説明

有機物を含有した排水の生物分解処理装置

【課題】好気性菌と嫌気性菌による生物分解処理によって迅速且つ効率的に排水中の有機物の消滅を図る。
【解決手段】有機物を含有した排水の生物分解処理装置10は、有機物を含有した排水W1が一方側において導管12Aを介して内部に供給され、処理水W2が他方側から導管12Bを介して排出されるもので、周壁11a〜12cと凹んだ個所を備えた底壁12eとを有したハウジング11と、その内部に、供給排水が上から流入できるようにハウジング上端から下げて且つ周壁11aから離れて搭載され、多数の上下方向に連通した通路13aを有し、それら通路に流入排水中の有機物を生物分解処理する好気性菌と嫌気性菌とを生息させている処理コア13と、排水供給導管に隣接してハウジング内部において下方から多数の気泡abを上昇させて、周囲の供給排水を上昇させて処理コアへ上から流入させ循環を促進するように排水供給導管に隣接して配管された送気管14とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、し尿処理場や下水処理場、食品加工場などからの排水に含有される有機物を好気性菌や嫌気性菌などによって生物分解処理する有機物を含有した排水生物分解処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有機物を含有した廃水の処理としては、下水、し尿、各種産業廃水などの有機性排水に含有された窒素酸化物をメタン発酵菌のグラニュール汚泥床を有した嫌気性処理槽内で上向流で流通させつつ、脱窒菌をグラニュール汚泥の周りで繁殖させ、生物学的に還元して脱窒処理する生物学的脱窒方法がある(特許文献1を参照)。これは、菌体自体をグラニュール化して菌体を高い密度で保持でき、高容積負荷での運転ができる。
【特許文献1】特開平7−290088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような生物学的脱窒方法では、被処理物の浮遊有機物自体が数ミリメートルから0.1ミリメートル程の粒状物やフレークであり、それに作用する菌もグラニュール状態では、例え高密度接触を図っても作用効果は限定的である。他方、脱窒菌着生のグラニュール汚泥が短期間で形成され、安定したグラニュール汚泥床が維持できる分、汚泥が比較的早く蓄積していき、その汚泥の処置も重要な課題である。また、被処理物の浮遊有機物に対しては嫌気性処理ばかりでなく、嫌気性処理も行って迅速な有機物の消滅を図ることも課題である。
【0004】
本願発明の目的は、排水中の有機物を最初に溶解酸素の多い状態で好気性菌によって生物分解処理し、次いで酸素の消費された状態で嫌気性菌によって循環過程で生物分解処理して迅速且つ効率的に有機物の消滅を図ると共に、生物分解処理で生じる活性汚泥も生物分解処理可能な生物分解処理装置を提供すると共に、高圧ポンプによって発生される少なくとも8m/秒の高速度旋回水流が複数の筒壁から成る環状流路で起こす少なくとも剪断作用によって水クラスタも有機物も超微細化し、超微細化によって単位重量当り極めて大きくなった表面積の浮遊有機物を微生物によって効率的に極めて短時間で連続的に処理し、排水中の有機物の処理能力を大幅に高められると共に、超微細化によって生物分解処理で生じる活性汚泥の微生物死骸の細胞膜を破壊して細胞質を微生物で処理し、汚泥等の沈殿物を大幅に減容させるたり、消滅してしまう有機物を含有した排水の生物分解処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下水や食品加工場からの排水などの有機物を含有した排水が一方側において導管を介して内部に供給され、有機物が少なくとも部分的に消滅処理された処理水が他方側から導管を介して排出されるもので、少なくとも周壁と凹んだ個所を備えた底壁とを有したハウジングと、
該ハウジングの内部に、供給排水が上から流入できるようにハウジング上端から下げて搭載され、多数の上下方向に連通した多数の通路を有し、それら通路に流入排水中の有機物を生物分解処理する微生物を生息させている処理手段と、
上記排水供給導管に隣接して上記ハウジングの内部において下方から多数の気泡を上昇させて、周囲の供給排水を下降を許容しつつも上昇させて上記処理手段への上からの流入を促進して循環させるように上記排水供給導管に隣接して配管された送気管と、から構成されていることを特徴とする有機物を含有した排水の生物分解処理装置である。
【0006】
