説明

有害物検出システム、有害木材の検出方法及び廃棄木材処理システム

【課題】建築物等からの廃棄木材に塗布された防腐剤等の有害物をリアルタイムで簡易且つ迅速に検出することができる有害物検出システム、有害木材の検出方法及び廃棄木材処理システムを提供する。
【解決手段】廃棄木材11中の有害物12を検出する有害物検出システムであって、前記廃棄木材11を搬送する搬送装置13と、前記搬送装置13に搬送された廃棄木材11中の有害物12を検出するレーザ誘起ブレークダウン(LIBS)装置14と、前記レーザ誘起ブレークダウン装置14からの信号により有害物を含む有害木材15のみを無害木材16から分別する分別装置17とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等からの廃棄木材に塗布された防腐剤等の有害物を簡易・迅速に検出することができる有害物検出システム、有害木材の検出方法及び廃棄木材処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源リサイクルの意識の高揚に伴い、木材のリサイクル化が進められており、廃棄木材のリサイクルでは、リサイクルにおける安全性の確保が必須であるが、木材の多くは、防腐処理がなされており、この防腐処理木材は別途分別処理することが求められている。
【0003】
ここで、前記防腐剤とは、クロム(Cr)、銅(Cu)、ヒ素(As)等の重金属物質を含有しており、このような重金属が含有された有害木材(CCA木材ともいう。)を焼却すると、焼却後の灰の中に重金属が残り、健康や環境に悪影響を及ぼすことが懸念される。そこで、このような防腐剤が付着した有害木材の分別のために、従来では、蛍光X線による分別処理方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−270137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に係る蛍光X線法では、少なくとも850〜950nmの波長を含む近赤外線波長帯域の光を照射し、その反射率に基づいて、少なくとも前記被検査物に防腐剤に含有される重金属物質の有無を判別するものであるが、計測時間が2分程度必要であるので、リアルタイムの測定ができない、という問題がある。
【0006】
また、廃棄物木材処理の現場にて計測する場合には、X線の照射面積が直径5mm程度であるので、搬送装置での搬送中での連続選別が困難であるという、問題がある。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑み、建築物等からの廃棄木材に塗布された防腐剤等の有害物をリアルタイムで簡易且つ迅速に検出することができる有害物検出システム、有害木材検出方法を提供すると共に、無害の廃棄木材を有効利用することができる廃棄木材処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、廃棄木材中の有害物を検出する有害物検出システムであって、前記廃棄木材を搬送する搬送装置と、前記搬送装置に搬送された廃棄木材中の有害物を検出するレーザ誘起ブレークダウン装置と、前記レーザ誘起ブレークダウン装置からの信号により有害物を含む有害木材のみを分別する分別装置とからなることを特徴とする有害物検出システムにある。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記廃棄木材を破砕する破砕機を有してなり、前記破砕機により破砕された木材を前記搬送装置で搬送することを特徴とする有害物検出システムにある。
【0010】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記レーザ誘起ブレークダウン装置の計測部が木材の搬送方向と直交する方向に往復動自在であることを特徴とする有害物検出システムにある。
【0011】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記レーザ誘起ブレークダウン装置の検出部の波長が265〜365nmであることを特徴とする有害物検出システムにある。
【0012】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、前記有害物がクロム、銅、砒素の少なくとも一つであることを特徴とする有害物検出システムにある。
【0013】
第6の発明は、第1乃至4のいずれか一つの有害物検出システムを用い、クロムを検出して有害木材を検出することを特徴とする有害木材の検出方法にある。
【0014】
第7の発明は、第1乃至5のいずれか一つの有害物検出システムと、有害物を含む木材を除いた無害木材を回収処理する無害木材回収処理装置と、回収した無害木材をリサイクルするリサイクル処理装置とを具備することを特徴とする廃棄木材処理システムにある。
【0015】
第8の発明は、第7の発明において、前記リサイクル処理装置が、バイオマスガス化炉又は炭化炉であることを特徴とする廃棄木材処理システムにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有害物検出システムによれば、建築物等からの廃棄木材に塗布された防腐剤等の有害物をリアルタイムで簡易且つ迅速に検出することができる。また、本発明の廃棄木材処理システムによれば、無害の廃棄木材を有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0018】
本発明による実施例1に係る有害物検出システムについて、図面を参照して説明する。
図1は、実施例1に係る有害物検出システムを示す概略図である。
図1に示すように、本実施例に係る有害物検出システム10−1は、廃棄木材11中の有害物12を検出する有害物検出システムであって、前記廃棄木材11を搬送する搬送装置13と、前記搬送装置13に搬送された廃棄木材11中の有害物12を検出するレーザ誘起ブレークダウン(LIBS(Laser Induced Breakdown Spectroscopy))装置(以下「LIBS装置」という)14と、前記レーザ誘起ブレークダウン装置14からの信号Sにより有害物を含む有害木材15のみを無害木材16から分別する分別装置17とからなるものである。
