説明

有機物含有排水の処理方法および処理装置

【課題】活性汚泥による排水中に含まれる有機物の酸化分解能力を向上させる。
【解決手段】好気性微生物を含む活性汚泥にガラクトオリゴ糖及び有機物含有排水を添加して混合する工程、得られた混合物に曝気処理を行い、好気性微生物によって排水中に含まれる有機物を酸化分解する工程、及び酸化分解がなされた混合物を汚泥部と処理排水部に分離する工程等を含む有機物含有排水の処理方法、並びに好気性微生物を含む活性汚泥を貯留する活性汚泥処理槽(21)、活性汚泥処理槽にガラクトオリゴ糖及び有機物含有排水を供給する手段、好気性微生物によって排水中に含まれた有機物を酸化分解するために活性汚泥処理槽に曝気する手段(24)、及び酸化分解がなされた混合物を汚泥部と処理排水部に分離する手段(22)等を含む、有機物含有排水の処理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラクトオリゴ糖の汚泥活性作用を利用した、活性汚泥による有機物含有排水の処理方法、並びに活性汚泥による有機物含有排水の処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、下水処理や産業排水処理等の、有機物を多量に含む排水を処理する方法として、好気性微生物群を含む活性汚泥が有機物を酸化分解する作用、即ち、酸素を酸化剤として有機物を二酸化炭素等まで分解する作用を利用した活性汚泥処理法が広く用いられて来ている。その排水処理方法は、好気性微生物を含む活性汚泥が貯留された活性汚泥処理槽に有機物を多量に含む排水を導入し、空気を導入して曝気しながら、活性汚泥中の好気性微生物を繁殖させることによって排水中の有機物を酸化分解するものである。
【0003】
しかしながら、これまでの活性汚泥処理法では、酸化分解促進、及び、活性汚泥の沈降による酸化分解不良を防止するための活性汚泥処理槽の攪拌のために、主にブロワー、散気管から構成される曝気装置により常時空気を供給する必要があり、その曝気装置の常時稼動による電力消費量が大きくなる問題があった。また、排水中の有機物が酸化分解する際に活性汚泥の増殖を伴うが、安定した活性汚泥処理を維持するためには、増殖した余剰の活性汚泥を活性汚泥処理槽から排出させる必要があり、その排出された余剰の活性汚泥は廃棄物として処分される必要があるため、その処理費用及び環境への負荷が大きくなる問題も生じていた。さらに、活性汚泥処理施設には、活性汚泥処理槽、及び処理された水と活性汚泥を分離するための沈殿槽が必要であって、その槽の必要容量が活性汚泥による酸化分解効率に依存し、従来の活性汚泥処理法では非常に大きな設備面積や設備投資等が必要であるという問題もあった。
【0004】
その解決法として、例えば、特許文献1において、感熱古紙回収パルプ製造排水のCODを効果的に低減させる方法を提供することを目的として、感熱紙を含む古紙原料より回収パルプを製造する工程で生ずる排水に、BOD成分含有物質を添加しBOD/CODの比を0.3以上とした後、活性汚泥処理を行うことを特徴とする排水処理方法が提案されている。また同文献には、BOD成分含有物質が多糖類、オリゴ糖類、単糖類、タンパク質、低級アルコール類の少なくとも一種を含有しているものであることが記載されている。さらに同文献には、有機物等が汚泥へ吸着され、その吸着された有機物が酸化分解されることや、過剰の難分解性物質の吸着によって活性汚泥の不活性化が引き起こされることが記載され、さらには、添加するBOD成分含有物質の割合を増加させBOD/CODの比率を高めること等によってCOD吸着率を低減させることが望ましいことが記載されている。
【0005】
