説明

有機太陽電池素子及び有機太陽電池素子の製造方法

【課題】エネルギー変換効率に優れ、高温高湿耐久性に優れた有機太陽電池素子および有機太陽電池素子の製造方法を提供する。
【解決手段】第2の電極15と、光透過性の第1の電極12との間に、発電層を含む有機層13を積層した有機太陽電池素子10において、該有機層と該第2の電極との界面14が微細な凹凸構造を有し、且つ、該界面近傍に含フッ素化合物を含有することを特徴とする有機太陽電池素子及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機太陽電池素子及び有機太陽電池素子の製造方法に関し、更に詳しくは、光入射する透明電極に対向する側の電極が光反射部材からなり、発電する機能層と該対向する側の電極との界面が凹凸構造を有する有機太陽電池素子及び有機太陽電池素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機太陽電池は塗布法で形成できることから、大量生産に適した太陽電池として注目され、多くの研究機関で盛んに研究がなされている。
【0003】
最近開発されている塗布型の有機薄膜太陽電池の多くは、有機ドナー材料および有機アクセプター材料が接触面積を広げるために相分離した、所謂バルクヘテロジャンクション構造を有しており、光吸収によって形成した励起子が失活する前に効率よく接触界面に移動し、電荷分離できることが特徴である。ここで発生した電荷は各ドメインが電極まで繋がったパーコレーション構造中を拡散し、電極に到達することで発電する。
【0004】
しかしながら、この様な有機薄膜からなるデバイスは、空間電荷制限電流(SCLC;Space Charge Limited Current)の原理を利用して電流を流すため、発電層の膜厚を薄く設計する必要があり、太陽電池においては光吸収に必要な光路長の制限を受けることになる。ここで、SCLCとは、外部から空間電荷を注入して移動させることにより流れる電流であり、その電流密度はチャイルドの法則、すなわち下記式(1)で表される。Jは電流密度、εは比誘電率、εは真空誘電率、μはキャリア移動度、Vは電圧、dはVが印加されている電極間の距離(以下、「膜厚」と記す)である。式(1)を見てわかるとおり、SCLCは厚さdの3乗に反比例するため、極めて薄い膜の両面に電極を挟んだ構造でしか流すことができない。より具体的には、有機材料の一般的なキャリア移動度を考えると、200nm程度の薄膜にしなければならない。
【0005】
【数1】

【0006】
上述した光路長の制限を解消する手段として、凹凸構造を有する透明電極を用い、その上に発電素子を形成することで、界面での光散乱を利用して、薄膜でありながら光吸収の光路長を稼ぐ所謂光閉じ込めの手法が一般的に行われて(例えば、特許文献1参照)いる。また、同様にして有機太陽電池素子においても、凹凸構造を利用した素子内部への光閉じ込め機能を有する素子が紹介されており(例えば、特許文献2、3参照)、太陽電池素子の発電効率向上に効果があることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−340815号公報
【特許文献2】特開2007−5620号公報
【特許文献3】特表2005−538556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、発明者らの検討によると、上述した様な内部に凹凸構造を有する有機太陽電池素子では、SCLCを流すこと自体が最大の問題となることが明らかになってきた。つまりは、従来技術で紹介されている実施例では、凹凸構造の形状が高度に制御されていないため、凹凸の凸部を起点にショートした発電不良領域が発生し、有機太陽電池素子の歩止まりが極端に悪くなるといった問題があることが分かっている。
【0009】
また、上述した特許文献2に示される従来技術では、ショート防止のためにバッファー層を設け、特に実施例では数百nmもの厚膜とすることで凹凸構造を平滑化し、その上に発電層を塗布製膜しても発電をすることを示しているが、この構成では凹凸構造から発電層までの距離が離れているため光散乱による光閉じ込め効果が不十分であることと、同時に界面の屈折率差が見かけ上小さくなったために、光閉じ込め効果が減少し、発電効率の低下を招いていた。更に、PEDOT:PSSバッファー層からの拡散物質によって、対向する電極層が容易に酸化腐食され、高温高湿下での素子耐久性や、光照射での耐久性が極端に低いことが課題になっていた。
【0010】
以上のような課題から、高度に形状制御された光散乱構造の形成と、それに伴う素子耐久性の確保を両立した技術が求められていた。
【0011】
従って、本発明の目的は、エネルギー変換効率に優れ、高温高湿耐久性に優れた有機太陽電池素子および有機太陽電池素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は下記の構成及び方法により達成される。
【0013】
1.第2の電極と、光透過性の第1の電極との間に、発電層を含む有機層を積層した有機太陽電池素子において、該有機層と該第2の電極との界面が微細な凹凸構造を有し、且つ、該界面近傍に含フッ素化合物を含有することを特徴とする有機太陽電池素子。
【0014】
2.前記微細な凹凸構造が、凹部と凸部の最大工程差Rpvが、50nm〜150nmであることを特徴とする前記1記載の有機太陽電池素子。
【0015】
3.前記第2の電極が、光散乱反射構造であって、かつ、導電性微粒子からなる多孔質体であることを特徴とする前記1又は2記載の有機太陽電池素子。
【0016】
4.前記導電性微粒子が、ナノワイヤを含むことを特徴とする前記3記載の有機太陽電池素子。
【0017】
5.前記1〜4のいずれか1項記載の有機太陽電池素子の製造方法において、第2の電極と、光透過性の第1の電極との間に、発電層を含む有機層を積層した後、含フッ素化合物で被覆された凹凸構造を有する金型を用意し、温度をかけながら前記有機層に型押しし、該有機層の表面に凹凸構造を転写する工程を少なくとも有することを特徴とする有機太陽電池素子の製造方法。
【0018】
6.前記有機層の材料が、UV光照射または熱処理によって架橋反応を示す化合物を少なくとも有し、前記金型を型押ししたまま、UV光照射または熱処理によって前記化合物を架橋させる工程を少なくとも有することを特徴とする前記5記載の有機太陽電池素子の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によりエネルギー変換効率に優れ、高温高湿耐久性に優れた有機太陽電池素子および有機太陽電池素子の製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る太陽電池素子の断面図である。
【図2】本発明に係る別の構成の太陽電池素子の断面図である。
【図3】本発明に係る太陽電池素子の製造方法を示す工程図である。
【図4】金型の製造工程のフローを示す図である。
【図5】シリコン基板に溝を形成して金型を製造する工程である。
【図6】シリコン基板を加工する装置である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明を実施するための形態について詳しく述べるが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0022】
本発明の太陽電池素子は、光透過性の第1の電極と、第2の電極との間に、発電層を含む有機層有し、該有機層と第2の電極界面が微細な凹凸構造を有し、且つ、該界面近傍にフッ素原子を含む剤を有することを特徴とする。
【0023】
以下、本発明で好ましく用いることができる有機太陽電池素子の構成について、図1および図2を用いて詳細に説明する。
【0024】
ひとつの好ましい構成である図1において、本発明の有機太陽電池素子10は、透明な基材11上に順次積層された光透過性の第1の電極12、発電層を含む有機層13、第2の電極15から構成され、有機層13と、第2の電極15の界面が微細な凹凸構造14を有し、且つ、該界面近傍にフッ素原子を含む剤を有する。