前記分別装置17で分別された有害木材15は搬送装置13aにより外部へ除去するようにしている。また、無害木材16は搬送装置13bにより、リサイクル工程へ送られるようにしている。
【0019】
前記LIBS装置は、レーザ誘起ブレークダウンスペクトロスコピィ法により、レーザ光を廃棄木材11に照射して有害物をプラズマ化し、発生するプラズマ光を分光することにより、有害物の量をオンラインにて計測するものである。
【0020】
前記LIBS装置14は、図2に示すように、レーザ装置21、収束用レンズ22、プラズマ発光光Pの集光レンズ23、分光器24及び演算機(CPU)25より構成されている。
【0021】
図1に示したように、搬送装置13により搬送された廃棄木材11の表面に対してレーザ装置21からレーザ光Lが照射され、有害物12があるとプラズマ発光し、このプラズマ発光光Pを分光器24にて分析し、発光スペクトルを得ている。
【0022】
図3は、LIBS法の原理を示すものであり、有害物(CCA剤)12にレーザ光Lを照射すると、プラズマ化したクロム(Cr)、銅(Cu)、ヒ素(As)等の原子から発光現象が現われる様子が分かる。
【0023】
図4−1乃至図6−2は、発光スペクトルの一例を示す。
図4−1、図5−1、図6−1は通常の無害木材の発光スペクトルであり、図4−1は波長352〜365nmにおける発光状態を計測したものであり、図5−1は波長265〜280nmにおける発光状態を計測したものであり、図6−1は波長320〜335nmにおける発光状態を計測したものである。
図4−2、図5−2、図6−2は有害物を含む有害木材の発光スペクトルであり、図4−2は波長352〜365nmにおけるCrの発光状態を計測したものであり、図5−2は波長265〜280nmにおけるAsの発光状態を計測したものであり、図6−2は波長320〜335nmにおけるCuの発光状態を計測したものである。
なお、縦軸はその強度を示している。
図に示すように、Cr,As,Cuの中で、Crに関しては、無害木材と有害木材が明瞭に区別でき、Crを検知することにより、有害木材も検知精度を大幅に向上することが可能となる。
【0024】
ここで、図4−1乃至図6−25におけるLIBS装置14の条件は、レーザエネルギーを20mJ/p、レーザ波長を1064nm、ディレイタイム(レーザを照射してから計測を行うタイミング)を2μs、ゲート時間(計測を行う時間)を1μsとしている。
ここで、レーザエネルギーを20mJ/pとしているが、1〜100mJ/pとするのが好ましい。また、レーザ波長を1064nmとしているが、500〜1100nmとするのが好ましい。また、ディレイタイムを2μsとしているが、1〜5μsとするのが好ましい。さらにゲート時間を1μsとしているが、500ns〜2μsとするのが好ましい。
【0025】
図7は、Crの信号強度とCrの濃度(ppm)との関係図である。これにより、数ppm程度のCr含有量の有害木材を分別除去することができる。
【0026】
以上のように本実施例の有害物検出システム10−1によれば、リアルタイムにて例えばCCA剤等の処理した有害木材を検出することができ、もってその有害木材15のみを分別除去することで、無害木材16のみをリサイクルに利用することができる。
【実施例2】
【0027】
本発明による実施例2に係る有害物検出システムについて、図面を参照して説明する。
図8は、実施例2に係る有害物検出システムを示す概略図である。なお、実施例1の有害物検出システム10−1と同じ構成については同一符号を付してその説明を省略する。
図8に示すように、本実施例に係る有害物検出システム10−2は、廃棄木材11中の有害物12を検出する有害物検出システムであって、前記廃棄木材11を破砕する木材破砕機31と、前記木材破砕機31により破砕された破砕木材32を搬送する搬送装置13と、前記搬送装置13に搬送された廃棄木材11中の有害物12を検出するLIBS装置14と、前記LIBS装置14からの信号により有害物を含む有害木材15のみを無害木材16から分別する分別装置17とからなるものである。
【0028】
本実施例では、前記分別装置17により分別された有害木材15は搬送装置13aで有害木材処理工程に送るようにしている。また、無害木材16はリサイクル工程に送られるようにしている。
これにより、有害木材15と無害木材16とを分別処理するようにしている。
【0029】
本実施例では、廃棄木材11を所定の大きさに破砕する木材破砕機31を用いているので、LIBS装置での有害物の検出感度を向上させるようにしている。
木材破砕機31は、その破砕用の刃を替えることで破砕される破砕木材32の大きさを変えることができる。LIBS装置14での検出感度が高くなる大きさとしては、例えば長さ20cm×幅5cm×厚さ3cm程度とすればよい。
これにより、破砕された破砕木材が希釈されず、ある程度の塊として搬送装置13で運ぶことができる。ここで、破砕する木材の好適な範囲としては、長さ20cm±5cm、幅5cm±3cm、厚さ3cm±2cmとするのが好ましい。
【0030】
図9はLIBS装置14と搬送装置13との関係を示す図である。図9に示すように、搬送装置13のコンベア13aの搬送方向と直交する方向に移動自在とする距離計41を有する移動治具42にLIBS装置14の計測部14aが設けられており、コンベア13a上の破砕木材32にレーザ光Lを照射するようにしている。この際、コンベア13aの破砕木材32と計測部14aとの距離を一定に維持するように距離計41を設けている。
【0031】
ここで、通常使用している搬送装置13のコンベア13aの速度は1秒間に1m前後であるが、LIBS装置14による検出では速度を1秒間に50cm前後に調節して選別するようにしている。また、コンベアの幅は約60cmの場合には、計測部14aの移動速度は検出感度を上げるため、1秒間で1往復の条件とするようにしている。
【0032】