しかしながら、かかる先行技術では対象排水を感熱古紙回収パルプ製造排水に限定しており、その他の有機物含有排水については明記されていない。また、活性汚泥への難分解性物質吸着抑止が目的であり、従来の問題点を解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平04−271897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、特にガラクトオリゴ糖を活性汚泥に添加することによって、活性汚泥中の好気性微生物による、排水中に含まれる有機物の酸化分解能力を向上させて、その問題点を解決しようとするものである。即ち、本発明は、ガラクトオリゴ糖によって活性汚泥が活性化されて、排水中に含まれる有機物を酸化分解する能力が向上されることに着眼している。そのように活性汚泥中の好気性微生物による酸化分解能力が向上されることによって、結果的に有機物の酸化分解に必要な活性汚泥量を低減させることが出来て、ひいては曝気のための空気等の酸素源の量や攪拌用の電力消費量を低減させ、さらには、余剰の活性汚泥の排出量の低減による、その余剰活性汚泥の廃棄物処理費の削減、活性汚泥処理設備全体の小型化、設備投資の抑制が達成されることを可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特にガラクトオリゴ糖が、特に活性汚泥を活性化させて、活性汚泥の有機物を酸化分解する能力を向上させることを見出したことに基づくものである。
【0009】
本発明の第1の態様である有機物含有排水の処理方法は、請求項1に記載のように、好気性微生物を含む活性汚泥にガラクトオリゴ糖及び有機物含有排水を添加して混合する工程、得られた混合物に曝気処理を行い、好気性微生物によって排水中に含まれる有機物を酸化分解する工程、酸化分解がなされた混合物を汚泥部と処理排水部に分離する工程、及び処理排水部を排出する工程を含むことを特徴とするものである。
【0010】
かかる第1の態様では、ガラクトオリゴ糖により活性汚泥中の好気性微生物を活性化させて、排水中に含まれる有機物を酸化分解する能力を向上させることが可能である。また、かかる好気性微生物の酸化分解能力の向上によって、酸化分解処理(活性汚泥処理)がなされた混合液中の浮遊物濃度(MLSS: Mixed Liquor Suspended Solids)の低減、即ち活性汚泥処理混合液中の活性汚泥濃度の低減が可能になる。かかる活性汚泥処理混合物中の活性汚泥濃度の低減によって、曝気用の空気量や攪拌の電力消費量の低減、並びに排出される余剰汚泥量の低減とその廃棄物処分に伴う環境への負荷及び費用の低減が可能になる。また、この態様での有機物含有排水の処理方法は、例えば下水処理場、浄化槽、工業系有機物含有排水処理設備に有利に適用されることが可能である。
【0011】
第1の態様の一つの好ましい形態として、ガラクトオリゴ糖を、活性汚泥処理槽内の乾物汚泥量に対して任意の量で添加する、有機物含有排水の処理方法が挙げられ、好ましくはガラクトオリゴ糖を活性汚泥処理槽内の乾物汚泥量(DS:Dry Sludge)に対して400g/(トン(DS)・日)〜4,000g/(トン(DS)・日)の割合で添加する、有機物含有排水の処理方法が挙げられる(請求項2参照)。かかる形態によれば、活性汚泥処理槽内の活性汚泥の活性化が可能である。
【0012】
第1の態様のもう一つの好ましい形態として、分離工程が、酸化分解がなされた混合物を沈降処理して、沈降した汚泥部と上澄みの処理排水部に分離する工程である、有機物含有排水の処理方法が挙げられる(請求項3参照)。かかる形態によれば、沈降した汚泥の排出及び処理排水部の排出が可能である。
【0013】
第1の態様のもう一つの好ましい形態として、分離工程によって分離された汚泥部の少なくとも一部を混合工程へ再循環する工程、及び必要に応じて、該汚泥部の一部を排出する工程をさらに含む、有機物含有排水の処理方法が挙げられる(請求項4参照)。かかる形態によれば、活性汚泥処理槽内の浮遊物濃度(MLSS: Mixed Liquor Suspended Solids)の保持が可能である。
【0014】
本発明の第2の態様である有機物含有排水の処理装置は、請求項5に記載のように、好気性微生物を含む活性汚泥を貯留する活性汚泥処理槽(21)、活性汚泥処理槽にガラクトオリゴ糖及び有機物含有排水を供給する手段、好気性微生物によって排水中に含まれた有機物を酸化分解するために活性汚泥処理槽に曝気する手段(24)、酸化分解がなされた混合物を汚泥部と処理排水部に分離する手段(22)、及び処理排水部を排出する手段(30)を含むことを特徴とするものである。
