説明

有害物質除去材及びそれを用いた空気清浄化装置

【課題】細菌、黴、ウイルス、花粉、アレルゲンなどの有害物質を捕捉・不活性化させ、しかも、用いた抗体に細菌、黴を再繁殖させない有害物質除去材及びこのような有害物質除去材からなる抗体フイルタを装着した空気清浄化装置の提供。
【解決手段】(A)抗体と、(B)pH7、25℃における溶解度積の逆数の対数値(pKsp)が8〜14である無機銀塩と、を担体に担持させた有害物質除去材、およびそれを用いた空気清浄装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質除去材に関し、より詳細には、担体に鶏卵抗体と無機銀塩とを担持させ、各種の細菌、ウイルス及びアレルゲンなどの有害物質を選択的に捕捉・不活性化させる有害物質除去材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造工業、医薬品製造工業、食品加工、オフィス、病院、介護老人ホームなどの各種の産業及び民生分野において、その職場及び居住環境に対して清潔・安全・衛生志向が益々強く求められているのが実状である。そのために従来にも増して、クリーンルーム用エアーフィルター、食品加工及びオフィスの空調、家庭用エアコンなどの空気浄化フィルタ部材には、抗菌や抗黴の機能を備えた各種機器、製品が、幅広く市場に利用・提供されている。
【0003】
また、特に病院、介護老人ホームなどの施設内において、特定のウイルスの感染症が流行し、それに対する早急な対処策が求められている。これらの背景から、特にこれらの特定のウイルスに対する高い除去機能と、広範囲の菌や黴に対処できる機能を併せ持った処理部材の開発が望まれている。
【0004】
例えば特許文献1には、抗体と、抗黴加工を施した担体を用いた有害物質除去剤を用いて、気相雰囲気下に浮遊する細菌、カビ、ウイルス及びアレルゲンなどの有害物質を捕捉する有害物質除去材が提案されている。
【0005】
また特許文献2には、光触媒作用を発揮する半導体層上に形成させた銀粒子の表面に陰イオンを接触反応させて、難溶性の銀塩が形成されている抗菌部材が記載されていて、銀の溶出速度を抑制した抗菌剤について記載されている。
【特許文献1】特開2004−313755号公報
【特許文献2】特開平08−133919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有害物質除去材に対し、より高い有害物質除去性能が求められている。上記のように、抗体と、抗黴加工を施した担体を用いた従来の技術では、その抗菌・抗黴加工材によって、抗体自体が劣化される傾向にあった。
【0007】
本発明の目的は、特定のウイルスに対してより高率で除去する能力と、広範囲の種類の細菌や黴を除去する能力を併せ持った有害物質除去剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、鶏卵抗体を担持させた繊維状の担体に、無機銀塩を担持させたところ、その担体に捕捉された細菌が、不活性化され、しかも、この担体上には、新たに黴も細菌も繁殖されないことを見出して、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記構成よりなる。
【0009】
<1>
(A)鶏卵抗体と、
(B)pH7、25℃における溶解度積の逆数の対数値(pKsp)が8〜14である無機銀塩と、
を担体に担持させた有害物質除去材
【0010】
<2>
前記無機銀塩が、塩化銀または臭化銀であることを特徴とする上記<1>に記載の有害物質除去材。
【0011】
<3>
前記無機銀塩の球相当径が0.5μm以下であることを特徴とする上記<1>または<2>に記載の有害物質除去材。
【0012】
<4>
内部に空気を取り込む吸気部と、外部に空気を送り出すための排気部とを有するケース本体と、
前記吸気部から前記排気部の間に形成された流路に空気を送風する送風部と
光触媒を含む層を有し、前記流路に配置された光触媒フィルタと、
前記光触媒フィルタに光を照射する光照射部と、
前記流路に配置された上記<1>〜<3>のいずれかに記載の有害物質除去材と、を備え、
前記光照射部と前記有害物質除去剤との間に、前記空気の流れを許容し、且つ、前記空気の流れる方向に見た状態で前記光の通過を遮蔽する遮光部材が設けられ、前記遮光部材が、前記流路に配置される枠体と、前記枠体に形成され、それぞれ同一角度で傾斜させた状態で配列させた複数の遮光板とを有することを特徴とする空気清浄装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、細菌、黴、ウイルス、花粉、アレルゲンなどの有害物質を効果的に捕捉・不活性化させ、しかも、鶏卵抗体を劣化させず、抗菌効果を有する有害物質除去材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明における有害物質除去材及び空気清浄化装置の実施形態について、更に詳細に説明する。
【0015】
<担体>
本発明の有害物質除去材に用いられる担体としては、特に限定されないが、繊維で構成された担体が好ましく、織布、不織布などの形態で担体を構成することが出来る。繊維としては、特に限定されないが、合成繊維であるポリエステル、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ビニロン、アクリル系、ポリウレタン、ポリアミド、天然繊維である綿、絹、ウール、再生繊維であるレーヨンなどを挙げることが出来る。これらの繊維を組み合わせても良い。 強度や寸度安定性を向上させる目的で、担体を金属・高分子材料・セラミックス等の他の適切な構造材料により補強してもよい。これらの補強材は、有害物質除去材料を供給する側面の実質的な最表面以外の部分(例えば、該側面の反対面や芯材に用いる等)に用いることが望ましい。
