説明

有機光電変換材料および有機薄膜光電変換素子

【課題】塗布成膜が可能で、長波長域(近赤外域)まで光電変換能を有する高性能な有機光電変換材料を提供する。また、高性能な有機薄膜光電変換素子を提供する。
【解決手段】下記一般式1で表される化合物を含有する有機薄膜光電変換素子用有機光電変換材料及び該有機光電変換材料を光電変換層に用いた有機薄膜光電変換素子。
一般式1


(式中、Dは結合位がsp炭素である電子供与性芳香族置換基を表す。複数のDは同一であっても異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の化学構造を有する化合物を含有する有機光電変換材料、および該光電変換材料を用いてなる高性能な有機薄膜光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ユビキタスな情報社会を迎え、いつでもどこでも使用できる情報端末が求められている。そのため、フレキシブルかつ軽量で安価な電子デバイスが望まれているが、従来のシリコンのような無機半導体材料を用いた電子デバイスでは、これらの要望に十分に対応できていない。そこで、近年、これらの要望に対応可能な有機半導体材料を用いた電子デバイスの研究が活発になされている(非特許文献1、2)。
【0003】
有機半導体材料を光電変換材料として用いることにより、光センサ(特許文献1〜3)や有機薄膜太陽電池(非特許文献3、4)などの有機光電変換素子が得られる。これらは、シリコンなどの無機半導体材料を用いた素子と比べて製造工程が容易であり、特に湿式プロセスによる成膜が可能な有機半導体材料を用いれば、低温、低コストで大面積の素子を作製できる可能性を秘めている。これまでに例えば、湿式プロセスにより成膜したP3HT(ポリ(3−ヘキシルチオフェン))とPCBM([6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル)とからなるブレンド膜を光電変換層として用いた有機光電変換素子が報告されている。しかし、シリコン光電変換素子に光電変換性能が及ばず、更なる性能の向上が求められている。性能向上において最も問題とされている点としては、現在のP3HTとPCBMからなる素子では用いている材料の光吸収波長領域が狭いため、特に長波長領域(近赤外領域)の光を利用できていないことが挙げられる。このため、太陽電池としてはエネルギー変換効率が低く、光センサとしては長波長域に感度を示さないものになってしまっている。このため、より長波長域(近赤外域)まで光吸収および光電変換特性を示す有機光電変換材料の開発が求められている(非特許文献3、4)。
【0004】
近赤外域まで光吸収を示す材料として、クロコニウム色素(特許文献4、非特許文献5)が知られているが、有機薄膜光電変換素子に使用された例はなく、その光電変換能は確認されていなかった。
【特許文献1】特開2003−234460
【特許文献2】特開2003−332551
【特許文献3】特開2005−268609
【特許文献4】特開2001−117201
【非特許文献1】Chemical Reviews,2007,107,1296−1323.
【非特許文献2】「Organic Field−Effect Transistors」(2007年刊、CRC Press)159−228頁。
【非特許文献3】「Organic Photovoltaics」(2005年刊、Taylor&Francis)49−104頁
【非特許文献4】Chemical Reviews,2007,107,1324−1338.
