説明

最適化させた時間・温度指示薬

本発明は、着色状態のスピロピランおよび着色および変色反応速度を制御できる調整剤を含む時間・温度指示薬に関する。アモルファス、結晶性または混合アモルファス−結晶性構造を有するスピロピラン混合固体形成できなければならない調整剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色状態のフォトクロミック化合物ならびに着色および脱色反応速度を制御することができる調整剤を含む時間・温度指示薬に関する。本発明はさらに、スピロピラン顔料の着色および脱色反応速度に影響を及ぼすための調整剤の使用に関する。
【0002】
生鮮品の取り扱いをモニタリングするための変色もしくは発色温度感受性指示薬は、当該技術分野で周知である。このような生鮮品は、例えば食品、医薬品、生物材料、化学物質、コーティング組成物、接着剤、化粧品、食品添加物、写真用品およびワクチンである。一定温度にてある期間貯蔵される物品の累積値として温度および時間をモニタリングするため指示薬システムおよび装置に対する関心が増大している。このような指示薬システムは、物品が過度温度暴露のために品質低下点もしくは危険な状態に達した際のシグナルを発するために使用される。
【0003】
様々な種類の色素を時間・温度指示薬に使用する。特定の波長の光を照射すると、色素は可逆的に変色する。光の形態でのエネルギーの供給によって、これらの色素分子はさらに高いエネルギー状態、好ましくは着色状態に変わり、エネルギー供給が中断されると再度この状態を離れ、その結果として無色または着色し難い状態に戻る。
【0004】
生鮮品の保存期間は短期間(例えば、数時間または数日)から、かなり長期間(例えば、数ヶ月)まで様々である。その結果、1種の色素では時間・温度指示薬として広く許容可能とはならない。
【0005】
国際出願第WO99/39197号(Ciba)は、固体として、例えばガラスまたは結晶の形態と、溶液との両方で製造することができるフォトクロミック化合物を含む時間・温度指示薬を示唆している。結晶性指示薬は、典型的には1日以上の変色時間を示し、アモルファス指示薬は通常1日未満の変色時間を示す。合成条件を選択することによるか、または結晶成長プロセスを変えることによって、変色時間を特に設定することができる。
【0006】
US20060068315は、スピロ色素、ならびにアルミニウムキノリン複合体、ポルフィリン、ポルフィン、インドシアニン色素、フェノキサジン誘導体、フタロシアニン色素、ポリメチルインドリウム色素、ポリメチル色素、グアイアズレニル色素、クロコニウム色素、ポリメチンインドリウム色素、金属複合体IR色素、シアニン色素、スクアリリウム色素、カルコゲノピリロアリーリデン色素、インドリジン色素、ピリリウム色素、キノイド色素、キノン色素、アゾ色素、およびこれらの混合物または誘導体から選択される放射アンテナを含み、場合によって芳香族炭化水素、フェノール性エーテル、芳香族酸エステル、6以上の炭素鎖を有する長鎖脂肪酸エステル、ポリエチレンワックス、およびこれらの誘導体からなる群から選択される溶融助剤をさらに含む発色組成物を記載する。発色組成物は光ディスク上に画像を形成するのに有用である。この文献は時間・温度指示薬の漂白速度に影響を及ぼす問題について対処していない。
【0007】
本発明の目的は、色素の置換パターンを変更することなく、生鮮品の保存期間に対して変色時間を調節できる時間・温度システムを見いだすことである。
【0008】
調整剤をスピロピランに添加することによって、前記問題が解決されることが判明した。
【0009】
したがって、本発明は、スピロピランおよび、アモルファス、結晶性または混合アモルファス−結晶性構造を有するスピロピラン混合固体を形成できる調整剤を含む時間・温度指示薬に関する。
【0010】
定義:
スピロピランは、共通のスピロ炭素中心を介して別のヘテロ環と結合したピラン環からなる。無色スピロピランをUV光で照射することによってC−O結合の不均等開裂が起こり、開環着色種が形成される。
【0011】
好適なスピロピランは、WO05/075978(Freshpoint)、WO08/083925(Freshpoint)、WO08/090045(Freshpoint)および2008年5月21日に出願された欧州特許出願EP08156605号(Ciba)に開示されているようなものである。
【0012】
国際出願第WO05075978号は、式(III):
【化1】

