説明

有害成分含有被処理気体の浄化方法及び浄化装置

【課題】有害成分(特に窒素酸化物及び/又はオゾン)を含有する被処理気体の浄化方法及び浄化装置を提供する。
【解決手段】浄化方法は、有害成分を含有する被処理気体を取り込んでから、有害成分を除去した処理済気体を放出するまでの間に、前記被処理気体が徐冷スラグ含有処理層を通過する工程を含むことを特徴とする。浄化装置は、有害成分を含有する被処理気体の取込手段24と、有害成分を除去した処理済気体の放出手段との間に、前記被処理気体を通過させる徐冷スラグ含有処理層21を含むことを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害成分を含有する被処理気体の浄化方法及び浄化装置に関する。本発明によれば、例えば、汚染大気の窒素酸化物を高効率で除去することができると共に、汚染大気の酸化処理によって発生する過剰オゾンも高効率で除去することができる。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物(NO)は、自動車等から排出され、汚染大気の最大の要因となっている。窒素酸化物などで汚染されているこのような大気を土壌に通過させて浄化する気体浄化方法が知られている。例えば、道路わきから汚染大気を吸い込み、送風管を通じて、道路わきに設けた土壌層内に送り込み、汚染大気が土壌層を通過する際に、土壌中の微生物により窒素酸化物などを酸化して分解したり、その他の汚染原因物質(例えば、粉塵)などを吸着して、浄化する方式が提案されている(例えば、非特許文献1)。また、50重量%以上の細礫分を含む土壌に、悪臭ガスや自動車排気ガスなどの有害ガスを接触させ、土壌中の微生物により有害成分を分解して脱臭・浄化する微生物脱臭浄化装置も知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
前記の浄化方法で用いられる土壌には、硝酸を亜硝酸に変換する微生物(例えば、硝酸レダクターゼ含有細菌)や亜硝酸を窒素に変換する微生物(例えば、脱窒細菌)が担持されており、窒素酸化物を分解させることが期待されている。しかしながら、前記微生物の関与は、浄化作用において大きな役割を占めるものではなく、土壌を形成する粒子成分による吸着作用が大きな役割を担っていると考えられている。そこで、一般的に、前記土壌層には、破砕炭(活性炭)や種々の吸着材が配合されている。これらの吸着性粒子成分による吸着作用は、それらの粒子表面に硝酸や亜硝酸あるいは粉塵などが吸着して堆積すると著しく低下するので、定期的に表面を洗浄する必要がある。一般に、前記の土壌層の上部表面は、大気に露出しており、植裁されている。そこで、植裁への水分補給を兼ねて散水を行うことにより、土壌層粒子成分の表面浄化を同時に行い、吸着能の維持を図っている。
【0004】
また、汚染空気に含まれている窒素酸化物(NO)の内、二酸化窒素(NO)については、前記の土壌による浄化方法によって99%以上の除去率が達成されるが、一酸化窒素(NO)は難溶解物質であるため、土壌による浄化方法では、そのほとんどが除去されない。そこで、一酸化窒素(NO)を易溶解物質である二酸化窒素(NO)に変換させるために、汚染空気をオゾン処理してから土壌層に通過させる方法(例えば、特許文献2又は特許文献3)や、汚染空気をプラズマ処理してから土壌層に通過させる方法(例えば、特許文献4)も提案されている。これらの方法においても、微生物の作用による浄化よりも、粒子成分への吸着による浄化作用が大きな役割を占めている点は、前記と同様であるだけでなく、更に、オゾン処理やプラズマ処理において余剰のオゾンが発生し、その余剰オゾンを大気へ放出させないために、土壌層で吸着して除去するか、あるいは還元して酸素に変換する必要がある。
【0005】
【非特許文献1】第34回大気汚染学会講演要旨集、第484頁
【特許文献1】特開平10−128043号公報
