説明

有機溶剤脱水装置

【課題】有機溶剤脱水装置の脱水能力を低下させることのない構成を備える有機溶剤脱水装置を提供する。
【解決手段】脱水材は、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を母体構造とする強酸性陽イオン交換樹脂であり、強酸性基がスルホン酸ナトリウム(Na)基であり、水分含有率が20〜42重量%であり、脱水材が充填される脱水槽1と、脱水槽に被処理有機溶剤を導入する被処理有機溶剤導入経路3と、脱水槽に乾燥用の空気を導入する乾燥空気導入路23とを含む有機溶剤脱水装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤から水分を脱水する装置に関し、特に各種工場や研究施設等から発生した有機溶剤含有ガスから溶剤回収装置を用いて回収した有機溶剤の脱水に用いられる有機溶剤脱水装置である。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機溶剤から水分を除去して溶剤を脱水する装置としては、蒸留精製装置が広く用いられている。すなわち、溶剤を加熱蒸発させ、沸点の違いを利用して有機溶剤と水分を分留することで、純度の高い有機溶剤を取得することができる装置である。
【0003】
蒸留精製装置は大型な装置であるために広い設置スペースが必要であり、かつイニシャルコスト、ランニングコスト共に高いことが問題となっている。かかる問題を解決するために、ゼオライト、イオン交換樹脂、モレキュラーシーブス、活性アルミナ等の脱水材を充填させた脱水槽に有機溶剤を通液させて水分を取り除く方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、多量の有機溶剤から水分を分離する場合は多量の脱水材が必要であり、脱水材が破過状態になると脱水材の交換が必要であることから、脱水材の交換労力とランニングコストが増大する。そのため、研究室レベルでは有効な手段であるが、工場や研究施設等から回収される多量の有機溶剤から水分の分離を行なうには満足できるものではなかった。
【0005】
そこで、下記の特許文献2には、有機溶剤を脱水槽(吸着塔)に充填された脱水材に通流させることにより、有機溶剤中に含有している水分を該脱水材に吸着させる脱水工程と、脱水材に不活性化ガスまたは空気を通流させて脱水材に吸着された水分を乾燥する乾燥工程とを有し、脱水材に陽イオン交換樹脂を用いる有機溶剤脱水装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−225316号公報
【特許文献2】特開2009−291676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、脱水材にイオン交換樹脂等を用いた場合には、脱水工程後の脱水材の乾燥時に、乾燥速度を上げると脱水材の内外層の水分含有量の違いにより脱水材が破壊される。その結果、脱水材の破片により脱水槽に設けられるフィルタに目詰まりが発生し、有機溶剤脱水装置の脱水能力を低下させるおそれがある。
【0008】
本発明は、従来技術の課題を背景にしてなされたもので、有機溶剤脱水装置の脱水能力を低下させることのない構成を備える有機溶剤脱水装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に基づいた有機溶剤脱水装置においては、水分を含有した被処理有機溶剤を脱水材に導入させ接触させることにより、上記被処理有機溶剤に含有している水分を脱水除去する有機溶剤脱水装置であって、上記脱水材は、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を母体構造とする強酸性陽イオン交換樹脂であり、強酸性基がスルホン酸ナトリウム基であり、水分含有率が20〜42重量%である。
【0010】
