説明

有害生物防除剤散布用ノズルおよび有害生物防除剤散布装置ならびに有害生物防除剤散布方法

【課題】発泡成分を含む防除剤を使用する場合において防除剤を被散布面に確実に散布でき、しかも散布作業が容易となるノズルを提供する。
【解決手段】先端突出部18を有するヘッド部8を備えたノズル3。先端突出部18には、発泡成分を含む有害生物防除剤が噴出する複数の噴出孔21が形成されている。これら噴出孔21は、先端方向に向けて先端突出部の中心軸から離れる方向に傾斜している。これらのうち少なくとも2つの噴出孔21は、互いに周方向に間隔をおいて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管、側溝、グレーチングなどの内壁面に有害生物防除剤を散布するノズルおよびこれを用いた有害生物防除剤散布装置ならびに有害生物防除剤散布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排水管、側溝、グレーチングなどにおいて、コバエ等の不快害虫、ゴキブリ等の衛生害虫、コクゾウ等の貯蔵害虫などの有害生物を防除するためには、液状の殺虫・防虫剤などの有害生物防除剤を散布することが有効である。
図6は、防除剤を散布するノズルの一例を示すもので、このノズル33は、図示せぬ供給手段に接続された供給管2が接続される接続部34と、供給管2から供給された防除剤を散布するノズル本体35とを備えている。図6において、左方を先端方向または前方といい、右方を後方という。
ノズル本体35は、略半球状のヘッド部36と、後方に向け径が大きくなる略円錐台状の第1筒部37と、後方に向け徐々に径が大きくなる略円錐台状の第2筒部38とを備えている。
ヘッド部36、第1および第2筒部37、38には、それぞれ噴出孔36a、37a、38aが形成されており、これらは斜め後方に防除剤40を噴出させることができるよう形成されている。
【0003】
ノズル33では、防除剤の後方噴射のため、ヘッド部36および筒部37、38に外方突出部分(径方向外方に突出した部分)が必要となる。すなわち、ヘッド部36の後端部は第1筒部37の先端部に対し外方に張り出した形状とされ、同様に第1筒部37および第2筒部38の後端部も外方に張り出した形状となっており、これら多段に形成された突出部分の後面に噴出孔36a、37a、38aが形成されることによって防除剤が支障なく後方噴射される。
【0004】
図7に示すように、ノズル33を管路41に送り込み、噴出孔36a、37a、38aから防除剤を斜め後方に噴射する。この斜め後方の噴射によって、ノズル33は先端方向への推進力を得て管路41内を自走しつつ防除剤を散布する。散布作業が終了したら、供給管2を引き取ってノズル33を回収する。
この図において符号41Aは管路41の鉛直部分であり、符号41Bは鉛直部分41Aに対し垂直な水平部分である。
【0005】
図8は、防除剤を散布するノズルの他の例を示すもので、このノズル43は、供給管2が接続される接続部44と、防除剤を散布するノズル本体45とを備えている。
ノズル本体45は、基体部46と、基体部46から複数方向に突出する噴射部47とを有する。噴射部47は、接続部44における供給管2に対し垂直となるように形成されている。
ノズル43を用いて防除剤の散布を行うには、供給管2を繰り出してノズル43を管路41の奥に向けて送り込んで噴射部47から防除剤の散布を行う。
【0006】
液状の防除剤は、管路41の内壁面に散布した後、短時間で流失し、防除効果が低くなることがある。
そこで、近年では、界面活性剤などの発泡成分を防除剤に含有させて散布することが提案されている(例えば特許文献1を参照)。
発泡成分を含む防除剤は、泡状となるため内壁面に留まりやすく、有効成分を有害生物に長時間作用させることができることから、防除効果を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−238302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図6に示すノズル33に、発泡成分を含む防除剤を適用すると、泡状となった防除剤にノズル33が埋もれてしまい、十分な散布ができないことがある。
例えば、図7において、ノズル33が泡状の防除剤に埋没し、管路41の水平部分41Bの内壁面のうち天壁面や側壁面に防除剤が散布されず、防除効果が低くなることがあった。
また、図9に示すように、ノズル33では、散布終了後、供給管2を引き取ってノズル33を回収する際に、ノズル33の外方突出部分が管路41の屈曲部分41Cに引っかかってしまい、作業が滞ることがあった。
