説明

有機リン酸エステル暴露関連損傷を処置または防止するための物質および方法

神経剤および殺虫剤の形態の有機リン酸エステルに対する暴露によって生じる生理学的機能の損傷をその必要性のある対象において処置または防止する方法が提供される。この方法は、治療有効量のアセチルコリンエステラーゼ変異体AChE−R(「読み過ごし」AChE)を対象に与え、それにより、有機リン酸エステル暴露関連損傷を対象において処置することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機リン酸エステル暴露関連損傷を処置または防止するための物質および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機リン酸エステル(OP)系殺虫剤に対する偶発的(環境的または職業的)暴露および自ら招いた暴露(自殺)は、特に発展途上国世界では救急処置室において頻繁に見受けられる。これらの絶えることのない公衆衛生問題は、OP系神経剤(例えば、サリンなど)をテロおよび今までにない形の戦争の手段として使用する潜在的可能性についての増大する懸念によって強まる。OPは、シナプスのアセチルコリンエステラーゼ(AChE−S)を阻害し、これにより、シナプスでのアセチルコリンの蓄積および神経の過刺激を引き起こすことによって神経伝達を乱す。その後のニコチン性症状およびムスカリン性症状の重篤度は用量依存的であり、心臓血管虚脱および呼吸虚脱に起因して死に至らしめ得る。そのような最初の傷害を生き延びた人々は多くの場合、OP誘導による遅発性神経障害、筋力低下、永続的な脳の異常形態および社会的/行動的欠損を含めて、長期間の様々な後遺症を患う。
【0003】
OP遅延毒性および他のストレス性傷害(例えば、心理的ストレスまたは頭部外傷)の根底にある機構は、c−fosの急速な上昇と、それに続くACHE遺伝子のアップレギュレーションを伴う[Friedman、1996、Nat.Med.、2、1382〜1385]。
【0004】
ヒトおよびマウスのAChEプレmRNAは選択的スプライシング部位を3’端および5’端の両方に有しており、後者は、対応するプロモーターを有する。3’端での選択的スプライシングにより、タンパク質生成物多量体化能およびその細胞局在化を決定する異なるカルボキシ末端配列を有する3つのAChE変異体が生じる。シナプスAChE−Sは、神経系および神経筋接合部(NMJ)において発現される主要な転写物であり、ジスルフィド結合による二量体化を可能にするC末端システインを含有する。この二量体は、さらなる単量体の結合によって四量体を形成することができ、また、ColQおよびPRiMAの構造的サブユニットを介して膜に付着することができる。赤血球のAChE−E転写物は、タンパク質へのグリコホスファチジルイノシトール基の結合と、それに続く、赤血球膜への二量体としてのその固定を可能にするグリシル結合をそのC末端に含む。通常の場合には希な、ストレス誘導による「読み過ごし」のAChE−R変異体は、可溶性単量体のままである(例えば、米国特許第5932780号を参照のこと)。
【0005】
AChEの調節は主に転写レベルにおいて行われるが、幾分かの転写後調節が報告されており、後者は一般には、神経変性疾患に対する試みられた代償に関連する。AChE遺伝子座は、NF−κB、AP−1およびグルココルチコイド応答エレメントに属するエンハンサーを含めて、数個の推定される上流側エンハンサーを含有する。転写を増大させる条件には、細胞分化および抗コリンエステラーゼ剤暴露が含まれる。イソ型スイッチングの調節は、はるかにより複雑であり、あまりよく理解されていない。哺乳動物の生理学において、AChE−Sは優勢な転写物であり、AChE−Rは極めて希である。AChEの転写を全体的に増大させることに加えて、物理的、化学的および心理的なストレスは、AChE−Sに対するAChE−Rの割合を増大させる。
【0006】
OP遅延毒性の後には、AChE−Sから、他の場合には希な「読み過ごし(readthrough)」変異体(AChE−R)への、迅速であるが長く続く変化した選択的スプライシングが存在することが示されている[Kaufer,D.ら、1998、Nature、393、373〜377;Shohami,E.、2000、J Mol Med、78、228〜236;Meshorer,E.、2002、Science、295、508〜512]。Johnsonら[Environmental Health Perspectives、115、1、2007]は、様々なOPの非症状的用量に対する暴露の後でのAChE−SおよびAChE−Rの両方のアップレギュレーションを教示する。Perrierら[J of Neurochemistry、2005、94、629〜638]は、AChE−Rが、OP暴露後、この酵素の活性における変化を認めることなく、穏やかに増大することを教示する。
【0007】
しかしながら、現在まで、AChE遺伝子発現における暴露後の変化(すなわち、全体的な増大、およびAChE−SからAChE−Rへの選択的スプライシングの変化)が暴露に誘導された損傷を反映するかどうか、または逆に、保護する価値を有する適応反応を反映するかどうかは不明であった。
【0008】
既存の処置プロトコルでは、3つの相補的な取り組み、すなわち、ムスカリン性ACh受容体をアトロピンにより中和すること、内因性AChEをオキシム治療により再活性化すること、および重篤な毒性を症候に基づいて管理することが強調される。これらの取り組みは、死亡率を低下させることにおいて価値があることが証明されている一方で、抗コリンエステラーゼ剤中毒に伴う身体を衰弱させる病的状態または長期間の結果を防止することができない。
【0009】
代替として、OPバイオスカベンジャーとしての様々なヒトコリンエステラーゼ(ChE)の使用が提案されている[Maxwell、1993、J.Pharmacol.Exp.Ther.、264、1085〜1089]が、この取り組みの実用性は、触媒的な量ではなく、化学量論的な量で要求される多量のこれらの酵素が入手できるかに依存する。血漿から精製されたブチリルコリンエステラーゼ(BChE)をOPバイオスカベンジャーとすることによるかなりの成功[Ashani,Y.、2000、Drug Dev.Res.、50、298〜308;Doctor,B.P.およびSaxena,A.、2005、Chem Biol Interact、印刷中]は、OPの生理学的に関連した標的、すなわち、ヒトAChEとの比較研究を必要とした。AChEは、BChEよりもかなり速いOP結合速度論を示す[Maxwell、1993、J.Pharmacol.Exp.Ther.、264、1085〜1089]。このことから、より少ない用量が効果的であり得ることが予測される[Kaplanら、Biochemistry、40、7433〜7445]。
【発明の概要】
【0010】
1つの局面によれば、有機リン酸エステル暴露関連損傷をその必要性のある対象において処置または防止する方法が提供され、この方法は、治療有効量のAChE−Rを対象に与え、それにより、有機リン酸エステル暴露関連損傷を対象において処置することを含む。
【0011】
別の局面によれば、固体担体に固定化されたAChE−Rを含む、有機リン酸エステル暴露関連損傷を処置または防止するための製造物が提供される。
【0012】
さらに別の局面によれば、表面をAChE−Rと接触させ、それにより、表面を解毒することを含む、表面を解毒する方法が提供される。
【0013】
なおさらに別の局面によれば、AChE−Rを含む被覆材が提供される。
【0014】
1つの実施形態によれば、AChE−RはARPを含む。
【0015】
別の実施形態によれば、AChE−Rは組換えAChE−Rを含む。
【0016】
別の実施形態によれば、組換えAChE−Rは植物産生AChE−Rである。
【0017】
別の実施形態によれば、AChE−Rは、配列番号2および4に示される通りである。
【0018】
別の実施形態によれば、与えることは、対象にAChE−Rを投与することを含む。
【0019】
別の実施形態によれば、与えることが有機リン酸エステル暴露の前に行われる。
【0020】
別の実施形態によれば、投与することが吸入によって行われる。
【0021】
別の実施形態によれば、投与することが暴露の10時間前から暴露の7日後まで行われる。
【0022】
別の実施形態によれば、投与することが吸入および注射によって行われる。
【0023】
別の実施形態によれば、本発明の方法はさらに、対象に、アトロピンと、場合によりオキシムとを投与することを含む。
【0024】
別の実施形態によれば、与えることが局所適用によって行われる。
【0025】
別の実施形態によれば、固体担体は局所投与のためのものである。
【0026】
別の実施形態によれば、局所投与のための固体担体が、スポンジ、拭き取り材および布地からなる群から選択される。
【0027】
別の実施形態によれば、固体担体が、フィルター、布地および裏当てからなる群から選択される。
【0028】
別の実施形態によれば、本発明の方法はさらに、表面を、腐食剤、除染用フォーム、焼き付け条件熱と二酸化炭素との組合せ、またはこれらの組合せと接触させることを含む。
【0029】
別の実施形態によれば、AChE−Rが、被覆、塗料、膜非形成被覆、エラストマー、接着剤、シーラント、織物に適用される材料、またはワックスに含まれる。
【0030】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0031】
本明細書で使用される用語「含む(comprising及びincluding)」またはその文法的変形は、述べた特徴、整数、工程または構成要素を特定するものとして解釈されるが、一つ以上の追加の特徴、整数、工程、構成要素またはそれらの群の追加を除外しない。この用語は、用語「からなる(consisting of)」および用語「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0032】
本明細書で使用される表現「から本質的になる」またはその文法的変形は、述べた特徴、整数、工程または構成要素を特定するものとして解釈されるが、追加の特徴、整数、工程、構成要素またはそれらの群が、主張される組成物、装置または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、一つ以上の追加の特徴、整数、工程、構成要素またはそれらの群の追加を除外しない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0034】
【図1】図1A〜Cは、ヒトAChE変異体を過剰発現する安定的にトランスフェクトされた細胞株の樹立を説明する。図1Aは、AChE遺伝子の選択的スプライシング変異体を示すスキームである。矢印はそれぞれのmRNAのタンパク質産物を示す。図1Bは、AChEタンパク質の共通領域に対する抗体(N−19、Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA)によりプローブされる、トランスフェクトされたCHO細胞の全抽出物のウエスタンブロットである。rAChE−S(商業的に精製された組換えAChE−S)(Sigma−Aldrich、Rehovot、イスラエル)がコントロールの役割を果たした。図1Cは、AChE−R cDNAまたはAChE−S cDNAのどちらかを最小のCMVエンハンサー−プロモーターの制御下に有する構築物により安定的にトランスフェクトされたCHO細胞における総AChE活性を説明する棒グラフである。GFPベクターにより安定的にトランスフェクトされたCHO細胞(GFP)がコントロールの役割を果たした。黒塗り棒は細胞内活性をμM加水分解ACh/mgタンパク質の単位で示す。白抜き棒は細胞外活性をμM加水分解ACh/ml培地の単位で示す。誤差棒は標準偏差を示す。
【0035】
【図2A】図2Aは、暴露後の血漿AChE活性およびコルチコステロンレベルを説明する棒グラフである。図2A:AChE特異的活性を、50μMのISO−OMPAの存在下、Ellmanアッセイを使用して処置後7日目にすべての動物の血漿において測定した。血漿AChE活性における最大の増強がパラオクソンおよびmARPによる同時処置の後で観測された。挿入図:パラオクソンの構造およびmARPの配列。
【図2B】図2Bは、暴露後の血漿AChE活性およびコルチコステロンレベルを説明する棒グラフである。図2B:血漿コルチコステロンレベルを、OCTEIAコルチコステロンキット(IDS Ltd、Boldon、英国)を製造者の説明書に従って実験の6日目に血漿において測定した。mARPは、生理食塩水およびパラオクソンによって誘導されたコルチコステロンレベルにおける増大を改善した。挿入図:コルチコステロンの構造。
【0036】
【図3】図3A〜Cは、mARPがAChE遺伝子発現に対する暴露の影響を改善することを説明する。AChEのmRNAレベルを、1週間の実験が終了したとき、処置動物の骨格筋において測定した。総RNAを、凍結された骨格筋から精製し、Light Cyclerシステム(Roche Diagnostics、Mannheim、ドイツ)をリアルタイムPCR定量のために使用するリアルタイムRT−PCRに供した。図3Aは、AChE mRNAの共通ドメイン(図3B)と、AChE−S mRNAについて特有である3’領域(図3C)との両方を増幅するために使用された2組のプライマーの位置を説明する。数字はヌクレオチド位置を示す。柱は、サイクル数として測定される、ナイーブ動物に対するRT−PCR生成物量のlog差を示す。値が標準転写物(β−アクチンmRNA)の値に対して較正された。したがって、棒グラフは、ナイーブマウスにおけるベースラインと比較したときの生成物蓄積における対数での差を示す。正の値は、試験された筋肉サンプルでのmRNAレベルにおける増大を反映する。それぞれの棒が、右側パネルにおけるパラオクソン+生理食塩水の棒を除いて、3匹の動物の平均を示し、右側パネルでは、2匹の動物だけがこの実験のために利用可能であった。3番目のマウスは、低すぎて定量することができなかった筋肉のAChE−S mRNAレベルを示した。このことは、観測された低下を強調する。
【0037】
【図4】図4A〜Fは、mARPが体温(BT)に対する暴露の影響を変化させることを説明するグラフである。適応期間が終了したとき、試験群あたり3匹の動物をテレメトリー用送信機の埋め込みに供し、その後、2週間の回復期間を与えた。回復後、実験の全継続期間にわたる記録を開始した。テレメトリーでのベースライン値を確立した2日後、マウスに、生理食塩水、i.p.での0.4mg/kgのパラオクソン(Sigma)、またはi.p.での2.5mg/kgの大腸菌リポ多糖(LPS)を注射した。実験期間を通して毎日、マウスには、mg/kgのmARP、またはコントロールのための生理食塩水をi.v.注射した。テレメトリーにより測定されたBTを処置前日および処置後1日目について示す(図4A〜図4C)。1日目における改善された、LPS誘導による低下に留意すること。棒グラフは、全処置期間にわたる毎日の平均温度を示す(図4D〜図4F)。
