説明

有機感光体、画像形成装置および画像形成用カートリッジ

【課題】画像支持体として酸性紙を用いる場合において、紙粉ボケや画像ノイズなどの画像不良の発生を抑制することのできる有機感光体、画像形成装置および画像形成用カートリッジの提供。
【解決手段】有機感光体は、導電性支持体上に、少なくとも有機感光層が積層されてなるものにおいて、当該有機感光体の最表面層の弾性変形率が35〜55%であり、前記最表面層を構成する樹脂が、スチレンブロックと、ソフトセグメントブロックとのブロック共重合体よりなり、前記ソフトセグメントブロックは、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、エチレン/ブチレンおよびエチレン/プロピレンから選ばれる1種以上により形成されるものであり、前記ソフトセグメントブロックの組成比が、前記ブロック共重合体に対して25〜65質量%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機感光体、この有機感光体を具えた画像形成装置および画像形成用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
新興国市場においては、画像支持体として酸性紙を用いることが今なお主流とされている。この酸性紙を用いた画像形成においては、当該酸性紙の紙粉により、一種の像流れ現象である紙粉ボケなどの画像不良が発生するという問題がある。この紙粉ボケは、酸性紙の紙粉が感光体表面に付着し、空気中の水分が酸性紙成分であるタルク(3MgO・4SiO2 ・H2 O)やカオリン(Al2 3 ・H2 O)により取り込まれ、感光体の表面抵抗が低下し、現像特性が低下することによって発生する現象である。従って、高温高湿環境の地域においては、この紙粉ボケなどの画像不良が顕著に発生する。
【0003】
このような問題を解決するため、感光体表面に付着した紙粉を除去する紙粉除去装置を具えた画像形成装置が提案されているが、装置の小型化やコストの観点から望ましいものではない(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、感光体表面に付着した紙粉を除去するために当該感光体表面を構成する樹脂を削り取る際に、感光体表面に傷がつき、形成される画像に白スジ状の画像ノイズが発生するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−206850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、画像支持体として酸性紙を用いる場合において、紙粉ボケや画像ノイズなどの画像不良の発生を抑制することのできる有機感光体、画像形成装置および画像形成用カートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の有機感光体は、導電性支持体上に、少なくとも有機感光層が積層されてなる有機感光体において、
当該有機感光体の最表面層の弾性変形率が35〜55%であり、
前記最表面層を構成する樹脂が、スチレンブロックと、ソフトセグメントブロックとのブロック共重合体よりなり、
前記ソフトセグメントブロックは、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、エチレン/ブチレンおよびエチレン/プロピレンから選ばれる1種以上により形成されるものであり、
前記ソフトセグメントブロックの組成比が、前記ブロック共重合体に対して25〜65質量%であることを特徴とする。
【0008】
本発明の画像形成装置は、上記の有機感光体と、
当該有機感光体の表面に脂肪族金属塩よりなる潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段とを有することを特徴とする。
この画像形成装置においては、前記潤滑剤を構成する脂肪族金属塩がステアリン酸亜鉛であることが好ましい。
【0009】
本発明の画像形成装置は、上記の有機感光体と、
当該有機感光体の表面に一様な電位を付与する帯電手段とを有し、
前記帯電手段が接触帯電方式のものであることを特徴とする。
【0010】
本発明の画像形成装置は、上記の有機感光体と、
当該有機感光体の表面に残留した未転写トナーを除去するクリーニング手段とを有し、
前記クリーニング手段が弾性ブレードよりなることを特徴とする。
【0011】
本発明の画像形成用カートリッジは、画像形成装置本体と脱着可能な画像形成用カートリッジであって、
上記の有機感光体を具えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有機感光体によれば、当該有機感光体の最表面層の弾性変形率が特定の範囲内であり、この最表面層を構成する樹脂がスチレンブロックとソフトセグメントブロックとのブロック共重合体(以下、「特定のブロック共重合体」ともいう。)よりなり、この特定のブロック共重合体を構成するソフトセグメントブロックの組成比が特定の範囲内にあることにより、最表面層を構成する樹脂が適度な硬さおよび弾性を有するものとなることから、最表面層を構成する樹脂を適宜の手段を用いて紙粉と共に容易に削り取ることができ、その上、優れた耐傷性が得られるので最表面層を構成する樹脂を削り取る際にも表面傷がつきにくく、紙粉ボケや画像ノイズなど画像不良の発生を抑制することができる。
【0013】
本発明の画像形成装置によれば、上記の有機感光体と、この有機感光体の最表面層を構成する樹脂を削り取る適宜の手段とを有することにより、画像支持体として酸性紙を用いる場合において、当該有機感光体の最表面層を構成する樹脂が適度な硬さおよび弾性を有するものであることから、最表面層を構成する樹脂を紙粉と共に容易に削り取ることができ、その上、優れた耐傷性が得られるので最表面層を構成する樹脂を削り取る際にも表面傷がつきにくく、紙粉ボケや画像ノイズなど画像不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置における潤滑剤塗布手段の構成の一例を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
