説明

最適解関係表示装置、方法、及びプログラム

【課題】ハードディスクのスライダ形状等の設計に用いられる多目的最適化設計支援技術に関し、性能の良い複数の設計形状を示唆し、設計者が新たなベース形状を考える上でのヒントを与えることを可能とする。
【解決手段】最適設計パラメータ組候補内の隣接する各設計パラメータ組間を補間する設計パラメータ組を補間設計パラメータ組として算出し、その組の各々について、複数の目的関数近似式を使って複数の目的関数を近似計算して非劣解に対応する補間設計パラメータ組を、最適補間設計パラメータ組として選択し、最適設計パラメータ組候補と統合して新たな最適設計パラメータ組候補とし、その新たな最適設計パラメータ組候補を構成する各設計パラメータ組間のパラメータ距離を判定しながら、新たな最適設計パラメータ組候補について、同様の補間処理を繰り返す。最終的に得られた各最適設計パラメータ組に対応する各スライダ形状が、表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計に用いられる多目的最適化設計支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクの高密度化・高容量化に伴い、磁気ディスクとヘッダとの距離はますます小さくなってきている。標高差やディスク半径位置による浮上変動量の少ないスライダ設計が要求されている。
【0003】
スライダは、図15の1501として示されるように、ハードディスク内の磁気ディスク上を移動するアクチュエータ1502の先端下部に設置されており、ヘッダの位置はスライダ1501の形状によって計算される。
【0004】
スライダ1501の最適形状を決める際、ヘッダの位置に関係するフライハイト(図15の1503)、ロール(1504)、ピッチ(1505)に関する関数を同時に最小化する、いわゆる多目的最適化の効率的計算が必要になる。
【0005】
より一般的には、ものづくりにおける設計段階では設計条件を設計パラメータに関する1つ以上の関数即ち目的関数として表現し、これらの目的関数を最小にするような設計パラメータを設定すること即ち最適化が必要となる。
【0006】
従来は、多目的最適化問題を直接扱うのではなく、下記(1)式として示されるように、各目的関数f_jに重みk_jを乗算して得られる項の線形和fが計算されその最小値が算出される、単目的最適化が行われていた。
【数1】