他の形態においては、上記脱水材が充填される脱水槽と、上記脱水槽に上記被処理有機溶剤を導入する被処理有機溶剤導入経路と、上記脱水槽に不活性ガスを導入する不活性ガス導入経路と、上記脱水槽に乾燥用の空気を導入する乾燥空気導入路と含む。
【0011】
他の形態においては、上記脱水槽に洗浄水を導入する洗浄水導入経路と、上記脱水槽から上記洗浄水を排出する洗浄水排出経路とをさらに含む。
【0012】
他の形態においては、上記洗浄水導入経路は、上記洗浄水排出経路に排出された上記洗浄水を上記洗浄水導入経路に導入する洗浄水循環経路を有する。
【0013】
他の形態においては、上記脱水槽は、第1脱水槽と第2脱水槽とを含み、上記乾燥空気導入路により上記第1脱水槽に乾燥用の空気を導入する際には、上記被処理有機溶剤導入経路により上記第2脱水槽に上記被処理有機溶剤が導入され、上記乾燥空気導入路により上記第2脱水槽に乾燥用の空気を導入する際には、上記被処理有機溶剤導入経路により上記第1脱水槽に上記被処理有機溶剤が導入されることで、連続的に上記被処理有機溶剤を脱水材に導入させ接触させることにより、上記被処理有機溶剤に含有している水分の脱水除去を可能とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明に基づいた有機溶剤脱水装置によれば、脱水能力を低下させることのない構成を備える有機溶剤脱水装置を提供することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態における脱水槽が1塔型方式の有機溶剤脱水装置を示す図である。
【図2】他の実施の形態における脱水槽が2塔型方式の有機溶剤脱水装置を示す図である。
【図3】他の実施の形態における活性炭素繊維を用いた有機溶剤回収処理装置を示す図である。
【図4】実施例1から実施例3、および比較例1から比較例2に用いられる脱水材の諸条件を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一または対応する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない場合がある。また、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0017】
本発明に基づいた有機溶剤脱水装置は、水分を含有する有機溶剤を脱水槽に充填された脱水材に通流させてこの脱水材に水分を吸着させる脱水工程設備と、脱水材に乾燥空気を通流させて脱水材に吸着された水分を乾燥する乾燥工程設備を備え、かかる工程を交互に行う有機溶剤脱水装置であることが好ましい。かかる構造を採用することにより、処理を連続的に行なうことができるからである。
【0018】
より好ましい装置の構造としては、脱水材が幾つかに分割されており、それらの脱水工程と乾燥工程をダンパ等にて切替操作を行い、脱水と乾燥とを連続的に行う有機溶剤脱水装置であり、または、脱水材が回転することができ、脱水工程で水分を吸着した脱水材の部位が、脱水材の回転により、乾燥工程へ移動する構造を有する有機溶剤脱水装置である。
【0019】
以下、図面を参照して、本発明にかかる有機溶剤脱水装置について詳細に説明する。図1は本発明の好ましい実施の形態の一例である。図1に例示した有機溶剤脱水装置は、水分を含有した有機溶剤が、ダンパ4、5が開のときに、貯蔵されている被処理有機溶剤タンク2より被処理有機溶剤導入ライン3を通じて脱水材が充填された脱水槽1に送られ、精製有機溶剤排出ライン6を通じて精製有機溶剤タンク7に精製された有機溶剤が送られることで、脱水材により水分を吸着除去して有機溶剤を精製する吸着工程を有する。
【0020】
一方、ダンパ4、5が閉でダンパ24、25が開のとき、ダンパ13が開であると、水タンク11から水ポンプ12を用い、水または乾燥空気導入ライン23を通じて、脱水槽1に水が送られることで、水の通流により脱水材表面に付着残存する有機溶剤を除去する水パージ工程を有することが好ましい。これは、水パージ工程を行わず、例えば窒素のような不活性化ガスを用いて、後述する乾燥工程を行っても良いが、有機溶剤を水でパージして除去することにより、乾燥工程の際にコストが高い不活性化ガスを用いる必要がなくなるからである。
