有機薄膜太陽電池
【課題】凹凸シート3にて入射光を偏向する効果を高めて、発電層での吸収量を増大させる効果を高める。発電層で反射して凹凸シート3に入射する光の凹凸面3aでの反射率を増大させ、トータルでの光の利用効率を確実に増大させる。
【解決手段】太陽電池は、有機薄膜からなる発電層を含む複数の層を積層した発電素子と、凹凸シート3とを備えている。凹凸シート3は、発電素子の光入射側の面に設置され、発電素子とは反対側の表面が凹凸面3aである。凹凸シート3の屈折率は、上記発電素子の最も凹凸シート3側に位置する層(例えば基板14)の屈折率よりも高い。
【解決手段】太陽電池は、有機薄膜からなる発電層を含む複数の層を積層した発電素子と、凹凸シート3とを備えている。凹凸シート3は、発電素子の光入射側の面に設置され、発電素子とは反対側の表面が凹凸面3aである。凹凸シート3の屈折率は、上記発電素子の最も凹凸シート3側に位置する層(例えば基板14)の屈折率よりも高い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜からなる発電層を含む発電素子の光入射側の面に凹凸シートを配置した有機薄膜太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池として、図24に示す構成の発電素子100が知られている。この発電素子100は、裏面電極101、有機薄膜からなる発電層102、透明電極103および光透過性の基板104をこの順で積層したものである。この構成では、発電素子100に対して基板104側から光が入射すると、入射光は発電層102で吸収されて電力に変換され、裏面電極101および透明電極103から取り出される。
【0003】
このとき、同図に示すように、発電素子100に対して外部から垂直に入射する光L11を考えると、光L11は基板104の表面でほとんど偏向されず基板104に入射し、光L12として伝搬する。そして、光L12の一部は発電層102にて吸収されるが、残りは吸収しきれずに光L13として反射される。光L13は、基板104の表面で、フレネル反射によって発電層102側に反射される光L14と、基板104を透過する光L15とに分離される。光L14は発電層102に入射して発電(発電層102での光電変換)に用いられるが、光L15は発電には用いられない。
【0004】
基板104の屈折率がガラスのように1.5程度であれば、上記のように略垂直入射の場合、光L14と光L15との比率は、4:96となり、光L13のうちのほとんどが発電に用いられなくなる。
【0005】
そこで、このような光利用効率(発電効率)の低下を回避するために、従来から、図25に示す構成の太陽電池200も知られている。この太陽電池200は、図24の発電素子100の基板104側の表面に、基板104と屈折率の同じ凹凸シート105を設置したものである。なお、この構成は、凹凸シート105を設けずに、基板104の表面に凹凸形状を形成した構成と等価である。
【0006】
この構成において、太陽電池200に対して外部から垂直に入射する光L21は、凹凸シート105により偏向され、光L22として基板104に入射する。偏向された光L22の一部は発電層102にて吸収され、電気に変換されるが、残りは発電層102で吸収しきれずに光L23として基板104側に向かって反射される。光L23は、凹凸シート105がない場合は、そのほとんどが基板104を透過し、発電に用いられないが、凹凸シート105があることで、その多くが凹凸シート105の凹凸面105aで反射され、発電層102側に向かう光L24となる。光L24は、発電層102に2回目の入射によって吸収され、発電に用いられる。なお、光L23の残りは、凹凸シート105の凹凸面105aで屈折し、光L25として外部に出射される。以降、発電層102に入射して吸収しきれなかった光については、発電層102と凹凸シート105との間で反射を繰り返すことにより、その多くが発電層102にて吸収される。
【0007】
また、例えば特許文献1には、凹凸シートを複数の層で構成するとともに、各層の屈折率を、発電層側から光入射側(発電層から離れる側)に向かって段階的に小さくすることにより、発電素子に入射した光を長く、発電素子内に止める閉じ込め効果を得て、発電効率を改善するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−340583号公報(請求項2、段落〔0012〕、〔0037〕、図6等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、一般的に、発電層は入射光を1回では吸収しきれないこと、また、発電層に対して光が垂直に入射するときよりも斜めに入射するときのほうが、光が発電層の内部を斜め方向に伝搬するため、発電層での光の吸収量が増えること、が知られている。このような傾向は、発電層の厚さが薄くなるほど顕著である。
