説明

有機発光素子

【課題】低電圧駆動が可能であり、かつ長寿命な特性を有する有機発光素子を提供する。
【解決手段】対向する陽極1と陰極2の間に、ホール輸送性材料10を含有するホール輸送層4と、有機発光層3と、電子輸送性材料11を含有する電子輸送層5とをこの順に備える。ホール輸送層4は、2種以上のホール輸送性材料10と陽極1からのホールの注入効率を高めるホール注入材料11とを含有しており、かつホール注入材料11の濃度は陽極1側界面がもっとも高く、有機発光層3側に近づくにつれて濃度が低下する傾斜した濃度勾配を有し、かつホール輸送層4の有機発光層3との界面近傍にはホール注入材料11が含まれていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光源、バックライト、フラットパネルディスプレイ等に用いられる有機発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
照明光源、バックライト、フラットパネルディスプレイなどとして用いられる発光体は、高効率照明器具の実現、照明器具形状の自由化、液晶表示機を備える電子機器の小型化、長時間駆動化、フラットパネルディスプレイの薄型化等のために、高効率であり、かつ薄く軽量であるものが近年強く要求されている。
【0003】
有機発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)は、以前より、上記の要求を満たす可能性を有する発光体として注目を集めており、盛んに研究開発が行なわれている。特に近年、電流−光変換効率100%を原理的に有するリン光発光材料の登場に伴ない、有機発光素子の効率は飛躍的に増大し、有機発光素子の実用化可能領域は大きく広がってきた。既に、緑、赤などの単色発光素子に関しては、実デバイスとして電流−光変換効率100%に相当すると考えられる高効率発光素子が実際に実現されている。また青色発光素子に関しては、青色発光のエネルギーが大きいためにそれに適した発光材料、周辺材料の開発が進まず、他の発光色を有する有機発光素子に対して開発が遅れていたが、最近になって青色発光素子に適した発光材料や周辺材料が開発され、青色発光素子の効率も他色と同等以上に向上している。また、白色発光素子においても、60lm/W、外部量子効率30%といった高性能のものが報告されるようになっている。
【0004】
上記のように、有機発光素子において、効率はいわゆる理論値に近づきつつあり、材料の発光効率(電気−光の変換効率)を向上させることによって有機発光素子の効率を向上させる余地はかなり小さくなっている。従って、さらに効率を向上させるためには、駆動電圧を低減する方法、有機発光素子からの光取り出し効率を向上させる方法などを検討する必要がある。特に駆動電圧の観点に於いては、駆動電圧の低減と発光効率、および寿命のトレードオフが起こらない手段で駆動電圧の低減を行ない、また、高輝度においても駆動電圧を低く保つことが、真の高効率化のためには必要である。
【0005】
ここで、有機発光素子の駆動電圧を低減する方法として、大きくは、電極からの注入障壁を低減する方法、膜内でキャリアを移動させるために必要な電圧を下げる方法の2つが挙げられる。
【0006】
前者は、例えば、陽極よりも仕事関数の大きな金属酸化物層を設ける方法(例えば特許文献1参照)、ホール輸送層をドープし電極からの注入障壁を低減する方法(例えば特許文献2、3参照)、電子輸送層をドープし電極からの注入障壁を低減する方法(例えば特許文献4参照)、電極上にホール注入層を設ける方法(例えば特許文献5〜7参照)、電子輸送層と陰極の間に電子注入層を設ける方法(例えば特許文献8参照)などがある。
【0007】
一方後者は、例えば特許文献2,3のようにドープした低抵抗の有機層を用いる方法、あるいは移動度の高い材料を用いる方法などが挙げられる。
【特許文献1】特許2824411号公報
【特許文献2】特開2006−114521号
【特許文献3】特許第3748110号
【特許文献4】特許第2926845号公報
【特許文献5】特開平8−31573号
【特許文献6】特開平10−95971号
【特許文献7】特許第2666428号
【特許文献8】特開平8−288069号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の方法により、有機発光素子の駆動電圧を下げることは可能である。しかし、一般に現在の有機発光素子の効率は、輝度1,000cd/m程度の発光輝度においての値が検討されているが、例えば有機発光素子を照明に応用する場合は、現状の蛍光灯の輝度、すなわち数千〜一万cd/mで使用することが考えられるものであり、その際の駆動電圧は低輝度の場合に必要な駆動電圧よりも大きくなるものである。また、パッシブディスプレイにおいても、より高精細、より高輝度のものを実現する際には、発光輝度を相当に高くする必要があり、この場合にも高輝度領域での駆動電圧を低下させることが非常に重要な課題になるものである。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、低電圧駆動が可能であり、かつ長寿命な特性を有する有機発光素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る有機発光素子は、対向する陽極と陰極の間に、ホール輸送性材料を含有するホール輸送層と、有機発光層と、電子輸送性材料を含有する電子輸送層とをこの順に備えてなる有機発光素子に於いて、ホール輸送層は、2種以上のホール輸送性材料と陽極からのホールの注入効率を高めるホール注入材料とを含有しており、かつホール注入材料の濃度は陽極側界面がもっとも高く、有機発光層側に近づくにつれて濃度が低下する傾斜した濃度勾配を有し、かつホール輸送層の有機発光層との界面近傍にはホール注入材料が含まれていないことを特徴とするものである。
【0011】
この発明によれば、ホール輸送層は2種以上のホール輸送性材料を含有するため、例えば有機発光層と接することが好ましいエネルギー準位を持つホール輸送性材料と、陽極に接することが好ましいエネルギー準位を持つホール輸送性材料とを複合して用いることができるものであり、ホール輸送層にホール注入効率を高めるホール注入材料を含ませた場合に、陽極から有機発光層へのホールの注入および輸送に関し、ホール輸送層が1種のホール輸送性材料からなる場合よりも、より高い性能を実現することができるものである。また、ホール輸送層を構成する2種のホール輸送性材料のいずれにも接するようにホールの注入効率を高めるホール注入材料が含まれることで、2種のホール輸送性材料間でのホール注入障壁を低減することができるものである。特に、ホール注入材料が傾斜した濃度勾配の構造をとっていることによって、ホールの陽極からホール輸送層への注入障壁が傾斜組成構造をとらない場合よりも低減され、かつ界面が安定化されることにより、駆動電圧が低減されるとともに長寿命な有機発光素子を得ることができるものである。よって、高いホール輸送性と高いホール注入性、膜の安定性を兼備したより効果的なホール輸送層を得ることができ、素子特性や寿命を向上させることができるものである。
【0012】
本発明の請求項2に係る有機発光素子は、対向する陽極と陰極の間に、ホール輸送性材料を含有するホール輸送層と、有機発光層と、電子輸送性材料を含有する電子輸送層とをこの順に備えてなる有機発光素子に於いて、電子輸送層は、2種以上の電子輸送性材料と陰極からの電子の注入効率を高める電子注入材料とを含有しており、かつ電子注入材料の濃度は陰極側界面がもっとも高く、有機発光層側に近づくにつれて濃度が低下する傾斜した濃度勾配を有し、かつ電子輸送層の有機発光層との界面近傍には電子注入材料が含まれていないことを特徴とするものである。
【0013】
