説明

曲線描画装置、曲線描画方法及び曲線描画プログラム

【課題】フレームバッファを用いることなく、簡易な構成により所望の曲線を描画する曲線描画装置、曲線描画方法、及び曲線描画プログラムを提供すること
【解決手段】パラメータ入力部20は、格子状に配列された複数のピクセルに含まれる複数のピクセルを、描画対象とするか否かを判定する基準ピクセルとして順に設定する。単一幅曲線描画部120は基準ピクセルの座標を第1の曲線方程式に代入して算出した基準ピクセル演算結果と、基準ピクセルの描画判定に用いるピクセルである参照ピクセルの座標を第1の曲線方程式に代入して算出した参照ピクセル演算結果と、のいずれか一方が0未満であり、かつ、他方が0以上である場合に基準ピクセルを描画対象と決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は曲線描画装置、曲線描画方法及び曲線描画プログラムに関し、特にフレームバッファを用いることなく曲線を描画する曲線描画装置、曲線描画方法及び曲線描画プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の表示画面は、有限の画素を持つ座標により構成される。当該有限の座標上に曲線を描画する場合、座標の補正を行う必要がある。
【0003】
近年、デジタルカメラ、駐車支援装置用カメラ等の機器の利用が普及している。当該機器に対して、画像処理速度の向上、回路規模の縮小化、回路設計上のモジュール構造化等の要求がある。このような要求下では、当該機器の表示画面上に図形又は曲線を描画する場合に、画像データを一次保存するフレームバッファを使用したくないことがある。
【0004】
例えば、画像表示装置に接続し、当該画像表示装置の出力に対して処理を行う画像処理装置を新たに追加したい要求があるとする。ここで追加する画像処理装置の仕様として、画像情報の入出力が可能なパイプライン構造を持つこと、書き込みまたは読み出しによるレイテンシ増加を回避するためにフレームバッファを使用しない等の制約がある場合がある。しかし、画像処理装置がフレームバッファを使用しない場合、当該画像処理装置は過去の演算結果を記憶できない。そのためフレームバッファを使用しない場合、過去の演算結果を必要としない曲線描画方法が必要となる。
【0005】
特許文献1には、フレームバッファを使用せずに適切な幅を持たせた曲線を描画する曲線描画装置に関する技術が開示されている。特許文献1に記載の曲線描画装置では、所望の描画曲線方程式に対して、水平方向及び垂直方向に任意の幅に幅付けを行った曲線を算出する。そして、幅付けを行った曲線の位置関係を利用することにより、幅を持たせた曲線を描画することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−338603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、電子機器においては、フレームバッファを使用せずに画像データを描画したい場合がある。また、特許文献1に記載の曲線描画装置では、常に幅付けを行うことを想定しているため、処理が複雑になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる曲線描画装置の一態様は、格子状に配列された複数のピクセルに含まれる複数のピクセルを、描画対象とするか否かを判定する基準ピクセルとして順に設定するパラメータ入力部と、前記基準ピクセルの座標を第1の曲線方程式に代入して算出した基準ピクセル演算結果と、前記基準ピクセルの描画判定に用いるピクセルである参照ピクセルの座標を前記第1の曲線方程式に代入して算出した参照ピクセル演算結果と、のいずれか一方が0未満であり、かつ、他方が0以上である場合に前記基準ピクセルを描画対象と決定する単一幅曲線描画部と、を備えるものである。
【0009】
本発明においては、曲線描画装置は基準ピクセルの座標を第1の曲線方程式に代入した演算結果と、参照ピクセルの座標を第1の曲線方程式に代入した演算結果と、を用いることにより各ピクセルを描画するか否かを判定する。座標を第1の曲線方程式に代入する処理は、フレームバッファ等に過去の計算履歴を記憶させる必要が無い。また、第1の曲線方程式により表わされる曲線は、各ピクセルの座標を第1の曲線方程式に代入して算出した演算結果を0以上と0未満に分ける境界である。そのため、曲線描画装置は当該境界を検出し、当該境界に沿って描画を行うことにより所望の曲線を描画することが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フレームバッファを用いることなく、簡易な構成により所望の曲線を描画する曲線描画装置、曲線描画方法、及び曲線描画プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1にかかる曲線描画装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかる曲線描画装置の動作概念を示す図である。
【図3】実施の形態1にかかる曲線描画装置が曲線の描画の際に参照する演算結果の概念を示す図である。
【図4】基準ピクセルと左右のピクセルのみにより基準ピクセルの描画判定を行う場合の動作概念を示す図である。
【図5】基準ピクセルと左右のピクセルのみにより基準ピクセルの描画判定を行う場合の動作概念を示す図である。
【図6】基準ピクセルと上下のピクセルのみにより基準ピクセルの描画判定を行う場合の動作概念を示す図である。
【図7】実施の形態2にかかる曲線描画装置の構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態2にかかる曲線描画装置の描画判定の概念を示す図である。
【図9】実施の形態2にかかる曲線描画装置の描画判定の概念を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる曲線描画装置の構成を示すブロック図である。曲線描画装置1は、描画部10と、パラメータ入力部20と、出力部30と、を備える。
【0013】
パラメータ入力部20は、描画したい曲線の数式、当該数式に用いる定数、描画判定を行う基準ピクセル等の情報を外部から取得及び保持し、入力信号40により描画部10に入力する処理部である。パラメータ入力部20は、格子状に配列された複数のピクセル中の各ピクセルを、描画判定を行う基準ピクセルとして順に描画部10に入力する。基準ピクセルは、描画するライン番号yと、水平方向位置xと、により描画領域内の位置が特定される。以下の説明において「基準ピクセルを描画する」とは、曲線を描くために定められた色、輝度等を当該基準ピクセルに設定することを指す。
