説明

有機物の炭化による無機質炭素素材としての二酸化炭素の固定方法

【課題】過去に光合成により、有機物に固定された化石燃料等の炭素が、燃焼等により二酸化炭素として大気に戻り、地球温暖化問題を引き起こしているため、大気中の二酸化炭素の量を削減する。
【解決手段】有機物が炭化される際、分解熱として吸熱反応となる為、熱源として化石燃料が必要となり、二酸化炭素が排出される。しかし、炭化は、最初に温度を加えると後は自己発熱により炭化が進行する。その為、生成物としての無機炭素の二酸化炭素換算量よりも、炭化物製造の際の熱量や発生する一酸化二窒素(NO)等の温暖化ガスの二酸化炭素換算値が少ない炭化炉により、製造される炭化製品の二酸化炭素の排出量は、生成物としての無機炭素の二酸化炭素換算量よりも少なくなる。その差が、土壌固定としての大気中から削減できる二酸化炭素の有効量となり、大気中の二酸化炭素の削減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物系廃棄物等の有機物を炭化する時に必要な熱量や温暖化ガスとしての二酸化炭素(CO)換算排出量は、有機物の熱分解により、炭化され生成される炭素の二酸化炭素換算量よりも少なく、その差を、土壌改良材等の無機質炭素素材として利用する二酸化炭素の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
残飯、剪定枝、下水汚泥等の有機物系の廃棄物の処理方法として、炭化する事により安定化し、様々に再利用する従来技術がある。また、炭焼き等の有機物の炭化技術がある。
【0003】
これらの技術の生成物である炭化製品は、脱臭剤利用や緑農地に肥料等として利用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機物における炭素は、太陽の電磁波をエネルギーとして、光合成により、空気中の二酸化炭素が固定されたものである。その炭素は分解生物の呼吸作用等によって分解され、二酸化炭素として大気に戻る。また、分解されなかった一部は、土壌に固定される。過去に固定された化石燃料等の炭素が、燃焼等により二酸化炭素として大気に戻り、近年急激な大気中の二酸化炭素の量を増やし、地球温暖化問題を引き起こしている。大気中の二酸化炭素の量を削減しなければならない。
【0005】
本発明は、有機物を炭化して、無機質の炭素として安定化させ、無機質炭素素材として利用し、土壌に固定し、大気中に放出せず、永続性を維持し、大気中の二酸化炭素削減に寄与しようと言うものである。
【問題を解決する為の手段】
【0006】
有機物が炭化される際、分解熱として吸熱反応となる為、熱源として化石燃料が必要となり、二酸化炭素が排出される。しかし、炭化は、最初に温度を加えると後は自己発熱により炭化が進行する。その為、二酸化炭素の排出量は生成物としての無機炭素の二酸化炭素換算量よりも少なくなる事がある。
【0007】
上述の目的の達成の為には、生成物としての無機炭素の二酸化炭素換算量よりも、炭化物製造の際の熱量や発生する一酸化二窒素(NO)等の温暖化ガスの二酸化炭素換算値が少ない炭化炉により、製造される必要がある。
【0008】
有機物の含水率が少ない程、炭化する熱量すなわち二酸化炭素の排出量は少なくなる。利用が予想される有機系廃棄物の中で、効率が悪い(含水率の高い)脱水下水汚泥を例にとると(財)下水道新技術推進機構によれば、実験炭化炉のCO2換算排出量は、約200KgCO/wet−t(含水率80%)とされる。炭化製品の炭素の含有率は42〜48%とされる。これらの数値をリーケージ等を含まず(少量と考えられる為)、炭素含有率45%で単純計算すると、脱水下水汚泥(含水率80%)1トン当りの炭化製品の炭素量は、330KgCOとなり、差し引き約130KgCOが土壌固定としての二酸化炭素の有効量となり、土壌に固定されると、大気中の二酸化炭素の削減量となる。大気中の二酸化炭素の削減により、地球温暖化防止に寄与できる。
【発明の効果】
【0009】
炭素は安定な物質である為、炭素製品を土壌改良材として利用する事により、上述の有機系廃棄物からの炭素製品生成に必要な熱量と炭素製品のCO2換算排出量の差を、大気中から固定された二酸化炭素として、土壌に炭素として永続性を持った固定ができる。その分、大気からの二酸化炭素が削除でき、地球温暖化対策に寄与できる。また、カーボン・クレジットとしての商品価値を持つ。
【0010】
無機質炭素素材は、その物理特性として、▲1▼土壌の透水性の改善、▲2▼土壌の保水性の改善、▲3▼土壌の通気性の改善などがある。その為、農業用地の改善、建設用土の改善、建設残土の改善等に有効利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物の炭化は、最初に温度を加えると後は自己発熱により炭化が進行する。少ない熱量で無機質炭素が生成される。有機系廃棄物等の有機物を炭化炉により炭化製品とするに当り、炭化製品製造の際の熱量や発生する一酸化二窒素(NO)等の温暖化ガスの二酸化炭素換算値が、炭化製品製造の二酸化炭素排出量となる。炭化製品としての無機質炭素の二酸化炭素換算量よりも、炭化製品製造の二酸化炭素排出量が少ない炭化製品は、その差が炭化製品に固定された二酸化炭素となる。その様な製造方法によって作られた炭化製品(無機質炭素)が、土壌改良材などとして有効利用され、土壌に固定されると永続性のある大気中の二酸化炭素の削減となる。大気中の二酸化炭素の削減により、地球温暖化防止に寄与できる事を特徴とする有機物の炭化による無機質炭素素材としての二酸化炭素の固定方法。
【請求項2】
無機質炭素素材は、農業用地の改善、建設用土の改善、建設残土の改善等に有効利用し、土壌中に安定に固定できる。請求項1の方法による有機物の炭素を無機質の炭素として、土壌固定する事は、大気中の二酸化炭素の削減となる。大気中の二酸化炭素の削減により、地球温暖化防止に寄与できる事を特徴とする有機物の炭化による無機質炭素素材としての二酸化炭素の固定方法。

【公開番号】特開2012−200723(P2012−200723A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86768(P2011−86768)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(507018447)
【Fターム(参考)】