[式中、
R3は、H、ハロゲン、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環、C3〜C8員環非芳香族複素環、またはアジドからなる群から選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、および非芳香族炭素環は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、ニトロ、アジド、またはスルホから選択される1以上の基によって置換されていてもよく、
R4は、C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、C1〜C6アルカノイル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C6〜C14アリール、C4〜C14ヘテロアリール、C3〜C8員非芳香族炭素環、C3〜C8員環非芳香族複素環、ヒドロキシルまたは−CH=CH−CNからなる群から選択され、そして
YはC7〜C15アルアルキルから選択され、ここで前記アルアルキルは、ハロゲン、好ましくはフッ素から選択される1以上の基によって置換されていてもよい]の1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロ−スピロ(2H−1−ベンゾピラン−2,2’−2H−インドール)のスピロピラン誘導体を含むTTIを開示している。
【0013】
WO05075978に開示されているスピロピランの具体例を以下に示す:
【化2】

【0014】
本来は無色の指示薬をUV光または近UV光で照射すると、式Iの化合物のピラン環が開環し、そして隣接する二重結合がシス形からトランス形に切り替わり、可視領域で強い吸収帯を有し、UV光をオフにした後に化合物Iに戻る異性体IIを生成する。
【0015】
国際公開第WO08/083925号は、式(I)
【化3】

[式中、
1は、水素、−C1〜C6アルコキシ、ハロゲン、−C1〜C6アルキルまたは−NO2であり、
2は、水素または−C1〜C6アルコキシであり、
3は、NO2またはハロゲンであり、
4は、水素、−C1〜C6アルコキシまたはハロゲンであり、
5は、水素、ハロゲン、−C1−C6アルコキシ、−COOH、−COO−C1〜C6アルキル、−CF3またはフェニルであり、
11は、水素であるか、またはR11とR5とは一緒になってフェニル環を形成し、
Yは、フェニル、ナフチル、アントラセン−9−イル、9H−フルオレン−9−イルまたは残基
【化4】

[式中、
6は、水素、ハロゲン、−C1〜C6アルコキシ、−NO2、−CF3-O−CF3、−CN、−COO−C1〜C6アルキル、フェニルまたはビフェニル、9H−フルオレン−9−イルであり、
7は、水素、ハロゲン、−CN、−C1〜C6アルコキシであるか、またはR7とR6とは一緒になってフェニル環を形成し、
8は、水素、ハロゲン、−CN、または−C1〜C6アルコキシであり、
9は、水素またはハロゲンまたはCNであり、
10は、水素またはハロゲンまたはCNであり、
aは、−(CH2)n−(n=1〜6)または−CH2−CH=CH−である]
である]の少なくとも1つのスピロピラン指示薬を含む時間・温度指示薬を開示する。
【0016】
WO08/083925に開示されるようなスピロピランの具体例を以下に示す:
【化5】

【0017】
国際公開WO08/090045は、式IまたはII
【化6】

[式中、
1〜R4は互いに独立して、水素、−C1〜C6アルコキシ、ハロゲン、CF3、−C1〜C6アルキルまたは−NO2であり、
5は、水素、ハロゲン、−C1〜C6アルコキシ、−COOH、−COO−C1〜C6アルキル、−CF3またはフェニルであり、
11は水素であるか、またはR11とR5とは一緒になってフェニル環を形成し、
aは−C1〜C6アルキルであり、
bは−C1〜C6アルキルであるか、またはRaと一緒になって5〜6員環を形成し、
Lは二価リンカーであり、
L’は三価リンカーである]
の少なくとも1つの二量体または三量体スピロピラン指示薬を含む時間・温度指示薬を開示している。
【0018】
WO08/090045に開示されているスピロピランの具体例を以下に示す:
【化7】

