説明

有害物質及び臭気を吸収するための方法

有害物質、特にアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)及び臭気を吸収するための、及び前記有害物質から特に室内の空気を持続的に保護するための、有害物質及び臭気を吸収するための方法において、タンパク質反応性物質を少なくとも有害物質放出体及び/又は潜在的な有害物質放出体の近傍に施与することを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質、特にアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)及び臭気を吸収するための、及び前記有害物質から特に室内空気を持続的に保護するための方法に関する。
【0002】
短期間で有害物質を周囲の媒体から、例えば室内空気から除去することを可能にする種々の様式の方法及び装置が公知である。前記の有害物質にはとりわけアルデヒドが挙げられ、その最も公知である代表例はホルムアルデヒドである。
【0003】
しかしながら、前記の公知の方法はいずれも、持続的な効果を発揮しないという欠点を有する。例えば、しばしば使用される活性炭は、確かに極めて迅速に比較的多量の有害物質を受容するが、しかしながらこの有害物質をそれぞれの周囲条件に応じて少なくとも部分的に放出する。この再放出は特に高温で促進される。従って、活性炭は確かに有害物質を迅速に吸収させるのには好適であるが、吸着した有害物質を吸収し、ひいては持続的に除去し、かつ無害化するには不適当である。
【0004】
上記の問題は、他の全ての公知の方法においても生じる。本来の目的であった吸収は達成されない。常に、可逆的な吸着が生じるに過ぎない。
【0005】
本発明の課題は、有害物質の持続的な除去を可能にする方法を提案することである。
【0006】
前記課題は、本発明によれば、タンパク質反応性物質を少なくとも有害物質放出体ないし潜在的な有害物質放出体の近傍に施与することにより解決される。
【0007】
従って、有害物質は一方では迅速に周囲から除去され、他方ではタンパク質反応性物質中に埋封され、従って持続的に無害化される。不所望な放出は生じない。
【0008】
この場合、タンパク質反応性物質として、タンパク質加水分解物、特に酵素分解された硬タンパク質を使用するのが最も有利であることが判明した。
【0009】
タンパク質加水分解物及び特に酵素分解された硬タンパク質は、本発明による課題の解決の際に特に有利であることが判明した。
【0010】
本発明の他の実施態様によれば、タンパク質反応性物質を液状、ペースト状、粘性形又は粉末状で使用する場合に極めて有利である。
【0011】
それにより、多様な使用可能性が生じる。
【0012】
タンパク質反応性物質に添加物質を添加することも、本発明の極めて有利な実施態様である。
【0013】
この場合、尿素、ゼオライト、酸化アルミニウム、無機光触媒及び/又は保存剤等を添加する場合に最も有利であることが判明した。
【0014】
特にこの種の添加物質によって、タンパク質反応性物質を、受容すべき有害物質に特に良好に適合させることができる。
【0015】
タンパク質反応性物質を使用前に噴霧乾燥させることも、本発明のもう1つの極めて有利な実施態様である。
【0016】
それにより、またもや更なる使用分野が開拓される。更に、物質を問題なく貯蔵及び輸送することができる。
【0017】
タンパク質反応性物質を、支持体、物体、被覆、被覆系等に施与する場合も、本発明による方法の同様に極めて有利な実施態様である。
【0018】
タンパク質反応性物質を、支持体、物体、被覆等に導入する場合、同様に極めて有利である。
【0019】
それによって、付加的に更に有害物質が放出体において直接受容される数多くの目立たない使用可能性が生じる。
【0020】
本発明によれば、タンパク質反応性物質を、染料、ラッカー、コーティング、ステイン、プラスター等に導入する場合にも極めて有利である。
【0021】
それによって、タンパク質反応性物質を後から極めて容易に施与することもできる。
【0022】
タンパク質反応性物質を洗浄剤及び清浄化剤に施与することも、本発明による方法のもう1つの極めて有利な実施態様である。
【0023】
それによって、有害物質を放出する物体を迅速に処理することができる。更に、場合により洗浄剤及び清浄化剤中に含まれる有害物質は、周囲への漏出が阻止される。
【0024】
方法のもう1つの実施態様によれば、タンパク質反応性物質を、特にテキスタイル等のための含浸剤及び/又は繊維被覆に施与する場合にも極めて有利である。
【0025】
それにより、例えば染料により、有害物質を放出するテキスタイルを容易に、迅速に、かつ安価に処理することができる。
【0026】
本発明によれば、タンパク質反応性物質を、壁材、天井材及び/又は床材において使用する場合にも極めて有利であることが判明した。
【0027】
それによって、有害物質が負荷された空間の持続的な衛生化を容易にかつ迅速に実施することもできる。
