説明

有機化合物の使用

糖尿病、インスリン抵抗性、代謝疾患/メタボリック症候群、異脂肪血症、肥満、過体重、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病の予防、進行遅延または処置または運動持久能力の改善のための、ERRγアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病、好ましくは2型糖尿病、インスリン抵抗性、代謝疾患/メタボリック症候群、異脂肪血症、肥満、過体重、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病から選択される疾患または状態の処置、または運動持久能力の改善のための、そのような処置を必要とする該動物に有効量の少なくとも1種のエストロゲン関連受容体ガンマアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩を投与することによる、エストロゲン関連受容体ガンマ(ERRγ)アゴニストまたは薬学的に許容されるその塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エストロゲン関連受容体(ERR)は3メンバー、ERRα、ERRβ、およびERRγを含み、それらはオーファン核受容体のファミリーを形成し、それに対する天然リガンドはまだ同定されていない。ERRは、エストロゲン受容体(ER)との顕著なアミノ酸相同性を、そのDNA結合ドメイン(DBD)およびリガンド結合ドメイン(LBD)に示すが、エストラジオールには応答しない。ERはリガンド活性化受容体であるが、ERRは遺伝子転写を構成的方法で活性化でき、それらの活性化能は、転写コアクティベーターの存在により決定し得る。構造試験は、この発見を、ERRγLBDが翻訳性に活性の高次構造を採用し、リガンド非存在下でステロイド受容体コアクティベーター1(SRC−1)と相互作用できるとの証明により確認している。
【0003】
そのDBD内で、ERRγは、ERRαおよびERRβと各々93%および99%アミノ酸同一性を供給する。ERRはそのLBD内で保存性が低い(ERRγ対ERRαおよびERRβで各々61%および77%アミノ酸同一性)。コアクティベーター、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体−γコアクティベーター−1α(PGC−1α)は、ERRαおよびERRγの内因性タンパク質リガンドであることが報告されている(Hentschke M, et al. (2002) - PGC-1 and PERC, coactivators of the estrogen receptor-related receptor γ. Biochem Biophys Res Commun; 299:872-9)。
【0004】
証拠は、ERRαおよびPGC−1α機能が協調して、ミトコンドリア生合成および酸化的リン酸化が関与する遺伝子の発現を制御することを示す。ERRα、ERRγ、およびPGC−1αは、骨格筋、心臓、および腎臓のようなその一次エネルギー源としてミトコンドリア脂肪酸酸化を利用する組織で共発現され(Hong H, Yang L, Stallcup MR (1999) - Hormone-independent transcriptional activation and coactivator binding by novel orphan nuclear receptor ERR3. J Biol Chem; 274:22618-26)、最近、ERRγがERRα遺伝子発現の強力なアクティベーターであり、それがPGC−1αにより増強されることが示された(Liu D, Zhang Z, Teng CT (2005) - Estrogen-related receptor-γ and peroxisome proliferator-activated receptor-γ coactivator-1α regulate estrogen-related receptor-α gene expression via a conserved multi-hormone response element. J Mol Endocrinol; 34:473-87)。
【0005】
ERRγLBDタンパク質はアゴニスト存在下で活性を示すが、活性は既知アゴニスト化合物、GSK4716(Glaxo-Smith-Kline;NVP-AJQ710)およびGSK9089(Glaxo-Smith-Kline;NVP-LCN446)の添加により増強されることが示された(Zuercher WJ, et al. (2005) Identification and structure-activity relationship of phenolic acyl hydrazones as selective agonists for the estrogen-related orphan nuclear receptors ERRβ and ERRγ. J Med Chem; 48:3107-9。
【0006】
US特許出願US2005/0096384は、ERR受容体を標的とするリガンドの可能性のある使用について推測した。この出願は、特にERRアンタゴニストの、数種の適応症への使用について推測した。
【発明の開示】
【0007】
この分野での研究を追跡していて、出願人は、US2005/0096384の教示とは逆に、ERRγアゴニストの使用によるERRγ活性化の刺激のみが、増強されたミトコンドリオゲネシス(mitochondriogenesis)をもたらすことを驚くべきことに発見した。
【0008】
出願人は、さらに、ERRγ活性化のERRγアゴニストでの刺激が、糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性、代謝疾患/メタボリック症候群、異脂肪血症、肥満/過体重、神経変性疾患から選択される疾患の処置、または運動持久能力の改善のために予期されたい良好な効果をもたらすことを発見した。
【0009】
ERRγアゴニストの増殖を促進するために、出願人は、リガンド結合に応答して、LBDとコアクティベーターペプチドの間の相互作用の変化を測定する、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイ(後記)を開発している。アッセイ(Zuercher, et al. 2005, “Identification and structure-activity relationship of phenolic acyl hydrazones as selective agonists for the estrogen-related orphan nuclear receptors ERRbeta and ERRgamma.”; J Med Chem. 2005 May 5;48(9):3107-9.)は、ERRγに対する2個の既知の小アゴニスト、すなわちGSK4716(Glaxo-Smith-Kline;AJQ710)およびGSK9089(Glaxo-Smith-Kline;LCN446)を使用して、確認している。
【0010】
ERRγLBDタンパク質は、アゴニストの存在下で活性であるが、アゴニスト化合物、GSK4716(Glaxo-Smith-Kline)およびGSK9089(Glaxo-Smith-Kline)の添加により活性が増強されることが示されている(Zuercher, et al. 2005)。
【0011】
用語“ERRγアゴニスト”は、ERRγの活性の1−100%活性化のような活性化を示す、および具体的に基質分子の作用を保護する分子を指すことを意図する。好ましくは、ERRγアゴニストは、ERRγFRETアッセイで、0.001〜10マイクロモル(または0.001〜1マイクロモル)のEC50を示す(ERRγアゴニストが増加したFRET応答を誘発する能力)。好ましくはERRγアゴニストは、後記のアッセイで0.001〜10マイクロモル(または0.001〜1マイクロモル)のEC50を示す。好ましくは“ERRγのアゴニスト”は、ERRγのLBD配列に結合でき、ERRγの量を増やす、作用時間を延長する、または活性を増強する分子を意味する。アゴニストは、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、またはそれらの何らかの誘導体、または任意の他の分子を含み得る。
【0012】
