。
(1)曇り度
塗布乾燥終了の表面の状態を目視で観察した。
(2)無処理面(分)
塗布していないガラス、鏡の面が、冷凍条件(−10℃×10分間)−室温の繰り返し試験の2回目の状態の時点で、曇りが消滅する時間(分)を示す。
(3)繰り返し4回後の状態の曇り消滅後表面
塗布したガラス、鏡の面が、冷凍条件(−10℃×10分間)−室温の繰り返し試験の4回後の状態の時点で、曇りが消滅した後の表面状態を示す。
【0027】
【表2】

【0028】
(注)
◎:塗布面が透明である状態を示す。
○:塗布面がやや曇っている状態を示す。
△:塗布面が曇っている状態を示す。
【0029】
表2において、本実施例の曇り止め処理剤を塗布したガラス、鏡は、冷凍条件−10℃×10分間の4回繰り返しに当たり変化はなく、比較試料は1回目が終った時より薄い曇りが生じた。4回目終了時は一面に曇りが生じた。
【0030】
本実施例の曇り止め処理剤は塗布終了時の表面に全く曇りがなかったが、比較試料は塗布面の水滴が消えた後は表面から平滑性が失われ視界が妨げられた。
表中の無処理面(分)は、塗布していないガラス、鏡の面が、冷凍条件(−10℃×10分間)−室温の繰り返し試験の2回目の状態の時点で、曇りが消滅する時間(分)を示す。ガラス表面に本実施例の曇り止め処理剤を塗布したものと、比較試料を塗布したものの表面状態を調べると、本実施例は元のままで視界も良好であるが、比較試料は表面が波をうって乾燥していて視界も劣る。本実施例は試験後も透明性が優れているため改めて拭く必要がない。
【0031】
実施例2
浴室の鏡表面に実施例1の曇り止め処理剤を塗布し、浴室でシャワーを使用して試験した結果を示す。
【0032】
曇り止め処理剤を浴室の鏡表面(幅420mm,高さ720mm)に塗布し、室温(25℃)で7分間乾燥した。シャワー温度48℃、浴室温度23℃(試験開示時)の条件下で試験を行なった。
【0033】
表3にシャワー使用時の本実施例の曇り止め処理剤の塗布と無処理の鏡表面に対する曇り状態の試験結果を示す。
【0034】
【表3】

【0035】
(注1)
表中の実験回数4回は、4名連続でシャワーを使用した回数を表す。
(注2)
○:鏡表面が透明を示す。
△:鏡表面が半透明を示す。
●:鏡表面が不透明を示す。
【0036】
本発明のガラス、鏡等の曇り止め処理剤において、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物を使用するに当たり、−10℃の寒冷時とシャワー使用時の浴室においての温暖時とも優れた効果を示し、持続性においても優れた結果が得られた。
【0037】
実施例3
自動車のガラスに、実施例1の曇り止め処理剤を塗布して試験を行った。
自動車のフロントガラスおよび窓ガラスの内側に、実施例1の曇り止め処理剤を塗布した部分と、塗布しない部分を設けて、曇り状態を観察した。
【0038】
雨天の日(外気温度26℃)に、自動車に大人4名が乗車し、窓を閉めて、30分間走行した。曇り止め処理剤を塗布した部分は、走行中、曇りがなく透明で視界は良好であった。曇り止め処理剤を塗布しない部分は、走行開始直後から曇りが発生し、走行中曇って視界は悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の曇り止め処理剤は、濡れ性およびレベリング性を有し、曇り止めのバラツキ防止、透明性、維持性に優れているので、住宅、自動車、電車の窓ガラスやバックミラー、浴場の鏡、その他のガラス、鏡、メガネ等に生じる曇りを止めに利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物を含有することを特徴とする曇り止め処理剤。
【請求項2】
前記ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物は、水溶性を有する液状、ペースト状およびフレーク状のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物から選ばれる一種または2種以上である請求項1に記載の曇り止め処理剤。
【請求項3】
前記ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物は、下記の構造式(1)で表される構造を有する請求項1または2に記載の曇り止め処理剤。
【化1】

(式中、x、y、zは重合度を示し、xは3以上、yは6以上、zは4以上の整数を示す。)
【請求項4】
前記ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物の含有量は0.1〜25.5重量%である請求項1乃至3のいずれかの項に記載の曇り止め処理剤。
【請求項5】
さらに、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、乳酸、ポリカルボン酸およびそのアルカリ金属塩から選ばれる一種または2種以上の化合物を0.5〜25重量%含有する請求項1乃至4のいずれかの項に記載の曇り止め処理剤。
【請求項6】
さらに、エチレンジアミンのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーを7重量%以下含有する請求項1乃至5のいずれかの項に記載の曇り止め処理剤。
【請求項7】
さらに、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ハイドロキシエチルセルロースから選ばれる水溶性繊維素、アクリル酸エステル共重合エマルジョン、アクリル酸エステル−2−エチルヘキシルアクリレート−スチレン共重合エマルジョンから選ばれる一種または2種以上を含有する請求項1乃至6のいずれかの項に記載の曇り止め処理剤。