曲面形状部品の加工方法
【課題】金属製曲面羽根等の曲面形状を有する部品に対し、高精度で効率良く機械加工を施す。
【解決手段】曲面羽根形状を有する部品(加工物)1の機械加工時に部品を位置決めして加工する方法であって、部品1の互いに隣接するスカラップ間に予め最深の加工目標点の加工を施し、この施工により生じた互いに隣接する工具軌跡の加工座標点同士を結んだ線を基に、部品の曲率が最も大きいポイントを予め算出し、この最深点に加工工具としてのエンドミルを位置決めする加工点を設定し、この加工点の位置にエンドミルを位置決めして加工する。
【解決手段】曲面羽根形状を有する部品(加工物)1の機械加工時に部品を位置決めして加工する方法であって、部品1の互いに隣接するスカラップ間に予め最深の加工目標点の加工を施し、この施工により生じた互いに隣接する工具軌跡の加工座標点同士を結んだ線を基に、部品の曲率が最も大きいポイントを予め算出し、この最深点に加工工具としてのエンドミルを位置決めする加工点を設定し、この加工点の位置にエンドミルを位置決めして加工する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属製曲面羽根等の曲面形状を有する部品に対し、高精度で効率良く機械加工を施すことができる曲面形状部品の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製曲面羽根等の曲面形状部品、特に数百kgの金属部品等を加工する機械加工においては、工具の同時制御軸数が5軸以上を有するマシニングセンターを適用し、φ20mm〜30mm程度のボールエンドミル等を用いてNC加工を行うことが一般的である。
【0003】
また、精度の高い滑らかな曲面を得るためには、工具の加工ピッチを細かくする必要があり、機械加工のみでは多大な加工時間を要する。このため、スカラップ(小径ボールエンドミル工具の加工ピッチ間に僅かに残る段差)を残し、これらをグラインダ加工による手仕上げ等の方法を組合せて、緩やかな曲面に仕上げる方法が採られる。
【0004】
比較的曲率が大きい曲面を加工する場合には、NC加工による残存スカラップをグラインダ加工で除去し、滑らかに仕上げる加工が容易である。ボールエンドミルの最も先端部で加工された加工軌跡(最も深い加工目)同士を滑らかに繋ぐようにスカラップ除去を行えば良いため、グラインダ加工の深さの目標位置や隣接するスカラップの一様な除去も目視で判別し易い。
【0005】
スクリューのような多数の湾曲した曲面が合成された幾何学形状を有する部品を、上記の方法で一体削り出しする方法で加工する場合、羽根の中央部近傍は曲率が比較的大きいため、前述のようにNC機械加工とグラインダ加工の組合せにより、比較的容易に精度の高い滑らかな曲面を加工できる。
【0006】
しかし、中央ボスと羽根面などの接続部には、R5mm程度の曲率が小さい凹形状のコ−ナR面が形成してあり、例えばφ20mm程度のボールエンドミルでの加工をすることは困難である。
【0007】
また、コ−ナRよりも小さい半径を有する加工の場合、例えばφ5mm程度のボールエンドミルを使用すれば加工容易となるが、その場合には加工ピッチを細かくする必要があり、また、工具の送り速度も遅くする必要があり、そのため機械加工時間が増大する。
【0008】
一方、羽根の前縁部や後端部の曲面、および羽根の前縁部や後端部(エッジ)にR2mm程度の小径凸曲面がある場合、この部位は、φ20mm程度のボールエンドミルでも凸曲面であるため加工は可能であるが、スカラップの残存形状が極端に尖ったナイフエッジ状になり、グラインダ加工でこれを除去する場合には、一様な曲面に仕上げることが難しい。この場合においても、小径のボールエンドミルを使用すればスカラップの高さは小さくすることができるが、前記同様に加工時間が極めて長くなる。
【0009】
また、曲面同士を繋ぐ小径コ−ナR面では、関数による曲面定義が困難である場合が多く、緩やかに面同士を繋ぐための点座標の集合群を定義して、工具加工パスを設定する手法がとられるが、幾何計算ピッチを細かくすることが必要である。この場合、工具の変更や軌跡変更を行うためには、その都度毎に面の定義をやり直し、また点群に変換する必要があり、煩雑な処理を繰り返さなければならない。
【0010】
スクリューなどの羽根を複数個製造するうえで、性能のバラツキを安定させるためには、前述の羽根端部(エッジ部)や面の繋ぎ部を安定した精度で、高い再現性をもって加工することが重要であることが一般的に知られている。よって、機械加工終了直後の各部の曲面形状が、スカラップを残した状態で、その後のグラインダ加工等による仕上げ加工を如何に容易化できるかという点が、製造における効率の向上と、性能(品質)の安定度の実現に対して重要な観点となる。
【0011】
なお、曲面を精度良くグラインダ仕上げするためには、熟練した技能が必要であることが知られている。この理由は、スカラップのある状態でグラインダによる滑らかな仕上げを行う際に、機械加工目の状態を目視により観察して、どの部分をどれだけ削れば、最小限の加工で、曲率の異なる面同士を滑らかに繋ぐことができるかを想定する必要があるためである。一部を僅かでも削り過ぎると、曲面同士の繋ぎ部を成型するためにその近傍を広い範囲で仕上げる必要が生じ、作業時間の増大を招き、また形状の再現性が保てなくなる等の事象が発生する。特に曲率が小さくスカラップの目が粗い場合には、形状の整形精度に対して、技能が大きく影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−299828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたものであり、スクリューなどの曲面羽根形状を有する部品のNC機械加工を効率良く行うことができるとともに、グラインダ加工等の仕上げ方法を改善することができ、これらの方法を適切に組合せることにより、高い精度と合理的な加工方法を提供する。
【0014】
また、熟練者でなくとも高い精度で短時間で大小の曲率の面を加工することができ、加工機械の機能性向上も図れる加工方法を提供する。そのために、工作機械で使用される面測定用のセンサの機能を改良して活用し、また、グラインダ仕上げのスカラップ除去目標形状を加工物に解りやすく形成する簡易な加工方法を実現する。
【0015】