【0038】
【図5A】図5Aは、運動活性(MA)に対するmARPの影響を説明するグラフである。図5Aは、処置前日および処置後1日目の期間中におけるMAを示す。
【図5B】図5Bは、運動活性(MA)に対するmARPの影響を説明するグラフである。図5Bは、処置前日および処置後1日目の期間中におけるMAを示す。
【図5C】図5Cは、運動活性(MA)に対するmARPの影響を説明するグラフである。図5Cは、処置前日および処置後1日目の期間中におけるMAを示す。
【図5D】図5Dは、運動活性(MA)に対するmARPの影響を説明するグラフである。図5Dは、完全な実験の過程を通した平均の明期MAおよび暗期MAを処置前および処置後の両方で示す棒グラフである。埋め込まれた送信機がマウスケージの下の検知台を横切って動くときにモニターされる事象の数が示される。
【図5E】図5Eは、運動活性(MA)に対するmARPの影響を説明するグラフである。図5Eは、完全な実験の過程を通した平均の明期MAおよび暗期MAを処置前および処置後の両方で示す棒グラフである。埋め込まれた送信機がマウスケージの下の検知台を横切って動くときにモニターされる事象の数が示される。
【図5F】図5Fは、運動活性(MA)に対するmARPの影響を説明するグラフである。図5Fは、完全な実験の過程を通した平均の明期MAおよび暗期MAを処置前および処置後の両方で示す棒グラフである。埋め込まれた送信機がマウスケージの下の検知台を横切って動くときにモニターされる事象の数が示される。
【0039】
【図6A−B】図6A〜Bは、植物におけるAChE−RERの発現を説明する図および写真である。図6Aは、AChE−SおよびAChE−Rが、異なったC末端を有する選択的スプライシング変異体であることを説明するモデルである。図6Bは、AChE−RER発現ベクターを説明する図である。L、左境界;R、右境界;Ag7、ノパリンシンターゼポリアデニル化シグナル;nptII、カナマイシン抵抗性マーカー;NOS、ノパリンシンターゼプロモーター;35S、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター;TEV、タバコエッチウイルスの翻訳エンハンサー領域;AChE−RER、C末端のSEKDEL小胞体保持シグナルを含有する、ヒトAChE−Rのためのコドン最適化されたコード領域;VSP、ダイズ栄養貯蔵タンパク質の3’UTR;矢印、DNAブロット分析のためのプローブを作製するために使用されたプライマーの位置。
【図6C−D】図6C〜Dは、植物におけるAChE−RERの発現を説明する図および写真である。図6Cは、DNAブロット分析である。ゲノムDNAを最高発現N.benthamiana系統(2D)(レーン1〜3)およびwt植物(レーン4〜5)から抽出し、EcoRI(レーン1および4)、NcoI(レーン2および5)およびHindIII(レーン3)により消化した。図6Dは、アリゾナ州立大学の管理された生育施設における2D N.benthamianaの大規模培養を説明する写真である。
【0040】
【図7A−C】図7A〜Cは、植物産生AChE−RERの特徴づけを説明する写真およびグラフである。図7A:連続する精製工程からの分画物を下記のようにSDS−PAGEに供し、クーマシー染色(レーン1〜5)または銀染色(レーン6)によって可視化した:粗wt抽出物(レーン1)、粗2D抽出物(レーン2)、プロカインアミド親和性クロマトグラフィーの素通り(レーン3)、徹底した透析の後での溶出物(レーン4)、アニオン交換クロマトグラフィーおよび濃縮の後での最終生成物(レーン5および6)。図7B:上記分画物をAChE特異的Abによる免疫ブロット分析に供した(レーン1〜5)。図7C:ChE活性について染色された非変性PAGE。
【図7D】図7Dは、植物産生AChE−RERの特徴づけを説明する写真およびグラフである。図7D:植物産生AChE−RERは、哺乳動物細胞培養または植物により産生されたAChE−Sと比較したとき、同等のKおよび基質阻害を示す。挿入図:ラインウィーバー・バーク分析(挿入図)。
【図7E】図7Eは、植物産生AChE−RERの特徴づけを説明する写真およびグラフである。図7E:植物由来のAChE−RERおよびAChE−Sならびに哺乳動物細胞培養物由来のAChE−Sの残存活性を、示された濃度のOP(パラオクソン)の存在下でアッセイした。
【0041】
【図8A】図8Aは、植物産生AChE−RERの薬物動態学を説明するグラフおよび写真である。図8Aはクリアランスプロフィルである。5匹のマウスからなる群に、400U、1000Uの植物産生AChE−RER、または等体積の生理食塩水のどれかを注射した。血漿サンプルを採取し、Iso−OMPA(選択的BChE阻害剤)の存在下でのAChE活性についてアッセイした。
【図8B】図8Bは、植物産生AChE−RERの薬物動態学を説明するグラフおよび写真である。図8Bは無傷の循環AChE−RERの免疫ブロット検出である。400UのAChE−RERが注射された2匹のマウスから得られる血漿タンパク質サンプルをSDS−PAGEによって分離し、免疫ブロッティングに供した。図8Bでは、精製された植物産生AChE−RERが比較のための血清サンプルと一緒に分離された。
【図8C】図8Cは、植物産生AChE−RERの薬物動態学を説明するグラフおよび写真である。図8C:循環しているAChE−RERは、非変性PAGEでは低下した移動を示す。400UのAChE−RERが注射された5匹のマウス、およびPBSが注射された2匹のマウスから得られる血漿サンプルを調製し、非変性PAGEに供し、その後、触媒活性なAChEの染色を行った。速く移動するAChE−R単量体が組換え酵素の注射後にだけ現れた。図8Cでは、精製された植物産生AChE−RERが比較のための血清サンプルと一緒に分離された。
【0042】
【図9A】図9Aは、インビボでの植物由来AChE−RERの活性を説明するグラフである。図9Aは、植物由来AChE−RERがマウスをパラオクソンの致死的攻撃から保護し得ることを説明する。マウスに植物由来AChE−RERをi.v.注射し、続いて、10分後に、もう1回のパラオクソン(750mg/kg)のi.v.注射を行って、示された酵素/OP比を得た。それぞれの円が個々のマウスを表す。症状を、本文に記載するようにスコア化した。
【図9B】図9Bは、インビボでの植物由来AChE−RERの活性を説明するグラフである。図9Bは、植物由来AChE−RERおよびパラオクソンがインビボでのマウスAChE−Rの蓄積を相互に調節し得ることを説明する。血漿サンプルを処置の10日後に採取し、AChE活性のそれらの含有量について分析した。星印は、統計学的に有意な変化(P<0.05、スチューデントt検定)を示す。
【0043】
【図10A】図10Aは、植物由来AChE−RERおよびパラオクソンがインビボでのマウスAChE−Rの蓄積を相互に調節し得ることを説明するグラフおよび写真である。血漿サンプルを処置の10日後に採取し、AChEタンパク質および酵素活性のそれらの含有量について分析した。図10A:血漿タンパク質を非変性PAGEによって分離し、その後、活性なAChEの染色を行った。植物由来AChE−RERが比較の役割を果たした。
【図10B】図10Bは、植物由来AChE−RERおよびパラオクソンがインビボでのマウスAChE−Rの蓄積を相互に調節し得ることを説明するグラフおよび写真である。血漿サンプルを処置の10日後に採取し、AChEタンパク質および酵素活性のそれらの含有量について分析した。図10B:血漿タンパク質をSDS−PAGEによって分離し、その後、免疫ブロッティングを行った。
【図10C】図10Cは、植物由来AChE−RERおよびパラオクソンがインビボでのマウスAChE−Rの蓄積を相互に調節し得ることを説明するグラフおよび写真である。大腿四頭筋サンプルを処置の10日後に採取し、AChEタンパク質および酵素活性のそれらの含有量について分析した。図10C:筋肉タンパク質を、以前の記載[Leeら、Jama、290、659〜662]の通りに、低塩緩衝液(144mMのNaCl、50mMのMgClおよび10mMのリン酸ナトリウムを含有する;pH7.4)、低塩+界面活性剤(1%のTriton X−100)、および最後に、高塩(1MのNaClおよび10mMのリン酸ナトリウム)に対するそれらの溶解性に基づいて順次分画化した。低塩+界面活性剤の分画物におけるタンパク質をSDS−PAGEによって分離し、その後、免疫ブロッティング、およびAChE−R特異的Abによる検出を行った。合成mARPペプチドが陽性コントロールの役割を果たした。
【図10D−E】図10D〜Eは、植物由来AChE−RERおよびパラオクソンがインビボでのマウスAChE−Rの蓄積を相互に調節し得ることを説明するグラフである。大腿四頭筋サンプルを処置の10日後に採取し、AChEタンパク質および酵素活性のそれらの含有量について分析した。図10D:AChE活性を3つすべての分画物においてアッセイした(平均±SEM)。図10E:低塩分画物におけるAChE活性の(PBSコントロールに対する)パーセント変化。星印は、統計学的に有意であること(P<0.04、スチューデントt検定)を示す。
【0044】
【図11A】図11Aは、AChE−RERによる前処理が、OP中毒により誘導される形態的なNMJ損傷を改善することを説明する。図11A:マウスを、PBS(1)、400UのAChE−RER(2)、0.8xLD50のパラオクソン(3)、または400UのAChE−RERおよび0.8xLD50のパラオクソン(4)のいずれかで処置した。処置後10日で、横隔膜筋を解剖し、触媒活性なAChEについて染色して、NMJの数およびサイズを可視化した。NMJ密度(NMJ数/mm)を測定し、それぞれの切片(a1〜a4)における平均±SEMによって表した。
【図11B】図11Bは、AChE−RERによる前処理が、OP中毒により誘導される形態的なNMJ損傷を改善することを説明する。図11B:NMJ密度および形態学の分析。NMJ面積(μm)を、MATLAB7.0.1ソフトウェアを使用してボックスプロットした。ボックスは、下位四分位点、メジアンおよび上位四分位点の値における線分から組み立てられる。ひげは残りのデータを示し、+によって示される外れ値は、ひげを超えるデータを示す。星印は、P<0.01を示す(メジアン検定)。両方の分析は、パラオクソン暴露がNMJの密度および大きいシナプスの割合の両方を増大させたことを示唆する(図11A(1)と比較して、図11A(3)における挿入図もまた参照のこと)。植物由来AChE−RERによる前処理はNMJ面積に対する影響の少なくとも一部を防止し、一方、植物由来AChE−RER単独は非暴露の横隔膜においてNMJ密度またはNMJ面積を変化させなかった。
【図11C】図11Cは、AChE−RERによる前処理が、OP中毒により誘導される形態的なNMJ損傷を改善することを説明する。図11Cは、OP中毒の急性的結果および慢性的結果からの保護の機構についてのモデルである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、有機リン酸エステル暴露関連損傷を処置または防止するための物質および方法に関し、特に本発明は、有機リン酸暴露関連損傷を処置または防止するためのAChE−Rの使用に関する。
【0046】
本発明の原理および操作は、図面およびそれに伴なう説明を参照してより良く理解することができる。
【0047】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるまたは実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることができる。また、本明細書中で用いられる表現および用語は説明のためであり、従って限定として見なされるべきではないことを理解しなければならない。
【0048】
神経剤(例えば、サリン、ソマンおよびVX)および殺虫剤(例えば、パラオクソン、パラチオンおよびマラチオン)の形態の有機リン酸エステル(OP)に対する暴露は、ニューロンの持続した神経インパルスを許し、それにより、毒性、行動的欠損および死亡を生じさせる、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の阻害による急性のコリン作動性影響を生じさせることがある。近年、そのような薬剤は、テロリスト活動の高まりのために、ますます増大する軍事的および非軍事的脅威となっている。
【0049】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、AChE−Rおよびその活性な部分ARPが、有機リン酸エステル暴露関連損傷から保護するために使用され得ることを発見した。
【0050】
本明細書中下記において、また、下記の実施例の節において説明するように、外部から適用されたAChE−Rは動物をOP攻撃から保護した。6週齢〜8週齢のオスのFVB/Nマウスが、増大する量の植物で産生させたヒトAChE−R(体重に対して調節された用量)で前処理され、その後、単回ボーラスの1.14xLD50のパラオクソン(660μg/kg)により攻撃され、症状が観察され、記録された。パラオクソンのこの用量は、別途処置されていないマウスについては致死的であり、この場合、死の前に、重篤なコリン作動性症状(痙攣および不自然な呼吸能)が生じ、5分〜10分のうちに死に至る。17匹のマウスを植物由来AChE−Rで前処理することにより、AChE−R/OPのモル比が、BChEによる同等な化学量論的保護よりもはるかに低い0.04のときでさえ、死亡率が低下した[Raveh,L.、Grunwald,J.、Marcus,D.、Papier、Y.、Cohen,E.およびAshani,Y.(1993)、神経剤毒性のための一般的な予防解毒剤としてのヒトブチリルコリンエステラーゼ、インビトロおよびインビボでの定量的特徴づけ、Biochem.Pharmacol.、45、2465〜2474]。この低いモル比において、生存動物は最初、重篤な症状を示し、その後、より穏やかな症状(あまり激しくない痙攣および振せん)を示した。症状が徐々に小さくなり、そして、4時間以内に、マウスはほんの軽度の徴候(低下した運動活性および全身倦怠感)を示した。重要なことに、パラオクソン注射後の最初の15分を生き延びたすべてのマウスが、明らかに完全な回復を24時間以内に示した。
【0051】