【0025】
また、更に好ましい構成である図2において、有機太陽電池素子20は、透明な基材21上に順次積層された光透過性の第1の電極22、発電層を含む有機層23、導電性微粒子からなる第2の電極25から構成され、有機層23と、第2の電極25の界面が微細な凹凸構造24を有し、且つ、該界面近傍にフッ素原子を含む剤を有する。
【0026】
ここで図2における第2の電極25は、導電性微粒子からなる多孔質体であることが本発明において好ましい構成であるが、更に導電性微粒子として導電性材料からなるナノワイヤーを含む構成であることが更に好ましい。
【0027】
以上の図1又は図2において、本発明の有機層は、少なくとも発電層を含むことを特徴とし、更に好ましくは、発電層以外に、電荷輸送層、例えば正孔輸送層や電子輸送層、正孔注入(取り出し)層や、電子注入(取り出し)層などを有して成ることが更に好ましい。また、本発明の効果が得られれば、第1の電極と第2の電極との間に、如何なる層を有しても良いが、有機化合物からなる有機層であることが好ましい。
【0028】
(微細な凹凸構造)
前述したように、有機層と第2の電極の界面に微細な凹凸構造を有することで、以下の効果が期待される。
(1)第2の電極の表面で入射した光が拡散反射し、光路長が延長される効果により短絡電流密度Jsc改善し変換効率が向上する。
(2)有機層と第2の電極との界面表面積が増大し、界面抵抗が低減することでフィルファクターFF改善し変換効率が向上する。更に、正孔と電子の取り出しに際し、キャリアバランスが最適化されることで光照射時の耐久性が向上する。
(3)第2の電極が、有機層の膜厚方向に凹凸構造を有するため、金属電極表面のプラズモン共鳴による電界増強効果が得られる領域が拡大し、短絡電流密度Jsc改善によって変換効率が向上する。
【0029】
(微細な凹凸構造の形状)
微細な凹凸構造とは、有機層を貫通するほどの大きな凹凸構造ではなく、凹部と凸部の最大工程差Rpvが、50nm〜150nmであることが好ましく、更には50nm〜120nmが好ましく、60nm〜100nmが最も好ましい。このとき、少なくとも有機層の膜厚よりも小さいRpvであることがリーク電流抑制の観点から好ましい。ここでRpvとは、凹凸構造の凸部と凹部との高低差を表す。横方向の凹部と凸部を1ピッチとした場合、ピッチ幅は100nm〜1000nm程度が光散乱光像形成の観点から好ましく、更には150nm〜600nmであり、180nm〜500nm程度が最も好ましい。
【0030】
本発明において好ましい凹凸構造は、櫛歯状、格子状、三角柱状、ドット状、ピラミット状、球状、規則的、不規則的ないかなる構造も好ましく用いることができる。型押しのし易さから、先端が鋭利な三角柱状、ドット状、ピラミット状などが好ましい。
【0031】
このような微細な凹凸構造は、走査型透過電子顕微鏡(TEM)などで観察することでも確認できるが、例えば原子間力顕微鏡(AFM)などを用いることで、簡単により高精度な評価をすることができる。
【0032】
(微細な凹凸構造の形成方法)
本発明の有機太陽電池素子は、光透過性の第1の電極と、第2の電極との間に、発電層を含む有機層を積層した有機太陽電池素子であって、その製造方法において、有機層を積層する工程と、含フッ素化合物で被覆された凹凸構造を有する金型を用意し、温度をかけながら前記有機層に型押しし、有機層表面に凹凸構造を転写する工程を少なくとも有する。
【0033】
更に好ましくは、上述の有機層材料が、UV光照射または熱処理によって架橋反応を示す化合物を用いることが好ましく、前記金型を型押ししたまま、UV光照射または熱処理によって前記化合物を架橋させる工程を少なくとも有することがより好ましい。
【0034】
本発明の有機太陽電池素子の好ましい製造方法について、図3を例に説明する。
【0035】
図3(a)では透明な基材31の上に第1の電極32が設けられており、その上に製膜された有機層33に、必要に応じ加熱しながら金型36を型押しし(図3(b))、金型を離型して有機層表面に微細な凹凸構造を転写する(図3(c))。更に、作製した凹凸構造上に第2の電極層35を積層することで、有機太陽電池素子を得る。
【0036】
ここで、金型36表面には、予め含フッ素化合物を付着させておくことで、型押し時の転写性に優れ、更には離型時の構造崩れを抑制できる。
【0037】
有機層にUV光照射または熱処理によって架橋反応を示す化合物を用いる場合、上述した金型を押し付けたまま、基材側から光を照射するか、熱を加えることにより、架橋反応によるネットワーク化を進めることが好ましい。ネットワークポリマーが生成し硬化が進むことにより、特に冷却することなく金型を容易に抜くことができるようになる。これは、架橋反応による重合を進めることにより、ネットワークポリマーの硬化収縮が生じ、冷却しなくても、離型しやすくなるという特異的な効果を生じる。
【0038】
更にはネットワークポリマーが生成すると、上層の塗布液に対して不溶化するため、金型を抜いてできた微細な凹凸構造を有する有機層上に、例えば溶剤系の金属粒子分散液を塗工し、第2の電極を積層するといったプロセスも可能になる。
【0039】
(含フッ素化合物)
本発明で用いることができる含フッ素化合物としては、有機系、無機系ともに有用であるが、溶液による塗布性の観点から有機系であり、可溶性の有機化合物であることがより好ましい。
【0040】
含フッ素化合物を、有機層と第2の電極との界面近傍に含有することで得られる効果は以下の3点と推定される。尚、本発明において、有機層と第2の電極との界面近傍とは、該界面又は該界面表面から20nm以内を言う。
【0041】
(1)フッ素の分極の影響により、有機層表面に負電荷が形成され、有機層−第2の電極(金属)界面に発電に好ましい電気的接合状態が形成される。結果として発電効率の向上と、キャリアバランスが保たれることによる光照射耐久性の向上が期待できる。
【0042】
(2)含フッ素化合物が有機層−第2の電極間に局在することで、有機層中を移動する腐食性物質がブロックされ、第2の電極が腐食されることを抑制する。特に熱湿耐久性の向上が期待される。
【0043】
(3)微細な凹凸構造を形成する際、金型に含フッ素化合物が付着することで、有機層に転写した後の離型性が改善する。結果として、所望の凹凸構造が均一に形成でき、発電効率の向上が期待できる。また、同時に有機層表面に含フッ素化合物を転写できるため、上述した(1)および(2)の効果を併せて得ることが期待できる。
【0044】
本発明で用いられる含フッ素化合物としては、フッ素原子を含む化合物ならば、何れの化合物でもいいが、好ましくは以下に示す化合物等を挙げることができる。
【0045】
化合物1;FCCFCF(OCFCFCF11OCFCFCHOCHCHCHMeSiOMeSiCSi(OMe)
化合物2;FCCFCF(OCFCFCF11OCFCFCHOCHCHCHMeSiOMeSiCSi(OMe)
化合物3;FCCFCF(OCFCFCF11OCFCFCONHCHCHCHMeSiOMeSiCSi(OMe)
化合物4;FCCFCFO[CF(CF)CFO]CF(CF)CHOCHCHCHMeSiOMeSiCSi(OMe)
化合物5;FCCFCFO[CF(CF)CFO]CF(CF)CONHCHCHCHMeSiOMeSiCSi(OMe)
化合物6;FCCFCFO[CF(CF)CFO]CF(CF)CHOCHCHCHMeSiOMeSiCSi(OMe)
化合物7;FCCFCFO[CF(CF)CFO]CF(CF)CHOCHCHCHMeSiOMeSiCSi(OMe)
また、市販のフッ素剤としては、ゾニールTCコート(デュポン社製)、オプツールDSX(ダイキン社製)、デュラサーフHD−2101Z(ダイキン社製)、サイトップCTL−107M(旭硝子社製)、ノベックEGC−1720(3M社製)等を用いることができる。
【0046】