【0028】
以下に、本発明を実施例に基づき具体的に示す。
【0029】
実施例
現在慣用の建築材料、例えばチップボード、プラスターボード及び特に木製及び木材料製の床材並びに壁及び天井用のボードの多くは、特にアルデヒド及び他の揮発性有機化合物、要するに有害物質を放出する。
【0030】
この放出は、特に空気交換が極めてわずかである最小エネルギーの住宅において、前記物質が室内空気中に蓄積されかつ人に吸収されるという、不所望であり、かつ極めて健康を害する副作用を招く。
【0031】
しかし残念ながら、建築材料の製造において前記有害物質を単純に省略することは、容易になし得ることではない。
【0032】
前記有害物質は、特に針葉樹の加工の際に、木材の天然成分から形成される。加工の際に、熱的及び熱的−加水分解的、並びに酸化的プロセスないし反応が進行し、該反応はアルデヒドの、及び更には揮発性有機化合物(VOC)の形成を招く。アルデヒドの最も公知である代表例はホルムアルデヒドであり、これは他のアルデヒド及びVOC類の他に多量に、特にチップボード及びOSBボードにおいて認めることができる。それどころかしばしば、特にホルムアルデヒドに関する現行の限界値を大幅に上回る。
【0033】
本発明による方法は、このための持続的な解決法を提供し、この解決法は、この解決法で取り扱われる対象物からの有害物質の放出を回避するだけでなく、場合により室内空気から漏出する有害物質をも受容する。
【0034】
有利にタンパク質加水分解物水溶液の形のタンパク質反応性物質は、ボードの製造の間にウッドチップに施与される。過剰の湿分を乾燥させた後、ウッドチップの表面上にはタンパク質反応性物質の薄膜が残存する。このタンパク質反応性物質は、ウッドチップから流出する有害物質を直接受容する。アミノ酸基の形の十分な反応パートナーを利用することができ、該アミノ酸基は有害物質の完全な反応を可能にするため、該有害物質はタンパク質反応性物質に化学結合される。
【0035】
更に、前記のタンパク質反応性物質の薄膜は、有害物質のための有効な拡散遮断であるため、有害物質はウッドチップからは決して漏出し得ない。しかしながら、同様に生じる水蒸気拡散は前記保護膜によっては阻止されない。
【0036】
薄膜はこの場合大抵は極めて弾性であり、かつ耐機械応力性をも有する。
【0037】
しかしながら、タンパク質反応性物質を後で施与するか、又は形成すべきボードのためのバインダー中に混入させることも可能である。
【0038】
更に、タンパク質反応性物質を染料、ラッカー、ステイン、木材保護剤、コーティング、プラスチック、特にプラスチックコーティング、プラスター等に埋封させ、施与の際に、上記と同様の保護効果が達成され得るようにすることも可能である。更に、壁材及び床材を、その施工後に処理することも可能である。
【0039】
また、タンパク質反応性物質を、プラスターボード又はプラスターファイバーボード、更にはプラスター及び他のコーティングにおいて使用することも可能である。
【0040】
更に、タンパク質反応性物質を清浄化剤及び洗浄剤に添加し、それにより清浄化の度に保護層を施与ないし再生させることも可能である。
【0041】
この場合、洗浄剤及び清浄化剤中に含まれる酵素(例えばプロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ)を同様にタンパク質反応性物質として使用できるように該酵素を変性させることも可能である。洗浄剤及び清浄化剤の場合、酵素はその活性中心の範囲内でのみ、即ち酵素内の特定のアミノ酸基のみが、清浄化効果を発揮する相応する活性を有する。本発明によれば、残りの、活性中心に属さないアミノ酸基が、有害物質の吸収及び分解のために利用される。この場合、前記アミノ酸基を、有害物質の分解が可能であるかもしくは著しく改善されるように変性させることができる。この種の酵素は一方では従来の特性を有し、更には有害物質吸収及び有害物質分解の機能をも有する。
【0042】
テキスタイル材料又は紙にもタンパク質反応性物質を施与することができ、それによって、蒸気バリヤー、壁紙等も、同時に有害物質及び/又は臭気除去のために使用することができる。
【0043】
タンパク質反応性物質は、液体形で、粉末、ペーストとして、又は水溶液の形で使用されてよい。それぞれの施与形の選択は本質的にそれぞれの用途に依存する。粉末は、例えば液体形の噴霧乾燥により取得され得る。
【0044】
従って、タンパク質反応性物質は多様な方法で使用されてよい。例えば、複合材料の個々の層又は複数の層か、又は複合材の特定の個々の部分、例えばチップ、ベニヤ、膜等の選択的な被覆を行うことが可能である。
【0045】
更に、タンパク質反応性物質に他の物質、例えば尿素、ゼオライト、特定の保存剤等をドープ又は混合することができ、それによって、所定の有害物質/臭気に対する受容性に影響を与え、かつ調節することができる。
【0046】
前記ドーパントの濃度は、一方では発生する有害物質の濃度に依存し、他方では有害物質群に依存する。
