説明

更生管の施工方法

【課題】本発明は、更生管の施工時における既設管底部と更生管との間に生じる摩擦を低減する新規な更生管の施工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】帯状部材を螺旋状に巻き回し、螺旋状の互いに隣接する帯状部材の一側縁部及び他側縁部を順次接合することにより更生管を製管し、この更生管を回転させながら既設管に挿入する更生管の施工方法において、前記回転する更生管を支持するスペーサー又は転動体を、既設管底部近辺に配置したことを特徴とする更生管の施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した下水管路、上水管路、農業用水路、ガス管路などの既設管を更生する更生管の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既設管を更生する方法として、帯状部材を製管機に供給し、円弧を描くように螺旋状に巻き回し、隣接する帯状部材の一側縁部と他側縁部を重ね合わせて順次接合することにより更生管を製管し、該更生管を回転しながら既設管内に挿入する方法が提案されている(例えば、下記特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0003】
即ち、この特許文献1及び2に記載の発明は、製管機を既設管に隣接したマンホールなどの発進側立坑に設置し、該製管機によって更生管を製管し、該更生管を回転させながら順次押し出すようにして既設管に挿入するものである。
【0004】
しかしながらこの方法では、更生管が既設管内に深く挿入されるにつれて該更生管がその自重により垂れ下がり、該垂れ下がった部分が既設管底部に接触する。回転する更生管が既設管底部に接触すると、当該接触部位において摩擦が発生し、その結果、更生管外周面側に磨耗や破損が生じる。
【0005】
既設管に一定量の流体が流れているような場合には、更生管に浮力を与えるなどの発生する摩擦を低減させる手段も採れるが、流体が流れていない管路や流量が少ない場合には、係る手段は採用できない。
【0006】
又、発生する摩擦が大きくなると、更生管の円滑な回転や押し出しが妨げられて製管機に過度の負担が掛かり、場合によっては製管作業の続行が不可能となる。
【0007】
このような更生管と既設管との間に生じる摩擦を低減するため、更生管を既設管に挿入する前に、更生管外周面に存する断面T字状の補強リブに対し、既設管内周面に対して転接し得る転動体を係止する方法が開発されている(例えば、下記特許文献3参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2005−528243号公報
【特許文献2】特表2008−536027号公報
【特許文献3】特開平1−219227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献3に記載の方法は、更生管の製管中、該更生管の補強リブに次々と転動体を係止するものであるが、補強リブの形状及び転動体の形状につき特別な構造を要し、広範な適用の観点において問題がある。即ち、隣接する断面T字状の補強リブを利用して係止するものであるから、このような形状以外の補強リブを有する帯状部材に対しては適用することができない。
【0010】
本発明は、このような技術的課題を解決するために開発されたものであり、更生管の施工時における既設管底部と更生管との間に生じる摩擦を低減することができる新規な更生管の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明第1の更生管の施工方法(以下、「本発明第1方法」と称する。) は、帯状部材を螺旋状に巻き回し、螺旋状の互いに隣接する帯状部材の一側縁部及び他側縁部を順次接合することにより更生管を製管し、この更生管を回転させながら既設管に挿入する更生管の施工方法において、前記回転する更生管を支持する1本ないし複数本の棒状のスペーサーを、既設管底部近辺に配置したことを特徴とする。
【0012】
本発明第2の更生管の施工方法(以下、「本発明第2方法」と称する。) は、帯状部材を螺旋状に巻き回し、螺旋状の互いに隣接する帯状部材の一側縁部及び他側縁部を順次接合することにより更生管を製管し、この更生管を回転させながら既設管に挿入する更生管の施工方法において、前記回転する更生管を支持しつつ転動する1個ないし複数個の転動体を、既設管底部近辺に配置したことを特徴とする。
【0013】
以下、本発明第1方法及び本発明第2方法を順に詳細に説明する。
【0014】