酵素/薬剤モル比が0.09を超える場合、初期症状は中程度であり、0.2を超える場合、初期症状は軽度にすぎなかった。0.5を超える酵素/薬剤比により処置されたマウスは暴露後の症状の徴候を何ら示さなかった。すべての生存マウスの6ヶ月間のモニタリングでは、明白な神経障害または他の症状は何ら明らかにされなかった。投与されたヒト酵素に対して特異的なIgGの極めて低い力価が観測された;しかしながら、AChE特異的なIgE、またはマウスAChEに対して向けられた自己Abのどちらも、植物由来AChE−Rの最大用量で処置されたマウスから得られた血清サンプルにおいてさえ検出することができなかった。
【0052】
本発明者らはさらに、AChE−RがOP中毒の遅れた影響から保護することを示している。マウスがPBS+/−AChE−R(400U)のi.v.投与によって前処理され、その後、亜致死的(0.8LD50)または致死的(1.13LD50)なパラオクソン攻撃が行われた。すべてが重篤なコリン作動性症状を示し、その後で回復した(生存率は、亜致死的な攻撃を受けたマウスおよび致死的な攻撃を受けたマウスについてそれぞれ、100%および70%であった)。処置後10日で、マウスを安楽死させ、血漿サンプルおよび骨格筋サンプルを採取した。このとき、すべてのマウスが、予測され得たことだが、OP攻撃によって誘導されるそれらの血漿AChEレベルにおける小さい増大を経た。この遅れた時点での血漿AChE活性は、保護されていない亜致死的な攻撃を受けたマウスと比較したとき、酵素により処置された動物では実質的により低かった。このことは、長く続くAChE−Rの過剰産生の、効果的ではあるが不完全な相殺が、植物由来AChE−Rの投与によるものであることを示唆する。植物由来AChE−Rの単独投与は、注射後10日で、血漿AChE−R活性のレベルを著しく制限した。このことは、この相殺が、循環系における高いレベルのAChE分子に対するフィードバック応答であったという見解を裏付ける。さらに、血漿AChE−R活性におけるOP誘導による増大の酵素前処理による調節が、攻撃後10日で得られたサンプルの非変性ゲルによって観測されるAChE単量体(おそらくは、マウスAChE−R)における対応する変化によって反映される。したがって、内因性マウスAChE(具体的には、マウスAChE−R)の血漿レベルにおける中毒後の増大は、外部から適用された植物由来酵素によって少なくとも部分的に軽減され得る。
【0053】
AChE−Rにより前処理されたマウスにおける筋肉AChE活性は、攻撃されていないコントロールの筋肉AChE活性と類似していた。このことは、投与されたAChE−Rが、マウスの循環におけるOP誘導によるAChE−Rの産生を低下させながら、筋肉AChE−Rを阻害から保護する「おとり」として働いたことを明らかにする。
【0054】
パラオクソン暴露は、PBSコントロールと比較したとき、処置後10日で解剖され、触媒活性なAChEについて染色された無傷の横隔膜筋における大きいNMJの密度および割合の両方を増大させた。400UのAChE−Rによる前処理は、NMJ面積の暴露に誘導された拡大の少なくとも一部を妨げ、これに対して、400UのAChE−R単独による前処理は、暴露を受けない横隔膜におけるNMJの密度または面積を変化させなかった。これらの発見により、これらの弱まったNMJの異常形態の影響が宿主筋肉組織における改善されたフィードバック応答の結果であると考えられる。
【0055】
加えて、本発明者らはまた、AChE−Rの天然の切断可能なC末端ペプチド(ARP)のパラオクソン暴露マウスへの投与が、AChE活性、コルチコステロン、体温および認知機能を含むいくつかのパラメーターを分析することによって明らかにされるように、運動活性の回復および認知機能の回復を促進したことを示している。
【0056】
これらの発見のすべてが、有機リン酸エステル暴露関連損傷を処置および防止するためのAChE−Rの使用を支持している。
【0057】
したがって、本発明の1つの局面によれば、有機リン酸エステル(OP)暴露関連損傷をその必要性のある対象において処置または防止する方法が提供され、この方法は、治療有効量のAChE−Rを対象に与え、それにより、有機リン酸エステル暴露関連損傷を対象において処置することを含む。
【0058】
本明細書中で使用される用語「処置する」は、有機リン酸エステル中毒の即時的な命にかかわる影響およびその長期間の身体を衰弱させる結果の有害な影響を防止すること、治すこと、逆転させること、弱めること、緩和すること、最小限に抑えること、抑制すること、または停止させることを示す。
【0059】
本明細書中で使用される表現「有機リン酸エステル暴露関連損傷」は、生理学的機能(例えば、運動機能および認知機能)に対する短期間の損傷(例えば、暴露後数分から数時間まで)および長期間の損傷(例えば、暴露後1週間から数年にまで至る)を示す。有機リン酸エステル暴露関連損傷は、頭痛、広汎性筋痙攣、衰弱、過度な分泌、悪心、嘔吐および下痢(これらに限定されない)を含む臨床的症状によって表されることがある。状態は、発作、昏睡、麻痺、呼吸不全、遅発性神経障害、筋力低下、振せん、痙攣、永続的な脳の異常形態、社会的/行動的欠損、および全身的なコリン作動性クリーゼ(これは、例えば、悪化した炎症および低い血球数によって現れることがある)に進行する場合がある。極端な場合には、中毒者は死に至る場合がある。
【0060】
本明細書中で使用される用語「有機リン酸エステル化合物」は、ホスホリル中心を含む化合物を示し、2つまたは3つのエステル連結をさらに含む。いくつかの局面において、ホスホリル中心におけるホスホエステル結合および/またはさらなる共有結合のタイプにより、有機リン化合物が分類される。リンが二重結合(PdbdO)によって酸素に連結される実施形態において、そのようなOP化合物は「オキソンOP化合物」または「オキソン有機リン化合物」として知られている。リンが二重結合(PdbdS)によってイオウに連結される実施形態において、そのようなOP化合物は「チオンOP化合物」または「チオン有機リン化合物」として知られている。
【0061】
結合タイプにより分類されるOP化合物のさらなる例には、P−−CN結合を含むホスホノシアナート;P−−N結合を含むホスホロアミダート;P−−O結合を含むホスホトリエステル;P−−O結合を含むホスホジエステル;P−−F結合を含むホスホノフルオリダート;P−−S結合を含むホスホノチオラートが含まれる。「ジメチルOP化合物」は、リン原子に共有結合した2つのメチル成分を含む(例えば、マラチオンなど)。「ジエチルOP化合物」は、リン原子に共有結合した2つのエトキシ成分を含む(例えば、ダイアジノンなど)。
【0062】
一般的な実施形態において、OP化合物は有機リン系神経剤または有機リン系殺虫剤を含む。
【0063】
本明細書中で使用される「神経剤」はコリンエステラーゼの阻害剤である。OP化合物の毒性は、標的酵素からのそのホスホリル中心(例えば、P−−C、P−−O、P−−F、P−−S、P−−CN)の遊離速度に依存する。好ましい神経剤は、その触媒活性が多くの場合には、ヒトを含む動物における健康および生存のために非常に重要であるコリンエステラーゼ(例えば、アセチルコリンエステラーゼ)の阻害剤である。
【0064】
ある種のOP化合物はヒトに対して非常に毒性が高いので、化学戦争薬剤(CWA)としての使用のために改造されている(例えば、タブン、ソマン、サリン、シクロサリン、VXおよびR−VXなど)。CWAは空中浮遊形態である場合があり、そのような配合物は本明細書中では「OP系神経ガス」として理解される。空中浮遊形態の例には、ガス、蒸気、エアロゾル、ダストまたはそれらの組合せが含まれる。OP系神経ガスとして配合され得るOP化合物の例には、タブン、サリン、ソマン、VX、GXまたはそれらの組合せが含まれる。その性質において神経ガスの性質に類似していないにもかかわらず、神経ガスに近い有機リン酸エステルの一例は、揮発性がこの群の他のメンバーよりもかなり低いDFP(ジイソプロピルフルオロホスホナート)の有機リン酸エステルである。
【0065】
そのような薬剤に共通する暴露の最初の吸入経路に加えて、CWA、特に持続性薬剤、例えば、VXおよび増粘化ソマンなどは、皮膚吸収によって脅威をもたらす[“Chemical Warfare Agents:Toxicity at Low Levels”(Satu M.SomaniおよびJames A.Romano,Jr.編)、414頁、2001年]。そのような持続性CWA薬剤は固体または液体として留まり、同時に、3時間を超えて外気にさらされる。放出後、多くの場合、持続性薬剤は、空中浮遊の分散形態から、表面における固体または液体の残留物に変わることがあり、したがって、人の皮膚に接触する機会をもたらす。
【0066】
OP系殺虫剤の例には、ブロモホス−エチル、クロルピリホス、クロルフェンビンホス、クロロチオホス、クロルピリホス−メチル、クマホス、クロトキシホス、クルホマート、シアノホス、ダイアジノン、ジクロフェンチオン、ジクロルボス、ダースバン、EPN、エトプロプ、エチル−パラチオン、エトリムホス、ファンファー、フェンスルホチオン、フェンチオン、フェントロチオン、イソフェンホス、ヨードフェンホス、レプトホス−オキソン、マラチオン、メチル−パラチオン、メビンホス、パラオキソン、パラチオン、パラチオン−メチル、ピリミホス−エチル、ピリミホス−メチル、ピラゾホス、キナルホス、ロンネル、スルプロホス、スルホテップ、トリクロロナートまたはこれらの組合せが含まれる。
【0067】
本明細書中で使用される表現「その必要性のある対象」は、OPの毒性影響を受けやすいヒト対象または動物対象を示す。したがって、そのような対象はOPにさらされ得るか、またはOPに対する暴露の危険性があり得る。例には、公の行事におけるテロリスト攻撃によって汚染を受けた市民、殺虫剤/殺昆虫剤によるOP中毒にさらされる屋外作業者、殺虫剤を輸送するトラック運転手、殺虫剤製造者、ノミ駆除液浸に過度にさらされるイヌ手入れ者、害虫駆除作業者、ならびにこれらの化合物を使用する様々な家庭内労働者および保管作業者、神経ガスにさらされる軍関係者が含まれる。
【0068】
述べられたように、本発明のいくつかの実施形態において、本発明の方法は、治療有効量のAChE−Rを対象に与えることによって行われる。
【0069】
本明細書中で使用される用語「AChE−R」は、アセチルコリンエステラーゼの読み過ごし変異体(例えば、GenBankアクセション番号DQ140347に示される変異体(例えば、配列番号2)など)またはその活性な部分(例えば、配列番号6および8に示されるARP)を示す。
【0070】
本発明のAChE−Rは自然界で発現され得る(すなわち、精製され得る)か、あるいは、合成または組換えにより製造され得る(例えば、細菌、酵母、細胞株、トランスジェニック動物(例えば、その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる米国特許第5932780号を参照のこと)またはトランスジェニック植物(コケ、藻類、単子葉または双子葉植物、ならびに他の植物)などにおいて製造され得る)。例には、葉作物、オイル作物、アルファルファ、タバコ、トマト、バナナ、ニンジン、レタス、トウモロコシ、キュウリ、メロン、ジャガイモ、ブドウおよびシロクローバーが含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
植物細胞は場合により、任意のタイプの植物細胞:例えば、植物根細胞(すなわち、植物根に由来する細胞、植物根から得られる細胞、または元々は植物根に基づく細胞)、より好ましくは、セロリ細胞、ショウガ細胞、西洋ワサビ細胞およびニンジン細胞からなる群から選択される植物根細胞などであり得る。例えば、実施例の節、タバコにおける発現を参照のこと。
【0072】
組換えタンパク質を製造する様々な方法がこの技術分野では広く知られている。植物細胞における組換えタンパク質製造のための具体的な例が、PCT WO2005/080544において提供される(これはその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態のAChE−Rは、生物学的利用能を増大させるために化学的に修飾することができる。タンパク質をPEG化する様々な方法がこの技術分野では広く知られている。
【0074】
OPは、肺、皮膚、胃腸(GI)管および粘膜から素早く吸収され得るので、AChE−Rを様々な投与経路によって、または皮膚への直接的な適用によって与えることができる。
【0075】
例えば、AChE−Rを、AChE−Rが固定化によって固定される固体担体(例えば、柔軟なスポンジ様物質または同様な材料であり得る多孔性担体)に固定化することができる。担体は、必要性および鋳型の形状に依存して、様々な形状、サイズおよび密度にすることができる。例えば、多孔性担体を、典型的な家事用スポンジ、拭き取り材またはペーパータオルにすることができる。
【0076】
例えば、そのような物品を、創傷を清浄化および除染するために使用することができるが、固定化されたAChE−Rは傷の中に溶け出さない。したがって、そのようなスポンジを、公の行事におけるテロリスト攻撃によって汚染を受けた市民を除染するために使用することができる。
【0077】
代替として、または加えて、AChE−Rを、それ自体で、あるいは、AChE−Rが好適なキャリアまたは賦形剤と混合された医薬組成物において対象に投与することができる。
【0078】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の1つまたは複数と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適な担体および賦形剤など)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0079】
本明細書中において、用語「有効成分(活性成分)」は、生物学的効果を説明することができるAChE−Rを示す。
【0080】
本明細書中以降、表現「生理学的に許容され得る担体」および表現「医薬的に許容され得る担体」は、交換可能に使用され得るが、生物に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された化合物の生物学的な活性および性質を妨げない担体または希釈剤を示す。アジュバントはこれらの表現に包含される。
【0081】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0082】
薬物の配合および投与のための技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出されることができ、これは参考として本明細書中に組み込まれる。
【0083】
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、特に経鼻送達、腸管送達、または非経口送達(これには、筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、クモ膜下注射、直接的な脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射または眼内注射が含まれる)が含まれることができる。