【0021】
水パージ工程において、水または乾燥空気排出ライン26より排出されたパージ水は、有機溶剤を含むものであり、集積して焼却等してもよいが、ダンパ27を開にして戻りライン28より被処理有機溶剤タンク2に戻すことが好ましい。かかる方法によれば、工程数を省略でき、効率的だからである。
【0022】
また、水パージ工程の後工程で、ダンパ13が閉でダンパ22を開にし、水または乾燥空気導入ライン23を通じて脱水槽1に乾燥空気が送られることで、乾燥空気の通流により脱水材に吸着している水分を乾燥する乾燥工程を有することが好ましい。乾燥工程により発生したガスは微量の有機溶剤を含有しており、水または乾燥空気排出ライン26より排出されたガスを、直接燃焼装置や触媒燃焼装置、蓄熱式燃焼装置等の燃焼装置や活性炭素繊維を使用した溶剤回収装置等の一般的に用いられるガス処理装置にて処理することができる。
【0023】
乾燥工程において、乾燥空気の温度が5〜30℃のとき、乾燥空気の露点はマイナスであることが好ましい。露点が低く、乾燥した空気であるほど、脱水材から水分を乾燥する乾燥時間が短くなるからである。露点を低くするためには、コンプレッサ21を用いるのが好ましい。また、コンプレッサ21の下流にエアードライヤ等を設置することで乾燥用空気の露点を更に下げることがより好ましい。若しくは、コンプレッサ21の下流にヒータ等を設置することで、乾燥用空気を40〜80℃に加温することがより好ましい。更に、エアードライヤ等とヒータ等を組み合わせて露点の低い加熱空気を乾燥ガスとして用いることがさらに好ましい。
【0024】
上記の脱水工程→水パージ工程→乾燥工程を連続的に繰り返すことで、水分を含有する有機溶剤から水分を効果的、且つ経済的に脱水除去できる装置となる。かかる連続的な脱水−空気乾燥により、低コストで、安定に、高い能力で有機溶剤中の水分を除去することができる。
【0025】
本実施の形態における脱水材は、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を母体構造とする強酸性陽イオン交換樹脂であり、強酸性基がスルホン酸ナトリウム基(−SONa)であり、水分含有率が20〜42重量%である。好ましい水分含有率は、23〜40重量%である。
【0026】
陽イオン交換樹脂において、水分含有率と架橋度は密接な関係にあり、一般的には水分含有率が大きくなると架橋度は低くなる。
【0027】
水分含有率が20重量%未満の場合、すなわち架橋度が高い場合は、脱水工程後の脱水材の乾燥時に、乾燥速度を上げると脱水材の内外層の水分含有量の違いにより脱水材が破壊され、有機溶剤脱水装置の脱水能力を低下させる問題が発生する。水分含有率が42重量%を超える場合、すなわち架橋度が低い場合は、物理的強度が弱すぎて実際に使用することが困難となる。
【0028】
陽イオン交換樹脂において、中性塩分解容量と架橋度とは、一般に、架橋度が高くなると中性塩分解容量が大きくなるという傾向がある。そのため、本発明における脱水材は、中性塩分解容量によって規定することもできる。すなわち、本発明の脱水材は、中性塩分解容量が1.9〜2.3meq/ml−Rである強酸性陽イオン交換樹脂が好ましいと言える。
【0029】
本実施の形態にかかる脱水材の運転は、図2のように二つの脱水槽1,31また、二つ以上設けた連続除去可能なシステムを採用することが好ましいが、除去すべき含有水分の量、被処理有機溶剤の量等を勘案して、間欠運転としてもよい。含有水分の量あるいは被処理有機溶剤の量が少ない条件では、連続運転であることまで要求されず、運転コストを削減できるからである。
【0030】
本実施の形態において脱水可能な有機溶剤は、酢酸エチル、酢酸メチル、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロメタン等特に限定されるものではなく、多種の有機溶剤において適応可能である。