含フッ素化合物の検出法としては、各種の分析方法を用いることができるが、本発明においては少なくともフッ素原子の有無を評価するためであれば、X線電子分光法(XPS法)によりフッ素原子に起因する結合エネルギーの波長域を測定し、そのピーク強度から確認することができる。
【0047】
(金型の作製法)
金型の材料としては金属、無機物質又は有機物であっても良く、例えば、ニッケル、石英、シリコンなどがあるが、上記形状の金型を形成するための加工性の点から、シリコンが好ましい。また、本発明において、半導体材料として光重合型のネットワークポリマーを用いる場合、光照射を型側から行うこともでき、その場合は石英などを選択することも好ましい。
【0048】
シリコンにより金型を形成する方法として、特開2006−216630号公報にはシリコン基材にプラズマエッチング処理とデポジション処理を繰り返し行う方法により側壁の荒れが少なく、離型性が良い金型が得られることが記載されている。また、特開2003−23101号公報には微細形状の加工されている領域と微細構造の加工されていない領域の境界線が鋸歯状の形状であることにより良好な離型性を得られることが記載されている。
【0049】
本発明ではシリコン基材にプラズマエッチング処理とデポジション処理を繰り返し行う方法により微細構造を形成した金型を使用することが好ましい。本発明は更に、微細形状の加工されている領域と微細構造の加工されていない領域の境界線が鋸歯状の形状である金型を使用することが好ましい。
【0050】
このような金型を作製する方法について、図4を用いて説明する。図4はシリコン基材上に高アスペクト比の微細な凹凸形成する加工方法の各ステップを示すフローチャートである。図5は図4の加工方法により、シリコン基材上に微細な凹凸を形成する工程を模式的に示した図である。
【0051】
図4のシリコン基体の加工方法は、図5(a)のように電子ビーム描画・現像により所定の微細パターンが形成されたエッチングマスク42を有するシリコン基体210に対しデポジッション/プラズマエッチング交互プロセスを行うことで、図5(b)のような深さH、幅Wを有する高アスペクト比の溝を加工するものである。
【0052】
まず、シリコン基体210にレジスト(感光性の樹脂)を均一に塗布してから(S01)、そのレジスト表面に対し電子ビームにより所定の微細パターンを描画し(S02)、所定の現像材料により現像することで(S03)、図5(a)のようにシリコン基体210の表面210a上に微細パターンを有するエッチングマスク42を形成する。
【0053】
なお、ステップS02における電子ビーム描画は、本発明者等が、他の発明者とともに、例えば、特開2004−107793号公報や特開2004−54218号公報等で提案した電子ビーム描画装置により行うことができる。これにより、所望の描画パターンを電子ビームによる3次元描画で数十ナノメートルオーダーの高精度でレジスト膜上に形成できる。
【0054】
次に、上述のエッチングマスク42の形成されたシリコン基体210を図6の真空プラズマチャンバ211内の基体ホルダ215に保持してICPエッチング装置200にセットする(S04)。そして、バイアス電力やRF電力等の最適化条件を入力しICPエッチング装置200に設定する(S05)。
【0055】
次に、ICPエッチング装置200を上記条件の下で作動させ、真空プラズマチャンバ211内を排気してから、デポジッションガスを制御バルブ226によりデポジッションガス源225から真空プラズマチャンバ211内に導入し、電極213,214に高周波電圧を印加してプラズマを生成し、シリコン基体210に対しデポジッションを行う(S06)。
【0056】
次に、制御バルブ226でデポジッションガスの供給を止め、真空装置221により真空プラズマチャンバ211の内圧が10−2Pa以下になるまでデポジッションガスを排気する(S07)。
【0057】
次に、エッチングガスを制御バルブ224によりエッチングガス源223から真空プラズマチャンバ211内に導入し、電極213,214に高周波電圧を印加してプラズマを生成するとともにバイアス電圧をシリコン基体210に印加し、シリコン基体210に対しエッチングを行う(S08)。
【0058】
そして、エッチングが続く場合(S09)、制御バルブ224でエッチングガスの供給を止め、真空装置221により真空プラズマチャンバ211の内圧が10−2Pa以下の圧力になるまでエッチングガスを排気する(S10)。
【0059】
次に、上述のステップS06に戻りデポジッションを行い、続いて、排気(S07)、エッチング(S08)を同様にして行う。このようにして、デポジッション工程とエッチング工程とを交互に繰り返すことでシリコン基体210に対するエッチングを行う。
【0060】
次に、上述のエッチングが終了したら(S09)、ICPエッチング装置を停止し(S11)、シリコン基体210を真空プラズマチャンバ内から移動させる(S12)。
【0061】
上述のようにして、レジストによりマスク42を形成したシリコン基体210に対しプラズマエッチング処理及びデポジッション処理を交互に繰り返すことで、シリコン基体210の表面210aに図5(b)のように深さH、幅Wの高アスペクト比(H/W)の複数の溝41を形成できる。
【0062】
以上のように、シリコン基体210においてピッチサイズP10nm〜200nm、アスペクト比(H/W)2〜30である溝41を持つ周期溝構造を得ることができる。
【0063】
また、図4では、デポジッション(S06)とエッチング(S08)とを交互に繰り返す際に、直前のプロセスガスを充分に排気する排気工程(S07,S10)を行ってから、次のプロセス(デポジッションまたはエッチング)を行うので、次のプロセスではエッチングガスとデポジッションガスが混ざった状態が存在せず、各プロセスを安定して実行でき、シリコン基体210に上述の所望の溝形状の周期溝構造を精度よく加工できる。
【0064】
上述した様なピッチサイズやアスペクト比は、収束イオンビーム(FIB)などで作製した断層試料を電子顕微鏡等で観察することにより評価できる他、原子間力顕微鏡(AFM)などを用いることでより簡便に評価することができる。
【0065】
(半導体材料前駆体)
本発明において、p型半導体材料とn型半導体材料との界面の面積が大きいほど発電効率は高いので凹凸のアスペクト比を大きくすることが望ましい。
【0066】
大きなアスペクト比の凹凸を形成するためには、微細構造の金型を深く押し込まなければならない。そのため、半導体材料は柔らかいことが望ましい。しかし、金型を離型する場合は、型付けされた半導体材料の形状が壊れないように、半導体材料は硬く強度が大きいことが望ましい。本発明において、ナノインプリントされる半導体材料前駆体(p型半導体材料とn型半導体材料の前駆体)はこのような性質を併せ持った化合物が好ましい。
【0067】
また、半導体材料前駆体は重合した際に、硬化収縮を生じ、金型との界面で応力が発生し、金型と剥離しやすくなる。そのため半導体材料前駆体は硬化収縮率の大きな化合物が好ましい。
【0068】
半導体材料前駆体は重合または架橋によりネットワーク構造を形成することが可能な基を有する化合物であって、ネットワーク構造を形成した段階でp型半導体またはn型半導体の機能を有するものである。重合又は架橋によりネットワーク構造を形成することが可能な基としては、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、イソシアネート基、メチロール基等が挙げられるが、中でもアクリロイル基やビニル基等を有し、ラジカル重合可能な基が硬化収縮が大きいことから好ましい。
【0069】
本発明において、ネットワーク化とは、低分子のモノマーを重合する構成、またはポリマー鎖同士が架橋反応によって共有結合で繋がることを指す。
【0070】
(n型半導体材料)
n型半導体材料の例としては、フラーレン、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む、高分子化合物が挙げられる。
【0071】