【特許文献2】特開平8−206442号公報
【特許文献3】特開平7−243667号公報
【特許文献4】特開2001−321637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の土壌層において代表的な吸着材として利用されている破砕炭(活性炭)などの吸着性粒子成分は、細孔を有しており、表面に水分が付着すると細孔が閉鎖されるので、吸着能が著しく低下する。従って、降雨時や、植裁への水分補給を兼ねる散水の直後は、土壌層の浄化作用が著しく低下してしまう。低下する吸着能は、窒素酸化物やオゾンの吸着能だけでなく、粉塵などの吸着能も同時に低下する。
【0007】
本発明者は、乾燥時の吸着能が優れているだけでなく、湿潤時においても吸着能が低下しない吸着材の開発を鋭意検討していたところ、従来は、吸着材としての用途が全く知られていなかった徐冷スラグが、優れた吸着性能を有しており、しかも、この吸着性能が乾燥時と湿潤時のいずれにおいても優れていることを見出し、この徐冷スラグを前記土壌層の吸着材として用いることによって、例えば、汚染大気の窒素酸化物を高効率で除去することができることを見出した。
また、徐冷スラグは、オゾンの還元分解能も極めて優れており、しかも、このオゾン還元分解性能も、乾燥時と湿潤時のいずれにおいても極めて優れている。従って、被処理気体を酸化処理してから土壌層を通過させる気体浄化方法及び装置において、その酸化処理の際に過剰のオゾンが発生しても、これらの過剰オゾンを充分に還元して無害な酸素に変換することができる。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、有害成分を含有する被処理気体を取り込んでから、有害成分を除去した処理済気体を放出するまでの間に、前記被処理気体が徐冷スラグ含有処理層を通過する工程を含むことを特徴とする、被処理気体の浄化方法に関する。
【0009】
本発明の浄化方法の好ましい態様においては、前記被処理気体に含まれる有害成分が、窒素酸化物又はオゾンである。
本発明の浄化方法の別の好ましい態様は、前記徐冷スラグ含有処理層が土壌層である。
本発明の浄化方法の更に別の好ましい態様は、窒素酸化物を含有する被処理気体を取り込んでから、窒素酸化物を除去した処理済気体を放出するまでの間に、前記被処理気体を酸化処理する工程と、その酸化処理された気体が徐冷スラグ含有処理層を通過する工程とを含む。
【0010】
また、本発明は、有害成分を含有する被処理気体の取込手段と、有害成分を除去した処理済気体の放出手段との間に、前記被処理気体を通過させる徐冷スラグ含有処理層を含むことを特徴とする、被処理気体の浄化装置にも関する。
【0011】
本発明の浄化装置の好ましい態様においては、前記被処理気体に含まれる有害成分が、窒素酸化物又はオゾンである。
本発明の浄化装置の別の好ましい態様は、前記徐冷スラグ含有処理層が土壌層である。
本発明の浄化装置の更に別の好ましい態様は、前記徐冷スラグ含有処理層の水洗手段を更に含む。
本発明の浄化装置の更に別の好ましい態様は、前記被処理気体取込手段と、前記徐冷スラグ含有処理層との間に、被処理気体の酸化手段を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の浄化方法及び浄化装置においては、優れた乾燥時吸着能及び湿潤時吸着能を有する徐冷スラグを含有する処理層に被処理気体を通過させるので、乾燥時及び湿潤時のいずれにおいても、窒素酸化物を高効率で吸着して除去することができる。また、湿潤時の吸着能が高いので、表面の水洗を実施しても窒素酸化物の吸着能が低下しない。従って、例えば、徐冷スラグ含有処理層を、植栽を有する土壌層に利用した場合には、降雨時や散水時にも、高い気体浄化能を維持することができる。