〔有機感光体〕
本発明の有機感光体は、導電性支持体上に、少なくとも有機感光層が積層されてなるものであり、当該有機感光体の最表面層の弾性変形率が特定の範囲内であり、この最表面層を構成する樹脂が特定のブロック共重合体よりなり、この特定のブロック共重合体を構成するソフトセグメントブロックの組成比が特定の範囲内であるものとされる。
【0017】
本発明の有機感光体の層構成は、特に限定されるものではないが、具体的には下記(1)および(2)の層構成が挙げられる。
(1)導電性支持体上に、中間層、有機感光層として電荷発生層および電荷輸送層がこの順に積層されてなり、前記電荷輸送層が最表面層となる層構成。
(2)導電性支持体上に、中間層、有機感光層として電荷発生物質および電荷輸送物質を含む単層がこの順に積層されてなり、前記単層が最表面層となる層構成。
【0018】
本発明において、有機感光体とは、電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能および電荷輸送機能の少なくとも一方の機能が有機化合物により発揮されて構成されるものをいい、公知の有機電荷発生物質または有機電荷輸送物質から構成される感光層を有する感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能とが高分子錯体により構成される感光層を有する感光体など公知の有機感光体全てを含むものをいう。
【0019】
〔最表面層〕
本発明の有機感光体は、当該有機感光体の最表面層の弾性変形率が35〜55%とされ、より好ましくは40〜50%とされる。
最表面層の弾性変形率が上記範囲内であることにより、最表面層に優れた耐傷性が得られ、画像ノイズなどの画像不良の発生を抑制することができる。
最表面層の弾性変形率が過小である場合においては、最表面層に優れた耐傷性が得られず、画像ノイズなどの画像不良の発生を十分に抑制することができないおそれがある。一方、最表面層の弾性変形率が過大である場合においては、最表面層を構成する樹脂を容易に削り取ることができなくなり、紙粉ボケなどの画像不良の発生を十分に抑制することができないおそれがあると共に、有機感光体の表面に残留した未転写トナーを除去するクリーニング手段を有する場合においては、クリーニング手段との滑り性が悪化し、クリーニング不良を誘発し、また、クリーニング手段としてブレードを用いる場合には、ブレードめくれを誘発するおそれがある。
【0020】
最表面層の弾性変形率は、下記式(1)により算出される値である。
式(1):弾性変形率(%)=We/Wtot
上記式(1)中、「We」は弾性エネルギーを示し、「Wtot」は弾性エネルギーと塑性エネルギーの和を示す。
なお、「We」および「Wtot」は、下記測定条件に従って微小硬度計「H100V」(Fscher社製)により測定されるものである。
−測定条件−
・使用圧子:対面角136°のビッカース四角錘ダイアモンド圧子
・負荷条件:速度6mN/secで有機感光体の表面からビッカース圧子を押しこむ
・負荷時間:5sec(最大負荷 30mN)
・保持時間:5sec
・除荷条件:負荷と同じ速度で負荷を除く
【0021】
なお、上記弾性変形率は、特定のブロック共重合体におけるソフトセグメントブロックの組成比を調整することにより制御することができる。具体的には、弾性変形率を上昇させるためには、ソフトセグメントブロックの組成比を高くすればよく、特に、ソフトセグメントブロックが、二重結合が残存するブタジエンやペンタジエンを含むことにより、効果的に弾性変形率を上昇させることができる。一方、弾性変形率を低下させるためには、スチレンブロックの組成比を高くすればよい。
【0022】
最表面層を構成する樹脂は、スチレンブロックと、ソフトセグメントブロックとのブロック共重合体とされる。このブロック共重合体は、上記範囲内の最表面層の弾性変形率を得る観点から、スチレンブロック−ソフトセグメントブロック−スチレンブロック型のトリブロック共重合体であることが好ましい。
【0023】
特定のブロック共重合体を構成するソフトセグメントブロックは、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、エチレン/ブチレン共重合ブロックおよびエチレン/プロピレン共重合ブロックから選ばれる1種以上により形成される。ソフトセグメントブロックは、1種単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、特に、ブタジエン、イソプレン、エチレン/プロピレン共重合ブロックが好ましい。
【0024】
本発明に係るブロック共重合体は、有機溶媒中で有機リチウム化合物を重合開始剤とし、ビニル芳香族炭化水素および共役ジエンの中から、それぞれ1種または2種以上を選びリビングアニオン重合させることにより製造できる。
リビングアニオン重合では、重合活性末端が存在する限り原料モノマーの重合が継続するため、当該モノマーの残留を低く抑えることができる。また、連鎖移動反応による重合途中での反応活性末端の失活や新規生成しにくいという重合反応上の特徴を持つ。そのため、本発明におけるブロック共重合体の分子量や分子構造は、モノマー、重合開始剤、ランダム化剤、活性末端の失活のために用いるプロトン供与性の物質の仕込量、およびその添加時期、添加回数を適宜調整することにより目的に応じて制御することが可能である。