図8に示すノズル43では、構造が複雑であるため重量が大きく、管路41の奥に向けて送り込むのが難しくなることがあった。
また、図10に示すように、供給管2を引き取ってノズル43を回収する際に、管路41の屈曲部分41Cに噴射部47が引っかかってしまい、作業が滞ることがあった。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、発泡成分を含む防除剤を使用する場合において防除剤を被散布面に確実に散布でき、しかも散布作業が容易となるノズルおよびこれを用いた有害生物防除剤散布装置ならびに有害生物防除剤散布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1にかかる発明は、発泡成分を含む有害生物防除剤を散布するノズルであって、先端突出部が形成されたヘッド部を有するノズル本体を備え、前記先端突出部には、先端面に開口して前記有害生物防除剤が噴出する複数の噴出孔が形成され、これら複数の噴出孔は、先端方向に向けて先端突出部の中心軸から離れる方向に傾斜しており、これらのうち少なくとも2つの噴出孔は、周方向に間隔をおいて形成されている有害生物防除剤散布用ノズルである。
本発明の請求項2にかかる発明は、請求項1において、前記噴出孔が、前記先端突出部の中心を中心とする第1の円に沿って配列した複数の第1列噴出孔と、前記第1の円と同心でこれより径が大きい第2の円に沿って配列した複数の第2列噴出孔とを有する有害生物防除剤散布用ノズルである。
本発明の請求項3にかかる発明は、請求項2において、前記第1列噴出孔と、前記第2列噴出孔とは、互いに周方向位置を違えて形成されている有害生物防除剤散布用ノズルである。
本発明の請求項4にかかる発明は、請求項1〜3のうちいずれか1項において、前記先端突出部が、先端方向に徐々に外径が小さくなる略円錐状に形成されている有害生物防除剤散布用ノズルである。
本発明の請求項5にかかる発明は、請求項1〜4のうちいずれか1項において、前記ヘッド部の最大径が、前記有害生物防除剤散布用ノズルの最大径に相当する有害生物防除剤散布用ノズルである。
本発明の請求項6にかかる発明は、請求項1〜5のうちいずれか1項において、前記ノズル本体の先端方向とは反対側の端部に、前記ノズル本体に有害生物防除剤を供給する供給管が接続される接続部が形成され、前記ノズル本体の外径は、前記接続部に接続される供給管の外径とほぼ同等またはこれより小さくされている有害生物防除剤散布用ノズルである。
本発明の請求項7にかかる発明は、請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の有害生物防除剤散布用ノズルと、この有害生物防除剤散布用ノズルに前記有害生物防除剤を供給する供給手段を備えている有害生物防除剤散布装置である。
本発明の請求項8にかかる発明は、請求項7に記載の有害生物防除剤散布装置を用いて有害生物防除剤を散布する方法であって、前記供給手段を引き取って前記有害生物防除剤散布用ノズルを前記先端方向とは反対方向に移動させつつ、前記有害生物防除剤を前記噴出孔から噴出させることにより散布を行う有害生物防除剤散布方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヘッド部に、先端方向に向けて中心軸から離れる方向に傾斜した噴出孔が、周方向に間隔をおいて複数形成されているので、防除剤を多方向に噴射できる。また、供給管を引き取ってノズルを後方移動させつつ散布を行うことにより、ノズルを防除剤に埋没させることなく防除剤の散布が可能となる。
このため、被散布面の全体に防除剤を散布できる。
また、先端突出部の先端面に噴出孔が形成されているため、突出部分がなく、しかも全体のサイズ(外径および全長)を小さくできることから、複雑な形状の管路等に使用しても屈曲部分等にノズルが引っかかって作業が滞ることがない。
また、噴出孔が複数形成されているため、ノズルに送られてくる防除剤に大きな気泡が含まれていても、この気泡を構成するガスが分散されて短時間で放出される。このため、防除剤が断続的に噴出されることによるノズルの跳ね返りを防ぐことができる。よって、作業性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の有害生物防除剤散布用ノズルの一例を示す側面図である。
【図2】有害生物防除剤散布装置を模式的に示す構成図である。
【図3】ノズルの内部構造を示す側面図である。
