説明

有機性廃棄物の生物処理における管理システム及び該方法

【課題】有機性廃棄物を生物処理するに際して安定的且つ効率的な処理が可能である有機性廃棄物の生物処理における管理システム及び該方法を提供する。
【解決手段】有機性廃棄物排出者10からの廃棄物種類、量に関する情報を含む廃棄物情報と、有機性廃棄物を生物処理する処理施設11からの処理状況に関する処理情報とをネットワークを介して取得するコントロールセンター12を備えた有機性廃棄物の生物処理における管理システムであって、前記コントロールセンター12が、前記廃棄物情報を廃棄物性状データに変換する手段と、前記処理施設11における現在の処理状況と最大許容範囲を比較し、その差分を前記廃棄物性状データと比較して有機性廃棄物の引取計画を作成する手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物を生物処理するに際し、安定的且つ効率的な運転を行うために搬入物の管理を行うようにした有機性廃棄物の生物処理における管理システム及び該方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機性廃棄物の処理として、生物処理が広く用いられている。生物処理としては、活性汚泥処理、メタン発酵処理、堆肥化処理等が挙げられる。このような有機性廃棄物の処理において、安定した処理機能を維持するためには、有機性廃棄物の搬入量及び性状の管理を行うとともに、搬入物の性状に応じた処理工程の管理が重要となる。
廃棄物の管理システムとして、特許文献1(特開2002−349830号公報)では、広域なエリアから収集される一般都市ごみの量とごみ質性状を予測して、その予測値に基づいてごみ焼却プラントの異常を回避するごみ焼却プラントの運転管理システムが提案されている。このシステムでは、搬入物の性状に応じたごみ焼却プラントの運転を行うことによって、プラントの異常を回避して安定した運転を行うことを目的としている。
【0003】
しかし、有機性廃棄物の処理分野においては有効な管理システムは確立されておらず、また、性状把握に関しても搬入される有機性廃棄物の性状を想定することは難しく、安定した性状となるように搬入物の調整、運転管理を行うシステムは確立されていなかった。従って、搬入量及び性状の安定化を図ることは非常に困難であった。
ここで、生物処理の代表的な方法を以下に示す。
メタン発酵処理は、メタン発酵槽内にてメタン菌の加水分解、発酵作用により有機性廃棄物を分解する処理であり、発酵に必要なメタン菌を維持するために槽内から部分的に汚泥を引き抜き循環させながら処理が行われる(特許文献2等参考)。
活性汚泥処理は、好気性微生物や浮遊物質からなる活性汚泥内で有機性廃棄物を酸化、分解する方法であり、メタン発酵と同様に槽内の活性汚泥を維持するために循環させながら処理が行われる(特許文献3等参考)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−349830号公報
【特許文献2】特開2000−263094号公報
【特許文献3】特開2004−041981号公報
【特許文献4】特開2002−273490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような生物処理において、安定に且つ効率良く運転を行うための管理システムは未だ確立されておらず、また、特許文献1に記載されるような管理システムを生物処理に適用することは困難であった。これは以下の理由による。即ち、特許文献1に記載されるシステムは焼却プラントを対象としているが、焼却プラントでは投入される廃棄物の性状に応じて運転制御を行うことにより炉内状況が速やかに追随するのに対して、生物処理では長時間の滞留時間が必要とされ、さらに槽内の汚泥が循環しているため、操作条件の変更のみでは処理槽の安定化は困難なためである。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、有機性廃棄物を生物処理するに際して安定的且つ効率的な処理が可能である有機性廃棄物の生物処理における管理システム及び該方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、有機性廃棄物排出者からの廃棄物種類、量に関する情報を含む廃棄物情報と、有機性廃棄物を生物処理する処理施設からの処理状況に関する処理情報とをネットワークを介して取得するコントロールセンターを備えた有機性廃棄物の生物処理における管理システムであって、