さらに、回転数のバラツキの少ない性能の良い製品の曲面形状を予め測定しておき、これを新たに加工する製品の機械加工形状とグラインダ成型作業に効率良く転写・反映できる方法、すなわち余肉除去の簡便な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、前記の目的を達成するため、曲面羽根形状を有する部品の機械加工時に前記部品を位置決めして加工する方法であって、前記部品の互いに隣接するスカラップ間に予め最深の加工目標点の切削加工を施し、この切削施工により生じた互いに隣接する工具軌跡の加工座標点同士を結んだ線を基に、前記部品の曲率が最も大きいポイントを予め算出し、このポイントの最深点にエンドミルを位置決めする加工点を設定し、この加工点の位置にエンドミルを位置決めして加工することを特徴とする曲面形状部品の加工方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スクリューなどの曲面羽根形状を有する部品のNC機械加工において、曲率の比較的小さいコ−ナR面等を、グラインダ加工がし易い形状とし、スカラップ残存状態にすることができる。また、機械加工時間を大幅に増大させることなく、かつグラインダ加工を非熟練者でも容易に行うことができ、高精度で繰返し再現性の高い曲面を加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の方法で加工される加工物の全体構成を示す斜視図。
【図2】図1に示した加工物の羽根部を拡大して示す斜視図。
【図3】図2に示した羽根面を拡大して示す斜視図。
【図4】図3に示した羽根の工具軌跡を示す拡大図。
【図5】本発明の第2実施形態の方法で加工される加工物を示す拡大図。
【図6】本発明の第3実施形態の方法で加工される加工物を示す拡大図。
【図7】本発明の第4実施形態の方法で加工される加工物を示す拡大図。
【図8】本発明の第5実施形態の方法で加工される加工物を示す拡大図。
【図9】本発明の第6実施形態の方法で加工される加工物を示す拡大図。
【図10】本発明の第7実施形態の方法で加工される加工物を示す全体図。
【図11】本発明の第7実施形態の方法で加工される加工物および加工装置を示す拡大図。
【図12】本発明の第8実施形態の方法で加工される加工物および加工装置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る曲面形状部品の加工方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
[第1実施形態](図1−図4)
本実施形態では、曲率を持った凹面部の加工方法の例を説明する。この例は、スクリュー等の曲面羽根形状を有する部品のNC加工において、曲率の比較的小さい翼面端部やコーナR面等を、後工程のグラインダ加工で容易に仕上げる機械加工方法である。
【0021】
図1は、本実施形態の方法で加工されるスクリュー形状の羽根を有する加工物の全体構成を示す斜視図である。
【0022】
図1に示すように、この加工物1は円筒2内にスクリュー羽根3を一体に有する構成のものである。具体的には、円筒2の内周面から中心側に向って複数のスクリュー羽根3が一体に突出し、これらのスクリュー羽根3は円筒2の中心位置に設けられたボス4に一体に連設されている。なお、加工物1は中実構造の金属製ブロック状素材を機械加工により掘削し、その後グラインダ加工により残存部を研磨して仕上げ加工したものである。
【0023】
スクリュー羽根3の幅広な中央部分は平坦形状であるが、スクリュー羽根3と円筒2との連設部3a、およびスクリュー羽根3とボス4との連設部3b等には、曲率が小さい凹形状のコ−ナR面5が形成されている。すなわち、中央のボス5とスクリュー羽根3の羽根面などとの接続部には、R5mm程度の曲率が小さい凹形状のコ−ナR面5が形成してある。このようなコ−ナR面5がR5mm程度の曲率が小さい凹形R面である場合、φ20mm程度のボールエンドミルでの加工をすることは困難である。
【0024】
これに対し、本実施形態では、タッチセンサ6および図2に示す下記の穴開け用の加工工具7を使用して、凹形状のコ−ナR面5に加工目標点を施し、この加工目標点を基準として、NC機械加工とグラインダ加工の組合せにより、比較的容易に精度の高い滑らかな曲面を加工できるようにする。
【0025】
図2は、図1に示した加工物1の羽根部であるスクリュー羽根3および加工工具7を示す拡大図であり、機械加工直後の状態を示している。
【0026】
この図2に示すように、スクリュー羽根3の羽根面とボス4の外周面(ボス面)との交差する部位は、コーナR面5により小径のコ−ナR形状を呈しており、その曲率も小さい。そして加工物1の羽根面5aおよびボス面4aには、加工工具7である小径ボールエンドミル工具の加工ピッチ間に僅かに残る段差からなるスカラップ8が工具軌跡に沿って波目状に表面に残存している。このスカラップ8は、先端が尖ったナイフエッジ状である。本実施形態では、このエッジ部分を加工工具7によりグラインダ加工して除去し、一様な曲面に仕上げる。
【0027】
図3および図4を参照してこの仕上げ加工を具体的に説明する。
【0028】
図3はコーナR面5を拡大して示す斜視図である。この図3に示すように、本実施形態では隣接するスカラップ8(8a,8b)の間に、円形穴状の最深の加工目標点9(9a,9b)を切削加工しておく。このように、隣接するスカラップ8a,8bの間に最深の加工目標点9(9a,9b)を切削加工しておけば、手仕上げグラインダ加工の目標点が目視で判別し易くなる。そして、機械加工後のグラインダ加工が行い易い形状・スカラップ残存状態になる。
【0029】
図4は、上記の方法を詳細に説明するための拡大図である。図4に示すように、隣接する工具軌跡10の加工座標点同士を結んだ線を定義する。この場合、任意の3点をとって、曲率が最も大きいポイント11を予めNC加工機の内部演算機能を使用して算出しておく。そして、上記の加工目標点9a,9bである最深点を、加工工具7としてのボールエンドミルを位置決めする加工点として設定する。
【0030】
この加工目標点9a,9bである最深点の位置に正確に、加工工具7であるボールエンドミルを自動位置決めさせて切削加工することで、コ−ナR形状の最深点を目視で判別しやすくすることができる。
【0031】
なお、この加工目標点9a,9bは、多数連続して加工する必要はなく、飛び飛びにいくつか加工されていれば良いため、加工時間の増大や、さらに小径のエンドミルで追加加工する必要がない。また、加工時間の増大を招くことなく、グラインダ加工の精度を向上させることができる。
【0032】
このように、本実施形態では、部品の互いに隣接するスカラップ8間に予め最深の加工目標点9a,9bの加工を施し、この施工により生じた互いに隣接する工具軌跡の加工座標点同士を結んだ線l2a,12bを基に任意の3点を抽出し、部品の曲率が最も大きいポイントを予め加工機の内部演算機能を使用して算出し、この最深点(加工目標点9a,9b)にボールエンドミル7を位置決めする加工点を設定し、この加工点の位置にボールエンドミル7を位置決めして加工する。
【0033】
本実施形態によれば、スクリューなどの曲面羽根形状を有する部品のNC機械加工において、曲率の比較的小さいコ−ナR面等を、グラインダ加工がし易い形状とし、スカラップ残存状態にすることができる。また、機械加工時間を大幅に増大させることなく、かつグラインダ加工を非熟練者でも容易に行うことができ、高精度で繰返し再現性の高い曲面を加工することができる。
【0034】
[第2実施形態](図5)