【図4】ノズルの前面図である。
【図5】ノズルの使用方法を説明する説明図である。
【図6】従来のノズルの一例を示す側面図である。
【図7】ノズルの使用方法を説明する説明図である。
【図8】従来のノズルの他の例を示す側面図である。
【図9】ノズルの使用方法を説明する説明図である。
【図10】ノズルの使用方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の有害生物防除剤散布用ノズルの一例である噴射ノズル3を示す側面図である。図2は、噴射ノズル3を用いた有害生物防除剤散布装置10を模式的に示す構成図である。図3は、噴射ノズル3の内部構造を示す側面図である。図4は、噴射ノズル3の前面図である。図5は、噴射ノズル3の使用方法を説明する説明図である。
【0013】
図2に示すように、散布装置10は、発泡成分を含む有害生物防除剤(以下、単に防除剤ということがある)が貯留されている容器である供給手段1と、供給管2を介して供給手段1に接続された噴射ノズル3(有害生物防除剤散布用ノズル)とを備えている。
供給管2は、柔軟性を有するものが好ましく、耐圧性の高い樹脂材料、特にナイロン繊維、ポリエステル繊維などの合成繊維などで補強された樹脂材料が好ましい。
供給管2および供給手段1には、空気送入管4が接続されている。空気送入管4は、供給手段1内の圧力を高めるとともに、供給管2内の防除剤に空気を供給してこの防除剤を泡状にすることができる。
【0014】
図1に示すように、噴射ノズル3は、ノズル本体5と、このノズル本体5の後端に取り付けられて供給管2が接続される接続部6とを有する。
図1において、左方は噴射ノズル3の先端方向であり、以下の説明ではこの方向を前方といい、その反対方向、すなわち基端方向を後方ということがある。
【0015】
ノズル本体5は、基体部7と、その先端に設けられたヘッド部8とを備えている。
図3に示すように、基体部7は、円筒状の筒体部11と、筒体部11の先端から先端方向に徐々に径が小さくなる略円錐台状の縮径部12とを有する。
基体部7には、筒体部11の後端面11aから先端方向に向けて、接続部6が嵌合する嵌合凹部13が形成されている。嵌合凹部13の内面には、接続部6のネジ部(図示略)に嵌合可能なネジ部14が形成されている。
【0016】
ヘッド部8は、縮径部12の先端から先端方向に徐々に外径が大きくなる略円錐台状の拡径部16と、拡径部16の先端側に形成された定径部17と、定径部17の先端側に形成された先端突出部18とを有する。
ヘッド部8の最大径(図示例では定径部17の外径)は、基体部7の最大径(図示例では筒体部11の外径)にほぼ等しいか、またはこれより小さいことが好ましい。図示例では、定径部17の径は筒体部11の径にほぼ等しい。
ヘッド部8の最大径は、接続部6の最大径にほぼ等しいか、またはこれより小さいことが好ましい。図示例では、定径部17の径は接続部6の最大径にほぼ等しいため、ヘッド部8の最大径は噴射ノズル3の最大径に相当する。
ノズル本体5の外径は、供給管2の外径とほぼ同等またはこれより小さくすることができる。
【0017】
基体部7およびヘッド部8の内部には、嵌合凹部13に連通する中空部20が形成されている。
中空部20は、防除剤の流路となるもので、断面略円形とされ、基体部7からヘッド部8にかけて形成されている。
【0018】
先端突出部18は、先端に向けて徐々に外径が小さくなる略円錐状に形成されている。
先端突出部18には、先端面18cに開口する複数の噴出孔21が形成されている。
図4に示すように、噴出孔21は、先端突出部18の中心18a(頂点)を中心とする第1の円22aに沿って配列した複数の第1列噴出孔21Aと、第1の円22aと同心で第1の円22aより径が大きい第2の円22bに沿って配列した複数の第2列噴出孔21Bとを有する。
【0019】
第1列噴出孔21Aは周方向に間隔をおいて形成することができる。第2列噴出孔21Bも周方向に間隔をおいて形成することができる。
図示例では、噴出孔21は、周方向に等間隔に形成された6つの第1列噴出孔21Aと、周方向に等間隔に形成された6つの第2列噴出孔21Bを有し、噴出孔21Aと、噴出孔21Bは、互いに周方向位置を違えて形成されている。
なお、図示例では、複数の噴出孔21のすべてが互いに周方向に間隔をおいて形成されているが、本発明では、複数の噴出孔のうち少なくとも2つの噴出孔が互いに周方向に間隔をおいて形成されていればよい。
【0020】
図3に示すように、噴出孔21は、先端方向に対し傾斜して形成されている。この傾斜方向は、先端方向に向けて先端突出部18の中心軸18bから離れる方向とされている。図示例では、噴出孔21は一定角度で傾斜している。