前記コントロールセンターが、前記廃棄物情報を廃棄物性状データに変換する廃棄物情報変換手段と、前記処理情報のうち、現在の処理状況と処理施設において受入可能な廃棄物の最大許容範囲とを比較し、その差分を前記廃棄物性状データと対比して有機性廃棄物の引取計画を作成する引取計画作成手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明では、有機性廃棄物排出者、処理施設、コントロールセンターの各部門をネットワークでつなぎ、共通のデータベースに基づき有機性廃棄物の搬入を管理する。生物処理においては運転制御のみでは処理の安定化、効率化が困難であったが、排出者から得られる廃棄物情報と、処理設備から得られる現在の処理情報とに基づいて安定・効率運転可能な有機性廃棄物を搬入する引取計画を作成することによって、処理槽内への有機性廃棄物の搬入を管理し、処理の入口側負荷を制御することにより安定的且つ効率的な生物処理が可能となる。
【0008】
また、前記引取計画作成手段では、前記処理施設から得られる現在の処理状況から一定時間経過後の処理状況を推定し、前記引取計画に時間的制限を加えるようにしたことを特徴とする。
このように、一定時間経過後の処理状況を得ることによって、処理施設が貯留槽に既に受け入れた廃棄物、若しくは回収し始めている廃棄物の状況も加味した上での引取計画を作成できる。
【0009】
また、前記有機性廃棄物の種類に応じた廃棄物コードが予め付与されており、前記廃棄物情報変換手段にて、前記廃棄物コードに基づいて廃棄物性状データへの変換を行うようにしたことを特徴とする。
さらに、前記有機性廃棄物排出者ごとに排出者コードが予め付与されており、該排出者コードに基づいて前記廃棄物コードを得ることを特徴とする。
本発明のごとく、廃棄物コードを用いることにより、簡単に性状データを得ることができるとともに、コントロールセンターでの処理量が大幅に減少し、制御装置及びデータベースへの負荷が軽くなり、また入力側の手間も簡略化することが可能である。排出者コードも同様の効果が得られる。
【0010】
また、前記生物処理がメタン発酵処理であって、前記廃棄物性状データが少なくとも窒素濃度を含み、前記処理施設に備えられたメタン発酵槽内の窒素濃度が所定濃度以下となるように前記引取計画を作成することを特徴とする。
このように、処理槽内の窒素濃度を搬入側にて制御することによって、メタン発酵槽内でアンモニア阻害が生じることがなく、メタン発酵を安定的且つ効率的に行うことが可能である。
【0011】
また、前記生物処理がメタン発酵処理であって、前記廃棄物性状データが少なくとも炭素量を含み、前記処理施設に備えられたメタン発酵槽内が有機酸蓄積を起こさない炭素量となるように前記引取計画を作成することを特徴とする。
前記廃棄物性状を示す炭素量は固形物量又はCOD量のいずれか、もしくはこれらの組合せであってもよい。
このように、処理槽内に有機酸が蓄積しないように、処理槽の炭素量を搬入側にて制御することによってメタン発酵槽内に酸敗現象が生じることがなく、メタン発酵を安定的且つ効率的に行うことが可能である。
また、前記生物処理がメタン発酵処理であって、メタン発酵槽の状態を示すメタン活性測定結果と組み合せて前記引取計画の作成することを特徴とする。(メタン活性測定方法は特許文献4参照)
【0012】
さらに、前記生物処理が活性汚泥処理であって、前記廃棄物性状データが少なくとも炭素量を含み、前記処理施設に備えられ曝気槽内のC/Nの割合が所定範囲内となるように前記引取計画を作成することを特徴とする。
活性汚泥処理では、処理槽内のC/N(炭素量/窒素量)が2〜3程度の適正な値とすると窒素除去が効率よく行われる。一般に活性汚泥処理では炭素量が不足する場合が多いため、処理槽内に炭素量が十分に存在するように引取計画を作成することによって、活性汚泥処理を安定的に且つ効率的に行うことが可能となる。
前記廃棄物性状を示す炭素量は、炭素量と相関があるBOD、COD、TOC、VTS、若しくはこれらの組合せを指標として良い。