【0016】
本発明において担体として用いられる繊維の作製法としては、溶融紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸、湿乾式紡糸など一般的な製造法や、物理的処理(例えば超高圧ホモジナイザーによる強力な機械的せん断処理)によって繊維を微細化する方法などが挙げられるが、安定な品質を確保するためには、乾式紡糸もしくは湿乾式紡糸法を用いることが好ましい。平均繊維径が100nm以下で均一な繊維を作製するためには、さらに加工技術、2005年、40巻、No.2、101頁、および167頁;Polymer International誌、1995年、36巻、195〜201頁;Polymer Preprints誌、2000年、41(2)号、1193頁;Journal of Macromolecular Science : Physics誌、1997年、B36、169頁などに開示されている電界紡糸法を採用すること
が好ましい。
【0017】
紡糸に用いる溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、THF、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒、水など、合成樹脂繊維に用いられる樹脂を溶解するものであれば何でも用いることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、複数種混合して用いてもよい。
【0018】
電界紡糸法を採用する場合には樹脂溶液に、さらに塩化リチウム、臭化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどの塩を添加してもよい。
【0019】
担体を構成する繊維同士は部分的に接着することにより三次元ネットワークを形成している構造をもつことが望ましい。かような構造をとることにより、加工ならびに実用上の機械的耐性の向上、ひいては有害物質除去材の信頼性をあげることができる。また抗体の保持特性を上げることができる。繊維同士の接着はSEM等の方法で観察することができる。繊維同士の接着点の密度は、該有害物質除去材の投影表面積に対して1mm角辺り10箇所以上存在することが好ましく、100箇所以上であることがより好ましい。
【0020】
接着点を形成する方法としては、乾式紡糸法で形成される癒着や溶融紡糸法で形成される融着点で形成してもよいし、紡糸後に加熱や、接着剤・可塑化溶剤等の添加による接着点形成処理を行ってもよい。製造コストの観点では適切な溶液処方により乾式紡糸法で癒着点を形成させることが好ましい。
【0021】
担体は滅菌されることが好ましい。滅菌方法は担体を劣化させない滅菌法であれば特に限定されないが、放射線による滅菌またはガスによる滅菌が好ましい。
放射線による滅菌方法としては、ガンマ線滅菌、電子線滅菌などを用いる方法をあげることができる。このうち、ガンマ線滅菌を用いる方法が好ましい。
ガスによる滅菌方法としては、エチレンオキサイドガス滅菌、二酸化塩素ガス滅菌などを用いる方法をあげることができる。このうち、エチレンオキサイドガス滅菌を用いる方法が好ましい。
【0022】
<(A)鶏卵抗体>
本発明に用いられる鶏卵抗体は、特定の有害物質(抗原)に対して特異的に反応(抗原抗体反応)するタンパク質であり、通常、分子サイズが7〜8nmであって、Y字状の分子形態を有する。抗体のY字状分子構造のうち、一対の枝部分をFab、幹部分をFcといい、これらのうち、Fabの部分で有害物質を捕捉する。
【0023】
前記抗体の種類は、捕捉しうる有害物質の種類に対応する。抗体により捕捉される有害物質としては、例えば、細菌、カビ、ウイルス、アレルゲン及びマイコプラズマを挙げることができる。具体的には、細菌としては、例えば、グラム陽性菌であるブドウ球菌属(黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌)、ミクロコッカス菌、炭疽菌、セレウス菌、枯草菌、アクネ菌などや、グラム陰性菌である緑膿菌、セラチア菌、セパシア菌、肺炎球菌、レジオネラ菌、結核菌などを挙げることができる。カビとしては、例えば、アスペルギルス、ペニシリウス、クラドスポリウムなどを挙げることができる。ウイルスとしては、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(SARSウイルス)、アデノウイルス、ライノウイルスなどを挙げることができる。アレルゲンとしては、花粉、ダニアレルゲン、ネコアレルゲンなどを挙げることができる。
【0024】
前記抗体の製造方法としては、例えば、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ウサギ等の動物に抗原を投与し、その血液からポリクローナル抗体を精製する方法、抗原を投与した動物の脾臓細胞と培養癌細胞とを細胞融合し、その培養液または融合細胞を植え込んだ動物の体液(腹水等)からモノクローナル抗体を精製する方法、抗体産生遺伝子を導入した遺伝子組み換え細菌、植物細胞、動物細胞の培養液から抗体を精製する方法、鳥類に抗原を投与して免疫卵を産ませ、卵黄液を殺菌及び噴霧乾燥して得た卵黄粉末から鳥類卵抗体を精製する方法を挙げることができる。これらのうちでも、鳥類卵から抗体を得る方法は、容易にかつ大量に抗体が得られ、有害物質除去材の低コスト化を図ることができる。鳥類としては、鶏、ダチョウを挙げることが出来る。
鳥類卵抗体は鳥類に抗原を投与して免疫卵を産ませ、卵黄液を殺菌及び噴霧乾燥して得た卵黄粉末から精製して得ることができる。鳥類卵から抗体を得る方法は、容易にかつ大量に抗体が得られ、有害物質除去材の低コスト化を図ることができる。
【0025】
