説明

有機エレクトロルミネッセンス装置及び電子機器

【課題】画素の高精細化と迷光の抑制とを両立した有機EL装置を提供する。
【解決手段】基板10と、基板10上で隣り合う第1有機EL素子20Bおよび第2有機EL素子20Gと、第1有機EL素子20Bと第2有機EL素子20Gとを覆い、基板10と密着した保護層30と、保護層30に積層したカラーフィルター層40と、カラーフィルター層40の上に金属材料を用いて形成された、第1有機EL素子20Bおよび第2有機EL素子20Gと平面的に重なる開口部51を有する遮光層50と、を備え、カラーフィルター層40は、第1有機EL素子と平面的に重なる第1着色層41Bと、第1着色層41Bとは異なる波長の光を吸収し第2有機EL素子20Gと平面的に重なる第2着色層41Gと、を有し、第1着色層41Bと第2着色層41Gとは、遮光層50と平面的に重なる領域において、第1着色層41Bの端部と第2着色層41Gの端部とが接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平面型の表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス装置(以下、有機EL装置)が知られている。近年では、有機EL装置の利用分野として、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、電子ビューファインダー(EVF)等、装置の小型化が要求される分野への適用が検討されており、有機EL装置自身の小型化が求められている。
【0003】
有機EL装置においては、画素を形成する有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子)からの光の射出方向に、カラーフィルターを設ける構成が知られている。このような構成とすることにより、有機EL素子が白色光を射出する場合には、容易にカラー表示が可能となる。また、有機EL素子が色光を射出する場合には、射出する色光の色純度を高めることが可能となる。
【0004】
このようなカラーフィルターを有する有機EL装置においては、画素間の領域に光を吸収する物質を用いてブラックマトリクス(遮光層)を形成する構成が用いられる(例えば、特許文献1参照)。ブラックマトリクスは、外光を吸収することでコントラストを向上させ、また、ある画素から、当該画素に隣接し他の色を表示する画素の方に向けて射出される光(迷光)を吸収し、混色を抑制する機能を有している。
【0005】
ブラックマトリクスの形成材料としては、一般に黒色の物質を含む樹脂材料が用いられ、通常知られたフォトリソグラフィー法を用いることにより、画素間領域にブラックマトリクスが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−212235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記構成には次のような問題がある。すなわち、フォトリソグラフィー工程のような湿式工程を用いて形成されるブラックマトリクスは、乾式工程で形成される場合と比べて高精細化に不向きである。そのため、例えば上述したHMDやEVFのように、小型化されることにより結果として画素の高精細化が求められる分野で使用される有機EL装置では、湿式工程を用いてなるブラックマトリクスは採用しにくい。
【0008】
このような事情から、画素の高精細化と迷光の抑制とを両立した有機EL装置を提供するが求められている。また、このような有機EL装置を有し、高品質な画像表示が可能な電子機器を提供することも求められている。
【0009】
ところで、小型の有機EL装置においては、有機EL素子とカラーフィルターとの位置ずれを低減するために、カラーフィルターを有機EL素子が形成された基板に形成する構成が検討されている。
【0010】
有機EL素子が形成された基板上にカラーフィルターを形成する場合、金属材料を用いて画素間に遮光層を形成し、該遮光層を隔壁として用いてカラーフィルターを形成する構成が提示されている。このように、遮光層を金属材料で形成する場合、上述のように樹脂材料を用いてブラックマトリクスを形成する場合と異なり、乾式工程で形成することが可能であるため、高精細化が可能である。
【0011】