【非特許文献5】Dyes and Pigments,1988,10,13−22.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、その目的は塗布成膜が可能であり、長波長域(近赤外域)まで光電変換能を有する高性能な有機光電変換材料を提供すること、および該有機光電変換材料を用いた高性能な有機薄膜光電変換素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、鋭意検討を行った結果、上記課題を解決する手段として、以下のような光電変換材料の選択、および該光電変換材料を用いた高性能な有機薄膜光電変換素子を見出した。
すなわち本発明は以下の通りである。
(1)下記一般式1で表される化合物を含有する有機薄膜光電変換素子用有機光電変換材料。
【0007】
一般式1
【化1】

【0008】
(式中、Dは結合位がsp炭素である電子供与性芳香族置換基を表す。複数のDは同一であっても異なっていてもよい。)
(2)2つの電極層と有機薄膜光電変換層を有してなる有機薄膜光電変換素子であって、(1)に記載の有機光電変換材料を光電変換層に用いた有機薄膜光電変換素子。
(3)前記光電変換層が、前記有機光電変換材料とn型有機半導体材料とを含んでなる(2)に記載の有機薄膜光電変換素子。
(4)前記光電変換層が、前記有機光電変換材料とn型有機半導体材料を含むブレンド膜を有してなる(3)に記載の有機薄膜光電変換素子。
【0009】
(5)前記n型有機半導体材料が、フラーレン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタレンテトラカルボニル化合物及びペリレンテトラカルボニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種である(3)または(4)に記載の有機薄膜光電変換素子。
(6)前記n型有機半導体材料がフラーレン化合物である(3)〜(5)のいずれかに記載の有機薄膜光電変換素子。
(7)前記光電変換層の成膜方法が溶液塗布法である(2)〜(6)のいずれかに記載の有機薄膜光電変換素子。
(8)前記溶液塗布法における溶媒が、沸点135℃以上300℃未満の溶媒を少なくとも一種含む(7)に記載の有機薄膜光電変換素子。
(9)前記電極層のうちの少なくとも1つと有機光電変換層との間に、導電性ポリマーを含むバッファ層を有する(2)〜(8)のいずれかに記載の有機薄膜光電変換素子。
(10)素子作製後に不活性雰囲気下で封止された(2)〜(9)のいずれかに記載の有機薄膜光電変換素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、塗布成膜が可能で、長波長域(近赤外域)まで光電変換能を有する有機光電変換材料が得られる。また、該有機光電変換材料を用いることで、近赤外域に感度を有する高性能な有機薄膜光電変換素子が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で用いられる一般式1で表される有機光電変換材料(以下、「本発明の有機光電変換材料」ともいう)について詳細に記載する。
【0012】
一般式1
【化2】

【0013】
式中、Dは結合位がsp炭素である電子供与性芳香族置換基を表す。電子供与性芳香族置換基とは、無置換のベンゼン環と比べて電子密度が高い芳香族置換基であり、ベンゼンと比べてより酸化が起こりやすく、還元が起こりにくい芳香族置換基と定義する。複数のDは同一であっても異なっていてもよい。光電変換能と溶解性の観点から、Dで表される構造として、好ましくは炭素数3〜30のものであり、より好ましくは炭素数6〜20のものである。Dとして、好ましくは以下の一般式D−1〜D−11のいずれかで表されるものである。
【0014】
【化3】

【0015】
上記化学式中の「*」は結合部位を示す。
D−1〜D−11において、AはCR、O、S、Se、Te、NRのいずれかを表し、BはCR、Nのいずれかを表し、Rは水素原子または置換基を表し、mは整数を表す。複数のRは同一でも異なっていてもよい。Rが表す置換基としてはいかなるものでもよく、後述のWより選ぶことができる。好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基であり、複数のRが共同して環を形成している場合も好ましい。
D−1〜D−11において、さらに好ましいのはD−1〜D−7であり、D−1、D−2、D−3、D−4、D−6が特に好ましい。
【0016】
本発明において、置換基の特定の部分を「基」と称した場合には、当該部分の基はそれ自体が置換されていなくてもよく、また、一種以上の(可能な最多数までの)別の置換基でさらに置換されていても良いことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。つまり、本発明における化合物における置換基はさらに置換されていても良い。
【0017】
このような置換基をWとすると、Wで示される置換基としてはいかなるものでも良く、特に制限は無いが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(直鎖もしくは分岐アルキル基のほか、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(直鎖もしくは分岐アルケニル基のほか、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の置換基が例として挙げられる。
【0018】
さらに詳しくは、Wは下記の(1)〜(48)などを表す。
(1)ハロゲン原子
例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子
【0019】
(2)アルキル基
直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、(2−a)〜(2−e)なども包含するものである。
【0020】
(2−a)アルキル基
好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜20のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)
【0021】
(2−b)シクロアルキル基
好ましくは、炭素数3〜30、より好ましくは3〜20の置換または無置換のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)
【0022】
(2−c)ビシクロアルキル基
好ましくは、炭素数5〜30、より好ましくは5〜20の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基(例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)