前記担体に抗体を担持する(固定化する)方法としては、前記担体に抗体を物理的に吸着させる方法のほか、担体をγ−アミノプロピルトリエトキシシランなどを用いてシラン化した後、グルタールアルデヒドなどで担体表面にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、未処理の担体を抗体の水溶液中に浸漬してイオン結合により抗体を担体に固定化する方法、特定の官能基を有する担体にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、特定の官能基を有する担体に抗体をイオン結合させる方法、特定の官能基を有するポリマーで担体をコーティングした後にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法をあげることができる。
【0026】
ここで、前記の特定の官能基としては、NHR基(RはH以外のメチル、エチル、プロピル、ブチルのうちいずれかのアルキル基)、NH2基、C65NH2基、CHO基、COOH基、OH基を挙げることができる。
【0027】
また、前記担体表面の官能基を、BMPA(N-β-Maleimidopropionic acid)などを用いて他の官能基に変換した後、その官能基と抗体とを共有結合させる方法もある(BMPAではSH基がCOOH基に変換される)。
【0028】
更に、前記抗体のFcの部分に選択的に結合する分子(Fcレセプター、プロテインA/Gなど)を担体表面に導入し、それに抗体のFcを結合させる方法もある。この場合、有害物質を捕捉するFabが担体に対して外向きになり、Fabへの有害物質の接触確率が高くなるので、効率よく有害物質を捕捉することができる。
【0029】
前記抗体は、リンカーを介して担体に担持されていてもよい。この場合、担体上での抗体の自由度が高くなり、有害物質への接近が容易となるので、高い除去性能を得ることができる。リンカーとしては、二価以上のクロスリンク試薬を挙げることができ、具体的にはマレイミド、NHS(N-Hydroxysuccinimidyl)エステル、イミドエステル、EDC(1-Ethyl-3-[3-dimethylaminopropyl]carbodiimido)、PMPI(N-[p-Maleimidophenyl]isocyanate)があり、標的官能基(SH基、NH2基、COOH基、OH基)に選択的なものと非選択的なものとがある。また、クロスリンク間の距離(スペースアーム)もクロスリンク試薬ごとに異なっており、目的の抗体に応じて0.1nm〜3.5nm程度の範囲で選択することができる。有害物質を効率的に捕捉するという観点からは、リンカーとして抗体のFcに結合するものが好ましい。
【0030】
リンカーを導入する方法としては、抗体にリンカーを結合させておき、それを更に抗体に結合する方法、担体にリンカーを結合させておき、担体上のリンカーに抗体を結合させる方法のいずれも可能である。
【0031】
鶏卵抗体を含む溶液を担体に付着させることにより、抗体を担体に担持させる。鶏卵抗体液を担体に付着させる方法は、特に限定されないが、担体を鶏卵抗体液に浸漬させる方法、スプレー塗布、インクジェット塗布、カーテン塗布が挙げられる。
鶏卵抗体を含む溶液は、上記のように得られる鶏卵抗体を生理食塩水、またはリン酸緩衝生理食塩水などに溶解して作製すればよい。該溶液において鶏卵抗体の濃度は、0.001質量%〜10質量%であればよく、0.005質量%〜5質量%が好ましく、0.01質量%〜1質量%がより好ましい。該溶液は、安定化剤や、抗菌剤、抗カビ剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0032】
本発明においては、鶏卵抗体を含む溶液を、孔径0.5μm以下のフィルターで濾過して用いることが好ましい。孔径0.5μm以下のフィルターで濾過することにより、製造される有害物質除去材における雑菌やカビの増殖を抑えることができる。
【0033】
<(B)無機銀塩>
本発明の有害物質除去材は、pH7、25℃における溶解度積の逆数の対数値(pKsp)が8〜14である無機銀塩(B)を含む。
無機銀塩(B)は、好ましくは難溶塩であって、そのpH7の飽和溶液系における電離・銀イオン濃度が、その溶解度積(25℃)の逆数の対数値(pKsp)で表して、pKsp=8〜14の範囲にあることを特徴とする特定無機銀塩であり、好ましくは、塩化銀、臭化銀である。
【0034】
このpKsp値が8より小さいと、銀イオン濃度が高くなり、抗体を攻撃する銀イオンが増加し、抗体の破壊が発生する。一方、このpKsp値が14より大きいと銀イオン濃度が低くなりすぎ、目的の抗菌効果が得られない。
【0035】
無機銀塩のpKspは、例えば、T.H.JamesによるThe Theory of the Photographic Process, MacmillanPublishing Co.Inc., New York(fourth edition,1977)の第1章、第7〜10項において開示されており、これを参照して適宜選択し、本発明の無機銀塩(B)とすることができる。
無機銀塩(B)としては、例えば、米国特許第4,500,626号第50欄、同4,628,021号、リサーチ・ディスクロージャー誌(以下RDと略記する)No. 17,029(1978年)、同No. 17,643(1978年12月)22〜23頁、同No. 18,716(1979年11月)648頁、同No. 307,105(1989年11月)863〜865頁、特開昭62−253159号、同64−13546号、特開平2−236546号、同3−110555号及びグラフキデ著「写真の物理と化学」、ポールモンテ社刊(P.Glafkides, Chemie et Pisique Photographique, Paul Montel, 1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」、フォーカルプレス社刊(G.F.Duffin, Photographic Emulsion Chemistry, Focal Press,1966)、ゼリクマンら著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L.Zelikman et al.,Making and Coating Photographic