しかし、このような構成では、新たな課題が生じる。すなわち、金属材料を用いた遮光層は高い反射率を有するため、カラーフィルター間に形成すると、有機EL素子から斜め方向に出射された色光は遮光層により有機EL素子側に反射される。反射された光は、さらに有機EL素子の電極などで反射し、再びカラーフィルター側に出射するおそれがある。そのため、異なる画素から射出される迷光が生じ、画質が低下しやすくなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、鋭意検討した結果、上記課題を解決するに至った。すなわち、上記の課題を解決するため、本発明の有機エレクトロルミネッセンス装置は、基板と、前記基板上で隣り合う第1発光素子および第2発光素子と、前記第1発光素子と前記第2発光素子とを覆い、前記基板と密着した保護層と、前記保護層に積層した着色層と、前記着色層の上に金属材料を用いて形成された、前記第1発光素子および前記第2発光素子と平面的に重なる開口部を有する遮光層と、を備え、前記着色層は、前記第1発光素子と平面的に重なる第1着色層と、該第1着色層とは異なる波長の光を吸収し前記第2発光素子と平面的に重なる第2着色層と、を有し、前記第1着色層と前記第2着色層とは、前記遮光層と平面的に重なる領域において、前記第1着色層の端部と前記第2着色層の端部とが接していることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、隣接する第1着色層と第2着色層とは、端部が接して設けられているため、この互いに接している部分においては、例えば第2発光素子から第1発光素子側へ斜め方向に出射された迷光が、遮光層に達する前に、または遮光層で反射された後に、必ず着色層を通過する。その際、第1着色層と第2着色層とが協働して幅広い波長帯の光を吸収し、迷光が減衰するため、遮光層で反射した迷光の光量を減少させることができ、画素の高精細化と迷光の抑制とを両立した有機EL装置を提供することが可能となる。
【0014】
本発明においては、前記第1着色層の端部と前記第2着色層の端部とが重なっていることが望ましい。
この構成によれば、着色層の重なり部分においては、迷光の減衰が一層促進されるため、高品質な画像表示が可能となる。
【0015】
本発明においては、前記着色層と前記遮光層との間に、樹脂を含む平坦化層が設けられていることが望ましい。
第1着色層と第2着色層との端部が重なっているため、着色層の表面には凹凸が生じる。このような凹凸を有する面上には、高精細な開口パターンを有する遮光層を形成することが困難となる。しかし、この構成においては、着色層と遮光層との間に平坦化層を有するため、遮光層を形成する面に凹凸が生じず、高精細な遮光層を形成しやすくなる。
【0016】
本発明においては、前記着色層と前記遮光層との間に、保護層が設けられていることとしてもよい。
この構成においては、着色層を保護することができ、破損し難い有機EL装置を提供することが可能となる。例えば、保護膜をスピンオングラス膜で形成する場合、スピンオングラス膜は、液状の形成材料を塗布した後に硬化させて形成する無機膜であるため、保護膜が着色層の表面の凹凸を均すことができる平坦化層としても機能する。そのため、着色層を保護するとともに、高精細な遮光層を形成しやすく、画素の高精細化に資する構成となる。
【0017】
また、本発明の電子機器は、上述の有機エレクトロルミネッセンス装置を用いた表示部を有する。
この構成によれば、高品質な画像表示が可能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の有機EL装置を示す概略断面図である。
【図2】第1実施形態の有機EL装置を示す拡大断面図である。
【図3】第1実施形態の有機EL装置を示す概略斜視図である。
【図4】第2実施形態の有機EL装置を示す拡大断面図である。
【図5】第2実施形態の有機EL装置を示す概略斜視図である。
【図6】第2実施形態の有機EL装置の変形例を示す拡大断面図である。
【図7】電子機器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、図1〜3を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス装置(有機EL装置)について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0020】
図1は、本実施形態の有機EL装置1を示す概略断面図である。図に示すように、本実施形態の有機EL装置1は、不図示の駆動素子等が形成された基板10と、基板10上に形成された複数の有機EL素子(発光素子)20と、有機EL素子20を覆い基板10と密着して設けられた保護層30と、保護層30に積層して形成されたカラーフィルター層40と、カラーフィルター層40の上に形成された遮光層50と、を有している。
【0021】
複数の有機EL素子20は、それぞれの有機EL素子20が有する画素電極21と、画素電極21に対向して設けられた陰極22と、画素電極21と陰極22とに挟持して設けられた発光部23とを有している。
【0022】
保護層30は、陰極22上に形成された第1封止層31と、第1封止層31上に形成された平坦化層32と、平坦化層32上の全面を覆って形成された第2封止層33とを有している。
【0023】