【0010】
この点、図25の構成や、特許文献1のように凹凸シートの屈折率を設定する構成では、入射光を偏向する効果が小さいため、発電層での吸収量を増大させる効果を高めることができない。また、凹凸シートの最も光入射側の層の屈折率が発電素子の基板と同じか、それよりも小さいと、入射光が1回目に発電層で吸収されずにそこで反射されて、凹凸シートの凹凸面に到達しても、到達した光の上記凹凸面での反射率が小さいため、上記光を発電層側に戻す閉じ込め効果が小さい。このため、トータルでの光の利用効率(発電効率)を確実に増大させることができない。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、凹凸シートにて入射光を偏向する効果を高めて、発電層での吸収量を増大させる効果を高めるとともに、発電層で反射して凹凸シートに入射する光の凹凸面での反射率を増大させて、光の閉じ込め効果を大きくし、トータルでの光の利用効率を確実に増大させることができる有機薄膜太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の有機薄膜太陽電池は、有機薄膜からなる発電層を含む複数の層を積層した発電素子と、前記発電素子の光入射側の面に設置され、前記発電素子とは反対側の表面が凹凸面である凹凸シートとを備えた有機薄膜太陽電池であって、前記凹凸シートの屈折率は、前記発電素子の最も前記凹凸シート側に位置する層の屈折率よりも高いことを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、凹凸シートの屈折率が、発電素子の最も凹凸シート側(光入射側)に位置する層の屈折率と同じかそれよりも低い構成に比べて、凹凸シートから発電素子に入射する光の入射角を増大させることができ、1回目に発電層に入射する光を、発電層が吸収しやすい入射角に偏向することができる。これにより、1回目に入射する光の発電層での吸収量を増大させる効果を高めることができ、特に発電層が薄い場合には、その効果を顕著に得ることができる。
【0014】
また、入射光が1回目に発電層で吸収されずにそこで反射されたとしても、その反射された光が凹凸シートの凹凸面で全反射する割合が増大し、上記光を発電層側に戻す閉じ込め効果を高めることができる。その結果、2回目以降に発電層に入射する光の吸収量を増大させて、トータルでの光の利用効率(発電効率)を確実に増大させることができる。
【0015】
本発明の有機薄膜太陽電池において、前記発電素子は、前記発電層を支持するための光透過性の基板を、前記複数の層のうちの1つの層として含んでおり、前記基板は、前記発電素子の最も前記凹凸シート側に位置しており、前記凹凸シートの屈折率は、前記基板の屈折率よりも高い構成であってもよい。
【0016】
この場合、発電素子の最も凹凸シート側に光透過性の基板を位置させて、この基板上に凹凸シートを設置する構成の有機薄膜太陽電池において、上述した本発明の効果を得ることができる。
【0017】
本発明の有機薄膜太陽電池において、前記発電素子は、前記発電層を支持するための基板と、前記発電層に対して前記基板とは反対側に位置して、前記発電層を保護する光透過性の保護層とを、それぞれ前記複数の層のうちの1つの層として含んでおり、前記保護層は、前記発電素子の最も前記凹凸シート側に位置しており、前記凹凸シートの屈折率は、前記保護層の屈折率よりも高い構成であってもよい。
【0018】
この場合、発電素子の最も凹凸シート側に光透過性の保護層を位置させて、この保護層上に凹凸シートを設置する構成の有機薄膜太陽電池において、上述した本発明の効果を得ることができる。
【0019】
本発明の有機薄膜太陽電池において、前記発電層は、入射光の1回の吸収量が垂直入射のときの吸収量よりも多くなるような入射角の範囲が存在する厚さを有していてもよい。
【0020】
垂直入射よりも斜め入射のほうが発電層での光の吸収量が増える場合に、凹凸シートを設けて、発電素子に対して入射光を斜めに入射させ、発電層での吸収量を増大させる本発明の構成が有効となる。特に、発電層が薄い場合には、垂直入射よりも斜め入射のほうが発電層での吸収量の増大が顕著であるため、上述した本発明の構成が非常に有効となる。
【0021】
本発明の有機薄膜太陽電池において、前記凹凸シートの前記凹凸面には、入射光の表面反射を防止するための反射防止機構が設けられていることが望ましい。
【0022】