【0023】
(2−d)トリシクロアルキル基
好ましくは、炭素数7〜30、より好ましくは7〜20の置換もしくは無置換のトリシクロアルキル基(例えば、1−アダマンチル)
【0024】
(2−e)さらに環構造が多い多環シクロアルキル基
なお、以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)はこのような概念のアルキル基を表すが、さらにアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。
【0025】
(3)アルケニル基
直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、(3−a)〜(3−c)を包含するものである。
【0026】
(3−a)アルケニル基
好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは2〜20の置換または無置換のアルケニル基(例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)
【0027】
(3−b)シクロアルケニル基
好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは3〜20の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)
【0028】
(3−c)ビシクロアルケニル基
置換または無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは炭素数5〜30、より好ましくは5〜20の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基(例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)
【0029】
(4)アルキニル基
好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは2〜20の置換もしくは無置換のアルキニル基(例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)
【0030】
(5)アリール基
好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは6〜20の置換もしくは無置換のアリール基(例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル、フェロセニル)
【0031】
(6)ヘテロ環基
好ましくは、5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数2〜50の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。ヘテロ原子はN、O、S、Se、Te、Si、Geがあげられる(例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル。なお、1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性のヘテロ環基でも良い)。
【0032】
(7)シアノ基
【0033】
(8)ヒドロキシ基
【0034】
(9)ニトロ基
【0035】
(10)カルボキシ基
【0036】
(11)アルコキシ基
【0037】
好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)
【0038】
(12)アリールオキシ基
好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは6〜20の置換もしくは無置換のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)
【0039】
(13)シリルオキシ基
好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは2〜20のシリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)
【0040】
(14)ヘテロ環オキシ基
好ましくは、炭素数2〜30、より好ましくは2〜20の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)
【0041】
(15)アシルオキシ基
好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30、より好ましくは2〜20の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30、より好ましくは6〜20の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)
【0042】
(16)カルバモイルオキシ基
好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜20の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)
【0043】
(17)アルコキシカルボニルオキシ基
好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは2〜20の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基(例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)
【0044】
(18)アリールオキシカルボニルオキシ基
好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは7〜20の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)
【0045】
(19)アミノ基
好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30、より好ましくは1〜20の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基(例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)
【0046】
(20)アンモニオ基