【0013】
また、コントロールセンターにて、有機性廃棄物排出者からの廃棄物種類、量に関する情報を含む廃棄物情報と、有機性廃棄物を生物処理する処理施設からの処理状況に関する処理情報とをネットワークを介して取得するようにした有機性廃棄物の生物処理における管理方法であって、
前記廃棄物情報を廃棄物性状データに変換した後、前記処理情報のうち、現在の処理状況と処理施設において受入可能な廃棄物の最大許容範囲とを比較し、その差分を前記廃棄物性状データと対比して有機性廃棄物の引取計画を作成することを特徴とする。
【0014】
また、前記コントロールセンターにて前記引取計画に基づいて有機性廃棄物引取りの優先順位若しくは引取制限を前記有機性廃棄物排出者に対して通知することを特徴とする。
また、前記廃棄物情報の種類に応じた廃棄物コードが予め付与され、該廃棄物コードに基づいて廃棄物性状データに変換するようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、前記生物処理がメタン発酵処理であって、前記前記廃棄物性状データが少なくとも窒素濃度を含み、前記処理施設に備えられたメタン発酵槽内の窒素濃度が所定濃度以下となるように前記引取計画を作成することを特徴とする。
さらに、前記生物処理がメタン発酵処理であって、前記廃棄物性状データが少なくとも炭素量を含み、前記処理施設に備えられたメタン発酵槽内が有機酸蓄積を起こさない炭素量となるように前記引取計画を作成することを特徴とする。
さらにまた、前記生物処理が活性汚泥処理であって、前記廃棄物性状データが少なくとも炭素量を含み、前記処理施設に備えられた曝気槽内のC/Nの割合が所定範囲内となるように前記引取計画を作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のごとく本発明によれば、本発明では、有機性廃棄物排出者、処理施設、コントロールセンターの各部門をネットワークでつなぎ、共通のデータベースに基づき有機性廃棄物の搬入を管理することによって、安定的且つ効率的な生物処理が可能となる。また、廃棄物コード若しくは排出者コードを用いることにより、簡単に性状データを得ることができるとともに、コントロールセンターでの処理量が大幅に減少し、負荷が軽くなり、また入力側の手間も簡略化できる。さらに、各生物処理に応じて、引取計画の作成要素となる指標を予め決めておき、これに基づき引取計画を作成することによって、夫々の生物処理に適した引取計画を作成することが可能となる。このように、共通のデータベースに基づきリアルタイムで把握するとともに、処理工程別の運転管理、搬入量管理等の各業務にフィードバックする管理システムを構築し、安定的且つ効率的な運転管理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施例に係るネットワーク構成を示す図、図2は本発明の実施例に係る有機性廃棄物の引取計画作成フローを示す図、図3は排出者からコントロールセンターへの提供データを示す図、図4は廃棄物コード表を示す図、図5は廃棄物性状データ表を示す図、図6は一般的なメタン発酵処理のフローを示す図、図7はメタン発酵処理の場合の引取計画作成方法について説明する図、図8はメタン発酵処理の場合の他の引取計画作成方法について説明する図、図9は一般的な活性汚泥処理のフローを示す図、図10は活性汚泥処理の場合の引取計画作成方法について説明する図である。
本実施例において適用される生物処理は、微生物の作用により有機性廃棄物を分解処理する処理であれば何れでもよく、例えば、メタン発酵処理、活性汚泥処理、堆肥化処理、生物学的脱窒素処理等が挙げられる。
【実施例】
【0018】
図1を参照して本発明の実施例に係るネットワーク構成につき説明する。
本システムは、有機性廃棄物を排出する有機性廃棄物排出者10と、有機性廃棄物を生物処理する処理施設11A、11Bと、有機性廃棄物の排出、搬入等を管理するコントロールセンター12と、資材等を供給するサプライヤ13とがネットワーク20を介して接続され、これらの各部門がネットワーク20を介して共通のデータベースに基づき情報の共有化を図り、効率的な運転管理を行うための処理工程別の運転管理、搬入量管理を自動で行うとともに、稼動実績等からフィードバックする構成となっている。さらに好ましくは、稼動実績等から搬入量管理、機器管理、資材管理、営業業務、経理業務等にもフィードバックする。