凹凸シートの屈折率を高くすると、外部から凹凸シートに光が入射する際の表面反射による光利用効率(発電効率)の低下が懸念される。凹凸シートの凹凸面に反射防止機構が設けられていることにより、表面反射による光の損失(フレネル損失)を低減して、光利用効率を高めることができる。
【0023】
本発明の有機薄膜太陽電池において、前記反射防止機構は、前記凹凸面の表面にコーティングされる誘電体多層膜からなる反射防止膜であってもよい。また、本発明の有機薄膜太陽電池において、前記反射防止機構は、前記凹凸面の表面を粗面化した反射防止構造で構成されていてもよい。
【0024】
このような反射防止膜または反射防止構造により、凹凸面でのフレネル損失を確実に低減して、光利用効率を確実に高めることができる。
【0025】
本発明の有機薄膜太陽電池において、前記凹凸シートの前記凹凸面は、前記発電素子とは反対側に凸または前記発電素子側に凹となる単位構造を2次元的に配置することによって形成されており、前記単位構造は、楕円半球を含む半球、円錐、四角錐、円錐台、四角錐台のいずれかの形状であってもよい。また、本発明の有機薄膜太陽電池において、前記凹凸シートの前記凹凸面は、前記発電素子とは反対側に凸または前記発電素子側に凹となる単位構造を並列に配置することによって形成されており、前記単位構造は、プリズムまたはシリンドリカルレンズの形状であってもよい。
【0026】
凹凸シートの凹凸面が上記いずれの形状であっても、凹凸面の高さの設定次第で、外部から入射する光を凹凸面で大きく偏向させて、発電層に対して斜めに入射させ、吸収量を増大させる効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のように凹凸シートの屈折率を設定することにより、凹凸シートから発電素子に入射する光の入射角を増大させて、1回目に入射する光の発電層での吸収量を増大させる効果を高めることができる。また、1回目に発電層で吸収されずにそこで反射された光を、凹凸シートの凹凸面での全反射によって発電層側に戻す閉じ込め効果を高めて、2回目以降に発電層に入射する光の吸収量を増大させることができる。その結果、トータルでの光の利用効率を確実に増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る太陽電池の概略の構成を示す説明図である。
【図2】上記太陽電池が備える凹凸シートに外部から略垂直に光が入射した場合の光路の詳細を示す説明図である。
【図3】上記凹凸シートの構成例を示す断面図である。
【図4】上記凹凸シートの平面図である。
【図5】参考例の凹凸シートに光が略垂直に入射した場合の、上記凹凸シート内部での光の偏向の度合いを示す説明図である。
【図6】上記実施の形態の凹凸シートに光が略垂直に入射した場合の、上記凹凸シート内部での光の偏向の度合いを示す説明図である。
【図7】図6の凹凸シートを基板上に設置して、上記凹凸シートに光が略垂直に入射した場合の、上記凹凸シートおよび上記基板の内部での光の偏向の度合いを示す説明図である。
【図8】上記太陽電池の発電層での光の吸収量の入射角依存性を示すグラフである。
【図9】参考例の凹凸シートの内部における、発電層にて吸収されずに反射された光の光路を示す説明図である。
【図10】上記実施の形態の凹凸シートの内部における、発電層にて吸収されずに反射された光の光路を示す説明図である。
【図11】上記凹凸シートの屈折率と、基板側から入射した光の凹凸面での反射率との関係を示すグラフである。
【図12】反射防止機構として反射防止膜を凹凸面に設けた凹凸シートの断面図である。
【図13】反射防止機構として反射防止構造を凹凸面に設けた凹凸シートの断面図である。
【図14】(a)は、上記実施の形態の凹凸シートの他の構成を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の凹凸シートの平面図である。
【図15】(a)は、上記凹凸シートのさらに他の構成を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の凹凸シートの平面図である。
【図16】(a)は、上記凹凸シートのさらに他の構成を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の凹凸シートの平面図である。
【図17】(a)は、上記凹凸シートのさらに他の構成を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の凹凸シートの平面図である。