ERRγアゴニストは、Zuercher, et al. 2005またはCoward, P et al. - 2001, (“4-Hydroxytamoxifen binds to and deactivates the estrogen-related receptor gamma.” Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 Jul 17;98(15):8880-4. Epub 2001 Jul 10), and Zhou G. et al. - 1998, (“Characterization by Fluorescence Resonance Energy Transfer”; Mol. Endocrin. 1998, 12, 1594-1604)により記載のように化合物のスクリーニングにより単離でき、これらのアッセイは引用により本明細書に包含させる。好ましくは、ERRγアゴニストは、本出願人により開発された、以下に記載のアッセイの通りの化合物のスクリーニングにより単離し得る(実験部分参照)。
【0013】
本文脈において、“ERRγアゴニスト”はまた活性代謝物およびそのプロドラッグ、例えばERRγアゴニストの活性代謝物およびプロドラッグを含むことも意図する。“代謝物”は、ERRγアゴニストが代謝されたときに産生される、ERRγアゴニストの活性誘導体である。“プロドラッグ”は、ERRγアゴニストに代謝されるか、ERRγアゴニストと同じ代謝物(複数もある)に代謝されるいずれかの化合物である。
【0014】
ERRγアゴニストは当分野で既知である。例えば、ERRγアゴニストは、いずれの場合も例えばZuercher, et al. 2005に一般的によび具体的に開示されている。
好ましいERRγアゴニストはGSK4716またはGSK9089である。
【0015】
GSK4716は、式
【化1】

の4−ヒドロキシ−N’−(4−イソプロピルフェニルメチリデン)−ベンゾヒドラジドとして知られ、Zuercher, et al. 2005に開示されている。
【0016】
GSK9089(またはDY131)は、式
【化2】

のN’−(4−(ジエチルアミノ)フェニルメチリデン)−4−ヒドロキシベンゾヒドラジドとして、知られ、095167-41-2のCAS Registry numberを有する。化合物GSK9089およびERRγに対するその活性は、D. D. Yuおよび同僚(Identification of an agonist ligand for estrogen-related receptors ERRβ/γ Bioorg. Med. Chem. Lett. 15 (2005) 1311-1313)およびZuercher, et al. 2005により記載されている。
【0017】
とりわけ好ましいのは、経口で活性のERRγアゴニスト阻害剤である。
引用により本明細書に包含させる上記の特許文献に開示の物質の全てが、本発明の実施に際して使用すべきERRγアゴニストとして有効な可能性があると見なされる。
本発明に従い単独で使用するERRγアゴニストは、担体と共に使用できる。
【0018】
本文脈での担体は、ツール(天然、合成、ペプチド性、非ペプチド性)、例えば、それが包埋された細胞膜を通して、そして細胞内に特異的物質を輸送するタンパク質である。各々が一つの物質しかまたは類似物質の群しか認識しないように設計されるため、異なる担体(天然、合成、ペプチド性、非ペプチド性)が異なる物質の輸送に必要である。
【0019】
当業者に既知の任意の検出手段を使用して、例えば、担体の標識により、ERRγアゴニストと担体の結合を検出できる。
最も好ましいのは経口で活性なERRγアゴニストおよびその医薬的塩である。
【0020】
本発明の活性成分または薬学的に許容されるそれらの塩は、溶媒和物、例えば水和物または結晶化に使用した他の溶媒を含む形でも使用してよい。
【0021】
本発明により、ERRγアゴニストが、糖尿病、好ましくは2型糖尿病、インスリン抵抗性、代謝疾患/メタボリック症候群、異脂肪血症、肥満、過体重、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病から選択される疾患または状態の予防、進行遅延または処置または運動持久能力の改善に有用であることが、驚くべきことに判明した。
【0022】
それ故に、本発明は、糖尿病、好ましくは2型糖尿病、インスリン抵抗性、代謝疾患/メタボリック症候群、異脂肪血症、肥満、過体重、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病から選択される疾患または状態の予防、進行遅延または処置、または運動持久能力の改善のための医薬の製造のための、ERRγアゴニスト、例えばGSK4716またはGSK9089、または薬学的に許容されるその塩の使用に関する。
【0023】
本発明は、さらに、糖尿病、好ましくは2型糖尿病、インスリン抵抗性、代謝疾患/メタボリック症候群、異脂肪血症、肥満、過体重、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病から選択される疾患または状態の予防、進行遅延または処置、または運動持久能力の改善のための方法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に、治療的有効量のERRγアゴニスト、好ましくはGSK4716またはGSK9089を投与することを含む、方法にも関する。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、糖尿病、好ましくは2型糖尿病、インスリン抵抗性、代謝疾患/メタボリック症候群、異脂肪血症、肥満、過体重、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病から選択される疾患または状態の処置、または運動持久能力の改善のための、治療的有効量のERRγアゴニストを1種以上の薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物に関する。
【0025】
最も好ましくは、本発明によって処置される、疾患または障害が2型糖尿病、代謝疾患/メタボリック症候群、異脂肪血症、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病から選択され、またはERRγアゴニストが運動持久能力改善のために使用される。
【0026】
本明細書において、用語“処置”は、予防的または防止的処置ならびに治癒的または疾患抑制的処置の両方を含み、該疾患を発症するリスクのあるまたは該疾患に罹患している疑いのある患者の処置ならびに病気の患者の処置を含む。この用語は、さらに、疾患の進行遅延のための処置を含む。
【0027】
ここで使用する用語“治癒”は、進行中の疾患における効果を意味する。
用語“予防”は、ここに記載の状態の発症を予防するための、健常患者への本組成物の予防的投与を意味する。さらに、用語“予防”は、処置すべき状態の前段階にある患者へのこのような組み合わせの予防的投与を意味する。
用語“予防”は、疾患または障害の発症または再発の予防を意味する。
【0028】
ここで使用する用語“進行遅延”は、処置すべき疾患の前段階または初期にある患者への活性化合物の投与を意味し、ここで、該患者は、例えば、対応する疾患の前形態であることが診断されているか、または、該患者は、例えば医学的処置または事故に起因する状態にあって対応する疾患を発症しそうな状態にある。
【0029】
メタボリック症候群は、心血管事象の発生率を大きく増加させる危険因子の群である:糖尿病または前糖尿病、腹部肥満、コレステロールの変化および高血圧。糖尿病を有する世界中の約2億人の80%までが心血管疾患で死亡するが、メタボリック症候群のヒトは、またリスクが増加しており、本症候群を有しないヒトと比較して、心臓発作または卒中で死亡する危険性が2倍およびそれらを有する危険性が3倍高い。メタボリック症候群を有するヒトは、2型糖尿病を発症する危険性が5倍高い(まだ存在していなければ)。各要素から予測されるものを遙かに超えて、さらなる危険性をもたらすように見えるのがこの群の正確な性質である(例えばコレステロールを測定したときの高トリグリセリド)。ヒトをメタボリック症候群を有するとして定義するために、該定義は、彼らが中心性肥満を有することに加えて、以下の4つの付加的因子のうち2個を有する必要がある:増加したトリグリセリド、低下したHDLコレステロール、上昇した血圧、または上昇した空腹時血漿グルコースレベル。性別および人種もメタボリック症候群の定義において考慮すべき因子である。
【0030】
ここで使用する用語“糖尿病”は2型糖尿病、1型糖尿病および成人の選択的自己免疫性糖尿病(latent autoimmune diabetes of adulthood)(LADA)を意味し、好ましくは糖尿病は2型糖尿病である。
【0031】