本発明の第2実施形態の加工方法は、第1実施形態と異なり、スカラップの量が、ある一定値(例えば0.5mm)を超える部分を予め計算しておき、その部分については、隣り合う加工点同士(3点)の座標値を使用して、最深点への小径ボールエンドミル加工を全て施しておく方法である。
【0035】
この方法として、図示省略の小径エンドミルを曲面Rコ−ナ加工に適用し、後のグラインダ加工の目標点として、必要最小限の不等ピッチで、工作機械により自動的に切削マーキング13を施す。
【0036】
図5は、一定以上のスカラップ高さhのある部位において、グラインダ加工深さの目標点を全て加工した例を示している。なお、図5に仮想線Eで示した領域は、本実施形態の処理を行う範囲を規定したものである。
【0037】
図5に示すように、スカラップ8の量が一定値を超える部分を予め計算しておき、その部分について、隣り合う3点の加工点同士の座標値に基いて最深点への小径ボールエンドミル加工を施すものである。
【0038】
これにより、曲面繋ぎのグラインダ加工が非熟練者でも容易に可能となり、機械加工時間の増大を抑止することが可能となる。
【0039】
本実施形態によれば、必要最小限の不等ピッチで、自動的に加工目標点をマーキングする加工方法を提供することで、曲面繋ぎを行うグラインダ加工が、非熟練者でも容易に可能となり、機械加工時間の増大を抑止しつつ、繰り返し精度の高い曲面仕上げを実現することができる。
【0040】
[第3実施形態](図6)
本実施形態の加工方法は、加工工具の剛性や使用時間等の問題で、面の加工精度にバラツキが生じる場合の回避策であり、工作機械上で使用される面測定用のセンサでの小径コ−ナR部の測定精度を、高める制御方式を適用する。
【0041】
図6は本実施形態方法を実施する際の説明図である。図6に示した仮想線領域Fは、過去の実績に基いた機械加工精度にバラツキが生じ易い領域を示している。この領域Fの内部にある曲面でNCプログラムで指定された点にマーキングを施し、工作機械が有するタッチセンサで測定する。
【0042】
すなわち、加工にバラツキが生じ易い部位を過去の加工実績に基いて予め把握しておき、部品を含む領域を三次元座標の中で定義して、その領域で指定された点を自動測定し、目標加工量と実際の差を計算することにより、工具の補正量を制御する。
【0043】
これにより、加工工具の剛性や使用時間等の問題で、NC加工において加工面精度のバラツキが生じても、予めバラツキの生じ易い部位をNC工作機械が自動判定して、その部位を測定し、補正量を自身で制御することができ、高い繰り返し精度のある再現性の高い曲面を加工することができる。
【0044】
具体的には、予めバラツキの生じ易い部位(領域F)は、過去の加工実績により把握しておき、三次元座標の中で、その領域を定義しておく。NC工作機械はその領域で指定された点を自動測定し、破線で示した目標加工量G1と、実際加工量G2との差h1を計算し、工具の補正量を自身で加減する設定とする。
【0045】
これにより、理想加工点との差異が計算できるため、NCプログラム処理により、工具位置補正を自動変更し、この点を再度加工する等の繰返し処理により、高精度で再現性の高い曲面を生成することができる。
【0046】
[第4実施形態](図7)
本実施形態の加工方法は、予め曲面定義が行いにくい面同士の繋ぎ部コ−ナR形状を、事前の三次元解析処理等をともなうこと無く、NC工作機械内部で幾何計算処理して加工する方法である。
【0047】
すなわち、事前に三次元CAD等で処理された工具パスデータは、点群データを連続させたものとなるが、加工順番を変更する必要が生じたり、工具軌跡を改善する場合には、一旦、工作機械での加工をとめ、曲面データのCAD処理を最初からやり直さなければならない。
【0048】
これを回避するため、本実施形態では、隣接する工具バスの連続する4点(イ、ロ、ハ、二)の加工点結ぶベストフィット曲線を設定し、このベストフィット曲線を工作機械内の演算機能により計算して最深点Pを創出し、この最深点Pに工具で加工マーキング14を施す。
【0049】
具体的には、図7に示すように、隣接する工具バスの連続する4点の加工点のベストフィット曲線Lを工作機械内の演算機能により計算して最深点を検出し、この最深点に工具で加工マーキング14を施す加工を追加する。この処理により繰り返し精度の高い加工面を実現することができ、しかもCAD等の処理に戻ることなく、工作機械のある現場で、追加加工が自在に行え、これにより三次元幾何計算の負荷を軽減し、また、事前の曲面定義を不要とし、さらにポイントを絞った加工を最小限行えば良いため、加工時間の増大を防ぐことができる。
【0050】
また、曲面定義が困難な面同士の繋ぎ部コ−ナR形状を、事前の三次元解析処理の負荷を増大させずに迅速にNC工作機械内部で定義することができる。
【0051】
さらに、曲面定義が行いにくい面同士の繋ぎ部コ−ナR形状を、事前の三次元解析処理等を伴うこと無く、NC工作機械内部で幾何計算処理し、繰り返し精度の高い加工面を実現することができる。これにより、三次元幾何計算の負荷を軽減し、また、事前の曲面定義を不要とすることができる。
【0052】
[第5実施形態](図8)
本実施形態の加工方法は、機械加工時の工具によるスカラップ残存状況から、グラインダ加工の最終仕上げ曲面形状を作業者が想定し易いように、近接するスカラップの高さを広い面で一定にする機能を有するNCプログラム制御方法についてのものである。
【0053】
すなわち、工作機械上で使用される面測定用のセンサにより小径コ−ナR部の自動測定を行い、この場合にセンサプローブを、曲率を有する面の法線方向から自動的に位置決めし、測定対象面に垂直方向からセンサをアクセスさせる制御機能を有するNC工作機械として適用する。
【0054】
図8は、本実施形態の方法を具体的に示す説明図である。図8に示すように、タッチセンサ15を工具軸に沿うことなく三次元方向(X,Y,Z)に移動させ、加工物1の曲率を有する面(曲面)16の法線方向からアクセスして、加工物1の面位置を測定する例を示している。
【0055】
通常のNC工作機械の加工面位置測定用タッチセンサプローブは、工具軸方向およびそれに直角な方向に動作させて、面に自動的に接触させ、その座標位置を測定する。この場合、測定面が工具軸方向や直角方向に対して傾斜している場合、工具が接触する時点で接触点の引きずり事象が生じ、測定に誤差が生じる。
【0056】
これを回避するため、本実施形態ではタッチセンサ15を斜め方向に動かし、接触面の位置を測定できる機能を有する。さらに、この機能を有するタッチセンサ15で測定が可能となることにより、狭隘部へのセンサのアクセス方向を制御することができ、干渉等で十分なセンサ移動距離がとれない場合等でも、精度良く測定できるよう改善することができる。
【0057】
[第6実施形態](図9)
本実施形態の加工方法は、機械加工時のスカラップ残存状況から、グラインダ加工の最終仕上げ曲面形状を作業者が想定し易いように、近接するスカラップの高さを広い面で一定にする機能を実現する例である。
【0058】
図9は、機械加工時のスカラップ残存状況およびその処理方法を示す説明図である。