また、土壌層を通過させる前に、被処理気体を酸化処理した際に発生する過剰のオゾンも充分に吸着して除去することができ、このオゾン吸着能も、表面の水洗によって低下せず、従って、水による洗浄処理をおこなっても、オゾンの吸着能が低下しない。従って、徐冷スラグ含有処理層を、植栽を有する土壌層に利用した場合に、降雨時や散水時にも、オゾンに対しても高い気体浄化能を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明においては、被処理気体中の窒素酸化物(及び、場合により、更にオゾン)を吸着する吸着材として、徐冷スラグを用いる。徐冷スラグは、高炉スラグの一種である。鉄鉱石と副材料(コークスや石灰石)を高炉で処理すると、溶融された銑鉄(溶銑)が炉底に沈殿し、その溶銑上に鉄以外の成分が浮くので、これを分離回収して冷却すると高炉スラグとなる。すなわち、高炉スラグは、銑鉄を製造する高炉で溶融された鉄鉱石の鉄以外の成分からなり、副原料の石灰石やコークス中の灰分と一緒に分離回収される副生成物である。この高炉スラグは、天然の岩石に類似した成分を有する。
【0014】
高炉から分離回収した溶融スラグをドライピットあるいは畑と呼ばれる冷却ヤードに流し込み、自然放冷と適度の散水によって冷却(徐冷処理)すると、結晶質の岩石状のスラグとなる。これを徐冷スラグと称しており、本発明において吸着材として用いる。一方、溶融スラグに加圧水を噴射するなどして、急激に冷却(急冷処理)すると、ガラス質(非晶質)の粒状スラグとなり、これを水砕スラグと称している。なお、銑鉄から更に転炉や電気炉で製鋼処理を実施した際に生じるスラグを製鋼スラグ(転炉スラグ・電気炉スラグ)と称している。
【0015】
本発明において吸着材として用いる徐冷スラグは、従来から、道路用路盤材、コンクリート用粗骨材、セメントクリンカー原料、又はロックウール原料としての用途が知られている。しかしながら、吸着性能を有していることは、従来から全く知られていない。従って、本発明は、徐冷スラグの新規の有用性に基づいて、新しい用途を提供するものであり、徐冷スラグの有効利用の観点からも好ましい。
【0016】
本発明において吸着材として用いる徐冷スラグは、任意の形状で用いることができ、好ましくは粒子状で用いる。徐冷スラグ粒子の大きさも特に限定されないが、例えば、2〜30mm、好ましくは4〜15mmの粒子群を用いることができる。徐冷スラグ粒子は、例えば、徐冷スラグ粒子のみを充填したカラム、又は徐冷スラグ粒子と他の吸着材(例えば、破砕炭)との混合物を充填したカラムとして用いるか、あるいは従来から気体の浄化に常用されている土壌に混入して用いることができる。
【0017】
次に、本発明方法を実施することのできる本発明装置の代表的な実施態様を、添付図面に沿って説明する。
図1に示す本発明装置10は、道路トンネル11の上部に設置した土壌層21の中に徐冷スラグ粒子22を含有させた態様を模式的に示す断面図である。図1に示す気体浄化装置10は、道路トンネル11の頂壁16に設けた汚染空気取込手段としての開口部24、土壌層21の底部に設けた排水手段27、土壌層21の下部に設けた気体拡散室26、及び徐冷スラグ粒子22を含有する土壌層21を含む。前記土壌層21には、樹木Pや芝生(図示せず)などが植栽されている。また、土壌層21の水洗浄及び水分供給を行うための散水手段28を備えている。土壌層21に供給される洗浄水、植物用散水、及び雨水などは、排水手段27から排出される。
【0018】
この気体浄化装置10では、道路トンネル11内において自動車12から排出される窒素酸化物を含む汚染空気14は、道路トンネル11の頂壁16に設けた汚染空気取込開口部24から矢印Aで示すように取り込まれ、気体拡散室26内にて矢印Bで示すように拡散され、続いて、土壌層21を上昇しながら通過する際に、窒素酸化物が徐冷スラグ粒子22に吸着されるので、窒素酸化物が除去された処理済空気が土壌層21の表面から矢印Cで示すように放出される。なお、前記土壌層21には、微生物が担持されているので、微生物による浄化作用も当然に利用することができる。また、汚染空気14がオゾンを含んでいる場合には、そのオゾンが徐冷スラグ粒子22によって還元され、無害な酸素に変換される。