この発明によれば、電子輸送層は2種以上の電子輸送性材料を含有するため、例えば有機発光層と接することが好ましいエネルギー準位を持つ電子輸送性材料と、陰極に接することが好ましいエネルギー準位を持つ電子輸送性材料とを複合して用いることができるものであり、電子輸送層に電子注入効率を高める電子注入材料を含ませた場合に、陰極から有機発光層への電子の注入および輸送に関し、電子輸送層が1種の電子輸送性材料からなる場合よりも、より高い性能を実現することができるものである。また、電子輸送層を構成する2種の電子輸送性材料のいずれにも接するように電子の注入効率を高める電子注入材料が含まれることで、2種の電子輸送性材料間での電子注入障壁が低減できるものである。特に、電子注入材料が傾斜した濃度勾配の構造をとっていることによって、電子の陰極から電子輸送層への注入障壁が傾斜組成構造をとらない場合よりも低減され、かつ界面が安定化されることにより、駆動電圧が低減されるとともに長寿命な有機発光素子を得ることができるものである。よって、高い電子輸送性と高い電子注入性、膜の安定性を兼備したより効果的な電子輸送層を得ることができ、素子特性や寿命を向上させることができるものである。
【0014】
本発明の請求項3に係る有機発光素子は、対向する陽極と陰極の間に、ホール輸送性材料を含有するホール輸送層と、有機発光層と、電子輸送性材料を含有する電子輸送層とをこの順に備えてなる有機発光素子に於いて、ホール輸送層は、2種以上のホール輸送性材料と陽極からのホールの注入効率を高めるホール注入材料とを含有しており、かつホール注入材料の濃度は陽極側界面がもっとも高く、有機発光層側に近づくにつれて濃度が低下する傾斜した濃度勾配を有し、かつホール輸送層の有機発光層との界面近傍にはホール注入材料が含まれておらず、また、電子輸送層は、2種以上の電子輸送性材料と陰極からの電子の注入効率を高める電子注入材料とを含有しており、かつ電子注入材料の濃度は陰極側界面がもっとも高く、有機発光層側に近づくにつれて濃度が低下する傾斜した濃度勾配を有し、かつ電子輸送層の有機発光層との界面近傍には電子注入材料が含まれていないことを特徴とするものである。
【0015】
この発明によれば、ホール輸送層や電子輸送層は2種以上のホール輸送性材料あるいは電子輸送性材料を含有するため、例えば有機発光層と接することが好ましいエネルギー準位を持つ材料と、陽極あるいは陰極に接することが好ましいエネルギー準位を持つ材料とを複合して用いることができるものであり、ホール輸送層や電子輸送層にホールあるいは電子の注入効率を高める材料を含ませた場合に、陽極や陰極から有機発光層へのホールや電子の注入および輸送に関し、ホール輸送層および電子輸送層がそれぞれ1種の材料からなる場合よりも、より高い性能を実現することができるものである。また、ホール輸送層や電子輸送層を構成する2種の材料のいずれにも接するようにホールあるいは電子の注入効率を高める材料が含まれることで、2種の材料間でのキャリア注入障壁が低減できるものである。特に、ホール注入材料や電子注入材料が傾斜した濃度勾配の構造をとっていることによって、ホールの陽極からホール輸送層への注入障壁、電子の陰極から電子輸送層への注入障壁が傾斜組成構造をとらない場合よりも低減され、かつ界面が安定化されることにより、駆動電圧が低減されるとともに長寿命な有機発光素子を得ることができるものである。よって、高いキャリア輸送性と高いキャリア注入性、膜の安定性を兼備したより効果的なキャリア輸送層(ホール輸送層や電子輸送層)を得ることができ、素子特性や寿命を向上させることができるものである。
【0016】
また請求項4の発明は、請求項1又は3において、ホール輸送層が、2種のホール輸送性材料の積層構造で形成され、陽極側のホール輸送性材料のイオン化ポテンシャルが陽極から離れた側のホール輸送性材料のイオン化ポテンシャルよりも小さいことを特徴とするものである。
【0017】
この発明によれば、2種のホール輸送性材料のイオン化ポテンシャルの関係によって陽極からのホール注入障壁をより小さくし、かつホール注入材料とホール輸送性材料との相互作用を陽極近傍において強めることができるものであり、陽極−ホール輸送層間のホール注入をより良好にして、この界面の安定性をより高めることが可能となるものである。また、2種のホール輸送性材料が積層構造をとっていることから、有機発光層と接することは好ましくないが陽極と接することが好ましい材料系で陽極の近傍側のホール輸送層を形成することができ、より高い性能を実現することができるものである。
【0018】
また請求項5の発明は、請求項2又は3において、電子輸送層が、2種の電子輸送性材料の積層構造で形成され、陰極側の電子輸送性材料の電子親和力が陰極から離れた側の電子輸送性材料の電子親和力よりも大きいことを特徴とするものである。
【0019】
この発明によれば、2種の電子輸送性材料の電子親和力の関係によって陰極からの電子注入障壁をより小さくし、かつ電子注入材料と電子輸送性材料との相互作用を陰極近傍において強めることができるものであり、陰極−電子輸送層間の電子注入をより良好にし、この界面の安定性をより高めることが可能となるものである。また、2種の電子輸送性材料が積層構造をとっていることから、有機発光層と接することは好ましくないが陰極と接することが好ましい材料系で陰極の近傍側の電子輸送層を形成することができ、より高い性能を実現することができるものである。
【0020】
また請求項6の発明は、請求項4において、ホール輸送層が、異なる2種のホール輸送性材料の層間に、一方の層との界面ではその界面に接する一方のホール輸送性材料の比率が多く、他方の層との界面ではその界面に接する他方のホール輸送性材料の比率が多い、傾斜した組成で、2種のホール輸送性材料が混合された混合部を有することを特徴とするものである。
【0021】
この発明によれば、混合部によって、2種のホール輸送性材料の層の間でのホール輸送の効率が向上し、また2種のホール輸送性材料の層の界面の電気化学的および形態的安定性を向上させることができ、効率および寿命に優れた有機発光素子を得ることができるものである。
【0022】
また請求項7の発明は、請求項5において、電子輸送層が、異なる2種の電子輸送性材料の層間に、一方の層との界面ではその界面に接する一方の電子輸送性材料の比率が多く、他方の層との界面ではその界面に接する他方の電子輸送性材料の比率が多い、傾斜した組成で、2種の電子輸送性材料が混合された混合部を有することを特徴とするものである。
【0023】
この発明によれば、混合部によって、2種の電子輸送性材料の層の間での電子輸送の効率が向上し、また2種の電子輸送性材料の層の界面の電気化学的および形態的安定性を向上させることができ、効率および寿命に優れた有機発光素子を得ることができるものである。
【0024】
また請求項8の発明は、請求項1又は3において、ホール輸送層が、2種のホール輸送性材料を備え、陽極側は一方のホール輸送性材料の比率が多く、有機発光層側は他方のホール輸送性材料の比率が多い、傾斜した組成の傾斜組成構造として形成され、陽極側で比率が多いホール輸送性材料のイオン化ポテンシャルが、有機発光層側で比率が多い他方のホール輸送性材料のイオン化ポテンシャルよりも小さいことを特徴とするものである。
【0025】
この発明によれば、陽極の近傍でのホール注入材料とホール輸送性材料との相互作用を強めることができるものであり、陽極近傍のホール輸送層を電気的にかつ形態的に安定化し、かつ2種のホール輸送性材料間のホール輸送をよりスムーズにすることによって、効率および寿命に優れた有機発光素子を得ることができるものである。
【0026】
また請求項9の発明は、請求項2又は3において、電子輸送層が、2種の電子輸送性材料を備え、陰極側は一方の電子輸送性材料の比率が多く、有機発光層側は他方の電子輸送性材料の比率が多い、傾斜した組成の傾斜組成構造として形成され、陰極側で比率が多い電子輸送性材料の電子親和力が、有機発光層側で比率が多い他方の電子輸送性材料の電子親和力よりも大きいことを特徴とするものである。
【0027】