【0059】
この図9に示すように、本実施形態では、加工物1の隣り合う加工点の座標情報からスカラップ高さの差h2を計算し、このスカラップ高さの差h2が予め設けた制限値(例えば0.3mm等)を超える場合には、その制限値になる最深点を計算し、工具で加工マークを付ける。これにより、グラインダ加工作業者は、スカラップの差異がどの程度あるかを目視によって認識することができ、仕上げ量の目標値を算段し易くなる。
【0060】
本実施形態の加工方法は、グラインダ17等の工具による手作業での最終仕上げ加工を効率的に行うため、一旦、グラインダ17による粗加工を行った段階で、NC工作機械に再装荷し、所定の厚さ以上の余肉が広い範囲で残っている部位を、マーキングして知らせる機能を有するものである。
【0061】
この方法を適用して、機械加工により生じた余肉18をNC工作機械により自動測定し、この測定結果に基いてスカラップマークの表示必要箇所数を設定するとともに、これらのスカラップマークに基いて、手作業によるグラインダ加工の目標値の判別容易性の自動判定を行い、この判定に基いてマーキングを実施する。
【0062】
この方法を実施することにより、加工物の所定の曲面に、ボールエンドミルで、部分的にマーキング加工がなされ、手仕上げではなく、NC機械加工により、ある程度の仕上げ加工までを行い、グラインダ加工の手間を省くことができる。
【0063】
本実施形態によれば、グラインダ17等による手作業での最終仕上げ加工を効率的に行うため、一旦、グラインダ17等による粗加工を行った段階で、NC工作機械に再荷し、所定の厚さ以上の余肉が広い範囲で残っている部位を、マーキングして知らせる機能を有するものとなり、グラインダ17等による手作業での仕上げ加工を最小限にすることができる。
【0064】
[第7実施形態](図10、図11)
本実施形態では、機械加工により生じた余肉を、高い精度でNC工作機械で自動測定し、どの部分にスカラップマーク除去深さのマーキングを行えば、最小限の加工箇所数で済むかを自動判定する方法について説明する。
【0065】
図10は加工物1の全体構成を示す斜視図であり、図11はマーキング部位を示す拡大図である。
【0066】
図10に示すように、加工物1のスクリュー羽根3には余肉を除去する加工個所を示すマーキングとして、最深点加工マーク19を施す。
【0067】
そして、図11に示すように、工具直径(例えばφ20mm)とスカラップ残存量の数値情報から、余肉が多い部分Gに対しては、最深点加工マーク19を細かいピッチで加工し、余肉が少ない部分Hに対しては、最深点加工マーク19を荒いピッチで加工する。
【0068】
これらの加工については、NC工作機械の内部演算機能を使用して、加工する曲面の曲率と適用工具の直径値から、スカラップの残り量を計算し、所定の三次元座標内において、大きなスカラップが連続して残る部分は、例えば5mmおきというようなピッチを計算して、加工点を決める。小さなスカラップが、離れて残る部位はマーキングのピッチは長くて良い。
【0069】
本実施形態によれば、機械加工により生じた余肉を、高い精度でNC工作機械で自動測定し、どの部分にスカラップマークを表示すればグラインダ加工がし易くなるかを自動判定して、NC加工を続行する機能を実現することができる。
【0070】
[第8実施形態](図12)
本実施形態の加工方法は、既に加工済みで性能試験までに供した部品の形状データを、予めNC工作機械に記憶させておき、工程能力分析と統計検定を行う機能を付加させて、性能に大きく影響する部位と、その曲面形状精度許容範囲を統計計算する機能を有する工作機械を提供する例である。
【0071】
図12に示すように、NC装置20の内部でこの演算を行うが、この方式の特徴は、その演算結果をそのまま、加工データに変換して、即座にスクリュー羽根3の当該面の加工にフィードバックして加工を続行することができるようにする点にある。
【0072】
すなわち、性能に大きく影響する部分の幾何学的形状を、NC工作機械が自動分析できるようにするため、複数台の加工対象部品のグラインダ加工後の形状をNC工作機械で測定し、その測定データを内部に区分して蓄積保管し、性能試験で把握された定格回転運転点での流量性能の指数を後日入力する。
【0073】
この入力により、工程能力分析と統計検定を行い、性能に影響する形状部分を設計者に知らせる機能を有するNC工作機械としての機能を得る。
【0074】
本実施形態によれば、性能に大きく影響する部分の幾何学的形状をNC工作機械によって自動分析し、高い精度の必要な部位を判定して、設計者に知らせる機能を発揮することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 加工物
2 円筒
3 スクリュー羽根
3a,3b 連結部
4 ボス
5 コーナR面
6 タッチセンサ
7 加工工具
8(8a,8b) スカラップ
9(9a,9b) 最深の加工目標点
10 工具軌跡
11 曲率が最も大きいポイント
12(12a,12b) 線
13,14 マーキング
15 タッチセンサ
16 曲面
17 グラインダ
18 余肉
19 最深点加工マーク
20 NC装置
F 領域
L ベストフィット曲線
【技術分野】
【0001】
本発明は金属製曲面羽根等の曲面形状を有する部品に対し、高精度で効率良く機械加工を施すことができる曲面形状部品の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製曲面羽根等の曲面形状部品、特に数百kgの金属部品等を加工する機械加工においては、工具の同時制御軸数が5軸以上を有するマシニングセンターを適用し、φ20mm〜30mm程度のボールエンドミル等を用いてNC加工を行うことが一般的である。
【0003】
また、精度の高い滑らかな曲面を得るためには、工具の加工ピッチを細かくする必要があり、機械加工のみでは多大な加工時間を要する。このため、スカラップ(小径ボールエンドミル工具の加工ピッチ間に僅かに残る段差)を残し、これらをグラインダ加工による手仕上げ等の方法を組合せて、緩やかな曲面に仕上げる方法が採られる。
【0004】
比較的曲率が大きい曲面を加工する場合には、NC加工による残存スカラップをグラインダ加工で除去し、滑らかに仕上げる加工が容易である。ボールエンドミルの最も先端部で加工された加工軌跡(最も深い加工目)同士を滑らかに繋ぐようにスカラップ除去を行えば良いため、グラインダ加工の深さの目標位置や隣接するスカラップの一様な除去も目視で判別し易い。
【0005】
スクリューのような多数の湾曲した曲面が合成された幾何学形状を有する部品を、上記の方法で一体削り出しする方法で加工する場合、羽根の中央部近傍は曲率が比較的大きいため、前述のようにNC機械加工とグラインダ加工の組合せにより、比較的容易に精度の高い滑らかな曲面を加工できる。
【0006】
しかし、中央ボスと羽根面などの接続部には、R5mm程度の曲率が小さい凹形状のコ−ナR面が形成してあり、例えばφ20mm程度のボールエンドミルでの加工をすることは困難である。