Emulsion, Focal Press,1964)等に記載されている方法を用いて調製したハロゲン化銀を用いることが出来る。
【0036】
本発明において、無機銀塩の分散液を担体に付着させることにより、担体に担持させる。付着させる方法としては、特に限定されないが、担体を無機金属塩分散液に浸漬させる方法、スプレー塗布、インクジェット塗布、カーテン塗布があげられる。有機化合物の金属塩分散液には、バインダーを用いることが好ましい。バインダーは水溶性バインダーであることが好ましく、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、カルボキシルメチルセルロースなどを挙げることができる。また、前記の抗体溶液と無機金属塩の分散液を混合した後に担体に担持させれば、製造工程が簡略化できるため、より好ましい。
本発明の無機銀塩は球相当径0.5μm以下であることが好ましい。
【0037】
<使用方法>
本発明の製造方法により得られる有害物質除去材によって、気相中又は液相中の有害物質の除去が可能である。この有害物質除去材は抗体が気相に面しているドライな環境においても使用可能であり、空気清浄機用フィルター、マスク、拭き取りシートなどに用いることができる。本発明の製造方法により得られる有害物質除去材は長期間安定保存が可能である。
本発明の製造方法により得られる有害物質除去材は、紫外線を透過しない包装体を用いて包装されることが好ましい。このような包装体を用いることによって、紫外線による抗体の劣化が防止でき、さらに長期間の安定保存が可能である。包装体としては、アルミニウム箔フィルム、アルミニウム蒸着フィルムが好ましく、また、これらを含む多層フィルムも好ましく用いられる。
【0038】
<有害物質除去材の製造>
抗体と無機銀塩の塗布は、抗体溶液と無機銀液を別々に塗布してもよく、抗体−無機銀混合溶液として塗布しても良い。工程の簡略化の観点からは後者が好ましい。抗体、無機銀塩の塗布量は、使用目的にもよるが、使用期間の有害物質を除去するのに十分な量が塗布されていることが好ましい。
【0039】
<空気清浄装置>
本発明の有害物質除去材は、空気清浄化装置の抗体フィルターとして用いることが好ましい。
本発明の有害物質除去材を用いた抗体フィルターは、通常の空気清浄化装置に用いることができる。具体的には、内部に空気を取り込む吸気部と、外部に空気を送り出すための排気部とを有するケース本体、前記吸気部から前記排気部の間に形成された流路に空気を送風する送風部、および、前記流路に配置された本発明の有害物質除去材、を備える空気清浄装置とすることが好適である。
【0040】
本発明の空気清浄装置は、内部に空気を取り込む吸気部と、外部に空気を送り出すための排気部とを有するケース本体と、前記吸気部から前記排気部の間に形成された流路に空気を送風する送風部と、光触媒を含む層を有し、前記流路に配置された光触媒フィルタと、前記光触媒フィルタに光を照射する光照射部と、前記流路に配置された本発明の有害物質除去材と、を備え、前記光照射部と前記有害物質除去剤との間に、前記空気の流れを許容し、且つ、前記空気の流れる方向に見た状態で前記光の通過を遮蔽する遮光部材が設けられ、前記遮光部材が、前記流路に配置される枠体と、前記枠体に形成され、それぞれ同一角度で傾斜させた状態で配列させた複数の遮光板とを有する。
【0041】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる空気清浄化装置の一実施形態の構成を示す図である。図2は、図1の空気清浄装置を吸気側からみた図である。図3は、図1の空気清浄化装置を排気側からみた図である。図4は、図1の空気清浄化装置の空気の流路と平行な断面で切断した断面図である。
【0042】
空気清浄化装置10は、内部に所定の空間を有する略長方体形状を有するケース本体11を備えている。図2に示すように、ケース本体11の吸気側の側面11aには、複数の吸気口21が形成されており、これら吸気口21がケース本体11の内部に空気を取り入れるための吸気部として機能する。また、図3に示すように、ケース本体11の排気側の側面11bには、複数の排気口23が形成されており、これら排気口23がケース本体11の外部に空気を送り出すための排気部として機能する。
【0043】
ケース本体11の内部には、吸気口21から排気口23に連通する流路が形成されている。空気清浄化装置10の駆動時には、吸気口21から取り込まれた空気が図1中の矢印Fの方向に流れ、排気口23から送り出される。以下、本発明にかかる実施形態において、流路に対して吸気側を上流側とし、排気側を下流側とする。
【0044】
ケース本体11内の流路には、光触媒フィルタ12が配置されている。本実施形態の光触媒フィルタ12は、略長方対形状を有し、流路の断面積と略等しい面積で且つ互い平行な平面を有し、該平面を流路を流れる空気の流れ(矢印F)に対して垂直になるように配置されている。なお、本実施形態では、上流側に光触媒フィルタ12aを配置し、下流側に光触媒フィルタ12bを配置した。
【0045】
光触媒フィルタは、不織布等のように多孔質の繊維層と、不活性チタン層と、不活性チタン層上に活性チタン層を有する。