上記有機物を含有した排水は、外円筒体と内円筒体との間の環状空間において少なくとも8m/秒の高速旋回流を起こして、その高速旋回流の少なくとも剪断作用によってミクロンレベルまで超微細化処理する超微細化装置によって有機物と水クラスタとが超微細化されてから、受水槽に一旦受けてから比較的低速度で本生物分解処理装置に供給される。
【0007】
上記ハウジングは、ほぼ矩形状の横断面を成す上記周壁と角錐状を成す上記凹んだ個所を備えた底壁とを有した上方に開放したハウジングであり、上記排水供給導管は、一方の隅の近傍に配置され且つ上記処理水排出導管は、排水供給導管に対向した隅の近傍に配置されて、また上記凹んだ個所の最低部に蓄積した汚泥などの沈殿物を排出する導管が接続される。
【0008】
上記記沈殿物の排出導管は、定期的に開閉する又は運転中に常時開放された開閉弁を有しており、沈殿物はタンクに一旦収集された後で、そのタンクから供給される超微細化装置によって超微細化され、超微細化された後で直接に、又は上記受水槽に一旦受けてから本生物分解処理装置に戻される。
【0009】
上記処理手段は、その上部に好気性菌が生息した多孔性膜と、その下部に嫌気性菌が生息した多孔性膜と、及び/若しくはその通路に充填された微生物の生息した充填材と、上記ハウジングの少なくとも他方側の周壁から本処理手段を支持する支持フレームとを有しており、該支持フレームによって該処理手段の下端で開口する上記処理水排出導管を支持する。
【0010】
本生物分解処理装置は、前の装置の処理水排出導管が後ろの装置の排水供給導管に接続された状態で複数連設され、最初の装置の排水供給導管が、上記受水槽から排水が供給され、最後の装置の処理水排出導管が、上記受水槽に処理水を排出するか、又は河川等に排出するように配管される。
【0011】
上記超微細化装置は、受水槽に又は上記タンクに接続されていて、また外円筒体でケーシングを形成し、そのケーシング内部に同心状に、又は筒体同士が接触せずに流路を形成する程度に偏心状に内円筒体を隔設し、内円筒体をケーシング底壁と結合し且つケーシング天井壁に対して隙間を形成することで、外円筒体と内円筒体とで形成した環状空間と内円筒体の内部とを上記隙間を介して連通しており、また第一ポンプによって上記受水槽又は上記タンクから上記内円筒体の内部に有機物又は汚泥等の沈殿物を含有した第一高速度水流が供給され、次いで該内円筒体の内部から第二ポンプによって吸引されて高速度で吐出されて形成される第二高速度水流が第二水導入部において上記環状空間に供給されて、次いで上記内円筒体の上端からその内部に急激に落下されてケーシング底壁に激突させるようにしており、上記環状空間と上記内円筒体の内部に渡って形成した循環流路において水流中の有機物や沈殿物の汚泥微生物の死骸細胞膜等を破壊し、有機物又は沈殿物が超微細化された処理水を上記環状流路から一部分抜いて上記受水槽又は上記タンクに排出する構造を有することができる。
【0012】
上記超微細化装置は、上記受水槽に又は上記タンクに流体接続されていて、そのケーシングの外壁を外円筒体で形成し、そのケーシング内部に同心状に、又は筒壁同士が接触せずに流路を形成する程度に偏心状に中間円筒体と内円筒体の二つを隔設し、中間円筒体をケーシング天井壁とケーシング底壁に結合して外環状空間を形成し、内円筒体をケーシング底壁と結合し且つケーシング天井壁に対して隙間を形成することで、中間円筒体と内円筒体とで形成した中間環状空間と内円筒体の内部とを上記隙間を介して連通しており、また上記受水槽又上記タンクから第一水導入部において、第一ポンプによって発生された有機物又は汚泥等の沈殿物を含有した第一高速度水流が空気導入部のエジェクターに供給されて、そこで空気が第一高速度水流に気泡として導入され、該気泡の導入された第一高速度水流は上記中間環状空間に供給され、次いで上記内円筒体の上端からその内部に急激に落下されてケーシング底壁に激突させ、また該内円筒体の内部から第二ポンプによって吸引されて高速度で吐出されて形成される第二高速度水流が第二水導入部において上記外環状空間に供給されるようにして、更に該外環状空間を上記第一ポンプの吸引側に管路を介して接続して形成される循環路を流れるようにされ、この循環路を成す上記中間環状空間及び上記外環状空間での剪断作用と上記ケーシング底壁への激突とによって水中の有機物又は沈殿物の汚泥微生物細胞膜等を破壊して超微細化し、超微細化された有機物又は汚泥等の沈殿物を含有した処理水が上記外環状空間から一部分抜かれて上記受水槽又は上記タンクに導かれる構造を有することができる。
