説明

有機肥料を用いる稲の栽培方法

【課題】 環境に優しい稲の栽培方法の提供
【解決手段】 有機肥料を、10アール当たり5kg〜200kg用いて乾田直播栽培することを特徴とする、稲の栽培方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機肥料を用いる稲の乾田直播栽培に関する。
【背景技術】
【0002】
有機特殊肥料を用いた稲の栽培方法としては、例えば、籾殻と鶏糞の混合発酵堆肥を稲の元肥とする方法(特許文献1)、稲わらを用いた栽培方法(非特許文献1)等が知られているが、この場合には当該肥料を10アール当たり400kgから数トン用いる必要がある。
【特許文献1】特開昭60−81079号公報
【非特許文献1】日本土壌肥料科学雑誌第61巻第1号119頁(1990年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
有機肥料は、無機化成肥料に比べて環境への負荷が少ないことから、近年推奨されている。しかし、有機肥料は無機化成肥料に比較して、遅効的である、発芽阻害を起こす、多肥でガス害を起こすことがある、肥効調節が難しいといった問題点があり、それが収量の低下につながっていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は上記状況に鑑み、鋭意検討したところ、乾田直播栽培を行うことにより、有機肥料の欠点に伴う稲の収量の低下を抑制できることを見いだし、本発明を完成させた。
【0005】
すなわち、本発明は、
〔1〕 有機肥料を、10アール当たり5kg〜200kg用いて乾田直播栽培することを特徴とする、稲の栽培方法。
【発明の効果】
【0006】
本願発明の栽培方法により、環境に負荷の少ない有機肥料を用いても、同じ窒素含有量の無機化成肥料を用いる場合に比べて稲の収量を落とすことなく栽培することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本願発明に用いられる有機肥料としては、例えば魚かす粉末、干魚肥料粉末、魚節煮かす、甲殻類質肥料粉末、蒸製魚鱗及びその粉末、肉かす粉末、肉骨粉、蒸製てい角粉、蒸製てい角骨粉、蒸製毛粉、乾血及びその粉末、生骨粉、蒸製骨粉(脱こう骨粉)、蒸製鶏骨粉、蒸製皮革粉、干蚕蛹粉末、蚕蛹油かす及びその粉末、絹紡蚕蛹くず、とうもろこしはい芽及びその粉末、大豆油かす及びその粉末、なたね油かす及びその粉末(からし油かす及びその粉末)、わたみ油かす及びその粉末、落花生油かす及びその粉末、あまに油かす及びその粉末、ごま油かす及びその粉末、ひまし油かす及びその粉末、米ぬか油かす及びその粉末、その他の草本性植物油かす及びその粉末、カポック油かす及びその粉末、とうもろこしはい、芽油かす及びその粉末、たばこくず肥料粉末、甘草かす粉末、豆腐かす乾燥肥料、えんじゅかす粉末、窒素質グアノ、加工家きんふん肥料、とうもろこし浸漬液肥料、魚廃物加工肥料、乾燥菌体肥料、副産動物質肥料、副産植物質肥料、混合有機質肥料等が挙げられる。
【0008】
有機肥料の施用量としては、好ましくは10アール当たり5〜200kgであり、更に好ましくは10アール当たり5〜100kgである。
【0009】
なお、用いる有機肥料には、無機化成肥料を混合しても良いし、有機肥料と無機肥料とを別々に用いても良い。
【0010】
用いられる無機化成肥料としては、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸苦土アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ソーダ、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、石灰窒素、ホルムアルデヒド加工尿素肥料(UF)、アセトアルデヒド加工尿素肥料(CDU)、イソブチルアルデヒド加工尿素肥料(IBDU)およびグアニール尿素(GU)等の窒素質肥料、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥、腐植酸リン肥、焼成リン肥、重焼リン、苦土過リン酸、ポリリン酸アンモニウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、苦土リン酸、硫リン安、リン硝安カリウムおよび塩リン安等のリン酸質肥料、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸カリソーダ、硫酸カリ苦土、重炭酸カリウムおよびリン酸カリウム等のカリウム質肥料、珪酸カルシウム等の珪酸質肥料、硫酸マグネシウムおよび塩化マグネシウム等のマグネシウム質肥料、生石灰、消石灰および炭酸カルシウム等のカルシウム質肥料、硫酸マンガン、硫酸苦土マンガンおよび鉱さいマンガン等のマンガン質肥料、ホウ酸およびホウ酸塩等のホウ素質肥料、鉄鋼スラグ等の含鉄肥料等の肥料取締法に定められる普通肥料(複合肥料を含む)を挙げることができる。中でも、窒素(N)、リン(P)、およびカリウム(K)より選ばれる肥料成分の一種以上、特にこれら三種全ての肥料成分を含有するものが好ましい。