【0014】
描画部10は、座標演算部110と、単一幅曲線描画部120と、を備える。単一幅曲線描画部120は、上方境界判定部121と、下方境界判定部122と、左方境界判定部123と、右方境界判定部124と、基準ピクセル判定部125と、描画判定部126と、を備える。
【0015】
座標演算部110は、パラメータ入力部20から入力された曲線式に対して基準ピクセルの座標を入力し、その演算結果を出力信号41として基準ピクセル判定部125に供給する。また、座標演算部110は、パラメータ入力部20から入力された曲線の数式、当該数式に用いる定数、描画判定を行う基準ピクセル、上述の演算結果等の情報を上方境界判定部121、下方境界判定部122、左方境界判定部123、及び右方境界判定部124に供給する。
【0016】
上方境界判定部121(第1境界判定部)は、基準ピクセルの上方に隣接するピクセルの座標を曲線式に対して入力して演算を行う。演算結果が0以上である場合、上方境界判定部121は、論理値0を出力信号42により描画判定部126に供給する。一方、演算結果が0未満である場合、上方境界判定部121は、論理値1を出力信号42により描画判定部126に供給する。
【0017】
下方境界判定部122(第2境界判定部)は、基準ピクセルの下方に隣接するピクセルの座標を曲線式に対して入力して演算を行う。演算結果が0以上である場合、下方境界判定部122は、論理値0を出力信号43により描画判定部126に供給する。一方、演算結果が0未満である場合、下方境界判定部122は、論理値1を出力信号43により描画判定部126に供給する。
【0018】
左方境界判定部123(第3境界判定部)は、基準ピクセルの左方に隣接するピクセルの座標を曲線式に対して入力して演算を行う。演算結果が0以上である場合、左方境界判定部123は、論理値0を出力信号44により描画判定部126に供給する。一方、演算結果が0未満である場合、左方境界判定部123は、論理値1を出力信号44により描画判定部126に供給する。
【0019】
右方境界判定部124(第4境界判定部)は、基準ピクセルの右方に隣接するピクセルの座標を曲線式に対して入力して演算を行う。演算結果が0以上である場合、右方境界判定部124は、論理値0を出力信号45により描画判定部126に供給する。一方、演算結果が0未満である場合、右方境界判定部124は、論理値1を出力信号45により描画判定部126に供給する。
【0020】
基準ピクセル判定部125は、座標演算部110から入力された演算結果が0以上であれば論理値0を出力信号46として描画判定部126に供給する。一方、座標演算部110から入力された演算結果が0未満の場合、基準ピクセル判定部125は論理値1を出力信号46により描画判定部126に供給する。
【0021】
描画判定部126は、出力信号42、43、44、45、及び46の入力に基づいて基準ピクセルを描画するか否かを判定する処理部である。当該判定の詳細については後述する。描画判定部126は当該描画を行うか否かを示す判定結果を出力信号47により出力部30に供給する。
【0022】
出力部30は、出力信号47に基づいて基準ピクセルの表示用の画像信号48を出力する。パラメータ入力部20は、基準ピクセルを表示画面の走査に合わせて順次変更する。これにより、曲線描画装置1は所望の曲線を描画することができる。
【0023】
次に、本実施の形態にかかる曲線描画装置1の動作概念について図2を用いて説明する。図2において、座標系は画面左上を原点とする。また、水平方向をx軸とし、右方向を正とする。また、垂直方向をy軸とし、下方向を正とする。ここでは、y軸については、数学分野で通常用いられる座標系と上下逆に定義している。以下の説明では、放物線(二次曲線)を描画することを想定する。
【0024】
放物線61は、描画を行いたい理想上の放物線(以下の説明では、原曲線とも記載する。)である。ピクセル66は、基準ピクセルである。ピクセル62は、基準ピクセル66の上方に隣接するピクセルである。ピクセル65は、基準ピクセルの右方に隣接するピクセルである。ピクセル63は、基準ピクセルの下方に隣接するピクセルである。ピクセル64は、基準ピクセルの左方に隣接するピクセルである。本実施の形態では、基準ピクセルの上下左右に位置するピクセル62、63、64、65が基準ピクセルを描画するか否かを判定するために用いる比較対象のピクセル(参照ピクセル)となる。なお、各ピクセルの座標とは、ピクセルの中心点の座標を指す。また、「ピクセルが隣り合う(隣接する)」とはあるピクセルの上下左右に辺を共通として接するピクセルが存在することを指す。
【0025】
曲線描画装置1は、基準ピクセルの座標と、原曲線との位置関係から当該基準ピクセルを描画するか否かを判定する。原曲線の式は以下のように示される。
x=ay+by+c --- (1)
また、式(1)を変形すると式(2)になる。
ay+by−x+c=0 --- (2)
この式(2)に対してあるピクセルの座標を代入して算出した演算結果がちょうど0になる場合、当該ピクセルは原曲線上に位置する。一方、あるピクセルの座標を代入して算出した演算結果が0にならない場合、当該ピクセルは原曲線から外れた位置に位置している。演算結果の符号により、当該ピクセルが原曲線からみてどちらに位置しているかが判定できる。
【0026】
ここで、隣り合うピクセルの座標の一方を式(2)に代入して算出した演算結果が正の数値であり、他方を式(2)に代入して算出した演算結果が負の数値である場合、この隣り合うピクセルの間に原曲線が通ることになる。図3を用いて詳細を説明する。
【0027】
図3には、原曲線71が描かれている。ピクセル72、73、74の座標を式(2)に代入して算出した演算結果は負となる。一方、ピクセル75、76、77、78、79、80の座標を式(2)に代入して算出した演算結果は正となる。ここで、ピクセル72の座標とピクセル75の座標とを結んだ線分を引いた場合に、この線分上に原曲線71の演算式(式(2))が0となる有理点が存在する。このように隣接するピクセル間に原曲線が通っている場合、これらのピクセル(例えばピクセル72とピクセル75)を原曲線の近傍のピクセルと呼ぶ。
【0028】
曲線描画装置1は、この原曲線の近傍のピクセルのうち、演算結果が0以上であるピクセルに対して描画を行う。
【0029】