【0013】
上記装置ケーシング内部において筒壁で限定された環状空間内に供給される高速度の水流は、該環状空間に接線方向から供給される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、本発明の有機物を含有した排水の生物分解処理装置では、少なくとも周壁と凹んだ個所を備えた底壁とを有したハウジングの内部に、ハウジングの一方側から供給された排水が上から流入できるようにハウジング上端から下げて処理手段が搭載されていて、処理手段が、多数の上下方向に連通した細かな通路を有し、それら通路に流入排水中の有機物を生物分解処理する微生物を生息させているために、排水供給導管から供給されて来る排水は、その導管に隣接して配管された送気管からの多数の気泡によって上昇されて多くの空気を含んでから処理手段に上から流入し循環が促進され、多数の通路を下降中に微生物によって、好ましくは空気の多い上部の好気性菌と空気の消耗された下部の嫌気性菌とによって効率的に迅速に連続的に生物分解処理される。かくして、下水や食品加工場からの排水などの有機物を含有した排水がハウジングの一方側で導管を介して内部に供給されると、上述のように処理手段によって有機物が少なくとも部分的に消滅処理された処理水が他方側から導管を介して部分的に似排出されて行く(この排出量と凹んだ個所を備えた底壁からの排出量とが供給量に相応している)。処理手段は、排水の有機物の種類や量に応じて大きさ(処理容量)と流通速度が決められる。
【0015】
上記有機物を含有した排水は、外円筒体と内円筒体との間の環状空間において少なくとも8m/秒の高速旋回流を起こして、その高速旋回流の少なくとも剪断作用によってミクロンレベルまで超微細化処理する超微細化装置によって有機物と水クラスタとが超微細化されてから、本装置に供給されると有機物が超微細化されて単位表面積(比表面積mm2/g)が格段に大きく成っており、因みに1mmの直径の球状有機物を0.1ミクロンの超微細化すると1万倍の比表面積を有することになり且つ水クラスタも超微細になっているためにその分良く拡散しているために微生物による処理効率が格段に高まり、迅速な処理が行われる。更に、超微細化は高速水流で行われるために受水槽に一旦受けて、水流の勢いを弱めてから生物分解処理に適した比較的低速度で処理装置に供給される。
【0016】
上記ハウジングは、ほぼ矩形状の横断面を成す上記周壁と角錐状を成す上記凹んだ個所を備えた底壁とを有した上方に開放したハウジングとすることで、一方の辺部を排水供給側として排水供給導管を一方の隅の近傍に配置すると共に、処理水排出導管を反対辺部の対向した隅の近傍に配置することができ処理排水の拡散に対応して処理手段を有効に利用できる。また生物分解処理で発生する活性汚泥などの沈殿物を凹んだ個所の最低部に蓄積でき、そこから導管で適宜排出することができる。
【0017】
上記沈殿物の排出導管は、定期的に開閉する電磁弁等の開閉弁を有することで、蓄積速度に応じて開閉タイミングを設定して、沈殿物をタンクに一旦収集させることができる。沈殿物が活性汚泥などの有機物であれば、タンクから超微細化装置に供給して超微細化さし、超微細化後に水流の勢いを弱めて直接に本生物分解処理装置に戻したり、又は上記受水槽に一旦受けてから本生物分解処理装置に戻して消滅させることができる。沈殿物が腐敗しない無機物であれば、埋立できる。開閉弁を運転中に常時開放して沈殿物をタンクに一旦収集させて連続的に超微細化装置に供給する操作も可能である。
【0018】
上記処理手段は、その上部に好気性菌が生息した多孔性膜と、その下部に嫌気性菌が生息した多孔性膜と、上記ハウジングの少なくとも他方側の周壁から本処理手段を支持する支持フレームとを有することで、一方側に排水供給と送気管からの多数の気泡による上昇流の発生のスペースを確保でき、多くの空気を含んだ上部で細かい通路及び多孔性膜に生息する好気性菌によって、空気が消耗された下部で細かい通路及び多孔性膜に生息する嫌気性菌によって、それぞれ好環境下で多くの微生物によって効果的に生物分解処理を行うことができる。支持フレームには、好気性菌が生息した多孔性膜や嫌気性菌が生息した多孔性膜を取りつけることができ、また処理手段の通路に微生物の生息した充填材を充填することで降下流速を弱めて微生物との濃密接触を図ることができる。
【0019】