【0007】
また、コ−ナRよりも小さい半径を有する加工の場合、例えばφ5mm程度のボールエンドミルを使用すれば加工容易となるが、その場合には加工ピッチを細かくする必要があり、また、工具の送り速度も遅くする必要があり、そのため機械加工時間が増大する。
【0008】
一方、羽根の前縁部や後端部の曲面、および羽根の前縁部や後端部(エッジ)にR2mm程度の小径凸曲面がある場合、この部位は、φ20mm程度のボールエンドミルでも凸曲面であるため加工は可能であるが、スカラップの残存形状が極端に尖ったナイフエッジ状になり、グラインダ加工でこれを除去する場合には、一様な曲面に仕上げることが難しい。この場合においても、小径のボールエンドミルを使用すればスカラップの高さは小さくすることができるが、前記同様に加工時間が極めて長くなる。
【0009】
また、曲面同士を繋ぐ小径コ−ナR面では、関数による曲面定義が困難である場合が多く、緩やかに面同士を繋ぐための点座標の集合群を定義して、工具加工パスを設定する手法がとられるが、幾何計算ピッチを細かくすることが必要である。この場合、工具の変更や軌跡変更を行うためには、その都度毎に面の定義をやり直し、また点群に変換する必要があり、煩雑な処理を繰り返さなければならない。
【0010】
スクリューなどの羽根を複数個製造するうえで、性能のバラツキを安定させるためには、前述の羽根端部(エッジ部)や面の繋ぎ部を安定した精度で、高い再現性をもって加工することが重要であることが一般的に知られている。よって、機械加工終了直後の各部の曲面形状が、スカラップを残した状態で、その後のグラインダ加工等による仕上げ加工を如何に容易化できるかという点が、製造における効率の向上と、性能(品質)の安定度の実現に対して重要な観点となる。
【0011】
なお、曲面を精度良くグラインダ仕上げするためには、熟練した技能が必要であることが知られている。この理由は、スカラップのある状態でグラインダによる滑らかな仕上げを行う際に、機械加工目の状態を目視により観察して、どの部分をどれだけ削れば、最小限の加工で、曲率の異なる面同士を滑らかに繋ぐことができるかを想定する必要があるためである。一部を僅かでも削り過ぎると、曲面同士の繋ぎ部を成型するためにその近傍を広い範囲で仕上げる必要が生じ、作業時間の増大を招き、また形状の再現性が保てなくなる等の事象が発生する。特に曲率が小さくスカラップの目が粗い場合には、形状の整形精度に対して、技能が大きく影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−299828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたものであり、スクリューなどの曲面羽根形状を有する部品のNC機械加工を効率良く行うことができるとともに、グラインダ加工等の仕上げ方法を改善することができ、これらの方法を適切に組合せることにより、高い精度と合理的な加工方法を提供する。
【0014】
また、熟練者でなくとも高い精度で短時間で大小の曲率の面を加工することができ、加工機械の機能性向上も図れる加工方法を提供する。そのために、工作機械で使用される面測定用のセンサの機能を改良して活用し、また、グラインダ仕上げのスカラップ除去目標形状を加工物に解りやすく形成する簡易な加工方法を実現する。
【0015】
さらに、回転数のバラツキの少ない性能の良い製品の曲面形状を予め測定しておき、これを新たに加工する製品の機械加工形状とグラインダ成型作業に効率良く転写・反映できる方法、すなわち余肉除去の簡便な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、前記の目的を達成するため、曲面羽根形状を有する部品の機械加工時に前記部品を位置決めして加工する方法であって、前記部品の互いに隣接するスカラップ間に予め最深の加工目標点の切削加工を施し、この切削施工により生じた互いに隣接する工具軌跡の加工座標点同士を結んだ線を基に、前記部品の曲率が最も大きいポイントを予め算出し、このポイントの最深点にエンドミルを位置決めする加工点を設定し、この加工点の位置にエンドミルを位置決めして加工することを特徴とする曲面形状部品の加工方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スクリューなどの曲面羽根形状を有する部品のNC機械加工において、曲率の比較的小さいコ−ナR面等を、グラインダ加工がし易い形状とし、スカラップ残存状態にすることができる。また、機械加工時間を大幅に増大させることなく、かつグラインダ加工を非熟練者でも容易に行うことができ、高精度で繰返し再現性の高い曲面を加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の方法で加工される加工物の全体構成を示す斜視図。
【図2】図1に示した加工物の羽根部を拡大して示す斜視図。
【図3】図2に示した羽根面を拡大して示す斜視図。
【図4】図3に示した羽根の工具軌跡を示す拡大図。
【図5】本発明の第2実施形態の方法で加工される加工物を示す拡大図。
【図6】本発明の第3実施形態の方法で加工される加工物を示す拡大図。
【図7】本発明の第4実施形態の方法で加工される加工物を示す拡大図。
【図8】本発明の第5実施形態の方法で加工される加工物を示す拡大図。
【図9】本発明の第6実施形態の方法で加工される加工物を示す拡大図。
【図10】本発明の第7実施形態の方法で加工される加工物を示す全体図。
【図11】本発明の第7実施形態の方法で加工される加工物および加工装置を示す拡大図。
【図12】本発明の第8実施形態の方法で加工される加工物および加工装置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る曲面形状部品の加工方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
[第1実施形態](図1−図4)
本実施形態では、曲率を持った凹面部の加工方法の例を説明する。この例は、スクリュー等の曲面羽根形状を有する部品のNC加工において、曲率の比較的小さい翼面端部やコーナR面等を、後工程のグラインダ加工で容易に仕上げる機械加工方法である。
【0021】
図1は、本実施形態の方法で加工されるスクリュー形状の羽根を有する加工物の全体構成を示す斜視図である。
【0022】
図1に示すように、この加工物1は円筒2内にスクリュー羽根3を一体に有する構成のものである。具体的には、円筒2の内周面から中心側に向って複数のスクリュー羽根3が一体に突出し、これらのスクリュー羽根3は円筒2の中心位置に設けられたボス4に一体に連設されている。なお、加工物1は中実構造の金属製ブロック状素材を機械加工により掘削し、その後グラインダ加工により残存部を研磨して仕上げ加工したものである。
【0023】