この発明によれば、陰極の近傍での電子注入材料と電子輸送性材料との相互作用を強めることができるものであり、陰極の近傍の電子輸送層を電気的にかつ形態的に安定化し、かつ2種の電子輸送性材料間の電子輸送をよりスムーズにすることによって、効率および寿命に優れた有機発光素子を得ることができるものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ホール輸送層あるいは電子輸送層は2種以上のホール輸送性材料あるいは電子輸送性材料を含有するため、例えば有機発光層と接することが好ましいエネルギー準位を持つ材料と、陽極あるいは陰極に接することが好ましいエネルギー準位を持つ材料とを複合して用いることができるものであり、ホールあるいは電子の注入効率を高める材料を含ませた場合に、陽極あるいは陰極から有機発光層へのホールあるいは電子の注入および輸送に関し、ホール輸送層および電子輸送層がそれぞれ1種の材料からなる場合よりも、より高い性能を実現することができるものである。また、ホール輸送層あるいは電子輸送層を構成する2種の材料のいずれにも接するようにホールあるいは電子の注入効率を高める材料が含まれることで、2種の材料間でのキャリア注入障壁が低減できるものである。特に、ホール注入材料あるいは電子注入材料が傾斜した濃度勾配の構造をとっていることによって、ホールの陽極からホール輸送層への注入障壁、電子の陰極から電子輸送層への注入障壁が傾斜組成構造をとらない場合よりも低減され、かつ界面が安定化されることにより、駆動電圧が低減されるとともに長寿命な有機発光素子を得ることができるものである。よって、高いキャリア輸送性と高いキャリア注入性、膜の安定性を兼備したより効果的なキャリア輸送層を得ることができ、素子特性や寿命を向上させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0030】
本発明の有機発光素子は、陽極(アノード)と陰極(カソード)の間に、ホール輸送層、有機発光層、電子輸送層をこの順に備えて形成されるものである。
【0031】
図5はこのような有機発光素子の構造の一例を示すものであり、陽極1となる電極と陰極2となる電極の間に形成される有機発光層3と、有機発光層3と陽極1との間に形成されるホール輸送層4と、有機発光層3と陰極2との間に形成される電子輸送層5の、各有機膜を備え、これらを透明基板6の表面に積層したものである。図5の実施の形態では、陽極1は光透過性の電極として、陰極2は光反射性の電極として形成してある。またホール輸送層4の陽極1側にはホール注入層を、電子輸送層5の陰極2側には電子注入層を設けるようにしてもよいが、図5ではこれらの図示は省略してある。
【0032】
尚、本出願において、イオン化ポテンシャルとは、光電子分光測定によって算出される値であり、電子親和力とは、各材料の吸収スペクトルの長波長端から見積もられる光学的エネルギーギャップの値を、イオン化ポテンシャルの値から差し引くことによって見積もられる値である。
【0033】
本発明の有機発光素子におけるホール輸送層4は、ホール輸送層4を構成する主成分であるホール輸送性材料10と、陽極1からのホールの注入効率を高めるホール注入材料11からなるものである。ここで、図1に示すように、ホール輸送層4の層内におけるホール注入材料11の濃度は、ホール輸送層4の陽極1側の界面がもっとも高く、陽極1側の界面から離れるに伴なって低くなるような傾斜した濃度勾配をもつようにしてあり、ホール輸送層4の有機発光層3との界面近傍にはホール注入材料11を含まないようにしてある。尚、図1〜図4は陽極1と陰極2の間に形成されるホール輸送層4、有機発光層3、電子輸送層5において、ホール輸送層4や電子輸送層5の層内の材料濃度の勾配を模式的に示すものであり、例えば図1においてホール注入材料11の傾斜は、ホール輸送層4中のホール注入材料11の濃度が陽極1側から有機発光層2側へと低くなる濃度勾配を図示している。
【0034】
ホール輸送層4の陽極1側の界面におけるホール注入材料11の濃度は、特に限定されるものではないが、一般に0.1モル%〜90モル%の間が好ましく、より好ましくは0.5モル%〜70モル%の間である。この範囲外であると、ホール注入性が劣ることになったり、ホール注入材料11が消光作用をもたらしたり、ホール輸送性に劣ることになったりするおそれがあるため、好ましくない。また、ホール輸送層4において有機発光層3の界面との間のホール注入材料11を含まない領域は、特に限定されるものではないが、1〜20nm程度の範囲が好ましく、より好ましく5〜15nm程度の範囲である。ホール注入材料11を含まない領域に接するホール注入材料11を含む領域におけるホール注入材料11の量は、陽極1側の界面における量の0〜80質量%にまで減少するように設定するのが好ましい。ホール注入材料11が陽極1側の界面から離れるに従って減少する濃度分布は、陽極1側の界面から離れるに伴い段階的に小さくなるような濃度分布であってもよいし、あるいは、連続的に小さくなる濃度分布であってもよく、また濃度の減少具合は、次第に大きくなるもの、単調に変化するもの、次第に小さくなるものなど、いずれでもよい。
【0035】
また本発明においてホール輸送層4は、少なくとも2種のホール輸送性材料10を含有して形成されるものである。これらのホール輸送性材料10は、その電気化学的特性やホール輸送性能、成膜性等を考慮して適宜選定されるものである。
【0036】
この2種以上のホール輸送性材料10を混合してホール輸送層4を形成するようにしてもよく、あるいは各ホール輸送性材料10の層を積層してホール輸送層4を形成するようにしてもよい。
【0037】
図2は2種のホール輸送性材料10a,10bでそれぞれ形成される層4a,4bを積層した構造でホール輸送層4を形成するようにしたものであり、この場合、陽極1側の層4aのホール輸送性材料10aには、そのイオン化ポテンシャルが、有機発光層3側の層4bのホール輸送性材料10bのイオン化ポテンシャルよりも小さいものを選定することが好ましい。また図3に示すように、各ホール輸送性材料10a,10bからなる層4a,4bの間に、一方の層4aとの界面ではその界面に接する側の層4aのホール輸送性材料10aの比率が多く、他方の層4bとの界面ではその界面に接する側の層4bのホール輸送性材料10bの比率が多い、傾斜した組成で、2種のホール輸送性材料10a、10bが混合された混合部7を形成するようにしてもよい。この混合部7での2種のホール輸送性材料10a、10bの濃度傾斜は、濃度の変化が次第に大きくなるもの、単調に変化するもの、次第に小さくなるものなど、いずれでもよい。
【0038】
また図4は、2種のホール輸送性材料10a,10bを混合してホール輸送層4を形成するようにしたものであり、陽極1側は一方のホール輸送性材料10aの比率が多く、有機発光層3側は他方のホール輸送性材料10bの比率が多い、傾斜した比率の組成構造としてホール輸送層4を形成してある。このとき、陽極1との界面側で比率の多いホール輸送性材料10aのイオン化ポテンシャルは、有機発光層3側で比率の多いホール輸送性材料10bのイオン化ポテンシャルよりも小さいものを選定することが好ましい。この際の比率の傾斜としては、比率の変化が次第に大きくなるもの、単調に変化するもの、次第に小さくなるものなど、いずれでもよい。
【0039】