本発明第1方法は、帯状部材を螺旋状に巻き回し、螺旋状の互いに隣接する帯状部材の一側縁部及び他側縁部を順次接合することにより更生管を製管し、この更生管を回転させながら既設管に挿入する更生管の施工方法である。
【0015】
このような更生管の施工方法において用いられる帯状部材としては、例えば、基板の裏面の長さ方向に沿って立ち上がる断面I字状或いはT字状の補強リブを設けたものや、該補強リブに金属板等の補強部材を埋設することにより自立強度を高めたものなどを挙げることができるが、本発明第1方法においては、前記帯状部材の形状について特に限定されるものではない。
【0016】
又、帯状部材の一側縁部及び他側縁部を順次接合する手段についても、接着式、融着式及び嵌め込み式等各種手段が存在するが、本発明第1方法においては、接合手段について特に限定されるものではない。
【0017】
そして、本発明第1方法においては、既設管に更生管を回転しながら挿入するにあたり、前記回転する更生管を支持する1本ないし複数本の棒状のスペーサーを、既設管底部近辺に配置する。
【0018】
即ち、本発明第1方法においては、前記棒状のスペーサーを、既設管底部近辺と更生管との間隙に介在させて回転する更生管を支持することにより、既設管底部に更生管が接触することを防止し、もって既設管に更生管を回転しながら挿入する際に発生する摩擦を低減するのである。
【0019】
本発明第1方法において、前記スペーサーとしては、棒状で既設管底部近辺において更生管を支持し得る物理的強度を有すれば特に限定されるものではない。具体的な形状としては、例えば、断面が略三角形状、略四角形状等の角棒形状のものや、断面が略円形の丸棒形状のものを挙げることができる。中でも丸棒形状のものは、回転する更生管の滑りが良く、又、更生管の回転を受けて回転し、更生管の回転を円滑にすることも期待されることから好ましい。
【0020】
スペーサーの径(太さ)についても、特に限定されるものではないが、スペーサーが細すぎると必要な強度を得られない場合があり、一方、スペーサーが太すぎると更生管の管径に影響を与える。そのため本発明第1方法においては、既設管の径にもよるが、スペーサーの径(太さ)につき、5〜100mm程度とすることが一般的に好ましい。
【0021】
本発明第1方法においては、前記棒状のスペーサーの長さについても特に限定されるものではない。このスペーサーの長さにつき、既設管底部近辺において更生管を支持した際に、該更生管の外周面に螺旋状に存する補強リブが少なくとも3点以上(好ましくは、5点以上)接触する程度の長さとすれば、補強リブ頂部に与える荷重を効果的に分散することができる。
【0022】
本発明第1方法においては、前記棒状のスペーサーに対し、その長さ方向に対して直立する複数の突起を形成することが好ましい。前記突起の具体例としては、リブや節、或いは螺旋状突起を挙げることができる。前記突起の高さについては特に限定されるものではないが、前記突起の高さが高すぎると更生管の管径に影響を与える。本発明においては、前記突起の高さにつき、1〜50mm程度とすることが一般的に好ましい。このような突起を有する棒状の部材としては異形鉄筋が市販されており(例えば、ダイワスチール社製SD295、SD345、SD390、SD490等)、これを使用することも可能である。
【0023】
本発明第1方法において用いられるスペーサーは、更生管の施工後に回収することが困難である。通常、更生管を施工するにあたっては、既設管と管体との間隙にモルタルなどの裏込め材を充填する裏込め材充填作業が一般的に行われるが、本発明第1方法においては、スペーサーの回収作業を行うことなく、裏込め材の充填が行われる。従って、スペーサーの素材としては、長期的に劣化し難い金属やプラスチックなどから選択することが好ましい。又、裏込め材に埋没したスペーサーによって該裏込め材の強度向上を期待することができるため、強度の高い素材を選択することがより好ましい。
【0024】
本発明第1方法においては、前記スペーサーを既設管底部近辺に配置する。これは、更生管がその自重により垂れ下がり、既設管底部近辺において接触する場合が殆どであることを理由とする。本発明第1方法において「既設管底部近辺」とは、既設管内の底部から幾分か周方向に沿った位置(環状の既設管であれば、該既設管の底部を原点として、そこから周方向に沿って±30度程度の位置)までを意味する。なお、本発明第1方法においてスペーサーを既設管底部近辺に配置するにあたっては、複数個のスペーサーを配置しても良い。複数個のスペーサーを既設管底部近辺に配置するにあたっては、該複数個のスペーサーを既設管の管路に沿って連続的に配置するようにしても、適当な間隔をおいて間欠的に配置しても良い。又、スペーサーは管路に沿って一列に配置するばかりではなく、二列以上の複数列となるように配置しても良い。