スクリュー羽根3の幅広な中央部分は平坦形状であるが、スクリュー羽根3と円筒2との連設部3a、およびスクリュー羽根3とボス4との連設部3b等には、曲率が小さい凹形状のコ−ナR面5が形成されている。すなわち、中央のボス5とスクリュー羽根3の羽根面などとの接続部には、R5mm程度の曲率が小さい凹形状のコ−ナR面5が形成してある。このようなコ−ナR面5がR5mm程度の曲率が小さい凹形R面である場合、φ20mm程度のボールエンドミルでの加工をすることは困難である。
【0024】
これに対し、本実施形態では、タッチセンサ6および図2に示す下記の穴開け用の加工工具7を使用して、凹形状のコ−ナR面5に加工目標点を施し、この加工目標点を基準として、NC機械加工とグラインダ加工の組合せにより、比較的容易に精度の高い滑らかな曲面を加工できるようにする。
【0025】
図2は、図1に示した加工物1の羽根部であるスクリュー羽根3および加工工具7を示す拡大図であり、機械加工直後の状態を示している。
【0026】
この図2に示すように、スクリュー羽根3の羽根面とボス4の外周面(ボス面)との交差する部位は、コーナR面5により小径のコ−ナR形状を呈しており、その曲率も小さい。そして加工物1の羽根面5aおよびボス面4aには、加工工具7である小径ボールエンドミル工具の加工ピッチ間に僅かに残る段差からなるスカラップ8が工具軌跡に沿って波目状に表面に残存している。このスカラップ8は、先端が尖ったナイフエッジ状である。本実施形態では、このエッジ部分を加工工具7によりグラインダ加工して除去し、一様な曲面に仕上げる。
【0027】
図3および図4を参照してこの仕上げ加工を具体的に説明する。
【0028】
図3はコーナR面5を拡大して示す斜視図である。この図3に示すように、本実施形態では隣接するスカラップ8(8a,8b)の間に、円形穴状の最深の加工目標点9(9a,9b)を切削加工しておく。このように、隣接するスカラップ8a,8bの間に最深の加工目標点9(9a,9b)を切削加工しておけば、手仕上げグラインダ加工の目標点が目視で判別し易くなる。そして、機械加工後のグラインダ加工が行い易い形状・スカラップ残存状態になる。
【0029】
図4は、上記の方法を詳細に説明するための拡大図である。図4に示すように、隣接する工具軌跡10の加工座標点同士を結んだ線を定義する。この場合、任意の3点をとって、曲率が最も大きいポイント11を予めNC加工機の内部演算機能を使用して算出しておく。そして、上記の加工目標点9a,9bである最深点を、加工工具7としてのボールエンドミルを位置決めする加工点として設定する。
【0030】
この加工目標点9a,9bである最深点の位置に正確に、加工工具7であるボールエンドミルを自動位置決めさせて切削加工することで、コ−ナR形状の最深点を目視で判別しやすくすることができる。
【0031】
なお、この加工目標点9a,9bは、多数連続して加工する必要はなく、飛び飛びにいくつか加工されていれば良いため、加工時間の増大や、さらに小径のエンドミルで追加加工する必要がない。また、加工時間の増大を招くことなく、グラインダ加工の精度を向上させることができる。
【0032】
このように、本実施形態では、部品の互いに隣接するスカラップ8間に予め最深の加工目標点9a,9bの加工を施し、この施工により生じた互いに隣接する工具軌跡の加工座標点同士を結んだ線l2a,12bを基に任意の3点を抽出し、部品の曲率が最も大きいポイントを予め加工機の内部演算機能を使用して算出し、この最深点(加工目標点9a,9b)にボールエンドミル7を位置決めする加工点を設定し、この加工点の位置にボールエンドミル7を位置決めして加工する。
【0033】
本実施形態によれば、スクリューなどの曲面羽根形状を有する部品のNC機械加工において、曲率の比較的小さいコ−ナR面等を、グラインダ加工がし易い形状とし、スカラップ残存状態にすることができる。また、機械加工時間を大幅に増大させることなく、かつグラインダ加工を非熟練者でも容易に行うことができ、高精度で繰返し再現性の高い曲面を加工することができる。
【0034】
[第2実施形態](図5)
本発明の第2実施形態の加工方法は、第1実施形態と異なり、スカラップの量が、ある一定値(例えば0.5mm)を超える部分を予め計算しておき、その部分については、隣り合う加工点同士(3点)の座標値を使用して、最深点への小径ボールエンドミル加工を全て施しておく方法である。
【0035】
この方法として、図示省略の小径エンドミルを曲面Rコ−ナ加工に適用し、後のグラインダ加工の目標点として、必要最小限の不等ピッチで、工作機械により自動的に切削マーキング13を施す。
【0036】
図5は、一定以上のスカラップ高さhのある部位において、グラインダ加工深さの目標点を全て加工した例を示している。なお、図5に仮想線Eで示した領域は、本実施形態の処理を行う範囲を規定したものである。
【0037】
図5に示すように、スカラップ8の量が一定値を超える部分を予め計算しておき、その部分について、隣り合う3点の加工点同士の座標値に基いて最深点への小径ボールエンドミル加工を施すものである。
【0038】
これにより、曲面繋ぎのグラインダ加工が非熟練者でも容易に可能となり、機械加工時間の増大を抑止することが可能となる。
【0039】
本実施形態によれば、必要最小限の不等ピッチで、自動的に加工目標点をマーキングする加工方法を提供することで、曲面繋ぎを行うグラインダ加工が、非熟練者でも容易に可能となり、機械加工時間の増大を抑止しつつ、繰り返し精度の高い曲面仕上げを実現することができる。
【0040】
[第3実施形態](図6)
本実施形態の加工方法は、加工工具の剛性や使用時間等の問題で、面の加工精度にバラツキが生じる場合の回避策であり、工作機械上で使用される面測定用のセンサでの小径コ−ナR部の測定精度を、高める制御方式を適用する。
【0041】
図6は本実施形態方法を実施する際の説明図である。図6に示した仮想線領域Fは、過去の実績に基いた機械加工精度にバラツキが生じ易い領域を示している。この領域Fの内部にある曲面でNCプログラムで指定された点にマーキングを施し、工作機械が有するタッチセンサで測定する。
【0042】
すなわち、加工にバラツキが生じ易い部位を過去の加工実績に基いて予め把握しておき、部品を含む領域を三次元座標の中で定義して、その領域で指定された点を自動測定し、目標加工量と実際の差を計算することにより、工具の補正量を制御する。
【0043】
これにより、加工工具の剛性や使用時間等の問題で、NC加工において加工面精度のバラツキが生じても、予めバラツキの生じ易い部位をNC工作機械が自動判定して、その部位を測定し、補正量を自身で制御することができ、高い繰り返し精度のある再現性の高い曲面を加工することができる。
【0044】
具体的には、予めバラツキの生じ易い部位(領域F)は、過去の加工実績により把握しておき、三次元座標の中で、その領域を定義しておく。NC工作機械はその領域で指定された点を自動測定し、破線で示した目標加工量G1と、実際加工量G2との差h1を計算し、工具の補正量を自身で加減する設定とする。
【0045】