【0019】
本システムでは、共通のデータベースにより管理が行われるが、このデータベースはコントロールセンター12に設けられることが好ましく、さらに該コントロールセンター12には各種計算を行うCPU(中央処理装置)が設けられている。
共通のデータベースに蓄積されるデータとしては、以下のものが挙げられる。
処理施設における生物処理装置の運転データ、有機性廃棄物の搬入量データ、処理施設に備えられた各種装置の機器管理データ、資材管理データ等である。運転データとしては、水質等処理工程別性状(自動測定項目、分析項目)、薬品等使用量等があり、搬入量データとしては、搬入量、搬入性状、今後の搬入計画等がある。このとき、搬入性状は搬入物の種類に応じコード表を作成し、性状を想定することが好ましい。また、実際に搬入される性状を分析し、フィードバックをかけるようにしてもよい。また、機器管理データとしては、機器データ、定期点検記録、保守整備記録、取扱説明書等があり、資材管理データとしては、薬品・予備品・消耗品等の使用量及び在庫等がある。
【0020】
有機性廃棄物排出者10は、生物処理にて処理可能な有機性廃棄物を排出する一般家庭、事業者、自治体等であり、データベースに基づき、処理すべき有機性廃棄物の量、種類、希望引取日時等をネットワーク20を介してオンラインで引取依頼する。また、自動化されたマニフェストシステムに基づきその処理状況をリアルタイムで追跡可能とすることが好ましく、有機性廃棄物の処理が滞りなく行われたことをマニフェストを受領することにより確認する。また、処理料金は月ごと等定期的に請求に基づき支払いを実施する。尚、本実施例において処理される有機性廃棄物は特に限定されないが、厨芥ごみ、食品加工残渣、し尿、浄化槽汚泥、家畜糞尿等が挙げられる。
【0021】
処理施設11A、11Bは、各種生物処理設備を有する施設であり、運転管理データの入力の他に、機器管理データ、資材調達、マニフェスト発行を行う。処理施設では、共通のデータベースに基づき、自動で各処理工程の運転管理を行うとともに、搬入量、搬入物や処理工程別の水質等の性状(自動計測項目、分析項目)等の日報作成、搬入量実績に基づき今後の搬入量調整してクライアントへの取引日程の調整、クライアントからの連絡による搬入物の種類から性状を予測し、今後の搬入調整及び各処理工程の運転調整、バーコードやICタグ等の利用により廃棄物管理を行うとともに、クライアントに対しマニフェスト発行や処理料金の請求を行う。また、バイオガスや堆肥等の生産物がある場合には、生産物の管理も同時に行う。また、処理施設は薬品残量や機器運転時間、稼動状況に応じ自動的にEDI等によりサプライヤ13に対して薬品調達や機器定期点検及び整備補修の指示をする。
【0022】
サプライヤ13は、処理施設11A、11Bに対して資材供給等を行う事業者であり、資材供給の他に機器管理等を行う。サプライヤ13では共通のデータベースを基に、EDI等により要求のあった薬品、予備品、消耗品の資材供給、及び定期点検、整備補修の実施を行う。排出者10、処理施設11A、11B、サプライヤ13は何れも本システムに少なくとも一以上存在する。
【0023】
コントロールセンター12では、排出者10、処理施設11A、11B、サプライヤ13にて入力されるデータを逐次収集し、これらのデータを基に廃棄物の搬入管理を始めとした各種管理を行う。コントロールセンター10では、データベースに基づき、排出者10、サプライヤ13の管理を行うとともに、処理施設11A、11Bに対して搬入量や搬入物の種類、処理工程別運転調整等に関し技術サポートを行う、会計、財務諸表の作成までを自動で行い、経理サポートを行う、現状の処理量から引取可能量を検討し、クライアントに対する営業を行う、サプライヤに対する調達コストの調整や現場に対する発注ノウハウの提供、バイオガスや堆肥等の生産物がある場合には、生産物の流通販売システム管理、等を行う。
【0024】
本システムでは、有機性廃棄物の生物処理分野において、排出者10が有機性廃棄物の引取依頼をする場合には、量及び種類をオンラインで入力可能とする。このとき、排出者10ごと、または有機性廃棄物の種類ごとにコードを割り付けておき、これを入力するようにしてもよい。