2型糖尿病は、通常40歳以上のヒトまたは過体重(肥満)のヒトに発症する。一般に、2型糖尿病患者の処置はインスリン治療ではなく、むしろあるライフスタイル面(例えば運動、減量、厳格な食餌療法)の改善を含み、ときどき経口抗糖尿病剤が血中グルコースレベルの管理に有効である。2型糖尿病(成人発症真性糖尿病)は、一般に、遺伝的因子および肥満の結果としてインスリン抵抗性を発症したときに起こり、典型的に成人で診断される。インスリン抵抗性は高血糖を、そしてインスリン産生の長時間の要求のために、膵臓β細胞の退廃をもたらす。インスリン抵抗性および低下したβ細胞機能の組み合わせが、最終的に2型糖尿病を引き起こす。
【0032】
1型糖尿病はしばしば小児期に診断され、およびその理由のために若年性糖尿病と呼ばれることもある。早期診断が、心臓疾患、失明、高血圧、神経損傷、および腎臓不全を含む、糖尿病のより重篤な合併症のいくつかを予防するのに重要である。しかしながら、1型糖尿病は若年性の、痩せた個体に、通常30歳より前に発症する経口があるが、より高齢の患者にもこの形の糖尿病が存在し得る。このタイプの1型糖尿病は、通常成人の選択的自己免疫性糖尿病(LADA)と呼ばれる。より一般的な若年性1型糖尿病と同様、LADAは、インスリン産生膵臓β細胞の免疫仲介破壊が原因である。LADAはまた遅延発症型1型糖尿病、成人の後期発症自己免疫性糖尿病、および1型糖尿病としても知られる。若年性1型糖尿病とLADAの主要な差異はその診断年齢である − 一般に30歳以上。LADAを診断する方法は、例えば特許出願WO2005054512A2に記載されている。それ故に、1型糖尿病は全ての年齢に存在し得て、臨床的顕在化の年齢を決定する因子は未知である。
【0033】
障害されたグルコースの代謝(IGM)は、正常範囲を超えるが、2型真性糖尿病の診断基準に合うほどには高くない血中グルコースレベルにより定義される。IGMの発症率は国毎に異なるが、通常明白な糖尿病よりも2−3倍頻繁である。最近まで、IGMの個体は前糖尿病性であると思われていたが、いくつかの疫学的試験からのデータは、IGMの対象がその糖尿病のリスクに関しておよびそれらの心血管罹病率および死亡率のリスクに関して多様であることを主張する。データは、IGM、特にIGTの対象が、常に糖尿病を発症するとは限らないが、彼らが糖尿病性であるかどうかに係わらず、心血管罹病率および死亡率の危険性が高いことを示唆する。
【0034】
IGMの患者の中で、約58%が耐糖能障害(IGT)を有し、別の29%が空腹時高血糖(IFG)を有し、13%が両方の異常(IFG/IGT)を有する。IGTは、上昇した食後(食事後)高血糖により特徴付けられ、一方IFGは、空腹時血糖値に基づき、ADA(後記の表参照)により定義される。
【0035】
過体重:減量すなわち過体重の処置/予防/遅延が糖尿病、肥満および過体重個体の場合に望ましい。減量すなわち過体重の処置/予防/遅延が、特に糖尿病および心血管疾患(CVD)に関連する、これらの危険な結果の予防を助け得る。減量はまた過体重高血圧および非高血圧個体の両方において血圧;血清トリグリセリドレベルを低下し、そして有益なコレステロールのリポタンパク質(HDL)形態を増加させる。減量はまた一般的に総血清コレステロールおよび低密度リポタンパク質(LDL)−コレステロールレベルを幾分低下させる。減量はまた、過体重および肥満ヒトの血中グルコースレベルも低下させ得る。
【0036】
減量、および低カロリー食はまた2型糖尿病処置における血漿グルコースレベルの管理のための一次目標である。それ故に、2型糖尿病の処置のために、食欲管理および減量が望まれる。用語“過体重の処置”は、例えば体脂肪減少または減量を包含する。
用語“減量”は、総体重の一部の損失を意味する。
用語“体脂肪減少”は、体脂肪の一部の損失を意味する。
【0037】
肥満指数(BMI)のための式は[体重(ポンド)÷身長(インチ)÷身長(インチ)]×703である。成人のためのBMI切点は、以下のガイドラインを使用して、年齢および性別に無関係なく固定された数値である:過体重成人個体は、25.0〜29.9のBMIを有する。肥満成人は、30.0以上のBMIを有する。低体重成人は、18.5未満のBMIを有する。成人についての正常体重範囲は、18.5〜25の間のBMIと定義される。16歳未満の小児についてのBMI切点は、パーセンタイルに従い定義される:過体重は、>85thパーセンタイルより高いその年齢のBMIとして定義され、肥満は、>95thパーセンタイルのその年齢のBMIとして定義される。低体重は、<5thパーセンタイルのその年齢のBMIである。小児の正常体重範囲は、5thパーセンタイルを超え、85thパーセンタイルより低いBMIと定義される。
【0038】
好ましくは神経変性障害は、認知症(例えば老人性認知症、前老人性認知症(軽度の認知の障害としても既知)、アルツハイマー関連認知症(アルツハイマー型認知症))、ハンチントン病、ハンチントン舞踏病、急性混乱障害およびとりわけアポトーシス細胞壊死が役割を有するもの、例えば筋萎縮性側索硬化症、緑内障、多発性硬化症、偏頭痛、卒中、脳虚血、およびパーキンソン病およびとりわけアルツハイマー病のような状態および疾患から選択される。
【0039】
より好ましくは神経変性障害はアルツハイマー病および認知症、好ましくは老人性認知症、軽度の認知の障害またはアルツハイマー型認知症から選択される。
より好ましくは神経変性障害はアルツハイマー病、パーキンソン病またはハンチントン病である。
本発明はまた、遊離形または薬学的に許容されるその塩の形のERRγアゴニストを活性成分として含む、医薬組成物に関する。
【0040】
本発明の他の局面は、糖尿病、好ましくは2型糖尿病、インスリン抵抗性、代謝疾患/メタボリック症候群、異脂肪血症、肥満、過体重、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病の予防、進行遅延または処置、または運動持久能力の改善のための医薬組成物の製造のための、遊離形または薬学的に許容されるその塩の形の、ERRγアゴニスト、好ましくはGSK4716またはGSK9089を活性成分として含む、医薬組成物の使用である。
【0041】
本発明はまた、糖尿病、好ましくは2型糖尿病、インスリン抵抗性、代謝疾患/メタボリック症候群、異脂肪血症、肥満、過体重、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病の予防、進行遅延または処置、または運動持久能力の改善のための方法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に、治療的有効量の、遊離形または薬学的に許容されるその塩の形のERRγアゴニスト、好ましくはGSK4716またはGSK9089を活性成分として含む、医薬組成物を投与することを含む、方法に関する。
【0042】
本発明の医薬組成物は、それ自体既知の方法で製造でき、治療的有効量の薬理学的活性化合物を、単独で、または、とりわけ経腸または非経腸適用に適する1種以上の薬学的に許容される担体を含む、ヒトを含む哺乳動物(温血動物)に、経腸、例えば経口または直腸、および非経腸投与するのに適したものである。
【0043】
これらの医薬製剤は、恒温動物への経腸、例えば経口、およびまた直腸または非経腸投与用であり、該製剤は、薬理学的活性化合物を、単独でまたは慣用の医薬補助物質と共に含む。例えば、本医薬製剤は、約0.1%〜90%、好ましくは約1%〜約80%の活性化合物を含む。経腸または非経腸、およびまた眼投与用医薬製剤は、例えば、単位投与形態、例えばコーティング錠、錠剤、カプセル剤または坐薬およびまたアンプル剤である。これらは、それ自体既知の方法で、例えば慣用の混合、造粒、コーティング、可溶化または凍結乾燥工程を使用して、製造する。それ故に、経口使用のための医薬製剤は、活性化合物と固体賦形剤を合わせ、望むのであれば、得られた混合物を造粒し、そして、必要であればまたは望むのであれば、該混合物または顆粒を、適当な補助物質の添加後に錠剤またはコーティング錠コアに加工することにより得ることができる。
【0044】
活性化合物の用量は、投与形態、恒温動物種、年齢および/または個々の状態のような種々の因子により得る。
本発明の使用または方法のために好ましい患者は、糖尿病(好ましくは2型糖尿病)、IGM(好ましくはIGT)、肥満または過体重、代謝疾患、異脂肪血症、神経変性疾患または低運動持久能力を有する患者または動物である。
【0045】
さらに好ましい態様において、本発明は、IGM(好ましくはIGT)を有する患者における糖尿病(好ましくは2型糖尿病)の予防、または進行遅延のための本発明の組成物、使用または方法を考慮する。
【0046】
それ故に、本発明はまた以下を考慮する;