また、本発明に係るソフトセグメントブロックにおいては、ブタジエン系のモノマーの共重合体、及びこれらに水素添加したものが用いられ、本発明に係るエチレンブロックにおいては、共役ジエンに水素添加した構造も含まれる。スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物としては、例えば、スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(スチレン・エチレン/ブチレン・スチレン共重合体)、スチレン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン・エチレン/プロピレン・スチレン共重合体)、または、これらの混合物を好適に使用することができる。これらのブロック共重合体の水素添加処理は、例えば特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、あるいは特開昭59−133203号公報および特開昭60−79005号公報に記載された方法により、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下で行うことができる。このようなブロック共重合体の市販品としては、「KRATON−G」(クレイトンポリマー株式会社製)、「セプトン」(株式会社クラレ製)、「タフテック」(旭化成株式会社製)などの商品が例示できる。
【0025】
ソフトセグメントブロックの組成比は、特定のブロック共重合体における25〜65質量%とされ、より好ましくは30〜55質量%とされる。
ソフトセグメントブロックの組成比が上記範囲内であることにより、最表面層を構成する樹脂を容易に削り取ることができ、紙粉ボケなどの画像不良の発生を抑制することができる。
ソフトセグメントブロックの組成比が過小である場合においては、最表面層に優れた耐傷性が得られず、画像ノイズなどの画像不良の発生を十分に抑制することができないおそれがある。一方、ソフトセグメントブロックの組成比が過大である場合においては、最表面層を構成する樹脂を容易に削り取ることができなくなり、紙粉ボケなどの画像不良の発生を十分に抑制することができないおそれがある。
なお、ソフトセグメントブロックの組成比は、1 H−NMRと熱分解ガスクロマトグラフィーにより算出することができる。
【0026】
以上のような最表面層は、特定のブロック共重合体を公知の溶媒で溶解した溶液中に例えば電荷輸送物質を溶解させ、必要に応じて酸化防止剤やフィラー等を添加して塗布液を調製し、この塗布液を塗布することにより得られる。
【0027】
本発明の有機感光体の最表面層が以上のような構成であることにより、最表面層を構成する樹脂が適度な硬さおよび弾性を有するものとなることから、最表面層を構成する樹脂を適宜の手段を用いて紙粉と共に容易に削り取ることができ、その上、優れた耐傷性が得られるので最表面層を構成する樹脂を削り取る際にも表面傷がつきにくく、紙粉ボケや画像ノイズなどの画像不良の発生を抑制することができる。
【0028】
以下、本発明の有機感光体が上記(1)の層構成である場合について具体的に説明する。
【0029】
〔導電性支持体〕
本発明の有機感光体を構成する導電性支持体としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレスなどの金属をドラム状またはシート状に成形したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウムおよび酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独またはバインダー樹脂と共に塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルムおよび紙などが挙げられる。
【0030】
〔中間層〕
本発明の有機感光体においては、導電性支持体と有機感光層との間にバリアー機能と接着機能とを有する中間層を設ける構成とすることができる。種々の故障防止などの観点から、このような中間層を設けることが好ましい。
この中間層は、バインダー樹脂(以下、「中間層用バインダー樹脂」ともいう。)、および、当該中間層の抵抗を調整する目的で含有される各種の導電性微粒子や金属酸化物微粒子(以下、「中間層用金属酸化物微粒子」ともいう。)などの無機微粒子よりなるものである。
【0031】
中間層用バインダー樹脂としては、例えば、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸コポリマー、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチンなどが挙げられるが、アルコール可溶性のポリアミド樹脂であることが好ましい。
【0032】
中間層用金属酸化物微粒子としては、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマスなどの金属酸化物微粒子が挙げられ、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズおよび酸化ジルコニウムなどの超微粒子を用いることもできる。これらの中間層用金属酸化物微粒子は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。中間層用金属酸化物微粒子を2種類以上組み合わせて用いる場合においては、当該中間層用金属酸化物微粒子が固溶体状態であってもよいし、また、融着状態であってもよい。
このような中間層用金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、0.3μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以下である。
本発明において、中間層用金属酸化物微粒子の数平均一次粒径は、以下のように測定されるものである。
すなわち、走査型電子顕微鏡「JSM−7500F」(日本電子社製)により10000倍の拡大写真を撮影し、ランダムに300個の中間層用金属酸化物微粒子をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子を除く)を自動画像処理解析装置「LUZEX AP」(ソフトウエアバージョン Ver.1.32、ニレコ社製)を使用して算出する。
【0033】
中間層の形成方法は、中間層用バインダー樹脂を公知の溶媒に溶解して中間層塗布液を調製し、この中間層塗布液を導電性支持体上に浸漬、塗布する方法が好ましい。
【0034】