光触媒としては、主に、酸化チタン(TiO2)を主体として使用するが、その他に酸化亜鉛(ZnO)、酸化セリウム(Ce23)、酸化テルビウム(Tb23)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化エルピウム(Er23)、タンタル酸カリウム(KTaO3)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、および[Ru(bpy)32+やCo錯体等が適用可能である。なお、活性酸化チタンとしては、アナターゼ結晶の微粒子を用いるのが望ましい。繊維層としては、目付けが100g/m2〜300g/m2のものであって、圧力損失が標準風速2.5m/sでの初期圧力損失が、20〜90Paのものを用いることが好ましい。
【0046】
また、光触媒フィルタ12の下流側には、抗体フィルタ15が設けられている。この抗体フィルタ15は、上記光触媒フィルタ12と同様の寸法及び形状とすることができる。
【0047】
光触媒フィルタ12a,12b及び抗体フィルタ15は、フィルタカセット50に保持され、該フィルタカセット50をケース本体11に装着することで、所定の位置に配置されている。本実施形態では、光触媒フィルタ12a,12b及び抗体フィルタ15は、長尺板形状を有し、流路Fに対して垂直方向に延在し、空気の流れを許容しつつ、肉眼視した状態で遮蔽するように配置されている。
【0048】
ケース本体11の内部の流路には、光触媒フィルタ12に光を照射する光照射部14を備えている。本実施形態では、光照射部14を上流側の光触媒フィルタ12aと下流側の光触媒フィルタ12bとの間に配置している。光照射部14は、光触媒が反応する波長である300nm〜420nm程度の紫外線を発光するものである。本実施形態では、光照射部14の光源として蛍光灯を利用したが、これに限定されず、例えば、LED(Light Emitting Diode)やその他の紫外線照射装置を用いてもよい。本実施形態の光照射部14の近傍には蛍光灯を点灯させるためのグローランプが設けられていてもよい。
【0049】
図1及び図4に示すように、ケース本体11の流路の下流で、排気口23の直前(上流側近傍)には、送風部16が設けられている。本実施形態では、送風部16として軸流ファンを用いている。駆動時には、ファンの回転によって送風部16が流路内部の空気を下流側の排気口23から送り出すことで、流路において、空気を上流側の吸気口21から取り込み、流路に沿って空気を送って下流側の排気口23から送り出すといった図1で矢印Fで示す空気の流れが発生する。送風部16としては、軸流ファンに限らず、シロッコファンなどを用いてもよい。なお、本実施形態では、流路の下流側に送風部16を設ける構成としたが、流路の上流側に送風部16を設ける構成としてもよく、または、流路の上流側及び下流側の両方に送風部16を設ける構成としてもよい。
【0050】
また、空気清浄化装置10には、ケース本体11の内部には、光照射部14や送風部16に電気を供給する電源回路32と、モータ制御部33と、光照射部14の電圧を変換可能な変圧器34とが設けられている。ケース本体11の排気側の側面11bには、電源スイッチ24が設けられている。また、ケース本体11の吸気側11aには、送風部16から送風される空気の流量を使用者が調整可能な、風量調節部26とが設けられている。
【0051】
また、図4に示すように、流路の上流側で、かつ、吸気口21の下流側には、光照射部14からの光が吸気口21からケース本体11の外部に漏れ出ることを防止するため、後述する遮光部材42が設けられている。こうすれば、駆動時に紫外線などの人体に有害な光が外部に照射されてしまうことを防止でき、安全性を確保することができる。
【0052】
図1及び図4に示すように、本実施形態の空気清浄化装置10には、光照射部14と抗体フィルタ15との間に遮光部材44が設けられている。また、流路において吸気口21の下流側近傍に、更に別の遮光部材42が設けられている。なお、遮光部材42,44の構成については後述する。
【0053】
次に、本実施形態の空気清浄化装置10の制御系を説明する。
図5は、本実施形態の空気清浄化装置の制御系を示すブロック図である。なお、以下に説明する実施形態において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。空気清浄化装置10の駆動時には、電源回路32を起動することで、所定の電圧がモーター制御部33、光照射部14と、変圧器34に供給される。変圧器34を所定の周波数(例えば、周波数50Hzと60ヘルツ)に設定することで光照射部14の駆動にかかる電圧を切り替えることができる。モーター制御部33を駆動することで、送風部16が駆動し、ケース本体11の流路に沿って、空気が流動し始める。送風部16の駆動開始と同時、または、その駆動開始の前後で光照射部14を駆動して、光の照射を開始し、光触媒フィルタ12で活性酸素を発生させるとともに、送風部16によって流動する空気によって活性酸素を空気清浄装置10の周囲雰囲気に拡散させる。
【0054】
ここで、空気清浄化装置10には、雰囲気中の有機物質の量を検出するセンサ部36と、光照射部14と送風部16との少なくとも一方に信号の入出力が可能な状態で接続された駆動制御部38とが設けられている。センサ部36は、有機物質を検出した場合に、検出信号を駆動制御部38に出力する。駆動制御部38は、有機物質の検出信号に基づいて光照射部14と送風部16との少なくとも一方を制御することができる。光照射部14を制御する場合には、照射する光の量や、光を照射する時間を制御することができる。また、光照射部14の点灯を間欠運転に設定することや、照射を終了するタイマー機能を有していてもよい。送風部16を制御する場合には、送風する空気の量や、送風する時間を制御することができる。また、送風部16の駆動を間欠運転に設定することや、送風を終了するタイマー機能を有していてもよい。