先端方向に対する傾斜角度αは、小さすぎれば管路41の内壁面全体に届きにくくなり、大きすぎれば噴出した泡状の防除剤に噴射ノズル3が埋没しやすくなる。このため、傾斜角度αは、例えば30〜60度とすることができる。傾斜角度αをこの範囲にすることによって、防除剤を管路41の内壁面全体に届かせることができ、しかも噴射ノズル3の埋没が起こりにくくなる。
【0021】
図示例の第1列噴出孔21Aと第2列噴出孔21Bはほぼ同じ角度で傾斜しており、この傾斜方向は、当該噴出孔21A、21Bの開口位置における先端面18cに対しほぼ垂直である。
なお、中心軸18bの方向は先端方向と同じ方向である。
ノズル本体5は、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金などの金属で形成するのが好ましい。
図1に示すように、接続部6は、ノズル本体5の後端から後方に突出して形成された筒状体であり、供給管2が被せられることにより接続される。
【0022】
本発明では、殺虫剤、防虫剤、殺菌剤および防かび剤などを有害生物防除剤として使用できる。例えばコバエなどの不快害虫、ゴキブリなどの衛生害虫、コクゾウやヒラタコクヌストモドキのような貯蔵害虫などに対して有効なものを使用できる。
【0023】
有害生物防除剤に含まれる有効成分の具体例としては、例えば1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル クリサンテマート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル 2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシラート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)ベンジル 2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシラート、2−メチル−3−(2−プロピニル)−4−オキソ−シクロペント−2−エニル クリサンテマート、α−シアノ−3−フェノキシベンジル クリサンテマート、2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル 3−フェノキシベンジル エーテル、3−フェノキシベンジル クリサンテマート、O,O−ジメチル O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)フォスフォロチオエート、エチルアルコール、3−ヨードプロパルギル n−ブチルカーバメートなどを挙げることができる。
また、IGR剤(IGR:Insect Growth Regulator)や植物抽出成分も使用できる。IGR剤としては、例えば幼若ホルモンアナログ(ピリプロキシフェン)、キチン合成インヒビター(フェノキシカルボ、ジフルベンズロン、ビストリフルロン、ヘキサフルムロン)、トリアジン誘導体(シロマジン)がある。植物抽出成分としては、アザジラクチン、ピレトリンなどがある。
有効成分の配合量は、0.0001〜10質量%とすることができる。
【0024】
有害生物防除剤は、上記有効成分と発泡成分を含有する溶液とすることができる。
具体的には、例えば上記有効成分、発泡成分、グリコールエーテル系水溶性溶剤、担体粉末、および水を含有するものを挙げることができる。
発泡成分としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などの界面活性剤が使用できる。
アニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばステアリン酸塩、ラウリル硫酸塩、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、ジチリオン酸エステル塩、パルミチン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、アルキルスルフォネートなどが使用できる。
ノニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばポリエチレングリコール型、多価アルコール型のものを使用できる。
界面活性剤の配合量は例えば0.01〜10質量%とすることができる。
【0025】