中間層を形成するために用いられる溶媒としては、無機微粒子を良好に分散し、ポリアミド樹脂を溶解するものが好ましく、具体的には、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノールなどの炭素数2〜4のアルコール類が、ポリアミド樹脂の溶解性と塗布性の観点から、特に好ましい。また、保存性、無機微粒子の分散性を向上するために、前記溶媒と併用することのできる助溶媒としては、例えば、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0035】
中間層用バインダー樹脂の濃度は、中間層の層厚や生産速度に合わせて適宜選択される。
【0036】
無機微粒子の分散手段としては、特に限定されないが、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダーおよびホモミキサーなどの分散機が挙げられる。
【0037】
中間層用バインダー樹脂に対する無機微粒子の添加量は、中間層用バインダー樹脂100質量部に対して20〜400質量部であることが好ましく、より好ましくは50〜200質量部である。
【0038】
中間層の乾燥方法は、溶媒の種類、層厚に応じて適宜選択することができるが、熱乾燥による方法が好ましい。
【0039】
中間層の層厚は、0.1〜15μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜10μmである。
【0040】
〔有機感光層〕
(電荷発生層)
本発明の有機感光体を構成する有機感光層における電荷発生層は、電荷発生物質およびバインダー樹脂(以下、「電荷発生層用バインダー樹脂」ともいう。)よりなるものであり、この電荷発生層は、電荷発生物質を電荷発生層用バインダー樹脂溶液中に分散、塗布することにより形成することができる。
【0041】
電荷発生物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、スーダンレッド、ダイアンブルーなどのアゾ原料;ピレンキノン、アントアントロンなどのキノン顔料;キノシアニン顔料;ペリレン顔料;インジゴ、チオインジゴなどのインジゴ顔料;フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
電荷発生層用バインダー樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、並びにこれらの樹脂の内2つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂)、ポリ−ビニルカルバゾール樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
電荷発生層の形成方法は、電荷発生層用バインダー樹脂を溶媒で溶解した溶液中に分散機を用いて電荷発生物質を分散して電荷発生層塗布液を調製し、この電荷発生層塗布液を塗布機で一定の層厚に導電性支持体上または中間層上塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥する方法が好ましい。
【0044】
電荷発生層を形成するために用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
電荷発生物質の分散手段としては、特に限定されないが、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダーおよびホモミキサーなどの分散機が挙げられる。
【0046】
電荷発生層用バインダー樹脂に対する電荷発生物質の添加量は、電荷発生層用バインダー樹脂100質量部に対して1〜600質量部であることが好ましく、より好ましくは50〜500質量部である。
【0047】
電荷発生層の層厚は、電荷発生物質の特性、電荷発生層用バインダー樹脂の特性および混合割合などにより異なるが、0.01〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmである。なお、電荷発生層塗布液は塗布前に異物や凝集物を濾過することで画像欠陥の発生を防ぐことができる。前記顔料を真空蒸着することによって形成すこともできる。
【0048】
(電荷輸送層)
本発明の有機感光体を構成する有機感光層における電荷輸送層は、電荷輸送物質(CTM)およびバインダー樹脂(以下、「電荷輸送層用バインダー樹脂」ともいう。)よりなるものであり、この電荷輸送層は、電荷輸送物質を電荷輸送層用バインダー樹脂溶液中に溶解、塗布することにより形成することができる。
【0049】
電荷輸送物質としては、例えば、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレンおよびポリ−9−ビニルアントラセン、トリフェニルアミン誘導体などが挙げられる。これらの電荷輸送物質は、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
このような層構成の場合、当該電荷輸送層が有機感光体の最表面層となるので、電荷輸送層用バインダー樹脂は、特定のブロック共重合体により構成され、この特定のブロック共重合体においてソフトセグメントブロックの組成比は当該特定のブロック共重合体に対して25〜65質量%とされる。
【0051】
電荷輸送層の形成方法は、電荷輸送層用バインダー樹脂と電荷輸送物質を溶解して電荷輸送層塗布液を調製し、この電荷輸送層塗布液を塗布機で一定の層厚に電荷発生層上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥する方法が好ましい。
【0052】
電荷輸送層を形成するために用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
電荷輸送層用バインダー樹脂に対する電荷輸送物質の添加量は、電荷輸送層用バインダー樹脂100質量部に対して10〜500質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜100質量部である。