中でも、フラーレン含有化合物が好ましい。フラーレン含有化合物としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等を骨格に持つ化合物が挙げられる。フラーレン含有化合物では、フラーレンC60を骨格に持つ化合物(誘導体)が好ましい。
【0072】
フラーレン誘導体を前駆体とした場合、外部刺激処理によってネットワーク化しポリマー(高分子)構造となる半導体材料がより好ましい。この様なフラーレン含有ポリマーとしては、大別してフラーレンが高分子主鎖からペンダントされたポリマーと、フラーレンが高分子主鎖に含有されるポリマーとに大別されるが、フラーレンがポリマーの主鎖に含有されている化合物が好ましい。これは、フラーレンが主鎖に含有されているポリマーは、ポリマーが分岐構造を有さないため、固体化した際に高密度なパッキングができ、結果として高い移動度を得ることができるためではないかと推定される。
【0073】
具体的には、下記一般式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
【0074】
【化1】

【0075】
一般式(1)において、R、Rは置換または無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基から選ばれる置換基を表し、L、Lは置換または無置換のアルキレン基、アルケンジイル基、アルキンジイル基、シクロアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、シリレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、またはこれらが複数連結した構造を表す。nは2以上の整数を表す。
【0076】
、Rで表される置換または無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基としては、具体的には、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、ヘテロアリール基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基等)が挙げられ、これらの置換基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基について、具体的には、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基、1,1,1−トリフルオロプロピル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、ハロゲン化アリール基(ペンタフルオロフェニル基、ペンタクロロフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、アルキルシリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピル(iまたはn)シリル基、トリブチル(i、tまたはn)シリル基等)が挙げられ、これらの置換基は上記の置換基によってさらに置換されていても、複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0077】
、Lで表される置換または無置換のアルキレン基、アルケンジイル基、アルキンジイル基、シクロアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、シリレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基としては、炭素数1〜22のアルキレン基、アルケン−1,2−ジイル基、アルキン−1,2−ジイル基、シクロアルキレン基が挙げられ、アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられ、フェニレン基が好ましい。ヘテロアリーレン基としては、フリレン基、チエニレン基、ピリジニレン基、ピリダジニレン基、ピリミジニレン基、ピラジニレン基、トリアジニレン基、イミダゾリニレン基、ピラゾリニレン基、チアゾリニレン基、キナゾリニレン基、フタラジニレン基が挙げられる。シリレン基としては、ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基等が挙げられる。
【0078】
さらに好ましくは、n型半導体が三次元的に架橋したネットワーク構造を形成していることである。このような三次元ネットワーク構造を形成することで、バルクヘテロジャンクション層の積層や、その上に正孔輸送層・電子輸送層・正孔ブロック層・電子ブロック層等を溶液プロセスで形成する際に、下の層が溶解してしまうことがなくなるため、材料同士が混合することがなくなり、本発明の効果を如何なく発揮することができる。さらなる副次的な効果としては、剛性の高いn型キャリアパス構造を形成することができ、p型層とn型層の相分離構造が経時で変化することを防ぎ、結果として高い耐久性を有する有機光電変換素子を得ることができるため、一層の効率向上・寿命向上を達成することができる。
【0079】
n型半導体材料前駆体は重合または架橋によりネットワーク構造を形成することが可能な基を有する化合物であって、ネットワーク構造を形成した段階でn型半導体の機能を有するものである。重合又は架橋によりネットワーク構造を形成することが可能な基としては、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、イソシアネート基、メチロール基等が挙げられるが、中でもアクリロイル基やビニル基等を有し、ラジカル重合可能な基が硬化収縮が大きいことから好ましい。
【0080】
n型半導体材料前駆体の好ましい例としては以下の化合物を挙げることができる。
【0081】
【化2】

【0082】
【化3】

【0083】
【化4】

【0084】
(p型半導体材料)
p型半導体材料としては、縮合多環芳香族化合物前駆体を挙げることができる。縮合多環芳香族化合物前駆体としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の前駆体が挙げられる。
【0085】
更に、本発明に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族化合物や共役系化合物が挙げられる。
【0086】
共役系化合物としては、例えば、ポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、テトラチアフルバレン化合物、キノン化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、フラーレン及びこれらの誘導体あるいは混合物を挙げることができる。
【0087】
また、特にポリチオフェン及びそのオリゴマーの内、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0088】
その他、高分子p型半導体の例としては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリパラフェニレンスルフィド、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリカルバゾール、ポリイソチアナフテン、ポリヘプタジイン、ポリキノリン、ポリアニリンなどが挙げられ、更には特開2006−36755号公報などの置換−無置換交互共重合ポリチオフェン、特開2007−51289号公報、特開2005−76030号公報、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p4112、J.Amer.Chem.Soc.,2007,p7246などの縮環チオフェン構造を有するポリマー、WO2008/000664、Adv.Mater.,2007,p4160、Macromolecules,2007,Vol.40,p1981などのチオフェン共重合体などを挙げることができる。
【0089】