また、図10に示すように、コンベア13aの進行速度V、LIBS装置14の計測部14aによる計測位置X及び計測時間Tの情報を演算機25で処理することにより、分別装置の一例である分別シュータ(A、B、C)17aの各開口部を開放させて、有害木材のみを分別処理することができるようにしてもよい。
【実施例3】
【0033】
本発明による実施例3に係る廃棄木材処理システムについて、図面を参照して説明する。
図11は、実施例3に係る廃棄木材処理システムを示す概略図である。図11に示すように、本実施例に係る廃棄木材処理システム50は、前述した実施例1又は2に係る有害物検出システム51と、有害物を含む有害木材15を除いた無害木材16を回収処理する無害木材回収処理装置52と、回収した無害木材16をリサイクルするリサイクル処理装置53とを具備するものである。
【0034】
ここで、本実施例では、回収した無害木材16をリサイクルするリサイクル処理装置53としては、例えばバイオマスガス化炉又は炭化炉等を例示することができる。
これにより、得られた製品(メタンガス、炭化物等)54中には、有害物がないものとなる。
なお、分別された有害木材15は有害廃棄物処理装置55で別途処理される。
【0035】
また、バイオマスガス化炉又は炭化炉によるリサイクル以外に、無害木材は、例えばパルプの原料、パーティクルボードの原料、敷き藁の代替物として利用することができる。
このように、廃棄木材のリサイクルにおいて、例えばCCA剤等の有害物により防腐処理された廃材を効率良く分別処理することができるので、廃材リサイクルの安全性を確保しつつ、リサイクル効率の向上、リサイクルコストの低減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明に係る有害物検出システムは、建築物等からの廃棄木材に塗布された防腐剤等の有害物をリアルタイムで簡易且つ迅速に検出することができ、無害の廃棄木材を有効利用することに用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例1に係る有害物検出システムを示す概略図である。
【図2】LIBS法の原理を示す説明図である。
【図3】図1のシステムの一構成であるLIBS装置の構成を示す説明図である。
【図4−1】無害木材の発光スペクトルの一例を示す図である。
【図4−2】有害木材の発光スペクトル(Cr)の一例を示す図である。
【図5−1】無害木材の発光スペクトルの一例を示す図である。
【図5−2】有害木材の発光スペクトル(As)の一例を示す図である。
【図6−1】無害木材の発光スペクトルの一例を示す図である。
【図6−2】有害木材の発光スペクトル(Cu)の一例を示す図である。
【図7】Cr濃度とCr信号強度との関係図である。
【図8】実施例2に係る有害物検出システムを示す概略図である。
【図9】実施例2に係る搬送装置とLIBS装置とを示す概略図である。
【図10】実施例2に係る搬送装置の平面概略図である。
【図11】実施例3に係る廃棄木材処理システムを示す概略図である。
【符号の説明】
【0038】
10−1、10−2 有害物検出システム
11 廃棄木材
12 有害物
13 搬送装置
14 LIBS装置
15 有害木材
16 無害木材
17 分別装置
32 破砕木材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄木材中の有害物を検出する有害物検出システムであって、
前記廃棄木材を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置に搬送された廃棄木材中の有害物を検出するレーザ誘起ブレークダウン装置と、
前記レーザ誘起ブレークダウン装置からの信号により有害物を含む有害木材のみを分別する分別装置とからなることを特徴とする有害物検出システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記廃棄木材を破砕する破砕機を有してなり、前記破砕機により破砕された木材を前記搬送装置で搬送することを特徴とする有害物検出システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記レーザ誘起ブレークダウン装置の計測部が木材の搬送方向と直交する方向に往復動自在であることを特徴とする有害物検出システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記レーザ誘起ブレークダウン装置の検出部の波長が265〜365nmであることを特徴とする有害物検出システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
前記有害物がクロム、銅、砒素の少なくとも一つであることを特徴とする有害物検出システム。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一つの有害物検出システムを用い、クロムを検出して有害木材を検出することを特徴とする有害木材の検出方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一つの有害物検出システムと、
有害物を含む木材を除いた無害木材を回収処理する無害木材回収処理装置と、
回収した無害木材をリサイクルするリサイクル処理装置とを具備することを特徴とする廃棄木材処理システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記リサイクル処理装置が、バイオマスガス化炉又は炭化炉であることを特徴とする廃棄木材処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−10371(P2007−10371A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188875(P2005−188875)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(505244442)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】