本生物分解処理装置は、前の装置の処理水排出導管が後ろの装置の排水供給導管に接続された状態で複数連設され、最初の装置の排水供給導管が、上記受水槽から排水が供給され、最後の装置の処理水排出導管が、上記受水槽に処理水を排出するように配管されると、有機物による汚染度合いに応じて本装置を複数連設して排水中の有機物を徹底的に消滅せことができる。
【0020】
上記超微細化装置は、受水槽に又は上記タンクに接続されていて、そこから有機物を含有した水を吸引して超微細化後に戻すことで繰り返し超微細化できる。また外円筒体のケーシングの内部に同心状に、又は筒壁同士が接触せずに流路を形成する程度に偏心状に内部円筒壁を隔設すると、外円筒体と内円筒体との間に環状空間が形成され、そこに供給される高速度水流は流れ方向が常に変化して強力な遠心力を発生させて、外円筒体内面に強く当って大きな圧縮力と内面の層流間に剪断力を生じさせ、同時に内円筒体外面からの層流剥離によってキャビテーションを生じさせて、水クラスタと有機物の超微細化や、汚泥の微生物死骸の細胞膜の破壊と細胞質の超微細化を促進できる。円形環状空間では水流の流速の維持が比較的容易である。また内円筒体を外円筒体の底に結合し且つ外円筒体の天井壁に対して隙間を形成することで、外円筒体と内円筒体とで形成した環状空間と内円筒体の内部とを上記隙間を介して連通し、高速度の水流が環状空間から、また同時に第一ポンプから供給されてくる水流が内円筒体の内部に落下して、底壁に激突して衝撃力によって水のクラスタ及び有機物や汚泥の超微細化を促進する。また第二ポンプによって内円筒体の内部から水を吸引するので、その内部に落下する水流の上記衝撃力をより強いものにできる。第二ポンプによって吸引されて高速度で吐出されて形成される第二高速度水流が上記環状空間に供給されることで、環状空間と内円筒体の内部に渡って循環流路を形成することになり、循環中に繰り返し上記の超微細化を行うことができる。超微細化された有機物や汚泥を含有した処理水は環状空間から一部分抜いて受水槽に供給される。
【0021】
上記超微細化装置は、受水槽に又は上記タンクに接続されていて、そこから有機物を含有した水を吸引して超微細化後に戻すことで繰り返し超微細化できる。また超微細化装置のケーシングを外円筒体で形成し、そのケーシング内部に同心状に、又は筒壁同士が接触せずに流路を形成する程度に偏心状に中間と内部の円筒壁を隔設すると、外部と中間と内部の各円筒体間に外部と中間の環状空間が形成される。これら外部と中間の環状空間に供給される高速度水流は、流れ方向が常に変化して強力な遠心力を発生して各環状空間の外側の壁面に強く当って大きな圧縮力と壁面の層流間に剪断力を生じさせ、同時に内側の壁面から層流剥離を生じさせてキャビテーション作用を発生させ、排水中の有機物や汚泥の超微細化、即ち汚泥の微生物死骸の細胞膜の破壊と細胞質の超微細化を促進できる。円形環状空間では水流の流速の維持が比較的容易である。また中間円筒体をケーシング天井壁とケーシング底壁に結合し、内円筒体をケーシング底壁と結合し且つケーシング天井壁に対して隙間を形成すると、中間環状空間に供給される水流は内円筒体の上端からその内部に急激に落下して、ケーシング底壁に激突して生じる衝撃力によって水のクラスタ及び有機物や汚泥の超微細化を促進する。水流への気泡の導入は、水導入部の内の第一水導入部のエジェクターの空気導入部において、第一ポンプによって発生された第一高速度水流を利用した吸引作用によって行われる。水に吸収された空気は、上記のキャビテーション作用を強力に発生させたり、処理手段の好気性菌を活性化する。この気泡の導入された第一高速度水流は中間環状空間に供給され、次いで上述のように内円筒体の上端からその内部に急激に落下してケーシング底壁に激突するが、該内円筒体の内部から第二ポンプによって吸引されるために、内部に落下する水流の上記衝撃をより強いものにできる。第二ポンプによって吸引され、高速度で吐出されて形成される第二高速度水流が第二水導入部で外環状流路に供給されるようにして、更に該外環状流路から第一ポンプの吸引側に管路を介して供給されることで循環路が形成される。循環を繰り返すことで水クラスタの超微細化と有機物や汚泥の超微細化を所望の度合いまで行うことができる。超微細化された汚泥を含有した処理水は、外環状流路から一部分抜かれて受水槽に供給される。
【0022】