なお、上述の説明では、原曲線の近傍のピクセルにかかる演算結果を比較したが、必ずしもこれに限られない。たとえば、ピクセル72とピクセル78は、隣接しないピクセルである。ここでピクセル72の座標とピクセル78の座標とを結んだ線分を引いた場合に、この線分上に原曲線71の演算式(式(2))が0となる有理点が存在する。そのため、曲線描画装置1は演算結果が正となるピクセル78に対して描画を行ってもよい。すなわち、基準ピクセルと参照ピクセルは、所定の距離(定数により表わすことができる距離)が離れていれば良く、必ずしも隣接する必要はない。また、参照ピクセルは、必ずしも基準ピクセルの上下左右の位置に存在する必要はなく、原点を中心とする四方に位置すればよい。たとえばピクセル72と、ピクセル72から斜めの位置にあるピクセル80と、の演算結果を比較することも可能である。ただし、隣接するピクセルにかかる演算結果を比較しない場合、線の太さ等に影響が出ることを考慮すべきである。
【0030】
図1を用いて曲線描画装置1の動作の詳細を説明する。座標演算部110は、原曲線を示す曲線の方程式(2)に対して基準ピクセル66の座標(x,y)を代入した演算結果(3)を算出する。
ay+by−x+c --- (3)
【0031】
座標演算部110は、上方境界判定部121、下方境界判定部122、左方境界判定部123、右方境界判定部124、及び基準ピクセル境界判定部125に対して演算結果(3)及びこれらの処理部が必要とする演算結果を出力信号41として出力する。具体的には、座標演算部110は演算結果(3)、2ay+bの演算結果、及び定数aを出力信号41として出力する。2ay+bの演算結果は、上方境界判定部121による演算等に用いられる。2ayは、ayの演算結果をビットシフトすることにより算出可能である。なお、出力信号41の構成は、所望の曲線の曲線方程式により差異がある。
【0032】
上方境界判定部121は、原曲線とピクセル62との位置関係を判定するために、ピクセル62の座標(x,(y−1))を式(2)に代入する。そして、上方境界判定部121は演算結果(4)を算出する。
a(y−1)+b(y−1)−x+c --- (4)
【0033】
上方境界判定部121は、演算結果(4)が0以上であれば論理値0を出力信号42により描画判定部126に供給する。一方、演算結果(4)が0未満である場合、上方境界判定部121は論理値1を出力信号42により描画判定部126に供給する。
【0034】
下方境界判定部122は、原曲線とピクセル63との位置関係を判定するために、ピクセル63の座標(x,(y+1))を式(2)に代入する。そして、下方境界判定部122は演算結果(5)を算出する。
a(y+1)+b(y+1)−x+c --- (5)
【0035】
下方境界判定部122は、演算結果(5)が0以上であれば論理値0を出力信号43により描画判定部126に供給する。一方、演算結果(5)が0未満である場合、下方境界判定部122は論理値1を出力信号43により描画判定部126に供給する。
【0036】
左方境界判定部123は、原曲線とピクセル64との位置関係を判定するために、ピクセル64の座標((x−1),y)を式(2)に代入する。そして、左方境界判定部123は演算結果(6)を算出する。
ay+by−(x−1)+c --- (6)
【0037】
左方境界判定部123は、演算結果(6)が0以上であれば論理値0を出力信号44により描画判定部126に供給する。一方、演算結果(6)が0未満である場合、左方境界判定部123は論理値1を出力信号44により描画判定部126に供給する。
【0038】
右方境界判定部124は、原曲線とピクセル65との位置関係を判定するために、ピクセル65の座標((x+1),y)を式(2)に代入する。そして、右方境界判定部124は演算結果(7)を算出する。
ay+by−(x+1)+c --- (7)
【0039】
右方境界判定部124は、演算結果(7)が0以上であれば論理値0を出力信号45により描画判定部126に供給する。一方、演算結果(7)が0未満である場合、右方境界判定部124は論理値1を出力信号45により描画判定部126に供給する。
【0040】
基準ピクセル判定部125は、座標演算部110が算出した演算結果(3)を論理値に変換した値を出力信号46により描画判定部126に供給する。演算結果(3)が0以上である場合、基準ピクセル判定部125は論理値0を出力信号46により描画判定部126に供給する。一方、演算結果(3)が0未満である場合、基準ピクセル判定部125は論理値1を出力信号46により描画判定部126に供給する。
【0041】
描画判定部126は信号42、43、44、45、46の値から基準ピクセルを描画するか否かの判定を行う。具体的には、描画判定部126は、以下の2つの条件を同時に満たす場合に基準ピクセルの描画判定を行う。
【0042】
(条件1)
信号42、43、44、45において少なくとも1つの論理値が1である。すなわち、上述の演算結果(4)、(5)、(6)、(7)の少なくとも1つが0未満である。
(条件2)
信号46の論理値が0である。すなわち、上述の演算結果(3)が0以上である。
【0043】
なお、描画判定部126は上述の2つの条件を常に判定する必要はなく、簡略化して判定することができる。たとえば、信号46の論理値が1であると判定した場合、描画判定部126は条件1の判定を省略できる。
【0044】
続いて、曲線描画装置1が4つの隣接ピクセルにかかる演算結果を算出している理由について説明する。以下の説明では説明の簡略化のため、全てのピクセルについて「曲線方程式に代入した演算結果が0以上であるピクセルは、曲線の外側のグループに属する。」、「曲線方程式に代入した演算結果が0未満であるピクセルは、曲線の内側のグループに属する。」と定義する。また以下の説明では、各ピクセルが「曲線外」または「曲線内」に位置すると表現する。なお、曲線式のパラメータの値によって、図面から受ける印象による「曲線外」及び「曲線内」の判定と、上述の判定とが異なる場合がある。
【0045】
まず、本実施の形態にかかる曲線描画装置1の構成と異なり、基準ピクセルと左右のピクセルのみにより基準ピクセルの描画判定を行う場合の動作について図4を用いて説明する。この場合、上述の(条件1)が以下の(条件3)ように簡略化される。
【0046】
(条件3)
信号44、45において少なくとも論理値が1である。すなわち、上述の演算結果(6)、(7)の少なくとも1つが0未満である。
【0047】
図4において、曲線201は原曲線である。直線203はy=12を示す直線である。交点204は、曲線201と直線203との交点である。本例では、交点204の座標は(5.6,12)である。交点204は原曲線上の点であるため、以下の式(8)が成り立つ。
a*(12*12)+b*12−5.6+c=0 --- (8)
【0048】