排出者10が入力するデータの一例を図3に示す。図3は排出者コード表であり、排出者10は、予め登録されている自分の排出者コードと、入力年月日、廃棄物コード、排出量(引取依頼量)、排出形態(袋、バケツ、コンテナ等)、排出(引取)希望年月日等の詳細情報を入力する。廃棄物が分別されている場合には、その廃棄物の種類ごとに入力する。
【0025】
次に、このデータベースを基にコントロールセンター12にて廃棄物の引取計画を作成する。廃棄物引取計画の作成フローを図2に示す。
図2に示すように、排出者10からの引取依頼(S1)があった有機性廃棄物の量及び種類、或いは廃棄物コードは、コントロールセンター12にてデータベース化されるとともに、廃棄物コードが入力されていない場合には、有機性廃棄物の種類ごとにコードを割り付ける。そして、この廃棄物コード及び廃棄物排出量を基に廃棄物性状を推定する(S2)。これは、図4に示す廃棄物コード表及び図5に示す廃棄物性状データ表に基づき、廃棄物性状を換算して得る。廃棄物性状は、種類ごとの固形物量、有機物量、全窒素、全リン等の性状についてデータベース化されていると好ましい。尚、性状に関するデータベースは、処理施設11A、11Bから送信される処理槽内の実際の性状をふまえフィードバックするとよい。有機性廃棄物のデータベース化にあたっては、クライアントがバーコードやICタグ等により商品在庫管理を行っているスーパーのような場合には、それらバーコード等のデータベースと共有化を図ることにより、作業負担を増加させることなく、より正確な廃棄物の管理が可能となる。
【0026】
図4に廃棄物コード表の一例を示す。廃棄物コード表は、廃棄物コードを10 000 000のような8桁の数字とし、大分類、中分類、小分類から構成し、大分類から小分類にかけて詳細な廃棄物種類に分けられるようになっている。例えば、上位2桁にて大分類を示すようにし、10は農作物、11は畜産、・・・を割り当て、中位3桁にて中分類を示すようにし、001は穀類、002はいも・豆類、・・・を割り当て、下位3桁にて小分類を示すようにし、001は米、002は小麦、・・・を割り当てる。
図5には性状データ表の一例を示す。性状データ表は、廃棄物コードに基づいた各組成の配分、量がデータベース化されており、図4に示した廃棄物コードが入力されると、このコードに対応した性状が速やかに得られるものである。
【0027】
このようにして得られた廃棄物情報はコントロールセンター12に蓄積され、各排出者10からの排出量を集計する(S3)。
次いで、最近の搬入物性状データと生物処理槽内の性状分析データに基づき、所定の処理施設11Aにおける搬入可能な許容最大範囲の廃棄物の量、種類を計算する(S4)。最近の搬入物性状データは、例えば生物処理前の貯留槽に一時的に貯留された廃棄物の性状データ若しくは既に引取りを開始している廃棄物の性状データである。また、生物処理槽内の性状分析データは、処理槽内の性状を自動計測若しくは分析結果を入力することにより得られる。さらに、許容最大範囲の廃棄物の量、種類と現状の処理状況とを比較し、その差分を引取依頼のあった廃棄物性状データと対比して、廃棄物引取の優先順位、受入許可等の引取計画を作成し(S5)、排出者10に対して引取の決定通知を送信する(S6)。これに応じて処理施設11Aは引取を実施する(S7)。本システムでは、複数の排出者10から予め希望の引取依頼を受信し、夫々の引取依頼に沿った引取計画を作成し、各排出者10に通知する。このとき、処理施設11Aの許容範囲を超える量若しくは種類の引取依頼については、他の処理施設11Bの引取計画に加え、該処理施設11Bで処理を行うようにする。このように、複数の処理施設11A、11Bを連携させることによって、廃棄物を円滑に処理可能な廃棄物処理システムを構築できる。
【0028】
また、本システムでは、実績搬入量や各処理工程の運転調整記録や性状データ(自動測定値や分析値)等の施設の運転管理データもデータベース化し、リアルタイムで施設の稼動状況が把握できるものとしておく。排出者10から引取依頼があった場合には、処理対象となる有機性廃棄物の量及び種類から処理工程への負荷を想定するとともに、これまでの実績搬入量や他排出者からの引取り依頼内容をふまえ、搬入性状を安定化させ、投入負荷を一定とするように、各クライアントからの引取りの調整を自動で行う。また、搬入される性状及び各処理工程の運転実績から、各処理工程の運転調整にも自動でフィードバックする制御を行う。