上記装置の内部において円筒体で限定された環状空間内に供給される高速度の水流は、該環状空間に接線方向から供給され、流入速度の損失を少なくして高速旋回流を発生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1及び図2に示すように、本発明の代表的実施形態に係る有機物を含有した排水の生物分解処理装置10は、下水や食品加工場からの排水などの有機物を含有した排水W1が一方側において導管12Aを介して内部に供給され、有機物が少なくとも部分的に消滅処理された処理水が他方側から導管12Bを介して一部排出されるもので、四隅の脚柱9で支持され、ほぼ正方形の横断面を成す周壁11a、11b、11c、11dと角錐状を成す凹んだ個所を備えた底壁11eとで形成された上方に開放したハウジング11と、該ハウジング11の内部に、供給排水が上から流入できるようにハウジング上端から下げ且つ一方側周壁11aから離れて搭載され、多数の上下方向に連通した細かな通路13a、・・・を有し、それら通路に流入排水W1中の有機物を生物分解処理する微生物を生息させている処理コア13と、排水供給導管12Aに隣接してハウジング内部において下方から多数の気泡abを上昇させて、周囲の供給排水W1を下降を許容しつつも大部分を上昇させて処理コア13へ上から流入させて循環を促進するように排水供給導管12Aに隣接して配管された送気管14とから構成されている。排水供給導管12Aは、ハウジング11の一方側の周壁11aの一方の隅の近傍に配置され、処理コア13とのスペースにおいて下向きに排水を供給する短いL形状管から構成されている。排水排出導管12Bは、ハウジング11の他方側の周壁11cの対向した隅の近傍に配置され、処理コア13の底で開口した長いL形状管から構成されている。底壁11eの最低部には、活性汚泥等の蓄積した沈殿物Mを間欠的に排出する開閉弁の電磁弁VE付き導管12Cが接続されている。
【0024】
処理コア13は、その上部に好気性菌が生息した多孔性膜13bと、その下部に嫌気性菌が生息した多孔性膜13cと、ハウジング11の三つの周壁11b、11c、11dから本処理コア13を支持する三つの上下に隔設された支持フレーム13dとを有しており、該支持フレーム13dによってそれら多孔性膜13b、13cと、処理コア13の下端で開口する処理水排出導管12Bとを支持している。処理コア13は、三つの上下に隔設された支持フレーム13dの間で分離して点検・保守できるように上中下の三つのコア13A、13B、13Cから構成されている。供給された排水W1は、多数の上下方向に連通した細かな通路13a、・・・をゆっくりと、例えば0.1から1m/分程度の平均速度で下降して好気性菌と半嫌気性菌と嫌気性菌とによって順次生物分解処理されて処理水W2に成る。生物分解処理の過程で生じる活性汚泥は、沈殿物Mとして底壁11eの最低部に落ちて蓄積していく。更に、処理コア13は、その通路13a、・・・に微生物の生息した充填材(例えば、パビオムーバー用担体[神鋼環境ソリューションの商品名]やヘチマロン、プラスチック粒、石など)を充填した構成をとることができる。
【0025】
送気管14は、空気ポンプ(図示は省略)からの主管14aから分岐してハウジング11の一方側周壁11aの内面に沿って処理コア13の下端まで下方に延びた三本の枝管14bと、各枝管14bの下端でT字状に接続した多孔管14cとを有しており、多孔管14cから多数の気泡abを放出して、周囲の供給排水W1に空気を溶け込ましてからエアーリフト作用で上昇させて処理コア13への上からの流入を促進するが、底部の導管12Cからの排出も許容している。
【0026】
本生物分解処理装置10は、図3に示すように、排水中の有機物の処理度合いや有機物の種類等に対応して必要に応じて、前の装置10の処理水排出導管12Bが後ろの装置10の排水供給導管12Aに接続された状態で複数連設され、最初の装置10の排水供給導管12Aが、有機物を含有した排水Wが供給される受水槽5から、超微細化装置20、30によって有機物と水クラスタが繰り返し超微細化された排水W1が水中ポンプP1によって供給され、最後の装置10の処理水排出導管12Bが、上記受水槽5に再処理のために処理水W2を戻すか、又は河川等へ排出するように配管されている。各装置10からの活性汚泥から成る蓄積沈殿物Mは、タイマー等で制御されて間欠的に排出できるようにしたり、運転中は連続運転ができるように常時開放する開閉弁の電磁弁VE付を備えた導管12Cによってタンク6に処理水W2と共に排出される。タンク6に収集された沈殿物Mは、超微細化装置20、30によって繰り返し超微細化され、タンク6から水中ポンプP2によって各生物分解処理装置10に供給される。他に、タンクを経ずに直接超微細化装置20、30に蓄積沈殿物Mと水を供給し、微細化後に水流の勢いを弱めてから本生物分解処理装置10に戻す構成もとることができる。電磁弁VEは、この場合も、次の形態でも、処理水排出導管12Bからの排出量が筆禍雨滴少ないために排水供給導管12Aからの供給量に対応して排水するように水位制御される。