− IGM、好ましくはIGTを有するヒトを含む温血動物に、治療的有効量のERRγアゴニストを投与することを含む、2型糖尿病の予防または進行遅延のための方法。
【0047】
− IGM、好ましくはIGTを有する患者の2型糖尿病の予防、または進行遅延のための、治療的有効量のERRγアゴニストを1種以上の薬学的に許容される担体と組み合わせて含む、医薬組成物。
【0048】
− IGM、好ましくはIGTを有する患者の2型糖尿病の予防、または進行遅延のための医薬の製造のための、ERRγアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩の使用。
【0049】
本発明はまた、ERRγアゴニストが、例えばERRγFRETアッセイ(ERRγアゴニストが増加したFRET応答を誘発する能力)またはここに記載のいずれかのアッセイで、0.001〜10マイクロモルのEC50を示す、ここに記載のいずれかの医薬組成物、方法または使用にも関する。好ましくは、ERRγアゴニストは、ここに記載のアッセイ(例えば以下の実施例1のFRETアッセイ)で0.001〜1マイクロモルのEC50を示す。
【0050】
市販されている本発明の医薬組成物の活性成分の好ましい投与量は、とりわけ治療的に有効な商業的に入手可能な用量である。
活性化合物の投与量は投与形態、恒温動物種、年齢および/または個々の状態のような種々の因子により得る。
【0051】
対応する活性成分または薬学的に許容されるその塩はまた水和物または結晶化に使用した他の溶媒を含む形でも使用してよい。
【0052】
これらの適応症のために、正確な投与量は、用いる化合物、投与形態および望む処置に依存する。本化合物な任意の慣用の経路で、非経口または好ましくは経口的に投与し得る。
【0053】
約0.01〜100mg/kgの1日量で投与したときに予期される治療効果が得られ、より好ましい投与量は0.1〜50mg/kgである。
大型哺乳動物について、示される1日投与量は約0.01〜100mg/kgの化合物であり、簡便には、例えば約10〜約100mgの化合物を持続放出形態で含む単位投与形態で1日2〜4回の分割量で投与する。
【0054】
ヒトにおける他の好ましい1日経口用量は、1mg〜1g、好ましくは10mg〜500mg、例えば10mg、または10mg〜200mgである。
経口投与のための適当な単位用量は、例えば約10〜約500mgの活性成分、すなわちERRγアゴニストを含む。非経腸投与のための適当な用量は、例えば約10〜約500mgまたは10〜約200mgの本化合物を含む。
【0055】
本化合物は、これらの利用において使用するための既知の標準に類似の方法で投与し得る。特定の化合物の適当な1日量は、その相対的な活性の効果のような多くの因子による。関連分野の当業者は、治療的有効量を決定することが完全に可能である。
【0056】
本発明の化合物は、遊離塩基で、または薬学的に許容される酸付加または4級アンモニウム塩として投与し得る。このような塩は慣用法で製造でき、遊離形と同程度の活性を示す。これらの化合物が。例えば、少なくとも1個の塩基性中心を有するとき、それらは酸付加塩を形成できる。対応する酸付加塩はまた、望むならば、さらに存在する塩基性中心を有しても形成できる。酸基(例えばCOOH)を有する化合物はまた塩基と塩を形成できる。例えば、塩化合物は、ナトリウム塩、マレイン酸塩または二塩酸塩として存在できる。活性成分または薬学的に許容されるその塩はまた水和物または結晶化に使用した他の溶媒を含む形でも使用してよい。
【0057】
本発明の医薬組成物それ自体既知の方法で製造でき、治療的有効量の薬理学的活性化合物を、単独で、または、とりわけ経腸または非経腸適用に適する1種以上の薬学的に許容される担体を含む、ヒトを含む哺乳動物(温血動物)に、経腸、例えば経口または直腸、および非経腸投与するのに適したものである。
【0058】
コード番号、一般名または商標名により同定した活性剤の構造は、標準概論“The Merck Index”の現行版またはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から取り得る。それらの対応する内容は、引用により本明細書に包含させる。当業者は、活性成分を同定することが十分に可能であり、そして、これらの参考文献に基づいて、同様に、製造し、インビトロおよびインビボの両方で、標準試験モデルにおいて医薬適応症および特性を試験することが可能である。
【0059】
薬理学的活性は、例えば、臨床試験または当業者に既知の方法で、本質的に後記の試験法において証明できる。
本発明の使用および方法のための好ましいERRγアゴニストは、GSK4716またはGSK9089および所望によりいずれの場合もその医薬的塩である。
【0060】
実験部分
以下の実施例はそれらの請求している活性を示すために、ERRγアゴニストで行う。
【実施例】
【0061】
実施例
以下の実施例は非限定的であり、本発明の種々の局面および特性の単なる代表である。
【0062】
実施例1 − ERRγアゴニストを単離するためのスクリーニングアッセイ
本発明を実施するために有用な結合および化合物を検出するためのFRETアッセイ(図1.1参照)
FRETアッセイを、コアクティベーターペプチドPGC−1αの存在下で、ERRγのアゴニスト誘発活性化を検出するために設計する。以下の要素を50μLの最終容積で添加した:(His)−hERRγLBDまたはGST−hERRγLBD、ユーロピウム標識抗(His)抗体またはユーロピウム標識抗GST抗体およびCy5標識PGC−1αペプチド(C末端酸を伴うCy5−RPCSELLKYLTT(配列番号4)、特注およびAnaSpecで標識)。抗体、hERRγ LBDを19μLの容積の緩衝液中に含むミックス1を、Cy5−ペプチドを緩衝液中に含む30μLのミックス2に添加した(1. 6xHis−ERRγ−LBD、3.6mg/ml、MW 27KDa;2. AnaSpecからのCy5−PGC−1ペプチド;3. 他の緩衝液成分はSigmaから;4. Perkin ElmerからのEU抗His−Ab;および5. 試験化合物)。アッセイを、黒色384ウェルプレートで行い、室温で3時間インキュベートし、その後FRETシグナルをWallac Victor 2(Perkin Elmer)プレートリーダーを使用して測定した。放出シグナル(665nm/615nm)の比を使用してFRETアッセイ応答を決定した。数例で、FRETシグナル対バックグラウンド比を使用したが、これは単にタンパク質存在下のFRET比またはタンパク質非存在下のFRET比として定義する。試験化合物を、DMSOに10mMで溶解し、示す通りに使用した。
【0063】
【表1】

【0064】
アゴニスト化合物がユーロピウム標識抗(His)抗体/(His)−hERRγLBD複合体およびCy5−RPCSELLKYLTT(配列番号4)の間の増加したFRET応答を誘発する能力を、文献にERRγアゴニストとして記載されている2種の化合物、GSK4716(Glaxo-Smith-Kline;AJQ710)およびGSK9089(Glaxo-Smith-Kline;LCN446。Zuercher WJ, Gaillard S, Miller-Orband LA, et al. (2005), “Identification and structure-activity relationship of phenolic acyl hydrazones as selective agonists for the estrogen-related orphan nuclear receptors ERRβ and ERRγ,” J Med Chem; 48:3107-9参照)を使用して評価した。これらの化合物を10mM DMSOに可溶化し、力価測定の範囲は100μMから下限は2nMまでであった。最終DMSO濃度は2%であった。2%のDMSOコントロール(化合物なし)も調製した。全サンプルをデュプリケートで調製した。図1.2に示す通り、AJQ710は、試験した最高濃度でFRETシグナルの60%までの増加の誘発が可能であった。FRET応答は用量依存性であり、2.1μMのEC50をこのデータから導いた。同様に、LCN446もまた化合物飽和濃度で70%の最大応答である用量依存性のFRET応答を誘発し、0.54μMのEC50であった。両方のEC50は、AJQ710およびLCN446均等物各々の1.3μMおよび0.13μMの報告されている値と同程度であった。
【0065】
実施例2
初代マウス筋管におけるミトコンドリア機能に対するAJQ710の特徴付け