【0007】
そして、設計者がベースとなる形状を決めた後で、プログラムにより、図16に示されるスライダ形状Sを決定するパラメータp、q、r等の振り幅が設定されてその値が少しずつ変更されながら、関数値fが計算され、その値が最小となるようなスライダ形状が算出されていた。
【0008】
fは重みベクトル{k_j}(k_j=k1,k2,・・・,kt)に依存する。実際の設計では、さらに{k_j}が変更されながら、それぞれの変更値に対するfの最小値が算出され、その最小値と{k_j}とのバランスが総合的に判断されることにより、スライダ形状が決定されていた。
【0009】
ここで、上述のように、目的関数が複数個ある多目的最適化においては、関数間のトレードオフがあるため、算出される最適解は1つに限られる訳ではない。
例えば、ある製品の設計において、「重量を軽くする」という目的関数値1と「コストを低く抑える」という目的関数値2についての最適化が行われる場合、設計パラメータの与え方によって、目的関数値1と目的関数値2は、図17に示されるような2次元座標上で、様々な座標値を取り得る。
【0010】
目的関数値1と目的関数値2は、共に小さい値を取る(軽量、低コストである)ことが要求されるため、図17の算出点1701−1、1701−2、1701−3、1701−4、1701−5を結ぶ線1703上の点又はその近傍に存在する点が、最適解のグル
ープとなり得る。このように、目的関数値1と目的関数値2というように複数の条件があった場合に、全ての目的関数値においてより目的に沿う値をとり、なおかつ1つ以上の目的では明らかに良い値を取るような解を、パレート最適解又は非劣解といい、図17の1703として示される境界をパレートという。非劣解は、全て多目的最適化の解と呼ぶことができる。
【0011】
図17に示される算出点1701−1〜1701−5のうち、点1701−1はハイコストであるが軽量化を達成したモデルに対応し、点1701−5は軽量化は無いがローコストを達成したモデルに対応する。
【0012】
一方、算出点1702−1や1702−2は、まだまだ軽量化又はローコスト化が可能な点であるため、最適解とはなり得ない。これらを劣解という。
このように、多目的最適化処理においては、非劣解(パレート最適解)を適切に把握できることが非常に重要であり、そのためには、所望の目的関数における非劣解を効率良く算出できることが重要である。
【特許文献1】特開平7−44611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述した多目的最適化技術においては、時間のかかる浮上計算を繰り返し実行しなければならない。特に、スライダ形状が細部まで探索される場合には、設計パラメータ(図16のp、q、r等に相当)の数が15個前後にもなり、1万回以上の浮上計算が必要になる。1回の浮上計算は、シミュレータを使った時間を要する計算であるため、多目的最適化計算に非常に時間がかかるという問題点を有していた。
【0014】
また、この手法においては、fの最小値(とその時の設計パラメータ値)は、重みベクトル(k_j=k1,k2,・・・,kt )の決め方に依存する。実際の設計では、重みベクトルの色々な組に対してfを最適化して比較したい、という状況が頻繁に生じる。しかし、上記従来技術では、重みベクトルを変える度に、コストの高い浮上計算を伴う最適化計算をはじめからやり直す必要があるため、実験できる重みベクトルの種類に限度があった。
【0015】
また、関数値fの最小化においては、パレート境界上の1点ずつしか求めることができないため、目的関数同士の最適な関係を予測することも難しく、そのような情報を設計にフィードバックすることもできないという問題点を有していた。
【0016】
最適解としてパレート境界上の1点が求まった場合、それに対応して設計パラメータの1組が決まり、1つの設計形状が求まる。しかし、設計者はその設計形状に必ずしも満足するとは限らない。最適化プログラムを何度か動かして非劣解を複数個得た後で、それらを比較・検討して最終意思決定するのは1つの典型的な手法である。
【0017】
そのような場合には、設計者は従来、図18に示されるように、まずベース形状を考案して(ステップS1801)、プログラムによる最適化を実行し(ステップS1802)、最適化プログラムが非劣解を1つ出力すると(ステップS1803)、設計者はその非劣解に対応する出力形状が満足できるものか否かを判断し(ステップS1804)、満足できなければ再び新たなベース形状を考案して(ステップS1801)、最適化を実行する(ステップS1802〜S1804)、という動作を繰り返さなければならなかった。
【0018】
この場合に従来は、そもそも多目的最適化の処理自体に非常に時間がかかるため、適切な非劣解の算出すら困難であり、ましてや非劣解に基づく設計形状等を判断しながら効率よく最適化を繰り返すような設計支援手法は存在しないのが現状である。
【0019】
特に、非劣解となることがわかっている例えば2組の設計パラメータ組があった場合に、各設計パラメータ組に対応する各設計形状間で、形状を徐々に変化させて検討を行いたいというような場合が多々あるが、非劣解となる2組の設計パラメータ組間で各組を構成する複数の設計パラメータ値を徐々に変化させた場合に、各変化において得られる設計パラメータ組が非劣解となるとは限らないため、各変化において得られる設計パラメータ組に対する最適化計算が必要となり、従来はこの処理を効率的に行うことは非常に困難であった。
【0020】
本発明の課題は、多目的最適化設計において、目的関数の数式近似に基づいて非劣解の導出を短時間に実行しながら、パレート境界近くに写像されかつ徐々に変化する設計パラメータ組の集合を解析可能とすることにより、性能の良い複数の設計形状を示唆し、設計者が新たなベース形状を考える上でのヒントを与えることを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
開示する技術の態様は、設計パラメータの組を複数入力して、所定の計算に基づいて複数の目的関数を計算し、その複数の目的関数に対して多目的最適化処理を実行することにより、最適な設計パラメータの組の決定を支援する設計支援装置、方法、又はプログラムを前提とする。
【0022】
そして、所定組数の設計パラメータサンプル組とそれに対応して予め計算されている複数の目的関数の組とを入力して、複数の目的関数をそれぞれ数式近似して複数の目的関数近似式を算出する目的関数近似部(102)と、設計パラメータサンプル組のうち、複数の目的関数の組に対するコスト評価における非劣解に対応する2組以上の設計パラメータサンプル組を初期の最適設計パラメータ組候補として選択する初期最適設計パラメータ組候補選択部(103)と、最適設計パラメータ組候補内の隣接する各設計パラメータ組間を補間する設計パラメータ組を補間設計パラメータ組として算出する補間設計パラメータ組算出部(105−1)と、その算出された補間設計パラメータ組のそれぞれについて、複数の目的関数近似式を使って複数の目的関数を近似計算する補間設計パラメータ組目的関数計算部(105−2)と、その近似計算された複数の目的関数の組のコスト評価における非劣解に対応する補間設計パラメータ組を、最適補間設計パラメータ組として選択する最適補間設計パラメータ組選択部(105−3)と、その最適補間設計パラメータ組を最適設計パラメータ組候補と統合して新たな最適設計パラメータ組候補とし、その新たな最適設計パラメータ組候補を構成する各設計パラメータ組間のパラメータ距離を判定することにより継続処理か出力処理かを判定し、継続処理を判定した場合には、新たな最適設計パラメータ組候補を補間設計パラメータ組算出部に入力して該手段に制御を戻し、終了処理を判定した場合には、新たな最適設計パラメータ組候補を最終的な最適設計パラメータ組として出力する処理制御部(105−4)と、その出力された最適設計パラメータ組に関係する情報を表示する最適設計パラメータ組関係情報表示部(109)とを含むように構成される。
【発明の効果】
【0023】
初期に与えた2組の最適設計パラメータ組候補に対応するスライダ形状間で、スライダ形状をどのように変更することができるかという知見を得ることが可能となる。
目的関数の数式近似に基づいて非劣解の導出を短時間に実行しながら、パレート境界近くに写像されかつ徐々に変化する設計パラメータ組の集合が解析可能となり、性能の良い複数の設計形状を示唆し、設計者が新たなベース形状を考える上でのヒントを与えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、最良の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態の機能ブロック構成図である。
目的関数近似部102は、シミュレータ計算によって予め経験的に得られている高々数百組程度の、複数の設計パラメータの値群とそれに対するシミュレータ計算によって計算される複数の目的関数値群とかなるサンプル組である設計パラメータ−目的関数値サンプル組101に対して、スライダ形状に関する各目的関数を、重回帰分析に基づく重回帰式等による多項式で近似する。なお、本実施の形態では重回帰分析に基づく近似を行った例を示しているが、その他、種々の多項式補間法や、多項式の次数を上げて近似を行うなど、一般的に知られた多項式近似手法を用いることができる。
【0025】
パレート境界点算出部110は、目的関数近似部102にて得られた目的関数多項式を用いて、任意の2組の目的関数によって規定される目的関数空間上のパレート境界上の点を検出する。この結果は、スライダ移り変わり関係計算部105にて参照される。
【0026】
不変パラメータ除外部104は、本実施形態の計算における処理の効率化のために、あまり変化のない設計パラメータを計算処理から除外する。
スライダ移り変わり関係計算部105は、非劣解となることがわかっている例えば2組の設計パラメータ−目的関数値サンプル組101について、各組を構成する複数の設計パラメータ値を徐々に変化させながら、各変化において得られる設計パラメータ組のうち非劣解となるものを目的関数の近似計算に基づいて最適設計パラメータ組として算出することにより、例えば2組のスライダ形状間の設計パラメータ組の移り変わりを計算する。
【0027】
より具体的には、スライダ移り変わり関係計算部105は、補間設計パラメータ組算出部105−1、補間設計パラメータ組目的関数計算部105−2、最適補間設計パラメータ組選択部105−3、及び処理制御部105−4から構成される。
【0028】
補間設計パラメータ組算出部105−1は、入力された初期の最適設計パラメータ組候補内の隣接する各設計パラメータ組間を補間する設計パラメータ組を補間設計パラメータ組として算出する。
【0029】
補間設計パラメータ組目的関数計算部105−2は、算出された補間設計パラメータ組のそれぞれについて、目的関数近似部102にて得られている複数の目的関数近似式を使って、複数の目的関数を近似計算する。
【0030】
最適補間設計パラメータ組選択部105−3は、近似計算された複数の目的関数の組のコスト評価における非劣解に対応する補間設計パラメータ組を、最適補間設計パラメータ組として選択する。
【0031】
処理制御部105−4は、最適補間設計パラメータ組を最適設計パラメータ組候補と統合して新たな最適設計パラメータ組候補とし、その新たな最適設計パラメータ組候補を構成する各設計パラメータ組間のパラメータ距離を判定することにより継続処理か出力処理かを判定し、継続処理を判定した場合には、新たな最適設計パラメータ組候補を補間設計パラメータ組算出部105−1に入力してそこへ制御を戻し、終了処理を判定した場合には、新たな最適設計パラメータ組候補を最終的な最適設計パラメータ組として出力する。
【0032】
移り変わりデータ記憶部106は、スライダ移り変わり関係計算部105によって計算された徐々に変化する最適設計パラメータ組を記憶する。
スライダ形状生成部107は、移り変わりデータ記憶部106に記憶されている徐々に変化する各最適設計パラメータ組に対応する各スライダ形状を算出し、その各スライダ形状を最適パラメータ組関係情報表示部109に表示させる。
【0033】
方向ベクトル生成部108は、移り変わりデータ記憶部106に記憶されている徐々に変化する各最適設計パラメータ組において、隣接する各組間における設計パラメータ値の変化の様子を方向ベクトルとして生成し、それを最適パラメータ組関係情報表示部109に表示させる。
【0034】
以上の構成を有する本実施形態の動作について、以下に説明する。
図2は、図1の目的関数近似部102、初期最適設計パラメータ組候補選択部103、不変パラメータ除外部104、及びスライダ移り変わり関係計算部105によって実行される処理を示す動作フローチャートである。以下の説明において、101〜109は図1に示される各構成部であり、ステップS201〜S216は図2に示される各処理である。
【0035】
まず、図3及び図4に示されるようなデータファイル構成を有する設計パラメータ−目的関数値サンプル組101が入力される(ステップS201)。
図3において、x1 (B列)〜x8 (I列)、・・・として示される各列の値がそれぞれ設計パラメータであり、cost2(A列)として示される列の値が1つの目的関数の値群である。設計パラメータ組は、例えばx1 〜x15の15個の設計パラメータからなる組である。各設計パラメータ値x_i(1≦i≦15)は、0≦x_i≦1に正規化されている。
【0036】
図4において、B列からK列がそれぞれ個別の目的関数の値群であり、A列の値が前述した数1式によって計算される各目的関数の線形和の値群である。
次に、目的関数近似部102が、上記設計パラメータ−目的関数値サンプル組101のデータファイルに対して、スライダ形状に関する各目的関数を、重回帰分析に基づく重回帰式等による多項式で近似する(ステップS202)。
【0037】
この結果、下記数2式として例示されるような目的関数の多項式が得られる。
【数2】