p型半導体材料前駆体は重合または架橋によりネットワーク構造を形成することが可能な基を有する化合物であって、ネットワーク構造を形成した段階でp型半導体の機能を有するものが好ましい。重合又は架橋によりネットワーク構造を形成することが可能な基としては、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、イソシアネート基、メチロール基等が挙げられるが、中でもアクリロイル基やビニル基等を有し、ラジカル重合可能な基が硬化収縮が大きいことから好ましい。
【0090】
好ましい具体的な化合物の例を下記に挙げる。
【0091】
【化5】

【0092】
(ネットワーク化)
本発明において、ネットワーク化とは、低分子のモノマーを重合する構成、またはポリマー鎖同士が架橋反応によって共有結合で繋がることを指す。
【0093】
本発明のp型半導体材料前駆体及びn型半導体材料前駆体の少なくとも一方は、金型によって凹凸形状になったところで、熱、光、放射線、重合反応または架橋反応を引き起こす化合物の蒸気などに暴露することにより重合反応または架橋反応を引き起こし、ネットワーク構造を形成する。
【0094】
一般的にp型半導体材料はポリマーを用いることが多く、対してn型半導体材料は低分子材料からなる構成が一般的である。本発明では、上層の形成に対して不溶化の効果が大きい、低分子材料からなるn型半導体材料の方が上述したネットワーク化されていることがより好ましい。更に好ましくは、上層形成に対する不溶化と、金型から剥離する際の離型性の観点から、p型半導体材料、およびn型半導体材料の両方が上述したネットワーク化されていることが最も好ましい。
【0095】
これらの反応のトリガーとしては、熱又は光が好ましい。p型半導体材料前駆体又はn型半導体材料前駆体は重合開始剤と組み合わせても良いが、p型半導体材料前駆体又はn型半導体材料前駆体が重合開始剤を用いずに重合可能な化合物であることが好ましい。
【0096】
(正孔輸送層)
正孔輸送層(正孔注入層、電子ブロック層)として好ましく用いられる材料としては、H.C.スタルク社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、WO2006/019270号パンフレット等に記載のシアン化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、溶液塗布法で形成することが好ましい。
【0097】
本発明においては、目的に応じて、正孔注入層と正孔輸送層を積層形成してもよく、正孔の輸送性と電極との接合において最適な材料を選択すればよい。
【0098】
また、本発明においては、逆のキャリアである電子をブロックする機能を有し、電荷の選択性を向上させる様な材料を選択してもよい。
【0099】
各層の好ましい膜厚範囲としては、0.1nm以上〜100nm以下が好ましく、5nm以上〜70nm以下がより好ましく、10nm以上〜50nm以下が最も好ましい。
【0100】
(電子輸送層)
電子輸送層(電子注入層、正孔ブロック層)材料としては、種々のn型材料を用いることができる。本発明の有機エレクトロニクス素子に好ましく用いることができる材料の例としては、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛等の金属錯体化合物もしくは以下に挙げられる含窒素五員環誘導体がある。即ち、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールもしくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4′−tert−ブチルフェニル)−5−(4″−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられる。
【0101】
更に上述の化合物以外にも、フラーレン類、カーボンナノチューブ類、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物などを用いることも本発明において好ましい。
【0102】
本発明においては、目的に応じて、電子注入層と電子輸送層を積層形成してもよく、電子の輸送性と電極との接合において最適な材料を選択すればよい。
【0103】
また、本発明においては、逆のキャリアである電子をブロックする機能を有し、電荷の選択性を向上させる様な材料を選択してもよい。
【0104】
各層の好ましい膜厚範囲としては、0.1nm以上〜100nm以下が好ましく、5nm以上〜80nm以下がより好ましく、10nm以上〜60nm以下が最も好ましい。
【0105】
電子注入層(バッファ層)においては、リチウム、カリウム、ナトリウム、セシウム等のイオンを含むハロゲン化物、酢酸塩、リン酸塩などから選ばれ、例えば、フッ化リチウムや、フッ化カリウム等を積層させ、電極との接合を向上させる構成が本発明において特に好ましい。
【0106】
(第1の電極)
本発明の第1の電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができる。例えば、陽極として用いる場合、第一の電極12は、好ましくは300〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、4eVより大きな(深い)仕事関数をもつものが適しており、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、導電性高分子を用いることができる。
【0107】
本発明において、外部刺激としてUV光を用い、且つ、金型を押し付けてから金型と反対側から光照射する場合は、第1の電極に用いられる材料として、UV光の多くを透過する材料からなる構成がより好ましい。
【0108】
(第2の電極)
本発明の第2の電極は陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、好ましくは透明電極を陽極として用いる。例えば、陰極として用いる場合、好ましくは仕事関数が4eV以下(浅い)の金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、有機層との電気的な接合、及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく(深く)安定な金属である第二の金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム単独等が好適である。
【0109】
第2の電極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0110】
第2の電極として反射率の高い金属材料を用いれば、例えば有機EL素子において、発光した光の一部を反射して外部に取り出すことができ、また、有機太陽電池素子においては、光電変換層を通過した光を反射し、再度、光電変換層に戻すことで光路長を稼ぐ効果が得られ、いずれにおいても外部量子効率の向上が期待できる。
【0111】
更に、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、または炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤ、ナノ構造体であってもよく、ナノ粒子やナノワイヤの高分散性なペーストであれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法や印刷法により形成でき好ましい。
【0112】
本発明においては、第2の電極が導電性微粒子であることが好ましく、更に好ましくは、少なくともナノワイヤ状の導電性微粒子を含むことがより好ましい。
【0113】
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性の電極とすることもできる。
【0114】
(基材)