【0027】
更に、本生物分解処理装置10は、図4に示すように、排水中の有機物の処理度合いや有機物の種類等に対応して必要に応じて、前の装置10の処理水排出導管12Bが後ろの装置10の排水供給導管12Aに接続された状態で複数連設され、最初の装置10の排水供給導管12Aが、有機物を含有した排水Wが供給される受水槽5から、超微細化装置20、30によって有機物と水クラスタが繰り返し超微細化された排水W1が水中ポンプP1によって供給され、最後の装置10の処理水排出導管12Bが、上記受水槽5に再処理のために処理水W2を戻すか、又は河川等へ排出するように配管されている。各装置10からの活性汚泥から成る蓄積沈殿物Mは、タイマー等で制御されて間欠的に排出できるようにしたり、運転中は連続運転ができるように常時開放する開閉弁の電磁弁VE付を備えた導管12Cによって受水槽5に処理水W2と共に排出される。受水槽5に送られた沈殿物Mは、排水Wの有機物と共に超微細化装置20、30によって繰り返し超微細化されて受水槽5から水中ポンプP1によって排水W1と共に各生物分解処理装置10に供給される。この構成は、超微細化装置20、30が一台で済む。
【0028】
超微細化装置20は、図5に示す第一の形態では、受水槽5内部の高圧水中ポンプP3によって高速度で供給される水流w0に空気を気泡として導入する空気導入部22を水導入部21に有しており、本装置ケーシング23の外円筒体23aの内部において内円筒体24で限定された筒壁内部26に気泡含有水流w1が供給され、また内円筒体24の外側の環状流路25内に更に第二ポンプP4によって高速度の水流w2が少なくとも8m/秒、好ましくは30m/秒以上の流速で供給され、流れ方向変更部での衝撃力、筒壁面近傍での剪断力及びキャビテーション作用によって有機物(以下、汚泥も含むものとする)と水クラスタを超微細化すると共に水流に導入された気泡を数ミクロン前後に超微細化して水流に含有させてから処理水wとして水排出部29から受水槽5に戻す。
【0029】
この第一の形態の処理水供給装置20は、そのケーシング23の外円筒体23aの内部に同心状に内円筒体24を隔設し、内円筒体24の下端をケ外円筒体底壁23bに結合し且つ外円筒体の天井壁23cに対して隙間Cを形成することで、外円筒体23aと内円筒体24とで形成した環状空間25と内円筒体24の内部26とを隙間Cを介して連通している。また受水槽5の内部の高圧水中ポンプP3によって供給されてくる高速水流w0を利用して第一水導入部21に設けられた空気導入部のエジェクター22で空気Aを水流w0に気泡として混入させ、外円筒体の天井壁23cの中央部から気泡混入の第一高速度水流w1を内円筒体24の内部26に供給している。次いで、本装置20は、内円筒体の内部26の下部から高圧第二ポンプP4によって吸引され高速度で吐出されて形成される第二高速度水流w2を外円筒体23aの下部に設けた第二水導入部27から環状空間25にほぼ接線方向から供給し、次いで内円筒体24の上端の隙間Cからその内部26に急激に落下させて外円筒体底壁23bに激突させるようにしており、かくして、環状空間25と内円筒体の内部26に渡って形成した循環流路において上述のような作用で有機物と水クラスタを超微細化すると共に水流中の気泡を超微細化し、超微細な気泡を含有した処理水wを外円筒体23aの上部に設けた水排出部29において環状空間から一部分抜いて受水槽5に戻す。
【0030】
別の超微細化装置30は、図6に示す第二の形態では、ケーシング33の外円筒体33aの内部に同心状に中間円筒体34Aと内円筒体34Bの二つを隔設し、中間円筒体34Aの上端を外円筒体の天井壁33cに、下端を外円筒体の底壁33bに結合して外環状空間35Aを形成し、内円筒体34Bの下端を外円筒体の底壁33bに結合し且つ外円筒体の天井壁33cに対して隙間Cを形成することで、中間円筒体34Aと内円筒体33Bとで形成した中間環状空間35Bと内円筒体の内部36とを隙間Cを介して連通している。