【0015】
かかる第2の態様では、ガラクトオリゴ糖により活性汚泥処理槽における活性汚泥中の好気性微生物を活性化させて、排水中に含まれる有機物を酸化分解する能力を向上させることが可能である。また、好気性微生物の酸化分解能力の向上によって、活性汚泥処理槽において酸化分解処理(活性汚泥処理)がなされた混合液中の浮遊物濃度(MLSS: Mixed Liquor Suspended Solids)の低減、即ち活性汚泥処理混合液中の活性汚泥濃度の低減が可能になる。かかる活性汚泥処理混合液中の活性汚泥濃度の低減によって、活性汚泥処理槽における曝気用の空気量や攪拌の電力消費量の低減、排出される余剰汚泥量の低減とその廃棄物処分に伴う環境への負荷及び費用の低減、並びに有機物含有排水の処理装置の小型化及び設備スペースの低減が可能になる。また、この態様での有機物含有排水の処理装置は、例えば下水処理場、浄化槽、工業系有機物含有排水処理設備に有利に適用されることが可能である。
【0016】
第2の態様の一つの好ましい形態として、供給手段に供給される、ガラクトオリゴ糖の量を、活性汚泥処理槽内の乾物汚泥量に対して任意の量に調整する手段、好ましくはガラクトオリゴ糖を活性汚泥処理槽内の乾物汚泥量に対して400g/(トン(DS)・日)〜4,000g/(トン(DS)・日)の割合に調整する手段をさらに含む、有機物含有排水の処理装置が挙げられる(請求項6参照)。かかる形態によれば、活性汚泥処理槽内の活性汚泥の活性化が可能である。
【0017】
第2の態様のもう一つの好ましい形態として、分離手段(22)が、酸化分解がなされた混合物を沈降処理して、沈降した汚泥部と上澄みの処理排水部に分離する沈殿槽である、有機物含有排水の処理装置が挙げられる(請求項7参照)。かかる形態によれば、沈降した汚泥の排出及び処理排水部の排出が可能である。
【0018】
第2の態様のもう一つの好ましい形態として、分離手段(22)で形成された、汚泥部の少なくとも一部を活性汚泥処理槽へ再循環する手段(32)、及び必要に応じて、汚泥部の一部を排出する手段(31)をさらに含む、有機物含有排水の処理装置が挙げられる(請求項8参照)。かかる形態によれば、活性汚泥処理槽内の浮遊物濃度(MLSS: Mixed Liquor Suspended Solids)の保持が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の有機物含有排水の活性汚泥処理装置を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明における有機物含有排水の活性汚泥処理装置の一例を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の有機物含有排水の活性汚泥処理におけるMLSSの経時変化を示す説明図である。
【図4】本発明の有機物含有排水の活性汚泥処理におけるCOD除去率の経時変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の有機物含有排水の処理方法又は処理装置における有機物含有排水としては、特に限定されるものではないが、例えば家庭排水、穀類でんぷん製造業、乳製品製造業、食肉センター、砂糖製造業、畜産食料品製造業、畜産農業、肉製品製造業、食肉ハム・ソーセージ製造業、水産練り製品製造業、水産食料品製造業、有機化学工業や無機化学工業等の製造業などからの下水や産業排水等の排水が挙げられる。即ち、本発明の有機物含有排水の処理方法及び処理装置は、下水処理場、浄化槽、工業系有機物含有排水処理設備等に有利に適用されるものである。
【0021】
本発明の有機物含有排水の処理方法又は処理装置における、好気性微生物を含む活性汚泥としては、有機物含有排水処理に使用され得る好気性微生物を含むものであれば特に限定されるものではなくて、例えば原生動物であればVorticella、微小後生動物であればPhilodina(輪虫類)等の好気性微生物を含む活性汚泥が挙げられる。
【0022】