【0029】
このように本実施例では、排出者10、処理施設11A、11B、コントロールセンター12の各部門をインターネット等のネットワーク20でつなぎ、共通のデータベースに基づき搬入量及び施設の稼動状況をリアルタイムで把握し投入負荷安定化にむけた搬入量の調整を自動で行うとともに、処理工程別の運転管理、搬入量管理にフィードバックする管理システムを構築することにより、安定的かつ効率的な運転管理が可能となる。
さらには、処理工程別の運転管理、搬入量管理だけでなく、機器管理、資材管理、営業、経理等の各業務にフィードバックする管理システムを構築することにより、各部門(各事業主体)における事務業務の省力化、技術サポートによる運転管理の効率化を実現することができ、人件費等の固定費や維持管理費の低減を図ることが可能となる。
【0030】
次に、各生物処理における具体的な引取計画作成の例を示す。尚、本システムでは、以下に示す処理に限らず、各種生物処理に対して適用可能であることは勿論である。
まず、有機性廃棄物をメタン発酵処理する場合について説明する。
一般的なメタン発酵処理は、図6に示されるように、有機性廃棄物を受入貯留槽50にて一時的に貯留した後、必要に応じて破砕、分別等の処理が行われ、所定量ずつ前処理槽51に導入される。前処理槽51では、廃棄物の可溶化処理、酸生成反応等が行われる。前処理後の廃棄物はメタン発酵槽52に導入され、メタン発酵槽52ではメタン生成反応が行われる。メタン発酵槽52から排出された消化汚泥は後段の水処理設備に送られ、消化ガスはガス精製設備に送られる。また、メタン発酵槽52から消化汚泥を一部引き抜き、メタン発酵槽52内若しくは前処理槽51へ返送して循環させ、槽内のメタン菌を維持している。
【0031】
メタン発酵処理では、発酵槽内の窒素濃度が3,000mg/Lを超えると、メタン発酵に対してアンモニア阻害が発生し、メタン発酵が円滑に進まなくなるという問題がある。従って、本システムでは、引取計画を作成するに際して窒素濃度を指標としている。即ち、現状のメタン発酵槽内の窒素濃度を検出する手段を備え、該検出した窒素濃度と、最近の投入窒素量とに基づき、槽内にてアンモニア阻害を起こさない窒素量に制限するような引取計画を作成する(図7参照)。このとき、窒素濃度(N)とともに炭素量(C)、リン量(P)等も把握しておくことが好ましい。最近の投入窒素量とは、受入貯留槽50に貯留されている廃棄物若しくは引取計画にて引取が決定した廃棄物の窒素量であり、過去の引取計画若しくは実際に収集した廃棄物情報より求めることができる。
現状のメタン発酵槽内窒素濃度と、最近の投入窒素量に基づき作成された引取計画により、発酵槽内の窒素濃度が3,000mg/Lを超えないように廃棄物を搬入することが可能となり、処理施設の運転が安定化、効率化する。
【0032】
また、メタン発酵処理では、発酵槽内にて有機酸蓄積が起こるとメタン発酵に対して酸敗現象が起こり、メタン発酵が進まなくなるという問題も有している。通常、メタン発酵の処理過程は、有機物の加水分解・酸発酵からなる酸生成過程と、メタン生成過程からなるが、酸生成過程が過剰に進んでギ酸、酢酸、プロピオン酸等の中間生成物である有機酸が蓄積すると酸敗現象が生じ、メタン発酵槽の処理能力が低下してしまう。有機酸の蓄積は、主に処理負荷が急激に増大した場合や炭素量、固形物量、CODが過多の場合に起こる。
従って、本システムでは、引取計画の作成に際して有機酸濃度を指標としており、現状のメタン発酵槽内の有機酸濃度と、最近の投入量に基づき、今後の引取計画を算出する(図8参照)。これにより、発酵槽内の有機酸蓄積を防止し、酸敗現象を生じさせることなく処理施設の運転の安定化、効率化が図れる。
尚、メタン発酵処理に際しては、図7に示す窒素濃度を指標とした場合と、図8に示す有機酸濃度を指標とした場合を組み合わせて引取計画を作成するようにしてもよく、さらにはメタン活性測定結果と組み合せて引取計画を作成するようにしてもよい。
【0033】
次に、有機性廃棄物を活性汚泥処理する場合において説明する。