【0054】
電荷輸送層の層厚は、電荷輸送物質の特性、電荷輸送層用バインダー樹脂の特性および混合割合などにより異なるが、5〜40μmであることが好ましく、より好ましくは10〜30μmである。
【0055】
電荷輸送層には、必要に応じて酸化防止剤、電子導電剤、安定剤などが含有されていてもよい。酸化防止剤については特願平11−200135号に記載のものが挙げられ、電子導電剤については特開昭50−137543号、同58−76483号などに記載のものが挙げられる。
【0056】
本発明の有機感光体によれば、当該有機感光体の最表面層の弾性変形率が特定の範囲内であり、この最表面層を構成する樹脂が特定のブロック共重合体よりなり、この特定のブロック共重合体を構成するソフトセグメントブロックの組成比が特定の範囲内にあることにより、最表面層を構成する樹脂が適度な硬さおよび弾性を有するものとなることから、最表面層を構成する樹脂を適宜の手段を用いて紙粉と共に容易に削り取ることができ、その上、優れた耐傷性が得られるので最表面層を構成する樹脂を削り取る際にも表面傷がつきにくく、紙粉ボケや画像ノイズなど画像不良の発生を抑制することができる。
【0057】
〔画像形成装置〕
本発明の画像形成装置は、本発明の有機感光体と、当該有機感光体の表面に接触する部材であって有機感光体の最表面層を構成する樹脂を削り取る手段とを有するものであれば、特に限定されず、この最表面層を構成する樹脂を削り取る手段としては、例えば、有機感光体の表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段に樹脂を削り取る機能を担わせる方法、接触帯電方式による帯電手段を用いる方法、有機感光体上の未転写トナーを除去するクリーニング手段に樹脂を削り取る機能を担わせる方法などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせ採用することができる。
【0058】
以下、本発明の画像形成装置について具体的に説明する。図1は、本発明の画像形成装置の構成の一例を示す説明用断面図である。
この画像形成装置は、図1において矢印方向に回転されるドラム状の有機感光体10と、各々、この有機感光体10の外周面に沿って、有機感光体10の回転方向に従って並ぶよう配設された、有機感光体10の表面を一様に帯電させる帯電手段11、有機感光体10の表面を露光することにより静電潜像を形成する露光手段12、トナーを含む現像剤を用いて静電潜像を顕在化させることによりトナー像を形成する現像手段13、有機感光体10上に形成されたトナー像を転写領域において画像支持体Pに転写する転写手段14、有機感光体10に密着した状態にある画像支持体Pを分離させる分離手段15、潤滑剤を有機感光体10の表面に塗布する潤滑剤塗布手段30および有機感光体10上に残存している未転写のトナーを除去するクリーニング手段20とを備えている。16は、転写領域より搬送される画像支持体P上の未定着トナー像を定着させて画像を形成する定着手段である。
【0059】
有機感光体10は、図1における紙面に対して垂直な方向に伸びる状態で配設されている。
【0060】
帯電手段11は、帯電部材である導電性ローラや磁気ブラシに電圧を印加して、被帯電体である有機感光体10に接触させ、有機感光体10の表面を所定の電位に帯電させる接触帯電方式のものである。なお、例えば制御グリッドと帯電極とを有するスコロトロン帯電器よりなる非接触帯電方式のものを用いることもできる。
【0061】
露光手段12は、例えばレーザ照射装置よりなるものである。
【0062】
現像手段13は、例えばマグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ131および有機感光体10とこの現像スリーブ131との間に直流および/または交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置(図示せず)が設けられてなるものである。
【0063】
転写手段14は、例えばコロナ転写方式のものよりなり、接触転写方式のものを用いることもできる。
【0064】
分離手段15は、有機感光体10に密着した状態にある画像支持体Pの電荷を除去することによりこの画像支持体Pを有機感光体10から分離させるものであり、例えばコロトロン帯電器よりなるものが用いられる。
【0065】
定着手段16は、例えば、内部に加熱源を備えた加熱ローラ161と、この加熱ローラ161に定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧ローラ162とにより構成されてなる熱ローラ定着方式のものである。
【0066】
クリーニング手段20は、例えば、先端部分が有機感光体10の表面に当接した状態で、有機感光体10の軸方向に伸びるよう設けられたウレタンゴムなどの弾性体よりなる板状の弾性ブレード201を備えてなる方式のものが用いられており、弾性ブレード201の先端部分が、有機感光体10との当接部分における当該有機感光体10の回転による移動方向と反対方向に向く状態(カウンター状態)とされることが好ましい。この弾性ブレード201は、例えば硬度が65〜80°(アスカーC硬度)、反発弾性が50%以上、有機感光体10に対する当接荷重が0.98〜294mN/cm、当接角度が0〜40°であるものが用いられることが好ましい。
【0067】
潤滑剤塗布手段30は、図2に示すように、図2における紙面に対して垂直な方向に細長く伸びた直方体形状を有する固形状の潤滑剤により構成された潤滑剤ストック302と、削取領域30aにおいて潤滑剤ストック302の表面と当接し、塗布領域30bにおいて有機感光体10の表面と当接し、潤滑剤ストック302の表面を摺擦することにより掻き取った潤滑剤を有機感光体10に塗布するよう回転駆動されるブラシローラ301と、潤滑剤ストック302をブラシローラ301に対して押圧するよう支持するスプリングからなる押圧装置303とから構成される。
【0068】