本発明の有機物含有排水の処理方法又は処理装置におけるガラクトオリゴ糖は、以下の構造式に示すようにガラクトースを主な構成単位とするオリゴ糖であって、例えば牛乳からチーズを製造する際に副産物である乳糖に酵素を作用させて製造されるものである。
【化1】

【0023】
本発明の有機物含有排水の処理方法における、好気性微生物を含む活性汚泥に、ガラクトオリゴ糖、及び有機物含有排水を添加して混合する工程としては、その添加の形式や順序に特に限定が無く、例えば、活性汚泥に有機物含有排水とガラクトオリゴ糖を添加して混合しても良く、活性汚泥に有機物含有排水を添加して混合しながらガラクトオリゴ糖を添加しても良く、或いは活性汚泥に有機物含有排水を添加して混合した後にガラクトオリゴ糖を添加して混合しても良い。また、本発明の有機物含有排水の処理方法は回分式であっても、連続式であっても良く、大量の有機物含有排水の処理の場合には連続式が好ましく、その場合には有機物含有排水とガラクトオリゴ糖を共に、又は別々に、活性汚泥に添加しながら混合することが望ましい。
【0024】
そこでのガラクトオリゴ糖の添加量としては、有機物含有排水中の有機物の種類や濃度、並びに活性汚泥の量等によってその好ましい範囲が異なるが、活性汚泥の活性化を目的とする為、活性汚泥処理槽内の活性汚泥数に応じた添加量にすることが好ましく、活性汚泥処理槽内の乾物汚泥量(DS:Dry Sludge)に応じた添加量が好ましい。活性汚泥中の好気性微生物の活性を向上させながら、排水中に含まれる有機物を効率よく酸化分解することが出来るように、通常、活性汚泥処理槽内の乾物汚泥に対して任意の量で添加すればよいが、特に400g/(トン(DS)・日)〜4,000g/(トン(DS)・日)の割合が好ましい。尚、活性汚泥の量に対する有機物含有排水の量は、活性汚泥中の好気性微生物の活性を向上させながら、排水中に含まれる有機物を効率よく酸化分解することが出来るように、適宜決定され得るものである。
【0025】
本発明の有機物含有排水の処理方法での、活性汚泥、ガラクトオリゴ糖及び有機物含有排水の混合物に曝気処理を行い好気性微生物によって排水中に含まれる有機物を酸化分解する工程における、曝気に使用される気体としては、通常空気が用いられる。また曝気の際の空気等の気体の導入形式としては、通常その混合物を中への吹き込みが用いられるが、場合によってそれ以外の攪拌しながらの気体の吹き込み等であっても良い。導入される空気等の気体の量は、ガラクトオリゴ糖によって活性汚泥中の好気性微生物の活性を向上させながら、排水中に含まれる有機物を効率よく酸化分解することが出来るように、適宜決定され得るものであって、その範囲としては活性汚泥処理槽内の溶存酸素(DO:Dissolved Oxygen)が1.0mg/L以上あることが好ましい。
【0026】
かかる曝気処理及び酸化分解の工程によって、通常、有機物含有排水中の有機物が分解されると共に好気性微生物から排出される粘性物質によって活性汚泥のフロック化が生じる。
【0027】
そこでの酸化分解処理(活性汚泥処理)がなされた混合物中の浮遊物濃度(MLSS: Mixed Liquor Suspended Solids)は、標準活性汚泥法では1,500mg/L〜2,000mg/L、長時間曝気法では3,000mg/L〜5,000mg/Lである。このようにガラクトオリゴ糖によって活性汚泥中の好気性微生物の活性を向上させることによって、酸化分解処理(活性汚泥処理)がなされた混合物中の浮遊物濃度(MLSS)の低減、即ち、活性汚泥処理混合物中の活性汚泥濃度の低減が期待できる。
【0028】
かかる曝気処理と酸化分解の工程におけるその他の条件として、ガラクトオリゴ糖によって活性汚泥中の好気性微生物の活性を向上させながら、排水中に含まれる有機物を効率よく酸化分解することが出来るように、その温度としては高い方が好ましく、その時間(連続式の場合には平均滞留時間)としては標準活性汚泥法では6時間〜8時間が好ましく、また、長時間曝気法では18時間〜24時間が好ましく、またその圧力としては通常大気圧が好ましい。ガラクトオリゴ糖により活性汚泥中の好気性微生物の活性を向上させることによって、そこでの処理時間の短縮が期待できる。
【0029】
