説明

書類処理方法および装置

【課題】書類に記載された機密情報の漏洩を回避でき、かつ、環境への負荷の小さい書類処理方法および装置を提供することを目的とする。
【解決手段】用紙Pの印刷面Psは熱ローラであるトナー除去用ローラ4Aによって加熱されつつ擦られる。これにより、用紙Pの印刷面Psに定着しているトナーTが軟化して加熱部材に付着し、またトナー除去用ローラ4Aによって用紙上で引きずられ、べったりと広がる。これにより、用紙Pに印刷された情報が判読不能となる。このように、特殊な薬剤等を使用することなく、簡易で環境への負荷が小さな手段によって用紙Pに記載された情報の漏えい防止を図り、用紙Pを良質なパルプ原料としてリサイクルに供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書類処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、OA化の進展に伴い事業系の紙ごみが急増しており、その処理が問題となっている。その中でも機密情報が記載された書類は、その情報の漏洩を防ぐために、シュレッダーで細帯状に裁断した後、焼却したり処理業者に引き取ってもらう等して処理を行うのが普通であった。
【0003】
ところで今日、地球環境の保護の目的で、古紙をリサイクルしようという動きが活発になってきている。しかし、シュレッダーを使用する従来の紙の処理方法では、紙の繊維が細かく分断されるので、リサイクルしようとしても良質なパルプ原料が得られないという問題がある。
【0004】
この問題を解決するために、例えば特許文献1および2に示すように、除去剤を用いて用紙上に定着したトナーを除去する技術が開発されている。
【特許文献1】特開平7−152290公報
【特許文献2】特開平7−140704公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、除去剤も化学物質等を使用したものであり、環境にある程度の負荷をかけてしまうものであるから、地球環境の保護という観点からはなお改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、書類に記載された機密情報の漏洩を回避でき、かつ、環境への負荷の小さい書類処理方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための手段として、本発明の書類処理方法は、レーザプリンタを用いて情報が印刷されることによりトナーが表面に定着した用紙において前記情報が判読不能となるよう処理する方法であって、前記用紙の印刷面を加熱部材により加熱しつつ擦ることにより前記トナーを軟化させつつ前記印刷面に擦り付け処理するものである。
【0008】
また、本発明の書類処理装置は、レーザプリンタを用いて情報が印刷されることによりトナーが表面に定着した用紙において前記情報が判読不能となるよう処理する装置であって、用紙を搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって搬送される用紙に圧接される加熱部材と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、用紙の印刷面は加熱部材によって加熱されつつ擦られる。これにより、用紙の印刷面に定着しているトナーが軟化して加熱部材に付着し、また加熱部材によって用紙上で引きずられ、べったりと広がる。これにより、用紙に印刷された情報が判読不能となる。このように、特殊な薬剤等を使用することなく、簡易で環境への負荷が小さな手段によって用紙に記載された情報の漏えい防止を図り、用紙を良質なパルプ原料としてリサイクルに供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本発明の書類処理方法および装置を具体化した実施形態について、図1および図2を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