カラーフィルター層40には、有機EL素子20と平面的に重なる複数の着色層が形成されている。図では、各着色層を、色毎に符号41B,41G,41Rで示している。詳しくは後述する。
【0024】
遮光層50は、複数の有機EL素子20と対応して設けられ、有機EL素子20と平面的に重なる複数の開口部51を有している。
【0025】
本実施形態の有機EL装置1では、発光部23で生じる光が、陰極22を介して外部へ射出されるトップエミッション方式を採用している。また、有機EL装置1では、有機EL素子20がマトリクス状に配列形成されており、画像表示を行う。
【0026】
図2は、有機EL装置1の拡大断面図であり、図1の一部拡大図である。以下、図を参照しながら、各構成について詳細に説明する。
【0027】
基板10は、を構成する基板本体は、光透過性を備える透明基板、及び光透過性を備えない不透明基板のいずれも用いることができる。このような基板としては、例えばガラス、石英ガラス、窒化ケイ素等の無機物や、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の有機高分子(樹脂)を用いることができる。また、これら材料を積層または混合して形成された複合材料を用いることもできる。
【0028】
基板10の上には、複数の画素電極21が形成されている。画素電極21は、光透過性を有する導電性材料で形成されている。画素電極21の形成材料としては、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の金属酸化物を挙げることができる。
【0029】
また、画素電極21と基板10との間には、光反射性を有する材料で形成された反射層24が形成されている。図では、反射層24は画素電極21と1対1で形成されているが、全ての画素電極21に共通して1つの反射層24を形成することとしてもよい。反射層24の形成材料としては、例えばアルミニウムを挙げることができる。
【0030】
さらに、反射層24と画素電極21との間には、反射層保護膜25が形成されている。反射層保護膜25は、各画素電極21と1対1で形成されている。反射層保護膜25の形成材料には絶縁性を有するものが用いられ、無機材料や有機材料を適宜選択することができる。反射層保護膜25の層厚は、各画素電極21に応じて、すなわち各有機EL素子20に応じて設定されている。
【0031】
隣り合う画素電極21の間の領域には絶縁層29が設けられ、画素電極21間の短絡を抑制している。
【0032】
画素電極21および絶縁層29の表面を覆って全面に、発光部23が設けられている。発光部23には、互いに異なる色光を射出する複数の発光層、正孔注入層、正孔輸送層,キャリア輸送層、電子注入層など、通常知られた各種の機能層が積層して設けられている。
【0033】
発光部23が有する複数の発光層は、それぞれの発光層から射出される色光が混色して白色光となるように設計されている。このような発光層としては、赤色光を射出する赤色発光層、青色光を射出する青色発光層、および緑色光を射出する緑色発光層が積層して形成されていることとしてもよく、また、青色発光層と、黄色光を射出する黄色発光層とが積層して形成されていることとしてもよい。
【0034】
発光部23の上には、陰極22が形成されている。陰極22は、Mg(マグネシウム)とAg(銀)との共蒸着により形成した共蒸着層を用いて形成されている。
【0035】
このような陰極22は、MgとAgとの共蒸着比、および膜厚を制御することにより、半透過半反射性を有する。その結果、反射層24と陰極22とは、発光部23から射出された光を共振させる光共振器を構成する。この光共振気では、反射層24と陰極22との間の光学的距離に対応した共振波長の条件を満たす光のみが増幅され、陰極22側から特定のピーク波長の色光が取り出される構成となっている。
【0036】
このような構成の有機EL素子20では、例えば、反射層保護膜25の膜厚を変更し、反射層24と陰極22との離間距離を変更することで、複数の有機EL素子20毎に共振波長を変更し、射出される光の波長を制御することができる。図では、複数の有機EL素子20が、青色光を射出する第1有機EL素子(第1発光素子)20B,緑色光を射出する第2有機EL素子(第2発光素子)20G,赤色光を射出する第3有機EL素子20Rを含むこととして示している。
【0037】
陰極22の上には、陰極22の表面を覆って全面に、第1封止層31が形成されている(図1参照)。第1封止層31は、陰極22や発光部23の破損を抑制する機能を有する。また、有機EL素子20への水分の浸入を防ぐガスバリア層としての機能も兼ね備える。
【0038】
第1封止層31はECRスパッタ法やイオンプレーティング法などの高密度プラズマ成膜法を用いて形成することができる。形成前には、陰極22の表面に酸素プラズマ処理を行い、形成する膜の密着性を向上させることが好ましい。第1封止層31は、透明性や密着性、耐水性、絶縁性、更にはガスバリア性を考慮して、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコンなどのケイ素化合物で構成することが望ましい。