【0019】
図1に示す態様の気体浄化装置10は、道路トンネル以外にも、例えば、室内駐車場、掘り割り型道路、あるいは一般の開放道路などにも適用することができる。また、汚染空気の取込手段に、強制送風手段(例えば、送風ファン)を設けることができる。更に、図1に示す前記気体拡散室26を設けずに、送風パイプを汚染空気取込手段から直接に土壌層に導入することもできる。
【0020】
被処理気体の酸化手段を含む態様を、図2の模式的断面図に示す。図2に示す気体浄化装置30は、酸化処理ユニット31、及びその下流に設けた徐冷スラグ処理ユニット40を含む。なお、本明細書において、「上流」及び「下流」は、被処理気体の流れ方向に沿った上流及び下流を意味する。更に、前記気体浄化装置30は、被処理気体を酸化処理ユニット31に取り込むために、酸化処理ユニット31の上流側から順に、吸引口32、吸引ダクト33、吸引ファン34、及び送出ダクト35が設けられている。また、酸化処理ユニット31と徐冷スラグ処理ユニット40との間には、送出ダクト36、攪拌ファン37、及び導入ダクト38が備えられている。
【0021】
吸引ファン34及び攪拌ファン37は、被処理気体を酸化処理ユニット31及び徐冷スラグ処理ユニット40に誘導することができる限り、いずれか一方を設ければよく、図2に示すように酸化処理ユニット31の上流に吸引ファン34を設け、酸化処理ユニット31の下流に攪拌ファン37を設けることもできるし、酸化処理ユニット31の上流に吸引ファン34を設け、酸化処理ユニット31の下流に攪拌ファン37を設けなくてもよく、あるいは、酸化処理ユニット31の上流に吸引ファン34を設けずに、酸化処理ユニット31の下流に攪拌ファン37を設けるだけでもよい。また、図2には示していないが、吸引口32と酸化処理ユニット31との間(より好ましくは吸引口32と吸引ファン34との間)に、粉じん除去フィルターを設けることが好ましい。
【0022】
図2に示す気体浄化装置30において、徐冷スラグ処理ユニット40は、第1処理ユニット41と、第2処理ユニット51と、被処理気体の流れに対して並列状態で相互に接続して含む。前記第1処理ユニット41は、徐冷スラグ粒子42を含有するカラム43、及び徐冷スラグ粒子42を含有する第1土壌層44を含み、前記徐冷スラグ粒子含有カラム43の下部(上流側)に予備拡散室46を有し、前記徐冷スラグ粒子含有カラム43と前記第1土壌層44との間に第1拡散室48を有する。更に、前記第1土壌層44には、樹木Pや芝生(図示せず)などが植栽されている。また、前記第1土壌層44の水洗浄及び水分供給を行うための散水手段49を備えており、前記第1土壌層44の底部に排水手段47を備えている。
【0023】
一方、前記第2処理ユニット51は、前記の予備拡散室46から連絡する送気ダクト52の下流に、第2拡散室53を有し、更にその上部(下流)に徐冷スラグ粒子42を含有する第2土壌層54を備えている。前記第2土壌層44には、樹木Pや芝生(図示せず)などが植栽されている。また、前記第2土壌層44の水洗浄及び水分供給を行うための散水手段55を備えており、前記第2土壌層44の底部に排水手段57を備えている。
【0024】
図2に示す気体浄化装置30において、前記の送気ダクト52は、予備拡散室46を経由せずに、導入ダクト38と直接に連絡していてもよい。あるいは、前記の送気ダクト52は、第1拡散室48と直接に連絡していてもよい。また、徐冷スラグ粒子含有カラム43を酸化処理ユニット31の直後に、すなわち、導入ダクト38内に設けることもできる。更に、前記気体浄化装置30の徐冷スラグ処理ユニット40は、第2処理ユニット51を備えずに第1処理ユニット41単独で構成することもでき、あるいは、第1処理ユニット41を備えずに第2処理ユニット51単独で構成することもできる。