グリコールエーテル系水溶性溶剤としては、メチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシルなどの脂肪族のエチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテルなどの水溶性のグリコールエーテルがある。特にエチレングリコールモノイソブチルエーテルが好ましい。
グリコールエーテル系水溶性溶剤の配合量は、例えば0.1〜1質量%とすることができる。
グリコールエーテル系水溶性溶剤の配合によって、発泡状態を長時間維持できる。
担体粉末としては、平均粒径0.5〜50μmのものが使用できる。担体粉末の配合によって、発泡状態の持続時間を長くできる。
また、泡の安定性を高めるため、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなどの増粘剤を添加することも可能である。
【0026】
次に、散布装置10を用いて有害生物防除剤を散布する方法について説明する。
図2に示すように、防除剤を供給手段1に入れ、空気送入管4によって空気を送入して供給手段1内の圧力を高めておく。
図5に示すように、防除剤の供給を行わない状態で、供給管2を繰り出してノズル3を管路41の奥に向けて送り込む。
供給管2に設けられた開閉弁(図示略)を操作することによって、供給手段1内の防除剤を、供給管2を通して噴射ノズル3に送る。この際、空気送入管4から供給管2に空気を供給することによって、供給管2内の防除剤を泡状にする。
【0027】
図3に示すように、防除剤は接続部6を通して中空部20に導入され、ヘッド部8の噴出孔21を通して外部に噴出する。
噴出孔21は、先端方向に向けて中心軸18bから離れる方向に傾斜して形成されているため、防除剤はこの方向に噴出する。すなわち、図1に示すように、防除剤23は斜め前方に噴出する。
【0028】
図1および図4および図5に示すように、噴出孔21は周方向に間隔をおいて複数形成されているため、これら噴出孔21からの防除剤23も互いに異なる多方向に噴出し、管路41の内壁面(被散布面)に散布される。
防除剤23は多方向に噴出するため、例えば管路41の水平部分41Bの天壁面や側壁面にも散布が可能となる。
【0029】
本発明では、防除剤が泡状となるため流失しにくく、有効成分を有害生物に長時間作用させることができ、防除効果を高めることができる。
このため、有効成分としてIGR剤などの低毒性のものを使用しても十分な防除効果が得られる。したがって、安全性の点で優れている。
【0030】
図5に示すように、防除剤23の散布は、供給管2を引き取ることにより噴射ノズル3を移動させつつ行うことが好ましい。すなわち、噴射ノズル3を先端方向とは反対の方向(後方)に移動させつつ防除剤23の散布を行うことが好ましい。
防除剤23の噴出方向は斜め前方であるため、噴射ノズル3が泡状の防除剤に埋没することはなく、管路41の内壁面の全体に確実に防除剤を散布することができる。
【0031】
噴射ノズル3は、ヘッド部8に、先端方向に向けて中心軸18bから離れる方向に傾斜した噴出孔21が、周方向に間隔をおいて複数形成されているので、防除剤を多方向に噴射できる。このため、管路41の内壁面の全体に防除剤を散布できる。
また、図7に示すように、防除剤の後方噴射によりノズル33を先端方向に自走させつつ防除剤を散布する方法では、散布終了後、ノズル33の回収の際に、管路41内壁面の防除剤が供給管2等により掻き取られるおそれがあるが、図5に示すように、供給管2を引き取って噴射ノズル3を後方移動させつつ散布を行う方法によれば、管路41内壁面の防除剤が供給管2等により掻き取られることがない。
【0032】
上述のように、図6に示すノズル33では、ヘッド部36および筒部37、38に、防除剤の後方噴射のため、噴出孔36a〜38aが形成される外方突出部分(径方向外方に突出した部分)が多段に形成されている。図8に示すノズル43も、外方に突出した噴射部47を有する。このため、図9および図10に示すように、外方突出部分が管路41の屈曲部分41C等に引っかかってしまい、作業が滞ることがあった。
これに対し、図1に示す噴射ノズル3は、斜め前方噴射のための噴出孔21が先端突出部18の先端面18cに形成されている構造である。よって、外方突出部分を形成する必要がなく、外径を小さくできる。
また、噴出孔21は、十分な面積を有する先端突出部18の先端面18cに形成されているため、形成数の自由度が高いことから、図6に示すノズル33と異なり、噴出孔の形成数の確保のため多段化の必要はなく、全長を短くできる。
【0033】