【0047】
しかしながら、有害物質の分解ないし中和の反応進行の速度は、タンパク質反応性物質pH値にも依存し得る。
【0048】
所定の適用に関して、タンパク質反応性物質は多少なりとも粘性の態様であってよい。粘性の具有は長い分子鎖により生じ得る。
【0049】
タンパク質反応性物質を部分的にのみ施与する場合にも、しかしまた、作製された保護層が損傷された場合にも、依然として抜群の有害物質/臭気吸収が達成される。
【0050】
まず、有害物質ないし臭気はタンパク質反応性物質によって吸着、即ち可逆的結合され、即ち物理吸着され、かつ更なる反応工程において吸収、即ち化学吸着され、これは反応物質の相応する反応パートナーと完全に反応し、かつ結合することを意味する。完全な反応は、吸着と比較して著しく長くかかるプロセスであるため、初めは2つのプロセスの重なりが生じる。しかしながら、吸着された有害物質/臭気分子の放出は本質的には生じず、それというのも、直ちに吸収が生じるために、吸着された分子の再放出のための時間が提供されないためである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質、特にアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)及び臭気を吸収するための、及び前記有害物質から特に室内空気を持続的に保護するための方法において、タンパク質反応性物質を少なくとも有害物質放出体ないし潜在的な有害物質放出体の近傍に施与することを特徴とする方法。
【請求項2】
タンパク質反応性物質として、タンパク質加水分解物、特に酵素分解された硬タンパク質を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
タンパク質反応性物質を液状、ペースト状、粘性形又は粉末状で使用する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
タンパク質反応性物質に添加物質を添加する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
尿素、ゼオライト、酸化アルミニウム、無機光触媒及び/又は保存剤等を添加する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
タンパク質反応性物質を使用前に噴霧乾燥させる、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
タンパク質反応性物質を、支持体、物体、被覆、被覆系等に施与する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
タンパク質反応性物質を、支持体、物体、被覆等に導入する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
タンパク質反応性物質を、染料、ラッカー、コーティング、ステイン、プラスター等に導入する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
タンパク質反応性物質を洗浄剤及び清浄化剤に施与する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
清浄化剤中に含まれる酵素を変性させる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
酵素を、その受容範囲において、該範囲のアミノ酸基が有害物質を吸収しかつ分解し得るように変性する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
タンパク質反応性物質を、特にテキスタイル等のための含浸剤及び/又は繊維被覆に施与する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
タンパク質反応性物質を、壁材、天井材及び/又は床材、構造用ボード、例えばOSBボード等において使用する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2009−529925(P2009−529925A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556771(P2008−556771)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051858
【国際公開番号】WO2007/099105
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(508263822)
【氏名又は名称原語表記】Robert Sweredjuk
【住所又は居所原語表記】Schwedenstrasse 17, D−87463 Reicholzried−Dietmannsried, Germany
【Fターム(参考)】