本発明においてホール輸送層4を構成する主成分のホール輸送性材料10としては、ホールを輸送する能力を有する材料であればよく、特に限定はされないが、有機発光層3や隣接する別のホール輸送材料に対して優れたホール注入効果を有し、また電子のホール輸送層4への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物であることがより好ましい。このような化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPBまたはα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNB(α−NPDのフェニル基がナフチル基であるもの)、TPBD(α−NPDのフェニル基、ナフチル基がビフェニル基であるものであり、置換基結合位置は問わない)などを代表例とするトリアリールアミン系化合物を挙げることができる。また、m−MTDATA、2−TNATA等のスターバースト型アリールアミン化合物、カルバゾール誘導体、チアントレン誘導体、フラン誘導体、チオフェン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポリフィリン誘導体などが挙げられる。特にリン光発光素子の場合には、有機発光層3のドーパントのエネルギーギャップ及び/又はT1準位、及び発光層ホストのエネルギーギャップ及び/又はT1準位より大きな、エネルギーギャップ及び/又はT1準位を有するワイドエネルギーギャップ材料であることが好ましく、このような化合物としては、例えばテトラフェニルシラン骨格を持つトリアリールアミン誘導体、シクロヘキサン環等共役環を持たない部位をトリアリールアミン残基間に備えるトリアリールアミン誘導体、クオーターフェニレン骨格や、ヘキサフェニルベンゼン骨格など広いエネルギーギャップを有する骨格を持つトリアリールアミン誘導体などを挙げることができる。あるいは、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物なども前述の特性に応じて適宜使用される。
【0040】
また本発明のホール輸送層4に添加されるホール注入材料11としては、特に限定はされないが、前記ホール輸送層4を構成する主成分であるホール輸送性材料10と電荷移動錯体を形成する金属、半導体、有機材料、金属酸化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属イオウ化物、金属窒化物等、ルイス酸としてあるいはブレンステッド酸として機能する材料を用いることができる。また酸化モリブデン、酸化レニウム、酸化タングステン、酸化バナジウム、金属ハロゲン化物、塩化鉄、塩化チタン、あるいはF4TCNQ、DDQなどの強い電子吸引性基を備える有機物、酸無水物などを用いることもできる。
【0041】
本発明の有機発光素子における電子輸送層5は、電子輸送層5を構成する主成分である電子輸送性材料13と、陰極2からの電子の注入効率を高める電子注入材料14からなるものである。ここで図1に示すように、電子輸送層5における電子注入材料14の濃度は、電子輸送層5の陰極2側の界面がもっとも高く、陰極2側の界面から離れるに伴なって低くなるような傾斜した濃度勾配をもつようにしてあり、電子輸送層5の有機発光層3との界面近傍には電子注入材料14を含まないようにしてある。
【0042】
電子輸送層5の陰極2側の界面における電子注入材料14の濃度は、一般に0.1モル%〜90モル%の間が好ましく、より好ましくは0.5モル%〜70モル%の間である。この範囲外であると、電子注入性に劣ったり、電子注入材料14が消光作用をもたらしたり、電子輸送性に劣ることになったりするようになるため、好ましくない。また、電子輸送層5の有機発光層3との界面の電子注入材料14を含まない領域は、1〜20nm程度が好ましく、より好ましくは5〜15nm程度である。電子注入材料14を含まない領域に接する領域に接する電子注入材料14を含む領域における電子注入材料14の量は、陰極2側の界面における量の0〜80質量%にまで減少するように設定するのが好ましい。電子注入材料14が陰極2側の界面から離れるに従って減少する濃度分布は、陰極2側の界面から離れるに伴い段階的に小さくなるような濃度分布であってもよいし、あるいは、連続的に小さくなる濃度分布であってもよく、また濃度の減少具合は、次第に大きくなるもの、単調に変化するもの、次第に小さくなるものなど、いずれでもよい。
【0043】
また本発明において電子輸送層5は、少なくとも2種の電子輸送性材料13を含有して形成されるものである。この2種以上の電子輸送性材料13を混合して電子輸送層5を形成するようにしてもよく、あるいは各電子輸送性材料13の層を積層して電子輸送層5を形成するようにしてもよい。
【0044】
図2は2種の電子輸送性材料13a,13bでそれぞれ形成される層5a,5bを積層した構造で電子輸送層5を形成するようにしたものであり、この場合、陰極2側の層5aのホール輸送性材料13aには、その電子親和力が、有機発光層3側の層5bの電子輸送性材料13bの電子親和力よりも大きいものを選定することが好ましい。また図3に示すように、各電子輸送材料13a,13bからなる層5a,5bの間に、一方の層5aとの界面ではその界面に接する側の層5aの電子輸送性材料13aの比率が多く、他方の層5bとの界面ではその界面に接する側の層5bの電子輸送性材料13bの比率が多い、傾斜した組成で、2種の電子輸送性材料13a、13bが混合された混合部8を形成するようにしてもよい。この混合部8での2種の電子輸送性材料13a、13bの濃度傾斜は、濃度の変化が次第に大きくなるもの、単調に変化するもの、次第に小さくなるものなど、いずれでもよい。
【0045】
また図4は、2種の電子輸送性材料13a,13bを混合して電子輸送層5を形成するようにしたものであり、陰極2側は一方の電子輸送性材料13aの比率が多く、有機発光層3側は他方の電子輸送性材料13bの比率が多い、傾斜した比率の組成構造として電子輸送層5を形成してある。このとき、陰極2との界面側で比率の多い電子輸送性材料13aの電子親和力は、有機発光層3側で比率の多い電子輸送性材料13bの電子親和力よりも大きいものを選定することが好ましい。この際の比率の傾斜としては、比率の変化が次第に大きくなるもの、単調に変化するもの、次第に小さくなるものなど、いずれでもよい。
【0046】
本発明において電子輸送層5を構成する主成分の電子輸送性材料13としては、電子を輸送する能力を有する材料であればよく、特に限定はされないが、有機発光層3や隣接する別の電子輸送材料に対して優れた電子注入効果を有し、またホールの電子輸送層5への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物であることがより好ましい。このような化合物としては、例えば、バソフェナントロリン、バソクプロイン、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ピリジン、フランなど、複素環を有する化合物およびそれらの誘導体を挙げることができる。また、ピレン誘導体、ペリレン誘導体などで電子輸送能を示す材料を用いることもできる。特にリン光発光素子の場合には、有機発光層3のドーパントのエネルギーギャップ及び/又はT1準位、及び発光層ホストのエネルギーギャップ及び/又はT1準位より大きな、エネルギーギャップ及び/又はT1準位を有するワイドエネルギーギャップ材料であることが好ましい。このような化合物としては、例えば、1,3,5−Tris[3,5−bis(3−pyridinyl)phenyl]benzene、1,3,5−tri(4−pyrid−3−yl−phenyl)benzeneなどピリジン環を含有する誘導体、トリメシチルボラン骨格を含有するピリジン誘導体などを挙げることができるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0047】
また本発明の電子輸送層5に添加される電子注入材料14としては、特に限定はされないが、電子輸送層5を構成する主成分の電子輸送性材料13と電荷移動錯体を形成する金属、半導体、有機材料、金属酸化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属窒化物等、ルイス塩基としてあるいはブレンステッド塩基として機能する材料を用いることができる。例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、有機金属錯体、金属炭化物、金属ハロゲン化物、金属酸化物あるいは[化1]のような有機ドナー類を用いることができる。あるいは成膜後に金属をその原材料から遊離させてもよく、例えば、AlqにLiq([化2])を積層した後にAlを蒸着することによってその還元によるLi金属を界面に発生させるものなどがその例である。