【0055】
センサ部36で検出する臭気としては、例えば、人体からの体臭や口臭、アルコール物質や、愛玩動物の糞尿から生じた有機物質などがある。また、センサ部は、臭気に限定されず、例えば、ダニなどのハウスダスト、塵埃、花粉を検出することもできる。
【0056】
図6は、遮光部材の構成を示す斜視図である。図7は、図6のA−A線方向視した断面図である。遮光部材42,44はそれぞれ、空気が流入する方向(図6中の矢印F)にみて、略矩形の枠体52,54と、該枠体52,54に形成され、光照射部14から照射される光の通過を遮蔽する複数の遮光板52a,54aとを有している。本実施形態では、同じ構成の枠体52,54同士を重ね合わせた状態で一つの遮光部材42,44として用いている。複数の遮光板52a,54aは、互いに平行に略等間隔で配置されており、遮光板52a,54a同士の間は上流側から下流側にかけて連通しており、枠体52の上流側の面から流入した空気が下流側の面から抜け出て通過することが許容される。複数の遮光板52a,54aの傾斜の角度Iはそれぞれ全て等しく、ケース本体11の水平方向(図7において左右方向)に対して30°から50°の範囲とすることが好ましい。
【0057】
本実施形態の遮光部材42,44は、枠体52,54を複数重ね合わさせて並べられ、隣り合う枠体の遮光板の傾斜の向きが反対となる状態で配置されている。なお、遮光部材42,44は、枠体52,54のうちいずれか1つと、それに形成された複数の遮光板52a,54aとから構成されていてもよい。このとき、遮光部材42は隣り合う遮光部材の傾斜の向きが反対となる状態で配置されている。
【0058】
図8は、本実施形態の遮光部材の変形例を示す部分断面図である。図8に示すように、遮光板52aの上面及び下面に、光触媒層56a,56bを形成してもよい。光触媒層56a,56bは、上記光触媒フィルタ12a,12bと同様の構成とすることができ、例えば、光触媒フィルタを遮光板52aの上面及び下面に貼り付けることで構成してもよい。光触媒層56a,56bは、遮光板52aの上面及び下面のいずれか一方にのみ形成していてもよい。こうすれば、遮光板52aに光照射部14からの光が照射することで、遮光板52aによって下流側へ光が照射されることを防止するとともに、遮光板52aの光触媒層56a,56bにおいて光触媒反応を起こすことができる。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にいささかも限定されるものではない。
【0060】
(実施例1〜2、比較例1〜3)
本実施例において、調製した不織布の担体N−1を用いて、抗体単独及び抗体に各種の無機銀液を含有する塗布液−1〜塗布液−5を調製し、抗体と無機銀塩とを担持させて本発明による有害物質除去材である抗体フィルタを含め、フィルタF−1〜フィルタF−5を調製した。次いで、これらの抗体フィルタに対して、ウイルスの不活性化、抗菌力を評価して、その結果を表1に示した。
<担体不織布の調製(担体N−1)>
セルロースアセテート(アルドリッチ製、全置換度2.4、数平均分子量3万)のアセトン:水(97:3)溶液(25質量%)を60℃に加温し、直径0.1mmのノズルから、紡速500m/mの速度で空気とともに噴出させ不織布を形成し膜厚85μmの不織布担体N−1を得た。紡糸筒はヒーターで100℃に加温した。SEMで平均繊維径を測定したところ、8μmであった。
【0061】
<抗体塗布液の調製(塗布液−1〜塗布液−5)>
塗布液−1:抗原を投与したニワトリが産んだ免疫卵の卵黄液を、噴霧乾燥して乾燥卵黄粉末を得た。次いで、この乾燥卵黄粉末をエタノールで脱脂して脱脂成分を除去した後、減圧下で乾燥し、抗体物質としての脱脂卵黄粉末を得た。この脱脂卵黄粉末を精製してインフルエンザウイルス抗体(IgY抗体)の純度を測定したところ、3質量%であった。次いで、脱脂卵黄粉末を精製水に懸濁させ、抗体濃度100ppmになるように調製した液を塗布液−1とした。
塗布液−2:塗布液−1に、フッ化銀分散液を混合し、フッ化銀濃度57ppmになるように調整した塗布液−2とした。
塗布液−3:塗布液−1に、塩化銀分散液を混合し、塩化銀濃度64ppm(フッ化銀にモル数を合わせる)になるように調整した塗布液−3とした。
塗布液−4:塗布液−1に臭化銀分散液を混合し、臭化銀濃度84ppm(フッ化銀にモル数を合わせる)になるように調整した塗布液−4とした。
塗布液−5:塗布液−1にヨウ化銀分散液を混合し、ヨウ化銀濃度105ppm(フッ化銀にモル数を合わせる)になるように調整した塗布液−5とした。
【0062】
<抗体フィルタの調製(フィルタF−1〜フィルタF−5)>
フィルタF−1:塗布液−1に担体N−1を室温で5分間浸漬させて、繊維担体表面に抗体を付与した。得られた試料を面圧10MPaのローラーで圧縮し、含水率を測定したところ、500%であった。さらに50℃×30%PHの雰囲気下において含水率1%以下になるまで乾燥させたところ、1時間後に含水率1%に到達した。
フィルタF−2〜F−5:抗体塗布液−1を塗布液−2〜塗布液−5に変更した以外は、フィルタF−1と同様の方法で、繊維担体表面に抗体および無機銀塩を付与させたフィルタF−2〜F−5を作製した。
【0063】
<ウイルスの不活性化効率評価>
フィルタF−1〜F−5について、サンプル作製直後に、ウイルス不活性化効率評価を行った。供試ウイルス液は精製インフルエンザウイルスをPBSで10倍希釈したもの(ウイルス濃度20万プラーク/ml)を使用した。前記各サンプルを5cm角に切り、ウイルス噴霧試験装置の中央に取り付け固定した。上流側に設置したネブライザーに供試ウイルス液を入れ、下流側にウイルス回収用装置を取り付けた。エアーコンプレッサーから圧縮空気を送り、ネブライザーの噴霧口から供試ウイルスを噴霧した。マスク下流側には、ゼラチンフィルターを設置し、10L/分の吸引流量で5分間試験装置内空気を吸引し、通過ウイルスミストを捕集した。