このように、噴射ノズル3では、外方突出部分がなく、しかも全体のサイズ(外径および全長)を小さくできることから、複雑な形状の管路41等に使用しても屈曲部分41C等に引っかかって作業が滞ることがない。
また、噴出孔21が複数形成されているため、噴射ノズル3に送られてくる防除剤に大きな気泡が含まれていても、この気泡を構成するガスが分散されて短時間で放出される。このため、防除剤が断続的に噴出されることによる噴射ノズル3の跳ね返りを防ぐことができる。よって、作業性が良好となる。
【0034】
なお、図1に示す噴射ノズル3では、先端突出部18が略円錐状に形成されているが、先端突出部の先端面形状はこれに限定されず、例えば略球面状、略円錐台状、略角錐状などとすることができる。
本発明は、排水管、側溝、グレーチングなどに適用できる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・供給手段、
2・・・供給管、
3・・・噴射ノズル(有害生物防除剤散布用ノズル)、
5・・・ノズル本体、
8・・・ヘッド部、
10・・・有害生物防除剤散布装置、
18・・・先端突出部、
18b・・・中心軸、
18c・・・先端面、
21・・・噴出孔、
21A・・・第1列噴出孔、
21B・・・第2列噴出孔、
22a・・・第1の円、
22b・・・第2の円。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成分を含む有害生物防除剤を散布するノズルであって、
先端突出部が形成されたヘッド部を有するノズル本体を備え、前記先端突出部には、先端面に開口して前記有害生物防除剤が噴出する複数の噴出孔が形成され、
これら複数の噴出孔は、先端方向に向けて先端突出部の中心軸から離れる方向に傾斜しており、これらのうち少なくとも2つの噴出孔は、周方向に間隔をおいて形成されていることを特徴とする有害生物防除剤散布用ノズル。
【請求項2】
前記噴出孔は、前記先端突出部の中心を中心とする第1の円に沿って配列した複数の第1列噴出孔と、前記第1の円と同心でこれより径が大きい第2の円に沿って配列した複数の第2列噴出孔とを有することを特徴とする請求項1に記載の有害生物防除剤散布用ノズル。
【請求項3】
前記第1列噴出孔と、前記第2列噴出孔とは、互いに周方向位置を違えて形成されていることを特徴とする請求項2に記載の有害生物防除剤散布用ノズル。
【請求項4】
前記先端突出部は、先端方向に徐々に外径が小さくなる略円錐状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の有害生物防除剤散布用ノズル。
【請求項5】
前記ヘッド部の最大径は、前記有害生物防除剤散布用ノズルの最大径に相当することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の有害生物防除剤散布用ノズル。
【請求項6】
前記ノズル本体の先端方向とは反対側の端部に、前記ノズル本体に有害生物防除剤を供給する供給管が接続される接続部が形成され、
前記ノズル本体の外径は、前記接続部に接続される供給管の外径とほぼ同等またはこれより小さくされていることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の有害生物防除剤散布用ノズル。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の有害生物防除剤散布用ノズルと、この有害生物防除剤散布用ノズルに前記有害生物防除剤を供給する供給手段を備えていることを特徴とする有害生物防除剤散布装置。
【請求項8】
請求項7記載の有害生物防除剤散布装置を用いて有害生物防除剤を散布する方法であって、
被散布面に対して前記供給手段を引き取って前記有害生物防除剤散布用ノズルを前記先端方向とは反対方向に移動させつつ、前記有害生物防除剤を前記噴出孔から噴出させることにより散布を行うことを特徴とする有害生物防除剤散布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−246461(P2010−246461A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99174(P2009−99174)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000101938)イカリ消毒株式会社 (33)
【出願人】(501496175)環境機器株式会社 (5)
【Fターム(参考)】