【0048】
【化1】

【0049】
【化2】

【0050】
本発明の有機発光素子の有機発光層3の形成に使用できるホスト材料としては、有機発光素子用ホスト材料として用いられる任意の材料であればよく、特に限定されることなく用いることができる。例えば、アントラセン誘導体、アルミニウム有機錯体、有機−金属錯体、スチリルアリーレン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、チアントレン誘導体、ピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、ピレン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、フルオレン誘導体など任意のものが使用可能である。また、本発明の有機発光素子に使用できる発光材料としては、有機発光素子用発光材料として知られる任意の材料が挙げられる。例えばアントラセン誘導体、ピレン誘導体、テトラセン誘導体、フルオレン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール、スチリルアミン誘導体、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、及び各種蛍光色素等をはじめとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、前記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、たとえば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。
【0051】
以上はホール輸送性材料や電子輸送性材料が2種の場合について述べたが、3種以上の場合にも上記構成に基づくものであれば同様に使用しうる。
【0052】
また本発明において、上記の構造を有する有機発光素子の有機発光部位(電極を除く部分に相当する)を、陽極1と陰極2の間に中間層を介して複数積層し、いわゆるタンデム型の有機発光素子に形成することも可能である。この場合には、有機発光部位の陰極2側の中間層を当該有機発光部位に対しては陰極2と、有機発光部位の陽極1側の中間層を当該有機発光部位に対しては陽極1と見なせば、各有機発光部の構造は本発明の有機発光素子に用いるものと何ら異ならない。また中間層としては、金属薄膜、透明導電膜、無機半導体や有機半導体の積層体、nドープ有機層とpドープ有機層の積層、透明導電膜とドープ有機層の積層など、導電性の中間層、比抵抗としては半導体性から絶縁性の範囲であるが、実質的に2つの有機発光部を接続できる中間層などを任意に用いることができる。
【0053】
本発明の有機発光素子を構成するその他の部材である、積層された素子を保持する基板6、陽極1、陰極2等には、従来から使用されているものをそのまま使用することができる。
【0054】
上記基板6は、有機発光層3で発光した光が基板6を通して出射される場合には、光透過性を有するものであり、無色透明の他に、多少着色されているものであっても、すりガラス状のものであってもよい。例えば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどの透明ガラス板や、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エポキシ、フッ素系樹脂等の樹脂、有機無機バイブリッド材料などから任意の方法によって作製されたプラスチックフィルムやプラスチック板などを用いることができる。またさらに、基板6内に基板6の母剤と屈折率の異なる粒子、粉体、泡等を含有することによって、光拡散効果を有するものも使用可能である。表面形状を付与することによって光の取り出し効果を高くしたものも好ましい。また、基板6を通さずに光を射出させる場合、基板6は必ずしも光透過性を有するものでなくてもかまわないものであり、素子の発光特性、寿命特性等を損なわない限り、任意の基板を使用することができる。特に、通電時の素子の発熱による温度上昇を軽減するために、熱伝導性の高い基板6を使うことが好ましい。
【0055】
上記陽極1は、素子中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が4eV以上のものを用いるのがよい。このような陽極1の材料としては、例えば、金などの金属、CuI、ITO(インジウム−スズ酸化物)、SnO、ZnO、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)等、導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。陽極1は、例えば、これらの電極材料を、基板6の表面に真空蒸着法やスパッタリング法、塗布等の方法により薄膜に形成することによって作製することができる。また、有機発光層3における発光を陽極1を透過させて外部に照射するためには、陽極1の光透過率を70%以上にすることが好ましい。さらに、陽極1のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下とするものである。ここで、陽極1の膜厚は、陽極1の光透過率、シート抵抗等の特性を上記のように制御するために、材料により異なるが、500nm以下、好ましくは10〜200nmの範囲に設定するのがよい。尚、前記好適条件は、ホール注入層の使用や、補助電極の使用によって適宜変化してもよい。すなわち、補助電極を適切に用いることにより、補助電極と組み合わせてのシート抵抗を実用に問題のない低い値に抑えることができ、結果として陽極として用いられる導電性光透過性材料単体としてはさほど低くない抵抗値を有するものでも使用可能となる。
【0056】
また上記陰極2は、有機発光層3中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が5eV以下のものであることが好ましい。また、Alと他の電極材料を組み合わせて積層構造などとして構成するものであっても良い。このような陰極2の電極材料の組み合わせとしては、アルカリ金属とAlとの積層体、アルカリ金属と銀との積層体、アルカリ金属のハロゲン化物とAlとの積層体、アルカリ金属の酸化物とAlとの積層体、アルカリ土類金属や希土類金属とAlとの積層体、これらの金属種と他の金属との合金などが挙げられ、具体的には、例えばナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム、などとAlとの積層体、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、LiF/Al混合物/積層体、Al/Al混合物などを例として挙げることができる。また、前記のごとくアルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、あるいは金属酸化物を陰極2の下地として用い、さらに上記の仕事関数が5eV以下である材料(あるいはこれらを含有する合金)を1層以上積層するようにしてもよい。また、ITO、IZOなどに代表される透明電極を用い、陰極2側から光を取り出す構成にしても良い。この場合にも、透明電極の下地には、仕事関数が5eV以下の金属を用いることが好ましい。
【0057】