【0084】
あるいは、例えば、患者の組織領域(例えば皮膚)に直接的に医薬組成物の注射をすることによって、全身的な方法よりも局所的に医薬組成物を投与することができる。
【0085】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られているプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥のプロセスによって製造されることができる。
【0086】
本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用されることができる調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容され得る担体を使用して従来の様式で配合されることできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0087】
注射の場合、医薬組成物の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合しうる緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な食塩緩衝液など)において配合されることができる。経粘膜投与の場合、浸透されるバリヤーに対して適切な浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0088】
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物をこの分野でよく知られている医薬的に許容され得る担体と組み合わせることによって容易に配合されることができる。そのような担体は、医薬組成物が、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物は、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、錠剤または糖衣錠コアを得るために、望ましい好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製されることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーである。もし望むなら、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤が加えられることができる。
【0089】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有しうる。色素または顔料は、活性化合物の量を明らかにするために、または活性化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えられることができる。
【0090】
経口使用されうる医薬組成物としては、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが挙げられる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分は、好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁されることができる。さらに、安定化剤が加えられることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0091】
口内投与の場合、組成物は、従来の方法で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0092】
鼻吸入による投与の場合、本発明による使用のための有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投与量は、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定されることができる。ディスペンサーにおいて使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジは、化合物および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有して配合されることができる。
【0093】
本明細書中に記載される医薬組成物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために配合されることができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供されることができる。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0094】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態の活性調製物の水溶液が含まれる。さらに、有効成分の懸濁物は、適切な油性または水性の注射用懸濁物として調製されることができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが挙げられる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために、有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0095】
あるいは、有効成分は、好適なビヒクル(例えば、無菌の、パイロジェン不含水溶液)を使用前に用いて構成される粉末形態であることができる。
【0096】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合されることができる。
【0097】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物として、有効成分が、その意図された目的を達成するために有効な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、「治療有効量」は、処置されている対象の疾患(例えば虚血)の症状を予防、緩和あるいは改善するために効果的であるか、または、処置されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分(核酸構築物)の量を意味する。
【0098】
治療有効量の決定は、特に本明細書で与えられた詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0099】
本発明の方法において使用されるいかなる調製物についても、投与量または治療有効量は、生体外および細胞培養アッセイから最初に推定されることができる。例えば、投与量は、所望の濃度または力価を達成するために動物モデルにおいて決定されることができる。そのような情報は、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定するために使用されることができる。
【0100】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、生体外、細胞培養物、または実験動物における標準的な薬学的手法によって決定されることができる。これらの生体外、細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量範囲を定めるために使用されることができる。投与量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化しうる。正確な配合、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択されることができる(例えば、Finglら、(1975)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1 p.1を参照のこと)。
【0101】
投薬量および投薬間隔を、生物学的効果を誘導または抑制するために十分である活性な成分の血漿中レベルまたは脳中レベル(これは最小有効濃度(MEC)と呼ばれる)を提供するために個々に調節することができる。MECはそれぞれの調製物について変化するが、インビトロデータおよび/またはインビボデータから推定することができ、例えば、特定の細胞の増殖の50%〜90%の阻害を達成するために必要な濃度を、本明細書中に記載されるアッセイを使用して求めることができる。MECを達成するために必要な投薬量は個々の特性および投与経路に依存する。検出アッセイを使用して、血漿中濃度を求めることができる。
【0102】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は、単回または複数回投与で行われることができ、この場合、処置期間は、数日から数週間まで、または治療が達成されるまで、または疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0103】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存するだろう。
【0104】
AChE−Rは様々なOP分子を封鎖するので、化学量論的な量が投与され得る(本質的には、それぞれの毒分子について1個の酵素単量体)。
【0105】
AChE−RをOP暴露前に(予防的に、例えば、暴露の10時間前または8時間前に)投与することができ、また、代替として、または加えて、単回服用または多回服用で、暴露後に、数日後(例えば、7日後)でさえ投与することができる。
【0106】
理論にとらわれることはないが、AChE−Rを暴露直後に与えること(これは、不可逆的現象を避けるために、事象から2時間以内に行われることが推奨される)は、遅延期における内因性AChE−Rの過剰産生を停止させるか、または最小限に抑え、これにより、神経筋接合部を保護することが示唆される。
【0107】
本発明の実施形態ではまた、OP損傷を処置または防止するための、AChE−Rとの組合せでの他の薬剤の使用が意図される。
【0108】
したがって、1つの例示的な実施形態によれば、AChE−Rを、暴露後2時間に至るまでに、肺を保護するために吸入によって、また、循環を保護するために注射(i.v.)によって投与することができる。アトロピンを暴露後2時間〜4時間において加えることができる。AChE−Rの毎日の注射を中毒後7日に至るまで施すことができる。H1−6およびモノ−ビス四級オキシムのようなオキシム、例えば、塩化プラリドキシム(2−PAM)などを、処置の有効性を改善するために加えることができる。
【0109】
本発明の組成物は、所望されるならば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、ブリスターパック)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随し得る。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に関連した通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用担体に配合された本発明の調製物を含む組成物もまた、上で詳述されたように、示された状態を処置するために調製され、適切な容器に入れられ、かつ標識され得る。
【0110】
AChE−Rが様々なOP分子を封鎖することができることにより、OP汚染表面の除染および空中浮遊OPの解毒におけるAChE−Rの使用が提案される。
【0111】
したがって、本発明の1つの局面はさらに、OP分子により汚染された表面を解毒するか、またはOPによる表面の汚染を防止する方法を提供する。本方法は、表面をAChE−Rと接触させることによって行われる。
【0112】
したがって、本発明の実施形態に従って意図される合成表面および生体表面には、装置、実験器具、デバイス、織物(衣類)、皮膚(上記の通り)、および繊細な膜(生体膜)が含まれるが、これらに限定されない。適用様式は標的表面に非常に大きく依存する。したがって、例えば、表面が、亀裂、割れ目、多孔性表面または平らでない表面を含むときには特に、表面をフォームにより被覆することができる。少量の適用を、適切なノズルを備えるスプレー瓶により行うことができる。広い面積が汚染された場合、多量のフォームを施す装置を利用することができる。
【0113】
AChE−Rを含むことができる被覆、内張り、塗料、接着剤、シーラント、ワックスを表面に適用することができる。そのようなものについての例示的な実施形態が米国特許出願公開第20040109853号において提供される。
【0114】
表面の除染はさらに、表面を、腐食剤、除染用フォーム、焼き付け条件熱と二酸化炭素との組合せ、またはこれらの組合せと接触させることによって補助され得る。
【0115】
上記の被覆用組成物に加えて、OP汚染を、スポンジ(上記の通り)、拭き取り材、織物およびフィルター(空中浮遊粒子の除染のためのフィルター)の形態の固体担体に固定化されているAChE−Rを含む製造物を使用して防止または解毒することができる。固定化のための化学反応は米国特許出願公開第20040005681号において提供される。
【0116】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴が、限定であることが意図されない下記の実施例を検討したとき、当業者には明らかになるだろう。加えて、本明細書中上記に描かれるような、また、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0117】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0118】