ピクセル215及び216は、交点204の付近に位置するピクセルである。ピクセル215の座標は(5,12)であり、ピクセル216の座標は(6,12)である。ピクセル215が原曲線のどちら側(曲線外か、曲線内か)を判定するために、ピクセル215の座標を曲線の方程式に代入する。当該代入した式は、式(8)のxの値が5.6から5に変更されたものと同じである。そのため、ピクセル215の座標を曲線の方程式に代入した式は、式(8)の両辺から−0.6を減算した式(9)となる。
a*(12*12)+b*12−5+c=0.6 --- (9)
【0049】
上述の式(9)は0以上となる。そのため、ピクセル215は原曲線の外側に位置することが分かる。
【0050】
次にピクセル216が原曲線のどちら側(曲線外か、曲線内か)を判定するために、ピクセル216の座標を曲線の方程式に代入する。当該代入した式は、式(8)のxの値が5.6から6に変更されたものと同じである。そのため、ピクセル216の座標を曲線の方程式に代入した式は、式(8)の両辺から0.4を減算した式(10)となる。
a*(12*12)+b*12−6+c=−0.4 --- (10)
【0051】
上述の式(10)は0未満となる。そのため、ピクセル216は原曲線の内側に位置することが分かる。
【0052】
基準ピクセルがピクセル215である場合、ピクセル215は条件2を満たす。また、ピクセル216は条件3を満たす。そのため、曲線描画装置1はピクセル215とピクセル216の間に原曲線が通っていると判断し、ピクセル215を描画する。同様の描画判断及び描画処理を全てのピクセルに対して行う。
【0053】
しかしながら、原曲線がピクセルを縦方向に横断しない場合、基準ピクセル及び左右のピクセルによる描画判断では、曲線が途切れてしまうという問題が生じる。当該問題について図5を用いて説明する。
【0054】
図5において、曲線202は原曲線である。ピクセル232、233、234、241、242は原曲線の外側に位置するピクセルである。ピクセル243及びピクセル253は原曲線の内側に位置するピクセルである。
【0055】
ここで、基準ピクセルをピクセル233とする。ピクセル233の座標を式(2)に代入した演算結果は、0以上である。すなわち、ピクセル233は原曲線202の外側に位置する。基準ピクセルの左隣りにあるピクセル232の座標を式(2)に代入した演算結果は、0以上である。よって、ピクセル232は原曲線202の外側に位置する。同様に基準ピクセルの右隣りにあるピクセル234の座標を式(2)に代入した演算結果は、0以上である。よって、ピクセル234は原曲線202の外側に位置する。
【0056】
上述のピクセル232、234にかかる演算結果は条件3を満たさない。よって、描画判定部126は基準ピクセルであるピクセル233を描画しないものとして判定する。
【0057】
次に基準ピクセルをピクセル242とする。ピクセル242の座標を式(2)に代入した演算結果は、0以上である。すなわち、ピクセル242は原曲線202の外側に位置する。基準ピクセルの左隣にあるピクセル241の座標を式(2)に代入した演算結果は、0以上である。よって、ピクセル241は原曲線202の外側に位置する。基準ピクセルの右隣にあるピクセル243の座標を式(2)に代入した演算結果は0未満である。よって、ピクセル243は原曲線202の内側に位置する。
【0058】
以上より、基準ピクセルをピクセル242とした場合、条件2及び条件3が同時に満たされる。よって、描画判定部126は、ピクセル242とピクセル243との間に原曲線202が通っていると判断し、ピクセル242を描画対象とする。
【0059】
次に基準ピクセルをピクセル243とする。ピクセル243の座標を式(2)に代入した演算結果は、0未満である。すなわち、ピクセル243は原曲線202の内側に位置する。これにより、基準ピクセルをピクセル243とした場合、条件2を満たさない。よって、描画判定部126はピクセル243を描画対象外とする。
【0060】
次に基準ピクセルをピクセル253とする。ピクセル253の座標を式(2)に代入した演算結果は、0未満である。すなわち、ピクセル253は原曲線202の内側に位置する。これにより、基準ピクセルをピクセル253とした場合、条件2を満たさない。よって、描画判定部126はピクセル253を描画対象外とする。
【0061】
以上より、原曲線202が存在するにもかかわらず、描画判定部126は、ピクセル242の右隣りまたは右斜め方向に位置するピクセル233、243、253を描画対象外とする。よって、条件3を採用した曲線描画装置は、ピクセル242から先の線が途切れた曲線を描画してしまう。
【0062】
次に、基準ピクセルの上下のピクセルのみを比較対象とする場合の描画判定について説明する。図6は、図5に示した原曲線を用いた曲線の描画において、基準ピクセルの上下のピクセルのみを比較対象とする判定処理を説明するための図である。
【0063】
図6において、曲線202は原曲線である。ピクセル223、224、233、234は原曲線の外側に位置するピクセルである。ピクセル243及びピクセル244は原曲線の内側に位置するピクセルである。以下の説明では基準ピクセルの上下のピクセルのみを比較対象とするため、上述の(条件1)が以下の(条件4)ように簡略化されて表わされる。
【0064】
(条件4)
信号42、43において少なくとも論理値が1である。すなわち、上述の演算結果(4)、(5)の少なくとも1つが0未満である。
【0065】
ここで、基準ピクセルをピクセル233とする。ピクセル233の座標を式(2)に代入した演算結果は、0以上である。すなわち、ピクセル233は原曲線202の外側に位置する。基準ピクセルの上隣りにあるピクセル223の座標を式(2)に代入した演算結果は、0以上である。すなわち、ピクセル223は原曲線202の外側に位置する。基準ピクセルの下隣りにあるピクセル243の座標を式(2)に代入した演算結果は、0未満である。すなわち、ピクセル223は原曲線202の内側に位置する。
【0066】
以上より、基準ピクセルをピクセル233とした場合、条件2及び条件4が同時に満たされる。よって、描画判定部126は、ピクセル233とピクセル243との間に原曲線202が通っていると判断し、ピクセル233を描画対象とする。
【0067】
次に基準ピクセルをピクセル234とする。ピクセル234の座標を式(2)に代入した演算結果は、0以上である。すなわち、ピクセル234は原曲線202の外側に位置する。基準ピクセルの下隣りにあるピクセル244の座標を式(2)に代入した演算結果は、0未満である。すなわち、ピクセル244は原曲線202の内側に位置する。
【0068】