【0019】
2008年3月21日に出願された欧州特許出願EP08156605号は、温度の経時変化を示す時間・温度指示薬であって、式(I)
【化8】

[式中、
1は、水素、−C1〜C18アルコキシ、ハロゲン、−C1〜C18アルキルまたは−NO2であり、
2は水素またはC1〜C18アルコキシであり、
3はNO2またはハロゲンであり、
4は水素、C1〜C18アルコキシまたはハロゲンであり、
5は水素、ハロゲン、−C1〜C18アルコキシ、−COOH、−COO−C1〜C18アルキル、−CF3またはフェニルであり、
6は水素であるか、またはR6とR7とは一緒になってフェニル環を形成し、
7は水素であり、
aは水素または−C1〜C6アルキルであり、
bは水素もしくは−C1〜C6アルキルであるか、またはRaと一緒になって5〜6員環を形成し、
Yは−CH2−COO−R8または−CH2−CO−N(R10)−R9であるか、または−CH2−CO−N(R10)−L−N(R10)CO−CH2
[ここで、
8は水素、C1〜C18アルキルであり、
9は水素、C1〜C18アルキル、フェニル、メシチル、ハロゲンで1回以上置換されたフェニル、−CF3、C1〜C6アルキル、−C1〜C6アルコキシ、カルボキシ、−COO−C1〜C6アルキルであり、
10は水素、C1〜C18アルキルであり、
Lは1,3フェニレンまたは1,4フェニレン(ここで、フェニレンリンカーは場合によってハロゲン、−CF3、C1〜C18アルキル、C1〜C18アルコキシ、カルボキシ、−COO−C1〜C18アルキル、−CONH2、−CON(C1〜C18アルキル)2、ニトロによって1回以上置換されている)、であるか、またはLはナフタレン、ビフェニレンもしくはフェニレン−O−フェニレンである(ここで、ナフタレン、ビフェニレンもしくはフェニレン−O−フェニレンリンカーは場合によってハロゲン、−CF3、C1〜C18アルキル、−C1〜C18アルコキシ、カルボキシ、−COO−C1〜C18アルキル、−CONH2、−CON(C1〜C18アルキル)2、ニトロによって1回以上置換されている)である]
である]の少なくとも1つのスピロピラン指示薬を含む時間・温度指示薬を開示する。
【0020】
EP08156605に開示されているスピロピランの具体例を以下に示す:
【化9】

【0021】
本発明の目的は、不安定な高エネルギー状態から安定な基底状態への逆移行反応に影響を及ぼすこと、言い換えれば、生鮮品の保存期間に対する逆反応を調節するために、反応速度に影響を及ぼすことである。
【0022】
逆移行反応の反応速度は、温度および色素の分子構造に依存するだけでなく、色素の局所的微小環境の極性の関数でもあることが判明している。
【0023】
調整剤は、アモルファス、結晶性または混合アモルファス・結晶性構造を有する混合固体を形成することができる任意の化合物である。混合固体は、融解させるか、共融解させるか、溶媒から共沈させるか、溶媒中に分散させるか、または粉砕によって機械的に形成することができる。
【0024】
調整剤は、光吸収化合物を取り囲むことができる筈であり、このようにして相互作用によって微環境の極性に変化を起こす。これらの相互作用としては、静電相互作用、ファンデアワールス力等を挙げることができる。
【0025】
したがって、本発明は、スピロピラン、およびアモルファス、結晶性構造または混合アモルファス−結晶性構造を有するスピロピラン混合固体で形成できる調整剤を含む時間・温度指示薬に関し、ここで、調整剤は、
CH3−(CH2n−COOC1〜C18アルキル(n=10〜18)、オレイン酸コレステロール、クエン酸エステル、p−ヒドロキシベンゾエート、酢酸ボルニル、もしくはジカルボン酸C1〜C18アルキル−O−OC−(CH2m−COOC1〜C18アルキル(m=2〜20)から選択されるエステル、または糖アルコールから選択されるエステルから選択されるか、あるいは調整剤は、
6−C20アルキルアルコールから選択されるか、または
環状アルコールから選択されるか、または
ポリアルコールから選択されるか、または
ポリエーテルから選択されるか、または
脂肪酸から選択されるか、または
カルボン酸の塩から選択されるか、または
ジテルペン酸から選択されるか、または
尿素もしくはイミダゾールから選択されるか、または
環状ケトンから選択されるか、または
2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノールもしくは4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒドから選択されるか、または
クロマン−6−オールから選択されるか、または
4−イソプロペニル−1−メチルシクロヘキセン(R−リモネン)から選択されるか、または
ナフタレン、フェナントレンから選択されるか、または
ドデシル硫酸ナトリウムから選択されるか、または
ヒドロキシナフトエ酸のZn錯体から選択されるか、または
第2インドレニン単位のスピロピランに対する付加物から選択されるか、または
2つの異なるスピロピランの混合固体から選択される。
【0026】
どの場合でも、調整剤は、スピロピランのピラン環の光で誘起された可逆的開環に影響を及ぼすことによって着色および変色反応速度を制御できる。調整剤の種類に応じて、L、aまたはb値は特異的に影響を受ける。したがって、生鮮品の保存期間にしたがって漂白挙動を適合させることができる。
【0027】
したがって、一実施形態において、時間・温度指示薬はスピロピランとナフタレンとの混合固体を含む。
【0028】
別の実施形態において、時間・温度指示薬はスピロピランとセチルアルコールとの混合固体を含む。
【0029】
別の実施形態において、時間・温度指示薬はスピロピランとドデシル硫酸ナトリウムとの混合固体を含む。
【0030】
別の実施形態において、時間・温度指示薬はスピロピランとヒドロキシナフトエ酸のZn錯体との混合固体を含む。
【0031】
別の実施形態において、時間・温度指示薬は、スピロピランと、スピロピランに対する第2インドレニン単位の付加物との混合固体を含む。
【0032】
別の実施形態において、時間・温度指示薬は2つの異なるスピロピランの混合固体を含む。
【0033】
好適な調整剤は、セチルアルコールなどのC8−C30アルキルアルコール、ドデシル硫酸ナトリウムなどの塩、ヒドロキシナフトエ酸のZn錯体などの金属錯体をさらに含む。
【0034】
調整剤は、スピロピラン合成の副生成物でもあり得る。副生成物の一例は、スピロピランに対する第2のインドレニン単位の付加物である。
【0035】
調整剤は、第2のスピロピラン、例えば
【化10】