【0039】
なお、本実施形態においては、第1封止層31を単層で形成しているが、複数層で積層してもよい。例えば、低弾性率の下層と高耐水性の上層とで第1封止層31を構成してもよい。
【0040】
第1封止層31の上には、平坦化層32が形成されている。平坦化層32は、光透過性を有し、有機EL素子20の形状の影響により、凹凸状に形成された第1封止層31の凹凸部分を埋めるように配置される。さらに、平坦化層32の上面は略平坦に形成される。
【0041】
平坦化層32の形成材料としては、硬化性の樹脂材料が好適に用いられ、例えば、光硬化性のエポキシ樹脂を好適に用いることができる。光硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂と比べて硬化収縮が小さいため、残留応力が小さく、有機EL素子20の破損を抑制することができ好ましい。
【0042】
平坦化層32の上には、平坦化層32の端部を含め全面を被覆し(図1参照)、且つ第1封止層31の全面を覆う第2封止層33が形成されている。第2封止層33は、酸素や水分が浸入するのを防止する機能をする。平坦化層32の上面が略平坦化されるので、第2封止層33の表面も平坦化されて形成されている。
【0043】
第2封止層33は、上述の第1封止層31と同様の形成材料を用いて形成することができ、ECRスパッタ法やイオンプレーティング法などの高密度プラズマ成膜法を用いて形成することができる。形成前には、形成面の酸素プラズマ処理を行って形成した膜の密着性を向上させることが好ましい。なお、本実施形態においては、第2封止層33を単層で形成しているが、複数層で積層してもよい。
【0044】
保護層30上には、カラーフィルター層40が形成されている。カラーフィルター層40には、各有機EL素子20から射出される色光と同色の着色層が含まれている。
【0045】
着色層の各々は、複数の有機EL素子20に対向して配置されている。すなわち、第1有機EL素子20Bと平面的に重なって、青色の第1着色層41Bが形成され、第2有機EL素子20Gと平面的に重なって、緑色の第2着色層41Gが形成され、第3有機EL素子20Rと平面的に重なって、赤色の第3着色層41Rが形成されている。
【0046】
これにより、各有機EL素子から射出された色光は、各色の着色層を透過し、一層色純度が高い赤色光、緑色光、青色光として観察者側に射出され、カラー表示が可能となっている。
【0047】
本実施形態のカラーフィルター層40では、隣り合う着色層が、対向する端部で接して形成されている。図では、第1着色層41Bと第2着色層41G、および第2着色層41Gと第3着色層41Rが、それぞれ端部で接して形成されている。図では、着色層が接している部分を符号αで示している。
【0048】
カラーフィルター層40の上には、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコンなどのケイ素化合物やアルミナなどの光透過性の無機材料を形成材料とする保護層49が形成されている。
【0049】
保護層49の上には、遮光層50が形成されている。遮光層50の形成材料としては、金属材料が好適に用いられ、例えば、アルミニウムやクロム(低反射クロムを含む)が挙げられる。遮光層50は、例えば、保護層49上に上述の金属材料の薄膜を形成した後、ドライエッチングなどの乾式工程で格子状にパターニングされた開口部51を形成することにより得られる。乾式工程を用いることにより、高精細な開口部51を有する遮光層50とすることができる
【0050】
図3は、カラーフィルター層40と遮光層50との位置関係を示す概略斜視図である。図では、有機EL素子20を板状に略して図示している。また、カラーフィルター層40が有する各着色層が、一方向に帯状に延在して設けられていることとして示している。
【0051】
図に示すように、隣り合う着色層同士は、対向する端部で接しており、隙間無く配列している。また、遮光層50の開口部51は、複数の有機EL素子20と平面的に重なっている。すなわち、カラーフィルター層40において着色層同士が接する箇所(符号α)は、遮光層50と平面的に重なっている。
【0052】
以上のような構成により得られる効果について、図2を用いて説明する。ここでは、第2有機EL素子20Gから第1有機EL素子20B側に斜め方向に射出される緑色の光L1の挙動を示して、効果を説明する。
【0053】
第2有機EL素子20Gから射出される光L1は、金属材料で形成されている遮光層50で反射して装置内へ戻り、半透過半反射性を有する陰極22で再度反射した後に、第2有機EL素子20Gと隣接する第1有機EL素子20Bに面した開口部51から装置外部に射出されると想定される。第1有機EL素子20Bは青色の光を射出する素子であるため、光L1のような迷光成分が存在すると、混色し色再現性が低下する。