以上より、基準ピクセルをピクセル234とした場合、条件2及び条件4が同時に満たされる。よって、描画判定部126は、ピクセル234とピクセル244との間に原曲線202が通っていると判断し、ピクセル234を描画対象とする。
【0069】
上記の描画判定を全てのピクセルに対して行うことにより、原曲線がほぼ水平をなす曲線であっても、曲線描画装置は上下のピクセルを判定対象として用いることにより途切れない曲線を描くことができる。同様に、原曲線がほぼ垂直をなす曲線であっても、曲線描画装置は左右のピクセルを判定対象として用いることにより途切れない曲線を描くことができる。
【0070】
図1に示した曲線描画装置は、左右方向と上下方向に位置する参照ピクセルを用いたことにより、原曲線が水平または垂直に近い曲線であっても途切れない曲線を描くことができる。
【0071】
続いて、本実施の形態にかかる曲線描画装置の効果について説明する。上述のように原曲線上の座標を曲線方程式(第1の曲線方程式)に代入する場合、演算結果は0になる。上述の曲線描画装置は、この性質を用いて基準ピクセルの演算結果(基準ピクセル演算結果)と、参照ピクセルの演算結果(参照ピクセル演算結果)と、を用いて描画判定を行っている。この基準ピクセル演算結果及び参照ピクセル演算結果は、フレームバッファを利用しなくても逐次算出することが可能である。これにより、本実施の形態にかかる曲線描画装置はフレームバッファを用いることなく曲線を描画することができる。
【0072】
また、上述の曲線描画装置の構成により乗算器の数を減らすことができ、これにより演算回路の規模を小さくすることができる。当該効果について以下に説明する。なお以下の説明では、特許文献1の第二の実施形態に記載の曲線描画装置を演算回路規模の比較対象とする。
【0073】
特許文献1の第二の実施形態に記載の曲線描画装置では、特許文献1に記載のように以下の4つの計算式を用いる。なお、特許文献1に記載の曲線描画装置では、線に任意の太さを持たせる幅付け処理を行う。下記の式においてwは、幅付けを行うための変数である。
【0074】
a(y−w)+b(y−w)+c−x=0 --- (11)
a(y+w)+b(y+w)+c−x=0 --- (12)
ay+by+c−x+w=0 --- (13)
ay+by+c−x−w=0 --- (14)
【0075】
上述の式(11)、(12)、(13)、(14)を展開して整理すると以下の式(15)、(16)、(17)、(18)となる。
【0076】
(11)式の変形
ay+by+c−x−2awy+aw−bw --- (15)
(12)式の変形
ay+by+c−x+2awy+aw+bw --- (16)
(13)式の変形
+by+c−x+w --- (17)
(14)式の変形
ay+by+c−x−w --- (18)
【0077】
これらの式(15)、(16)、(17)、(18)において、項ay+by+c−xは共通である。よって、ay=(a*y)*y、by=b*y、awy=(ay)*wという4回の乗算を要するため、当該曲線描画装置は4個の乗算器を備える。なお、1フレームあたりに1度しか演算しないaw及びbwは定数であるものとみなして回路量の見積もり対象から除外している。
【0078】
本実施の形態にかかる曲線描画装置は上述の式(3)、(4)、(5)、(6)、(7)を用いて基準ピクセルの描画判定を行う。これらの式(4)、(5)、(6)、(7)を整理すると以下のようになる。
【0079】
(4)式の変形
ay+by−x+c−2ay+a−b --- (19)
(5)式の変形
ay+by−x+c+2ay+a+b --- (20)
(6)式の変形
ay+by−x+c−1 --- (21)
(7)式の変形
ay+by−x+c+1 --- (22)
【0080】
ここで、式(19)、(20)、(21)、(22)に共通な項であるay+by−x+cは、式(3)と共通の演算である。そのため、座標演算部110の演算結果を流用することができる。また、式(19)及び(20)の共通項2ayは、式(3)のay((a*y)*y)を算出する際に求められる(a*y)を二倍することにより得られる。ここで、整数系の演算において、2倍の演算は元のビット列を左に1ビットだけシフトすれば良い。そのため、当該ビットシフトを行う回路は乗算器よりも回路規模が小さい。
【0081】
よって本実施の形態にかかる曲線描画装置では、((a*y)*y)及びb*yの計3回の乗算を要し、これにより3個の乗算器を用いることにより放物線を描画することができる。すなわち、特許文献1に記載の曲線描画装置と比べて乗算器が一つ削減することが可能になる。乗算器を削減できることにより、回路規模を縮小することができる。
【0082】
本実施の形態にかかる曲線描画装置の構成では、放物線に限らず他の曲線を描画する場合にも乗算器の個数を削減することができる。本実施の形態にかかる曲線描画装置では、基準ピクセルから所定距離(定数により示される距離)だけ離れたピクセル(図2の例では隣接するピクセル)を用いて描画判定を行っている。よって、曲線方程式内に累乗計算を含む場合であっても、特許文献1に記載の曲線描画装置が用いている変数w等にかかる乗算処理が生じない。この乗算処理が生じないことにより、本実施の形態にかかる曲線描画装置では乗算器の個数を少なくできる。
【0083】
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2にかかる曲線描画装置は、任意の線幅を持つ曲線を描画できることを特徴とする。本実施の形態にかかる曲線描画装置について実施の形態1にかかる曲線描画装置と異なる部分を説明する。
【0084】
本実施の形態にかかる曲線描画装置の構成を図7に示す。曲線描画装置1は、実施の形態1にかかる曲線描画装置1の構成に加えて線幅入力部21を備える。また、描画部10は幅付け描画判定部130と、統合部140と、を備える。なお、本実施の形態においては、描画判定部126は描画判定結果を統合部140に供給する。
【0085】
線幅入力部21は、描画する曲線の持つ線幅を入力する処理部である。当該線幅は、任意に設定可能である。線幅入力部21は線幅を示す出力信号48を幅付け描画判定部130に供給する。
【0086】
幅付け描画判定部130は、線幅を指示する信号48に基づいて基準ピクセルを描画するか否かを判定する処理部である。当該判定の詳細については後述する。幅付け描画判定部130は、当該判定結果を出力信号49として統合部140に供給する。
【0087】
統合部140は、供給された出力信号47及び49に基づいて各ピクセルを描画対象とするかを判定する処理部である。統合部140は、出力信号47、49の論理和を判定結果とする。すなわち、描画判定部126または幅付け描画判定部130のいずれかが描画判定対象の基準ピクセルを描画対象と判定した場合に描画用の出力信号50を出力部30に出力する。