の混合結晶でもあり得る。
【0036】
調整剤は、エステル、例えばCH3−(CH2n−COOC1〜C18アルキル(n=10〜18)、例えばラウリン酸ブチルエステル、ミリスチン酸イソピロピル、ステアリン酸メチルエステルから選択されるか、またはオレイン酸コレステロール、クエン酸トリエチルエステル、p−ヒドロキシベンゾエート(アルキルパラベン、例えばメチルパラベン、ブチルパラベン)、o−ヒドロキシベンゾエート、例えばサリチル酸アルキルエステル、例えばサリチル酸メチルエステル、もしくは酢酸ボルニルから選択されるエステル、またはジカルボン酸C1〜C18アルキル−O−OC−(CH2m−COOC1〜C18アルキル(m=2〜20)、例えばセバシン酸ジアルキルエステル、例えばセバシン酸ジブチルエステルから選択されるエステルでもあり得る。
【0037】
調整剤は、ソルビタンモノオレエートまたはソルビタンモノラウレートなどの糖アルコールのエステルでもあり得る。
【0038】
調整剤は、ヘキサデカン−1−オール、オクタデカン−1−オール、ポリエチレンモノアルコールなどの長鎖C6〜C20アルコールでもあり得る。
【0039】
調整剤は、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン2−2−オール(ボルネオ−ル)または1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール(フェンキルアルコール)などの環状アルコールでもあり得る。
【0040】
調整剤は、グリセロール(プロパン−1,2,3−トリオール)、ソルビトール、ポリカプロラクトンジオールなどのポリアルコールでもあり得る。
【0041】
調整剤は、ポリエーテル、例えばポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、例えばポリグリコール4000でもあり得る。
【0042】
調整剤は、ステアリン酸などの脂肪酸でもあり得る。
【0043】
調整剤は、カルボン酸の塩、例えばステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸マグネシウムでもあり得る。
【0044】
調整剤は、ジテルペン酸、例えばアビエチン酸でも有り得る。
【0045】
調整剤は、尿素でもあり得る。
【0046】
調整剤は、イミダゾールでもあり得る。
【0047】
調整剤は、フェノール、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノールまたは4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)でもあり得る。
【0048】
調整剤は、クロマン−6−オール(3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−6−オール)、例えばトコフェロール(ビタミンE)でもあり得る。
【0049】
調整剤は、4−イソプロペニル−1−メチルシクロヘキセン(R−リモネン)でもあり得る。
【0050】
調整剤のスピロピランに対するモル比は、>10%、好ましくは>25である。
【0051】
前記調整剤は全て漂白反応速度に影響を与えることができる。
【0052】
したがって、本発明はさらに、スピロピランの漂白速度に影響をおよぼすための、請求項1で定義される時間・温度指示薬の使用に関する。
【0053】
調整剤がスピロピランと融解物を形成することができる場合、本発明は、時間・温度指示薬を製造する方法であって、
a)スピロピランおよび調整剤を混合する工程、
b)a)で得られた混合物を加熱して、融解物を形成する工程、
c)b)で得られた融解物を冷却して、結晶性もしくはアモルファス固体を得る工程、または
d)a)で得られた混合物を溶媒中に溶解させ、得られた混合物を結晶化して、混合結晶もしくは混合固体を得る工程を含む方法をさらに含む。
【0054】
工程b)における温度は50〜20℃である。工程c)における温度は、好ましくは0℃〜室温である。
【0055】
工程dにおける溶媒はアルコールであってよい。
【0056】
本発明はさらに、エージングおよび温度感受性生成物の品質を決定する方法であって:
a)スピロピランおよび調整剤を含む請求項1記載の時間・温度指示薬を基材上に印刷する工程、
b)UV光の照射による指示薬の活性化、特に光誘起着色する工程、
c)場合によって、前記指示薬の新たな光誘起着色を防止するプロテクターを適用する工程、ならびに
d)時間もしくは温度誘起変色の程度、および変色の程度を考慮して生成物の品質を決定する工程を含む方法に関する。
【0057】
好適な基材材料は、無機材料と有機材料の両方、好ましくは通常の積層および包装技術から公知のものである。例として、ポリマー、ガラス、金属、紙、ボール紙などを挙げることができる。
【0058】
「印刷」とは、任意の種類の印刷、例えば、凸版印刷、例えばフレキソ印刷、パッド印刷、平板印刷、例えばオフセット印刷もしくはリソグラフ印刷、凹版印刷、例えばグラビア印刷、スクリーン印刷ならびに非衝撃式印刷法、例えばインクジェット印刷、ピンプリンティング、エレクトログラフィー、サーモグラフィー等を意味する。
【0059】
工程c)の後に、好ましくは、可逆性指示薬の新たな光誘起性着色を防止するプロテクター、特にカラーフィルターの適用を行う。UV感受性指示薬の場合、430nmより長い典型的波長を有する光のみに対して透過性である黄色フィルターを考慮する。
【0060】
プロテクターは、PCT出願PCT/EP/2007060987(Ciba)に記載のようなものであってよい。したがって、プロテクターは、光吸収保護層がポリマーバインダーを含み、UV光吸収体の層の合計質量に対して1〜50質量%であることを特徴とする時間・温度指示薬の下層に接着された無色透明もしくは着色透明光吸収保護層であってよい。
【0061】
本発明をさらに実施例によって説明する。
【0062】
実施例1
抑制剤としてのスピロピラン/ナフタレン
5g(11.9mmol)の式
【化11】