図1には、本実施形態の書類処理装置1の側面図を示す。本実施形態の書類処理装置1は、レーザプリンタによって印刷が行われた用紙Pの印刷内容を判別不能なように処理するためのものである。この書類処理装置1には、用紙Pを搬送するための2対の送りローラ2、3が備えられている。送りローラ2、3としては例えばプリンタやコピー機等の送りローラとして使用される一般的なものを使用できる。2対の送りローラ2、3は用紙Pの搬送方向に沿って並列しており、それぞれ用紙Pを上下から挟み付けて図1の左側から右側(図中、黒色太矢印方向)に向かって搬送するようにされている。
【0012】
2対の送りローラ2、3の間には、1対のトナー除去用ローラ4が配されている。このトナー除去用ローラ4は、2対の送りローラ2、3と並列して配されており、送りローラ2、3とは逆方向に回転する(図中細矢印参照)。1対(2本)のトナー除去用ローラ4、4のうち用紙Pの印刷面Ps側(図1において上側)に配されるものは、図示しないヒータが内蔵された熱ローラ4Aとされ、他方はこの熱ローラ4Aとの間で用紙Pを挟み込み可能な加圧用ローラ4Bとされている。なお、熱ローラ4Aおよび加圧用ローラ4Bは、送りローラ2、3によって搬送される用紙Pを挟み付け可能な圧接位置(図1の位置)と、用紙Pから離間する離間位置との間で移動可能とされている。
【0013】
次に、このように構成された書類処理装置1を用いて用紙Pを処理する方法について説明する。まず、用紙Pを、印刷面Psを上側(熱ローラ4A側)に向けて、搬送方向上流側にある一対の送りローラ2、2間に差し入れる。そして、送りローラ2および3を回転駆動させることにより用紙Pを搬送する。搬送の開始段階では、トナー除去用ローラ4A、4Bはそれぞれ離間位置にあり、用紙Pに接触しないようにされている。
【0014】
用紙Pの先端が搬送方向下流側の送りローラ3に達すると、用紙Pは2対の送りローラ2、3によって張設されつつ搬送される状態となる。この状態で、トナー除去用ローラ4を圧接位置まで移動させると共に、送りローラ2、3とは逆方向に回転させる。すると、用紙Pの印刷面Psは熱ローラ4によって用紙Pの搬送方向とは逆方向に向かって擦られる(図2を併せて参照)。同時に、熱ローラ4によって用紙Pの印刷面Psが加熱される。これにより、用紙Pの印刷面Psに定着しているトナーTが軟化して熱ローラ4Aに付着し、また熱ローラ4Aによって用紙P上で引きずられ、べったりと広がる。これにより、用紙Pに印刷された情報が判読不能となる。
このようにして記載された情報が判読不能なように処理された用紙Pは、リサイクル等に供される。
【0015】
以上のように、本実施形態によれば、特殊な薬剤等を使用することなく、簡易で環境への負荷が小さな手段によって用紙Pに記載された情報の漏えい防止を図り、用紙Pを良質なパルプ原料としてリサイクルに供することができる。
【0016】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について、図3を参照しつつ説明する。図3には、本実施形態の書類処理装置10の側面図を示す。本実施形態の書類処理装置10は、上記実施形態と同様、レーザプリンタによって印刷が行われた用紙Pの印刷内容を判別不能なように処理するためのものである。
【0017】
この書類処理装置10には、用紙Pを搬送するための2対の送りローラ11、12が備えられている。送りローラ11、12としては例えばプリンタやコピー機等の送りローラとして使用される一般的なものを使用できる。2対の送りローラ11、12は用紙Pの搬送方向に沿って並列しており、用紙Pを上下から挟み付けて図3の左側から右側(図中、黒色太矢印方向)に向かって搬送するようにされている。図中細矢印はローラの回転方向を示している。
【0018】
2対の送りローラ11、12のうち用紙Pの搬送方向下流側の送りローラ12は、トナー除去用ローラを兼ねている(以下、上流側のローラを「送りローラ11」、下流側のローラを「トナー除去用ローラ12」と記載する)。1対(2本)のトナー除去用ローラ12、12のうち用紙Pの印刷面Ps側(図3において上側)に配されるものは、図示しないヒータが内蔵された熱ローラ12Aとされ、他方はこの熱ローラ12Aとの間で用紙Pを挟み込み可能な加圧用ローラ12Bとされている。このトナー除去用ローラ12は、ニップ圧が送りローラ11のそれよりも低く、送り速度が送りローラ11のそれよりも高くなるように設定されている。
【0019】