これにより、理想加工点との差異が計算できるため、NCプログラム処理により、工具位置補正を自動変更し、この点を再度加工する等の繰返し処理により、高精度で再現性の高い曲面を生成することができる。
【0046】
[第4実施形態](図7)
本実施形態の加工方法は、予め曲面定義が行いにくい面同士の繋ぎ部コ−ナR形状を、事前の三次元解析処理等をともなうこと無く、NC工作機械内部で幾何計算処理して加工する方法である。
【0047】
すなわち、事前に三次元CAD等で処理された工具パスデータは、点群データを連続させたものとなるが、加工順番を変更する必要が生じたり、工具軌跡を改善する場合には、一旦、工作機械での加工をとめ、曲面データのCAD処理を最初からやり直さなければならない。
【0048】
これを回避するため、本実施形態では、隣接する工具バスの連続する4点(イ、ロ、ハ、二)の加工点結ぶベストフィット曲線を設定し、このベストフィット曲線を工作機械内の演算機能により計算して最深点Pを創出し、この最深点Pに工具で加工マーキング14を施す。
【0049】
具体的には、図7に示すように、隣接する工具バスの連続する4点の加工点のベストフィット曲線Lを工作機械内の演算機能により計算して最深点を検出し、この最深点に工具で加工マーキング14を施す加工を追加する。この処理により繰り返し精度の高い加工面を実現することができ、しかもCAD等の処理に戻ることなく、工作機械のある現場で、追加加工が自在に行え、これにより三次元幾何計算の負荷を軽減し、また、事前の曲面定義を不要とし、さらにポイントを絞った加工を最小限行えば良いため、加工時間の増大を防ぐことができる。
【0050】
また、曲面定義が困難な面同士の繋ぎ部コ−ナR形状を、事前の三次元解析処理の負荷を増大させずに迅速にNC工作機械内部で定義することができる。
【0051】
さらに、曲面定義が行いにくい面同士の繋ぎ部コ−ナR形状を、事前の三次元解析処理等を伴うこと無く、NC工作機械内部で幾何計算処理し、繰り返し精度の高い加工面を実現することができる。これにより、三次元幾何計算の負荷を軽減し、また、事前の曲面定義を不要とすることができる。
【0052】
[第5実施形態](図8)
本実施形態の加工方法は、機械加工時の工具によるスカラップ残存状況から、グラインダ加工の最終仕上げ曲面形状を作業者が想定し易いように、近接するスカラップの高さを広い面で一定にする機能を有するNCプログラム制御方法についてのものである。
【0053】
すなわち、工作機械上で使用される面測定用のセンサにより小径コ−ナR部の自動測定を行い、この場合にセンサプローブを、曲率を有する面の法線方向から自動的に位置決めし、測定対象面に垂直方向からセンサをアクセスさせる制御機能を有するNC工作機械として適用する。
【0054】
図8は、本実施形態の方法を具体的に示す説明図である。図8に示すように、タッチセンサ15を工具軸に沿うことなく三次元方向(X,Y,Z)に移動させ、加工物1の曲率を有する面(曲面)16の法線方向からアクセスして、加工物1の面位置を測定する例を示している。
【0055】
通常のNC工作機械の加工面位置測定用タッチセンサプローブは、工具軸方向およびそれに直角な方向に動作させて、面に自動的に接触させ、その座標位置を測定する。この場合、測定面が工具軸方向や直角方向に対して傾斜している場合、工具が接触する時点で接触点の引きずり事象が生じ、測定に誤差が生じる。
【0056】
これを回避するため、本実施形態ではタッチセンサ15を斜め方向に動かし、接触面の位置を測定できる機能を有する。さらに、この機能を有するタッチセンサ15で測定が可能となることにより、狭隘部へのセンサのアクセス方向を制御することができ、干渉等で十分なセンサ移動距離がとれない場合等でも、精度良く測定できるよう改善することができる。
【0057】
[第6実施形態](図9)
本実施形態の加工方法は、機械加工時のスカラップ残存状況から、グラインダ加工の最終仕上げ曲面形状を作業者が想定し易いように、近接するスカラップの高さを広い面で一定にする機能を実現する例である。
【0058】
図9は、機械加工時のスカラップ残存状況およびその処理方法を示す説明図である。
【0059】
この図9に示すように、本実施形態では、加工物1の隣り合う加工点の座標情報からスカラップ高さの差h2を計算し、このスカラップ高さの差h2が予め設けた制限値(例えば0.3mm等)を超える場合には、その制限値になる最深点を計算し、工具で加工マークを付ける。これにより、グラインダ加工作業者は、スカラップの差異がどの程度あるかを目視によって認識することができ、仕上げ量の目標値を算段し易くなる。
【0060】
本実施形態の加工方法は、グラインダ17等の工具による手作業での最終仕上げ加工を効率的に行うため、一旦、グラインダ17による粗加工を行った段階で、NC工作機械に再装荷し、所定の厚さ以上の余肉が広い範囲で残っている部位を、マーキングして知らせる機能を有するものである。
【0061】
この方法を適用して、機械加工により生じた余肉18をNC工作機械により自動測定し、この測定結果に基いてスカラップマークの表示必要箇所数を設定するとともに、これらのスカラップマークに基いて、手作業によるグラインダ加工の目標値の判別容易性の自動判定を行い、この判定に基いてマーキングを実施する。
【0062】
この方法を実施することにより、加工物の所定の曲面に、ボールエンドミルで、部分的にマーキング加工がなされ、手仕上げではなく、NC機械加工により、ある程度の仕上げ加工までを行い、グラインダ加工の手間を省くことができる。
【0063】
本実施形態によれば、グラインダ17等による手作業での最終仕上げ加工を効率的に行うため、一旦、グラインダ17等による粗加工を行った段階で、NC工作機械に再荷し、所定の厚さ以上の余肉が広い範囲で残っている部位を、マーキングして知らせる機能を有するものとなり、グラインダ17等による手作業での仕上げ加工を最小限にすることができる。
【0064】
[第7実施形態](図10、図11)
本実施形態では、機械加工により生じた余肉を、高い精度でNC工作機械で自動測定し、どの部分にスカラップマーク除去深さのマーキングを行えば、最小限の加工箇所数で済むかを自動判定する方法について説明する。
【0065】
図10は加工物1の全体構成を示す斜視図であり、図11はマーキング部位を示す拡大図である。
【0066】
図10に示すように、加工物1のスクリュー羽根3には余肉を除去する加工個所を示すマーキングとして、最深点加工マーク19を施す。
【0067】
そして、図11に示すように、工具直径(例えばφ20mm)とスカラップ残存量の数値情報から、余肉が多い部分Gに対しては、最深点加工マーク19を細かいピッチで加工し、余肉が少ない部分Hに対しては、最深点加工マーク19を荒いピッチで加工する。
【0068】
これらの加工については、NC工作機械の内部演算機能を使用して、加工する曲面の曲率と適用工具の直径値から、スカラップの残り量を計算し、所定の三次元座標内において、大きなスカラップが連続して残る部分は、例えば5mmおきというようなピッチを計算して、加工点を決める。小さなスカラップが、離れて残る部位はマーキングのピッチは長くて良い。