また水導入部の内の第一水導入部31において、本装置30の近くに配置した高圧第一ポンプP3’によって受水槽5の内部の排水Wを吸引して発生した第一高速度水流w0が空気導入部のエジェクター32に供給されて、そこで空気Aが第一高速度水流w0に気泡として導入され、該気泡の導入された高速度水流w1は中間環状空間35Bに接線方向から供給され、次いで内円筒体34Bの上端からその内部36に急激に落下されて外円筒体の底壁33bに激突させ、また該内円筒体の内部36から高圧第二ポンプP4によって吸引されて高速度で吐出されて形成される第二高速度水流w2が第二導入部37で外環状空間35Aに接線方向から供給されるようにしている。本装置30は、更に外環状空間35Aを第一ポンプP3’の吸引側に管路pを介して接続して形成される循環路に水流w1、w2が繰り返し流されるようにし、この循環路を成す中間環状流路35B及び外環状流路35Aでの剪断作用とキャビテーション作用と、外円筒体の底壁33bへの激突とによって有機物と水クラスタが超微細化されると共に水流中の気泡が超微細化され、超微細な気泡を含有した処理水wが水排出部39において外環状空間35Aから一部分抜かれて受水槽5に戻される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の代表的な実施形態の有機物を含有した排水の生物分解処理装置の縦断面図。
【図2】同生物分解処理装置の平面図。
【図3】同生物分解処理装置を超微細化装置に受水槽を介して接続すると共に複数直列接続した構成を示す概略説明立面図。
【図4】同生物分解処理装置を超微細化装置に受水槽を介して接続すると共に複数直列接続した別の構成を示す概略説明立面図。
【図5】同生物分解処理装置に接続される第一形態の超微細化装置の一部切欠き断面立面図。
【図6】同生物分解処理装置に接続される第二形態の超微細化装置の概略断面立面図。
【符号の説明】
【0032】
5:受水槽
6:タンク
10:有機物を含有した排水の生物分解処理装置
11:ハウジング
11a〜11d:ハウジング周壁
11e:凹んだ個所を備えた底壁
12A:排水供給導管
12B:処理水排出導管
12C:沈殿物を排出する導管
13:処理手段(コア)
13a:細かな通路
13b:好気性菌が生息した多孔性膜
13c:嫌気性菌が生息した多孔性膜
13d:支持フレーム
14:送気管
20:超微細化装置
22:空気導入部
23:ケーシング
23a:外円筒体
24:内円筒体
25:環状空間
26:内円筒体の内部
30:超微細化装置
32:空気導入部
33:ケーシング
33a:外円筒体
34A:中間円筒体
34B:内円筒体
35A:外環状空間
35B:内環状空間
36:内円筒体の内部
A:空気
ab:気泡
C:隙間
M:沈殿物
P3:第一ポンプ
P3’:第一ポンプ
P4:第二ポンプ
VE:開閉弁(電磁弁)
W:有機物を含有した排水
W1:供給排水
W2:処理水


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水や食品加工場からの排水などの有機物を含有した排水が一方側において導管を介して内部に供給され、有機物が少なくとも部分的に消滅処理された処理水が他方側から導管を介して排出されるもので、少なくとも周壁と凹んだ個所を備えた底壁とを有したハウジングと、
該ハウジングの内部に、供給排水が上から流入できるようにハウジング上端から下げて搭載され、多数の上下方向に連通した多数の通路を有し、それら通路に流入排水中の有機物を生物分解処理する微生物を生息させている処理手段と、
上記排水供給導管に隣接して上記ハウジングの内部において下方から多数の気泡を上昇させて、周囲の供給排水を下降を許容しつつも上昇させて上記処理手段への上からの流入を促進して循環させるように上記排水供給導管に隣接して配管された送気管と、から構成されていることを特徴とする有機物を含有した排水の生物分解処理装置。
【請求項2】
上記有機物を含有した排水は、外円筒体と内円筒体との間の環状空間において少なくとも8m/秒の高速旋回流を起こして、その高速旋回流の少なくとも剪断作用によってミクロンレベルまで超微細化処理する超微細化装置によって有機物と水クラスタとが超微細化されてから、受水槽に一旦受けてから比較的低速度で本生物分解処理装置に供給されるようになっている請求項1記載の装置。
【請求項3】
上記ハウジングは、ほぼ矩形状の横断面を成す上記周壁と角錐状を成す上記凹んだ個所を備えた底壁とを有した上方に開放したハウジングであり、上記排水供給導管は、一方の隅の近傍に配置され且つ上記処理水排出導管は、排水供給導管に対向した隅の近傍に配置されており、また上記凹んだ個所の最低部に蓄積した汚泥などの沈殿物を排出する導管が接続されている請求項1記載の装置。
【請求項4】