【0025】
ところで、本発明第1方法の実施中、既設管底部近辺に配置したスペーサーが、既設管の周方向に沿って押し退けられる場合がある。これは、更生管の自重が大きい場合や更生管の回転速度が速い場合に起き易い。スペーサーが既設管底部近辺から押し退けられると、既設管底部と更生管が接触するため、所望の摩擦低減効果を得られなくなる。
【0026】
そこで、本発明第1方法においては、保持具を用い、スペーサーを既設管底部近辺に保持することにより、該スペーサーが更生管によって押し退けられることを防止することが好ましい。なお、スペーサーが丸棒形状の場合に該スペーサーを既設管底部近辺に保持するにあたっては、特に該スペーサーが円周方向に回転可能となる状態で保持することが好ましい。
【0027】
続いて、本発明第2方法について詳細に説明するが、用いられる帯状部材、スペーサーに替えて用いられる転動体として好ましい素材やサイズ、及び文言等については、前記本発明第1方法において説明した事項と同様であることから、繰り返しを避けるために説明を省略する。
【0028】
本発明第2方法は、帯板状の帯状部材を螺旋状に巻き回し、螺旋状の互いに隣接する帯状部材の一側縁部及び他側縁部を順次接合することにより更生管を製管し、この更生管を回転させながら既設管に挿入する更生管の施工方法である。
【0029】
そして、本発明第2方法においては、既設管に更生管を回転しながら挿入するにあたり、前記回転する更生管を支持しつつ転動する1個ないし複数個の転動体を、既設管底部近辺に配置する。
【0030】
即ち、本発明第2方法においては、前記転動体を、既設管と更生管との間に介在させて、回転する更生管を支持することにより、既設管底部に更生管が接触することを防止している。又、本発明第2方法においては、前記転動体が更生管の回転を受けて転動するから、更生管の回転が円滑になる。その結果、既設管に更生管を回転しながら挿入する際に発生する摩擦が低減される。
【0031】
本発明第2方法において、前記転動体の形状としては、更生管の回転を受けて転動することができるものであれば特に限定されるものではない。具体的な形状としては、例えば、球形状、円柱形状、紡錘形状、又は亜鈴形状等を挙げることができる。なお、前記転動体は、既設管底部近辺において配置した際に、更生管の外周面に螺旋状に存する補強リブを支持するタイプのもの、更生管を形成する帯状部材における基板を支持するタイプのもの、及び補強リブと基板の双方を支持するタイプのものがある。
【0032】
本発明第2方法においては、転動体を、既設管底部近辺に配置する。転動体を、既設管底部近辺に配置するにあたっては、複数個の転動体を配置しても良い。
【0033】
本発明第2方法において、既設管底部近辺に配置した転動体は、更生管の回転を受けて転動することから、通常、更生管の押し出しとは関係なく、当初配置した位置に留まる。従って、更生管の施工作業中、転動体は、当初配置した位置において転動し続ける。これにより、定点的に転動体を配置することができ、比較的少数の転動体で効果的に摩擦を低減することができる。又、既設管内壁に段差等の不陸がある位置に転動体を配置すれば、当該不陸によって生じる更生管の不具合を是正することもできる。
【0034】
しかしながら、本発明第2方法の実施中、既設管底部近辺に配置した転動体が、既設管の周方向に沿って押し退けられる場合もある。
【0035】
そこで、本発明第2方法においては、転動体を転動可能に保持し得る保持具を用い、該転動体を既設管底部近辺に転動可能に保持することが好ましい。即ち、保持具を用いて、転動体を既設管底部近辺に転動可能に保持することにより、該転動体が更生管に押し退けられることを防止するのである。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、更生管の施工時における既設管底部と更生管との間に生じる摩擦を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明第1方法及び本発明第2方法に用いられる帯状部材の一例を示す斜視図(a)、及び断面図(b)である。
【図2】図2は、図1の帯状部材を接合する工程((a)溶融樹脂塗布工程、(b)接合工程)を説明する断面図である。
【図3】図3は、図1の帯状部材を用いて、従来の更生管の施工方法を実施している状態を示す説明図である。
【図4】図4は、本発明第1方法に係る実施の形態1を模式的に示す説明図((a)既設管の一部を切り欠いて示す側面図、(b)正面断面図)である。