【0031】
本実施の形態において脱水可能な有機溶剤は、フィルムを積層させるドライラミネート工程等、多分野における工場等から排出される有機溶剤を含有したガスを、溶剤回収処理装置を用いて回収される有機溶剤にも適応可能である。
【0032】
たとえば、図3に示すような有機溶剤回収処理装置は、被処理ガス41がファン42より導入されて吸着塔43に充填されている活性炭素繊維エレメント44で有機溶剤を吸着し、清浄ガス46として外気に排出される吸着工程と、活性炭素繊維エレメント44にスチーム45を導入することで有機溶剤を脱着し、コンデンサ47で冷却凝縮してセパレータ48で溶剤と水を分離し、回収溶剤49を回収する脱着工程があり、吸着工程と脱着工程とを交互に行うことで連続的に処理可能なシステムである。
【0033】
このタイプの溶剤回収処理装置は脱着にスチームを用いることや、冷却凝縮をすることから回収溶剤中に水分が混入することから、本実施の形態における有機溶剤脱水装置を適用することで、回収溶剤から水分を効果的に除去することが可能である。
【0034】
なお、図1および図2に示す有機溶剤脱水装置において、洗浄水排出経路である水または乾燥空気排出ライン26に排出された洗浄水を洗浄水導入経路である水または乾燥空気導入ライン23に導入するために、乾燥空気排出ライン26から水タンク11分岐する洗浄水循環経路51を設けても良い。洗浄水循環経路51のラインの開閉は、ダンパ52により制御される。
【0035】
(実施例)
以下、各実施例1から3、および比較例1から2により本発明に基づいた実施の形態における有機溶剤脱水装置の詳細を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、図4に、実施例1から実施例3、および比較例1から比較例2に用いられる脱水材の諸条件を示す。
【0036】
(陽イオン交換樹脂の平均粒径)
球状の陽イオン交換樹脂の測定は、日本工業規格(JIS Z 8825−1)に規定される「粒子径解析 レーザー回折法」に基づき、粒度分布測定機器(HORIBA LA−950V2)を用いて行なった。
【0037】
(水分含有率)
十分な水に陽イオン交換樹脂を浸し、室温で3時間静置した。その後、なるべく水が入らないように樹脂を取り出し、メスシリンダーで正確に10.0mlを取り、テーブルトップ遠心機4000(久保田商事)で室温、200rpm、10分間遠心分離して脱水した。
【0038】
この脱水した樹脂を全量秤量瓶に移し、重量を測定した。脱水した陽イオン交換樹脂の入った該全量秤量瓶を50℃で8時間真空乾燥し、真空乾燥させた陽イオン交換樹脂の重量を測定した。そして、脱水後の重量Aと、真空乾燥後の重量Bから、陽イオン交換樹脂の水分含有率を算出した。水分含有率=(A−B)/A×100(%)
(中性塩分解容量)
陽イオン交換樹脂をカラムに詰め、これに樹脂容量の25倍量の2N−HCl水溶液を通液し、対イオンをH形に変換し、脱塩水で水洗する。この樹脂を10.0ml採り、ガラスカラムに充填し、洗浄濾液が中性になるまで十分に脱塩水で洗浄する。その後5%NaCl水溶液を25倍量通液し流出液を全て捕集する。この流出液を1N−塩酸で滴定することにより、中性塩分解容量を測定する。これを1mlの樹脂当たりに換算し、体積当たりの中性塩分解容量を算出する。
【0039】
(水分除去性能低下率)
サンプリングした溶剤をカールフィッシャー分析法を用いて溶剤中の水分濃度を測定する。入口水分濃度は、脱水槽に導入される直前の溶剤をサンプリングする。出口平均水分濃度は、脱水槽で所定サイクル処理を実施後に脱水槽から排出された溶剤を、十分攪拌し、水分濃度を均一化させ、サンプリングした。
【0040】
水分除去性能低下率は、上記で測定した水分濃度を用い、以下の式から計算で求めた。
水分除去性能低下率=100−{(入口水分濃度−100サイクル目の出口平均水分濃度)/(入口水分濃度−10サイクル目の出口平均水分濃度)}×100(%)