本発明の有機物含有排水の処理方法での、酸化分解がなされた混合液を汚泥部と処理排水部に分離する工程としては、酸化分解がなされて生じたフロック化した活性汚泥等を含む混合物を、フロック化した活性汚泥を含む汚泥部と処理排水部に分離することが出来れば、特に限定されるものではないが、例えば沈降分離、加圧浮上法等が挙げられ、通常、特別に処理エネルギーを必要としない沈降分離が好ましく用いられる。その沈降分離では、酸化分解処理済みの混合物が、沈降分離手段の下部でのフロック化した活性汚泥を含む汚泥部と、上部での上澄みとしての処理排水部とに分離される。かかる沈降分離の条件は、適宜設定され得るものであって、水面積負荷(上昇流速)を1.0m/時以下にすることが好ましい。
【0030】
本発明の有機物含有排水の処理方法での、処理排水部を排出する工程については、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法が用いられる。
【0031】
本発明の有機物含有排水の処理方法が連続式で行われる場合には、酸化分解がなされた混合物を、汚泥部と処理排水部に分離する工程によって分離された、フロック化した活性汚泥を含む汚泥部の少なくとも一部を、活性汚泥、ガラクトオリゴ糖及び有機物含有排水を混合する工程へ再循環することが望ましく、また、必要に応じて、有機物含有排水の活性汚泥処理によって発生したフロック化した活性汚泥を含む余剰の活性汚泥を除去するために、該汚泥部の一部を排出することも望ましい。
【0032】
そこでの、排出される汚泥部の量と再循環される汚泥部の量の比率は、ガラクトオリゴ糖によって活性汚泥中の好気性微生物の活性を向上させながら、排水中に含まれる有機物を効率よく酸化分解することが維持出来るように、適宜設定され得るものであるが、活性汚泥処理槽内の浮遊物濃度(MLSS: Mixed Liquor Suspended Solids)が一定になるように設定することが好ましい。ガラクトオリゴ糖により活性汚泥中の好気性微生物の活性を向上させることによって、活性汚泥処理槽内の浮遊物濃度を低減することが期待できる為、排出される汚泥部の削減に伴う、廃棄物処分に伴う環境への負荷及び費用の低減が期待できる。廃棄物処分に伴う環境への負荷及び費用の低減が期待できる。
【0033】
本発明の有機物含有排水の処理装置における、好気性微生物を含む活性汚泥を貯留する活性汚泥処理槽としては、特に限定されるものではなく、通常使用される活性汚泥処理槽であっても良い。
【0034】
本発明の有機物含有排水の処理装置における、活性汚泥処理槽にガラクトオリゴ糖及び有機物含有排水を供給する手段としては、特に限定されるものではなく、通常使用される活性汚泥処理槽であっても良く、例えばガラクトオリゴ糖と有機物含有排水を共に、或いは別々に活性汚泥処理槽に供給する手段であっても良い。
【0035】
本発明の有機物含有排水の処理装置における、好気性微生物によって排水中に含まれた有機物を酸化分解するために活性汚泥処理槽に曝気する手段としては、活性汚泥処理槽中の活性汚泥、ガラクトオリゴ糖及び有機物含有排水を混合して、所定量に酸素がその混合物中に供給できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば曝気用の空気を活性汚泥処理槽の下部から吹き込むための空気吹き込み管、及び/又は活性汚泥処理槽中のその混合物の攪拌機等が挙げられる。
【0036】
本発明の有機物含有排水の処理装置における、酸化分解処理がなされた後の混合物を汚泥部と処理排水部に分離する手段としては、フロック化した活性汚泥を含む汚泥部と処理排水部が有効に分離できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば沈殿槽、加圧浮上装置等が挙げられ、通常、特別に処理エネルギーを必要としない沈殿槽が好ましく用いられる。その沈殿槽では、酸化分解処理済みの混合物が、沈殿槽の下部のフロック化した活性汚泥を含む汚泥部と、上部の上澄みとしての処理排水部とに分離される。
【0037】
本発明の有機物含有排水の処理装置における、処理排水部を排出する手段については、特に限定されるものではなく、例えば沈殿槽の上部壁に設けられて、処理排水部を上澄みとして流出させる配管等が挙げられる。