本発明の有機エレクトロニクス素子に用いられる基材は、発光した光、若しくは起電力を発生させるための光を透過させることが可能な、即ちこれら光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。本発明で用いることができる基材の例としては、ガラス基材や樹脂基材等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
【0115】
本発明で透明基材として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0116】
本発明に用いられる透明基材には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
【0117】
また、酸素及び水蒸気の透過を抑制する目的で、透明材にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透明導電層を製膜する側、または反対側にハードコート層が予め形成されていてもよい。
【0118】
(封止)
作製した有機光電変換素子が大気中の酸素、水分等で劣化しないように、有機エレクトロルミネッセンス素子や有機太陽電池素子では、公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、薄膜のアルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機エレクトロニクス素子とを接着剤やUV硬化・熱硬化樹脂等で封止接着し貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)または有機膜(パリレン等)を真空下や大気下でスパッタ法やCVD法などで堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
【0119】
更に本発明においては、素子寿命向上の観点から、基材を含む素子全体を2枚のバリア付き基材でラミネート封止した構成でもよく、好ましくは、水分ゲッター等を同封した構成であることが本発明においてより好ましい。
【実施例】
【0120】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0121】
(有機太陽電池素子SC−101の作製)
(第1の電極の形成)
バリア層付きPENフィルム基材上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングとを用いて2mm幅にパターニングし透明電極を形成した。パターン形成した透明電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0122】
(正孔輸送層の形成)
この透明基材上に、導電性高分子であるClevious P4083(スタルク社製)を膜厚が30nmになるように塗布した後、超純水を浸み込ませた拭き取り具で取り出し電極部を拭き取り除去し、続けて150℃で15分間乾燥させ正孔輸送層を製膜した。
【0123】
これ以降は、基材をグローブボックス中に持ち込み、低水分濃度、低酸素濃度が管理された窒素雰囲気下で作業した。
【0124】
以後、実施例では、基材上に第1の電極及び正孔輸送層が積層されたものを基板と呼ぶ。
【0125】
(発電層の形成)
まず、窒素雰囲気下で上記基板を120℃で15分間加熱処理した。次に、p型半導体材料前駆体の例示化合物として示したp−1と、n型半導体材料前駆体の例示化合物として示したn−1とを1:0.8の質量比で混合し、3.0質量%となるようクロロベンゼンに溶解した液を調製し、フィルタでろ過しながら乾燥したときの膜厚が150nmになるように塗布を行い、続けて150℃で10分間加熱処理を行った。上記基板の取り出し電極部を、アセトンを浸み込ませた拭き取り部材で除去クリーニングし、続けて、170Wの高圧水銀ランプを用い、120℃で加熱しながら、積算エネルギーが200mJ/cmになるまで間欠露光し、p型半導体材料前躯体およびn型半導体材料前駆体を架橋反応させ、発電層を形成した。
【0126】
次に、上記一連の有機層を製膜した試料を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、10−4Pa以下まで真空蒸着装置内を減圧した後、上記パターニングしたITOに対して直行する形に配した2mm幅のシャドウマスクを通して、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、電子注入層を形成させた。
【0127】
(第2の電極の形成)
更に続けて、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで電極層を形成し、受光部が2×2mmサイズの発電エリアとした。得られた素子を窒素雰囲気グローブボックスに移動し、バリア付きPENフィルムと熱硬化樹脂を用いて封止を行い、有機太陽電池素子SC−101を作製した。
【0128】
(有機太陽電池素子SC−102の作製)
SC−101の作製と同様にして、発電層まで形成した試料を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、10−4Pa以下まで真空蒸着装置内を減圧した後、上記パターニングしたITOに対して直行する形に配した2mm幅のシャドウマスクを通し、蒸着速度0.1nm/秒でCuメタルを20nm積層し、更に続けて、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで電極層を形成した以外は、上述したSC−101の作製と同様にして、受光部が2×2mmサイズの有機太陽電池素子SC−102を得た。
【0129】
(有機太陽電池素子SC−103の作製)
SC−101の作製と同様にして、正孔輸送層まで形成した試料を準備し、この基材をグローブボックス中に持ち込み、低水分濃度、低酸素濃度が管理された窒素雰囲気下で以下続けて作業した。
【0130】
(発電層の形成)
まず、窒素雰囲気下で上記基板を120℃で15分間加熱処理した。次に、p型半導体材料前駆体の例示化合物として示したp−1と、n型半導体材料前駆体の例示化合物として示したn−1とを1:0.8の質量比で混合し、3.0質量%となるようクロロベンゼンに溶解した液を調製し、フィルタでろ過しながら乾燥したときの膜厚が150nmになるように塗布を行い、続けて150℃で10分間加熱処理を行った。上記基板の取り出し電極部を、アセトンを浸み込ませた拭き取り部材で除去クリーニングし、続けて、下記により作製した金型1を140℃で加熱しながら2.5MPaの圧力で型押しした。更に、型押しをしたまま、透明基材側から170Wの高圧水銀ランプを用い、120℃で加熱しながら、積算エネルギーが800mJ/cmになるまで間欠露光し、p型半導体材料前躯体およびn型半導体材料前駆体を架橋反応させた。
【0131】
続けて、室温まで冷却される前に、基板ごと金型から剥離して、p型半導体材料とn型半導体材料が混合された発電層上に、微細な凹凸構造を形成させた。
【0132】
上記作製した凹凸構造は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、若干金型側に有機層の材料が付着し、また、有機層側のドット形状の乱れが部分的に確認されたが、ドットサイズ自体はほぼ金型通りの形状に離型され、ドット状の溝幅が40nm(金型の凸部に相当)、ドット間ピッチは約110nm、ドット状溝の平均深さが約80nmで、5μm×5μmの領域でAFMにより見積もったRpvは約130nmであった。
【0133】
上述した微細な凹凸構造を形成した以外は、前記SC−101の作製と同様にして有機太陽電池素子SC−103を作製した。
【0134】
(金型1の作製)
デポジッション/エッチング交互プロセスによりシリコン基体上に下記の寸法のドット状周期形状を形成した。ドット間ピッチ110nm、凹部の幅70nm、凸部の幅40nm、高さ200nmの凹凸構造を形成できた。
【0135】
上記のプロセス条件は次のように設定した。