Bare et al.に記載の通り、FVBマウスからの初代マウス筋芽細胞を単離し、維持した。実験のために、マウス筋芽細胞を、20%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシンおよび2.5ng/mL bFGF(ヒト組み換え)含有F−10/ハム培地で80%コンフルエンスまで増殖させた。次いで、細胞を6ウェルプレートに700,000細胞/ウェルで播種し、36〜48時間、5%ウマ血清およびペニシリン/ストレプトマイシン含有DMEMで筋管に分化させた。細胞をERRγ/βアゴニストAJQ710で24時間処理した。行ったアッセイは、遺伝子発現の実時間定量的PCR(RT−PCR)による分析、チトクロームc ELISA、クエン酸シンターゼアッセイ、脂肪酸酸化アッセイ、および呼吸アッセイを含んだ。RT−PCR、チトクロームc ELISAおよびクエン酸シンターゼアッセイに関して、筋管を以下の濃度のAJQ710で処理した:1μM、3μM、10μM、および30μM。脂肪酸酸化アッセイに関して、筋管を以下の濃度のAJQ710で処理した:10μM、および30μM。呼吸アッセイに関して、筋管を30μM濃度のAJQ710で処理した。各用量をトリプリケートで試験し、等量のDMSOで処理した一組のウェルをコントロール目的で全実験結果に含ませた。
【0066】
RT−PCRによる遺伝子発現の評価の目的で、RNAを細胞溶解物から単離し、続いてcDNAをこのRNAから合成した。RNA単離のために、細胞をTRIzol(Invitrogen, カタログ番号 15596-026, Carlsbad, CA)中で均質化し、総RNAを製造業者の指示に従い単離した。RNAを分光光度計を使用して定量した。
【0067】
逆転写を、BD BiosciencesからのBD SprintTM PowerScriptTMキット(カタログ番号 639562)を使用して行った。以下の遺伝子についての定量的実時間PCRを、Applied Biosystemsからのアッセイ−オン−デマンドプライマープローブを使用して行った(カタログ番号については、後記(Post-text)表8−1参照):B2M、ERRγ、ERRβ、ERRα、PGC−1α、PGC−1β、PPARα、PPARγ、PPARδ、COX−4、チトクロームc、UQCRB、CPT−1b、LCAD、MCAD、IDH3a、ATP−5b、UCP−2、およびUCP−3。
【0068】
Taqman実時間定量的PCRを行い、製造業者の指示に従い分析した(Applied Biosystems)。具体的に、増幅を、トリプリケートで、10μl反応混合物中で行った。反応混合物は:1倍のTaqMan(登録商標) Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems、カタログ番号 4304437)、1倍のアッセイ−オン−デマンドプライマープローブ、および2μlのcDNAサンプルを含んだ。遺伝子発現を、B2M内因性コントロール(Applied Biosystems, カタログ番号 Mm00437762_m1)により測定した総cDNAに対して標準化することにより計算した。サンプルを、最初に2分間、50℃で最適ウラシル−N−グリコシラーゼ活性のためにインキュベートした。PCRプログラムを、384ウェルサーマルサイクラー(Perkin-Elmer Applied Biosystems)中、95℃変性、10分間で開始し、95℃/15秒間および60℃/1分間の40サイクルが続いた。各増幅ランは“鋳型なし”コントロール(緩衝液およびプライマーのみ)を含んだ。増幅データをPerkin-Elmer(Applied Biosystems)により開発された7700 Sequence Detectorにより回収し、Sequence Detection Systemソフトウエアを使用して分析した。正のPCR結果を反映する部分的サイクル数を、サイクル閾値(Ct)と呼ぶ。
【0069】
平均遺伝子発現値を、2−ΔΔCt(Applied Biosystems, Foster City, CAにより記載)を1の値に標準化した媒体処理細胞(0μM)における発現と共に使用して、B2Mに対して各群を計算した。データを標準±SEM(n=3反復ウェル)として示す。統計学的有意を、スチューデントのt検定を使用して測定した。
【0070】
チトクロームc酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を、R&D Systems(カタログ番号 MCTC0, R&D Systems, Minneapolis, MN)からのラット/マウスチトクロームc免疫アッセイキットを使用して、製造業者の指示に従い行った。
クエン酸シンターゼアッセイを、本明細書で上記の方法に従い行った。
【0071】
呼吸を、AJQ710と24時間インキュベートした筋管で、公開された方法を改変して測定した(St-Pierre, et al., JBC, 278(29):26597-603(2003))。細胞を1回リン酸緩衝化食塩水(PBS)で洗浄し、5分間、37℃で2mlのトリプシン(Mediatech, カタログ番号 25-052-CI)で処理した。トリプシンを除去せずに、10mlのDMEMと10%FBSを各ウェルに添加した。細胞を15mlチューブに移し、5分間、1000rpmで遠心した。細胞を1回培地で洗浄し、ペレット化し、その後、D−PBS(Invitrogen, カタログ番号 14040-133)中、25mMグルコース(Sigma、カタログ番号 G-5400)、1mM ピルベート(Invitrogen, カタログ番号 11360-070)および2%ウシ血清アルブミン(BSA)(MP Biomedicals, カタログ番号 103703)を含むアッセイ緩衝液に再懸濁した。細胞懸濁液をアッセイ緩衝液で1×10細胞/mlに希釈し、使用するまで37℃に置いた。酸素消費を、Hansatech(Norfolk, UK)により提供された指示に従い、Clark電極で測定した。細胞懸濁液の半量を各測定に使用した。オリゴマイシン(MP Biomedicals, カタログ番号 151786)およびFCCP(4−(トリフルオロメトキシ)カルボニルシアニドフェニルヒドラゾン)(Sigma、カタログ番号 C2920)の濃度は各々2μg/mlおよび2〜5μMであった。実験をトリプリケートで行った。呼吸の割合を、製造業者により提供されたソフトウエアを使用して、酸素消費の束の傾斜を計算することにより測定した。
【0072】
データ操作およびグラフ作成を、Microsoft ExcelおよびGraphPad Prism 4ソフトウエアを使用して行った。データは平均±SEMとして示す。全実験において、各用量をトリプリケートで試験した。この唯一の例外は、実験を3回繰り返した呼吸測定である。統計学的分析を、両側スチューデントのt検定を使用して行った。
【0073】
結果
我々は、以下の濃度のAJQ710で処理した分化したマウス筋管におけるミトコンドリア遺伝子発現の種々のマーカーの発現を試験した:30μM、10μM、3μMおよび1μM。貯蔵溶液を、一定量の薬剤溶液を、細胞の各ウェルに添加するように調製した。全効果を、媒体(DMSO)単独と比較した。試験したミトコンドリア経路/遺伝子は、酸化的リン酸化、脂肪酸酸化、クレブス回路、ATPシンターゼ、および脱共役タンパク質を含んだ。さらに、ERRγに機能的に関連する転写レギュレーターの発現を試験した。試験した遺伝子のほとんど全てで、我々は、AJQ710処理後の遺伝子発現の用量依存性増加を発見した。全遺伝子発現結果は、24時間AJQ710処理からである。
【0074】
酸化的リン酸化の遺伝子は、AJQ710の増加とともに増加した発現を証明した。COX−4発現は2倍、チトクロームcは3.7倍(すなわちAJQ710での処理なしの1.0遺伝子/B2Mから30μM濃度のAJQ710で処理したときの3.7遺伝子/B2Mまで)、およびUQCRBは、30μM濃度のAJQ710で処理したとき2倍増加した。
【0075】
同様に、脂肪酸酸化と関連する試験した3遺伝子は、AJQ710での24時間処理後に用量依存性的方法で上方制御されることが示された。CPT−1b発現は3倍まで(すなわち処理なしの1.0遺伝子/B2Mから、30μM濃度のAJQ710で処理したときの3.0遺伝子/B2Mまで)、LCADは2.8倍、およびMCADは1.6倍、AJQ710の30μM処理後に増加した。
【0076】
試験した2種の他のミトコンドリア遺伝子である、クレブス回路の要素であるIDH3α、およびATP合成酵素であるATP−5bは、AJQ710の用量を増加させると、発現の用量依存的誘発が証明された。IDH3α発現は、2倍(すなわちAJQ710処理なしの1.0遺伝子/B2Mから、30μM濃度のAJQ710で処理したときの2.0遺伝子/B2Mまで)増加し、ATP−5bは、30μMのAJQ710処理24時間後1.6倍増加した。
【0077】