概して、本明細書中で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子、生化学、細胞および組み換えDNAの技法が含まれている。これらの技法は文献に詳細に説明されている。例えば以下の諸文献を参照されたい:「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrook他(1989);Ausubel,R.M.編「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻(1994);Ausubel他著「Current Protocols in Molecular Biology」John Wiley and Sons,米国メリーランド州バルチモア(1989);Perbal著「A Practical Guide to Molecular Cloning」John Wiley & Sons,米国ニューヨーク(1988);Watson他、「Recombinant DNA」Scientific American Books、米国ニューヨーク;Birren他編;米国特許の4666828号、4683202号、4801531号、5192659号および5272057号に記載される方法;Cellis,J.E.編「Cell Biology:A Laboratory Handbook」I〜III巻(1994);Hames,B.D.およびHiggins S.J.編「Transcription and Translation」(1984);Freshney,R.I.編「Animal Cell Culture」(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.著(1984)および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、米国カリフォルニア州サンディエゴ(1990);なお、これらの文献類は、あたかも本願に完全に記載されているように援用するものである。その他の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。それらの文献に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。それらの文献に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
【0119】
実施例1〜4のための一般的な材料および方法
特定のAChE変異体を過剰発現する安定な細胞株の樹立:CHO細胞を記載(Perryら、2004、Neoplasia、6、279〜86)の通りに成長させた。トランスフェクションは、AChE−R(配列番号1)をコードするcDNA、およびAChE−S(配列番号15)をコードするcDNA(SoreqおよびSeidman、2001、Nat Rev Neurosci、2、294〜302)、ならびに緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするcDNA(Perryら、2002、Onocogene、印刷中)を伴い、標準的な選抜手順に従った。
【0120】
インビボ実験:7週齢〜8週齢のオスのCD−1マウスを特定病原体除去(SPF)環境に収容した(ケージあたり最大で6匹の動物)。動物には、市販の齧歯類用餌(Harlan Teklad TRM Rat/Mouse Diet、Rehovot、イスラエル)が自由に与えられ、また、飲料水を自由に摂取させた。自動制御された環境条件が、30%〜70%の相対湿度、12時間照明/12時間消灯のサイクル、および研究室における10回/時間〜30回/時間の空気交換とともに、温度を20℃〜24℃で維持するように設定された。試験の2週間前において、一晩の絶食の後、バイオテレメトリー用送信機が、腹腔内注射(i.p.)による全身麻酔のもと、被試験マウスの腹膜腔に埋め込まれた(Cohenら、2002、Mol Psychiatry、7、874〜85)。埋め込み後、マウスを個別ケージに収容し、食物および水を自由に摂取させた。手術手順から回復した2週間後、体温(BT)および運動活性(MA)を処置前および処置後において記録した(Cohenら、2002、Mol Psychiatry、7、874〜85)。前処理およびベースライン値の確立を行った2日後、記録を継続しながらマウスを処置した。処置には、生理食塩水、0.4mg/kgのパラオクソン(Sigma−Aldrich、Rehovot、イスラエル)または2.5mg/kgの大腸菌LPS(Sigma−Aldrich、Rehovot、イスラエル)の第1の単回i.p.注射が含まれた。第1の注射の1時間後、そして、その後の5日間の実験を通して毎日1回、マウスに、0.25mg/kgのmARP(Nijholtら、2004)またはコントロールとしての生理食塩水を静脈内注射した(第2の注射(i.v.))。動物を、研究期間中、臨床的徴候、および体重における変化について定期的に観察した。研究が終了したとき、動物をCO窒息によって安楽死させ、血漿サンプルおよび組織サンプルを採取した。3匹の埋め込みされていない非処置のナイーブマウスから得られる血漿および組織がコントロールの役割を果たした。すべての安楽死させた被試験動物が詳細な解剖に供された。ヘブライ大学動物実験委員会がこの実験を承認した。
【0121】
AChE活性およびコルチコステロンのアッセイ:AChE活性を、50μMのBChE特異的阻害剤テトライソプロピルピロホスホルアミド(Iso−OMPA)の存在下、マルチウェルプレートに適合化されたEllmanアッセイ(Siedmanら、1995、Mol Cell Biol、15、2993〜300)を使用して動物血漿において測定した。血漿におけるコルチコステロンレベルを、OCTEIAコルチコステロンキット(IDS Ltd、Boldon、英国)を製造者の説明書に従って使用して測定した。
【0122】
リアルタイムRT−PCR:骨格筋におけるAChE遺伝子発現に対する試験された処置の結果について試験するために、総RNAを、安楽死させた処置マウスおよびコントロールマウスから摘出された凍結された骨格筋から、RNeasyミニキット(Qiagen、Valencia、CA)を線維性組織のための説明書に従って使用して精製した。RNAを、Light Cyclerシステム(Roche Diagnostics、Mannheim、ドイツ)を使用してリアルタイムRT−PCR定量に供した。2組のプライマーを使用して、AChE mRNAの共通ドメイン(273(+)GGTAGACGGGGACTTC(配列番号9)/637(−)ATGTAGGCATAGACCCG(配列番号10))と、AChE−S mRNAについて特有な3’領域(637(+)CGGGTCTATGCCTACATC(配列番号11)/1250(−)GCTCGGTCGTATTATATCCCA(配列番号12))との両方を増幅した。値が標準転写物(β−アクチンmRNA)の値に対して較正された(Meshorerら、2005、Faseb J、19、910〜22)。
【0123】
免疫ブロット:免疫ブロットを、AChEタンパク質の共通領域を標的とする抗体(N−19、Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA)を使用して記載(Birikhら、2003、Proc Natl Acad Sci USA、100、283〜8)の通りに行った。
【0124】
(実施例1)
特定のAChE変異体を過剰発現する安定な細胞株の樹立
結果
ヒトのAChE−SまたはAChE−Rのどちらかと一緒にGFPを安定的に同時発現するCHO細胞株(すべてが最小のCMVプロモーター−エンハンサーの制御下にある)を樹立し、発現した酵素の対応する加水分解活性について試験した。両方の場合において、生存可能な細胞株が、容易に感知できるほどの活性レベルを伴って得られた。GFPのみを発現するCHO細胞がコントロールの役割を果たした。いくつかの細胞株がこれらのベクターのそれぞれについて樹立された。図1Bは、そのような細胞株におけるAChE変異体の発現レベルおよび分泌レベルの代表的な例を示す。
【0125】
AChE−R活性およびAChE−S活性の両方が、樹立された細胞株の細胞内分画物および分泌分画物に現れた。アセチルコリン加水分解レベルが、GFP発現細胞における無視できるレベルから、細胞タンパク質1mgあたり、または培地1mlあたり1マイクロモルの加水分解される基質のレベルに至るまで増大し(図1C)、これらのレベルは、一過性にトランスフェクトされた細胞よりも大きかった(Velanら、1991、Cell Mol Neurobiol、11、143〜56)が、植物発現よりも低かった(Geyerら、2005、Chem Biol Interact.)。予測され得たことだが、AChE−Rは、AChE−Sよりも効率的に分泌される傾向があり、2つの識別可能なバンドをウエスタンブロットにおいて示し、このことは、遊離hARPを生じさせるための切断を示唆した(Cohenら、2003、J Mol Neurosci、21、199〜212)。AChE−Sも同様に、そのような切断を受けることが見出された(図1Bおよび(Sternfeldら、1998、J Neurosci、18、1240〜9))。安定的にトランスフェクトされた細胞株は、親の細胞株と比較したとき、変化していない倍加時間を示し、また、MTT生存性試験では、アポトーシスがないことが明らかにされた(データは示さず)。
【0126】
(実施例2)
血漿中のAChE活性およびコルチコステロンレベルに対する全身的影響
OP系薬剤への暴露は、急性の哺乳動物ストレス応答の結果に類似する低下した体温および運動活性を生じさせる(Karczmar、2000、E.Giacobini編、157頁〜180頁、Martin Dunitz、London;Marrs、1993、Pharmacol Ther、58、51〜66)。そのような影響の少なくとも一部が、AChレベルおよびコルチゾールレベルにおける増大(Kauferら、1998、Nature、393、373〜7;Kauferら、1999、Chem Biol Interact、119−120、349〜60)、およびマウス(m)ARPの固有的切断(Doriら、2005、Cereb Cortex、15、419〜30;Grisaruら、2001、Mol Med、7、93〜105)をもたらす、AChE触媒活性の阻止によって引き起こされる。有機リン酸エステル暴露後のAChEの過剰産生を妨害するmARPの潜在的能力について調べるために、CD−1マウスに、生理食塩水、パラオクソンまたは大腸菌リポ多糖(LPS)を注射した。実験の5日間を通して毎日、マウスに、0.25mg/kgのmARP、またはコントロールとしての生理食塩水を静脈内(i.v.)注射した。
【0127】
結果
AChE特異的活性を、1週間の実験が終了したとき、50μMのISO−OMPA(ブチリルコリンエステラーゼ(BChE)(主要な循環コリンエステラーゼ)の阻害剤)の存在下で、すべての動物の血漿において測定した。パラオクソン処置は、血漿AChE活性の増大を生じさせた。この増大は、暴露後1週間を通して持続し、また、予測され得たことだが、mARPにより処置された動物ではより高く、mARPについての以前の発見(Grisaruら、2001、Mol Med、7、93〜105)およびhARPについての以前の発見(Grisaruら、2006、J Immunol、176、27〜35)と矛盾していなかった。図2Aは、パラオクソン中毒に対するmARP処置のこの結果を示す。血漿AChE活性における変化には、二重の生理食塩水処置のもとでは、ナイーブ動物と比較したとき、血漿コルチコステロンレベルにおける3倍の増大が伴い、パラオクソンと、それに続く生理食塩水のもとでは、生理食塩水+生理食塩水と比較したとき、5倍の増大が伴った。mARPはこれらの影響を改善し、増大したコルチコステロンレベルを完全になくした(図2B)。したがって、投与されたmARPはAChE遺伝子発現を高めたが、OP暴露後の過度なコルチコステロン産生を妨げた。
【0128】
(実施例3)
暴露後のAChE−R操作は宿主のAChE遺伝子発現に影響を及ぼす
結果
1週間の処置の後、種々のAChE転写物のmRNAレベルが、Light CyclerシステムをリアルタイムRT−PCR定量のために使用して、3匹のナイーブ動物と比較されるように、処置された動物の3匹の骨格筋において測定された。2組のプライマーを用いて、AChE mRNAの共通ドメイン(図3B)と、AChE−S mRNAについて特有な3’領域(図3C)との両方を検出した。値が標準転写物(β−アクチンmRNA)の値に対して較正された。パラオクソンは、処置されていないナイーブマウスと比較したとき、AChE−SのmRNAレベルにおけるほぼ8倍の低下を伴う、AChE mRNAにおける2倍の低下を引き起こした。このことは、組み合わさった筋肉反応が、以前から存在するAChE−S mRNAの破壊の促進、転写活性化、および発生期のAChE−R mRNAをもたらす選択的スプライシングにおける変化を伴うという見解と矛盾していない。mARPは、AChE mRNAの両方の領域におけるパラオクソン誘導による低下をなくした。このことは、mARPが転写活性化およびAChEプレmRNAの選択的スプライシング変化の両方を妨害したことを示唆する。生理食塩水により処置されたパラオクソン暴露動物と、mARPにより処置されたパラオクソン暴露動物との間における違いが、総mRNAと、AChE−S mRNAとの両方において観測された。このことは、それが真の変化を反映することを示している。したがって、暴露後7日までに、mARPは血液における暴露後のAChE産生を増大させ、筋肉のAChE産生における暴露後の低下を妨げた。
【0129】
(実施例4)
mARP投与はパラオクソンまたは細菌LPSへの暴露の生理学的結果を変化させる
mARPの潜在的な攻撃後の活性をさらに、送信機が埋め込まれたマウスを使用して処置前および処置後に体温(BT)および運動活性(MA)を記録することによって、上記の処置された動物を使用して詳しく調べた(Cohenら、2002、Mol Psychiatry、7、874〜85)。
【0130】
結果
記録を、手術手順から回復した2週間後に開始した。ベースライン値を確立した2日後に、記録を継続しながらマウスを処置した。生理食塩水の単独投与では、BT値またはMA値が、ナイーブ動物と比較したとき、送信機埋め込みマウスにおいて著しく変化しなかった(データは示さず)。
【0131】
本発明者らの作業仮説では、ストレス、LPSまたは抗コリンエステラーゼ剤暴露の後でのAChE−R蓄積が、そのような傷害に対する応答を調節するにちがいないことが予測された(Romanovskyら、2005、Front Biosci、10、2193〜216)。パラオクソン(抗コリンエステラーゼ性有機リン酸エステル)の投与は、予測され得たことだが、明期および暗期のBTおよびMAにおける低下を処置後1日目に引き起こした。図4A〜図4Fおよび図5A〜図5Fはそれぞれ、この反応についての1匹の動物の様々な例を明らかにし、6時間後にBTにおける部分的回復が続く。図4A〜図4Fは、MAが暴露後6日間を通して依然として低いままであったことを説明する;合成mARPの注射によるAChE−Rレベルにおける上昇が処置後1日目の期間中にBTにおける低下を幾分か制限し、続く暗期の期間中にBTを上昇させた。生理食塩水暴露後早くも1日目で、mARPが自発運動活性をMAの明期および暗期の両方の期間中において増大させた。OP暴露後の4、5日目までに、mARPの注射はまた、MAにおける劇的な増大を誘導した(図5D〜図5F)。したがって、長期間において、mARP処置の用いられた療法は、明期および暗期のMAを、正常な値を超えて増大させた。炎症性ストレス要因、すなわち、LPSは、パラオクソンよりも少ないにもかかわらず、BTおよびMAの両方を低下させた(それぞれ、図4A〜図4Fおよび図5A〜図5F)。LPS暴露後1日目において、mARPはBT値および/またはMA値を変化さなかったが、長期間において、mARPは、明期および暗期のMAを、正常な値を超えて増大させた。このことは、概日変化に従う、AChE−Rを過剰発現するトランスジェニックマウスについて記録された症状と矛盾しておらず(Cohenら、2002、Mol Psychiatry、7、874〜85)、また、筋肉および血漿におけるAChEのmRNA産生およびタンパク質産生とそれぞれ一致している。