【0088】
続いて、図8を用いて幅付け描画判定部130の処理の詳細を説明する。図8には、原曲線81が示されている。この原曲線81を示す曲線方程式(23)は以下のようになる。
ay+by−x+c=0 --- (23)
【0089】
この式(23)に対して、例えばあるピクセルの座標(x,y)を左辺に代入すると以下の演算結果(24)になる。
ay+by−x+c --- (24)
【0090】
ここで、幅付け描画判定部130は原曲線81に対して左右に幅wを持つ曲線を描くために、原曲線81をwだけ水平方向に移動した以下の式(25)、(26)を定義する。
ay+by−x+c+w --- (25)
ay+by−x+c−w --- (26)
【0091】
上述の演算結果(24)が0である場合、当該ピクセル(x,y)は原曲線81上に存在する。上述の式(25)の演算結果が0となる座標を結ぶ曲線は、原曲線81から幅wだけ平行移動した曲線である。同様に、上述の式(26)の演算結果が0となる座標を結ぶ曲線は、原曲線81から−wだけ平行移動した曲線である。そのため、あるピクセルの式(25)の演算結果が0以上であり式(26)の演算結果が0未満である場合、当該ピクセルは原曲線81からの距離がw以内であるという性質を持つ。幅付け描画判定部130は、この性質を利用し、下記の条件5を用いて各ピクセルの描画判定を行う。幅付け描画判定部130は、条件5を満たすピクセルを描画対象と判定する。
【0092】
(条件5)
式(25)の演算結果が0以上であり、式(26)の演算結果が0未満である。
【0093】
図8を参照して、線幅が4である場合(w=2)の幅付け描画判定部130の処理について説明する。なお、以下の説明では原曲線81の近傍のピクセルであり、演算結果(24)が0以上であるピクセルを原曲線近傍正ピクセルと呼ぶ。まず、幅付け描画判定部130による原曲線近傍正ピクセルであるピクセル84の描画判定について説明する。
【0094】
ピクセル84の座標を(x,y)とした場合、ピクセル84は原曲線81の曲線外に位置している。そのため、座標(x,y)を上述の式(23)の左辺に代入した場合、以下の演算結果(27)は0以上となる。
ay+by−x+c --- (27)
【0095】
よって、式(25)にピクセル84の座標を代入した演算結果(28)も同様に0以上となる。
ay+by−x+c+2 --- (28)
【0096】
次に、式(26)にピクセル84の座標を代入した演算結果の算出について検討する。まず、ピクセル84に隣接し、ピクセル84との間に原曲線81が通っているピクセル85を考える。ピクセル85の座標(x+1,y)を上述の式(23)の左辺に代入した場合、演算結果(29)は以下のようになる。
ay+by−(x+1)+c --- (29)
【0097】
ここで、ピクセル84とピクセル85の間に原曲線81が通過しているため、演算結果(29)は0未満となる。式(26)にピクセル84の座標を代入した演算結果(30)は以下のようになる。
ay+by−x+c−2 --- (30)
【0098】
演算結果(30)は、演算結果(29)よりも小さい。演算結果(29)は上述のように0未満である。よって、演算結果(30)は0未満である。
【0099】
以上の演算結果(28)及び(30)より、ピクセル84は条件5を満たす。よって、幅付け描画判定部130はピクセル84を描画対象と判定する。
【0100】
次に、幅付け描画判定部130によるピクセル82の描画判定について説明する。ピクセル82の座標は(x−2,y)である。よって、座標(x−2,y)と、w=2を上述の式(25)に代入した場合の演算結果(31)は以下のようになる。
ay+by−(x−2)+c+2 --- (31)
【0101】
ここで、上述の演算結果(27)が0以上であるため、演算結果(31)も0以上となる。また、座標(x−2,y)と、w=2を上述の式(26)に代入した場合の演算結果(32)は以下のようになる。
ay+by−(x−2)+c−2 --- (32)
【0102】
演算結果(32)は、上述の演算結果(27)と等しくなるため、0以上である。以上の演算結果(31)及び(32)より、ピクセル82は条件5を満たさない。よって、幅付け描画判定部130はピクセル82を描画対象外と判定する。
【0103】
次に、幅付け描画判定部130によるピクセル83の描画判定について説明する。ピクセル83の座標は(x−1,y)である。よって、座標(x−1,y)と、w=2を上述の式(25)に代入した場合の演算結果(33)は以下のようになる。
ay+by−(x−1)+c+2 --- (33)
【0104】
上述の演算結果(27)が0以上であるため、演算結果(33)も0以上となる。また、座標(x−1,y)と、w=2を上述の式(26)に代入した場合の演算結果(34)は以下のようになる。
ay+by−(x−1)+c−2 --- (34)
【0105】
演算結果(34)を変形すると、演算結果(35)となる。
ay+by−x+c−1 --- (35)
【0106】
演算結果(35)は、上述の演算結果(29)と等しくなるため、0未満である。以上の演算結果(33)及び(35)より、ピクセル83は条件5を満たす。よって、幅付け描画判定部130はピクセル83を描画対象と判定する。
【0107】
次に、図9を用いて本実施の形態にかかる曲線描画装置の動作例について説明する。図9において、原曲線205は放物線である。直線206は、y=4となる直線である。ピクセル261及び270は原曲線205の曲線外に位置する。ピクセル270は原曲線近傍正ピクセルである。ピクセル271は原曲線205の曲線内に位置する。また本例において、線幅は6(w=3)である。原曲線20の前述の曲線方程式(23)となる。
【0108】
本例では、曲線方程式(23)において、a=1、b=−5、c=5.9とする。ここで交点207は原曲線205と、直線206との交点である。本例では、交点207の座標は(1.9,4)である。交点207は原曲線205上の点であるため、以下の式(36)が成立する。
a*(4*4)+b*4−1.9+c=0 --- (36)
【0109】
ピクセルの座標は、常に整数を取るためピクセル270の座標は(1,4)となる。同様にピクセル271の座標は(2,4)となる。まず、ピクセル270の描画判定について説明する。
【0110】
ピクセル270の座標(1,4)を式(23)に代入する。ここで、当該代入式は、上述の式(36)のxの値が1.9から1に置換された場合と等しくなる。すなわち、当該代入式(37)は以下のようになる。