【0038】
また、本発明の有機物含有排水の処理装置は、連続して活性汚泥処理を行うものである場合、沈殿槽等の分離手段で形成された、フロック化した活性汚泥を含む汚泥部の少なくとも一部を活性汚泥処理槽へ再循環する手段、及び必要に応じて、フロック化した活性汚泥を含む汚泥部の一部を排出する手段をさらに含むことが望ましい。その汚泥部の再循環手段と排出手段は、その各々が所定量の汚泥部を再循環又は排出できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば各々の汚泥部の流量が設定できるポンプと配管からなるものが挙げられる。
【0039】
以下に、図面を参照しながら、本発明の有機物含有排水の処理装置を具体化した実施形態について、さらに説明する。尚、上記の括弧内に記載した符号は、後述する実施形態における具体的記載との対応関係を示す一例である。
【0040】
図1には、従来の有機物含有排水の活性汚泥処理装置が模式的に記載されている。そこでの活性汚泥処理装置は、活性汚泥処理槽1と沈殿槽2からなる。水7と共に活性汚泥15が貯留されている活性汚泥処理槽1には、配管6から有機物14を含有する有機物含有排水が供給され、ブロワー3に連結された空気吹き込み用の散気管4から空気の気泡13が吹き込まれるようになっている。気泡13による曝気と共に、好気性微生物を含む活性汚泥15によって有機物14が酸化分解されて、フロック化した活性汚泥16が生じる。そのようにして生じたフロック化した活性汚泥16を含む、酸化分解処理がなされた混合物が配管8を介して、沈殿槽2に導入されて、沈降分離によってフロック化した活性汚泥16を含む汚泥部と、上澄み9としての処理排水部とに分離される。その上澄み9としての処理排水部は配管10を介して排出される。一方、フロック化した活性汚泥16を含む汚泥部は、ポンプ5によって、その一部が余剰汚泥として配管11を介して排出され、残りの汚泥部が配管12を介して活性汚泥処理槽1に返送されることにより再循環される。
【0041】
図2には、本発明における有機物含有排水の活性汚泥処理装置の一例を模式的に示される。そこでの活性汚泥処理装置は、活性汚泥処理槽21と沈殿槽22からなる。水27と共に活性汚泥35が貯留されている活性汚泥処理槽21には、ガラクトオリゴ糖が投入手段20によって投入されると共に、配管26から有機物34を含有する有機物含有排水が供給され、ブロワー23に連結された空気吹き込み用の散気管24から空気の気泡33が吹き込まれるようになっている。ガラクトオリゴ糖の存在下で、気泡33により曝気されることによって、活性汚泥が活性化されると共に、好気性微生物を含む活性汚泥35で有機物34が酸化分解されて、フロック化した活性汚泥36が生じる。そのようにして生じたフロック化した活性汚泥36を含む、酸化分解処理がなされた混合物が配管28を介して、沈殿槽22に導入されて、沈降分離によって、フロック化した活性汚泥36を含む汚泥部と、上澄み29としての処理排水部とに分離される。その上澄み29としての処理排水部は配管30を介して排出される。一方、フロック化した活性汚泥36を含む汚泥部は、ポンプ25によって、その一部が余剰汚泥として配管31を介して排出され、残りの汚泥部が配管32を介して活性汚泥処理槽21に返送されることにより再循環される。
【0042】
図3には、本発明の有機物含有排水の活性汚泥処理におけるMLSSの経時変化が示されている。即ち、図1に示されるような従来の有機物含有排水の処理装置によって活性汚泥処理がなされたコントロールと共に、図2に示されるような本発明の有機物含有排水の処理装置によってガラクトオリゴ糖を添加して活性汚泥処理がなされた場合のMLSSの経時変化が示されている。
【0043】
図4には、本発明の有機物含有排水の活性汚泥処理におけるCOD除去率の経時変化が示されている。即ち、図1に示されるような従来の有機物含有排水の処理装置によって活性汚泥処理がなされたコントロールと共に、図2に示されるような本発明の有機物含有排水の処理装置によってガラクトオリゴ糖を添加して活性汚泥処理がなされた場合のCOD除去率の経時変化が示されている。