【0136】
装置:株式会社アルバック 型式CE300I 装置名ICPエッチング装置
ガス(1)(デポジッションガス):SF/O
デポジッションガス圧:1.33Pa
ガス(2)(エッチングガス):C
エッチングガス圧:0.3Pa
デポジッション時プラズマ励起用高周波出力:300W
エッチング時プラズマ励起用高周波出力:150W
バイアス出力:3W。
【0137】
(有機太陽電池素子SC−104の作製)
SC−102の作製において、有機層の上に微細な凹凸構造を形成した後、試料を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、10−4Pa以下まで真空蒸着装置内を減圧した後、上記パターニングしたITOに対して直行する形に配した2mm幅のシャドウマスクを通し、蒸着速度0.1nm/秒でCuメタルを20nm積層し、更に続けて、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで電極層を形成した以外は、上述したSC−102の作製と同様にして、受光部が2×2mmサイズの有機太陽電池素子SC−104を得た。
【0138】
(有機太陽電池素子SC−105の作製)
SC−103の作製において、有機層の上に微細な凹凸構造を以下に示す方法により作製した以外はSC−103の作製と同様にしてSC−105を得た。
【0139】
(発電層の形成)
まず、窒素雰囲気下で上記基板を120℃で15分間加熱処理した。次に、p型半導体材料前駆体の例示化合物として示したp−1と、n型半導体材料前駆体の例示化合物として示したn−1とを1:0.8の質量比で混合し、3.0質量%となるようクロロベンゼンに溶解した液を調製し、フィルタでろ過しながら乾燥したときの膜厚が150nmになるように塗布を行い、続けて150℃で10分間加熱処理を行った。
【0140】
上記基板の取り出し電極部を、アセトンを浸み込ませた拭き取り部材で除去クリーニングし、続けて、前述の金型1上に、含フッ素化合物の化合物1をHFE−7200(3M社製)で希釈した溶液を塗布し、テトラフルオロプロピルアルコール(TFPO)で余分な含フッ素化合物を洗浄除去し、続けて、上述した有機層に対し、140℃で加熱しながら1.25MPaの圧力で型押しした。
【0141】
更に、型押しをしたまま、透明基材側から170Wの高圧水銀ランプを用い、120℃で加熱しながら、積算エネルギーが800mJ/cmになるまで間欠露光し、p型半導体材料前躯体およびn型半導体材料前駆体を架橋反応させた。
【0142】
続けて、室温まで冷却される前に、基板ごと金型から剥離して、p型半導体材料とn型半導体材料が混合された発電層上に、微細な凹凸構造を形成させた。
【0143】
上記作製した凹凸構造は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、金型側に有機層の材料が付着することなく、乱れのない周期的なドット形状であり、ドットサイズ自体はほぼ金型通りの形状に離型され、ドット状の溝幅が40nm(金型の凸部に相当)、ドット間ピッチは約110nm、ドット状溝の平均深さが約50nmで、5μm×5μmの領域でAFMにより見積もったRpvは約70nmであった。
【0144】
剥離後の有機層表面を、X線光電子分光法(XPS法)により解析したところ、含フッ素化合物に起因するフッ素原子の存在が確認できた。
【0145】
(第2の電極の形成)
更に続けて、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第2の電極層を形成した以外は、SC−101の作製と同様にしてSC−105を作製した。
【0146】
(有機太陽電池素子SC−106の作製)
SC−105の作製において、含フッ素化合物の化合物1をオプツールDSX(ダイキン工業社製)に変更した以外はSC−105の作製と同様にしてSC−106を作製した。
【0147】
剥離後の有機層表面を、SC−105と同様にしてX線光電子分光法(XPS法)により解析したところ、含フッ素化合物に起因するフッ素原子の存在が確認できた。
【0148】
(有機太陽電池素子SC−107の作製)
SC−105の作製において、型押し条件を180℃で加熱しながら5MPaの圧力で型押しした以外はSC−105の作製と同様にしてSC−107を作製した。
【0149】
上記作製した凹凸構造は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、金型側に有機層の材料が付着することなく、乱れのない周期的なドット形状であり、ドットサイズ自体はほぼ金型通りの形状に離型され、ドット状の溝幅が40nm(金型の凸部に相当)、ドット間ピッチは約110nm、ドット状溝の平均深さが約100nmで、5μm×5μmの領域でAFMにより見積もったRpvは約160nmであった。
【0150】
剥離後の有機層表面を、X線光電子分光法(XPS法)により解析したところ、含フッ素化合物に起因するフッ素原子の存在が確認できた。
【0151】
上述以外は、SC−105の作製と同様にしてSC−107を作製した。
【0152】
(有機太陽電池素子SC−108の作製)
SC−105の作製において、型押し条件を130℃で加熱しながら0.5MPaの圧力で型押しした以外はSC−105の作製と同様にしてSC−108を作製した。
【0153】
上記作製した凹凸構造は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、金型側に有機層の材料が付着することなく、乱れのない周期的なドット形状であり、ドットサイズ自体はほぼ金型通りの形状に離型され、ドット状の溝幅が40nm(金型の凸部に相当)、ドット間ピッチは約110nm、ドット状溝の平均深さが約30nmで、5μm×5μmの領域でAFMにより見積もったRpvは約40nmであった。
【0154】
剥離後の有機層表面を、X線光電子分光法(XPS法)により解析したところ、含フッ素化合物に起因するフッ素原子の存在が確認できた。
【0155】
上述以外は、SC−105の作製と同様にしてSC−108を作製した。
【0156】
(有機太陽電池素子SC−109の作製)
SC−105の作製において、発電層の上に微細な凹凸構造を形成後、銀ペースト(東洋インキ社製、RA−FL−011)を上記パターニングしたITOに対して直行する形にスクリーン印刷法により2mm幅に印刷し、85℃で30分間乾燥処理を行い、約2μm厚の第2の電極を形成させた。
【0157】
第2の電極を上述した方法に変えた以外は、SC−105の作製と同様にしてSC−109を作製した。
【0158】
(有機太陽電池素子SC−110の作製)
SC−105の作製において、発電層の上に微細な凹凸構造を形成後、後述する方法で調製した銀ナノワイヤ分散液を銀ナノワイヤの目付け量が80mg/mとなるように塗布し、続けて、銀ナノワイヤを散布した上から、銀ペースト(東洋インキ社製、RA−FL−011)を上記パターニングしたITOに対して直行する形にスクリーン印刷法により2mm幅に印刷し、85℃で30分間乾燥処理を行い、約2μm厚の第2の電極を形成させた。
【0159】
銀ナノワイヤは、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、平均直径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別かつ水洗処理した後、エタノール中に再分散して銀ナノワイヤ(AgNW)分散液(銀ナノワイヤ含有量5質量%)を調製した。
【0160】
第2の電極を上述した方法に変えた以外は、SC−105の作製と同様にしてSC−110を作製した。
【0161】
(有機太陽電池素子SC−111の作製)
(第1の電極の形成)