陰極2は、例えば、これらの電極材料を真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により、薄膜に形成することによって作製することができる。有機発光層3における発光を陽極1側に照射するためには、陰極2の光透過率を10%以下にすることが好ましい。また反対に、陰極2を透明電極として形成して、陰極2側から発光を取り出す場合、あるいは、透明電極とした後に何らかの手段で光を反射させ、陽極1側に光を取り出す場合には、陰極2の光透過率を70%以上にすることが好ましい。この場合の陰極2の膜厚は、陰極2の光透過率等の特性を制御するために、材料により異なるが、通常500nm以下、好ましくは100〜200nmの範囲とするのがよい。これらについても陽極1と同様、電子注入層や補助電極の使用によって、好適な条件が適宜変化してもよい。
【0058】
さらに、陰極2上にAl等の金属をスパッタで積層したり、フッ素系化合物、フッ素系高分子、その他の有機分子、高分子等を蒸着、スパッタ、CVD、プラズマ重合、塗布した後の紫外線硬化、熱硬化その他の方法で薄膜として形成し、保護膜としての機能をもたせるようにすることも可能である。
【0059】
本発明の有機発光素子は、任意の成膜方法によって形成することができるが、ホール輸送層4や電子輸送層5の組成が厚み方向に変化する構造を有する有機発光素子を形成する場合には、例えば有機発光素子を構成する各材料からなる蒸発源を複数並置し、基板6を複数の蒸発源の上に順に移動させることによって、基板6の位置に応じて規定される混合比で各材料を基板6の上に蒸着させて成膜し、組成が厚み方向で傾斜的に変化する層を形成する方法を用いることができる。各蒸発源は基板6の移動方向に対して一列に並置されていても良いし、必要に応じて一列にならない位置に配置することも可能である。混合比、および混合場所は、蒸発源からの蒸発レートを蒸発源温度あるいは蒸発源の開口度を調整したり、蒸発源間の距離を変えたり、シャッターやファン等により蒸発流の一部を時間的にあるいは面積的にカットしてコントロールすることも可能であるが、蒸発源間および/または蒸発源−基板間に蒸発流を制御するための部材を設け、それによって混合比が制御されることが好ましい。また蒸発源を傾斜させたり、蒸発パターンを傾けたりすることも好ましい。
【0060】
このような蒸発源の配置を行なった成膜装置を用い、あるいはこのような蒸発源の配置を行なった成膜装置を用いた成膜方法をとることによって、厚み方向に組成が変化する構造のホール輸送層4や電子輸送層5を備える有機発光素子を簡便に作製することが可能である。例えば、ホール注入材料を蒸発させる蒸発源、ホール輸送層4を構成する成分を蒸発させる蒸発源群、有機発光層3を形成する成分を蒸発させる蒸発源群、電子輸送層5を構成する成分を蒸発させる蒸発源群、電子注入材料を蒸発させる蒸発源をこの順にならべ、基板6をホール注入材料を蒸発させる蒸発源の側から移動させることにより、上記のようなホール輸送層4や電子輸送層5において組成が厚み方向に変化する構造を有する有機発光素子を得ることができる。
【0061】
ここで、蒸発流の広がりは、蒸発源によって異なり、例えば一般的にはボート等の点蒸発源では(cosθ)(ここでθは蒸発源から鉛直方向を0とし、基板6の流れ前後方向に増大する値)、るつぼ等の面蒸発源では(cosθ)などのパターンを持つといわれているが、実際に用いる蒸発源および蒸発材料の組み合わせ毎に蒸発パターンを認識しておくことが必要である。このパターンを考慮することで、基板6の流れ方向での各位置における各材料の成膜速度および材料間の混合比、及び、どの位置まで各材料が成膜されるかなどの情報を得ることができ、結果として、基板6上に成膜される各層の厚みや組成分布を知ることが可能である。また、この情報に基づき、基板6の移動の前後方向に遮蔽板を設けるなどして蒸発流の広がりを制限することで、各材料が成膜される基板6の位置を制限することが可能である。例えばホール注入材料がホール輸送層4に含まれる範囲や、電子注入材料が電子輸送層5に含まれる範囲などは、基板6の移動の前後方向に遮蔽板を設けるなどして一部制限することによって規定できる。また、蒸発源の上下位置関係を変えたり、蒸発源の間隔(流れ方向およびそれに直交する方向)を変更させたり、一つの材料に対して複数の蒸発源を連続して、もしくは他の材料を蒸発させる蒸発源を置いて配置することによっても、基板6上に成膜される材料の構成を調整することが可能である。
【0062】
成膜装置の一例を図6に示す。図6において16は真空蒸着装置のチャンバーであり、蒸着源V〜Vがチャンバー16内に基板6の移動方向に沿って配置してある。尚、説明を簡単にするために、ホール注入材料用の蒸発源V、第1のホール輸送性材料用の蒸発源V、第2のホール輸送性材料用の蒸発源Vのみを有機材料蒸着領域に配置し、電極用材料(例えば電子注入層用材料や電極金属材料、LiFやAl)用の蒸発源V,Vを電極材料蒸着領域に配置したものを図示しているが、実際には、蒸発源Vよりも基板6の移動方向側の有機材料蒸着領域に、有機発光層用の蒸発源や電子輸送層用の蒸発源を設けた装置構成となるものである。
【0063】
これらの蒸発源V〜Vは適宜傾斜させて配置することができる。また各蒸発源V〜V間には仕切り17等を設け、その形状や高さを適宜変更することにより、材料の蒸着領域、複数の材料の混合領域などを所望に設定できるようにしてある。また有機材料用の蒸発源V〜Vと、電極用材料用の蒸発源V〜Vは、蒸発流が混合しないように、蒸発源V〜Vよりも基板6の移動側の後方位置に蒸発源V〜Vを配置してある。さらに、有機材料蒸着領域である蒸発源V〜Vと、電極材料蒸着領域である蒸発源V〜Vの間に、マスク交換機構部18を設けてある。各蒸発源V〜Vはシャッターを備え、シャッターの開閉によって蒸発流を制御することができるようにしてある。そして、基板6を蒸発源V〜Vの順に移動させることによって、材料が混合した層を作製することが可能であり、また基板6を移動させずに停止させ、シャッターを開閉することによって、通常の積層構造の素子を作製したり、特定の材料を蒸着させないようにしたりすることができるものである。尚、図6はあくまでも一例を示すものであり、蒸発源の数を増やしたり、複数の蒸発源を並置したり、一列から外れた位置に蒸発源を設けたり、スパッタプロセスその他のプロセスと組み合わせたりしても、もちろん構わない。また、基板6の移動は、スタート位置からエンド位置まで、一定の速度で動かすようにしても良いし、必要に応じて移動速度を変化させたり、停止させたり、逆方向に動かしたりしても構わない。さらに適宜シャッターを使用して蒸発流を制御することも可能である。また、途中で蒸着パターンを変えることが必要な場合には、マスクの変更などを行なっても構わない。
【0064】
また、有機発光素子内の各層での材料の厚み方向の分布は、事前に評価した材料の蒸発分布を用いて算出することができる。具体的な手順は以下の通りである。まず基板6をスタート位置からエンド位置の各位置に置き、シャッターを一定時間開けた時の膜厚分布を基板6の搬送領域全体に対して測定し、基板1の位置に対して関数でその膜厚分布を近似する。例えば、蒸発源を鉛直にし、成膜された材料の分布を評価すると、蒸発源と基板6を結ぶ鉛直線からの角度をθとしたとき、ある材料の蒸発源ではcosθの5乗に比例する膜厚分布を有することがその一例である。各材料についても、同様に膜厚分布を求める。そしてこれらの膜厚分布から、基板6の搬送方向の各位置における各材料のレートを算出し、各位置における材料の混合比を見積もり、厚み方向にどのように各材料が分布しているかを見積もることができる。また、蒸発源の傾斜、仕切り等によって膜厚分布が変化する場合には、その都度新たな膜厚分布を取得するものである。
【実施例】
【0065】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0066】
(比較例1)
基板6として、厚み110nmのITOが図7のパターンで成膜された0.7mm厚のガラス基板を用意した。陽極1となるITOのシート抵抗は、約12Ω/□である。これを洗剤、イオン交換水、アセトンで各10分間超音波洗浄をした後、IPA(イソプロピルアルコール)で蒸気洗浄して乾燥し、さらにUV/O処理した。次に、株式会社三菱化学科学技術研究センターのバッファ材料「MCC−PC1020」を20nm厚にスピンコートし、大気雰囲気下、230℃で30分間焼成し、真空雰囲気下に保った後に常温まで冷却してバッファ層を形成した。