目的関数を一般的にf_j(x_i)(1≦j≦t,1≦i≦m)と表記する。ここで、tは目的関数の個数を表し、mは設計パラメータの個数を表す。上記(2)式の例では、m=15である。
【0038】
このようにして、本実施形態では、高々数百サンプル程度の設計パラメータ−目的関数値サンプル組101を使って、重回帰式等により多項式近似された目的関数を得ることができる。このように目的関数を多項式近似できるのは、スライダ設計では、まずスライダの初期形状があって、この初期形状を決定する設計パラメータを指定範囲内で変化させながら最適化が行われるため、そのようなローカルな設計変更範囲での最適化においては、重回帰式による線形近似等により十分に有効な初期の最適化が行えるという知見に基づくものである。
【0039】
本実施形態では、このようにして算出され数式処理された目的関数を、以下に説明するようにして、スライダ形状の移り変わり関係を算出する上での非劣解の導出に用いることにより、非常に効率的な設計支援システムを実現することができる。即ち、本実施形態では、図5に示されるように、多項式近似による数式処理をベースとして多目的最適化処理を実施することが可能であり、パレート境界上の非劣解も簡単な数式計算で算出することができる。
【0040】
次に、パレート境界点算出部110が、パレート境界の算出を行う(ステップS203)。この処理については、後述する。
次に、初期最適設計パラメータ組候補選択部103は、設計者に、入力された設計パラメータ−目的関数値サンプル組101のうち、スライダ形状の移り変わり関係を検討する上における移り変わりの両端のサンプル組2組を、初期の最適設計パラメータ組候補として、特には図示しない入力装置から指定させる(ステップS204)。この2組をL=[A1 、A2 ]とする。
【0041】
次に、不変パラメータ除外部104は、上記初期の最適設計パラメータ組候補L=[A1 、A2 ]において、各組を構成する設計パラメータを比較し、変化していない又は変化が所定閾値以内の設計パラメータはその値で固定する(ステップS205)。
【0042】
例えば、図6に示される例では、初期の最適設計パラメータ組候補L=[A1 、A2 ]において、設計パラメータx2 の値0.3 と、x14の値0.8 は、以下の計算過程では値が固定されて、計算からは除外される。
【0043】
次に、スライダ移り変わり関係計算部105は、現在の最適設計パラメータ組候補Lから、未だ補間処理が行われていない2組の設計パラメータ組A,Bを選択する(ステップS206)。初期状態では、L=[A1 、A2 ]であるから、A=A1 、B=A2 となる。
【0044】
次に、スライダ移り変わり関係計算部105は、上述の選択した最適設計パラメータ組候補A,B間のユークリッド距離を計算し、その距離が予め設定した閾値rよりも大きいか否かを判定する(ステップS207)。この閾値rは、スライダ形状の移り変わり関係の刻み幅を規定するものである。
【0045】
スライダ移り変わり関係計算部105は、上述の選択した最適設計パラメータ組候補A,B間のユークリッド距離が閾値r以下である場合は、その2つの設計パラメータ組A,B間はそれ以上補間をせずに他の2組を選択する処理に移る(ステップS207→S215)。
【0046】
スライダ移り変わり関係計算部105内の処理制御部105−4は、上述の選択した最適設計パラメータ組候補A,B間のユークリッド距離が閾値rより大きい場合は、以下に示されるステップS208からS214までの一連の処理を実行する(ステップS207の判定がYES)。
【0047】
まず、スライダ移り変わり関係計算部105内の補間設計パラメータ組算出部105−1は、設計パラメータ組を構成する各設計パラメータを各座標軸とする設計パラメータ空間上で、ステップS206にて選択された2組の最適設計パラメータ組候補A,Bの各座標間を結ぶ直線に対する垂直二等分超平面を算出する(ステップS208)。
【0048】
図7(a)は、理解を容易にするために、設計パラメータの組{x_i}(1≦i≦m)によって定まる設計パラメータ空間が2次元(m=2)であると仮定した場合の説明図で
ある。初期状態において2組の最適設計パラメータ組候補A,Bの各座標を結ぶ直線701に対する垂直二等分超平面は、同図Pに示される如くとなる。このPは、設計パラメータ空間が2次元である場合には直線となるが、3次元である場合には平面、4次元以上である場合には超平面となる。一般に、設計パラメータ空間の次元数をm次元とすれば、Pはm−1次元の垂直二等分超平面となり、A,Bの設計パラメータ組をそれぞれ、A=(a1, …, am)、B=(b1, …, bm)とすれば、垂直二等分超平面Pは、下記数3式によって表現される。
【数3】

【0049】
続いて、補間設計パラメータ組算出部105−1は、設計パラメータ空間上の垂直二等分超平面P上で、複数の補間点を算出する(ステップS208)。具体的には例えば、Pと直線701との交点に対応する1次からm−1次までの設計パラメータ座標値を中心として、1次からm−1次までの各設計パラメータの座標値x_i(1≦i≦m−1)を各々所定刻み幅ずつ所定範囲まで増減させて得られる各格子点が設定される。そして、1つの格子点につき、その1次からm−1次までの座標値(x1,x2,・・・, xm-1 )が前述の(3)式に代入されることにより、残りの第m次の座標値xm が算出され、この結果得られる1次〜m次までの座標値(x1,x2,・・・, xm-1,xm )として、前述の垂直二等分超平面P上の補間点が1つ定まる。上記座標値{x_i}(1≦i≦m)は、定まった補間点に対応する補間設計パラメータ組である。この処理が、上記各格子点全てについて実行されることにより、複数の補間点が算出される。図7(a)の例では、垂直二等分超平面P上で、補間点C1,C2,・・・Cq-1,Cq が算出される。
【0050】
次に、、補間設計パラメータ組算出部105−1がステップS209において上記補間点から1点ずつを選択しながら、図2のステップS213にて全ての補間点が選択されたと判定されるまで、ステップS209〜S213の一連のループ処理を繰り返し実行される。
【0051】
即ち、補間設計パラメータ組算出部105−1がまず、ステップS208にて算出された複数の補間点から1点を選択し、その座標値として1組の補間設計パラメータ組{x_i}(1≦i≦m)を抽出する(ステップS209)。
【0052】
次に、スライダ移り変わり関係計算部105内の補間設計パラメータ組目的関数計算部105−2は、上記抽出した1組の補間設計パラメータ組{x_i}を用いて、ステップS202にて算出されたt個の目的関数近似式に基づいて、t個の目的関数値f_j(x_i)(1≦j≦t,1≦i≦m)を近似計算する(ステップS210)。
【0053】
次に、スライダ移り変わり関係計算部105内の最適補間設計パラメータ組選択部105−3は、現在の補間設計パラメータ組{x_i}に対して算出された目的関数値f_j(x_i)が、目的関数空間上のパレート境界上又はその近傍に位置するか否か、即ち、補間設計パラメータ組{x_i}が非劣解であるか否かを判定する(ステップS211)。
【0054】
今、現在の補間設計パラメータ組{x_i}に対して算出された上記t個の目的関数値f_j(x_i)のうち、任意に選択された2個の目的関数f_uとf_vの値が、f_uとf_vで定める目的関数空間上にプロットされる場合、補間設計パラメータ組{x_i}が非劣解であれば、f_uとf_vは図7(b)に示されるパレート境界702の近傍にプロットされる。図7(b)では、補間点C1,C2,Cq がパレート境界702の近傍にプロットされているため、非劣解の可能性が高い。一方、補間点Cq-1 は、パレート境界702から離れた位置にプロットされているため、補間点Cq-1 に対応する補間設計パラメータ組は非劣解ではないと判定できる。
【0055】
そして、現在の補間設計パラメータ組{x_i}に対して算出されたt個の目的関数値f_j(x_i)から選択される2個の目的関数値f_uとf_vの全ての組合せにおいて、各目的関数値の組によって定まる点が、その組に対応する目的関数空間上のパレート境界上又はその近傍にプロットされれば、現在の補間設計パラメータ組{x_i}は非劣解であると判定できる。この判定処理の詳細について、以下に説明する。
【0056】
まず、この判定処理を実現するために、パレート境界点算出部110が、目的関数近似部102による図2のステップS202の処理の直後に、パレート境界点の算出処理を実行する(ステップS203)。図8は、ステップS203のパレート境界点算出処理の詳細動作を示す動作フローチャートである。以下の説明において、ステップS801〜S805は図8に示される各処理である。
【0057】
まず、パレート境界点算出部110は、t個の目的関数f_jから任意の2つの目的関数f_uとf_vの組を選択する(ステップS801)。
次に、パレート境界点算出部110は、目的関数近似部102にて算出された各目的関数の近似多項式と、設計パラメータ−目的関数値サンプル組101の各設計パラメータ値の制約条件を使って、ステップS801にて選択された2つの目的関数についての定式化を行う(ステップS802)。これにより、例えば下記数4式に例示されるような定式が得られる。
【数4】