【0044】
後述する実施例においても記載される「MLSS(mg/L)」とは、活性汚泥処理槽における酸化分解処理(活性汚泥処理)がなされた混合液中の浮遊物濃度(Mixed Liquor Suspended Solids)、即ち、活性汚泥処理混合物中の活性汚泥濃度を意味し、光の透過率あるいは超音波の強さを利用したMLSS計によって得られるものであって、標準活性汚泥法ではMLSSは1,500mg/L〜2,000mg/L、長時間曝気法ではMLSSは3,000mg/L〜5,000mg/Lである。
【0045】
また、後述する実施例においても記載される「COD除去率(%)」とは、排水処理前のCODが、排水処理によりどれくらい除去できるかを示したものであり、式[{1−(排水処理後のCOD/排水処理前のCOD)}×100]で表される。CODの測定方法は複数あるが、硫酸銀を触媒とする100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素要求量を求める方法がある。
【実施例】
【0046】
以下に本願発明についての実施例を挙げて更に具体的に本願発明を説明するが、それらの実施例によって本願発明が何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例および比較例における各成分の量は、特に断らない限り「重量部」で表したものである。
【0047】
実施例1
図2に示されるような有機物含有排水の処理装置を用いて、活性汚泥処理槽21に、好気性微生物として硝化細菌を含む活性汚泥(初期活性汚泥濃度2,498mg/L)を52L投入し、有機物含有排水を6L/時で、ガラクトオリゴ糖を400g/(トン(DS)・日)で添加し、ブロワー23から吹き込み用の散気管24を介して空気を活性汚泥処理槽内の溶存酸素(DO:Dissolved Oxygen)が1.0mg/L以上になるように吹き込むことによって、大気圧下の室温で曝気しながら、連続式で有機物含有排水中の有機物成分を酸化分解して活性汚泥処理を行った。活性汚泥処理槽21で酸化分解処理がなされた混合物を、配管28を介して6L/時で沈殿槽22に導入して、沈降分離によって、フロック化した活性汚泥36を含む汚泥部と、上澄み29としての処理排水部とに分離した。その上澄み29としての処理排水部を、配管30を介して6L/時で排出した。一方、フロック化した活性汚泥36を含む汚泥部は、ポンプ25によって、その一部を余剰汚泥として配管31を介して定期的に排出し、残りの汚泥部を、配管32を介して3L/時で活性汚泥処理槽21に返送して再循環した。尚、有機物含有排水の活性汚泥処理槽21中での平均滞留時間は8.6時間であり、酸化分解処理がなされた混合物の沈殿槽22での平均水面積負荷(上昇流速)は0.45m/時であった。
【0048】
このような連続式の活性汚泥処理を28日間行ない、開始時、7日、14日、21日及び28日目にサンプリングを行って、MLSSとCOD除去率の測定を行った。得られたMLSSとCOD除去率を、各々の経時変化として図3及び図4に示す。
【0049】
実施例2
ガラクトオリゴ糖を4,000g/(トン(DS)・日)で添加すること以外は、実施例1と同様にして、連続式の活性汚泥処理を28日間行ない、開始時、7日、14日、21日及び28日目にサンプリングを行って、MLSSとCOD除去率の測定を行った。得られたMLSSとCOD除去率を、各々の経時変化として図3及び図4に示す。
【0050】
比較例1
ガラクトオリゴ糖を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、連続式の活性汚泥処理を28日間行ない、初期、7日、14日、21日及び28日目にサンプリングを行って、MLSSとCOD除去率の測定を行った。得られたMLSSとCOD除去率を、各々の経時変化として図3及び図4に示す。
【0051】