【0067】
次に、この基板6を既述の図6のような真空蒸着装置にセットした。ここで、ホール注入材料11としてMoOを、ホール輸送性材料10としてα−NPDを、有機発光層3の材料としてAlqとルブレンを、電子輸送性材料13としてAlqを、電子注入材料14としてLiを、陰極2の材料としてAlを用い、これらを蒸発源として真空蒸着装置に配置した。そして各蒸着源の直上位置に基板6を搬送し、ホール注入層としてMoOの単独層を10nmの膜厚で、ホール輸送層5としてα−NPDの単独層を50nmの膜厚で、有機発光層3としてAlqとルブレンを93:7(質量比)の割合の層を40nmの膜厚で、電子輸送層5としてAlqの単独層を20nmの膜厚で、電子注入層としてLiの単独層を0.5nmの膜厚で、陰極2としてAlを80nmの膜厚で図7のパターンのように成膜することによって、有機発光素子を得た。
【0068】
このようにして得た比較例1の有機発光素子内の陽極1と陰極2を除く各層における、膜厚と材料分布を図8に示す。
【0069】
尚、Liを成膜する前にマスクを交換し、有機膜と、Li及びAlは図7のように異なる成膜パターンで成膜した。有機発光素子の形状は図7に示す通りである。
【0070】
(比較例2)
ホール注入材料11のMoOとホール輸送性材料10のα−NPDの両方を蒸発させた状態で、基板6を移動させながら成膜してホール輸送層4を形成し、また、電子輸送性材料13のAlqと電子注入材料14のLiの両方を蒸発させた状態で、基板6を移動させながら成膜して電子輸送層5を形成するようにしたこと以外は、比較例1と同様にして、有機発光素子を得た。
【0071】
ここで、基板6の搬送速度は一定とし、蒸発レート比はMoO:α−NPD:Alq:rubrene:Alq:Li=0.15:3.00:2.48:0.19:1.07:0.003(質量比)とした。また、各材料の蒸発源の間には仕切り17を設け、材料の混合割合をコントロールした。
【0072】
このようにして得た比較例2の有機発光素子内の膜厚と材料分布を図9に示す。MoOとα−NPDからなるホール輸送層4の総膜厚は60nm、有機発光層3の膜厚は40nm、AlqとLiからなる電子輸送層5の総膜厚は20.5nmとした。また、陽極1側の界面におけるホール輸送層4内のMoOモル分率は50%であり、陰極2側の界面における電子輸送層5内のLiモル分率は33%である。
【0073】
(実施例1)
ホール輸送性材料10として、第1のホール輸送性材料10aのDNTPD(化3)と、第2のホール輸送性材料10bのα−NPDを用い、ホール輸送層4をDNTPDからなる層4aとα−NPDからなる層4bの2層の積層構造(膜厚比4:5)に形成するようにした以外は、比較例2と同様にして、有機発光素子を得た(図2参照)。
【0074】
【化3】

【0075】
このとき、MoOとα−NPDの蒸発源の間に、DNTPD用の蒸発源を設けて蒸着を行なった。ここで、第1のホール輸送性材料10aのDNTPDのイオン化ポテンシャルは5.0eVであり、第2のホール輸送性材料10bのα−NPDのイオン化ポテンシャルは5.4eVである。そして基板6の搬送速度は一定とし、蒸発レート比はMoO:DNTPD:α−NPD:Alq:rubrene:Alq:Li=0.23:4.6:4.6:2.48:0.19:1.07:0.003(質量比)とした。また、各材料の蒸発源の間には仕切り17を設け、材料の混合割合をコントロールした。
【0076】
このようにして得た実施例1の有機発光素子内の膜厚と材料分布を図10に示す。ホール注入材料11のMoOが含有されるDNTPDの層4aとα−NPDの層4bからなるホール輸送層4の総膜厚は60nm、有機発光層3の膜厚は40nm、AlqとLiからなる電子輸送層5の総膜厚は20.5nmとした。また陽極1側の界面におけるホール輸送層4内のMoOモル分率は63%であり、陰極2側の界面における電子輸送層5内のLiモル分率は33%である。
【0077】
(実施例2)
ホール輸送性材料10として、第1のホール輸送性材料10aのDNTPDと、第2のホール輸送性材料10bのα−NPDを用い、ホール輸送層4をDNTPDからなる層4aとα−NPDからなる層4bの2層の積層構造(蒸発量比1:2)に形成し、かつ層4a,4bの界面のDNTPDとα−NPDの材料比率が傾斜するように混合して混合部7を形成するようにした以外は、実施例1と同様にして、有機発光素子を得た(図3参照)。
【0078】
基板6の搬送速度は一定とし、蒸発レート比はMoO:DNTPD:α−NPD:Alq:rubrene:Alq:Li=0.15:3.0:3.0:2.48:0.19:1.07:0.003(質量比)とした。また、各材料の蒸発源の間には仕切り17を設け、材料の混合割合をコントロールした。
【0079】
このようにして得た実施例2の有機発光素子内の膜厚と材料分布を図11に示す。ホール注入材料11のMoOが含有されるDNTPDの層4aとα−NPDの層4b及びその間の混合部7からなるホール輸送層4の総膜厚は60nm、有機発光層3の膜厚は40nm、AlqとLiからなる電子輸送層5の総膜厚は20.5nmとした。また陽極1側の界面におけるホール輸送層4内のMoOモル分率は63%であり、陰極2側の界面における電子輸送層5内のLiモル分率は33%である。
【0080】
(実施例3)
ホール輸送性材料10として、第1のホール輸送性材料10aのDNTPDと、第2のホール輸送性材料10bのα−NPDを用い、DNTPDとα−NPDの材料比率が傾斜するように混合してホール輸送層4を形成するようにした以外は、実施例1と同様にして、有機発光素子を得た(図4参照)。
【0081】
基板6の搬送速度は一定とし、蒸発レート比はMoO:DNTPD:α−NPD:Alq:rubrene:Alq:Li=0.15:2.85:2.85:2.48:0.19:1.07:0.003(質量比)とした。また、各材料の蒸発源の間には仕切り17を設け、材料の混合割合をコントロールした。
【0082】
このようにして得た実施例3の有機発光素子内の膜厚と材料分布を図12に示す。ホール注入材料11のMoOが含有されるDNTPDとα−NPDからなるホール輸送層4の総膜厚は60nm、有機発光層3の膜厚は40nm、AlqとLiからなる電子輸送層5の総膜厚は20.5nmとした。また陽極1側の界面におけるホール輸送層4内のMoOモル分率は57%であり、陰極2側の界面における電子輸送層5内のLiモル分率は33%である。
【0083】
(実施例4)
電子輸送性材料13として、第2の電子輸送性材料13bのAlqと、第1の電子輸送性材料13aのBAlqを用い、DNTPDとα−NPDの材料比率が傾斜するように混合して電子輸送層5を形成するようにした以外は、実施例3と同様にして、有機発光素子を得た(図4参照)。
【0084】
このとき、AlqとLiの蒸発源の間に、BAlq用の蒸発源を設けて蒸着を行なった。ここで第2の電子輸送性材料13bのAlqの電子親和力は3.0eV、第1の電子輸送性材料13aのBAlqの電子親和力は3.1eVである。そして基板6の搬送速度は一定とし、蒸発レート比はMoO:DNTPD:α−NPD:Alq:rubrene:Alq:BAlq:Li=0.15:2.85:2.85:2.48:0.19:0.52:0.52:0.009(質量比)とした。また、各材料の蒸発源の間には仕切り17を設け、材料の混合割合をコントロールした。
【0085】
このようにして得た実施例4の有機発光素子内の膜厚と材料分布を図13に示す。ホール注入材料11のMoOが含有されるDNTPDとα−NPDからなるホール輸送層4の総膜厚は60nm、有機発光層3の膜厚は40nm、電子注入材料のLiが含有されるAlqとBAlqからなる電子輸送層5の総膜厚は20.5nmとした。また陽極1側の界面におけるホール輸送層4内のMoOモル分率は57%であり、陰極2側の界面における電子輸送層5内のLiモル分率は33%である。