上記沈殿物の排出導管は、定期的に開閉する又は運転中に常時開放された開閉弁を有しており、沈殿物はタンクに一旦収集された後で、そのタンクから供給される超微細化装置によって超微細化され、超微細化された後で直接に、又は上記受水槽に一旦受けてから本生物分解処理装置に戻される請求項1記載の装置。
【請求項5】
上記処理手段は、その上部に好気性菌が生息した多孔性膜と、その下部に嫌気性菌が生息した多孔性膜と、及び/若しくはその通路に充填された微生物の生息した充填材と、上記ハウジングの少なくとも他方側の周壁から本処理手段を支持する支持フレームとを有しており、該支持フレームによって該処理手段の下端で開口する上記処理水排出導管を支持している請求項1記載の装置。
【請求項6】
本生物分解処理装置は、前の装置の処理水排出導管が後ろの装置の排水供給導管に接続された状態で複数連設され、最初の装置の排水供給導管が、上記受水槽から排水が供給され、最後の装置の処理水排出導管が、上記受水槽に処理水を排出するか、又は河川等へ排出するように配管されている請求項1記載の装置。
【請求項7】
上記超微細化装置は、上記受水槽に又は上記タンクに流体接続されていて、また外円筒体でケーシングを形成し、そのケーシング内部に同心状に、又は筒体同士が接触せずに流路を形成する程度に偏心状に内円筒体を隔設し、内円筒体をケーシング底壁と結合し且つケーシング天井壁に対して隙間を形成することで、外円筒体と内円筒体とで形成した環状空間と内円筒体の内部とを上記隙間を介して連通しており、また第一ポンプによって上記受水槽又は上記タンクから上記内円筒体の内部に有機物又は汚泥等の沈殿物を含有した第一高速度水流が供給され、次いで該内円筒体の内部から第二ポンプによって吸引されて高速度で吐出されて形成される第二高速度水流が第二水導入部において上記環状空間に供給されて、次いで上記内円筒体の上端からその内部に急激に落下されてケーシング底壁に激突させるようにしており、上記環状空間と上記内円筒体の内部に渡って形成した循環流路において水流中の有機物や沈殿物の汚泥微生物細胞膜等を破壊し、有機物又は沈殿物の超微細化された処理水を上記環状流路から一部分抜いて上記受水槽又は上記タンクに排出する構造を有している請求項2又は4記載の装置。
【請求項8】
上記超微細化装置は、上記受水槽に又は上記タンクに流体接続されていて、またそのケーシングの外壁を外円筒体で形成し、そのケーシング内部に同心状に、又は筒体同士が接触せずに流路を形成する程度に偏心状に中間円筒体と内円筒体の二つを隔設し、中間円筒体をケーシング天井壁とケーシング底壁に結合して外環状空間を形成し、内円筒体をケーシング底壁と結合し且つケーシング天井壁に対して隙間を形成することで、中間円筒体と内円筒体とで形成した中間環状空間と内円筒体の内部とを上記隙間を介して連通しており、また上記受水槽又上記タンクから第一水導入部において、第一ポンプによって発生された有機物又は汚泥等の沈殿物を含有した第一高速度水流が空気導入部のエジェクターに供給されて、そこで空気が第一高速度水流に気泡として導入され、該気泡の導入された第一高速度水流は上記中間環状空間に供給され、次いで上記内円筒体の上端からその内部に急激に落下されてケーシング底壁に激突させ、また該内円筒体の内部から第二ポンプによって吸引されて高速度で吐出されて形成される第二高速度水流が第二水導入部において上記外環状空間に供給されるようにして、更に該外環状空間を上記第一ポンプの吸引側に管路を介して接続して形成される循環路を流れるようにされ、この循環路を成す上記中間環状空間及び上記外環状空間での剪断作用と上記ケーシング底壁への激突とによって水中の有機物又は沈殿物の汚泥微生物の死骸細胞膜等を破壊して超微細化し、超微細化された有機物又は汚泥等の沈殿物を含有した処理水が上記外環状空間から一部分抜かれて上記受水槽又は上記タンクに導かれる構造を有する請求項2又は4記載の装置。
【請求項9】
上記装置ケーシング内部において筒壁で限定された環状空間内に供給される高速度の水流は、該環状空間に接線方向から供給される請求項7又は8に記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−51436(P2006−51436A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234665(P2004−234665)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(591119624)株式会社御池鐵工所 (86)
【Fターム(参考)】