ブラシローラ301は、例えば、ポリプロピレン樹脂やアクリル樹脂などの樹脂製のブラシ繊維が高密度に植設されてなる長尺の織布がローラ基体の周面に巻きつけられてロール状に形成されてなるものにより構成されたものであり、各々のブラシ繊維の太さが3〜7デニール、ブラシ繊維の毛長が2〜5mm、ブラシ繊維の電気抵抗率が1010Ω・cm以下、ブラシ繊維のヤング率が4900〜9800N/mm2 、ブラシ繊維の植設密度が50〜200k本/inch2 のものであることが好ましく、有機感光体10に対する食い込み量が例えば0.5〜1.0mmとなる状態とされている。ここにおける「有機感光体に対する食い込み量」とは、有機感光体10が存在しなかったときの、ブラシ繊維の先端が有機感光体10内へ入り込む最大値と定義される。
【0069】
潤滑剤ストック302を構成する潤滑剤は、脂肪酸金属塩からなる潤滑剤成分と、無機化合物の粉末からなる研磨剤成分とよりなり、潤滑剤成分中に研磨剤成分を構成する微粒子が分散した状態のものである。
潤滑剤成分を構成する脂肪酸金属塩としては、例えばステアリン酸亜鉛が用いられ、また、研磨剤成分を構成する無機化合物の粉末としては、例えばマグネシウム、亜鉛、アルミニウム、コバルト、鉄、ジルコニウム、マンガン、クロムおよびストロンチウムから選ばれた金属の酸化物の粉末、またはチタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウムおよびチタン酸バリウムから選ばれた金属化合物の粉末が用いられる。
特に、塗布剤は、潤滑剤成分がステアリン酸亜鉛よりなり、研磨剤成分がチタン酸ストロンチウムの粉末よりなるものであることが好ましい。
【0070】
研磨剤成分の含有割合は、潤滑剤100質量%に対して5〜35質量%であり、好ましくは10〜35質量%、より好ましくは20〜30質量%である。
【0071】
以上の画像形成装置においては、次のようにして画像形成動作が行われる。
すなわち、駆動源による動力が適宜の動力伝達手段により伝達されて有機感光体10が回転駆動されると、有機感光体10が帯電手段11によって所定の極性(例えば負極性)に帯電され、次いで、露光手段12によって露光されて照射箇所(露光領域)の電位が低下されることにより静電潜像が有機感光体10上に形成され、現像手段13によって現像剤を構成する有機感光体10の表面電位と同じ極性(例えば負極性)に帯電されたトナーが有機感光体10の静電潜像に付着して反転現像が行われ、これにより、トナー像が形成される。
次いで、転写手段14により有機感光体10上のトナー像が画像支持体Pに転写された後、分離手段15により有機感光体10と密着した状態にある画像支持体Pが分離され、その後、定着手段16によって定着処理が行われる。
【0072】
一方、転写領域を通過して有機感光体10上に残留する未転写のトナーがクリーニング手段20によって除去されるが、弾性ブレード201によるクリーニングが行われるに際して、潤滑剤塗布手段30によって、潤滑剤が有機感光体10の表面に塗布されると共に有機感光体10上の未転写トナーの一部および有機感光体10の表面層を構成する樹脂の一部がブラシローラ301により削り取られ、さらに、未転写トナーの残りおよび有機感光体10の表面層を構成する樹脂の残りが弾性ブレード201によって削り取られる。
【0073】
本発明の画像形成装置によれば、本発明の有機感光体と、この有機感光体の最表面層を構成する樹脂を削り取る適宜の手段とを有することにより、画像支持体として酸性紙を用いる場合において、当該有機感光体の最表面層を構成する樹脂が適度な硬さおよび弾性を有するものであることから、最表面層を構成する樹脂を紙粉と共に容易に削り取ることができ、その上、優れた耐傷性が得られるので最表面層を構成する樹脂を削り取る際にも表面傷がつきにくく、紙粉ボケや画像ノイズなど画像不良の発生を抑制することができる。
【0074】
〔画像形成用カートリッジ〕
本発明の画像形成用カートリッジは、画像形成装置本体と脱着可能に構成されており、例えば上記の画像形成装置においては、少なくとも有機感光体10を含み、必要に応じて、帯電手段11、現像手段13およびクリーニング手段20から選ばれる少なくとも1種以上が共通の支持体に装着されることにより一体化されて画像形成用カートリッジが構成されている。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
〔有機感光体の製造例1〕
(1)ブロック共重合体の合成
撹拌装置付き耐圧容器中にシクロヘキサン50kg、充分に脱水したスチレン2750gおよびsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液(10質量%)210gを加え、120℃で60分間重合し、次いでテトラヒドロフラン250gを添加し、1,3−ブタジエン4500gを加えて60分間、さらにスチレン2750gを加えて60分間重合した後、メタノールを加えて反応を停止してスチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロック型のトリブロック共重合体であるブロック共重合体〔1〕を合成した。このブロック共重合体〔1〕は、ソフトセグメントブロック(ブタジエンブロック)の組成比が、ブロック共重合体〔1〕に対して45質量%であった。
【0077】
(2)導電性支持体の作製
JIS6063合金の円筒状アルミニウム基体(Φ30×350mm、インロー径:φ28.4mmの肉厚0.8mm、引張強度:210(N/mm2 ))を切削加工(JIS B−0601規定の十点表面粗さRz:0.8μm)した後、洗浄して導電性支持体〔1〕を作製した。
【0078】
(3)中間層の形成
下記原料を分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式により10時間の分散を行い、中間層形成用塗布液〔1〕を調製した。
・バインダー樹脂:ポリアミド樹脂「CM8000」(東レ社製) 1質量部
・溶媒:イソプロピルアルコール 10質量部
・金属酸化物微粒子:数平均一次粒径35nmブルッカイト形酸化チタン 3質量部