【図5】図5は、本発明第1方法に係る実施の形態を模式的に示す説明図((a)既設管の一部を切り欠くと共に更生管を透過状態で示す斜視図、(b)正面断面図)である。
【図6】図6は、本発明第1方法に係る実施の形態を模式的に示す説明図((a)既設管の一部を切り欠くと共に更生管を透過状態で示す側面図、(b)正面断面図)である。
【図7】図7は、本発明第2方法に係る実施の形態1を模式的に示す説明図((a)既設管の一部を切り欠いて示す側面図、(b)正面断面図)である。
【図8】図8は、本発明第2方法に係る実施の形態2を模式的に示す説明図((a)既設管の一部を切り欠いて示す側面図、(b)正面断面図)である。
【図9】図9は、本発明第2方法に係る実施の形態3を模式的に示す説明図((a)既設管の一部を切り欠いて示す側面図、(b)正面断面図)である。
【図10】図10は、本発明第2方法に係る実施の形態4を模式的に示す説明図((a)既設管の一部を切り欠いて示す側面図、(b)正面断面図)である。
【図11】図11は、本発明第2方法に係る実施の形態5を模式的に示す説明図((a)既設管の一部を切り欠いて示す側面図、(b)正面断面図)である。
【図12】図12は、本発明第1方法及び本発明第2方法に用いられる帯状部材の他の例を示す断面図(a)、及びその接合状態を示す断面図(b)である。
【図13】図13は、本発明第1方法及び本発明第2方法に用いられる帯状部材の更に他の例を示す断面図(a)、及びその接合状態を示す斜視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1(a)に示す帯状部材100は、可撓性を有する合成樹脂、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどを押出成形して形成されたものである。この帯状部材100においては、長尺帯板状の基板101の裏面長さ方向に沿って、複数本(実施例においては3本)の断面I字状の補強リブ102が直立状態で形成されている。そして、基板101の一方の側縁部(以下、一側縁部という。)には、基板101の厚み分だけ裏面側に段落ちした段落ち部103が形成されている。これは、帯状部材100を螺旋状に巻き回した際に、隣接する帯状部材100における基板101の他方の側縁部(以下、他側縁部という。)を配置することができるようにしたものである。なお、図1(b)の断面図に示すように、前記各補強リブ102には、鋼板などの補強部材104が埋設されている。
【0039】
この帯状部材100を更生管として形成するにあたっては、基板101の裏面側、即ち、補強リブ102が立設された側が外周面となるよう螺旋状に巻き回される。この際、図2(a)に示すように、互いに隣接する2つの帯状部材100,100のうち、後続する帯状部材100の一側縁部(段落ち部103)に溶融樹脂cが塗布される。次いで、図2(b)に示すように、溶融樹脂cが塗布された後続する帯状部材100の一側縁部を、先行する帯状部材100の他側縁部に外側(先行する帯状部材100の外周面側)から重ね合わせることにより、後続する帯状部材100の基板101の一側縁部(段落ち部103)を先行する帯状部材100の基板101の他側縁部に配置して接合し、所定の管径の更生管を形成する。
【0040】
従来公知の更生管の施工方法においては、図3に示すように、前記製管機2によって帯状部材100を螺旋状に巻き回して形成された更生管Sは、回転しながら順次押し出されるようにして既設管Lに挿入される。既設管Lに挿入された更生管Sは製管機2にて片持支持されているため、更生管Sが既設管L内に深く挿入されるにつれて該更生管Sがその自重により垂れ下がり、該垂れ下がった部分が既設管Lの底部に接触する。回転し続ける更生管Sが既設管Lの底部に接触すると当該接触部位において摩擦が発生し、その結果、更生管Sの外周面側に磨耗や破損が生じる。
【0041】
特に、前述したような基板101の長さ方向に沿って直立する断面I字状の補強リブ102を配した帯状部材100を用いた場合、直立する補強リブ102の頂部に荷重が集中するため、より一層磨耗や破損が顕著となり、補強部材104が露出する場合もある。
【0042】
又、更生管Sが既設管Lの底部に接触して発生する摩擦が大きくなると、更生管Sの円滑な回転及び押し出しが妨げられ、製管機2に対して過度の負担が掛かり、場合によっては製管作業の続行が不可能となる。
<本発明第1方法に係る実施の形態>
以下、本発明第1方法に係る実施の形態を図面を参照しながら説明するが、本発明第1方法はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0043】
‐実施の形態1‐