【0058】
次に、パレート境界点算出部110は、上記数4式で示される式の値Fを、QE法(Quantifier Elimination:限量記号消去法)により、ステップS801にて選択された2つの目的関数間の論理式を算出する(ステップS803)。この結果、下記数5式に例示されるような、設計パラメータx1,・・・, x15が消去され、2つの目的関数y1 とy2 に関する論理式が出力される。
【数5】

【0059】
QE法の詳細については省略するが、本出願の発明者著による非特許公知文献「計算実代数幾何入門:CADとQEの概要(数学セミナー、11号 2007 64−70頁(穴井宏和、横山和弘共著))に、その処理方法が開示されており、本実施形態でもその処理方法をそのまま用いている。
【0060】
続いて、パレート境界点算出部110は、ステップS803にて算出された任意の2つの目的関数間の論理式に基づいて、2つの目的関数f_uとf_vの組に関するパレート境界点を抽出し、記憶する(ステップS804)。
【0061】
今、理解の容易化のために、2つの目的関数f_uとf_vの組の近似多項式が、下記数6式として例示されるように、3つの入力パラメータx1 、x2 、x3 に基づいて構成されて
いるとする。
【数6】

【0062】
この数6式に対して、ステップS802にて定式化を行った結果は、下記数7式となる。
【数7】

【0063】
更にこの数7式に対して、ステップS803にてQE法を適用した結果は、下記数8式となる。
【数8】

【0064】
今、数8式に例示される2つの目的関数y1 とy2 に関する2次元の目的関数空間上にて、その座標平面上の各点をスイープしながら、数8式に示される2つの目的関数y1 とy2 に関する論理式が真となる点を塗りつぶしてゆくと、例えば図9の900として示されるような塗りつぶされた領域(これを「可能領域」と呼ぶ)が得られる。図9において、y1-y2 座標平面上の斜めの直線は数8式の論理式の各論理境界を示す。
【0065】
図9の表示を見るとわかるように、可能領域900において、座標原点に近い下縁部の境界として、2つの目的関数f_uとf_v(y1 とy2 )に関するパレート境界を直感的に容易に認識することが可能で、最適化の限界領域を認識できる。
【0066】
このパレート境界を識別するために、パレート境界点算出部110は、目的関数f_vの値を0から矢印901の方向に所定刻み幅で増加させながら、各目的関数f_vの値毎に、更に目的関数f_uの値を0から矢印902の方向に所定刻み幅で増加させて、検索点をスイープさせ、2つの目的関数f_uとf_vに関する論理式(数5式や数8式)が最初に真となる点であって、f_vの増加に対するf_uの増加率がマイナスとなる点(図9の903等)を、パレート境界として抽出し、記憶する(以上、ステップS804)。
【0067】
この結果、現在選択されている2つの目的関数f_uとf_v(y1 とy2 )に関して、図9に示されるような複数のパレート境界点を抽出することができる。
ステップS804が終了した後、パレート境界点算出部110は、t個の目的関数f_jから2つの目的関数f_uとf_vの全ての組を選択したか否かを判定する(ステップS805)。
【0068】
パレート境界点算出部110は、2つの目的関数f_uとf_vの全ての組をまだ選択し終えていなければ、ステップS801の処理に戻って、次の2つの目的関数f_uとf_vの組を選択し、ステップS802〜S804にて、その組に対するパレート境界の抽出を行う。
【0069】
パレート境界点算出部110は、2つの目的関数f_uとf_vの全ての組を選択し終えたと
きには、ステップS805の判定がYESとなって、図8の動作フローチャートの処理、即ち、図2のステップS203のパレート境界算出処理を終了する。
【0070】
以上説明したパレート境界算出処理では、多項式近似による数式処理をベースとして多目的最適化処理を実施することが可能であり、従来技術では困難であった目的関数の組合せ毎のパレート境界点の算出も、QE法に基づく論理式を用いて容易に行うことが可能となる。
【0071】
以上のようにしてパレート境界点算出部110により2つの目的関数の組毎に算出されたパレート境界点を使って、スライダ移り変わり関係計算部105内の最適補間設計パラメータ組選択部105−3は、ステップS211にて、現在の補間設計パラメータ組{x_i}に対して算出された目的関数値f_j(x_i)が、目的関数空間上のパレート境界上又はその近傍に位置するか否か、即ち、補間設計パラメータ組{x_i}が非劣解であるか否かを判定する。
【0072】
図10は、ステップS211の詳細処理を示す動作フローチャートである。以下の説明において、ステップS1001〜S1006は図10に示される各処理である。
まず、最適補間設計パラメータ組選択部105−3は、t個の目的関数f_jから任意の2つの目的関数f_uとf_vの組を選択する(ステップS1001)。
【0073】
次に、最適補間設計パラメータ組選択部105−3は、f_u と f_vで定まる目的関数空間上で、現在の補間設計パラメータ組に対応してステップS210にて計算されている f_u と f_vに対応する目的関数値で定まる座標点と、f_u と f_vの組に対応してステップS203にてパレート境界点算出部110によって抽出され記憶されているパレート境界点の各々との、各ユークリッド距離を計算する(ステップS1002)。
【0074】
次に、最適補間設計パラメータ組選択部105−3は、ステップS1002にて計算されたユークリッド距離の中に、所定閾値以下のものがあるか否か、即ち、上記座標点が、f_u と f_vの組に対応して抽出されているパレート境界点の何れかの近傍に位置しているか否かを判定する(ステップS1003)。
【0075】
ステップS1002にて計算されたユークリッド距離の何れもが所定閾値よりも大きい場合には、上記座標点はf_u と f_vの組に対応するパレート境界上には位置していないと判定できるため、最適補間設計パラメータ組選択部105−3は、その時点で非劣解が検出されなかったことを出力し(ステップS1003→S1004)、図10の動作フローチャートの処理、即ち、図2のステップS211の処理を終了する。
【0076】
ステップS1002にて計算されたユークリッド距離の何れもが所定閾値よりも大きい場合には、上記座標点はf_u と f_vの組に対応するパレート境界上に位置していると判定できるため、最適補間設計パラメータ組選択部105−3は、t個の目的関数f_jから2つの目的関数f_uとf_vの全ての組を選択したか否かを判定する(ステップS1005)。
【0077】
最適補間設計パラメータ組選択部105−3は、2つの目的関数f_uとf_vの全ての組をまだ選択し終えていなければ、ステップS1001の処理に戻って、次の2つの目的関数f_uとf_vの組を選択し、ステップS1002〜S1004にて、その組に対するパレート境界の判定を行う。
【0078】
2つの目的関数f_uとf_vの全ての組を選択し終えてステップS1005の判定がYESとなったときには、目的関数f_u と f_vの組で定まる全ての目的関数空間上で、現在の補間設計パラメータ組から計算された f_u と f_vに対応する目的関数値で定まる座標点が
、f_u と f_vの組に対応するパレート境界上に位置すると判定することができるため、最適補間設計パラメータ組選択部105−3は、非劣解が検出されたことを出力し(ステップS1005→S1006)、図10の動作フローチャートの処理、即ち、図2のステップS211の処理を終了する。
【0079】
以上のようにして、最適補間設計パラメータ組選択部105−3は、図2のステップS211において、現在の補間設計パラメータ組{x_i}に対して算出された目的関数値f_j(x_i)が、目的関数空間上のパレート境界上又はその近傍に位置するか否か、即ち、補間設計パラメータ組{x_i}が非劣解であるか否かを判定することができる。
【0080】
図2の処理に戻り、最適補間設計パラメータ組選択部105−3は、現在の補間設計パラメータ組{x_i}が非劣解であると判定したときには、現在の補間設計パラメータ組{x_i}を最適補間設計パラメータ組として記憶する(ステップS211→S212)。
【0081】
最適補間設計パラメータ組選択部105−3は、現在の補間設計パラメータ組{x_i}が非劣解ではないと判定したときには、現在の補間設計パラメータ組{x_i}は破棄する(ステップS211→S213)。
【0082】
ステップS211の判定がNOとなったとき又はステップS212の処理の後に、ステップS208にて垂直二等分超平面P上で算出されている全ての補間点が選択されたか否かが判定される(ステップS213)。
【0083】
スライダ移り変わり関係計算部105は、全ての補間点を選択し終えていないと判定されたときには、ステップS209の処理に制御が戻って、垂直二等分超平面P上の新たな補間点選択され、その後、ステップS210からS212の一連の処理によって、その補間点に対応する補間設計パラメータ組{x_i}が非劣解であるか否かが判定され、非劣解であればそれを最適補間設計パラメータ組として記憶する処理が繰り返し実行される。
【0084】
以上のステップS209〜S213の処理の繰返しにより、例えば図7(a)に示される垂直二等分超平面P上の各補間点C1,C2,・・・, Cq-1,Cq のそれぞれが、図7(b)に概念的に示されるように、目的関数空間上でパレート境界702上に位置するか否かが判定され、パレート境界702上に位置する補間点(図7ではC1,C2,Cq )の補間設計パラメータ組が、最適補間設計パラメータ組として抽出される。
【0085】
全ての補間点を選択し終えたと判定されたときには、スライダ移り変わり関係計算部105内の処理制御部105−4は、ステップS212にて順次記憶された最適補間設計パラメータ組を、現在の最適設計パラメータ組候補Lに統合する(ステップS213→S214)。
【0086】
今、ステップS212にて記憶された最適補間設計パラメータ組を図11に示されるようにT={T1,T2,・・・, Td }とすれば、初期状態においては最適設計パラメータ組候補L=[A1 、A2 ]であるから、ステップS214での統合処理によって、下記に示される3経路からなる最適設計パラメータ組候補L’ が生成される。