の無色化合物の微粉末を乳鉢中、ナフタレン(5.0g、39mmol)と混合し、微粉砕した。60〜70℃で、色素およびナフタレンを融解させて、緑色溶液を形成し、これを室温まで冷却した。凝固した混合物を次いで粉砕し、得られた混合物を用いてインク配合物を作製した。
【0063】
スピロピラン/ナフタレン粉末を、UVランプにより10秒間帯電させた。下記表は、2℃での退色速度を示す。
【0064】
【表1】

この表は、ナフタレンが変色速度を修飾することを示す。
値はスピロピラン/ナフタレン系よりも小さい(38.8と比較して31.0)。L値の増加は同程度である。
値はスピロピラン単独についてほぼ一定であり、スピロピラン/ナフタレン系については若干減少する。
値は、スピロピラン/ナフタレン系よりも迅速に増加する。
【0065】
実施例2
抑制剤としてのスピロピラン/ドデシル硫酸ナトリウム
5gの式
【化12】

の無色化合物の微粉末を、5.0g(17.33mmol)のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とともに乳鉢中で十分に粉砕し、次いで混合物を一定して撹拌しながら60〜70℃まで加熱すると、色素が融解し始め、SDSとの混合物を形成し始めた。全処理過程は、10〜15分かかった。混合物を室温まで冷却し、固体を粉末化し、次いで水性配合物を形成させた。
【0066】
スピロピラン/ドデシル硫酸ナトリウム粉末をUVランプによって5分間帯電させた。下記表は2℃での退色速度を示す。比較スピロピランを10秒間帯電させた。
【0067】
【表2】