一般的な活性汚泥処理は、図9に示されるように、有機性廃棄物を受入貯留槽60にて一時的に貯留した後、必要に応じて破砕、分別等の処理を行われ、所定量ずつ曝気槽61に導入される。曝気槽61では底部より曝気をしながら槽内を好気性に維持し、好気性微生物の作用により有機性廃棄物を酸化、分解する。曝気槽61からの処理液は沈殿槽62に導入され、ここで固液分離される。また、沈殿槽62の活性汚泥の一部は曝気槽61に返送して循環させ、槽内の活性汚泥濃度を維持している。
【0034】
活性汚泥処理では、曝気槽内のC/Nの割合が2〜3の範囲を下回ると、有機性廃棄物の窒素所除去機能が低下するという問題がある。
従って、本システムでは、引取計画を作成するに際してC/Nを指標としている。即ち、現状の曝気槽内のC/Nを検出する手段を備え、該検出した槽内C/Nと、最近の投入炭素量とに基づき今後の投入炭素量を決定する引取計画を作成する。これにより、活性汚泥窒素除去機能維持のための炭素量を確保することができ、槽内C/Nを適正に維持し、活性汚泥処理の安定化、効率化を図ることが可能となる。
前記廃棄物性状を示す炭素量は、炭素量と相関があるBOD、COD、TOC、VTS、若しくはこれらの組合せを指標としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、生物処理に適した有機性廃棄物の引取計画を作成し、この引取計画に即した搬入を行うことによって生物処理を安定的、効率的に行うことができるシステムであるため、メタン発酵処理、活性汚泥処理、堆肥化処理等の各種生物処理に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例に係るネットワーク構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る有機性廃棄物の引取計画作成フローを示す図である。
【図3】排出者からコントロールセンターへの提供データを示す図である。
【図4】廃棄物コード表を示す図である。
【図5】廃棄物性状データ表を示す図である。
【図6】一般的なメタン発酵処理のフローを示す図である。
【図7】メタン発酵処理の場合の引取計画作成方法について説明する図である。
【図8】メタン発酵処理の場合の他の引取計画作成方法について説明する図である。
【図9】一般的な活性汚泥処理のフローを示す図である。
【図10】活性汚泥処理の場合の引取計画作成方法について説明する図である。
【符号の説明】
【0037】
10 有機性廃棄物排出者
11 処理施設
12 コントロールセンター
13 サプライヤ
20 ネットワーク
50 受入貯留槽
51 前処理槽
52 メタン発酵槽
60 受入貯留槽
61 曝気槽
62 沈殿槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物排出者からの廃棄物種類、量に関する情報を含む廃棄物情報と、有機性廃棄物を生物処理する処理施設からの処理状況に関する処理情報とをネットワークを介して取得するコントロールセンターを備えた有機性廃棄物の生物処理における管理システムであって、
前記コントロールセンターが、前記廃棄物情報を廃棄物性状データに変換する廃棄物情報変換手段と、前記処理情報のうち、現在の処理状況と処理施設において受入可能な廃棄物の最大許容範囲とを比較し、その差分を前記廃棄物性状データと対比して有機性廃棄物の引取計画を作成する引取計画作成手段と、を備えたことを特徴とする有機性廃棄物の生物処理における管理システム。
【請求項2】
前記引取計画作成手段では、前記処理施設から得られる現在の処理状況から一定時間経過後の処理状況を推定し、前記引取計画に時間的制限を加えるようにしたことを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の生物処理における管理システム。
【請求項3】
前記有機性廃棄物の種類に応じた廃棄物コードが予め付与されており、前記廃棄物情報変換手段にて、前記廃棄物コードに基づいて廃棄物性状データへの変換を行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の生物処理における管理システム。
【請求項4】