【0086】
(比較例3)
比較例1において、ホール注入層、ホール輸送層4、有機発光層3、電子輸送層5、電子注入層を積層して形成した後、さらに厚み10nmのITOを介して、同様にホール注入層、ホール輸送層4、有機発光層3、電子輸送層5、電子注入層を積層するようにした他は、比較例1と同様にして、タンデム型の有機発光素子を得た。
【0087】
(実施例5)
実施例4において、ホール輸送層4、有機発光層3、電子輸送層5を積層して形成した後、さらに厚み10nmのITOを介して、同様にホール輸送層4、有機発光層3、電子輸送層5を積層するようにした他は、実施例4と同様にして、タンデム型の有機発光素子を得た。
【0088】
上記のように実施例1〜5及び比較例1〜3で得た有機発光素子に10mA/cmの定電流を通電し、駆動電圧、輝度が80%にまで低下するのに要した時間を測定し、素子性能を評価した。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1にみられるように、各実施例の有機発光素子は、駆動電圧を低く抑えることができ、また輝度が80%にまで低下するのに要する時間が長く長寿命であり、高い素子性能を有するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施の形態の一例における、層内の材料濃度の勾配を模式的に示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態の他の一例における、層内の材料濃度の勾配を模式的に示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態の他の一例における、層内の材料濃度の勾配を模式的に示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態の他の一例における、層内の材料濃度の勾配を模式的に示す概略図である。
【図5】本発明の有機発光素子の層構成の一例を示す概略図である。
【図6】真空蒸着装置を示すものであり、(a)は概略正面図、(b)は概略平面図である。
【図7】実施例及び比較例の有機発光素子の素子形状を示す概略平面図である。
【図8】比較例1の有機発光素子の膜厚と材料分布を示すグラフである。
【図9】比較例2の有機発光素子の膜厚と材料分布を示すグラフである。
【図10】実施例1の有機発光素子の膜厚と材料分布を示すグラフである。
【図11】実施例2の有機発光素子の膜厚と材料分布を示すグラフである。
【図12】実施例3の有機発光素子の膜厚と材料分布を示すグラフである。
【図13】実施例4の有機発光素子の膜厚と材料分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0092】
1 陽極
2 陰極
3 有機発光層
4 ホール輸送層
5 電子輸送層
6 基板
7 混合部
8 混合部
10 ホール輸送性材料
11 ホール注入材料
13 電子輸送性材料
14 電子注入材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する陽極と陰極の間に、ホール輸送性材料を含有するホール輸送層と、有機発光層と、電子輸送性材料を含有する電子輸送層とをこの順に備えてなる有機発光素子に於いて、ホール輸送層は、2種以上のホール輸送性材料と陽極からのホールの注入効率を高めるホール注入材料とを含有しており、かつホール注入材料の濃度は陽極側界面がもっとも高く、有機発光層側に近づくにつれて濃度が低下する傾斜した濃度勾配を有し、かつホール輸送層の有機発光層との界面近傍にはホール注入材料が含まれていないことを特徴とする有機発光素子。
【請求項2】
対向する陽極と陰極の間に、ホール輸送性材料を含有するホール輸送層と、有機発光層と、電子輸送性材料を含有する電子輸送層とをこの順に備えてなる有機発光素子に於いて、電子輸送層は、2種以上の電子輸送性材料と陰極からの電子の注入効率を高める電子注入材料とを含有しており、かつ電子注入材料の濃度は陰極側界面がもっとも高く、有機発光層側に近づくにつれて濃度が低下する傾斜した濃度勾配を有し、かつ電子輸送層の有機発光層との界面近傍には電子注入材料が含まれていないことを特徴とする有機発光素子。
【請求項3】
対向する陽極と陰極の間に、ホール輸送性材料を含有するホール輸送層と、有機発光層と、電子輸送性材料を含有する電子輸送層とをこの順に備えてなる有機発光素子に於いて、ホール輸送層は、2種以上のホール輸送性材料と陽極からのホールの注入効率を高めるホール注入材料とを含有しており、かつホール注入材料の濃度は陽極側界面がもっとも高く、有機発光層側に近づくにつれて濃度が低下する傾斜した濃度勾配を有し、かつホール輸送層の有機発光層との界面近傍にはホール注入材料が含まれておらず、また、電子輸送層は、2種以上の電子輸送性材料と陰極からの電子の注入効率を高める電子注入材料とを含有しており、かつ電子注入材料の濃度は陰極側界面がもっとも高く、有機発光層側に近づくにつれて濃度が低下する傾斜した濃度勾配を有し、かつ電子輸送層の有機発光層との界面近傍には電子注入材料が含まれていないことを特徴とする有機発光素子。
【請求項4】
ホール輸送層が、2種のホール輸送性材料の積層構造で形成され、陽極側のホール輸送性材料のイオン化ポテンシャルが陽極から離れた側のホール輸送性材料のイオン化ポテンシャルよりも小さいことを特徴とする請求項1又は3に記載の有機発光素子。
【請求項5】
電子輸送層が、2種の電子輸送性材料の積層構造で形成され、陰極側の電子輸送性材料の電子親和力が陰極から離れた側の電子輸送性材料の電子親和力よりも大きいことを特徴とする請求項2又は3に記載の有機発光素子。
【請求項6】
ホール輸送層が、異なる2種のホール輸送性材料の層間に、一方の層との界面ではその界面に接する一方のホール輸送性材料の比率が多く、他方の層との界面ではその界面に接する他方のホール輸送性材料の比率が多い、傾斜した組成で、2種のホール輸送性材料が混合された混合部を有することを特徴とする請求項4に記載の有機発光素子。
【請求項7】
電子輸送層が、異なる2種の電子輸送性材料の層間に、一方の層との界面ではその界面に接する一方の電子輸送性材料の比率が多く、他方の層との界面ではその界面に接する他方の電子輸送性材料の比率が多い、傾斜した組成で、2種の電子輸送性材料が混合された混合部を有することを特徴とする請求項5に記載の有機発光素子。
【請求項8】
ホール輸送層が、2種のホール輸送性材料を備え、陽極側は一方のホール輸送性材料の比率が多く、有機発光層側は他方のホール輸送性材料の比率が多い、傾斜した組成の傾斜組成構造として形成され、陽極側で比率が多いホール輸送性材料のイオン化ポテンシャルが、有機発光層側で比率が多い他方のホール輸送性材料のイオン化ポテンシャルよりも小さいことを特徴とする請求項1又は3に記載の有機発光素子。
【請求項9】
電子輸送層が、2種の電子輸送性材料を備え、陰極側は一方の電子輸送性材料の比率が多く、有機発光層側は他方の電子輸送性材料の比率が多い、傾斜した組成の傾斜組成構造として形成され、陰極側で比率が多い電子輸送性材料の電子親和力が、有機発光層側で比率が多い他方の電子輸送性材料の電子親和力よりも大きいことを特徴とする請求項2又は3に記載の有機発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−270674(P2008−270674A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114714(P2007−114714)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構、「高効率有機デバイスの開発事業」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(501231510)
【Fターム(参考)】