好ましくは、アンモニオ基、炭素数1〜30、より好ましくは1〜20の置換もしくは無置換のアルキル、アリール、ヘテロ環が置換したアンモニオ基(例えば、トリメチルアンモニオ、トリエチルアンモニオ、ジフェニルメチルアンモニオ)
【0047】
(21)アシルアミノ基
好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30、より好ましくは1〜20の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基(例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)
【0048】
(22)アミノカルボニルアミノ基
好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜20の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ(例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)
【0049】
(23)アルコキシカルボニルアミノ基
好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは2〜30の、置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)
【0050】
(24)アリールオキシカルボニルアミノ基
好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)
【0051】
(25)スルファモイルアミノ基
好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは0〜20の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基(例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)
【0052】
(26)アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基
好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜20の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ(例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)
【0053】
(27)メルカプト基
【0054】
(28)アルキルチオ基
好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)
【0055】
(29)アリールチオ基
好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは6〜20の置換もしくは無置換のアリールチオ(例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)
【0056】
(30)ヘテロ環チオ基
好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは2〜20の置換または無置換のヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)
【0057】
(31)スルファモイル基
好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは0〜20の置換もしくは無置換のスルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)
【0058】
(32)スルホ基
【0059】
(33)アルキルもしくはアリールスルフィニル基
好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜20の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは6〜20の置換または無置換のアリールスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)
【0060】
(34)アルキルもしくはアリールスルホニル基
好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜20の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは6〜20の置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)
【0061】
(35)アシル基
好ましくは、ホルミル基、炭素数2〜30、より好ましくは2〜20の置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30、より好ましくは7〜20の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30、より好ましくは4〜20の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基(例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル)
【0062】
(36)アリールオキシカルボニル基
好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは7〜20の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)
【0063】
(37)アルコキシカルボニル基
好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは2〜20の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)
【0064】
(38)カルバモイル基
好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜20の置換もしくは無置換のカルバモイル(例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)
【0065】
(39)アリールおよびヘテロ環アゾ基
好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは6〜20の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基(例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)