【0025】
図2に示す気体浄化装置30では、吸引口32から被処理気体を取り込み、酸化処理ユニット31において酸化処理を実施し、続いて、徐冷スラグ処理ユニット40において吸着処理を実施した後、処理済気体を装置外へ放出することができる。
より具体的には、吸引口32から気体浄化装置30に導入された被処理気体は、吸引ダクト33、吸引ファン34、及び送出ダクト35を経由して酸化処理ユニット31に送られる。被処理気体が酸化処理ユニット31を通過する際に、一酸化窒素が二酸化窒素に変換される。ここで、一酸化窒素をほとんど含まず、変換後の二酸化窒素を含有し、更に過剰オゾンを含有する気体(以下、酸化処理気体)が生成する。
【0026】
酸化処理気体は、続いて、送出ダクト36を経て、攪拌ファン37に送られる。酸化処理気体には、わずかな量の一酸化窒素と過剰オゾンとが含まれているので、この攪拌ファン37において、残留一酸化窒素と過剰オゾンとを反応させて、攪拌処理気体とするのが好ましい。
【0027】
こうして得られた攪拌処理気体(あるいは、攪拌ファンを備えていない装置の場合には、酸化処理気体)は、続いて、導入ダクト38を経て、徐冷スラグ処理ユニット40に送られ、矢印Dに示すように拡散され、続いて、前記徐冷スラグ粒子含有カラム43を上昇しながら通過する際に、窒素酸化物が徐冷スラグ粒子42に吸着され、オゾンが徐冷スラグ粒子42によって還元処理される。こうして処理された気体は、矢印Eに示すように第1拡散室48内で拡散され、続いて、徐冷スラグ粒子42を含有する第1土壌層44を上昇しながら通過するので、前記徐冷スラグ粒子含有カラム43において吸着されなかった窒素酸化物や未変換オゾンが存在する場合でも、この第1土壌層44において、徐冷スラグ粒子42に完全に吸着され、還元される。こうして、窒素酸化物及びオゾンが完全に除去された処理済気体が第1土壌層44の表面から矢印Fで示すように放出される。
【0028】
一方、第1拡散室48から送気ダクト52を経て第2拡散室53へ案内された攪拌処理気体(あるいは、酸化処理気体)は、矢印Hに示すように拡散され、続いて、徐冷スラグ粒子42を含有する第2土壌層54を上昇しながら通過する際に、窒素酸化物が徐冷スラグ粒子42に吸着され、オゾンが徐冷スラグ粒子42によって還元処理される。こうして、窒素酸化物及びオゾンが完全に除去された処理済気体が第2土壌層54の表面から矢印Jで示すように放出される。なお、前記第1土壌層44及び前記第2土壌層54には、微生物が担持されているので、微生物による浄化作用も当然に利用することができる。
【0029】
図2に示す態様の気体浄化装置30は、特に、窒素酸化物及び/又はオゾンを含有する任意の汚染気体の浄化に適用することができる。例えば、自動車の排気ガスを含む汚染空気、又はディーゼルエンジンの排気ガスを含む汚染空気の浄化に有効に利用することができる。自動車の排気ガスを含む汚染空気の浄化に利用する場合には、図1の態様に関連して説明したように、例えば、道路トンネル、室内駐車場、掘り割り型道路、あるいは一般の開放道路などにも適用することができる。
【0030】
前記の酸化ユニットとしては、低温プラズマ発生装置、又はオゾナイザーを用いることができる。例えば、前記図2に示す酸化処理ユニット31内で低温プラズマを発生させると、放電により空気中に放出された電子が、被処理気体中の気体分子(例えば、酸素分子や窒素分子)に衝突し、これらの分子を活性化させ、更に、その活性分子の一部が解離してラジカル(例えば、OHラジカル、Oラジカル、Hラジカル、Nラジカル、NHラジカル、及び/又はNHラジカル)が生成する。酸化処理ユニット31で生成したこれらのラジカルにより、被処理気体中の一酸化窒素が二酸化窒素に変換される。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0032】