L’=[A1,T1,A2],
[A1,T2,A2],
[A1,T3,A2]

【0087】
次に、処理制御部105−4は、上記のようにして生成された最適設計パラメータ組候
補L’中の1つの経路、例えば[A1,T1,A2 ]を新たな最適設計パラメータ組候補Lに置き換えて、その最適設計パラメータ組候補Lから未補間の2組の設計パラメータ組を全て選択したか否かを判定する(ステップS215)。なお、この判定は、全ての経路について行われる。
【0088】
処理制御部105−4は、最適設計パラメータ組候補Lから未補間の2組の設計パラメータ組A,Bをまだ全て選択してはいないときには、ステップS206の処理に戻って、最適設計パラメータ組候補Lから未だ補間処理が行われていない2組の設計パラメータ組A,Bを新たに選択する。上述の例では、経路[A1,T1,A2 ]については、[A1,A2 ]は補間済みであるから選択されず、[A1,T1 ]、[T1,A2 ]が選択され、経路[A1,T2,A2 ]についても、[A1,A2 ]は補間済みであるから選択されず、[A1,T2 ]、[T2,A2 ]が選択され、経路[A1,T3,A2 ]についても、[A1,A2 ]は補間済みであるから選択されず、[A1,T3 ]、[T3,A2 ]が選択されることになる。
【0089】
そして、処理制御部105−4は、このようにして新たに選択した2組の設計パラメータ組A,Bを使って、前述したステップS207からS214までの一連の処理を実行する。即ち、2組の設計パラメータ組A,B間のユークリッド距離が閾値rよりも大きい場合に、その間を更に補間すべく、設計パラメータ組上でA,Bを結ぶ直線に対する垂直二等分超平面Pが算出されてそのP上に補間点が設定され(ステップS208)、各補間点について(ステップS209からS213までのループ処理)、その補間点に対応する補間設計パラメータ組が非劣解である場合にそれが最適補間設計パラメータ組として記憶され(ステップS209〜S212)、そのようにして得られた最適補間設計パラメータ組が最適設計パラメータ組候補Lに統合されて、新た最適設計パラメータ組候補L’ が生成される。
【0090】
一般的には、ステップS206からS215までの一連の処理の繰返しによって、最適設計パラメータ組候補Lの構成要素は増加してゆく。今、最適設計パラメータ組候補Lを、

L=[P1, …, Pi, P(i+1), …, Pr]

と記述し、ステップS206からS215までの処理で新たに得られた最適補間設計パラメータ組をT={T1,T2,・・・, Td }とすれば、ステップS214での統合処理によって、図11に示される関係に基づいて、下記に示される新たにd経路の最適設計パラメータ組候補L’ が生成される。

L’=[P1, …, Pi, T1, P(i+1), …, Pr],
[P1, …, Pi, T2, P(i+1), …, Pr],
…,
[P1, …, Pi, Td, P(i+1), …, Pr]