試験後、ウイルスを捕集したゼラチンフィルターを回収し、MDCK細胞を用いたTCID50法(50%細胞感染量測定法)により、サンプル通過後のウイルス感染価を求めた。サンプル有り無しでのゼラチンフィルターのウイルス感染価の比較から、各サンプルのウイルスの一過性除去率を算出した。その結果を表1に示す。
また、各サンプルに担持された無機銀塩のpH7、25℃における溶解度積の逆数の対数値=pKspを表1に示した。
【0064】
<抗菌力評価>
フィルタF−1〜F−5について、これらのフィルタ作製直後に、抗菌力試験を行った。その試験方法は、JIS2801:2000に準拠させて行った。試験菌は、標準寒天培地で前培養したStaphylococcus aureus subsp. aureus NBRC 12732(黄色ぶどう球菌)を使用した。この培養菌を1/500ニュートリエントブロスにて分散希釈し、試験菌液を調製した。この試験菌液0.4mlを滅菌シャーレに入れた各フィルタに接触して、35℃×24時間培養した。培養後、各試験布から菌をレシチン・ポリソルベート80含有ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト・ブロス10mlで洗い流し、各試験布中の菌数を寒天平板培養法により測定した。また、接触直後の菌数も測定したところ、1.8×105個であった。
【0065】
【表1】

【0066】
表1から明らかなように、本発明の製造方法により得られた抗体フィルタは、サンプル作製直後のウイルス除去率が高い。また、無機銀塩により、抗菌効果および抗黴効果が付与された。フッ化銀は易溶性銀塩で溶解度が高く、電離・銀イオンによる抗体の破壊が発生し抗体による不活化効率が下がっていると考えた。ヨウ化銀では、pKspが高く、銀イオンの徐放性が抑制されて抗菌効果が減少していると考えた。
【0067】
(実施例3〜5、比較例4〜7)
抗体フィルタF−2,F−3,F−4のそれぞれと、同一のUV照射下に設けられている光触媒フィルタC−1とを装着させた空気清浄化装置10を用いて、且つ遮光板の挿入角度を25°〜55°に可変させて、同一ウイルス環境下にある大気を流して、空気清浄化装置を2週間運転した後、それぞれの抗体フィルタのウイルスの一過性除去率(ウイルスの不活性化)、抗菌力(試験後の菌数)評価して、その結果を、実施例及び比較例の抗体フィルタ種、及び遮光板の挿入角度に対する評価として、表2に示した。
【0068】
(抗体の固定化)
抗原を投与したニワトリが産んだ免疫卵を精製して作製したインフルエンザウイルス抗体(IgY抗体)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させ、抗体濃度100ppmになるように調製した。調製した液に上記不織布N−1のサンプルを室温で16〜24時間浸漬させ、繊維表面に抗体を付与させた。得られた試料を25℃,20%RHの環境下で24時間静置し、次に25℃,90%RHの環境下で24時間静置した。この操作を交互に3回ずつ、合計6条件の間で繰返した。
【0069】
<光触媒フィルタ>
実施例及び比較例の空気清浄化装置10に装着した光触媒フィルタC−1を下記の手順によって作成した。ポリエステル/アクリル系からなる線径20μ、膜厚7mmの不織布に光触媒コーティング剤(TKC−304:テイカ製)を1m2あたり7.5gとなるよう担持させ、100℃で3分乾燥させ光触媒フィルタC−1を作成した。
【0070】
<空気清浄化装置の光触媒および抗体フィルタの装着方法>
光触媒および抗体フィルタに枠を作成し、着脱可能に保持するフィルタ保持部が設けられた、上記に調製した抗体フィルタF−2,−3,−4を空気の流れの最下流に配置し、上流側に光触媒フィルタを一対、その間に近紫外線を効率よく放射する冷陰極管を配置した。送風部として最下流に軸流ファンを3機配置した。
【0071】
(実施例3)
抗体フィルタF−3及び光触媒フィルタC−1の1対を配置、抗体フィルタF−3と下流側光触媒フィルタC−1との間に、角度30°の遮光板(耐UV処理したABS製)2枚を挿入した空気清浄化装置10を使用した。遮光板の配置は、それぞれの傾斜の向きが反対向きとなるよに配置した(図7参照)。
【0072】
(実施例4)
抗体フィルタF−4及び光触媒フィルタC−1の1対を配置、抗体フィルタと下流側光触媒フィルタとの間に、角度45°の遮光板(耐UV処理したABS製)2枚を挿入した空気清浄化装置10を使用した。遮光板の配置は、それぞれの傾斜の向きが反対向きとなるよに配置した(図7参照)。
【0073】
(実施例5)
実施例3において、抗体フィルタF−3と下流側光触媒フィルタC−1との間に、角度50°の遮光板(耐UV処理したABS製)2枚を挿入した空気清浄装置を使用した。遮光板の配置は、それぞれの傾斜の向きが反対向きとなるよに配置した(図7参照)。
【0074】
(比較例4)
実施例4において、抗体フィルタF−2に換えた以外は、実施例4と同様にした空気清浄化装置を使用した。
【0075】
(比較例5)
実施例3において、抗体フィルタF−3と下流側光触媒フィルタC−1との間に、角度25°の遮光板(耐UV処理したABS製)2枚を挿入した空気清浄化装置を使用した。遮光板の配置は、それぞれの傾斜の向きが反対向きとなるよに配置した(図7参照)。
【0076】
(比較例6)
実施例3において、抗体フィルタF−3と下流側光触媒フィルタC−1との間に、角度55°の遮光板(耐UV処理したABS製)2枚を挿入した空気清浄装置を使用した。遮光板の配置は、それぞれの傾斜の向きが反対向きとなるよに配置した(図7参照)。
【0077】
(比較例7)
実施例3において、遮光板を設けない空気清浄化装置を使用した。