【0069】
本実施形態によれば、機械加工により生じた余肉を、高い精度でNC工作機械で自動測定し、どの部分にスカラップマークを表示すればグラインダ加工がし易くなるかを自動判定して、NC加工を続行する機能を実現することができる。
【0070】
[第8実施形態](図12)
本実施形態の加工方法は、既に加工済みで性能試験までに供した部品の形状データを、予めNC工作機械に記憶させておき、工程能力分析と統計検定を行う機能を付加させて、性能に大きく影響する部位と、その曲面形状精度許容範囲を統計計算する機能を有する工作機械を提供する例である。
【0071】
図12に示すように、NC装置20の内部でこの演算を行うが、この方式の特徴は、その演算結果をそのまま、加工データに変換して、即座にスクリュー羽根3の当該面の加工にフィードバックして加工を続行することができるようにする点にある。
【0072】
すなわち、性能に大きく影響する部分の幾何学的形状を、NC工作機械が自動分析できるようにするため、複数台の加工対象部品のグラインダ加工後の形状をNC工作機械で測定し、その測定データを内部に区分して蓄積保管し、性能試験で把握された定格回転運転点での流量性能の指数を後日入力する。
【0073】
この入力により、工程能力分析と統計検定を行い、性能に影響する形状部分を設計者に知らせる機能を有するNC工作機械としての機能を得る。
【0074】
本実施形態によれば、性能に大きく影響する部分の幾何学的形状をNC工作機械によって自動分析し、高い精度の必要な部位を判定して、設計者に知らせる機能を発揮することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 加工物
2 円筒
3 スクリュー羽根
3a,3b 連結部
4 ボス
5 コーナR面
6 タッチセンサ
7 加工工具
8(8a,8b) スカラップ
9(9a,9b) 最深の加工目標点
10 工具軌跡
11 曲率が最も大きいポイント
12(12a,12b) 線
13,14 マーキング
15 タッチセンサ
16 曲面
17 グラインダ
18 余肉
19 最深点加工マーク
20 NC装置
F 領域
L ベストフィット曲線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面羽根形状を有する部品の機械加工時に前記部品を位置決めして加工する方法であって、前記部品の互いに隣接するスカラップ間に予め最深の加工目標点の切削加工を施し、この切削施工により生じた互いに隣接する工具軌跡の加工座標点同士を結んだ線を基に、前記部品の曲率が最も大きいポイントを予め算出し、このポイントの最深点にエンドミルを位置決めする加工点を設定し、この加工点の位置にエンドミルを位置決めして加工することを特徴とする曲面形状部品の加工方法。
【請求項2】
請求項1記載の加工方法において、スカラップの量が一定値を超える部分を予め計算しておき、その部分について、隣り合う3点の加工点同士の座標値に基いて最深点への小径ボールエンドミル加工を施す曲面形状部品の加工方法。
【請求項3】
請求項1記載の加工方法において、加工にバラツキが生じ易い部位は、過去の加工実績に基いて予め把握しておき、前記部品を含む領域を三次元座標の中で定義してその領域で指定された点を自動測定し、目標加工量と実際の差を計算することにより、工具の補正量を制御する曲面形状部品の加工方法。
【請求項4】
請求項1記載の加工方法において、隣接する工具バスの連続する4点の加工点のベストフィット曲線を工作機械内の演算機能により計算して最深点を検出し、この最深点に工具で加工マーキングを施す曲面形状部品の加工方法。
【請求項5】
請求項1記載の加工方法において、工作機械上で使用される面測定用のセンサにより小径コ−ナR部の自動測定を行い、この場合にセンサプローブを、曲率を有する面の法線方向から自動的に位置決めし、測定対象面に垂直方向からセンサをアクセスさせる曲面形状部品の加工方法。
【請求項6】
請求項1記載の加工方法において、機械加工により生じた余肉をNC工作機械により自動測定し、この測定結果に基いてスカラップマークの表示必要箇所数を設定するとともに、これらのスカラップマークに基いて、手作業によるグラインダ加工の目標値の判別容易性の自動判定を行い、この判定に基いてマーキングを実施する曲面形状部品の加工方法。
【請求項1】
曲面羽根形状を有する部品の機械加工時に前記部品を位置決めして加工する方法であって、前記部品の互いに隣接するスカラップ間に予め最深の加工目標点の切削加工を施し、この切削施工により生じた互いに隣接する工具軌跡の加工座標点同士を結んだ線を基に、前記部品の曲率が最も大きいポイントを予め算出し、このポイントの最深点にエンドミルを位置決めする加工点を設定し、この加工点の位置にエンドミルを位置決めして加工することを特徴とする曲面形状部品の加工方法。
【請求項2】
請求項1記載の加工方法において、スカラップの量が一定値を超える部分を予め計算しておき、その部分について、隣り合う3点の加工点同士の座標値に基いて最深点への小径ボールエンドミル加工を施す曲面形状部品の加工方法。
【請求項3】
請求項1記載の加工方法において、加工にバラツキが生じ易い部位は、過去の加工実績に基いて予め把握しておき、前記部品を含む領域を三次元座標の中で定義してその領域で指定された点を自動測定し、目標加工量と実際の差を計算することにより、工具の補正量を制御する曲面形状部品の加工方法。
【請求項4】
請求項1記載の加工方法において、隣接する工具バスの連続する4点の加工点のベストフィット曲線を工作機械内の演算機能により計算して最深点を検出し、この最深点に工具で加工マーキングを施す曲面形状部品の加工方法。
【請求項5】
請求項1記載の加工方法において、工作機械上で使用される面測定用のセンサにより小径コ−ナR部の自動測定を行い、この場合にセンサプローブを、曲率を有する面の法線方向から自動的に位置決めし、測定対象面に垂直方向からセンサをアクセスさせる曲面形状部品の加工方法。
【請求項6】
請求項1記載の加工方法において、機械加工により生じた余肉をNC工作機械により自動測定し、この測定結果に基いてスカラップマークの表示必要箇所数を設定するとともに、これらのスカラップマークに基いて、手作業によるグラインダ加工の目標値の判別容易性の自動判定を行い、この判定に基いてマーキングを実施する曲面形状部品の加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−184302(P2010−184302A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28683(P2009−28683)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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