【0066】
(40)イミド基
好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド
【0067】
(41)ホスフィノ基
好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは2〜20の置換もしくは無置換のホスフィノ基(例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)
【0068】
(42)ホスフィニル基
好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは2〜20の置換もしくは無置換のホスフィニル基(例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)
【0069】
(43)ホスフィニルオキシ基
好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは2〜20の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基(例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)
【0070】
(44)ホスフィニルアミノ基
好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは2〜20の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基(例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)
【0071】
(45)ホスホ基
【0072】
(46)シリル基
好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは3〜20の置換もしくは無置換のシリル基(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)
【0073】
(47)ヒドラジノ基
好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは0〜20の置換もしくは無置換のヒドラジノ基(例えば、トリメチルヒドラジノ)
【0074】
(48)ウレイド基
好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは0〜20の置換もしくは無置換のウレイド基(例えばN,N−ジメチルウレイド)
【0075】
また、2つのWが共同して環を形成することもできる。このような環としては芳香族、または非芳香族の炭化水素環、またはヘテロ環や、これらがさらに組み合わされて形成された多環縮合環が挙げられる。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、およびフェナジン環が挙げられる。これらの中で好ましい環化合物はベンゼン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環である。
【0076】
上記の置換基Wの中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、−CONHSO−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SONHSO−基(スルフォニルスルファモイル基)が挙げられる。より具体的には、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル)、アリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
【0077】
一般式1で表される化合物のうち、2つのDが同じものが特に好ましい。
以下に一般式1で表される本発明の有機光電変換材料の好ましい具体例を示す。ただし本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、化学式中のEtはエチル基、Phはフェニル基を表す。
【0078】
【化4】

【0079】
【化5】

【0080】
【化6】

【0081】
上記の例示化合物は、Dyes and Pigments,1988,10,12−22.特開2001−117201号公報などに記載の方法に準じて合成することができる。
なお、一般式1で表される本発明の有機光電変換材料は、電荷の位置を変えて一般式1’のように表記することもできる。一般式1’中、D’およびD”は一般式1におけるDと同義であるが、D”で表される構造中に+の電荷が存在する。この表記法では、例えば例示化合物1は以下のように表わされる。
【0082】
一般式1’
【化7】

【0083】
【化8】

【0084】
本発明の有機光電変換材料は、良質な薄膜を形成しやすく、薄膜としての利用に適している。薄膜の形成に際し、バインダー材料や他の有機半導体材料などと混合した膜として用いることも好ましいが、この場合、膜中に前記一般式1で表される化合物を1質量%以上含有していることが好ましく、5質量%以上含有していることがより好ましく、10質量%以上含有していることがさらに好ましい。光電変換層の膜厚は、特に制限はないが、好ましくは1nm〜1μm、より好ましくは5nm〜500nmである。
【0085】
本発明の有機光電変換材料を含む薄膜を形成する方法は、いかなる方法でも良いが、乾式プロセスあるいは湿式プロセスにより成膜される。好ましくは湿式プロセスによる成膜である。乾式プロセス成膜の具体的な例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、分子ビームエピタキシー(MBE)法などの物理気相成長法あるいはプラズマ重合などの化学気相蒸着(CVD)法が挙げられる。湿式プロセス成膜は、有機光電変換材料を溶解させることができる溶媒中に溶解させ、あるいは均一に分散した分散液とし、その溶液または分散液を用いて成膜する方法であり、具体的にはキャスト法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スピンコート法、Langmuir−Blodgett(LB)法などが挙げられ、キャスト法、スピンコート法およびインクジェット法を用いることが好ましく、スピンコート法を用いることがより好ましい。
【0086】