図4は、本発明第1方法に係る実施の形態1を模式的に示す説明図である。この実施の形態においては、外周面に複数本のリブ11を形成した丸棒形状のスペーサー1を、既設管Lの底部近辺における更生管Sとの間隙に配置している。即ち、本実施の形態においては、更生管Sを施工するにあたり、既設管Lの底部近辺に配置された丸棒形状のスペーサー1が、更生管Sの外周面に存する補強リブ102を、その並びに沿って複数点で支持する。
【0044】
これにより、既設管L内に回転しながら挿入される更生管Sが既設管Lの底部に接触することが防止され、既設管Lに更生管Sを挿入する際に発生する摩擦が低減される。
【0045】
又、前記スペーサー1が更生管Sの回転を受けて回転することにより、更生管Sの回転が円滑になる。
【0046】
更に、本実施の形態においては、リブ11の存在によりスペーサー1の回転抵抗が低減され、より一層更生管Sの回転が円滑になる。
【0047】
加えて、本実施の形態においては、棒状のスペーサー1を用いて、更生管Sの外周面に存する補強リブ102を、その並びに沿って複数点で支持することにより、該補強リブ102の頂部に掛かる負担を軽減している。
【0048】
‐実施の形態2‐
図5は、本発明第1方法に係る実施の形態2を模式的に示す説明図である。この実施の形態においては、丸棒形状のスペーサー1を、U字状の保持具3を用いて既設管Lの底部近辺における更生管Sとの間隙に回転可能に保持している。即ち、本実施の形態においては、更生管Sを施工するにあたり、既設管Lの底部近辺に回転可能に保持した丸棒形状のスペーサー1が、更生管Sの外周面に存する補強リブ102を、その並びに沿って複数点で支持する。
【0049】
これにより、既設管L内に回転しながら挿入される更生管Sが既設管Lの底部に接触することが防止され、既設管Lに更生管Sを挿入する際に発生する摩擦が低減される。
【0050】
又、前記スペーサー1が更生管Sの回転を受けて回転することにより、更生管Sの回転が円滑になる。
【0051】
更に、本実施の形態においては、棒状のスペーサー1を用いて、更生管Sの外周面に存する補強リブ102を、その並びに沿って複数点で支持することにより、該補強リブ102の頂部に掛かる負担を軽減している。
加えて、本実施の形態においては、丸棒形状のスペーサー1を、保持具3を用いて既設管Lの底部に回転可能に保持することにより、スペーサー1が既設管底部近辺から押し退けられることを防止している。
【0052】
‐実施の形態3‐
図6は、本発明第1方法に係る実施の形態3を模式的に示す説明図である。この実施の形態においては、丸棒形状のスペーサー1を2本、両端部に該スペーサー1を嵌装し得る支持口31を設けた形状の保持具3を用いて、既設管Lの底部近辺における更生管Sとの間隙に回転可能に保持している。即ち、本実施の形態においては、更生管Sを施工するにあたり、既設管Lの底部近辺に回転可能に並列配置した2本の丸棒形状のスペーサー1が、更生管Sの外周面に存する補強リブ102を、その並びに沿って複数点で支持する。
【0053】
これにより、既設管L内に回転しながら挿入される更生管Sが既設管Lの底部に接触することが防止され、既設管Lに更生管Sを挿入する際に発生する摩擦が低減される。
【0054】
又、前記スペーサー1が更生管Sの回転を受けて回転することにより、更生管Sの回転が円滑になる。
【0055】
更に、丸棒形状のスペーサー1を、保持具3を用いて既設管Lの底部に回転可能に保持することにより、スペーサー1が既設管底部近辺から押し退けられることを防止している。
【0056】
加えて、既設管Lの底部近辺に2本のスペーサー1を並列配置することにより、該補強リブ102の頂部に掛かる負担をより一層軽減している。
<本発明第2方法に係る実施の形態>
以下、本発明第2方法に係る実施の形態を図面を参照しながら説明するが、本発明第2方法はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0057】
‐実施の形態1‐
図7は、本発明第2方法に係る実施の形態1を模式的に示す説明図である。この実施の形態においては、球形状の転動体10を、既設管Lの底部近辺における更生管Sとの間隙複数箇所に定点的に配置している。即ち、本実施の形態においては、更生管Sを施工するにあたり、更生管Sを形成する帯状部材100における基板101を支持しつつ転動する球形状の転動体10を複数個、既設管Lの底部近辺に配置する。
【0058】
これにより、既設管L内に回転しながら挿入される更生管Sが既設管Lの底部に接触することが防止され、既設管Lに更生管Sを挿入する際に発生する摩擦が低減される。
【0059】
又、前記転動体10が更生管Sの回転を受けて転動することにより、更生管Sの回転が円滑になる。