【0091】
上述のようにして生成された最適設計パラメータ組候補L’中の各経路(上述の式の各行に対応)が新たな最適設計パラメータ組候補Lに置き換えられて、そこから選択される全ての2組の設計パラメータ組A,Bについて、前述したステップS207からS214までの一連の処理が繰り返し実行される。
【0092】
以上の処理の繰返しにより、例えば図7(a)において、2組の最適設計パラメータ組候補A,B間を補間する最適補間設計パラメータ組C2 が生成され、そのC2 がA,Bに統合されることにより、図12(a)に示されるように、新たに2組の設計パラメータ組
[A,C2 ]及び[C2,B]について、垂直二等分超平面P’ 及びP’’が算出され、P’ 及びP’’上に設定された各補間点から、例えば図12(b)に示されるように、パレート境界1201(図7の702と同じ)上の新たな最適補間設計パラメータ組C’
及びC’’が算出される。
【0093】
処理制御部105−4は、ステップ215において、最適設計パラメータ組候補Lから未補間の2組の設計パラメータ組A,Bを全て選択し終えたと判定したときには、最適設計パラメータ組候補Lを最終的に得られた最適設計パラメータ組として、移り変わりデータ記憶部106に記憶させる。
【0094】
この結果、設計者が初期の2組の最適設計パラメータ組候補A1 ,A2 と補間の細かさを指定する閾値rを与えると、スライダ移り変わり関係計算部105は、設計パラメータ空間上でその初期の2組の最適設計パラメータ組候補A,Bの間を閾値rの細かさで補間する設計パラメータ組であってかつ非劣解(=パレート境界上の最適解)となる最適補間設計パラメータ組を、算出することができる。
【0095】
以上のようにして、移り変わりデータ記憶部106に最適設計パラメータ組が得られたら、図1のスライダ形状生成部107は、移り変わりデータ記憶部106に得られた各最適設計パラメータ組に対応する各スライダ形状を算出し、その各スライダ形状を、例えば図13に示されるようにして、最適パラメータ組関係情報表示部109に表示させる。
【0096】
また、図1の方向ベクトル生成部108は、移り変わりデータ記憶部106に得られた各最適設計パラメータ組において、隣接する各組間における設計パラメータ値の変化の様子を方向ベクトルとして生成し、それを最適パラメータ組関係情報表示部109に表示させるようなこともできる。
【0097】
設計者は、最適パラメータ組関係情報表示部109を通じて、初期に与えた2組の最適設計パラメータ組候補A1 ,A2 に対応する2組のスライダ形状の間で、スライダ形状をどのように変更することができるかという知見を得ることができる。
【0098】
図14は、図1に示される本実施形態のシステムを実現できるコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
図14に示されるコンピュータは、CPU1401、メモリ1402、入力装置1403、出力装置1404、外部記憶装置1405、可搬記録媒体1409が挿入される可搬記録媒体駆動装置1406、及びネットワーク接続装置1407を有し、これらがバス1408によって相互に接続された構成を有する。同図に示される構成は上記システムを実現できるコンピュータの一例であり、そのようなコンピュータはこの構成に限定されるものではない。
【0099】
CPU1401は、当該コンピュータ全体の制御を行う。メモリ1402は、プログラムの実行、データ更新等の際に、外部記憶装置1405(或いは可搬記録媒体1409)に記憶されているプログラム又はデータを一時的に格納するRAM等のメモリである。CUP1401は、プログラムをメモリ1402に読み出して実行することにより、全体の制御を行う。
【0100】
入力装置1403は、例えば、キーボード、マウス等及びそれらのインタフェース制御装置とからなる。入力装置1403は、ユーザによるキーボードやマウス等による入力操作を検出し、その検出結果をCPU1401に通知する。
【0101】
出力装置1404は、表示装置、印刷装置等及びそれらのインタフェース制御装置とか
らなる。出力装置1404は、CPU1401の制御によって送られてくるデータを表示装置や印刷装置に出力する。
【0102】
外部記憶装置1405は、例えばハードディスク記憶装置である。主に各種データやプログラムの保存に用いられる。
可搬記録媒体駆動装置1406は、光ディスクやSDRAM、コンパクトフラッシュ(登録商標)等の可搬記録媒体1409を収容するもので、外部記憶装置1405の補助の役割を有する。
【0103】
ネットワーク接続装置1407は、例えばLAN(ローカルエリアネットワーク)又はWAN(ワイドエリアネットワーク)の通信回線を接続するための装置である。
本実施形態によるシステムは、図1に示される機能ブロックを搭載したプログラムをCPU1401が実行することで実現される。そのプログラムは、例えば外部記憶装置1405や可搬記録媒体1409に記録して配布してもよく、或いはネットワーク接続装置1407によりネットワークから取得できるようにしてもよい。
【0104】
上述の本実施形態は、ハードディスクのスライダ設計の支援を行う設計支援装置として本発明を実施した場合の例について示したが、本発明はこれに限られるものではなく、多目的最適化を行いながら設計支援を行う各種装置に適用することが可能である。
【0105】
以上説明した本実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
設計パラメータ組を複数組入力して、所定の計算に基づいて複数の目的関数を計算し、該複数の目的関数に対して多目的最適化処理を実行することにより、最適な前記設計パラメータ組の決定を支援する多目的最適化設計支援装置において、
所定組数の設計パラメータサンプル組とそれに対応して予め計算されている前記複数の目的関数の組とを入力して、前記複数の目的関数をそれぞれ数式近似して複数の目的関数近似式を算出する目的関数近似部と、
前記設計パラメータサンプル組のうち、前記複数の目的関数の組に対するコスト評価における非劣解に対応する2組以上の前記設計パラメータサンプル組を初期の最適設計パラメータ組候補として選択する初期最適設計パラメータ組候補選択部と、
前記最適設計パラメータ組候補内の隣接する各設計パラメータ組間を補間する設計パラメータ組を補間設計パラメータ組として算出する補間設計パラメータ組算出部と、
該算出された補間設計パラメータ組のそれぞれについて、前記複数の目的関数近似式を使って前記複数の目的関数を近似計算する補間設計パラメータ組目的関数計算部と、
該近似計算された複数の目的関数の組のコスト評価における非劣解に対応する前記補間設計パラメータ組を、最適補間設計パラメータ組として選択する最適補間設計パラメータ組選択部と、
該最適補間設計パラメータ組を前記最適設計パラメータ組候補と統合して新たな最適設計パラメータ組候補とし、該新たな最適設計パラメータ組候補を構成する各設計パラメータ組間のパラメータ距離を判定することにより継続処理か出力処理かを判定し、前記継続処理を判定した場合には、前記新たな最適設計パラメータ組候補を前記補間設計パラメータ組算出部に入力して該手段に制御を戻し、前記終了処理を判定した場合には、前記新たな最適設計パラメータ組候補を最終的な最適設計パラメータ組として出力する処理制御部と、
該出力された最適設計パラメータ組に関係する情報を表示する最適設計パラメータ組関係情報表示部と、
を含むことを特徴とする最適解関係表示装置。
(付記2)
前記選択した初期の最適設計パラメータ組候補の各組を構成する複数の設計パラメータ
のうち、該各組間で値の変化が所定閾値以下の設計パラメータについては、前記最適設計パラメータ組候補、前記補間設計パラメータ組、及び前記最適設計パラメータ組の各構成要素から除外する不変パラメータ除外部を更に含む、
ことを特徴とする付記1に記載の最適解関係表示装置。
(付記3)
前記最適設計パラメータ組関係情報表示部は、前記最適設計パラメータ組を構成する前記各設計パラメータ組に対応する設計形状を表示する、
ことを特徴とする付記1又は2の何れか1項に記載の最適解関係表示装置。
(付記4)
前記最適設計パラメータ組関係情報表示部は、前記最適設計パラメータ組を構成する隣接する前記各設計パラメータ組間の方向ベクトル情報を表示する、
ことを特徴とする付記1又は2の何れか1項に記載の最適解関係表示装置。
(付記5)
前記補間設計パラメータ組算出部は、設計パラメータ組を構成する各設計パラメータを各座標軸とする設計パラメータ空間上で、前記最適設計パラメータ組候補内から選択される2組の設計パラメータ組の各座標間を結ぶ直線に対する垂直二等分超平面上の各座標に対応する設計パラメータ組を、前記補間設計パラメータ組として選択する、
ことを特徴とする付記1乃至4の何れか1項に記載の最適解関係表示装置。
(付記6)
前記目的関数近似部は、前記所定組数の設計パラメータサンプル組とそれに対応して予め計算されている前記複数の目的関数の組とに基づいて、重回帰分析により、前記目的関数を重回帰式で多項式近似する、
ことを特徴とする付記1乃至5の何れか1項に記載の最適解関係表示装置。
(付記7)