a*(4*4)+b*4−1+c=0.9 --- (37)
【0111】
すなわち、式(37)の左辺は0以上となる。また、ピクセル270の座標(1,4)と、w=3を上述の式(25)に代入した場合の演算結果(38)は以下のようになる。
a*(4*4)+b*4−1+c+3=3.9 --- (38)
【0112】
同様にピクセル270の座標(1,4)と、w=3を上述の式(26)に代入した場合の演算結果(39)は以下のようになる。
a*(4*4)+b*4−1+c−3=−2.1 --- (39)
【0113】
以上の演算結果(38)及び(39)より、ピクセル270は条件5を満たす。よって、幅付け描画判定部130はピクセル270を描画対象と判定する。
【0114】
次に、ピクセル271の描画判定について説明する。ピクセル271の座標(2,4)と、w=3を上述の式(25)に代入した場合の演算結果(40)は以下のようになる。
a*(4*4)+b*4−2+c+3=2.9 --- (40)
【0115】
同様にピクセル271の座標(2,4)と、w=3を上述の式(26)に代入した場合の演算結果(41)は以下のようになる。
a*(4*4)+b*4−2+c−3=−3.1 --- (41)
【0116】
以上の演算結果(40)及び(41)より、ピクセル271は条件5を満たす。よって、幅付け描画判定部130はピクセル271を描画対象と判定する。
【0117】
次に、ピクセル261の描画判定について説明する。ピクセル261の座標(2,3)と、w=3を上述の式(25)に代入した場合の演算結果(42)を算出する。前述のようにa=1、b=−5、c=5.9であるため、演算結果(42)は以下のようになる。
a*(3*3)+b*3−2+c+3=0.9 --- (42)
【0118】
同様にピクセル261の座標(2,3)と、w=3を上述の式(26)に代入した場合の演算結果(43)は以下のようになる。
a*(3*3)+b*3−2+c−3=−5.1 --- (43)
【0119】
以上の演算結果(42)及び(43)より、ピクセル261は条件5を満たす。よって、幅付け描画判定部130はピクセル261を描画対象と判定する。
【0120】
上記の処理により、幅付け描画判定部130は原曲線近傍正ピクセルである270の左に位置するピクセル271のみならず、上方に位置するピクセル261も描画対象と判定する。
【0121】
続いて、本実施の形態にかかる曲線描画装置の効果について説明する。上述のように、幅付け描画判定部130による判定により、任意の線幅を持つ曲線を描画することが可能になる。幅付け描画判定部130の判定は、所望の曲線方程式を第1の曲線方程式とした場合に、所望の線幅に応じた第2の曲線方程式及び第3の曲線方程式を用いることにより行う。
【0122】
また、本実施の形態にかかる曲線描画装置は、上述のように基準ピクセルと参照ピクセルを用いた描画判定(図2、図3)と幅付け描画判定部130による描画判定を組み合わせることにより、途切れることの無い任意の線幅を持つ曲線を描画できる。
【0123】
また、幅付け描画判定部130は上述の式(25)及び(26)を用いて描画判定を行う。上述の式(25)及び(26)の演算は、本実施の形態1にかかる曲線描画装置において行われる演算と比較して、wの加減算の処理が加わったのみである。すなわち、本実施の形態にかかる曲線描画装置は実施の形態1の構成に加えて加減算器を加えることのみにより構成できる。よって、本実施の形態にかかる曲線描画装置は、特許文献1に記載の曲線描画装置と比べて乗算器が一つ削減することが可能になる。乗算器を削減できることにより、回路規模を縮小することができる。
【0124】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0125】
たとえば本発明にかかる曲線描画装置は、放物線に限らず任意の曲線(たとえば楕円曲線)を描画する場合にも応用可能である。各ピクセルの座標を曲線方程式に代入した演算結果は、0以上または0未満に大別される。原曲線は、曲線方程式に代入した演算結果が0になる座標を描画している。すなわち、原曲線は演算結果を0以上と0未満に分ける境界である。本実施の形態にかかる曲線描画装置では、この境界を算出してピクセルを描画している。そのため、他の曲線方程式を用いた場合であっても本実施の形態にかかる曲線描画装置を応用することが可能である。
【0126】
本発明にかかる曲線描画装置は、たとえば任意の画像を液晶ディスプレイに表示するための制御を行うマイクロコンピュータに搭載され得る。また、上述の曲線描画装置と、上述の曲線描画装置を用いて描画した曲線により分割された領域に対して異なる画像処理を行う画像処理装置と、を組み合わせて使用することができる。これにより例えば、上述の曲線描画装置により描画した楕円曲線の内側と外側に対して異なる画像処理を行うことが可能となる。
【0127】
また上述の説明では曲線描画装置はハードウェアの構成として説明したが、必ずしもこれに限られない。たとえば、上述の曲線描画装置を構成する各処理部の処理は、マイクロコンピュータ等の内部において動作するプログラムとして実現してもよい。プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0128】
1 曲線描画装置
10 描画部
110 座標演算部
120 単一幅曲線描画部
121 上方境界判定部
122 下方境界判定部
123 左方境界判定部
124 右方境界判定部
125 基準ピクセル判定部
126 描画判定部
130 幅付け描画判定部
140 統合部
20 パラメータ入力部
21 線幅入力部
30 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状に配列された複数のピクセルに含まれる複数のピクセルを、描画対象とするか否かを判定する基準ピクセルとして順に設定するパラメータ入力部と、
前記基準ピクセルの座標を第1の曲線方程式に代入して算出した基準ピクセル演算結果と、前記基準ピクセルの描画判定に用いるピクセルである参照ピクセルの座標を前記第1の曲線方程式に代入して算出した参照ピクセル演算結果と、のいずれか一方が0未満であり、かつ、他方が0以上である場合に前記基準ピクセルを描画対象と決定する単一幅曲線描画部と、を備える曲線描画装置。
【請求項2】
前記参照ピクセルは前記基準ピクセルに隣接するピクセルであることを特徴とする請求項1に記載の曲線描画装置。
【請求項3】