【0078】
<風量の測定>
所定のウイルス環境下の大気の吹き込み風量は、縦26cm,横7cm,長さ30cmの筒を作成し、吹き出し口につけ、10点の風速(m/s)を測定し、平均値から風量(m3/min)を求めた。
【0079】
<ウイルス不活性化効率(ウイルスの一過性除去率)の評価>
同一環境下で、前記条件の空気清浄装置を2週間運転した後、それぞれの抗体フィルタのウイルス不活性化評価を行った。
供試ウイルス液は精製インフルエンザウイルスをPBSで10倍希釈したものを使用した。前記各サンプルを5cm角に切り、ウイルス噴霧試験装置の中央に取り付け固定した。上流側に設置したネブライザーに供試ウイルス液を入れ、下流側にウイルス回収用装置を取り付けた。エアーコンプレッサーから圧縮空気を送り、ネブライザーの噴霧口から供試ウイルスを噴霧した。マスク下流側には、ゼラチンフィルターを設置し、10L/分の吸引流量で5分間試験装置内空気を吸引し、通過ウイルスミストを捕集した。試験後、ウイルスを捕集したゼラチンフィルターを回収し、MDCK細胞を用いたTCID50法(50%細胞感染量測定法)により、サンプル通過後のウイルス感染価を求めた。サンプル有り無しでのゼラチンフィルターのウイルス感染価の比較から、各サンプルのウイルスの一過性除去率を算出した。
【0080】
<抗菌力評価>
比較例及び実施例の抗体フィルタF−2、F−3、F−4について、サンプル作製直後に、抗菌力試験を行った。試験方法は、JIZ2801:2000に準じた。
試験菌は、標準寒天培地で前培養したStaphylococcus aureus subsp. ureus NBRC 12732(黄色ぶどう球菌)を使用した。かかる培養菌を1/500ニュートリエントブロスにて分散希釈し、試験菌液を調整した。この試験菌液0.4mLを滅菌シャーレに入れた各フィルタに接種して、35℃で24時間培養した。培養後、各試験布から菌をレシチン・ポリソルベート80含有ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト・ブロス10mLで洗い流し、各試験布中の菌数を寒天平板培養法により測定した。また、接種直後の菌数も測定したところ、1.8×105個であった。結果を表2に示した。
【0081】
<消臭効果評価>
空気清浄装置の消臭効果をアンモニア濃度で評価した。
試験を行う閉ざされた空間(0.2m3)初期アンモニア(NH3)濃度を10ppmに調節した後、空気清浄装置を駆動し、15分後のアンモニア濃度を検知管にて測定した。
【0082】
結果を表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
実施例3〜5に示すように、遮光板の傾斜の角度を30°から50°の範囲とすることで、抗体フィルタでのUV強度を0μW/cm2に抑えることができ、0.5m/minの風量を確保することができ、ウイルスの一過性除去率は89〜91%と高い値をとることがわかった。しかも、特定無機銀塩の働きによって、この抗体フィルタ上には全く細菌が繁殖していない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明にかかる空気清浄化装置の一実施形態の構成を示す図である。
【図2】図1の空気清浄化装置を吸気側からみた図である。
【図3】図1の空気清浄化装置を排気側からみた図である。
【図4】図1の空気清浄化装置の空気の流路と平行な断面で切断した断面図である。
【図5】本実施形態の空気清浄化装置の制御系を示すブロック図である。
【図6】遮光部材の構成を示す斜視図である。
【図7】図6のA−A線方向視した断面図である。
【図8】遮光部材の変形例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0086】
10 空気清浄化装置
11 ケース本体
12(12a,12b)光触媒フィルタ
14 光照射部
15 抗体フィルタ
16 送風部
42,44 遮光部材
52a,54a 遮光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)鶏卵抗体と、
(B)pH7、25℃における溶解度積の逆数の対数値(pKsp)が8〜14である無機銀塩と、
を担体に担持させた有害物質除去材
【請求項2】
前記無機銀塩が、塩化銀または臭化銀であることを特徴とする請求項1に記載の有害物質除去材。
【請求項3】
前記無機銀塩の球相当径が0.5μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の有害物質除去材。
【請求項4】
内部に空気を取り込む吸気部と、外部に空気を送り出すための排気部とを有するケース本体と、
前記吸気部から前記排気部の間に形成された流路に空気を送風する送風部と
光触媒を含む層を有し、前記流路に配置された光触媒フィルタと、
前記光触媒フィルタに光を照射する光照射部と、
前記流路に配置された請求項1〜3のいずれかに記載の有害物質除去材と、を備え、
前記光照射部と前記有害物質除去剤との間に、前記空気の流れを許容し、且つ、前記空気の流れる方向に見た状態で前記光の通過を遮蔽する遮光部材が設けられ、前記遮光部材が、前記流路に配置される枠体と、前記枠体に形成され、それぞれ同一角度で傾斜させた状態で配列させた複数の遮光板とを有することを特徴とする空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−233074(P2009−233074A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82216(P2008−82216)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】