上記導電性支持体〔1〕上に、この中間層形成用塗布液〔1〕を浸漬塗布法により塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を120℃で30分間乾燥し、層厚3μmの中間層〔1〕を形成した。
【0079】
(4)有機感光層の形成
(電荷発生層の形成)
下記原料を分散機としてサンドミルを用いて、20時間の分散を行い、電荷発生層形成用塗布液〔1〕を調製した。
・電荷発生物質:チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で5少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有するもの) 20質量部
・バインダー樹脂:ポリビニルブチラール樹脂「#6000−C」(電気化学工業社製)
10質量部
・溶媒:酢酸t−ブチル 700質量部
・溶媒:4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300質量部
上記中間層〔1〕の上に、この電荷発生層形成用塗布液〔1〕を浸漬塗布法によりで塗布して塗布膜を形成し、層厚0.8μmの電荷発生層〔1〕を形成した。
【0080】
(電荷輸送層の形成)
下記原料を混合して溶解し、電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を調製した。
・電荷輸送物質:4−メトキシ−4′−(4−メチル−α−フェニルスチリル)トリフェニルアミン 150質量部
・バインダー樹脂:ブロック共重合体〔1〕 100質量部
・溶媒:テトラヒドロフラン/トルエン=7/3体積% 750質量部
・酸化防止剤:「Irganox1010」(日本チバガイギー社製) 2質量部
上記電荷発生層〔1〕上に、この電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を浸漬塗布法により塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を120℃で70分間乾燥し、層厚25μmの電荷輸送層〔1〕を形成し、有機感光体〔1〕を製造した。この有機感光体〔1〕の最表面層の弾性変形率を表1に示す。
【0081】
〔有機感光体の製造例2〕
有機感光体の製造例1において、(1)ブロック共重合体の合成におけるスチレンブロック/ブタジエンブロックの配合比を、ブタジエンブロックの組成比が、ブロック共重合体に対して65質量%となるように1,3−ブタジエンを増量したことの他は同様にして有機感光体〔2〕を製造した。この有機感光体〔2〕の最表面層の弾性変形率を表1に示す。
【0082】
〔有機感光体の製造例3〕
有機感光体の製造例1において、(1)ブロック共重合体の合成におけるスチレンブロック/ブタジエンブロックの配合比を、ブタジエンブロックの組成比が、ブロック共重合体に対して35質量%となるように1,3−ブタジエンを減量したことの他は同様にして有機感光体〔3〕を製造した。この有機感光体〔3〕の最表面層の弾性変形率を表1に示す。
【0083】
〔有機感光体の製造例4〕
有機感光体の製造例1において、(1)ブロック共重合体の合成における1,3−ブタジエンをエチレン/プロピレン(=50/50)の配合比が、ブロック共重合体に対して60質量%となるように変更したことの他は同様にして有機感光体〔4〕を製造した。この有機感光体〔4〕の最表面層の弾性変形率を表1に示す。
【0084】
〔有機感光体の製造例5〕
有機感光体の製造例1において、(1)ブロック共重合体の合成における1,3−ブタジエンをエチレン/ブチレン(=50/50)の配合比が、ブロック共重合体に対して60質量%となるように変更したことの他は同様にして有機感光体〔5〕を製造した。この有機感光体〔5〕の最表面層の弾性変形率を表1に示す。
【0085】
〔有機感光体の製造例6〕
有機感光体の製造例1において、(1)ブロック共重合体の合成における1,3−ブタジエンをイソプレンに変更したことの他は同様にして有機感光体〔6〕を製造した。この有機感光体〔6〕の最表面層の弾性変形率を表1に示す。
【0086】
〔有機感光体の製造例7〕
有機感光体の製造例1において、(1)ブロック共重合体の合成における1,3−ブタジエンをペンタジエンに変更したことの他は同様にして有機感光体〔7〕を製造した。この有機感光体〔7〕の最表面層の弾性変形率を表1に示す。
【0087】
〔有機感光体の製造例8〕
有機感光体の製造例1において、(4)有機感光層の形成におけるバインダー樹脂としてブロック共重合体〔1〕の代わりにスチレン樹脂「スタイロン679」(旭化成社製)に変更したことの他は同様にして有機感光体〔8〕を製造した。この有機感光体〔8〕の最表面層の弾性変形率を表1に示す。
【0088】
〔有機感光体の製造例9〕
有機感光体の製造例1において、(4)有機感光層の形成におけるバインダー樹脂としてブロック共重合体〔1〕の代わりにスチレン−メチルメタクリレート共重合体(配合比St/MMA=80/20)に変更したことの他は同様にして有機感光体〔9〕を製造した。この有機感光体〔9〕の最表面層の弾性変形率を表1に示す。
【0089】
〔有機感光体の製造例10〕
有機感光体の製造例1において、(4)有機感光層の形成におけるバインダー樹脂としてブロック共重合体〔1〕の代わりにZ型ポリカーボネート樹脂「ユーピロンZ−300」(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)に変更したことの他は同様にして有機感光体〔10〕を製造した。この有機感光体〔10〕の最表面層の弾性変形率を表1に示す。
【0090】
〔有機感光体の製造例11〕
有機感光体の製造例1において、(4)有機感光層の形成におけるバインダー樹脂としてブロック共重合体〔1〕の代わりにスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン含有量55質量%)に変更したことの他は同様にして有機感光体〔11〕を製造した。この有機感光体〔11〕の最表面層の弾性変形率を表1に示す。
【0091】