この表は、ドデシル硫酸ナトリウムが変色速度を修飾することを示す。
値はスピロピラン/ドデシル硫酸ナトリウム系(38.8と比較して21.5)よりも著しく小さく、より迅速に増加する。
値は、スピロピラン単独についてはほぼ一定であり、スピロピラン/ドデシル硫酸ナトリウム系については減少する。
値は、スピロピラン/ドデシル硫酸ナトリウム系についてはより迅速に増加する。
【0068】
実施例3
抑制剤としての2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸のスピロピラン/Zn複合体
典型的な手順において、5.0g(11.97mmol)のスピロピラン
【化13】

を、5.0g(11.3mmol)の2−ヒドロキシ3−ナフトエ酸のZn複合体と乳鉢中で十分に粉砕した。物理的混合によって若干赤色に着色した。混合物をあわせて融解しなかった。混合物を用いて次いで水性配合物を形成させた。
【0069】
2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸粉末のスピロピラン/Zn複合体を、UVランプにより10秒間帯電させた。
【0070】
下記表は2℃での退色速度を示す。
【0071】
【表3】

この表は、Zn複合体が変色速度を修飾することを示す。
値はスピロピラン/Zn複合体系について著しく小さい(38.8と比較して20.0)。増加は同程度である。
混合物の赤色のために、a値は高い。
値はスピロピラン/Zn複合体系については若干小さい。b値の増加は、両系において同程度である。
【0072】
実施例4
スピロピラン/セチルアルコールTTI
5g(11.97mmol)の式
【化14】

の無色化合物の微粉末を乳鉢中でセチルアルコール(5.0,20.62)と混合し、微粉末化した。60〜70℃で、色素およびセチルアルコールを一定撹拌下、あわせて融解させた。混合物を室温まで冷却させた。凝固した混合物を次いで粉砕し、得られた混合物を用いてインク配合物を作製した。
【0073】
スピロピラン/セチルアルコール粉末を、UVランプにより10秒間帯電させた。
【0074】
実施例5
以下の例は、漂白特性も試料の純度に強力に依存することを示す。合成に依存して、得られるスピロピラン中に多少の一般的な副生成物が含まれ、得られたスピロピランは非光発色性であることが証明されている。これは、事実上、第2インドレニン単位のスピロピランに対する付加物であり、以下の一般的構造を有する:
【化15】

【0075】
使用したスピロピランは次式
【化16】

を有する。
【0076】
スピロピランA/副生成物A(25.5%)粉末およびスピロピランA/副生成物A(5.4%)をUVランプによって10秒間帯電させた。
【0077】
下記表は、2℃での退色速度を示す。
【0078】
【表4】

表は、L初期値が存在する副生成物の量に依存しないことを示す。しかし、副生成物の量が多いと、漂白は減少する。したがって、副生成物は遅延剤として作用する。
スピロピランA/副生成物A(25.5%)は赤みが強い(高いa値を参照)。
スピロピランA/副生成物A(5.4%)は青みが強く、色が黄色に変化する(b値を参照)。
【0079】
実施例6
以下の実施例はまた、副生成物が促進剤としても作用し得ることを示す。漂白速度は、存在する副生成物が多いほど高くなる。
【化17】

【0080】
使用したスピロピランは次式
【化18】

を有する。
【0081】
スピロピランB/副生成物B(32%)粉末およびスピロピランB/副生成物B(13.6%)粉末およびスピロピランB/副生成物B(0.3%)粉末をUVランプによって10秒間帯電させた。
【0082】
下記の表は、2℃での退色速度を示す。
【0083】
【表5】

【0084】
【表6】

【0085】
実施例7
下記表は、基礎スピロピランとしてLF2807(GSID2074)
【化19】

に基づく融解混合物を記載する。
【0086】
第1列では、融解LF2807は、下記の化合物との比較として5%の装填量で記載する。これらを、最終プリント中5%スピロピラン含量となる、10%の装填量で適用する。
【0087】
【表7−1】