前記設計パラメータは、ハードディスク磁気記憶装置のスライダ部の形状を決定するためのパラメータである、
ことを特徴とする付記1乃至6の何れか1項に記載の最適解関係表示装置。
(付記8)
設計パラメータ組を複数組入力して、所定の計算に基づいて複数の目的関数を計算し、該複数の目的関数に対して多目的最適化処理を実行することにより、最適な前記設計パラメータ組の決定を支援する多目的最適化設計支援方法において、
所定組数の設計パラメータサンプル組とそれに対応して予め計算されている前記複数の目的関数の組とを入力して、前記複数の目的関数をそれぞれ数式近似して複数の目的関数近似式を算出する目的関数近似ステップと、
前記設計パラメータサンプル組のうち、前記複数の目的関数の組に対するコスト評価における非劣解に対応する2組以上の前記設計パラメータサンプル組を初期の最適設計パラメータ組候補として選択する初期最適設計パラメータ組候補選択ステップと、
前記最適設計パラメータ組候補内の隣接する各設計パラメータ組間を補間する設計パラメータ組を補間設計パラメータ組として算出する補間設計パラメータ組算出ステップと、
該算出された補間設計パラメータ組のそれぞれについて、前記複数の目的関数近似式を使って前記複数の目的関数を近似計算する補間設計パラメータ組目的関数計算ステップと、
該近似計算された複数の目的関数の組のコスト評価における非劣解に対応する前記補間設計パラメータ組を、最適補間設計パラメータ組として選択する最適補間設計パラメータ組選択ステップと、
該最適補間設計パラメータ組を前記最適設計パラメータ組候補と統合して新たな最適設計パラメータ組候補とし、該新たな最適設計パラメータ組候補を構成する各設計パラメータ組間のパラメータ距離を判定することにより継続処理か出力処理かを判定し、前記継続処理を判定した場合には、前記新たな最適設計パラメータ組候補を前記補間設計パラメータ組算出ステップに入力して該ステップに制御を戻し、前記終了処理を判定した場合には
、前記新たな最適設計パラメータ組候補を最終的な最適設計パラメータ組として出力する処理制御ステップと、
該出力された最適設計パラメータ組に関係する情報を表示する最適設計パラメータ組関係情報表示ステップと、
を含むことを特徴とする最適解関係表示方法。
(付記9)
前記選択した初期の最適設計パラメータ組候補の各組を構成する複数の設計パラメータのうち、該各組間で値の変化が所定閾値以下の設計パラメータについては、前記最適設計パラメータ組候補、前記補間設計パラメータ組、及び前記最適設計パラメータ組の各構成要素から除外する不変パラメータ除外ステップを更に含む、
ことを特徴とする付記8に記載の最適解関係表示方法。
(付記10)
前記最適設計パラメータ組関係情報表示ステップは、前記最適設計パラメータ組を構成する前記各設計パラメータ組に対応する設計形状を表示する、
ことを特徴とする付記8又は9の何れか1項に記載の最適解関係表示方法。
(付記11)
前記最適設計パラメータ組関係情報表示ステップは、前記最適設計パラメータ組を構成する隣接する前記各設計パラメータ組間の方向ベクトル情報を表示する、
ことを特徴とする付記8又は9の何れか1項に記載の最適解関係表示方法。
(付記12)
前記補間設計パラメータ組算出ステップは、設計パラメータ組を構成する各設計パラメータを各座標軸とする設計パラメータ空間上で、前記最適設計パラメータ組候補内から選択される2組の設計パラメータ組の各座標間を結ぶ直線に対する垂直二等分超平面上の各座標に対応する設計パラメータ組を、前記補間設計パラメータ組として選択する、
ことを特徴とする付記8乃至11の何れか1項に記載の最適解関係表示方法。
(付記13)
前記目的関数近似ステップは、前記所定組数の設計パラメータサンプル組とそれに対応して予め計算されている前記複数の目的関数の組とに基づいて、重回帰分析により、前記目的関数を重回帰式で多項式近似する、
ことを特徴とする付記8乃至12の何れか1項に記載の最適解関係表示方法。
(付記14)
前記設計パラメータは、ハードディスク磁気記憶装置のスライダ部の形状を決定するためのパラメータである、
ことを特徴とする付記8乃至13の何れか1項に記載の最適解関係表示方法。
(付記15)
設計パラメータ組を複数組入力して、所定の計算に基づいて複数の目的関数を計算し、該複数の目的関数に対して多目的最適化処理を実行することにより、最適な前記設計パラメータ組の決定を支援するコンピュータに、
所定組数の設計パラメータサンプル組とそれに対応して予め計算されている前記複数の目的関数の組とを入力して、前記複数の目的関数をそれぞれ数式近似して複数の目的関数近似式を算出する目的関数近似機能と、
前記設計パラメータサンプル組のうち、前記複数の目的関数の組に対するコスト評価における非劣解に対応する2組以上の前記設計パラメータサンプル組を初期の最適設計パラメータ組候補として選択する初期最適設計パラメータ組候補選択機能と、
前記最適設計パラメータ組候補内の隣接する各設計パラメータ組間を補間する設計パラメータ組を補間設計パラメータ組として算出する補間設計パラメータ組算出機能と、
該算出された補間設計パラメータ組のそれぞれについて、前記複数の目的関数近似式を使って前記複数の目的関数を近似計算する補間設計パラメータ組目的関数計算機能と、
該近似計算された複数の目的関数の組のコスト評価における非劣解に対応する前記補間設計パラメータ組を、最適補間設計パラメータ組として選択する最適補間設計パラメータ
組選択機能と、
該最適補間設計パラメータ組を前記最適設計パラメータ組候補と統合して新たな最適設計パラメータ組候補とし、該新たな最適設計パラメータ組候補を構成する各設計パラメータ組間のパラメータ距離を判定することにより継続処理か出力処理かを判定し、前記継続処理を判定した場合には、前記新たな最適設計パラメータ組候補を前記補間設計パラメータ組算出機能に入力して該機能に制御を戻し、前記終了処理を判定した場合には、前記新たな最適設計パラメータ組候補を最終的な最適設計パラメータ組として出力する処理制御機能と、
該出力された最適設計パラメータ組に関係する情報を表示する最適設計パラメータ組関係情報表示機能と、
を実行させるためのプログラム。
(付記16)
前記選択した初期の最適設計パラメータ組候補の各組を構成する複数の設計パラメータのうち、該各組間で値の変化が所定閾値以下の設計パラメータについては、前記最適設計パラメータ組候補、前記補間設計パラメータ組、及び前記最適設計パラメータ組の各構成要素から除外する不変パラメータ除外機能を更に含む、
ことを特徴とする付記15に記載のプログラム。
(付記17)
前記最適設計パラメータ組関係情報表示機能は、前記最適設計パラメータ組を構成する前記各設計パラメータ組に対応する設計形状を表示する、
ことを特徴とする付記15又は16の何れか1項に記載のプログラム。
(付記18)
前記最適設計パラメータ組関係情報表示機能は、前記最適設計パラメータ組を構成する隣接する前記各設計パラメータ組間の方向ベクトル情報を表示する、
ことを特徴とする付記15又は16の何れか1項に記載のプログラム。
(付記19)
前記補間設計パラメータ組算出機能は、設計パラメータ組を構成する各設計パラメータを各座標軸とする設計パラメータ空間上で、前記最適設計パラメータ組候補内から選択される2組の設計パラメータ組の各座標間を結ぶ直線に対する垂直二等分超平面上の各座標に対応する設計パラメータ組を、前記補間設計パラメータ組として選択する、
ことを特徴とする付記15乃至18の何れか1項に記載のプログラム。
(付記20)
前記目的関数近似機能は、前記所定組数の設計パラメータサンプル組とそれに対応して予め計算されている前記複数の目的関数の組とに基づいて、重回帰分析により、前記目的関数を重回帰式で多項式近似する、
ことを特徴とする付記15乃至19の何れか1項に記載のプログラム。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本実施形態のブロック構成図である。
【図2】目的関数近似部102、初期最適設計パラメータ組候補選択部103、不変パラメータ除外部104、及びスライダ移り変わり関係計算部105によって実行される処理を示す動作フローチャートである。
【図3】設計パラメータ−目的関数値サンプル組101のデータ構成図(その1)である。
【図4】設計パラメータ−目的関数値サンプル組101のデータ構成図(その2)である。
【図5】数式処理ベースでの可能領域表示のメリットを説明する図である。
【図6】不変パラメータ除外部104の説明図である。
【図7】スライダ移り変わり関係計算部105の動作説明図(その1)である。
【図8】パレート境界点算出処理の詳細動作を示す動作フローチャートである。
【図9】パレート境界点算出処理の動作説明図である。
【図10】非劣解判定処理の動作フローチャートである。
【図11】スライダ移り変わり関係計算部105の動作説明図(その2)である。
【図12】スライダ移り変わり関係計算部105の動作説明図(その3)である。
【図13】スライダ形状の表示例を示す図である。
【図14】本実施形態によるシステムを実現できるコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【図15】ハードディスクのスライダの説明図である。