【0054】
しかし、本実施形態の有機EL装置1においては、カラーフィルター層40に含まれる第1着色層41B,第2着色層41Gが端部で接して隙間無く形成されているため、光L1が遮光層50に達する前に、または遮光層50で反射された後に、必ずカラーフィルターを通過する。その際、光L1は、着色層を透過する度に、着色層の吸光係数に応じた光量の光が吸収される。さらに、第1着色層41Bと第2着色層41Gとが協働して幅広い波長帯の光を吸収するため、光L1は、減衰した光L2と変化して装置外に射出される。図では、光L1と光L2とを表す矢印の大きさで光量を示している。
【0055】
したがって、有機EL装置1では、迷光成分が減少し、色再現性の低下を抑制することができる。本実施形態の有機EL装置1は、以上のような構成となっている。
【0056】
以上のような構成の有機EL装置1によれば、遮光層50で反射した迷光の光量を減少させることができるため、高精細化と迷光の抑制とを両立することができる。
【0057】
なお、本実施形態においては、着色層41B,41G,41Rが帯状であることとしたが、これに限らず、タイル状の着色層を隙間無く敷き詰めることによりカラーフィルター層を形成することとしてもよい。その場合であっても、隣り合う着色層が端部で接して隙間無く形成されることとするとよい。
【0058】
[第2実施形態]
図4〜6は、本発明の第2実施形態に係る有機EL装置2の説明図である。本実施形態の有機EL装置2は、第1実施形態の有機EL装置1と一部共通している。異なるのは、カラーフィルター層が有する着色層同士が、端部で互いに重なって形成されていることである。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0059】
図4は、本実施形態の有機EL装置2の拡大断面図であり、第1実施形態の図2に対応する図である。
【0060】
図に示すように、有機EL装置2が有するカラーフィルター層45は、第1有機EL素子20Bと平面的に重なって、青色の第1着色層46Bが形成され、第2有機EL素子20Gと平面的に重なって、緑色の第2着色層46Gが形成され、第3有機EL素子20Rと平面的に重なって、赤色の第3着色層46Rが形成されている。
【0061】
本実施形態のカラーフィルター層45では、隣り合う着色層が、対向する端部で平面的に重なって形成されている。図では、第2着色層41Gの端部が第1着色層41Bの端部に重なり、第3着色層41Rの端部が、第1着色層41Bの端部と第2着色層41Gの端部とに重なって形成されている。図では、着色層が重なっている部分を符号βで示している。
【0062】
また、カラーフィルター層45と遮光層50との間、図では、カラーフィルター層45と保護層49との間に、樹脂材料を形成材料とする平坦化層47が設けられている。平坦化層47は、光透過性を有し、着色層同士の重なりの影響で、凹凸状に形成されたカラーフィルター層45表面の凹凸部分が埋められている。さらに、平坦化層47の上面は略平坦に形成される。これにより、平坦化層47上に形成される保護層49は略平坦に形成され、高精細な開口パターンを有する遮光層50を形成しやすくなる。
【0063】
図5は、カラーフィルター層45と遮光層50との位置関係を示す概略斜視図であり、第1実施形態の図3に対応する図である。図に示すように、隣り合う着色層同士は、対向する端部で重なって、隙間無く配列している。また、遮光層50の開口部51は、複数の有機EL素子20と平面的に重なっている。すなわち、カラーフィルター層40において着色層同士が重なり合う箇所(符号β)は、遮光層50と平面的に重なっている。
【0064】
以上のような構成により得られる効果について、図4を用いて説明する。ここでは、第2有機EL素子20Gから第1有機EL素子20B側に斜め方向に射出される緑色の光L3の挙動を示して効果を説明する。
【0065】
本実施形態の有機EL装置2においては、カラーフィルター層45に含まれる第1着色層46B,第2着色層46Gが端部で重なって隙間無く形成されているため、第2有機EL素子20Gから斜め方向に射出される光L3が遮光層50に達する前に、または遮光層50で反射された後に、必ず第1着色層46B,第2着色層46Gの少なくとも一方を通過する。すると、光L3は、着色層を透過する度に、着色層の吸光係数に応じた光量の光が吸収され、減衰した光L4と変化して装置外に射出される。図では、光L3と光L4とを表す矢印の大きさで光量を示している。
【0066】