【0132】
実施例1〜4についての結論
実施例1〜4は、化学的傷害および生物学的傷害に対する入り組んだAChE−R応答に関連づけられる3つの重要な事柄を明確化することを目指した。すなわち、第1に、AChEの傷害後の蓄積が細胞死を誘導しないかを見出すことを目指した。AChE−SまたはAChE−Rのどちらかを安定的に発現するCHO細胞が樹立され得たことは、これらの変異体のどちらも、測定された発現レベルでは細胞死を生じさせないという見解を裏付けている。
【0133】
第2には、過剰発現したAChEが、試験された傷害によって引き起こされる損傷を悪化させるか、または逆に、影響を受けた生物を暴露後の結果から保護するように作用するかを見出すためである。今回の発見では、後者の選択肢を支持する議論が展開されたが、AChE−Rに関連する損傷の可能性を排除することができない。第3には、これらの影響に関わるAChE−Rドメインを特定するため、また、そのドメインの合成型を、ACHE−R保護効果を模倣するその能力について試験するためである。さらにより具体的には、本発明者らは、抗コリンエステラーゼ剤または細菌感染への暴露の後における身体防御を増強させることにおけるマウスAChE−R過剰産生およびmARPについての推定される機能を調べた。パラオクソン暴露およびLPS暴露の後における、血漿中のAChE活性レベルおよびコルチコステロンレベルに対する注射されたmARPの影響、体温および運動活性に対する注射されたmARPの影響、ならびに筋肉AChE遺伝子発現に対する注射されたmARPの影響はすべてが、これらの変化が暴露後の事象のメディエーターとして作用するという仮説を裏付けている。
【0134】
腹腔内注射されたmARPが、BT、MA、血中AChE活性および筋肉AChE mRNAのレベルに影響を及ぼしたことは、この自然に切断可能なペプチドが、AChE−Rに起因すると考えられる以前に認められた影響の大部分に関わるという見解を強く裏付けている。さらに、これらの発見は、回復を促進することに関して、また、暴露に誘導された損傷を最小限に抑えることに関して、暴露を受けた対象を処置するために合成ARPを使用することの可能性を高めている。
【0135】
有機リン酸エステル系AChE阻害剤は、脳、筋肉および腸におけるAChE−Rの過剰発現を誘導する。短期間では、AChE−S変異体からAChE−R変異体へのAChEの選択的スプライシングにおける変化により、抗AChE剤暴露のもとで蓄積する過剰なAChが除かれる。長期間では、過剰な可溶性単量体AChE−Rがさらに、その非触媒的性質による造血性の細胞プロセス(例えば、顆粒球増加症および血小板新生)を誘導し得る。農業従事者において、有機リン酸エステル系殺昆虫剤に対する暴露は白血病についてのより高い危険性に相関づけられ、同様にまた、脳波計的障害および記憶障害と相関づけられた。AChEは造血系細胞系譜において発現し、末梢のコリン作動性状態を調節する。AChEがそのようなプロセスを制御する詳細な機構は、足場タンパク質RACK1およびプロテインキナーゼ(PK)Cの動員を伴うと考えられる。
【0136】
AChE−Rが、コルチゾール処置の後で、培養されているCD34造血始原体において誘導される。この上昇には、AChE−RのC末端ペプチド、すなわち、ヒト(h)ARPの切断が伴った。このペプチド切断は、短縮化されたAChEを血液におけるプロテアーゼ活性にさらすことがあり、また、LPSに対する暴露の後、ヒト血清において生じる。したがって、LPS投与およびAChE−Rのアップレギュレーションの後では、血液におけるAChレベルは低下するが、これは、その後のAChE分解のためにほんの一過性にすぎない。調節性AChレベルがさらに、前炎症性サイトカインの産生、すなわち、急性ストレスに対する主要な応答を制御する。hARPの26アミノ酸からなる合成ペプチドのエクスビボ投与は造血幹細胞の拡大および分化(有毒物質に対する生体反応の極めて重要な要素)を促進する。AChE−R発現のアンチセンス抑制はARPのこの増殖活性を妨げた。このことは、ARPの投与がAChE遺伝子発現を促進し、これにより、そのプレタンパク質AChE−Rの自己調節的な過剰産生をもたらすことを示唆する。造血細胞におけるhARPの増殖的性質と一致して、AChE−RのマウスC末端配列(mARP)が、発達中の皮質において、分化プロセスに対して遊走プロセスおよび増殖プロセスを制御することが示された。そのうえ、脳の側脳室に注射されたとき、mARPは、隣接するニューロン細胞、および注射部位から離れた区域の両方に浸透した。このことは、エンドサイトーシスおよび逆行輸送を受けるその能力を証明する。mARPの投与は、処置されたマウスにおける恐怖記憶およびLTP(これらはアンチセンス処置によって抑制することができる)をさらに高め、また、AChEの過剰発現のもとでのPKCβIIにおける海馬での増大が伴った。したがって、このペプチドの使用は、その二面的影響のために、注意して実験されなければならない。
【0137】
脳および血液の両方において、AChE−Rは、広範囲の様々なシグナル伝達経路に関与する足場タンパク質RACK1およびそのパートナーPKCβIIと相互作用する(Birikhら、2003;Sklanら、2006)。mARPペプチドは生組織において細胞に浸透することができる。脳起源および血液起源の両方の細胞の内部において、mARPは足場RACK1タンパク質(プロテインキナーゼCβIIの細胞内キャリア)と相互作用する。AChE−R/RACK1/PKCβII複合体の形成は遊離RACK1の細胞質レベルを低下させ、これにより、翻訳を阻害するその能力を、リボソーム複合体と相互作用することによって妨害する。これは著しい影響を細胞の代謝に及ぼすにちがいない。AChE−Rはまた、免疫ストレス因子LPSに対する暴露の後で蓄積し(Cohenら、2003;Pickら、2006)、または自己免疫疾患の重症筋無力症(MG)の患者の血清において、ならびに実験的自己免疫MGラット(EAMG)の血清および筋肉において蓄積する(Brennerら、2003)。AChE−Rのアンチセンス抑制はこの蓄積を防止し、EAMGラットの筋肉機能および臨床的状態を改善した。霊長類の腰髄において、ストレス関連AChE−Rのアンチセンス抑制は、運動ニューロン上にシナプスを形成する介在ニューロンにおけるその蓄積を減少させ、また、運動ニューロンにおけるコリン作動性負荷を低下させた。行われた霊長類および齧歯類での研究は、ヒトについても同様に関連する可能性が高い。しかしながら、遺伝子組換えアンチセンス配列による、ストレス後のAChE−R産生のテトラサイクリン制御された抑制は、ストレス関連カタレプシーの危険性を条件的トランスジェニックマウスにおいて増大させた。まとめると、このことは、適切な運動機能および認知機能と矛盾していないAChE−RレベルおよびARPレベルの「安全窓」を示唆する。
【0138】
実施例5〜11のための一般的な材料および方法
ヒトAChE−Rを発現するN.benthamiana植物の操作:C末端のER保持シグナルSEKDELに融合されたヒトAChE−R(GenBank#DQ140347)をコードする、植物発現のために最適化されたDNA構築物を新たに合成し、植物発現ベクターにクローン化し、N.benthamianaのアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)媒介による形質転換のために使用した(Mor,T.S.ら、Biotechnol.Bioeng.、75、259〜266)。最大のAChE活性を有する植物系統を、繁殖、種子作製およびさらなる分析のために選択した(Geyerら、2005、Chem Biol Interact、157−158、331〜334)。
【0139】
インビボ実験:植物由来AChE−RERの循環t1/2を、イソフルラン(Rhodia、Bristol、英国)により軽く麻酔され、処置前に拘束具に入れられた6週齢〜8週齢のオスFVB/Nマウスにおいて求めた。マウスに、400ユニット(U)または1000Uの精製AChE−RERを含有する80μlの生理食塩水を(尾静脈)i.v.注射した。示された時点において、尾静脈からの血液サンプル(10μl〜30μl)を採取して、PBSにおける4μlの0.25M EDTAに入れ、遠心分離(500rpmで30分間、4℃)による血漿の分離まで氷上で保った。FVB/NマウスについてのパラオクソンLD50値を種々の濃度でのパラオクソン(Sigma)の水溶液のボーラスi.v.(尾静脈)注射によって求めた。
【0140】
保護アッセイ:マウスに100μlの0.9%生理食塩水中の0〜10000UのAChE−RERを注射した。ChEレベルを、AChE注射の10分前および5分後に採血された血液サンプルから求めた。マウスを注射後10分でパラオクソン(750μg/kg)により攻撃し、症状を観察した。支持的措置は何ら与えられず、攻撃後15分以内に改善を示さなかったマウスを安楽死させた。実験はアリゾナ州立大学およびヘブライ大学(エルサレム)の施設内動物管理使用委員会によって承認された。
【0141】
生化学的分析および分子分析:葉の総ゲノムDNAブロット分析を、DIG標識されたプローブ(このプローブは、以前の記載(Morら、2001、Biotechnol.Bioeng.、75、259〜266)のように5’GTCTGCTACCAATATGTGGACACCC3’(配列番号13)および5’CCTGGAGGACAGCCCACAAGGTGGG3’(配列番号14)のプライマーによりPCR増幅された)を用いて行った。葉組織からの植物由来AChE−RERの精製は記載の通りであった(Geyerら、2005、Chem Biol Interact、157−158、331〜334)。純粋な酵素の典型的な調製物は約3000U/mgタンパク質の比活性を有したが、2000U/mgタンパク質よりも大きい比活性を有する調製物のみをインビボで使用した。
【0142】
タンパク質調製物をSDS−PAGEによって分離し、GelCode SilverSNAP染色キットII(Pierce)またはクーマシーブリリアントブルーにより染色したか、あるいは、PVDFメンブランに転写し、ヒトAChEもしくはマウスAChEに対して特有の共通ドメインに対して惹起されたポリクローナルAb(N−19およびE−19、それぞれ、Santa Cruz)、またはヒトAChE−RのC末端ドメインに対して惹起されたポリクローナルAb(Sternfeldら、2000、Proc Natl Acad Sci USA、97、8647〜8652)のどちらかにより免疫装飾した。HRPコンジュゲート化二次Ab(Sigma)およびECL−plusキット(Amersham)を検出のために使用した。総可溶性タンパク質(TSP)を記載されるように求めた(Morら、2001、Biotechnol.Bioeng.、75、259〜266)。
【0143】
AChE活性アッセイ、酵素速度論、阻害曲線および非変性PAGEのAChE活性染色は、以前に記載された通りであった(Morら、2001、Biotechnol.Bioeng.、75、259〜266)。活性アッセイおよび染色が0.5x10−5Mの特異的BChE阻害剤のテトライソプロピルピロホスホルアミド(iso−OMPA、Sigma)の存在下で行われた。
【0144】
横隔膜の組織化学的AChE活性染色のために、屠殺されたマウスを解剖して、横隔膜筋を露出させ、これを5分間にわたって4%パラホルムアルデヒドによりインサイチュ固定し、解剖して取り出し、室温で固定液において一晩保った。PBSによる洗浄を2回行った後、褐色の沈殿物が現れるまで、筋肉をKarnovsky染色液において4℃でインキュベーションした。NMJ分析は、Image−Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetids、Silver Spring、MD)を伴った。
【0145】
(実施例5)
植物におけるヒトER捕捉AChE−Rの産生
ヒトおよび他の哺乳動物はAChEのいくつかの分子変異体を発現する。すべてが共通コアドメインおよび酵素特性を有するが、異なったC末端ペプチド、発現パターン、細胞内局在化およびタンパク質パートナー相互作用を有する(図6A)。他の異種発現システムのように、植物は、非ヒト型の複合グリカンにより装飾される様々な組換えヒトタンパク質を発現することができ、それらの速い循環クリアランスが予測される。加えて、植物グリカンは、場合によりアレルゲン性であり得る特有の糖エピトープを含有することがある。したがって、本発明者らは、cis−ゴルジからERに戻るその逆行輸送を可能にするC末端ペプチドSEKDELを含有させるようにAChE−Rを操作した(図6B)。これらの改変により、本発明者らは、AChE−RERを0.5%〜1.0%のTSP(約19U/mgタンパク質または約30mg/kg新鮮重量)にまで蓄積させた、少なくとも4コピーの導入遺伝子を有する植物系統(図6C)を選択することができた。
【0146】
結果
選択された系統を、米国農務省により承認された封じ込め温室において種子作製およびバイオマス作製のために繁殖させた(図6D)。植物は、通常の生育条件のもとでは、WT植物と表現型が識別できないように見えた。
【0147】
AChE−RERタンパク質を、WTの抽出物には存在しない67kDaのバンドを明らかにするSDS−PAGEによって粗植物抽出物において検出することができた(図7A)。AChE−RERが、プロカインアミド親和性クロマトグラフィーと、それに続くアニオン交換クロマトグラフィーを使用して植物抽出物から均一に精製され(Geyerら、2005、Chem Biol Interact、157−158、331〜334)、これは、3000U/mgを超える精製タンパク質の最終的な比活性を有した。SDS−PAGEによって分離され、クーマシー染色または銀染色のどちらかにより可視化されたとき、精製されたタンパク質は、AChE特異的Abと強く反応する二重線として現れた(図7A、図7B)。ERにおけるその保持によって予測されるように、このタンパク質は高マンノースグリカンを含有し(データは示さず)、ゲルにおいて明らかなこれら2つのバンドは、おそらくは2つの異なってグリコシル化された種を表すことが考えられる。タンパク質の配列決定では、ヒト細胞株において発現するAChEについて以前に明らかにされたように、蓄積している酵素が正しくプロセシングされ、成熟タンパク質のN末端残基がR35であったことが明らかにされた。非変性PAGE(図7C)では、組換えAChE−Sとは異なり、AChE−RERが単量体であることが明らかにされた。このことは以前の観測結果と矛盾していない。植物産生AChE−RERの純粋な調製物は、4℃において少なくとも12ヶ月間安定であることが見出された。