(乾燥風量低下率)
乾燥風量の測定は、乾燥工程終了1分前にアネモマスター風速・風量計MODEL6034(日本カノマックス株式会社製)で測定した。
【0041】
乾燥風量低下率は、上記で測定した乾燥風量を用い、以下の式から計算で求めた。
乾燥風量低下率=100−(100サイクル目の乾燥風量/10サイクル目の乾燥風量)×100(%)
<実施例1>
図1の溶剤脱水装置において、脱水槽1に用いられる脱水材としてSK10(三菱化学株式会社製)の球状の陽イオン交換樹脂であり、水分含有率は40重量%で、中性塩分解容量は2.1meq/ml−Rを使用した。
【0042】
該陽イオン交換樹脂21kgを脱水槽1に充填させ、溶剤脱水工程として、水分3重量%、酢酸エチル97重量%の混合液を20L/hrで被処理有機溶剤導入ライン3より脱水槽1に導入した。このとき吸着温度は30℃であった。
【0043】
次に、水洗浄工程として、2L/minの水道水を脱水槽1に導入し、脱水材に付着している溶剤を洗浄した。次に、脱着工程として、脱水槽1の最大圧損が90kPaを越えないように風量を調節し、100℃の乾燥加熱空気を脱水槽1に導入した。
【0044】
この溶剤脱水工程→水洗浄工程→脱着工程は4.5hr要し、この工程を10サイクル繰り返したところ、溶剤脱水工程において脱水処理された混合溶剤中の出口の平均水分濃度は0.9重量%まで低減され、このときの脱着工程時の乾燥風量は18m/hrであった。
【0045】
更に、この工程を100サイクル繰り返したところ、溶剤脱水工程において脱水処理された混合溶剤中の出口の平均水分濃度は0.97重量%で、このときの脱着工程時の乾燥風量は16.7m/hrであった。
【0046】
本実施例において、溶剤脱水装置により脱水処理された混合溶剤は、溶剤脱水工程→水洗浄工程→脱着工程を繰り返すことで、脱水処理された混合溶剤中の出口平均水分濃度は0.9から0.97重量%と高い除去性能を維持することが可能であり、安定して高効率で脱水処理が可能であった。
【0047】
<実施例2>
図1の溶剤脱水装置において、脱水槽1に用いられる脱水材としてSK12(三菱化学株式会社製)の球状の陽イオン交換樹脂であり、水分含有率は36重量%で、中性塩分解容量は2.15meq/ml−Rを使用した。
【0048】
該陽イオン交換樹脂21kgを脱水槽1に充填させ、溶剤脱水工程として、水分3重量%、酢酸エチル80重量%、酢酸n−プロピル17重量%の混合液を20L/hrで被処理有機溶剤導入ライン3より脱水槽1に導入した。このとき吸着温度は30℃であった。
【0049】
次に、水洗浄工程として、2L/minの水道水を脱水槽1に導入し、脱水材に付着している溶剤を洗浄した。次に、脱着工程として、脱水槽1の最大圧損が90kPaを越えないように風量を調節し、100℃の乾燥加熱空気を脱水槽1に導入した。
【0050】
この溶剤脱水工程→水洗浄工程→脱着工程は4.5hr要し、この工程を10サイクル繰り返したところ、溶剤脱水工程において脱水処理された混合溶剤中の出口の平均水分濃度は0.95重量%まで低減され、このときの脱着工程時の乾燥風量は16m/hrであった。
【0051】
更に、この工程を100サイクル繰り返したところ、溶剤脱水工程において脱水処理された混合溶剤中の出口の平均水分濃度は1.0重量%で、このときの脱着工程時の乾燥風量は15.1m/hrであった。
【0052】
本実施例において、溶剤脱水装置により脱水処理された混合溶剤は、溶剤脱水工程→水洗浄工程→脱着工程を繰り返すことで、脱水処理された混合溶剤中の出口平均水分濃度は0.95から1.0重量%と高い除去性能を維持することが可能であり、安定して高効率で脱水処理が可能であった。
【0053】
<実施例3>
図1の溶剤脱水装置において、脱水槽1に用いられる脱水材としてSK16(三菱化学株式会社製)の球状の陽イオン交換樹脂であり、水分含有率は23重量%で、中性塩分解容量は2.15meq/ml−Rを使用した。
【0054】