湿式プロセスを用いて有機光電変換層を形成する場合、有機光電変換材料、あるいはその材料とバインダー樹脂を適当な有機溶媒(例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,2−ジクロロベンゼンなどの炭化水素系溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶媒、例えば、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソールなどのエーテル系溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなどの極性溶媒)および/または水に溶解、または分散させて塗布液とし、各種の塗布法により薄膜を形成することができる。溶媒はいかなるものでもよいが、高沸点のものを含む方が、揮発速度が遅くなり、形成される膜中での分子の配列秩序が高くなるため好ましい。溶媒として、沸点が135℃以上300℃未満のもの(さらに好ましくは135℃以上210℃未満のもの)を全溶媒中1質量%以上100質量%以下含むことが好ましい。そのような溶媒としては、エチルセロソルブ(沸点135℃)、n−アミルアルコール(沸点137℃)、キシレン(沸点140℃)、酢酸アミル(沸点142℃)、β−ピコリン(沸点143℃)、1,1,2,2,テトラクロロエタン(沸点146℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、1−ヘキサノール(沸点157℃)、o−クロロトルエン(沸点159℃)、ペンタクロロエタン(沸点162℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(沸点165℃)、o−ジクロロベンゼン(沸点180℃)、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)、エチレングリコール(沸点198℃)、1−メチル−2−ピロリドン(沸点202℃)、ニトロベンゼン(沸点211℃)、1,2,4−トリクロロベンゼン(沸点214℃)、キノリン(沸点238℃)、1−クロロナフタレン(沸点260℃)などが挙げられ、キシレン、β−ピコリン、o−クロロトルエン、o−ジクロロベンゼンが特に好ましい。塗布液中の本発明の光電変換材料の濃度は、好ましくは0.1〜80質量%、より好ましくは0.1〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%とすることにより、任意の厚さの膜を形成できる。
【0087】
樹脂バインダーを用いる場合、樹脂バインダーとしては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの絶縁性ポリマー、およびこれらの共重合体、ポリビニルカルバゾール、ポリシランなどの光伝導性ポリマー、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレンなどの導電性ポリマーを挙げることができる。樹脂バインダーは、単独で使用してもよく、あるいは複数併用しても良い。膜の機械的強度を考慮するとガラス転移温度の高い樹脂バインダーが好ましく、電荷移動度を考慮すると極性基を含まない構造の樹脂バインダーや光伝導性ポリマー、導電性ポリマーが好ましい。樹脂バインダーは使わない方が特性上好ましいが、目的によっては使用することもある。使う場合の樹脂バインダーの使用量は、特に制限はないが、有機光電変換層中、好ましくは0.1〜90質量%、より好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜30質量%で用いられる。
【0088】
成膜の際、基板を加熱または冷却してもよく、基板の温度を変化させることで膜のモルフォロジーや分子配向状態を制御することが可能である。基板の温度としては特に制限はないが、0℃〜200℃の間であることが好ましい。
【0089】
以下、本発明の有機薄膜光電変換素子の素子構成について詳細に説明する。
【0090】
図1は本発明の有機薄膜光電変換素子の好ましい一実施態様を概略的に示す断面図である。図1の素子は積層構造を有するものであり、最下層に基板11を配置し、その上面に電極層12を設け、さらにその上層として本発明の光電変換材料を含む光電変換層13を設け、さらにその上面に電極層14を設けている。電極層12や14と光電変換層13との間には、図1中には表記されていないが、表面の平滑性を高めるバッファ層、ホールまたは電子の電極からの注入を促進するキャリア注入層、ホールまたは電子を輸送するキャリア輸送層、ホールまたは電子を阻止するキャリアブロック層など(1つの層が前記複数の役割を兼ねることもある)が含まれていてもよい。本発明においては、電極層と光電変換層との間に用いるこれらの層を、その役割によらず全てバッファ層という言葉で表すことにする。なお、電極層や各層は必ずしも平面でなくてもよく、大きな凹凸を有していたり、三次元的な形状(例えば、くし型)であってもよい。
【0091】
基板11として用いる材料は、可視光または赤外光を透過するものであれば特に制限はない。可視光または赤外光の透過率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが最も好ましい。このような材料の例としては、ポリエチレンナフトエート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフイルム、ポリイミドフィルム、セラミック、シリコン、石英、ガラスなどが挙げられる。厚みは特に制限はない。
【0092】
電極層12として用いる材料は、可視光または赤外光を透過し、導電性を示すものであれば特に制限はない。可視光または赤外光の透過率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが最も好ましい。そのような材料としては、ITO、IZO、SnO、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(Alドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)などの透明導電性酸化物が好ましく、プロセス適性や平滑性の観点からITOまたはIZOが特に好ましい。膜厚に制限はないが、1nm〜200nmであることが好ましく、5nm〜100nmであることがより好ましい。電極12が構造自立性を有するものである場合、基板11は必ずしも必要ではなく、電極12が基板11を兼ねる場合は、膜厚は前述の厚みより厚くてもよい。
【0093】
光電変換層13は、本発明の光電変換材料を含んでなる。本発明の光電変換材料からなる単一層でもよく、他の半導体材料を含む層との積層構造(この場合、積層の順番や積層数はいかなるものでもよい)でもよく、本発明の光電変換材料と他の半導体材料とをともに含む層(この場合、分子レベルで両者が完全に混ざり合っていても、何らかの相分離構造を形成していてもよい)であってもよい。ここで、用いる他の半導体材料としては、n型半導体材料であることが好ましく、本発明の光電変換材料とn型半導体材料とのブレンド膜を含む層を光電変換層として用いることが最も好ましい。