前記単一幅曲線描画部は、前記基準ピクセル演算結果が0以上である場合に前記基準ピクセルを描画することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の曲線描画装置。
【請求項4】
前記基準ピクセル演算結果を算出する座標演算部を備え、
前記単一幅曲線描画部は、
前記参照ピクセルであって、前記基準ピクセルを原点として四方に所定距離だけ離れた第1乃至第4のピクセルの各々の座標を前記第1の曲線方程式に代入して算出した第1乃至第4のピクセル演算結果を算出する第1乃至第4境界演算部と、
前記基準ピクセル演算結果が0以上であり、かつ、前記第1乃至第4のピクセル演算結果の少なくとも1つが0未満である場合に、前記基準ピクセルを描画対象と判定する描画判定部と、を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の曲線描画装置。
【請求項5】
前記第1のピクセルは、前記基準ピクセルの上方向に位置し、
前記第2のピクセルは、前記基準ピクセルの下方向に位置し、
前記第3のピクセルは、前記基準ピクセルの左方向に位置し、
前記第4のピクセルは、前記基準ピクセルの右方向に位置することを特徴とする請求項4に記載の曲線描画装置。
【請求項6】
前記第1の曲線方程式により示される曲線を所望の線幅に応じた第1の幅だけ第1の移動方向に平行移動させた曲線を示す第2の曲線方程式と、
前記第1の曲線方程式により示される曲線を所望の線幅に応じた第2の幅だけ第1の移動方向と逆方向に平行移動させた曲線を示す第3の曲線方程式と、を定義し、
前記基準ピクセルの座標を前記第2の曲線方程式に代入して算出した演算結果と、前記基準ピクセルの座標を前記第3の曲線方程式に代入して算出した演算結果とのいずれか一方が0未満であり、かつ、他方が0以上である場合に前記基準ピクセルを描画対象と決定する幅付け描画部と、をさらに有する請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の曲線描画装置。
【請求項7】
前記第1の幅及び前記第2の幅は、前記所望の曲線幅を2で除算した値であることを特徴とする請求項6に記載の曲線描画装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の曲線描画装置を搭載したマイクロコンピュータ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の曲線描画装置と、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の曲線描画装置を用いて描写した曲線により分割された領域に対して異なる画像処理を行う画像処理装置と、を備えた画像処理システム。
【請求項10】
格子状に配列された複数のピクセルから描画対象とするか否かを判定する基準ピクセルとして設定し、
前記基準ピクセルの座標を第1の曲線方程式に代入して算出した基準ピクセル演算結果と、前記基準ピクセルの描画判定に用いるピクセルである参照ピクセルの座標を前記第1の曲線方程式に代入して算出した参照ピクセル演算結果と、のいずれか一方が0未満であり、かつ、他方が0以上である場合に前記基準ピクセルを描画対象と決定する処理を前記複数のピクセルに含まれる複数のピクセルにおいて実行する曲線描画方法。
【請求項11】
前記参照ピクセルは前記基準ピクセルに隣接するピクセルであることを特徴とする請求項10に記載の曲線描画方法。
【請求項12】
前記描画処理では、前記基準ピクセル演算結果が0以上である場合に前記基準ピクセルを描画することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の曲線描画方法。
【請求項13】
前記描画処理では、
前記基準ピクセル演算結果を算出し、
前記参照ピクセルであって、前記基準ピクセルを原点として四方に所定距離だけ離れた第1乃至第4のピクセルの各々の座標を前記第1の曲線方程式に代入して算出した第1乃至第4のピクセル演算結果を算出し、
前記基準ピクセル演算結果が0以上であり、かつ、前記第1乃至第4のピクセル演算結果の少なくとも1つが0未満である場合に、前記基準ピクセルを描画対象と判定することを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の曲線描画方法。
【請求項14】
前記第1のピクセルは、前記基準ピクセルの上方向に位置し、
前記第2のピクセルは、前記基準ピクセルの下方向に位置し、
前記第3のピクセルは、前記基準ピクセルの左方向に位置し、
前記第4のピクセルは、前記基準ピクセルの右方向に位置することを特徴とする請求項13に記載の曲線描画方法。
【請求項15】
前記第1の曲線方程式により示される曲線を所望の線幅に応じた第1の幅だけ第1の移動方向に平行移動させた曲線を示す第2の曲線方程式と、
前記第1の曲線方程式により示される曲線を所望の線幅に応じた第2の幅だけ第1の移動方向と逆方向に平行移動させた曲線を示す第3の曲線方程式と、を定義し、
前記基準ピクセルの座標を前記第2の曲線方程式に代入して算出した演算結果と、前記基準ピクセルの座標を前記第3の曲線方程式に代入して算出した演算結果とのいずれか一方が0未満であり、かつ、他方が0以上である場合に前記基準ピクセルを描画対象と決定することを特徴とする請求項10乃至請求項14のいずれか1項に記載の曲線描画方法。
【請求項16】
前記第1の幅及び前記第2の幅は、前記所望の曲線幅を2で除算した値であることを特徴とする請求項15に記載の曲線描画方法。
【請求項17】
曲線を描画するための曲線描画処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記曲線描画処理は、格子状に配列された複数のピクセルから描画対象とするか否かを判定する基準ピクセルとして設定し、
前記基準ピクセルの座標を第1の曲線方程式に代入して算出した基準ピクセル演算結果と、前記基準ピクセルの描画判定に用いるピクセルである参照ピクセルの座標を前記第1の曲線方程式に代入して算出した参照ピクセル演算結果と、のいずれか一方が0未満であり、かつ、他方が0以上である場合に前記基準ピクセルを描画対象と決定する処理を前記複数のピクセルに含まれる複数のピクセルにおいて実行する曲線描画プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−253289(P2011−253289A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125865(P2010−125865)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】