該陽イオン交換樹脂21kgを脱水槽1に充填させ、溶剤脱水工程として、水分2重量%、塩化メチレン88重量%、メタノール10重量%の混合液を20L/hrで被処理有機溶剤導入ライン3より脱水槽1に導入した。このとき吸着温度は30℃であった。
【0055】
次に、水洗浄工程として、2L/minの水道水を脱水槽1に導入し、脱水材に付着している溶剤を洗浄した。次に、脱着工程として、脱水槽1の最大圧損が90kPaを越えないように風量を調節し、100℃の乾燥加熱空気を脱水槽1に導入した。
【0056】
この溶剤脱水工程→水洗浄工程→脱着工程は4.5hr要し、この工程を10サイクル繰り返したところ、溶剤脱水工程において脱水処理された混合溶剤中の出口の平均水分濃度は0.5重量%まで低減され、このときの脱着工程時の乾燥風量は14m/hrであった。
【0057】
更に、この工程を100サイクル繰り返したところ、溶剤脱水工程において脱水処理された混合溶剤中の出口の平均水分濃度は0.55重量%で、このときの脱着工程時の乾燥風量は13.3m/hrであった。
【0058】
本実施例において、溶剤脱水装置により脱水処理された混合溶剤は、溶剤脱水工程→水洗浄工程→脱着工程を繰り返すことで、脱水処理された混合溶剤中の出口平均水分濃度は0.5から0.55重量%と高い除去性能を維持することが可能であり、安定して高効率で脱水処理が可能であった。
【0059】
<比較例1>
図1の溶剤脱水装置において、脱水槽1に用いられる脱水材としてSK04(三菱化学株式会社製)の球状の陽イオン交換樹脂であり、水分含有率は59重量%で、中性塩分解容量は1.25meq/ml−Rを使用した。
【0060】
該陽イオン交換樹脂21kgを脱水槽1に充填させ、溶剤脱水工程として、水分3重量%、酢酸エチル97重量%の混合液を20L/hrで被処理有機溶剤導入ライン3より脱水槽1に導入した。このとき吸着温度は30℃であった。
【0061】
次に、水洗浄工程として、2L/minの水道水を脱水槽1に導入し、脱水材に付着している溶剤を洗浄した。次に、脱着工程として、脱水槽1の最大圧損が90kPaを越えないように風量を調節し、100℃の乾燥加熱空気を脱水槽1に導入した。
【0062】
この溶剤脱水工程→水洗浄工程→脱着工程は4.5hr要し、この工程を10サイクル繰り返したところ、溶剤脱水工程において脱水処理された混合溶剤中の出口の平均水分濃度は0.75重量%まで低減され、このときの脱着工程時の乾燥風量は22m/hrであった。
【0063】
更に、この工程を100サイクル繰り返したところ、溶剤脱水工程において脱水処理された混合溶剤中の出口の平均水分濃度は2.0重量%で、このときの脱着工程時の乾燥風量は10m/hrであった。
【0064】
本実施例において、溶剤脱水装置により脱水処理された混合溶剤は、溶剤脱水工程→水洗浄工程→脱着工程を繰り返すことで、脱水処理された混合溶剤中の出口平均水分濃度は0.75から2.0重量%に上昇した。
【0065】
<比較例2>
図1の溶剤脱水装置において、脱水槽1に用いられる脱水材としてSK1B(三菱化学株式会社製)の球状の陽イオン交換樹脂であり、水分含有率は45重量%で、中性塩分解容量は1.87meq/ml−Rを使用した。
【0066】
該陽イオン交換樹脂21kgを脱水槽1に充填させ、溶剤脱水工程として、水分2重量%、塩化メチレン88重量%、メタノール10重量%の混合液を20L/hrで被処理有機溶剤導入ライン3より脱水槽1に導入した。このとき吸着温度は30℃であった。
【0067】
次に、水洗浄工程として、2L/minの水道水を脱水槽1に導入し、脱水材に付着している溶剤を洗浄した。次に、脱着工程として、脱水槽1の最大圧損が90kPaを越えないように風量を調節し、100℃の乾燥加熱空気を脱水槽1に導入した。
【0068】
この溶剤脱水工程→水洗浄工程→脱着工程は4.5hr要し、この工程を10サイクル繰り返したところ、溶剤脱水工程において脱水処理された混合溶剤中の出口の平均水分濃度は0.5重量%まで低減され、このときの脱着工程時の乾燥風量は19m/hrであった。