このように構成された書類処理装置10を用いて用紙Pを処理するためには、まず、用紙Pを、印刷面Psを上側(熱ローラ12A側)に向けて送りローラ11、11間に差し入れ、送りローラ11およびトナー除去用ローラ12を回転駆動させることにより用紙Pを搬送する。
【0020】
用紙Pの先端がトナー除去用ローラ12に達すると、用紙Pは送りローラ11、およびトナー除去用ローラ12によって張設されつつ搬送される状態となる。このとき、トナー除去用ローラ12のニップ圧が送りローラ11のそれよりも低く、送り速度が送りローラ11のそれよりも高く設定されているために、トナー除去用ローラ12が滑りながら用紙Pを搬送する状態となる。これにより、用紙Pの印刷面Psが熱ローラ12Aによって擦られる。同時に、熱ローラ12Aによって用紙Pの印刷面Psが加熱される。これにより、用紙Pの印刷面Psに定着しているトナーTが軟化して熱ローラ12Aに付着し、また熱ローラ12Aによって用紙P上で引きずられ、べったりと広がる。これにより、用紙Pに印刷された情報が判読不能となる。
【0021】
以上のように、本実施形態によっても、簡易で環境への負荷が小さな手段によって用紙Pに記載された情報の漏えい防止を図り、用紙Pを良質なパルプ原料としてリサイクルに供することができる。
【0022】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態について、図4を参照しつつ説明する。図4には、本実施形態の書類処理装置20の側面図を示す。本実施形態の書類処理装置20は、上記実施形態と同様、レーザプリンタによって印刷が行われた用紙Pの印刷内容を判別不能なように処理するためのものである。
【0023】
この書類処理装置20には、用紙Pを搬送するための2対の送りローラ21、22が備えられている。送りローラ21、22としては例えばプリンタやコピー機等の送りローラとして使用される一般的なものを使用できる。2対の送りローラ21、22は用紙Pの搬送方向に沿って並列しており、それぞれ用紙Pを上下から挟み付けて図4の左側から右側(図中、黒色太矢印方向)に向かって搬送するようにされている。図中細矢印はローラの回転方向を示している。2対の送りローラ21、22のうち用紙Pの搬送方向下流側に位置する送りローラ22は、ニップ圧・送り速度ともに上流側の送りローラ21のそれよりも高くなるように設定されている。
【0024】
なお、下流側の送りローラ22としては、上流側に位置する送りローラ21よりも直径の大きなものを使用している。また、下流側の送りローラ22は、その搬送面の高さ(一対のローラ22A、22Bの接触面の高さ)が、上流側の送りローラ21のそれよりもやや高くなる位置(すなわち、搬送される用紙Pの印刷面Ps側とは逆方向)にずらして配されている。さらに、下流側の送りローラ22については、一対のローラ22A、22Bのうち上側(搬送される用紙Pの印刷面Psとは逆側)の送りローラ22Aに対して下側(搬送される用紙Pの印刷面Ps側)の送りローラ22Bが搬送方向下流側に僅かにずれた位置に配されている。このように構成しているのは、用紙Pの搬送中に後述の加熱板23に押されることにより用紙Pの先端が逃げても、下流側の送りローラ22の食い込み部に用紙Pの先端がスムーズに食い込んでいくことが可能なようにするためである。
【0025】
2対の送りローラ21、22の間には、加熱板23が配されている。この加熱板23は、金属により板状に形成され、内部に図示しないヒータが内蔵されている。加熱板23において用紙Pと接触する接触面23Aには、角部に面取りが施されて、搬送されてくる用紙Pの引っ掛かりが回避できるようにされている。
【0026】
このように構成された書類処理装置20を用いて用紙Pを処理するためには、まず、用紙Pを、印刷面Psを下側(加熱板23側)に向けて送りローラ21、21間に差し入れ、送りローラ21、22を回転駆動させることにより用紙Pを搬送する。
【0027】
用紙Pの先端が下流側の送りローラ22に達すると、用紙Pは送りローラ21、22によって張設されつつ搬送される状態となる。このとき、下流側の送りローラ22のニップ圧・送り速度がともに上流側の送りローラ21のそれよりも高くなるように設定されているために、用紙Pが両送りローラ21、22間で強く張設されつつ搬送される状態となる。