我々は、脱共役タンパク質UCP−2およびUCP−3のmRNA発現を測定した。UCP−2はAJQ710の全濃度で境界的な上方制御を示し、10μM処理後、その最高発現、1.5倍であった。UCP−3は発現の用量依存的増加を示し、3倍まで増加し、すなわちAJQ710での処理なしの1.0遺伝子/B2Mから、AJQ71030μM処理後の3.0遺伝子/B2Mまでであった。
【0078】
我々は、アゴニストでの筋管(mytoubes)処理に応答したERRファミリーの発現を測定した。AJQ710は、報告によるとERRγおよびERRβ両方を活性化するが、ERRαおよびERsを活性化しない(Zuercher, et al., J. Med. Chem., 48(9):3107-9(2005))。ERRαの発現は、AJQ710での処理後ERRβまたはERRγよりも大きな程度で増加した。AJQ710の30μM処理で、ERRγは1.4倍発現まで増加し、ERRβは発現の1.5倍増加を示し、そしてERRαは、発現が3.7倍増加した。
【0079】
コアクティベーターPGC−1αおよびPGC−1βもまた遺伝子発現について試験した。これらの転写物の発現は、類似の発現の用量依存性増加を示し、PGC−1αは1.9倍発現(すなわちAJQ710処理なしの1.0遺伝子/B2Mから、30μM濃度のAJQ710で処理したときの1.9遺伝子/B2Mまで)増加し、PGC−1βは1.8倍増加した。
【0080】
我々は、さらに、脂質代謝に重要な役割を有する核受容体ファミリーであるPPARsの遺伝子発現を試験した。PPARαおよびPPARδはAJQ710処理後に変化を示さなかった。PPARγは発現の用量依存性増加を示し、最大2.2倍発現(すなわちAJQ710での処理なしの1.0遺伝子/B2Mから、30μM AJQ710処理後の2.2遺伝子/B2Mまで)であった。
【0081】
タンパク質レベルでのミトコンドリア活性を評価するために、チトクロームc ELISAを行った。チトクロームcは電子輸送連鎖の必須要素であり、タンパク質の量がミトコンドリア数および酸化的リン酸化活性のバイオマーカーとして働く。我々は、化合物処理でのチトクロームcの用量依存的増加を観察し、筋管を30μM AJQ710で24時間処置したとき、88%の増加があった(図2.1)。
【0082】
ミトコンドリア活性を測定するために、クエン酸シンターゼ活性を測定した。この酵素は、しばしば、ヒト筋肉におえるミトコンドリア含量または活性の指標として使用される(Kelley, et al., Diabetes, 51(10):2944-50(2002))。クエン酸シンターゼはクレブス回路の初期段階を触媒し、それは酸化的リン酸化のための基質を供給する。30μM AJQ710で24時間処理した筋管は、クエン酸シンターゼ活性の28%増加を示し、一方、10μMおよび3μM処理は各々8%および9%増加を示した(図2.2)。
【0083】
我々は、さらに、ミトコンドリア遺伝子発現誘導が酸化的リン酸化に影響を有するか否かを調査した。細胞性呼吸を、AJQ710で24時間処理したマウス初代筋管で測定した。呼吸器連鎖要素の誘発と一致して、基底呼吸は、媒体処理コントロールと比較して、AJQ710処理筋肉細胞で37%増加した(図2.3)。オリゴマイシン非感受性呼吸、プロトン漏出は36%増加したが、この増加は統計学的に有意ではなかった。FCCP存在下、呼吸の割合は、媒体処理コントロール細胞と比較して、AJQ710で32%増加した(図2.3)。これらの結果は、ERRγアゴニストが、連動した呼吸を介してミトコンドリア酸化的能力を増加できることを示す。
【0084】
上記アッセイから観察できるミトコンドリア機能改善は、ここで請求した適応症における治療的利点を示す。
【0085】
図面の簡単な説明
図1.1は、FRETアッセイ配置の図形を示す。
図1.2は、アゴニスト誘発FRET応答を示す。
図2.1は、NVP-AJQ710-NX-2で処理したマウス筋管におけるチトクロームcのタンパク質発現レベルを示す。
図2.2は、NVP-AJQ710-NX-2で処理したマウス筋管におけるクエン酸シンターゼ活性を示す。
図2.3は、NVP-AJQ710-NX-2で処理した初代マウス筋管における細胞性呼吸の測定を示す。
【0086】
実施例3 − 体重/肥満
食餌誘発肥満マウスを、21−23週齢で試験に使用する。試験の最初の日、動物を午前7:30に絶食させる。体重測定および基底血液サンプル採取を午前10:30に行う。動物を2群に分け(n=10/群)、血漿グルコース値および体重を2群間でマッチさせた。動物に、媒体(水)または化合物を30mg/kg、5ml/kgの投与容量で経口投与する。媒体または化合物の1日量を、各日に同じ時間に合計28日間投与する。毎日の体重および食餌摂取測定を試験中採る。化合物は処置群で体重を減少させるが、食餌摂取に影響しない。脂肪および除脂肪質量分析を、EchoMRI Whole Body Composition Analyzerを使用して、28日間1週間間隔で行う。スキャンを製造者により提供される適当なサイズのホルダーを使用して行う。本薬剤を投与された動物は脂肪質量の減少と付随する除脂肪質量の増加を示す。試験24日目、動物を、酸素消費量(VO)および二酸化炭素排出量(VCO)を、密封チャンバーの空気サンプリングを介して測定するCLAMSシステム(Columbus Instruments, Columbus, OH)に入れる。VOは、動物の全体的酸化的キャパシティの指標である。呼吸器商(RQ)を排出されたCOを消費されたOで割った比率として計算し、これは基質利用の指標である。動物が脂肪を主燃料源として使用しているならば、この比率は0.7に近く、一方燃料源が炭水化物であるならば、RQは0.7に近い。薬剤で処置した動物は、コントロール動物と比較して高い酸化的キャパシティを示す。脂肪を燃やす大きなキャパシティのために、処置動物は低いRQレベルを示す。試験最終日(28日目)、動物に媒体または化合物を午前10:30に投与する。尾血液サンプルを午後12:30に採取する。次いで、動物を二酸化炭素で殺す。最終血液サンプルを、血液化学分析のために心臓穿刺を介して採取する。
【0087】
実施例4 − 2型糖尿病/代謝疾患
食餌誘発肥満マウスを21−23週齢で試験に使用する。試験の最初の日、動物を午前7:30に絶食させる。体重測定および基底血液サンプル採取を午前10:30に行う。次いで、血漿グルコース値を測定する。動物を2群に分け(n=10/群)、血漿グルコース値および体重を2群間でマッチさせた。午後12時に、動物に媒体(水)または化合物を30mg/kg、5ml/kgの投与容量で経口投与する。午後1:00に血液サンプル(0分)を取り、その後、糖耐性試験(OGTT)を1g/kg(20%グルコース水溶液)で、5ml/kgの容積で行う。血液サンプルをグルコース投与30、60および120分後に採る。動物に、OGTT後、再給餌する。動物に、毎日媒体または化合物を、各日午後12:00に、合計15日間投与する。毎日の体重および食餌摂取測定を試験中行う。2回のさらなるOGTTを、試験中、7日目および14日目に、上記で1日目のOGTTについて記載したプロトコールに従い行う。薬剤で処置した動物は、OGTT中の曲線下面積で測定して、コントロール動物と比較して改善した糖耐性を示す。OGTTにおける改善の程度は、7日目から14日目まで時間依存的方法で増加する。試験最終日(15日目)、マウスに午前7:30に絶食させ、媒体または化合物を午前10:30に投与する。尾血液サンプルを午後12:30に採る。次いで、動物を二酸化炭素で殺す。最終血液サンプルを、血液化学分析のために心臓穿刺を介して採取する。
【0088】
血液採取および分析
血液サンプルを、試験中尾採血を介して採る。血漿グルコース濃度は、グルコースメーター(Ascensia Elite, Bayer Corp., Mishawaka, IN)を使用して決定する。血液サンプルを凝血を防止するためにヘパリンリチウムを含むチューブに回収する(Microvette CB300, Aktiengesellschaft & Co., Numbrecht, Germany)。各血液サンプル採取前に、1μlの1:10希釈プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma, St. Louis, MO)をサンプルチューブに添加する。血液サンプル採取後、チューブを氷上に置き、その後遠心分離する。血液サンプルの血漿部分を10,000×gで10分間、4℃の遠心分離により得て次いで、−80℃に貯蔵する。血漿インスリンおよびグルカゴンレベルMouse Endocrine Lincoplexキット(Linco Research, Inc., St. Charles, MO)を使用したLuminexアッセイにより決定する。薬剤、すなわちERRγアゴニストで処置した動物は、コントロール動物と比較して血漿インスリンレベルの低下を示す。血漿トリグリセリド、脂肪酸および総コレステロールレベルAmplex Redキット(Molecular Probes, Eugene, OR)に基づく蛍光アッセイを使用して決定する。血液化学分析を、自動化乾燥化学システム(SPOTCHEM EZ Analyzer, Heska, Fort Collins, CO)を使用して行う。ERRγアゴニストで処置した動物は体重減少または脂質プロファイル改善を示す。