【0060】
更に、前記転動体10は、更生管Sを形成する帯状部材100における基板101を支持するタイプであることから、該帯状部材100における補強リブ102の頂部は既設管Lにも転動体10にも接触しない。これより、補強リブ102の頂部に対する磨耗や損傷の発生を効果的に防止することができる。
【0061】
‐実施の形態2‐
図8は、本発明第2方法に係る実施の形態2を模式的に示す説明図である。この実施の形態においては、円柱形状の転動体10を、既設管Lの底部近辺における更生管Sとの間隙複数箇所に定点的に配置している。即ち、本実施の形態においては、更生管Sを施工するにあたり、更生管Sを形成する帯状部材100における基板101を支持しつつ転動する円柱形状の転動体10を複数個、既設管Lの底部近辺に配置する。
【0062】
これにより、既設管L内に回転しながら挿入される更生管Sが既設管Lの底部に接触することが防止され、既設管Lに更生管Sを挿入する際に発生する摩擦が低減される。
【0063】
又、前記転動体10が更生管Sの回転を受けて転動することにより、更生管Sの回転が円滑になる。
【0064】
更に、前記転動体10は、更生管Sを形成する帯状部材100における基板101を支持するタイプであることから、該帯状部材100における補強リブ102の頂部は既設管Lにも転動体10にも接触しない。これより、補強リブ102の頂部に対する磨耗や損傷の発生を効果的に防止することができる。
【0065】
加えて、本実施の形態においては、円柱形状の転動体10を用いているから、転動体1と更生管Sとの接触面積が大きくなり、更生管Sの回転が効率よく転動体10に伝わる。その結果、転動体10が安定して転動する。
【0066】
‐実施の形態3‐
図9は、本発明第2方法に係る実施の形態3を模式的に示す説明図である。この実施の形態においては、紡錘形状の転動体10を、既設管Lの底部近辺における更生管Sとの間隙複数箇所に定点的に配置している。即ち、本実施の形態においては、更生管Sを施工するにあたり、更生管Sを形成する帯状部材100における補強リブ101を支持しつつ転動する紡錘形状の転動体10を複数個、既設管Lの底部近辺に配置する。
【0067】
これにより、既設管L内に回転しながら挿入される更生管Sが既設管Lの底部に接触することが防止され、既設管Lに更生管Sを挿入する際に発生する摩擦が低減される。
【0068】
又、前記転動体10が更生管Sの回転を受けて転動することにより、更生管Sの回転が円滑になる。
【0069】
更に、本実施の形態においては、紡錘形状の転動体10が隣接する補強リブ102の双方に接触するように設定している。これより、該補強リブ102の頂部に掛かる負担が分散される。
【0070】
‐実施の形態4‐
図10は、本発明第2方法に係る実施の形態4を模式的に示す説明図である。この実施の形態においては、円柱形状の転動体10を、既設管Lの底部における更生管Sとの間隙複数箇所に定点的に配置すると共に、各箇所に3個ずつ配置している。即ち、本実施の形態においては、更生管Sを施工するにあたり、更生管Sを形成する帯状部材100における基板101を支持しつつ転動する円柱形状の転動体10を既設管Lの底部近辺複数箇所に配置すると共に、各箇所に3個ずつ配置している。
【0071】
これにより、既設管L内に回転しながら挿入される更生管Sが既設管Lの底部に接触することが防止され、既設管Lに更生管Sを挿入する際に発生する摩擦が低減される。
【0072】
又、前記転動体10が更生管Sの回転を受けて転動することにより、更生管Sの回転が円滑になる。
【0073】
更に、前記転動体10は、更生管Sを形成する帯状部材100における基板101を支持するタイプであることから、該帯状部材100における補強リブ102の頂部は既設管Lにも転動体10にも接触しない。これより、補強リブ102の頂部に対する磨耗や損傷の発生を効果的に防止することができる。
【0074】
加えて、本実施の形態においては、転動体10を各定点に複数個配置することにより、各転動体10に係る荷重を分散させることができ、該転動体10が、更生管Sの荷重によって底部近辺から押し退けられることを防止している。
【0075】
‐実施の形態5‐
図11は、本発明第2方法に係る実施の形態5を模式的に示す説明図である。この実施の形態においては、外周面に亜鈴形状の転動体10を、既設管Lの底部近辺における更生管Sとの間隙複数箇所に定点的に配置している。即ち、本実施の形態においては、更生管Sを施工するにあたり、更生管Sを形成する帯状部材100における基板101及び/又は補強リブ102を支持しつつ転動する球形状の転動体10を複数個、既設管Lの底部近辺に配置する。