その具体例としては、NPK成分型(N−P−KO)肥料が挙げられ、かかる肥料としては、たとえば、5−5−7および12−12−16等の1型平上り型、5−5−5および14−14−14等の2型水平型、6−6−5および8−8−5等の3型平下がり型、4−7−9および6−8−11等の4型上り型、4−7−7および10−20−20等の5型上り平型、4−7−4および6−9−6等の6型山型、6−4−5および14−10−13等の7型谷型、6−5−5および18−11−11等の8型下がり平型、7−6−5および14−12−9等の9型下がり型、3−20−0および18−35−0等の10型NP型、16−0−12および18−0−16等の11型NK型、0−3−14および0−15−15等の12型PK型等を挙げることができる。用いる肥料の形態は、粒状、粉状、塊状および液状等の何れでもよく、種々の形態の肥料を用いることができる。
【0011】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
〔圃場試験1〕
不耕起乾田状態の水田圃場(0.5a)に、4月11日、みのる産業社製不耕起播種機(PFT-6)を用いて、水稲乾燥籾種(品種:日本晴)を10a当り5.2kg播種した。播種後直ちに、尿素系被覆窒素肥料(窒素40%)を7.5kg/10a(窒素換算で3kg/10a)と混合有機質肥料(窒素10%)を30kg/10a(窒素換算で3kg/10a)表層に散布した。5月24日にイネの出芽が揃い、6月3日のイネ2.5葉期に入水した。8月15日に出穂し、順調に生育した。
〔圃場試験2〕
不耕起乾田状態の水田圃場(0.5a)に、4月11日、みのる産業社製不耕起播種機(PFT-6)を用いて、水稲乾燥籾種(品種:日本晴)を10a当り5.2kg播種した。播種後直ちに、尿素系被覆窒素肥料(窒素40%)を7.5kg/10a(窒素換算で3kg/10a)した。5月24日にイネの出芽が揃い、5月26日のイネ1.5〜2葉期に混合有機質肥料(窒素10%)を30kg/10a(窒素換算で3kg/10a)表層に散布した。6月3日のイネ2.5葉期に入水した。8月15日に出穂し、順調に生育した。
〔圃場試験3〕
耕起乾田状態の水田圃場(27a)に、4月19日、みのる産業社製不耕起播種機(PFT-6)を用いて、水稲乾燥籾種(品種:彩のかがやき)を10a当り5.5kg播種した。播種後直ちに、尿素系被覆窒素肥料(窒素40%)を7.5kg/10a(窒素換算で3kg/10a)した。5月20日にイネの出芽が揃い、5月26日のイネ1.5〜2葉期に混合有機質肥料(窒素10%)を30kg/10a(窒素換算で3kg/10a)表層に散布した。5月31日のイネ2.5葉期に入水した。8月16日に出穂し、順調に生育した。
〔比較例〕
乾田直播栽培による比較試験
1/5000アールのワグネルポットに土を詰め、乾田状態で乾燥籾を深度3cmで播種(品種:日本晴)し、肥料を施した。イネの葉齢が4葉期になったところで入水し、以後は深さ5cmの湛水条件で管理した。
【0013】
湛水移植栽培による比較試験
1/5000アールのワグネルポットに土を詰め、代掻きした後に肥料を施し、深度3cmで、あらかじめ育てた3葉期のイネ(品種:日本晴)を移植した。入水し、以後は深さ5cmの湛水条件で管理した。
【0014】
なお、肥料は、有機肥料としては日清純正ナタネ油粕粉末(N(窒素)5.3%)を、無機化成肥料としては硫安(住金化学工業製、商品名:ふみん、N(窒素)21%)を、それぞれ用いた。
【0015】
そして、Nの量として同量の有機肥料を用いた場合と無機化成肥料を用いた場合とで、播種あるいは移植後40日目の生体重を比較することで、生育の違いを比較した。試験の結果を第1表に示す。
〔第1表〕
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
栽培条件 肥料中のN(kg) 有機肥料/無機化成肥料の生育比
(生体重比較)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
乾田直播栽培 20 1.0
湛水移植栽培 20 0.6
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記の通り、10アール当たり377kg(Nの量として20kg)の有機肥料を用いた場合は、10アール当たり95kg(Nの量として20kg)の無機化成肥料を用いた場合に比べて、湛水移植栽培では稲の収量が60%であったが、乾田直播栽培では同等となり、稲の生育阻害を示さなかった。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の栽培方法は、環境に優しい稲の栽培方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機肥料を、10アール当たり5kg〜200kg用いて乾田直播栽培することを特徴とする、稲の栽培方法。

【公開番号】特開2007−82480(P2007−82480A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276387(P2005−276387)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】