〔有機感光体の製造例12〕
有機感光体の製造例1において、(4)有機感光層の形成におけるバインダー樹脂としてブロック共重合体〔1〕の代わりに、Z型ポリカーボネート樹脂「ユーピロンZ−300」(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)にスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン含有量55質量%)を20質量%添加して得られたものに変更したことの他は同様にして有機感光体〔12〕を製造した。この有機感光体〔12〕の最表面層の弾性変形率を表1に示す。
【0092】
〔実施例1〜7および比較例1〜5〕
以上のようにして得られた有機感光体〔1〕〜〔12〕をモノクロ画像形成装置「bizhub 164」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)に搭載し、HH環境(温度30℃、相対湿度85%)下において、画像支持体として酸性紙「SPECTRUM Paper」(Xerox社製)を用い、印字率5.0%画像で3000枚プリントする実写を行った後、文字チャート、ハーフトーン画像、黒ベタ画像をそれぞれ出画し、下記評価基準により評価した。また、ハーフトーン画像において、白スジ状の画像ノイズの発生の有無を観察した。結果を表1に示す。なお、表1に示す「膜削れ量」は、1万枚プリント当たりの有機感光体の表面層の減耗量(μm/1万枚)を示す。
【0093】
(文字チャートの評価基準)
○:良好
×:文字のかすれや細りが発生
【0094】
(ハーフトーン画像の評価基準)
反射濃度計「RD−918」(マクベス社製)を用いて、ハーフトーン画像の5箇所を測定し、各測定箇所の濃度ムラ差(最大濃度−最小濃度)を算出した。
○:濃度ムラ差が15%以下で良好
△:濃度ムラ差が15%を超えて30%以下で実用上問題ないレベル
×:濃度ムラ差が30%を超えて実用上問題あり
【0095】
(黒ベタ画像の評価基準)
反射濃度計「RD−918」(マクベス社製)を用いて、黒ベタ画像の5箇所を測定し、各測定箇所の濃度ムラ差を算出した。
○:濃度ムラ差が15%以下で良好
△:濃度ムラ差が15%を超えて30%以下で実用上問題ないレベル
×:濃度ムラ差が30%を超えて実用上問題あり
【0096】
【表1】

【0097】
〔実施例8〜14および比較例6〜10〕
モノクロ画像形成装置「bizhub 164」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を図1に示すステアリン酸亜鉛よりなる潤滑剤を有機感光体の表面に塗布する潤滑剤塗布手段と接触帯電方式による帯電手段とを具えたものに改造して有機感光体〔1〕〜〔12〕をそれぞれ搭載し、HH環境(温度30℃、相対湿度85%)下において、画像支持体として酸性紙「SPECTRUM Paper」(Xerox社製)を用い、印字率5.0%画像で3000枚プリントする実写を行った後、文字チャート、ハーフトーン画像、黒ベタ画像をそれぞれ画出し、下記評価基準により評価した。また、ハーフトーン画像において、白スジ状の画像ノイズの発生の有無を観察した。結果を表2に示す。なお、表2に示す「膜削れ量」は、1万枚プリント当たりの有機感光体の表面層の減耗量(μm/1万枚)を示す。
【0098】
【表2】

【符号の説明】
【0099】
10 有機感光体
11 帯電手段
12 露光手段
13 現像手段
131 現像スリーブ
14 転写手段
15 分離手段
16 定着手段
161 加熱ローラ
162 加圧ローラ
20 クリーニング手段
201 弾性ブレード
30 潤滑剤塗布手段
30a 削取領域
30b 塗布領域
301 ブラシローラ
302 潤滑剤ストック
303 押圧装置
P 画像支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、少なくとも有機感光層が積層されてなる有機感光体において、
当該有機感光体の最表面層の弾性変形率が35〜55%であり、
前記最表面層を構成する樹脂が、スチレンブロックと、ソフトセグメントブロックとのブロック共重合体よりなり、
前記ソフトセグメントブロックは、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、エチレン/ブチレンおよびエチレン/プロピレンから選ばれる1種以上により形成されるものであり、
前記ソフトセグメントブロックの組成比が、前記ブロック共重合体に対して25〜65質量%であることを特徴とする有機感光体。
【請求項2】
請求項1に記載の有機感光体と、
当該有機感光体の表面に脂肪族金属塩よりなる潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記潤滑剤を構成する脂肪族金属塩がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の有機感光体と、
当該有機感光体の表面に一様な電位を付与する帯電手段とを有し、
前記帯電手段が接触帯電方式のものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の有機感光体と、
当該有機感光体の表面に残留した未転写トナーを除去するクリーニング手段とを有し、
前記クリーニング手段が弾性ブレードよりなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
画像形成装置本体と脱着可能な画像形成用カートリッジであって、
請求項1に記載の有機感光体を具えてなることを特徴とする画像形成用カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−226236(P2012−226236A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95811(P2011−95811)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】