【0094】
本発明で用いるn型半導体材料としては、電子輸送性を有するものであれば有機半導体材料、無機半導体材料のうち、いかなるものでもよいが、好ましくは、フラーレン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタレンテトラカルボニル化合物、ペリレンテトラカルボニル化合物、無機半導体であり、より好ましくはフラーレン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタレンテトラカルボニル化合物、ペリレンテトラカルボニル化合物であり、特に好ましくはフラーレン化合物である。本発明において、フラーレン化合物とは分子内にフラーレンの構造を有するものであればよく、具体的には、フラーレン化合物としてはC60、C70、C76、C78、C80、C82、C84、C86、C88、C90、C96、C116、C180、C240、C540などのいずれでもよいが、好ましくは置換または無置換のC60、C70、C86であり、特に好ましくはPCBM([6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル)およびその類縁体(C60部分をC70、C86等に置換したもの、置換基のベンゼン環を他の芳香環、ヘテロ環に置換したもの、メチルエステルをn−ブチルエステル、i−ブチルエステル等に置換したもの)である。フタロシアニン化合物もフラーレン化合物と同様に、分子内にフタロシアニン構造を有するものであればよく、具体的には、フタロシアニン化合物とは、置換または無置換のフタロシアニンおよびその類縁体を指し、フタロシアニン類縁体とは、各種金属のフタロシアニン以外に、テトラピラジノポルフィラジン、ナフタロシアニン、アントラシアニンなども含むものである。フタロシアニン化合物として、好ましくは電子求引基の結合したものであり、より好ましくはフッ素原子の置換したものである(F16CuPc、FPc−1など)。ナフタレンテトラカルボニル化合物としては、分子内にナフタレンテトラカルボン酸構造を有するものであればいかなるものでもよいが、好ましくはナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)、ナフタレンビスイミド化合物(NTCDI)、ペリノン顔料(Pigment Orange 43、Pigment Red 194など)である。ペリレンテトラカルボニル化合物としては、分子内にぺリレンテトラカルボン酸構造を有するものであればいかなるものでもよいが、好ましくはペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)、ペリレンビスイミド化合物(PTCDI)、ベンゾイミダゾール縮環体(PV)である。n型有機半導体材料の特に好ましい例を下記に示す。
【0095】
【化9】

【0096】
本発明におけるn型有機半導体材料は、一般式1で表される化合物100質量%に対し0〜1000質量%加えることが好ましく、10〜500質量%がより好ましく、20〜200質量%がさらに好ましい。一般式1で表される化合物の含有量は、光電変換膜中1〜100質量%が好ましく、10〜100質量%がより好ましく、20〜100質量%がさらに好ましい。
バッファ層として用いられる材料はキャリアを輸送する能力のある材料であれば有機材料および無機材料のいかなるものを用いても良いが、好ましくはアモルファス性のものである。ホール輸送性のバッファ材料としてはいかなるものでもよいが、好ましくは導電性ポリマー(例えばPEDOT:PSS)、トリアリールアミン化合物(例えばm−MTDATA)、無機半導体材料(例えばNiO)であり、特に好ましくは導電性ポリマーである。電子輸送性のバッファ材料としてはいかなるものでもよいが、好ましくは、n型有機半導体材料として前述のものの他に、金属錯体化合物(例えばAlq)、バソクプロイン、無機フッ化物(例えばLiF)、無機酸化物(例えばSiO、TiO、ZnO)、導電性ポリマー(例えばシアノ基を有するポリパラフェニレンビニレン(CN−PPV)、ペリノンポリマー(BBL))であり、より好ましくは、ナフタレン化合物、バソクプロイン、無機フッ化物、無機酸化物である。
【0097】
電極層14として用いる材料は、前述のトランジスタのものと同様、導電性を示すものであれば特に制限はないが、光利用効率を高める観点からは、光反射性の高い材料が好ましく、Al、Pt、W、Au、Ag、Ta、Cu、Cr、Mo、Ti、Ni、Pd、Znが好ましく、Al、Pt、Au、Agがより好ましい。電極層14の膜厚は、特に制限はないが、1nm〜1μmであることが好ましく、5nm〜500nmであることがより好ましい。
【0098】
素子の保存性を高めるためには、素子が不活性雰囲気を保てるよう、封止することが好ましく、好ましい封止用材料としては金属、ガラス、窒化ケイ素、アルミナなどの無機材料、パリレンなどの高分子材料が挙げられる。封止の際に、乾燥剤等を封入してもよい。
【0099】
本発明の有機薄膜光電変換素子は、エネルギー変換用途(有機薄膜太陽電池)として用いてもよいし、光センサ(固体撮像素子等)として用いてもよい。エネルギー変換用途で用いる場合、本発明の有機薄膜光電変換素子を単独で用いてもよいし、他の有機薄膜光電変換素子と積層(タンデム)してもよい。タンデムの方法については、Applied Physics Letters,2004,85,5757−5759.に詳細に記載されており、参考にできる。本発明の有機薄膜光電変換素子は近赤外域の光電変換能が優れているため、従来の可視域の光電変換能が高い素子(例えばP3HTとPCBMを用いた素子)とタンデムすると高い性能を示す太陽電池が得られる。
【0100】
光センサとして用いる場合には、S/N比を向上させるため、電極12と電極14の間にバイアスを印加して信号を読み出すことが好ましく、この場合、光電変換層にかけるバイアスは1.0×10V/cm以上1.0×10V/cm以下であることが好ましい。有機薄膜光電変換素子を用いた固体撮像素子としては、特開2003−234460号公報、特開2003−332551号公報、特開2005−268609号公報などに詳細に記載されており、参考にできる。
【実施例】
【0101】
以下に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0102】