【0089】
実施例5 − 異脂肪血症
食餌誘発肥満マウスを、21−23週齢で試験に使用する。試験の最初の日、動物を午前7:30に絶食させる。体重測定および基底血液サンプル採取を午前10:30に行う。動物を2群に分け(n=10/群)血漿グルコース値および体重を2群間でマッチさせた。動物に、媒体(水)または化合物を30mg/kg、5ml/kgの投与容量で経口投与する。投与する媒体または化合物を、各日に同じ時間に合計15日間投与する。毎日の体重および食餌摂取測定を試験中行う。脂肪および除脂肪質量分析を、EchoMRI Whole Body Composition Analyzerを使用して、15日間に2回行う。スキャンを製造者により提供される適当なサイズのホルダーを使用して行う。試験最終日(15日目)、マウス動物を午前7:30に絶食させ、媒体または化合物を午前10:30に投与する。尾血液サンプルを午後12:30に採る。次いで、動物を二酸化炭素で殺す。最終血液サンプルを、血液化学分析のために心臓穿刺を介して採取する。
【0090】
血液採取および分析
血液サンプルを、試験中尾採血を介して採る。は、グルコースメーター(Ascensia Elite, Bayer Corp., Mishawaka, IN)を使用して決定する。血液サンプルを凝血を防止するためにヘパリンリチウムを含むチューブに回収する(Microvette CB300, Aktiengesellschaft & Co., Numbrecht, Germany)。各血液サンプル採取前に、1μlの1:10希釈プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma, St. Louis, MO)をサンプルチューブに添加する。血液サンプル採取後、チューブを氷上に置き、その後遠心分離する。血液サンプルの血漿部分を10,000×gで10分間、4℃の遠心分離により得て次いで、−80℃に貯蔵する。血漿インスリンレベルMouse Endocrine Lincoplexキット(Linco Research, Inc., St. Charles, MO)を使用したLuminexアッセイにより決定する。血漿トリグリセリド、脂肪酸および総コレステロールレベルAmplex Redキット(Molecular Probes, Eugene, OR)に基づく蛍光アッセイを使用して決定する。薬剤、すなわちERRγアゴニストで処置した動物は、コントロール動物と比較して、低下した血漿トリグリセリド、遊離脂肪酸およびコレステロールレベルを示す。血液化学分析を、自動化乾燥化学システム(SPOTCHEM EZ Analyzer, Heska, Fort Collins, CO)を使用して行う。
【0091】
実施例6 − 運動持久能力
運動能力を測定するために、年齢および体重を適合させたC57Bl6マウスを、ショックプレート刺激を伴う電動トレッドミル上を走らせる(Exer-6, Columbus Instruments, Columbus, OH)。マウスを、実験開始1日前にトレッドミルに順応させる。1日目に、マウスを午前9時から初めて2時間運動させる。トレッドミルの速度は最初の1時間一定であり、2時間目は、15分毎に2メートル/分の割合で加速する。トレッドミルの傾斜は実験中一定に保つ。マウスが走る能力を、各マウスが疲れ、トレッドミル上に乗っていれなくなるまでの時間およびトレッドミルの速度を測定することにより評価する。走った総距離および行った労作を運動能力の指標として測定する。最大酸化的キャパシティと呼ぶ運動中の酸素消費もまた運動に対する動物の耐容性を決定するために測定する。次いで、動物を2セットに分け(各n=10)、運動キャパシティは2群間でマッチさせる。午後12時に、動物に媒体(水)または化合物、すなわちERRγアゴニストを30mg/kg、5ml/kgの投与容量で経口投与する。媒体または化合物の1日量を、午後12:00時に合計28日間投与する。毎日の体重および食餌摂取測定を試験中行う。試験の14日目および27日目に、動物を上記の通りの運動キャパシティについて評価する。薬剤で処置した動物は、コントロール動物と比べて、長時間および長距離走ることができる。これらの動物はまた、コントロール対象に対して増加した最大酸化的キャパシティも証明する。処置およびコントロール動物の間のこれらの運動キャパシティパラメータの差異の程度は、試験の14日目から27日目で増加した。28日目に、動物に媒体または化合物を投与し、午後12時におよび尾血液サンプルを午後12:30に採る。次いで、動物を二酸化炭素で殺し、代謝物および遺伝子発現の分析のために組織を回収する。最終血液サンプルを、血液化学分析のために心臓穿刺を介して採取する。血液サンプルを凝血を防止するためにヘパリンリチウムを含むチューブに回収する(Microvette CB300, Aktiengesellschaft & Co., Numbrecht, Germany)。各血液サンプル採取前に、1μlの1:10希釈プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma, St. Louis, MO)をサンプルチューブに添加する。血液サンプル採取後、チューブを氷上に置き、その後遠心分離する。血液サンプルの血漿部分を10,000×gで10分間、4℃の遠心分離により得て次いで、−80℃に貯蔵する。血漿トリグリセリド、脂肪酸および総コレステロールレベルAmplex Redキット(Molecular Probes, Eugene, OR)に基づく蛍光アッセイを使用して決定する。血液化学分析を、自動化乾燥化学システム(SPOTCHEM EZ Analyzer, Heska, Fort Collins, CO)を使用して行う。薬剤、すなわちERRγアゴニストで処置した動物は、コントロール動物と比較して、低い血漿トリグリセリド、遊離脂肪酸およびコレステロールレベルを示す。
【0092】
実施例7 − 神経変性疾患
神経変性疾患に対する陽性結果を以下の実験により評価する。
動物
雌B6CBAF1/Jマウスに、雌B6CBATg(HDexon1)62Gpb/1Jマウス(R6/2, Mangiarini et al., 1996)からの卵巣を移植し、Jackson Laboratories(Bar Harbor, Maine)から得て、B6CBAF1/J(The Jackson Laboratory, Maine)雄マウスと社内で繁殖させる。自社の45匹のマウスのサンプル(雄および雌)において、反復長は119−130cmと測定される。7腹由来のマウス(R6/2トランスジェニック(TG)、n=27、雄=14、雌=13)を、70日齢まで21日間試験し、84日目に殺す(試験時点の詳細について図1参照)。マウスを、温度(21−23℃)および湿度(30−70%)制御室で、餌および水を自由に摂取させ、逆明暗サイクル(消灯午前10時、点灯午後10時)で飼育する。遺伝子型を、3週齢時に採った尾小片からのDNAから測定する。DNAを、Qiagen(Valencia, CA)からのキットを使用して単離する。CAG反復を、PCRによりFAM標識プライマー(5’−ATGAAGGCCTTCGAGTCCCTCAAGTCCTTC−3’)および(5’−GGCGGCTGAGGAAGCTGAGGA−3’)をAM緩衝液(67mM Tris−HCl[pH8.8]、16.6mM NHSO、2.0mM MgCl 0.17mg/ml BSA、10mM 2−メルカプトエタノール)、10%DMSO、200mM dNTPs、8ng/μl プライマーと0.5U/ml Taqポリメラーゼ)中で使用してサイズ分画する。循環条件は、90”@94℃、25X(30”@94℃、30”@65℃、90”@72℃)、10’@72℃であった。PCR産物をABIシークエンサーとGenescanおよびGenotyperソフトウエアパッケージを使用してサイズ分画する。CAG反復のサイズは、PCR産物のサイズより85bp短い。全実験を、Institutional Animal Care and Use Committee at NIBRIに従い、そして認可された通りに行う。
【0093】
化合物投与(例えばここで記載のERRγアゴニストGSK4716またはGSK9089)