【0148】
(実施例6)
植物由来AChE−RERの速度論的特徴づけ
植物由来のヒトAChE−RERおよびヒトAChE−Sの活性を(Sigmaから得られる)細胞培養物由来のヒトAChE−Sと比較した(Soreqら、1990、Proc Natl Acad Sci USA、87、9688〜9692)。3つすべての変異体についてのK値は互いに非常に類似しており、また、文献に報告される値と類似していた(約0.2mM、図7D、Kronmanら、1992、Gene、121、295〜304;Sternfeldら、1998、J.Neurosci.、18、1240〜1249)。これらの酵素は、2mMを超える基質濃度による特徴的な阻害を示したが、植物由来のAChE−Sと、細胞由来のAChE−Sとの間には有意な差はなかった。興味深いことに、基質阻害がR変異体の場合にはより顕著であり、C末端の活性部位の分子間シグナル伝達と匹敵した。ほんのわずかな違いが、AChE−RERがパラオクソン(殺虫剤パラチオンの活性なOP代謝物)と結合し、これによって阻害され得ることにおいて観測された(図7E)。
【0149】
(実施例7)
植物由来AChE−RERの循環クリアランス
マウスにおける植物由来AChE−RERのクリアランスを、酵素(400Uまたは1000Uのどちらか)をi.v.注射し、血漿サンプルにおけるその残存活性をiso−OMPAの存在下で測定することによって求めた(図8A)。
【0150】
結果
植物由来のヒト酵素が迅速に排出され、循環t1/2=24分であり、これは、他の供給源から得られるAChEによる観測結果と類似していた(Kronman,C.ら(2005)、Chem Biol Interact、157−158、51〜55)。
【0151】
ヒトAChEが、コントロール動物からではなく、400UのAChE−RERにより処置されたマウスから得られる血漿サンプルにおいて、ヒトAChEの共通ドメインに対して特異的なAbによる免疫ブロッティングによって検出された。AChEタンパク質のレベルが10分におけるその初期ピークの後で低下し、2時間後にはもはや検出できず、このことは酵素アッセイと矛盾していなかった(図8A)。
【0152】
非変性PAGEでは、コントロールを含めて、すべてのマウスの血漿において、ゆっくり移動するChEバンド(これは、iso−OMPAによる阻害を受けないBChEオリゴマーを表すと思われる)が明らかにされた。しかしながら、触媒活性な単量体酵素が、PBSが注射されたコントロールではなく、AChE−RERが注射された動物の血漿において観測された(図8C)。驚くべきことに、精製された植物由来AChE−RERと比較した場合(図8C、左レーン)、マウスの血漿サンプルにおける注射された酵素は、いくつかの幅広いバンドとしてよりゆっくり移動した(図8C)。
【0153】
(実施例8)
植物産生AChE−RERによるOP攻撃からの保護
外部から適用されたAChE−RERが動物をOP攻撃から保護し得るかを試験するために、本発明者らはパラオクソンの実験的単回ボーラスLD50の影響を明らかにした。
【0154】
結果
6週齢〜8週齢のオスのFVB/Nマウスにおいて、LD50は660μg/kgであった。植物産生によるヒトAChE−RERの増大する量(体重に対して調節された用量)による前処理に続いて、1.14xLD50のパラオクソンによる攻撃を行い、症状を観察し、記録した(図9A〜図9B)。この用量のパラオクソンは、別途処置されていないマウスについては100%致死的であり、死の前に、重篤なコリン作動性症状(痙攣および不自然な呼吸能)が生じ、5分〜10分のうちに死に至る。17匹のマウスを植物由来AChE−RERにより前処理することにより、AChE−RER/OPのモル比が、BChEによる同等な化学量論的保護よりもはるかに低い0.04のときでさえ、死亡率が低下した。この低いモル比において、生存動物は最初、重篤な症状を示し、その後、より穏やかな症状(あまり激しくない痙攣および振せん)を示した。症状は徐々に小さくなり、そして、4時間以内に、マウスはほんの軽度の徴候(低下した運動活性および全身倦怠感)を示した。重要なことに、パラオクソン注射後の最初の15分を生き延びたすべてのマウスが、明らかに完全な回復を24時間以内に示した。
【0155】
植物由来AChE−RERのより大きい予防的用量は、なお一層より良好な保護をもたらした。酵素/薬剤モル比が0.09を超える場合、初期症状は中程度であり、0.2を超える場合、初期症状は軽度にすぎなかった。0.5を超える酵素/薬剤比率により処置されたマウスは暴露後の症状の徴候を何ら示さなかった。すべての生存マウスの6ヶ月間のモニタリングでは、明白な神経障害または他の症状が明らかにされなかった。投与されたヒト酵素に対して特異的なIgGの極めて低い力価が観測された;しかしながら、AChE特異的なIgE、またはマウスAChEに対して向けられた自己Abのどちらも、植物由来AChE−RERの最大用量(約10000U)でさえ、それにより処置されたマウスから得られた血清サンプルにおいて検出することができなかった(データは示さず)。
【0156】
(実施例9)
AChE−RERによる処置は血漿における宿主AChEのOP誘導によるアップレギュレーションを制限する
OP暴露は2つの一見して逆の影響を誘導する:第1に、OP暴露は遮断によってChE活性を低下させ、第2に、OP暴露はAChE−Rの長く続くフィードバック過剰産生を誘導する。別の1組の実験において、本発明者らは、AChE−RERがOP中毒のこれらの遅れた影響から保護する能力を調べた。この目的を達成するために、マウスをPBS+/−AChE−RER(400U)のi.v.投与によって前処理し、その後、亜致死的(0.8LD50)または致死的(1.13LD50)なパラオクソン攻撃を行った。
【0157】
結果
保護されていない亜致死的な攻撃を受けたマウス、またはAChEにより保護された致死的な攻撃を受けたマウスはすべて、重篤なコリン作動性症状を示し、その後で回復した(生存率は、亜致死的な攻撃を受けたマウスおよび致死的な攻撃を受けたマウスについてそれぞれ、100%および70%であった)。処置後10日で、マウスを安楽死させ、血漿サンプルおよび骨格筋サンプルを採取した。このとき、すべてのマウスが、予測され得たことだが、OP攻撃によって誘導されるそれらの血漿AChEレベルにおける小さい増大を経た(図9B、図10A)。この遅れた時点での血漿AChE活性は、保護されていない亜致死的な攻撃を受けたマウスと比較したとき、酵素により処置された動物では実質的により低かった。このことは、長く続くAChE−Rの過剰産生の、効果的ではあるが不完全な相殺が、植物由来AChE−RERの投与によるものであることを示唆する。植物由来AChE−RERの単独投与は、注射後10日において、血漿AChE−R活性のレベルを著しく制限した(図9B、図10A)。このことは、この相殺が、循環系における高いレベルのAChE分子に対するフィードバック応答であったという見解を裏付ける。さらに、血漿AChE活性におけるOP誘導による増大の酵素前処理による調節が、攻撃後10日で得られたサンプルの非変性ゲルによって観測されるAChE単量体(おそらくは、マウスAChE−R)における対応する変化によって反映される(図10A)。したがって、内因性マウスAChE(具体的には、マウスAChE−R)の血漿レベルにおける中毒後の増大が、外部から適用された植物由来酵素によって少なくとも部分的に軽減され得ると結論することができる。
【0158】
(実施例10)
AChE−RERによる処置はOP中毒により誘導されるNMJの異常形態を改善する
結果
酵素による前処理は、致死的OP傷害および亜致死的OP傷害の両方の後での骨格(脚)筋肉におけるマウスAChE−Rの暴露後の蓄積に対する相当の弱化作用を発揮し、その阻害を防止した(図10C)。同時に、AChE−RERにより前処理されたマウスにおける筋肉AChE活性は、攻撃されていないコントロールの筋肉AChE活性と類似しており(図10D〜図10E)、投与されたAChE−RERが、筋肉AChE−Rを阻害から保護する「おとり」として働いたという仮説と矛盾していなかった。したがって、植物由来AChE−RERの投与はAChE遺伝子発現におけるOP誘導による変化を相互に調節し、これにより、マウスの循環におけるOP誘導によるAChE−Rの産生を低下させながら、筋肉におけるその阻害を防止したようである。
【0159】
様々なOPによって誘導されるNMJの長期間の異常形態に対するAChE−RERの影響を調べるために、無傷の横隔膜筋を処置後10日で解剖し、触媒活性なAChEについて染色して、NMJの密度および平均個々面積に関して分析した(図11A〜図11B)。パラオクソン暴露は、PBSコントロールと比較したとき、大きいNMJの密度および割合の両方を増大させた(図11A〜図11B、P<0.01(メジアン検定)を示す)。400UのAChE−RERによる前処理はNMJ面積の暴露に誘導された拡大の少なくとも一部を妨げたが、400UのAChE−RER単独による処理は非暴露の横隔膜においてNMJの密度または面積を変化させなかった(P>0.05(メジアン検定)、図11A〜図11B)。これらの発見により、これらの弱まったNMJの異常形態の影響が宿主筋肉組織における改善されたフィードバック応答の結果であると考えられる。
【0160】
(実施例11)
AChE−RERの、OP中毒のこれらの遅れた影響から保護する能力
OP暴露は2つの一見して逆の影響を誘導する:第1に、OP暴露は遮断によってChE活性を低下させ、第2に、OP暴露はAChE−Rの長く続くフィードバック過剰産生を誘導する。本実施例において、本発明者らは、AChE−RERがOP中毒のこれらの遅れた影響から保護する能力を調べた。この目的を達成するために、マウスをPBS+/−AChE−RER(400U)のi.v.投与によって前処理し、その後、亜致死的(0.8LD50)または致死的(1.13LD50)なパラオクソン攻撃を行った。
【0161】
結果
保護されていない亜致死的な攻撃を受けたマウス、またはAChEにより保護された致死的な攻撃を受けたマウスはすべて、重篤なコリン作動性症状を示し、その後で回復した(生存率は、亜致死的な攻撃を受けたマウスおよび致死的な攻撃を受けたマウスについてそれぞれ、100%および70%であった)。処置後10日で、マウスを安楽死させ、血漿サンプルおよび骨格筋サンプルを採取した。このとき、すべてのマウスが、予測され得たことだが、OP攻撃によって誘導されるそれらの血漿AChEレベルにおける小さい増大を経た(図9B、図10A)。この遅れた時点での血漿AChE活性は、保護されていない亜致死的な攻撃を受けたマウスと比較したとき、酵素により処置された動物では実質的により低かった。このことは、長く続くAChE−Rの過剰産生の、効果的ではあるが不完全な相殺が、植物由来AChE−RERの投与によるものであることを示唆する。植物由来AChE−RERの単独投与は、注射後10日において、血漿AChE−R活性のレベルを著しく制限した(図9B、図10A)。このことは、この相殺が、循環系における高いレベルのAChE分子に対するフィードバック応答であったという見解を裏付ける。さらに、血漿AChE活性におけるOP誘導による増大の酵素前処理による調節が、攻撃後10日で得られたサンプルの非変性ゲルによって観測されるAChE単量体(おそらくは、マウスAChE−R)における対応する変化によって反映される(図10A)。
【0162】
血漿AChE活性におけるOP誘導による増大の酵素前処理による調節が、攻撃後10日で得られたサンプルの非変性ゲルによって観測されるAChE単量体(おそらくは、マウスAChE−R)における対応する変化によって反映される(図10A)。これらの単量体は、マウスによってそれらの投与後2時間で完全に排出された植物由来の純粋なAChE−RERよりも幾分か遅く移動する(図8A〜図8C)。移動がより遅いこの種は、攻撃後のマウスAChE−Rのタンパク質・タンパク質の相互作用または異なったグリコシル化パターンのどちらかを反映し得る。
【0163】
AChEの総量(活性型および不活性型)における長期間の変化を検出するために、血漿タンパク質をSDS−PAGEによって分離し、その後、AChEタンパク質を、AChEの共通ドメインに対して向けられた特異的なAb、またはマウスAChE−Rの特有のカルボキシル末端ドメインに対して向けられた特異的なAbを使用して検出した(図10B)。それぞれの処置群における個々のマウスが相当の生存性を示した。それにもかかわらず、血液におけるマウスAChEのパラオクソン誘導による用量依存的な上昇が、酵素による前処理によって阻止されるようであった。したがって、マウスAChE−Rの血漿での蓄積は総AChEにおける変化の傾向に対応し(図10B)、また、AChE活性および活性なAChE単量体に関して認められる傾向と一致した(図9B、図10A)。したがって、内因性マウスAChE(具体的には、マウスAChE−R)の血漿レベルにおける中毒後の増大が、外部から適用された植物由来酵素によって少なくとも部分的に軽減され得ると結論することができる。
【0164】
酵素による前処理は、致死的OP傷害および亜致死的OP傷害の両方の後での骨格(脚)筋肉におけるマウスAChE−Rの暴露後の蓄積に対する相当の弱化作用を発揮し、その阻害を防止した(図10C)。
【0165】
筋肉において、AChE分子の大多数は、傷害後でさえ、シナプス型変異体(AChE−S)の分子である。AChE−Sはさらに、組織ホモジネートの逐次抽出によって分離され得るいくつかの分子形態(可溶性形態および膜結合型形態を含む)に組織化され得る。低塩緩衝液におけるホモジネート化は可溶性(単量体)のAChE−SおよびAChE−Rを遊離させる(これらはまとめて、総AChE活性の約15%を表す;図10E)。その後の抽出は、最初に、1%のTriton X−100を含有する緩衝液(低塩緩衝液−界面活性剤、約65%)により、次いで、1MのNaClを含有する緩衝液(高塩、約20%)により行われ、AChE−S種を、ほとんどが、膜と結合する四量体として遊離させる(データは示さず)。植物由来AChE−RERの投与は、総筋肉AChE活性に対する著しい影響を有しないが、致死的用量のパラオクソンは、おそらくは四量体AChE−Sと考えられるが、AChEの膜結合した界面活性剤可溶性形態における約50%の低下を引き起こした(図10E)。保護されていないマウスにおいて、パラオクソンはまた、低塩可溶性AChE活性(おそらくはAChE−R)における著しい低下を引き起こした(約16.4%、図10E)。このことは、宿主筋肉AChE−RがOPによって不可逆的に阻害され、これにより、「老化した」酵素が生じることを示唆する。AChE−RERによる処置はこの傾向を逆転させ、その結果、AChE活性がPBSコントロールの活性に見かけ上は類似し(図10E)、そのAChE活性は、投与されたAChE−RERが、筋肉AChE−Rを阻害から保護する「おとり」として働いたという仮説と矛盾していなかった。結論として、植物由来AChE−RERの投与はAChE遺伝子発現におけるOP誘導による変化を相互に調節し、これにより、マウスの循環におけるOP誘導によるAChE−Rの産生を低下させながら、筋肉におけるその阻害を防止した。