例示化合物1、例示化合物5、例示化合物9、例示化合物16、例示化合物18をDyes and Pigments,1988,10,12−22.および特開2001−117201号公報に記載の方法に準じて合成した。PCBMはフロンティアカーボン社より購入した。比較化合物のP3HT(regioregular、Mw〜87000)はAldrich社より購入した。
【0103】
[実施例1]
ITO電極がパターニングされたガラス基板(2.5cm×2.5cm)を、イソプロピルアルコール中で超音波洗浄した後、乾燥した。さらに、ITO電極表面の有機汚染物質を除去するためにUVオゾン処理を30分間行った。次に、ITO基板上にPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))/PSS(ポリスチレンスルホン酸)水溶液(BaytronP(標準品))をスピンコート(4000rpm、60秒間)し、120℃で10分間乾燥することにより、膜厚約50nmのバッファ層を形成させた。膜厚は、触針式膜厚計(DEKTAK6M、アルバック社製、商品名)により測定した(以下同)。次いで、グローブボックス(窒素雰囲気)中で例示化合物1、10mgおよびPCBM、10mgを1,2−ジクロロベンゼン(HPLCグレード)1mLに溶解させ、この溶液を5分間超音波照射した後、先のバッファ層の上に1000rpmでスピンコートし、厚さ200nm以下の厚みがほぼ均一な光電変換層を形成させた。この光電変換層の上に、真空蒸着装置(アルバック社製、EBX−8C、商品名)を用いて、2×10−4Pa以下の真空度で、80nmの厚さになるようにアルミニウムを真空蒸着することにより金属電極を形成させた。最後に、グローブボックス(窒素雰囲気中)でガラス製の封止缶とUV硬化樹脂を用いて封止することにより、有効面積0.04cmの有機薄膜光電変換素子を得た。
【0104】
この素子にソーラーシミュレータ(Oriel社製、150W簡易型)とエアマスフィルターを用いてAM1.5、100mW/cmに光量調整し、カットオフフィルターを通して700nm以下の光をカットした光(以下「近赤外光」と呼ぶ)を照射し、電気化学アナライザー(BAS社製、ALSモデル660B、商品名)を用いて電流−電圧特性を測定したところ、図2に示すように優れた太陽電池特性を示した。短絡電流(Jsc)=0.52mA/cm、開放電圧(VOC)=0.28Vである。このことから、例示化合物1を用いた有機薄膜光電変換素子が近赤外域に高い感度を有し、太陽電池として動作することが分かった。
【0105】
ITO電極がパターニングされたガラス基板の代わりに石英基板を用いる以外は同様にしてPEDOT/PSS膜の上に光電変換膜をスピンコートし、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製、UV−3600、商品名)を用いて吸収スペクトルを測定したところ、図3に示すように837nmを吸収極大波長とする近赤外域まで吸収を示すスペクトルが観測された。
【0106】
[実施例2]
例示化合物1の代わりに例示化合物5、例示化合物9、例示化合物16、例示化合物18を用いた以外は全く同様に作製した素子も実施例1の素子と同様に近赤外光に対して高い光電変換特性を示した。それぞれの素子の短絡電流、開放電圧、および光電変換膜の吸収λmaxを表1に示す。
【0107】
[比較例]
例示化合物1の代わりにP3HTを用いる以外は実施例1と全く同様にして作製し、全く同様の条件で評価した素子は、下記表1に示すように近赤外光に対して全く光電変換性能を示さなかった。
【0108】
【表1】

【0109】
以上の例から明らかなように、本発明の有機光電変換材料は近赤外領域に高い感度を有し、本発明の有機薄膜光電変換材料を用いた素子は近赤外光に対して高い光電変換性能を示す。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の有機薄膜光電変換素子の構造を概略的に示す断面図である。
【図2】例示化合物1を用いた本発明の有機薄膜光電変換素子の暗時および近赤外光照射時の電流−電圧特性を示す図である。
【図3】例示化合物1を用いた有機光電変換膜の吸収スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0111】
11 基板
12 電極層
13 光電変換層
14 電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1で表される化合物を含有する有機薄膜光電変換素子用有機光電変換材料。
一般式1
【化1】

(式中、Dは結合位がsp炭素である電子供与性芳香族置換基を表す。複数のDは同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
2つの電極層と有機薄膜光電変換層を有してなる有機薄膜光電変換素子であって、請求項1に記載の有機光電変換材料を光電変換層に用いた有機薄膜光電変換素子。
【請求項3】
前記光電変換層が、前記有機光電変換材料とn型有機半導体材料とを含んでなる請求項2に記載の有機薄膜光電変換素子。
【請求項4】
前記光電変換層が、前記有機光電変換材料とn型有機半導体材料を含むブレンド膜を有してなる請求項3に記載の有機薄膜光電変換素子。
【請求項5】
前記n型有機半導体材料がフラーレン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタレンテトラカルボニル化合物及びペリレンテトラカルボニル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3または4に記載の有機薄膜光電変換素子。
【請求項6】
前記n型有機半導体材料がフラーレン化合物である請求項3〜5のいずれかに記載の有機薄膜光電変換素子。
【請求項7】
前記光電変換層の成膜方法が溶液塗布法である請求項2〜6のいずれかに記載の有機薄膜光電変換素子。
【請求項8】
前記溶液塗布法における溶媒が、沸点135℃以上300℃未満の溶媒を少なくとも一種含む請求項7に記載の有機薄膜光電変換素子。
【請求項9】
前記電極層のうちの少なくとも1つと有機光電変換層との間に、導電性ポリマーを含むバッファ層を有する請求項2〜8のいずれかに記載の有機薄膜光電変換素子。
【請求項10】
素子作製後に不活性雰囲気下で封止された請求項2〜9のいずれかに記載の有機薄膜光電変換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−290114(P2009−290114A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143256(P2008−143256)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】