【0069】
更に、この工程を100サイクル繰り返したところ、溶剤脱水工程において脱水処理された混合溶剤中の出口の平均水分濃度は1.1重量%で、このときの脱着工程時の乾燥風量は12.5m/hrであった。
【0070】
本実施例において、溶剤脱水装置により脱水処理された混合溶剤は、溶剤脱水工程→水洗浄工程→脱着工程を繰り返すことで、脱水処理された混合溶剤中の出口平均水分濃度は0.5から1.1重量%に上昇した。
【0071】
今回開示した上記実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の有機溶剤脱水装置は、溶剤の連続精製を実現し、基本的に脱水材の交換が必要なく、多量の水分を高効率かつ安定に除去することができる有機溶剤脱水装置であるため、設備増大を必要とせずに、脱水材交換作業を省略でき、コスト低減、水分安定除去できる。これより、特に研究所や工場等の幅広い分野から発生する排ガスから溶剤回収処理装置を用いて回収される溶剤の脱水に利用することができ、産業界に寄与することが大である。
【符号の説明】
【0073】
1 脱水槽、2 被処理有機溶剤タンク、3 被処理有機溶剤導入ライン、4,13,22,24,27,52 ダンパ、6 精製有機溶剤排出ライン、7 精製有機溶剤タンク、11 水タンク、12 水ポンプ、21 コンプレッサ、23 乾燥空気導入ライン、26 乾燥空気排出ライン、28 ライン、41 被処理ガス、42 ファン、43 吸着塔、44 活性炭素繊維エレメント、45 スチーム、46 清浄ガス、47 コンデンサ、48 セパレータ、49 回収溶剤、51 洗浄水循環経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含有した被処理有機溶剤を脱水材に導入させ接触させることにより、前記被処理有機溶剤に含有している水分を脱水除去する有機溶剤脱水装置であって、
前記脱水材は、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体を母体構造とする強酸性陽イオン交換樹脂であり、強酸性基がスルホン酸ナトリウム基であり、水分含有率が20〜42重量%である、有機溶剤脱水装置。
【請求項2】
前記脱水材が充填される脱水槽と、
前記脱水槽に前記被処理有機溶剤を導入する被処理有機溶剤導入経路と、
前記脱水槽に不活性ガスを導入する不活性ガス導入経路と、
前記脱水槽に乾燥用の空気を導入する乾燥空気導入路と含む、請求項1に記載の有機溶剤脱水装置。
【請求項3】
前記脱水槽に洗浄水を導入する洗浄水導入経路と、
前記脱水槽から前記洗浄水を排出する洗浄水排出経路とをさらに含む、請求項2に記載の有機溶剤脱水装置。
【請求項4】
前記洗浄水導入経路は、前記洗浄水排出経路に排出された前記洗浄水を前記洗浄水導入経路に導入する洗浄水循環経路を有する、請求項3に記載の有機溶剤脱水装置。
【請求項5】
前記脱水槽は、第1脱水槽と第2脱水槽とを含み、
前記乾燥空気導入路により前記第1脱水槽に乾燥用の空気を導入する際には、前記被処理有機溶剤導入経路により前記第2脱水槽に前記被処理有機溶剤が導入され、
前記乾燥空気導入路により前記第2脱水槽に乾燥用の空気を導入する際には、前記被処理有機溶剤導入経路により前記第1脱水槽に前記被処理有機溶剤が導入されることで、連続的に前記被処理有機溶剤を脱水材に導入させ接触させることにより、前記被処理有機溶剤に含有している水分の脱水除去を可能とする、請求項2から4のいずれかに記載の有機溶剤脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−46889(P2013−46889A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185814(P2011−185814)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】