【0028】
この状態で、加熱板23が用紙Pの印刷面Psに接触し、用紙Pの搬送に従ってその表面を加熱しつつ擦る。このとき、上述のように送りローラ21、22間でニップ圧および送り速度に差をつけることで、用紙Pが両送りローラ21、22間で強く張設される状態となっているので、加熱板23を押し当てても用紙Pが撓むことがなく、加熱板23が充分な圧力で用紙Pに押し付けられる。これにより、用紙Pの表面に定着しているトナーTが軟化して加熱板23に付着し、また加熱板23によって用紙P上で引きずられ、べったりと広がる。これにより、用紙Pに印刷された情報が判読不能となる。
【0029】
以上のように、本実施形態によっても、簡易で環境への負荷が小さな手段によって用紙Pに記載された情報の漏えい防止を図り、用紙Pを良質なパルプ原料としてリサイクルに供することができる。
【0030】
本発明の技術的範囲は、上記した実施形態によって限定されるものではなく、例えば、次に記載するようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
1)第1実施形態および第2実施形態では、一対のトナー除去用ローラ4、12のうち用紙Pの印刷面Psに接触するローラ4A、12Aのみが熱ローラとされていたが、相手側のローラ4B、12Bも熱ローラとし、用紙の両面から加熱が可能なようにされていても構わない。
【0031】
2)第3実施形態において、加熱板の材質は必ずしも金属である必要はなく、耐熱性および用紙の表面を擦ることが可能な程度の硬度を有するものであればいかなるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態の書類処理装置の側面図
【図2】第1実施形態の書類処理装置の部分拡大側面図
【図3】第2実施形態の書類処理装置の側面図
【図4】第3実施形態の書類処理装置の側面図
【符号の説明】
【0033】
1、10,20…書類処理装置
2、3、11、21、22…送りローラ(搬送装置)
4A、12A…熱ローラ(加熱部材)
23…加熱板(加熱部材)
P…用紙
Ps…印刷面
T…トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザプリンタを用いて情報が印刷されることによりトナーが表面に定着した用紙において前記情報が判読不能となるよう処理する方法であって、
前記用紙の印刷面を加熱部材により加熱しつつ擦ることにより前記トナーを軟化させつつ前記印刷面に擦り付け処理する、書類処理方法。
【請求項2】
レーザプリンタを用いて情報が印刷されることによりトナーが表面に定着した用紙において前記情報が判読不能となるよう処理する装置であって、
用紙を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送される用紙に圧接される加熱部材と、を備える書類処理装置。
【請求項3】
前記搬送装置が2対の送りローラであり、
前記加熱部材が前記2対の送りローラ間を搬送される前記用紙の前記印刷面に接触するように配されるとともに前記送りローラとは逆方向に回転する熱ローラである、請求項2に記載の書類処理装置。
【請求項4】
前記搬送装置が2対の送りローラであり、
前記2対の送りローラのうち用紙の搬送方向下流側に位置する送りローラが、用紙の印刷面に接触する熱ローラおよびこの熱ローラとの間で用紙を挟み込み可能な加圧用ローラを備えるものであり、
前記搬送方向下流側に位置する送りローラのニップ圧が搬送方向上流側に位置する送りローラのニップ圧よりも低くされ、
前記搬送方向下流側に位置する送りローラの送り速度が前記搬送方向上流側に位置する送りローラの送り速度よりも高く設定されている、請求項2に記載の書類処理装置。
【請求項5】
前記搬送装置が2対の送りローラであり、
前記加熱部材が前記2対の送りローラ間を搬送される前記用紙の前記印刷面に接触するように配される加熱板である、請求項2に記載の書類処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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