【0166】
考察
OP中毒の影響を中和するための有用な予防剤および/または治療剤についての探索は、製造コスト、安全性、ならびに当然のことではあるが、短期間および長期間の両方の保護を確実にすることができることを含めて、多くの要素を考慮しなければならない。ここでは、本発明者らは、植物での製造が最初の2つの問題に対処し、一方、AChEの可溶性の、ストレスに関連づけられる「読み過ごし」スプライス変異体を選ぶことが、第3および第4の問題に対処することを明らかにしている。
【0167】
本発明者らは、依然としてその実験的初期段階にあるが、タンパク質医薬品の製造のための有望なシステムとして近年出現したトランスジェニック植物においてヒトAChE−RERを発現させた。植物システムは、(同等の精製コストおよび規制コストによる)低い製造コスト、(低い資本投資による)製造の規模拡大性および柔軟性、ならびに改善された安全性(ヒト病原体およびプリオンの懸念がないこと)を提供する。他の異種発現システムと同様に、植物におけるN結合型グリコシル化プロセスは、ヒトにおけるグリコシル化プロセスとは細部で異なる。これに関連して、2つの大きな問題が提起される:植物がその糖タンパク質をシアル化することができないことによる加速された循環クリアランス、および特有の植物糖エピトープが複合グリカン上に存在することによる増大したアレルゲン性の危険性。これらの危険性を最小限に抑えるために、AChE−Rの蓄積がERに向けられ、したがって、これにより、ヒトにおけるアレルギー反応に時には関連するキシロース残基およびフコース残基が付加されるtrans−ゴルジが回避された。実際、予備的データは、植物由来AChE−RERが、ヒトの高マンノースグリカンとは異ならない、したがって、「アレルゲン性」の糖エピトープを有しない高マンノースグリカンによって装飾されることを示す。
【0168】
組換えAChE−RのER保持は、非常に高いレベルへのその蓄積を可能にした(約1%のTSP)。その天然の対応体と同様に、植物由来タンパク質が循環から迅速に排出された。哺乳動物ChEの循環t1/2は、タンパク質表面におけるアミノ酸ドメイン、グリカン構造、およびタンパク質のオリゴマー化状態に依存する。排出速度は、排出速度が測定される種、試験されたタンパク質のゲノム起源、および産生宿主によって影響される。例えば、(ヒト細胞株で産生された)サルAChE−SおよびヒトAChE−Sの霊長類におけるクリアランスはタンパク質のオリゴマー化状態またはそのグリコシル化によってほんのわずかに影響されるだけである。同様に、ヒト血液から精製されたBChEは齧歯類において特徴的に長い循環t1/2を示し、一方、ハムスター細胞株、またはトランスジェニックヤギの乳腺で産生された組換えヒトBChEは、はるかにより速く排出された。組換えChEの投与によって遭遇する劣った薬物動態学的パラメーターを、タンパク質を、迅速なクリアランスの原因となる表面特徴を遮蔽するポリ(エチレングリコール)により装飾することによって改善することができる。したがって、トランスジェニックヤギの乳汁に由来する「PEG化」された組換えヒトAChE−Sまたは組換えBChEは、齧歯類、ブタまたはサルのどれにおいても、非PEG化タンパク質と比較したとき、著しく長い循環t1/2を示した。
【0169】
本明細書中上記の実施例は、組換えヒトAChE−RERが、商業的に実行可能なレベルにまでトランスジェニック植物組織に蓄積し得ること、組換えヒトAChE−RERが容易に均一に精製され得ること、ならびに組換えヒトAChE−RERが、基質加水分解およびOP結合に関して、真性ヒト酵素の速度論的特徴を有することを明らかにする。ER捕捉型の可溶性AChE−Rの植物での製造は、いくつかのレベルで好都合であることが見出された。組換えヒトAChE−RERは、商業的に実行可能なレベルにまで植物組織に蓄積する(図6A〜図6D)。均一に精製されたとき、組換えヒトAChE−RERは、基質加水分解およびOP結合に関して、真性ヒト酵素の速度論的特徴に達する(図7A〜図7E)。動物に対するそのほぼ化学量論的投与は、循環している様々なChEのレベルを劇的に上昇させ(図8A〜図8C)、これにより、動物をOP中毒の急性症状および死亡から完全に保護した(図9A〜図9B)。さらに、AChE−Rによる予防は、ACHE遺伝子発現の長期間のアップレギュレーションを緩和することによってOP毒性の慢性的影響を改善した(図9A〜図9Bおよび図10A〜図10E)。このことは、新しい側面をChE治療の概念に加える。能動的なOPバイオスカベンジャーとしてのその機能のほかに、AChEのこの特定のイソ型は、OP暴露に対する長く続く分子的フィードバック応答に関連する悪循環を積極的に妨げることができる。
【0170】
OP系ChE阻害剤に対する暴露はNMJおよび末梢組織におけるシナプスAChのレベルを急速に増大させ、これにより、いわゆる「コリン作動性クリーゼ」を開始させる(図11C)。AChE−Rの過剰産生は、ACh加水分解能を循環の至るところで増大させることによってコリン作動性バランスを迅速に元に戻す;しかしながら、AChE−Rの持続した過剰産生は、前炎症性サイトカインの過剰産生、行動障害、陳述記憶喪失、筋肉の機能不全および過度な骨髄造血と結びつく。この酵素による前処理は炎症マーカーの一過性の上昇を引き起こすと考えられる;しかしながら、植物由来AChE−RERの組み込まれた一過性は、そのような影響の持続期間を制限する。そのうえ、循環における内因性AChE−Rの軽減された過剰産生は、そのような症状の持続期間をさらに制限するにちがいない。このことは、この特定のAChEイソ型による前処理がOP中毒後の急性コリン作動性クリーゼを防止し得るだけでなく、その有害な慢性的後遺症もまた制限するかもしれないことを示唆する。
【0171】
明確にするため別個の実施形態で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0172】
本発明はその特定の実施形態によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本明細書中で言及した刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許もしくは特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【配列表フリーテキスト】
【0173】
配列番号1は、アセチルコリンエステラーゼ読み過ごし同位型(oAChE−R)合成構築物の配列である。
配列番号2は、アセチルコリンエステラーゼ読み過ごし同位型(oAChE−R)ポリペプチドの配列である。
配列番号3は、C末端ER保持シグナルに融合されたアセチルコリンエステラーゼ(hAChE−R ER)ポリヌクレオチドの配列である。
配列番号4は、C末端ER保持シグナルに融合されたアセチルコリンエステラーゼ(hAChE−R ER)ポリペプチドの配列である。
配列番号5は、hARPを発現するポリヌクレオチド(AChE−Rの活性部分)の配列である。
配列番号6は、hARP(AChE−Rの活性部分)の配列である。
配列番号7は、mARPを発現するポリヌクレオチド(AChE−Rの活性部分)の配列である。
配列番号8は、mARP(AChE−Rの活性部分)の配列である。
配列番号9〜14は、一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機リン酸エステル暴露関連損傷をその必要性のある対象において処置または防止する方法であって、治療有効量のAChE−Rを対象に与え、それにより、有機リン酸エステル暴露関連損傷を対象において処置することを含む方法。
【請求項2】
前記AChE−RはARPを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記AChE−Rは組換えAChE−Rを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組換えAChE−Rは植物産生AChE−Rである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記AChE−Rは、配列番号2および4に示される通りのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記与えることは、対象に前記AChE−Rを投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記与えることは、有機リン酸エステル暴露の前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記投与することは、吸入によって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記投与することは、暴露の10時間前から暴露の7日後まで行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記投与することは、吸入および注射によって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
対象に、アトロピンと、場合によりオキシムとを投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記与えることは、局所適用によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
固体担体に固定化されたAChE−Rを含む、有機リン酸エステル暴露関連損傷を処置または防止するための製造物。
【請求項14】
前記固体担体は局所投与のためのものである、請求項13に記載の製造物。
【請求項15】
局所投与のための前記固体担体は、スポンジ、拭き取り材および布地からなる群から選択される、請求項14に記載の製造物。
【請求項16】
前記固体担体は、フィルター、布地および裏当てからなる群から選択される、請求項13に記載の製造物。
【請求項17】
前記AChE−RはARPを含む、請求項13に記載の製造物。
【請求項18】
前記AChE−Rは組換えAChE−Rを含む、請求項13に記載の製造物。
【請求項19】
前記組換えAChE−Rは植物産生AChE−Rである、請求項18に記載の製造物。
【請求項20】
前記AChE−Rは、配列番号2および4に示される通りのものである、請求項19に記載の製造物。
【請求項21】
表面をAChE−Rと接触させ、それにより、表面を解毒することを含む、表面を解毒する方法。
【請求項22】
表面を、腐食剤、除染用フォーム、焼き付け条件熱と二酸化炭素との組合せ、またはこれらの組合せと接触させることをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記AChE−Rが、被覆、塗料、膜非形成被覆、エラストマー、接着剤、シーラント、織物に適用される材料、またはワックスに含まれる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記AChE−RはARPを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記AChE−Rは組換えAChE−Rを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記組換えAChE−Rは植物産生AChE−Rである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記AChE−Rは、配列番号2および4に示される通りのものである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
AChE−Rを含む被覆材。
【請求項29】
前記AChE−RはARPを含む、請求項28に記載の被覆材。
【請求項30】
前記AChE−Rは組換えAChE−Rを含む、請求項28に記載の被覆材。
【請求項31】
前記組換えAChE−Rは植物産生AChE−Rである、請求項30に記載の被覆材。
【請求項32】
前記AChE−Rは、配列番号2および4に示される通りのものである、請求項31に記載の被覆材。

【図11B】
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【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6A−B】
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【図6C−D】
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【図7A−C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D−E】
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【図11A】
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【図11C】
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【公表番号】特表2010−536843(P2010−536843A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521529(P2010−521529)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【国際出願番号】PCT/IL2007/001032
【国際公開番号】WO2009/024957
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(309038764)イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム リミテッド (6)
【出願人】(510048462)ジ アリゾナ ボード オブ リージェンツ フォー アンド オン ビハーフ オブ アリゾナ ステート ユニヴァーシティー (1)
【Fターム(参考)】