マウスを、84日齢まで21日間毎週体重測定する。21日齢時に、動物を2群に分け、媒体(水)または化合物を30mg/kgで、5ml/kgの投与容積で経口投与する。媒体または化合物の1日用量を、各日、同じ時間に合計63日間投与する。行動表現型の試験を、処置胃管の最後に行う。各マウスの死亡年齢を記録する。薬剤、すなわちERRγアゴニストで処置した動物は、未処置動物と比較して長い寿命を示す。
【0094】
行動試験
回し車
マウスを、個々に、回し車(23cm直径, Mini Mitter Company Inc., Bend OR)を備えたケージに入れる。車の各回転を磁気により検出し、VitalView Data Acquisition Software V 4.0(上記Mini Mitter Company Inc.)により、3分瓶で記録する。回し車ケージをキャビネットに入れ(8ケージ/キャビネット)、光およびの妨害を最小にする(消灯午前10時、点灯午後10時)。ランニング活動を6−8日間連続的に記録する(多くは7−8日間 WT、n=12、R6/2 n=21で飼育)。明および暗相中の車ランニング活動を、ActiView V 1.2(上記Mini Mitter Company Inc.)を使用して計算する。測定を毎日のランニング活動からまたは回し車への各暴露の中間セクションから計算する(4.5−5.5週、または8.5−9.5週での回し車にいる完全な3日目、4日目、および5日目)。測定は:(1)3日目、4日目および5日目の時間瓶(3分)あたりの最大回転数、(2)回し車にいる各連続日由来の明および暗相中の時間瓶あたりの平均活動(3)回し車にいる3日目、4日目、および5日目を通して平均した活動由来の時間瓶あたりの平均明および平均暗活動、(4)3日目、4日目および5日目の夜相中の休憩の数、(5)回し車にいる完全な3日目、4日目および5日目を通して走った総回転数。活動(例えば回転数および/または平均活動)は、ERRγアゴニスト化合物を投与したとき改善される。
【0095】
ロータロッド
ロータロッド装置(Ugo Basile, Varese, Italy)を使用して、運動協調およびバランスを測定する。心棒を、マウスが心棒にしがみつくのを防止するために滑らかなゴムでカバーする。試験を、暗相の約半分を通して、照明のために赤色光(25W)を使用して行う。試験室への15−20分間の馴化期間に続き、マウスに、他の公開されたプロトコールに類似した加速プロトコール(10分間で4−40rpm)で3試験する(試験間隔少なくとも10分)。落ちるまでの潜伏時間を測定する。マウスが20秒以内にロータロッドから落ちたら、それを直ぐに戻す(3回まで)。マウスに4日間ベースラインで試験し(4週齢)、8週齢で3日間試験する。ベースラインおよび8週齢でのマウスあたりの平均潜伏時間を計算し、それを使用して群平均を作製する。マウスがロータロッド上にいる時間はERRγアゴニスト化合物により増加する。
【0096】
握り強度
バネ計量器(Fisher Scientific, Tustin, CA)に壁取付台からぶら下がるブランコを付ける。マウスに前足でブランコを握らせ、観察者はマウスの尾を優しく引っ張る。引っ張った重さ−体重を分析に使用する。マウスを5回試験し、最良のスコアの3回を分析に使用する。ERRγアゴニスト化合物は握り強度を改善する。
【0097】
本発明は好ましい態様を参照して上に記載しているが、当業者が認識するとおり、多くの付加、削除および修飾が添付の特許請求の範囲内で可能である。
【0098】
本明細書で引用する全ての特許および文献は、その全体を引用により包含させる。矛盾が存在する場合、定義および解釈を含む本明細書の記載が優先する。
【0099】
他の態様が当業者には明白であろう。前記の詳細な記載は単に明快さのためおよび単なる例示として提供していることは理解すべきである。本発明の精神および範囲は上記実施例に限定されず、添付の請求の範囲により包含される。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】FRETアッセイ配置の図形を示す。
【図2】アゴニスト誘発FRET応答を示す。
【図3】NVP-AJQ710-NX-2で処理したマウス筋管におけるチトクロームcのタンパク質発現レベルを示す。
【図4】NVP-AJQ710-NX-2で処理したマウス筋管におけるクエン酸シンターゼ活性を示す。
【図5】NVP-AJQ710-NX-2で処理した初代マウス筋管における細胞性呼吸の測定を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病、インスリン抵抗性、代謝疾患/メタボリック症候群、異脂肪血症、肥満、過体重、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病から選択される疾患または状態の予防、進行遅延または処置、または運動持久能力の改善の方法であって、それを必要とするヒトを含む温血動物に、治療的有効量のERRγアゴニストを投与することを含む、方法。
【請求項2】
糖尿病、インスリン抵抗性、異脂肪血症、運動持久能力、肥満、過体重、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病から選択される疾患または状態予防、進行遅延または処置の、または運動持久能力の改善のための、治療的有効量のERRγアゴニストを1種以上の薬学的に許容される担体と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項3】
糖尿病、インスリン抵抗性、代謝疾患/メタボリック症候群、異脂肪血症、肥満、過体重、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病から選択される疾患または状態の予防、進行遅延または処置または運動持久能力の改善のための医薬の製造のための、ERRγアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項4】
処置される疾患が2型糖尿病、代謝疾患/メタボリック症候群、異脂肪血症、神経変性疾患、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病またはハンチントン病から成る群から選択される、請求項3に記載の使用、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
運動持久能力の改善のための、請求項3に記載の使用、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
IGMを有するヒトを含む温血動物に、治療的有効量のERRγアゴニストを投与することを含む、2型糖尿病の予防または進行遅延のための方法。
【請求項7】
IGMを有する患者の2型糖尿病の予防、または進行遅延のための、治療的有効量のERRγアゴニストを1種以上の薬学的に許容される担体と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項8】
IGMを有する患者の2型糖尿病の予防、または進行遅延のための医薬の製造のための、ERRγアゴニストまたは薬学的に許容されるその塩の使用。
【請求項9】
ERRγアゴニストがGSK4716またはGSK9089、またはいずれの場合も、薬学的に許容されるその塩から選択される、請求項1から8のいずれかに記載の使用、処置方法または医薬組成物。
【請求項10】
ERRγアゴニストの1日量が10〜500mgまたは10〜200mgである、請求項1から9のいずれかに記載の使用、処置方法または医薬組成物。
【請求項11】
ERRγアゴニストが、0.001〜10マイクロモルまたは0.001〜1マイクロモルのEC50を示す、請求項1から10のいずれかに記載の使用、処置方法または医薬組成物。
【請求項12】
ERRγアゴニストが、ERRγFRETアッセイ、例えば実施例1のアッセイ、またはここに記載の他のアッセイで0.001〜10マイクロモルまたは0.001〜1マイクロモルのEC50を示す、請求項1から11のいずれかに記載の使用、処置方法または医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−535425(P2009−535425A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510039(P2009−510039)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/067971
【国際公開番号】WO2007/131005
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】