《実施例1》
粒径4〜8mmの乾燥徐冷スラグ粒子約150mLを円筒状カラムに充填した。円筒状カラムの底面に設けた気体挿入口から、被処理空気を供給し、上面に設けた気体放出口から排出した。被処理空気は、空気に、窒素酸化物2.5ppm及びオゾン2.0ppmを含有させて調製した。この被処理空気を13L/minの風量で送った。カラムの空塔速度(SV)は4000〔h−1〕であり、線速度(LV)は0.18m/secであった。被処理空気の供給開始から60分経過後に、気体挿入口及び気体放出口における窒素酸化物濃度及びオゾン濃度を測定して、それぞれの除去率を求めた。なお、前記空塔速度は、実用化されている同種装置の空塔速度の約2.5倍であり、前記線速度は、実用化されている同種装置の線速度の約2倍である。
【0033】
前記の乾燥状態での実験とは別に、湿潤状態での試験を別途実施した。すなわち、粒径4〜8mmの乾燥徐冷スラグ粒子約150mLを円筒状カラムに充填した後に、水約1000mLを気体放出口から供給して気体挿入口から排出させ、徐冷スラグ粒子を湿潤状態にしてから、前記と同様の被処理空気の供給を60分間行い、気体挿入口及び気体放出口における窒素酸化物濃度及びオゾン濃度を測定して、それぞれの除去率を求めた。
結果を表1に示す。
【0034】
《比較例1》
徐冷スラグ粒子約150mLの代わりに、粒径4〜8mmの破砕炭約150mLを用いること以外は、前記実施例1と同様の試験を実施し、乾燥状態及び湿潤状態での窒素酸化物濃度及びオゾン濃度を測定して、それぞれの除去率を求めた。結果を表1に示す。
【0035】
《比較例2》
徐冷スラグ粒子約150mLの代わりに、粒径4〜8mmのジャモン石粒子約150mLを用いること以外は、前記実施例1と同様の試験を実施し、乾燥状態及び湿潤状態での窒素酸化物濃度及びオゾン濃度を測定して、それぞれの除去率を求めた。結果を表1に示す。
【0036】
《比較例3》
徐冷スラグ粒子約150mLの代わりに、粒径4〜8mmの破砕炭と粒径4〜8mmのジャモン石粒子とのほぼ同量の混合物約150mLを用いること以外は、前記実施例1と同様の試験を実施し、乾燥状態及び湿潤状態での窒素酸化物濃度及びオゾン濃度を測定して、それぞれの除去率を求めた。結果を表1に示す。
【0037】
《比較例4》
徐冷スラグ粒子約150mLの代わりに、粒径4〜8mmのALCパネル(Autoclaved Lightweight Aerated Concrete Panel)リサイクル材粒子約150mLを用いること以外は、前記実施例1と同様の試験を実施し、乾燥状態及び湿潤状態での窒素酸化物濃度及びオゾン濃度を測定して、それぞれの除去率を求めた。結果を表1に示す。
【0038】
《比較例5》
徐冷スラグ粒子約150mLの代わりに、粒径4〜8mmの天然ゼオライト粒子約150mLを用いること以外は、前記実施例1と同様の試験を実施し、乾燥状態及び湿潤状態での窒素酸化物濃度及びオゾン濃度を測定して、それぞれの除去率を求めた。結果を表1に示す。
【0039】
《比較例6》
徐冷スラグ粒子約150mLの代わりに、粒径3〜5mmの水砕スラグ粒子約150mLを用いること以外は、前記実施例1と同様の試験を実施し、乾燥状態及び湿潤状態での窒素酸化物濃度及びオゾン濃度を測定して、それぞれの除去率を求めた。結果を表1に示す。
【0040】
《比較例7》
徐冷スラグ粒子約150mLの代わりに、粒径4〜8mmの製鋼スラグ粒子約150mLを用いること以外は、前記実施例1と同様の試験を実施し、乾燥状態及び湿潤状態での窒素酸化物濃度及びオゾン濃度を測定して、それぞれの除去率を求めた。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