【図16】スライダ形状のパラメータの説明図である。
【図17】多目的最適化と非劣解の説明図である。
【図18】従来の多目的最適化の動作を示す動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0107】
101 設計パラメータ−目的関数値サンプル組
102 目的関数近似部
103 初期最適設計パラメータ組候補選択部
104 不変パラメータ除外部
105 スライダ移り変わり関係計算部
106 移り変わりデータ記憶部
107 スライダ形状生成部
108 方向ベクトル生成部
109 最適パラメータ組関係情報表示部
110 パレート境界点算出部
1101 CPU
1102 メモリ
1103 入力装置
1104 出力装置
1105 外部記憶装置
1106 可搬記録媒体駆動装置
1107 ネットワーク接続装置
1108 バス
1109 可搬記録媒体
1501 スライダ
1502 アクチュエータ
1503 フライハイト
1504 ロール
1505 ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計パラメータ組を複数組入力して、所定の計算に基づいて複数の目的関数を計算し、該複数の目的関数に対して多目的最適化処理を実行することにより、最適な前記設計パラメータ組の決定を支援する多目的最適化設計支援装置において、
所定組数の設計パラメータサンプル組とそれに対応して予め計算されている前記複数の目的関数の組とを入力して、前記複数の目的関数をそれぞれ数式近似して複数の目的関数近似式を算出する目的関数近似部と、
前記設計パラメータサンプル組のうち、前記複数の目的関数の組に対するコスト評価における非劣解に対応する2組以上の前記設計パラメータサンプル組を初期の最適設計パラメータ組候補として選択する初期最適設計パラメータ組候補選択部と、
前記最適設計パラメータ組候補内の隣接する各設計パラメータ組間を補間する設計パラメータ組を補間設計パラメータ組として算出する補間設計パラメータ組算出部と、
該算出された補間設計パラメータ組のそれぞれについて、前記複数の目的関数近似式を使って前記複数の目的関数を近似計算する補間設計パラメータ組目的関数計算部と、
該近似計算された複数の目的関数の組のコスト評価における非劣解に対応する前記補間設計パラメータ組を、最適補間設計パラメータ組として選択する最適補間設計パラメータ組選択部と、
該最適補間設計パラメータ組を前記最適設計パラメータ組候補と統合して新たな最適設計パラメータ組候補とし、該新たな最適設計パラメータ組候補を構成する各設計パラメータ組間のパラメータ距離を判定することにより継続処理か出力処理かを判定し、前記継続処理を判定した場合には、前記新たな最適設計パラメータ組候補を前記補間設計パラメータ組算出部に入力して該部分に制御を戻し、前記終了処理を判定した場合には、前記新たな最適設計パラメータ組候補を最終的な最適設計パラメータ組として出力する処理制御部と、
該出力された最適設計パラメータ組に関係する情報を表示する最適設計パラメータ組関係情報表示部と、
を含むことを特徴とする最適解関係表示装置。
【請求項2】
前記選択した初期の最適設計パラメータ組候補の各組を構成する複数の設計パラメータのうち、該各組間で値の変化が所定閾値以下の設計パラメータについては、前記最適設計パラメータ組候補、前記補間設計パラメータ組、及び前記最適設計パラメータ組の各構成要素から除外する不変パラメータ除外部を更に含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の最適解関係表示装置。
【請求項3】
前記最適設計パラメータ組関係情報表示部は、前記最適設計パラメータ組を構成する前記各設計パラメータ組に対応する設計形状を表示する、
ことを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の最適解関係表示装置。
【請求項4】
前記補間設計パラメータ組算出部は、設計パラメータ組を構成する各設計パラメータを各座標軸とする設計パラメータ空間上で、前記最適設計パラメータ組候補内から選択される2組の設計パラメータ組の各座標間を結ぶ直線に対する垂直二等分超平面上の各座標に対応する設計パラメータ組を、前記補間設計パラメータ組として選択する、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の最適解関係表示装置。
【請求項5】
前記設計パラメータは、ハードディスク磁気記憶装置のスライダ部の形状を決定するためのパラメータである、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の最適解関係表示装置。
【請求項6】
設計パラメータ組を複数組入力して、所定の計算に基づいて複数の目的関数を計算し、
該複数の目的関数に対して多目的最適化処理を実行することにより、最適な前記設計パラメータ組の決定を支援する多目的最適化設計支援方法において、
所定組数の設計パラメータサンプル組とそれに対応して予め計算されている前記複数の目的関数の組とを入力して、前記複数の目的関数をそれぞれ数式近似して複数の目的関数近似式を算出する目的関数近似ステップと、
前記設計パラメータサンプル組のうち、前記複数の目的関数の組に対するコスト評価における非劣解に対応する2組以上の前記設計パラメータサンプル組を初期の最適設計パラメータ組候補として選択する初期最適設計パラメータ組候補選択ステップと、
前記最適設計パラメータ組候補内の隣接する各設計パラメータ組間を補間する設計パラメータ組を補間設計パラメータ組として算出する補間設計パラメータ組算出ステップと、
該算出された補間設計パラメータ組のそれぞれについて、前記複数の目的関数近似式を使って前記複数の目的関数を近似計算する補間設計パラメータ組目的関数計算ステップと、
該近似計算された複数の目的関数の組のコスト評価における非劣解に対応する前記補間設計パラメータ組を、最適補間設計パラメータ組として選択する最適補間設計パラメータ組選択ステップと、
該最適補間設計パラメータ組を前記最適設計パラメータ組候補と統合して新たな最適設計パラメータ組候補とし、該新たな最適設計パラメータ組候補を構成する各設計パラメータ組間のパラメータ距離を判定することにより継続処理か出力処理かを判定し、前記継続処理を判定した場合には、前記新たな最適設計パラメータ組候補を前記補間設計パラメータ組算出ステップに入力して該ステップに制御を戻し、前記終了処理を判定した場合には、前記新たな最適設計パラメータ組候補を最終的な最適設計パラメータ組として出力する処理制御ステップと、
該出力された最適設計パラメータ組に関係する情報を表示する最適設計パラメータ組関係情報表示ステップと、
を含むことを特徴とする最適解関係表示方法。
【請求項7】
設計パラメータ組を複数組入力して、所定の計算に基づいて複数の目的関数を計算し、該複数の目的関数に対して多目的最適化処理を実行することにより、最適な前記設計パラメータ組の決定を支援するコンピュータに、
所定組数の設計パラメータサンプル組とそれに対応して予め計算されている前記複数の目的関数の組とを入力して、前記複数の目的関数をそれぞれ数式近似して複数の目的関数近似式を算出する目的関数近似機能と、
前記設計パラメータサンプル組のうち、前記複数の目的関数の組に対するコスト評価における非劣解に対応する2組以上の前記設計パラメータサンプル組を初期の最適設計パラメータ組候補として選択する初期最適設計パラメータ組候補選択機能と、
前記最適設計パラメータ組候補内の隣接する各設計パラメータ組間を補間する設計パラメータ組を補間設計パラメータ組として算出する補間設計パラメータ組算出機能と、
該算出された補間設計パラメータ組のそれぞれについて、前記複数の目的関数近似式を使って前記複数の目的関数を近似計算する補間設計パラメータ組目的関数計算機能と、
該近似計算された複数の目的関数の組のコスト評価における非劣解に対応する前記補間設計パラメータ組を、最適補間設計パラメータ組として選択する最適補間設計パラメータ組選択機能と、
該最適補間設計パラメータ組を前記最適設計パラメータ組候補と統合して新たな最適設計パラメータ組候補とし、該新たな最適設計パラメータ組候補を構成する各設計パラメータ組間のパラメータ距離を判定することにより継続処理か出力処理かを判定し、前記継続処理を判定した場合には、前記新たな最適設計パラメータ組候補を前記補間設計パラメータ組算出機能に入力して該機能に制御を戻し、前記終了処理を判定した場合には、前記新たな最適設計パラメータ組候補を最終的な最適設計パラメータ組として出力する処理制御機能と、
該出力された最適設計パラメータ組に関係する情報を表示する最適設計パラメータ組関係情報表示機能と、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−61439(P2010−61439A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226962(P2008−226962)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】