さらに、第1着色層46Bと第2着色層46Gとが重なる符号βで示す領域では、他の部分よりも着色層が厚く形成されている。光が物質中で吸収される吸収量は、物質の吸光係数と物質中の光の移動距離とに比例する(Lambert−beerの法則)ため、着色層が重なりあって厚く形成されている部分では、より多くの迷光を吸収することができる。
【0067】
したがって、有機EL装置2では、迷光成分が減少し、色再現性の低下を抑制することができる。本実施形態の有機EL装置2は、以上のような構成となっている。
【0068】
以上のような構成の有機EL装置2によっても、遮光層50で反射した迷光の光量を減少させることができるため、高精細化と迷光の抑制とを両立することができる。
【0069】
なお、本実施形態においては、カラーフィルター層45の上に樹脂製の平坦化層47と、保護層49とが設けられていることとしたが、これに限らず、図6に示す変形例の有機EL装置3のように、スピンオングラス膜を形成材料とする保護層48が設けられていることとしてもよい。
【0070】
スピンオングラス膜は、液状の形成材料を塗布して形成するため、保護層48の作成過程において、液状の形成材料がカラーフィルター層45の表面の凹凸を埋めるように配置され、保護層48を形成する。また、スピンオングラス膜は無機材料の膜であるため、外部からの衝撃に強く、ガスバリア性も高い。
【0071】
そのため、図6に示す有機EL装置3では、保護層48が第2実施形態の有機EL装置2における平坦化層47と保護層49とが一体となった機能を有することから、製造工程を簡略化することができる。また、保護層48の表面を平坦に形成することにより、高精細な遮光層50を形成しやすくなる。
【0072】
[電子機器]
次に、本発明の電子機器の実施形態について説明する。
【0073】
図7は、上述の有機EL装置を用いた電子機器の一例を示す斜視図である。図6に示すヘッドマウントディスプレイ(電子機器)100は、観察者Xの両目に画像表示をさせる小サイズの表示部110と、表示部110と観察者Xの両目との相対位置を固定するフレーム120と、を有している。その他、ヘッドマウントディスプレイ100は、表示部110を駆動させる不図示の駆動部や、各種の光学系を有している。
【0074】
このようなヘッドマウントディスプレイ100では、表示部に上述の有機EL装置を採用することにより、高品質な画像表示が可能となる。
【0075】
なお、本発明の有機EL装置は、ヘッドマウントディスプレイ100に限らず、電子ビューファインダー(EVF)や携帯電話の表示画面など、高精細が要求される種々の機器の表示部として好適に用いることができる。さらに、これらの小型の電子機器に限らず、高精細が要求される機器の表示部に本発明の有機EL装置を採用することが可能である。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0077】
1〜3…有機エレクトロルミネッセンス装置、10…基板、20B…第1有機EL素子(第1発光素子)、20G…第2有機EL素子(第2発光素子)、30…保護層、40,45…カラーフィルター層、41B,46B…第1着色層、41G,46G…第2着色層、47…平坦化層、48…保護層、50…遮光層、51…開口部、100…ヘッドマウントディスプレイ(電子機器)、110…表示部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上で隣り合う第1発光素子および第2発光素子と、
前記第1発光素子と前記第2発光素子とを覆い、前記基板と密着した保護層と、
前記保護層に積層した着色層と、
前記着色層の上に金属材料を用いて形成された、前記第1発光素子および前記第2発光素子と平面的に重なる開口部を有する遮光層と、を備え、
前記着色層は、前記第1発光素子と平面的に重なる第1着色層と、該第1着色層とは異なる波長の光を吸収し前記第2発光素子と平面的に重なる第2着色層と、を有し、
前記第1着色層と前記第2着色層とは、前記遮光層と平面的に重なる領域において、前記第1着色層の端部と前記第2着色層の端部とが接していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
前記第1着色層の端部と前記第2着色層の端部とが重なっていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
前記着色層と前記遮光層との間に、樹脂を含む平坦化層が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
前記着色層と前記遮光層との間に、保護層が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス装置を用いた表示部を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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