図3に示されるように、ガラクトオリゴ糖を添加することによって、MLSS(活性汚泥処理槽における酸化分解処理(活性汚泥処理)がなされた混合物中の浮遊物濃度(Mixed Liquor Suspended Solids)、即ち、活性汚泥処理混合物中の活性汚泥濃度)の低減が見出された。また図3から読み取れるように、開始時を基準とした終了時でのMLSSの低減率が、6%(比較例1)、30%(実施例1)、62%(実施例2)であって、ガラクトオリゴ糖の添加量によってMLSSの低減率が変化することが見出された。従って、MLSSの低減率から見て、400g/(トン(DS)・日)〜4,000g/(トン(DS)・日)の範囲でのガラクトオリゴ糖の添加であれば、添加量が多い程好ましいことが伺われる。
【0052】
図4に示されるように、ガラクトオリゴ糖を添加することによって、開始時から7日までの初期段階におけるCOD除去率の増加が見られるが、それ以降の長期間の活性汚泥処理においてはガラクトオリゴ糖の添加によるCOD除去率への影響が少ないことが見出された。
【0053】
従って、ガラクトオリゴ糖の添加によって得られる、活性汚泥による有機物の酸化分解能力の向上度合いがガラクトオリゴ糖の添加量に関係しており、400g/(トン(DS)・日)〜4,000g/(トン(DS)・日)の範囲でのガラクトオリゴ糖の添加であれば、添加量が多い程、より低いMLSSで所定の高いCOD除去率が得られること、即ち酸化分解能力の向上が期待できることが図3,4から読み取れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好気性微生物を含む活性汚泥に、ガラクトオリゴ糖、及び有機物含有排水を添加して混合する工程、
得られた混合物に曝気処理を行い、該好気性微生物によって該排水中に含まれる有機物を酸化分解する工程、
該酸化分解がなされた混合物を汚泥部と処理排水部に分離する工程、及び
該処理排水部を排出する工程
を含む、有機物含有排水の処理方法。
【請求項2】
前記ガラクトオリゴ糖を、前記酸化分解する工程内の乾物汚泥量に対して任意の割合で添加する、請求項1に記載の有機物含有排水の処理方法。
【請求項3】
前記分離工程が、前記酸化分解がなされた混合物を沈降処理して、沈降した前記汚泥部と上澄みの前記処理排水部に分離する工程である、請求項1又は2に記載の有機物含有排水の処理方法。
【請求項4】
前記分離工程によって分離された前記汚泥部の少なくとも一部を前記混合工程へ再循環する工程、及び
必要に応じて、該汚泥部の一部を排出する工程
をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機物含有排水の処理方法。
【請求項5】
好気性微生物を含む活性汚泥を貯留する活性汚泥処理槽(21)、
該活性汚泥処理槽にガラクトオリゴ糖及び有機物含有排水を供給する手段、
該好気性微生物によって該排水中に含まれた有機物を酸化分解するために該活性汚泥処理槽に曝気する手段(24)、
該酸化分解がなされた混合物を汚泥部と処理排水部に分離する手段(22)、及び
該処理排水部を排出する手段(30)
を含む、有機物含有排水の処理装置。
【請求項6】
前記供給手段に供給される、前記ガラクトオリゴ糖の量を、前記活性汚泥処理槽内の乾物汚泥量に対して任意の割合に調整する手段をさらに含む、請求項5に記載の有機物含有排水の処理装置。
【請求項7】
前記分離手段(22)が、前記酸化分解がなされた混合物を沈降処理して、沈降した前記汚泥部と上澄みの前記処理排水部に分離する沈殿槽である、請求項5又は6に記載の有機物含有排水の処理装置。
【請求項8】
前記分離手段(22)で形成された、前記汚泥部の少なくとも一部を前記活性汚泥処理槽へ再循環する手段(32)、及び
必要に応じて、該汚泥部の一部を排出する手段(31)
をさらに含む、請求項5〜7のいずれか一項に記載の有機物含有排水の処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−192339(P2012−192339A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58002(P2011−58002)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】