【表7−2】

a)UV活性化後の色の濃さ
b)2℃にて
c)インク製造前に融解させた化合物
【0088】
上の表からわかるように、様々な溶解混合物を、LF2807を用いて実施し、これらはすべて1:1の比で、150℃にて実施した。
【0089】
概して、帯電状態の溶解混合物の色は融解LF2807と同じ範囲であり、赤みがかった青色の領域である。しかし、色の濃さ、漂白速度および挙動および関連する有用性期間は、大幅に変化する。
【0090】
LF4064中で融解物成分としてバニリンを使用する場合は特別であり、これは低濃度の色と非帯電状態で強い紫色を示す。この場合、ほぼ確実に、バニリンはアルデヒドとしてスピロピランと反応し、公知の紫色インドレニン−メチン色素を平衡状態で形成する。
【0091】
融解成分としての尿素は、融解中に二相系を形成し、したがって両化合物の共結晶(LF4054)の形成は期待されない。したがって、結果として得られる混合物の特性は、融解LF2807単独のものと非常に類似している。
【0092】
ほとんどの他の融解混合物は、速度が異なり、最初に同定された最も興味深い混合物は、それらの高濃度の色および長い有用性期間のためにLF3903およびLF3929であった。
【0093】
実施例8
下記表は、基礎スピロピランとしてLF3155(GSID3655)
【化20】

に基づく融解混合物を記載する。第一列で、LF3155は、下記化合物との比較として5%装填量で記載する。これらは10%装填量で適用され、これは最終プリント中5%スピロピラン含量であることを意味する:
【0094】
【表8−1】

【表8−2】

a)UV活性化後の色の濃さ
b)2℃で測定
c)比較のために化合物を5%の装填量で測定
d)化合物を粉砕し、その後Flexiproof印刷機で印刷した
【0095】
上記からわかるように、様々な溶解混合物を、LF3155を用いて実施し、これらは全て1:1の比であり、記載した温度で融解した。上記からわかるように、化合物の色の濃さは、実際に混合結晶または固溶体が得られる場合よりも、ごくわずかの例で若干向上させることができただけであった。
【0096】
LF3155。しかし、反応速度はほとんどの場合で変化し、このことからトコフェロールもLF3155との融解混合物に使用されたと結論づけられた。残念なことに、結果として得られるLF3993は、本発明者らの標準的水性インク系では粘度が非常に高いために試験できなかった。これはしたがってNCおよびビニルインクで試験した:
【0097】
【表9】

【0098】
先の記載からわかるように、色の濃さは低い方であり、ビニル系プリントは、その優れた漂白特性のために、予想外に長い有用性期間を示す。NCにおいて、光堅牢性は高いようであるが、結果を確認しなければならない。
【0099】
実施例9
【化21】