バリア層付きPENフィルム基材上に、亜鉛酸化物(ZnO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/□)をスパッタリング法により製膜した。作製した透明導電膜は、高さ100〜300nm、ピッチ200〜400nmの凹凸構造を有するように形成し、通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングとを用いて2mm幅にパターニングし透明電極を形成した。
【0162】
パターン形成した透明電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、アセトンによる超音波洗浄、IPAによる超音波洗浄をそれぞれ順次行い、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0163】
(正孔輸送層の形成)
この透明基材上に、導電性高分子であるClevious P4083(スタルク社製)を膜厚が600nmになるように塗布した後、超純水を浸み込ませた拭き取り具で取り出し電極部を拭き取り除去し、続けて150℃で60分間乾燥させ正孔輸送層を製膜した。
【0164】
これ以降は、基材をグローブボックス中に持ち込み、低水分濃度、低酸素濃度が管理された窒素雰囲気下で作業した。
【0165】
(発電層の形成)
p型半導体材料としてレジオレギュラーP3HT(ポリ3−ヘキシルチオフェン−2,5−イジル、プレクストロニクス社製Plexcore)、n型半導体材料としてPCBM([6,6]−フェニル−C61ブチリックアシッドメチルエステル、フロンティアカーボン社製E100H)、更にポリフルオレンとを質量比1:1:1で0.1質量%になるよう、クロロホルムに溶解した液を調製し、フィルタでろ過しながら乾燥したときの膜厚が50nmになるよう塗布を行い、続けて150℃で60分間加熱処理を行った。
【0166】
上記基板の取り出し電極部を、トルエンを浸み込ませた拭き取り部材で除去クリーニングし発電層を形成した。
【0167】
(第2の電極の形成)
更に続けて、発電層まで形成した試料を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、10−4Pa以下まで真空蒸着装置内を減圧した後、上記パターニングしたZnOに対して直行する形に配した2mm幅のシャドウマスクを通し、蒸着速度0.1nm/秒でCuメタルを100nm積層し、更に続けて、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを200nm積層することで電極層を形成した以外は、上述したSC−101の作製と同様にして、受光部が2×2mmサイズの有機太陽電池素子SC−111を得た。
【0168】
(有機太陽電池素子SC−112の作製)
SC−105の作製において、p−1に替わり、p型半導体材料としてレジオレギュラーP3HT(ポリ3−ヘキシルチオフェン−2,5−イジル、プレクストロニクス社製Plexcore)を、n−1に替わり、n型半導体材料としてPCBM([6,6]−フェニル−C61ブチリックアシッドメチルエステル、フロンティアカーボン社製E100H)を使用した以外は、SC−105と同様にして、SC−112を作製した。
【0169】
《エネルギー変換効率PCEの評価》
上記作製した有機太陽電池素子に、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、短絡電流密度Jsc(mA/cm)及び開放電圧Voc(V)、曲線因子(フィルファクター)FFを、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、平均値を求めた。またJsc、Voc、FFから式(2)に従ってエネルギー変換効率PCE(%)を求め、結果を表1に示した。
【0170】
式(2)
PCE(%)=Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF
PCEが、4.0%以上が好ましく、3.2%以上なら、実用性がある。3.2%未満では実用性に乏しく、2.8%未満では使用不可能である。
【0171】
《光照射耐久性保持率の評価》
上記作製した素子を、65℃に加熱したまま、100Wハロゲンランプの光に1000時間暴露した。続いて、暴露後の素子について、上述の方法と同様にして短絡電流密度Jscを見積もり、式(3)に従って保持率を求め、表1に示した。
【0172】
光照射耐久性保持率が、95%を越えるものが最も好ましく、85%以上95%以下が好ましく、75%以上85%未満なら、実用性がある。75%未満では実用性に乏しく、50%未満では使用不可能である。
【0173】
式(3)
光照射耐久性保持率(%)=暴露後の短絡電流密度/暴露前の短絡電流密度×100
《熱湿耐久性保持率の評価》
上記作製した素子を、温度65℃、相対湿度85%の環境下に1000時間連続放置した。続いて、環境放置後の素子について、上述の方法と同様にして短絡電流密度Jscを見積もり、式(4)に従って保持率を求め、表1に示した。
【0174】
式(4)
熱湿耐久性保持率(%)=環境放置後の短絡電流密度/環境放置前の短絡電流密度×100
熱湿耐久性保持率が、90%を越えるものが最も好ましく、80%以上90%以下が好ましく、70%以上80%未満なら、実用性がある。70%未満では実用性に乏しく、50%未満では使用不可能である。
【0175】
【表1】

【0176】
表1から明らかなように、本発明によれば、従来の技術による有機太陽電池素子に比べ、エネルギー変換効率に優れるだけでなく、光照射耐久性、熱湿耐久性にも優れた有機太陽電池素子であることがわかる。
【符号の説明】
【0177】
10、20 有機太陽電池素子
11、21 基材
12、22 第1の電極
13、23 有機層
14、24 有機層と第2の電極の界面
15、25 第2の電極
31 基材
32 第1の電極
33 有機層
34 有機層の表面
35 第2の電極層
36 金型
41 複数の溝
42 エッチングマスク
210 シリコン基体
211 真空プラズマチャンバ
212 プラズマ生成用高周波電源
216 加工形状制御用バイアス高周波電源
P 溝のピッチ
H 溝の深さ
W 溝の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の電極と、光透過性の第1の電極との間に、発電層を含む有機層を積層した有機太陽電池素子において、該有機層と該第2の電極との界面が微細な凹凸構造を有し、且つ、該界面近傍に含フッ素化合物を含有することを特徴とする有機太陽電池素子。
【請求項2】
前記微細な凹凸構造が、凹部と凸部の最大工程差Rpvが、50nm〜150nmであることを特徴とする請求項1記載の有機太陽電池素子。
【請求項3】
前記第2の電極が、光散乱反射構造であって、かつ、導電性微粒子からなる多孔質体であることを特徴とする請求項1又は2記載の有機太陽電池素子。
【請求項4】
前記導電性微粒子が、ナノワイヤを含むことを特徴とする請求項3記載の有機太陽電池素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の有機太陽電池素子の製造方法において、第2の電極と、光透過性の第1の電極との間に、発電層を含む有機層を積層した後、含フッ素化合物で被覆された凹凸構造を有する金型を用意し、温度をかけながら前記有機層に型押しし、該有機層の表面に凹凸構造を転写する工程を少なくとも有することを特徴とする有機太陽電池素子の製造方法。
【請求項6】
前記有機層の材料が、UV光照射または熱処理によって架橋反応を示す化合物を少なくとも有し、前記金型を型押ししたまま、UV光照射または熱処理によって前記化合物を架橋させる工程を少なくとも有することを特徴とする請求項5記載の有機太陽電池素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−108722(P2011−108722A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259723(P2009−259723)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】