【0076】
これにより、既設管L内に回転しながら挿入される更生管Sが既設管Lの底部に接触することが防止され、既設管Lに更生管Sを挿入する際に発生する摩擦が低減される。
【0077】
又、前記転動体10が更生管Sの回転を受けて転動することにより、更生管Sの回転が円滑になる。
【0078】
なお、このような亜鈴形状の転動体10にあっては、中央部の窪みと両端部との段差を、更生管Sを形成する帯状部材100における補強リブ102の高さより大きく設定すると、更生管Sにおける基板101を支持するタイプとなる。一方、中央部の窪みと両端部との段差を、更生管Sを形成する帯状部材100における補強リブ102の高さより小さく設定すると、更生管Sにおける補強リブ102を支持するタイプとなる。又、中央部の窪みと両端部との段差を、更生管Sを形成する帯状部材100における補強リブ102の高さと同程度に設定すると、更生管Sにおける帯状部材S及び補強リブ102の双方を支持するタイプとなる。もちろん、転動体10を隣接する補強リブ102の間に嵌り込み得るサイズとし、更生管Sにおける基板101を支持するタイプとしても良い。
【0079】
ところで、前記本発明第1方法及び本発明第2方法に係る実施の形態においては、いずれも図1に示すような基板101の裏面長さ方向に沿って断面I字状の補強リブ102を備えた帯状部材100を用いているが、本発明第1方法及び本発明第2方法は、いずれもこのような形状の帯状部材100のみを対象とするものではなく、例えば、図12(a)及び図13(b)に示すような基板101の裏面長さ方向に沿って断面T字状の補強リブ102を備えた帯状部材100を用いることもできる。又、帯状部材100の接合手段についても、溶融樹脂を用いる場合に限られず、例えば、図12(b)に示すような帯状部材100の一側縁部に設けた雄型105を他側縁部に設けた雌型106に嵌め込む嵌め込み手段や、図13(b)に示すような隣接する帯状部材100間に生じる係合部に、別体の嵌合材107を嵌め込む嵌め込み手段を用いても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 スペーサー
2 製管機
3 保持具
10 転動体
100 帯状部材
S 更生管
L 既設管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状部材を螺旋状に巻き回し、螺旋状の互いに隣接する帯状部材の一側縁部及び他側縁部を順次接合することにより更生管を製管し、この更生管を回転させながら既設管に挿入する更生管の施工方法において、前記回転する更生管を支持する1本ないし複数本の棒状のスペーサーを、既設管底部近辺に配置したことを特徴とする更生管の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の更生管の施工方法において、前記スペーサーが丸棒形状である更生管の施工方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の更生管の施工方法において、前記スペーサーには、その長さ方向に対して直立する複数の突起を形成してなる更生管の施工方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の更生管の施工方法において、前記スペーサーを保持具を用いて既設管底部近辺に保持してなる更生管の施工方法。
【請求項5】
帯状部材を螺旋状に巻き回し、螺旋状の互いに隣接する帯状部材の一側縁部及び他側縁部を順次接合することにより更生管を製管し、この更生管を回転させながら既設管に挿入する更生管の施工方法において、前記回転する更生管を支持しつつ転動する1個ないし複数個の転動体を、既設管底部近辺に配置したことを特徴とする更生管の施工方法。
【請求項6】
請求項5に記載の更生管の施工方法において、前記転動体が、球形状、円柱形状、紡錘形状又は亜鈴形状を有する更生管の施工方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の更生管の施工方法において、前記転動体を保持具を用いて既設管底部近辺に転動可能に保持してなる更生管の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−102626(P2011−102626A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258257(P2009−258257)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】