前記有機性廃棄物排出者ごとに排出者コードが予め付与されており、該排出者コードに基づいて前記廃棄物コードを得ることを特徴とする請求項3記載の有機性廃棄物の生物処理における管理システム。
【請求項5】
前記生物処理がメタン発酵処理であって、前記廃棄物性状データが少なくとも窒素濃度を含み、前記処理施設に備えられたメタン発酵槽内の窒素濃度が所定濃度以下となるように前記引取計画を作成することを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の生物処理における管理システム。
【請求項6】
前記生物処理がメタン発酵処理であって、前記廃棄物性状データが少なくとも炭素量を含み、前記処理施設に備えられたメタン発酵槽内が有機酸蓄積を起こさない炭素量となるように前記引取計画を作成することを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の生物処理における管理システム。
【請求項7】
前記生物処理がメタン発酵処理であって、メタン発酵槽の処理状況を示すメタン活性測定結果と組み合わせて前記引取計画を作成することを特徴とする請求項5若しくは6に記載の有機性廃棄物の生物処理における管理システム。
【請求項8】
前記生物処理が活性汚泥処理であって、前記廃棄物性状データが少なくとも炭素量を含み、前記処理施設に備えられ曝気槽内のC/Nの割合が所定範囲内となるように前記引取計画を作成することを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の生物処理における管理システム。
【請求項9】
コントロールセンターにて、有機性廃棄物排出者からの廃棄物種類、量に関する情報を含む廃棄物情報と、有機性廃棄物を生物処理する処理施設からの処理状況に関する処理情報とをネットワークを介して取得するようにした有機性廃棄物の生物処理における管理方法であって、
前記廃棄物情報を廃棄物性状データに変換した後、前記処理情報のうち、現在の処理状況と処理施設において受入可能な廃棄物の最大許容範囲とを比較し、その差分を前記廃棄物性状データと対比して有機性廃棄物の引取計画を作成することを特徴とする有機性廃棄物の生物処理における管理方法。
【請求項10】
前記コントロールセンターにて前記引取計画に基づいて有機性廃棄物引取りの優先順位若しくは引取制限を前記有機性廃棄物排出者に対して通知することを特徴とする請求項9記載の有機性廃棄物の生物処理における管理方法。
【請求項11】
前記廃棄物情報の種類に応じた廃棄物コードが予め付与され、該廃棄物コードに基づいて廃棄物性状データに変換するようにしたことを特徴とする請求項9記載の有機性廃棄物の生物処理における管理方法。
【請求項12】
前記生物処理がメタン発酵処理であって、前記前記廃棄物性状データが少なくとも窒素濃度を含み、前記処理施設に備えられたメタン発酵槽内の窒素濃度が所定濃度以下となるように前記引取計画を作成することを特徴とする請求項9記載の有機性廃棄物の生物処理における管理方法。
【請求項13】
前記生物処理がメタン発酵処理であって、前記廃棄物性状データが少なくとも炭素量を含み、前記処理施設に備えられたメタン発酵槽内が有機酸蓄積を起こさない炭素量となるように前記引取計画を作成することを特徴とする請求項9記載の有機性廃棄物の生物処理における管理方法。
【請求項14】
前記生物処理がメタン発酵処理であって、メタン発酵槽の処理状況を示すメタン活性測定結果と組み合わせて前記引取計画を作成することを特徴とする請求項12若しくは13に記載の有機性廃棄物の生物処理における管理方法。
【請求項15】
前記生物処理が活性汚泥処理であって、前記廃棄物性状データが少なくとも炭素量を含み、前記処理施設に備えられた曝気槽内のC/Nの割合が所定範囲内となるように前記引取計画を作成することを特徴とする請求項9記載の有機性廃棄物の生物処理における管理方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−98369(P2007−98369A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295695(P2005−295695)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】