前記表1の数値は%である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、窒素酸化物及び/又はオゾンを有害成分として含む汚染気体の処理に、広範に適用することができる。例えば、汚染大気の浄化方法及び浄化装置として有用である。
本発明では、窒素酸化物及び/又はオゾンの湿潤時吸着能が乾燥時吸着能から低下しない徐冷スラグを利用しているので、汚染大気の浄化方法及び浄化装置において、植栽を施した土壌層に有効に利用することができる。また、オゾンの吸着能を兼備しているので、前記被処理気体の酸化処理工程を含む汚染気体処理方法に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】徐冷スラグ含有土壌層を備えた本発明装置の1態様を模式的に示す断面図である。
【図2】酸化処理ユニット及び徐冷スラグ処理ユニットを含む本発明装置の1態様を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10・・・気体浄化装置;11・・・道路トンネル;12・・・自動車;
14・・・汚染空気;16・・・道路トンネルの頂壁;21・・・土壌層;
22・・・徐冷スラグ粒子;24・・・開口部;26・・・気体拡散室;
27,47,57・・・排水手段;
28・・・散水手段;30・・・気体浄化装置;31・・・酸化処理ユニット;
32・・・吸引口;33・・・吸引ダクト;34・・・吸引ファン;
35・・・送出ダクト;36・・・送出ダクト;37・・・攪拌ファン;
38・・・導入ダクト;
40・・・徐冷スラグ処理ユニット;41・・・第1処理ユニット;
42・・・徐冷スラグ粒子;43・・・徐冷スラグ粒子含有カラム;
44・・・第1土壌層;46・・・予備拡散室;48・・・第1拡散室;
49・・・散水手段;51・・・第2処理ユニット;52・・・送気ダクト;
53・・・第2拡散室;54・・・第2土壌層;55・・・散水手段;P・・・樹木。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害成分を含有する被処理気体を取り込んでから、有害成分を除去した処理済気体を放出するまでの間に、前記被処理気体が徐冷スラグ含有処理層を通過する工程を含むことを特徴とする、被処理気体の浄化方法。
【請求項2】
前記被処理気体に含まれる有害成分が、窒素酸化物又はオゾンである、請求項1に記載の気体浄化方法。
【請求項3】
前記徐冷スラグ含有処理層が土壌層である、請求項1に記載の気体浄化方法。
【請求項4】
窒素酸化物を含有する被処理気体を取り込んでから、窒素酸化物を除去した処理済気体を放出するまでの間に、前記被処理気体を酸化処理する工程と、その酸化処理された気体が徐冷スラグ含有処理層を通過する工程とを含むことを特徴とする、窒素酸化物含有被処理気体の浄化方法。
【請求項5】
有害成分を含有する被処理気体の取込手段と、有害成分を除去した処理済気体の放出手段との間に、前記被処理気体を通過させる徐冷スラグ含有処理層を含むことを特徴とする、被処理気体の浄化装置。
【請求項6】
前記被処理気体に含まれる有害成分が、窒素酸化物又はオゾンである、請求項5に記載の気体浄化装置。
【請求項7】
前記徐冷スラグ含有処理層が土壌層である、請求項5又は6に記載の気体浄化装置。
【請求項8】
前記徐冷スラグ含有処理層の水洗手段を更に含む、請求項5〜7のいずれか一項に記載の気体浄化装置。
【請求項9】
前記被処理気体取込手段と、前記徐冷スラグ含有処理層との間に、被処理気体の酸化手段を含む、請求項5〜8のいずれか一項に記載の気体浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−216121(P2007−216121A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38257(P2006−38257)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】