【0100】
【表10】

【0101】
実施例10
LF4005に基づく、1:1
【化22】

【0102】
【表11】

【0103】
実施例11
LF4035に基づく、1:1
【化23】

【0104】
【表12】

【0105】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間・温度指示薬であって、該指示薬が、スピロピラン、およびアモルファス、結晶性構造または混合アモルファス−結晶性構造を有するスピロピラン混合固体で形成することができる調整剤を含み、前記調整剤は、
CH3−(CH2n−COOC1〜C18アルキル(n=10〜18)、オレイン酸コレステロール、クエン酸エステル、p−ヒドロキシベンゾエート、酢酸ボルニルから選択されるエステル、またはジカルボン酸C1〜C18アルキル−O−OC−(CH2m−COOC1〜C18アルキル(m=2〜20)から選択されるエステル、または糖アルコールから選択されるエステルから選択されるか;あるいは前記調整剤は、
6−C20アルキルアルコールから選択されるか、または
環状アルコールから選択されるか、または
ポリアルコールから選択されるか、または
ポリエーテルから選択されるか、または
脂肪酸から選択されるか、または
カルボン酸の塩から選択されるか、または
ジテルペン酸から選択されるか、または
尿素もしくはイミダゾールかから選択されるか、または
環状ケトンから選択されるか、または
2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノールもしくは4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒドから選択されるか、または
クロマン−6−オールかから選択されるか、または
4−イソプロペニル−1−メチルシクロヘキセン(R−リモネン)から選択されるか、または
ナフタレン、フェナントレンから選択されるか、または
ドデシル硫酸ナトリウムから選択されるか、または
ヒドロキシナフトエ酸のZn錯体から選択されるか、または
第2インドレニン単位のスピロピランに対する付加物から選択されるか、または
2つの異なるスピロピランの混合固体から選択される、時間・温度指示薬。
【請求項2】
前記調整剤が、ナフタレン、フェナントレンから選択される非極性調整剤である、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項3】
スピロピランとナフタレンとの混合固体を含む、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項4】
スピロピランとセチルアルコールとの混合固体を含む、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項5】
スピロピランとドデシル硫酸ナトリウムとの混合固体を含む、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項6】
スピロピランとヒドロキシナフトエ酸のZn錯体との混合固体を含む、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項7】
スピロピランと第2インドレニン単位のスピロピランへの付加物との混合固体を含む、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項8】
2つの異なるスピロピランの混合固体を含む、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項9】
前記調整剤が、CH3−(CH2n−COOC1〜C18アルキル(n=10〜18)、オレイン酸コレステロール、クエン酸エステル、p−ヒドロキシベンゾエート、酢酸ボルニルから選択されるエステル、またはジカルボン酸C1〜C18アルキル−O−OC−(CH2m−COOC1〜C18アルキル(m=2〜20)から選択されるエステル、または糖アルコールから選択されるエステルから選択される、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項10】
前記調整剤が、ラウリン酸ブチルエステル、ミリスチン酸イソピロピル、ステアリン酸メチルエステルから選択されるか、またオレイン酸コレステロール、クエン酸トリエチルエステル、メチルパラベン、ブチルパラベン、サリチル酸メチルエステル、または酢酸ボルニル、またはセバシン酸ジブチルエステルから選択される、請求項9記載の時間・温度指示薬。
【請求項11】
前記調整剤が、糖アルコールから選択される、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項12】
前記糖アルコールが、ソルビタンモノオレエートまたはソルビタンモノラウレートである、請求項11記載の時間・温度指示薬。
【請求項13】
前記調整剤が、C6〜C20アルコールから選択される、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項14】
前記アルコールが、ヘキサデカン−1−オール、オクタデカン−1−オール、ポリエチレンモノアルコールから選択される、請求項13記載の時間・温度指示薬。
【請求項15】
前記調整剤が、環状アルコールから選択される、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項16】
前記環状アルコールが、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン2−2−オール(ボルネオール)または1,3,3−トリメチルビシクロ[2.2.1]−ヘプタン−2−オール(フェンキルアルコール)から選択される、請求項15記載の時間・温度指示薬。
【請求項17】
前記調整剤が、ポリアルコールから選択される、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項18】
前記ポリアルコールが、グリセロール(プロパン−1,2,3−トリオール)、ソルビトール、ポリカプロラクトンジオールから選択される、請求項17記載の時間・温度指示薬。
【請求項19】
前記調整剤が、ポリエーテルから選択される、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項20】
前記ポリエーテルが、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールまたはポリグリコール4000から選択される、請求項19記載の時間・温度指示薬。
【請求項21】
前記調整剤が、脂肪酸、好ましくはステアリン酸から選択される、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項22】
前記調整剤が、カルボン酸の塩、好ましくはステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸マグネシウムから選択される、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項23】
前記調整剤が、ジテルペン酸、好ましくはアビエチン酸から選択される、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項24】
前記調整剤が、尿素またはイミダゾールから選択される、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項25】
前記調整剤が2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノールまたは4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)から選択される、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項26】
前記調整剤が、トコフェロール(ビタミンE)またはR−リモネンである、請求項1記載の時間・温度指示薬。
【請求項27】
調整剤の前記スピロピランに対するモル比が、>10%、好ましくは>25%である、請求項1から26までのいずれか1項に記載の時間・温度指示薬。
【請求項28】
漂白反応速度に影響を及ぼすための、請求項1から26までのいずれか1項に記載の時間・温度指示薬の使用。
【請求項29】
エージング感受性および温度感受性製品の品質を決定する方法であって、以下の工程:
a)スピロピランおよび調整剤を含む請求項1記載の時間・温度インテグレーターを基材上に印刷する工程、
b)UV光での照射による前記指示薬の活性化、特に光誘起着色をする工程、
c)場合によって、前記指示薬の新たな光誘起着色を防止するプロテクターを適用する工程、および
d)時間もしくは温度誘起変色の程度、および変色の程度を考慮して製品の品質を決定する工程を含む、方法。

【公表番号】特表2011−519420(P2011−519420A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504410(P2011−504410)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053948
【国際公開番号】WO2009/127529
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】