【図18】(a)は、上記凹凸シートのさらに他の構成を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の凹凸シートの平面図である。
【図19】(a)は、上記凹凸シートのさらに他の構成を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の凹凸シートの平面図である。
【図20】(a)は、上記凹凸シートのさらに他の構成を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の凹凸シートの平面図である。
【図21】凹凸シートの凹凸面が半球形状である場合に、上記凹凸シートに垂直に入射して発電層に入射する光の入射角ごとの相対的な比率を示す説明図である。
【図22】凹凸シートの凹凸面が円錐形状である場合に、上記凹凸シートに垂直に入射して発電層に入射する光の入射角ごとの相対的な比率を示す説明図である。
【図23】上記太陽電池の他の構成を示す説明図である。
【図24】従来の太陽電池としての発電素子の概略の構成を示す説明図である。
【図25】従来の太陽電池の他の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0030】
(有機薄膜太陽電池について)
図1は、本実施形態の有機薄膜太陽電池(以下、単に太陽電池と称する)1の概略の構成を示す説明図である。本実施形態の太陽電池1は、発電素子2と、凹凸シート3とを備えている。凹凸シート3は、発電素子2の光入射側の面に設置され、発電素子2とは反対側の表面が凹凸状の凹凸面3aとなっている。なお、凹凸シート3の詳細については、後述する。
【0031】
発電素子2は、複数の層を積層して構成されている。具体的には、発電素子2は、裏面電極11、発電層12、透明電極13および基板14をこの順で積層して構成されている。裏面電極11、発電層12、透明電極13および基板14は、それぞれ独立した層を構成しており、これらの複数の層で発電素子2が構成されている。
【0032】
発電層12は、光を受光して電力(電気)に変換する光電変換層であり、本実施形態では、有機薄膜で構成されている。より具体的には、発電層12は、P層、I層、N層をこの順で積層して構成される。P層は、p型有機半導体材料で構成され、I層は、p型有機半導体材料とn型有機半導体材料との混合層で構成され、N層は、n型有機半導体材料で構成されている。p型有機半導体材料では、電気伝導に寄与するのは正孔であり、n型有機半導体材料では、電気伝導に寄与するのが電子である。p型有機半導体材料としては、例えば、P3HT(ポリ−3−ヘキシルチオフェン)を用いることができ、n型有機半導体材料としては、例えばPCBM(6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を用いることができる。
【0033】
発電層12に光が入射すると、励起子(電子、正孔)が生じ、電子はN層側に、正孔はP層側に集まるため、裏面電極11および透明電極13間に電位差が生ずる。したがって、裏面電極11および透明電極13を介して、上記の電位差に相当する電流を取り出すことができる。
【0034】
裏面電極11および透明電極13は、発電層12にて発生した電力を取り出すための電極であり、一方は正極に対応し、他方は負極に対応している。裏面電極11は、例えばアルミニウムで構成されており、透明電極13は、例えばITO(Indium Tin Oxide)で構成されている。基板14は、発電層12を支持するための光透過性の透明基板であり、例えばガラスで構成されている。本実施形態では、基板14は、発電素子2において最も光入射側、つまり、最も凹凸シート3側に位置している。
【0035】
上記の構成において、外部から太陽電池1に対して略垂直に入射した光(太陽光)L1は、凹凸シート3により偏向され、光L2として基板14に入射する。光L2は、透明電極13を透過し、発電層12に入射して、その一部が発電層12にて吸収され、電気に変換されるが、残りは発電層12で吸収しきれずに光L3として基板14側に向かって反射される。なお、光L2のうち、発電層12を透過した光は、裏面電極11で反射されて発電層12側に戻され、再利用が図られる。
【0036】
光L3は、凹凸シート3がない場合は、そのほとんどが基板14を透過し、発電に用いられないが、凹凸シート3があることで、その多くが凹凸シート3の凹凸面3aで反射され、発電層12側に向かう光L4となる。光L4は、発電層12に2回目の入射によって吸収され、発電に用いられる。以降、発電層12に入射して吸収しきれなかった光については、発電層12と凹凸シート3(凹凸面3a)との間で反射を繰り返すことにより、その多くが発電層12にて吸収される。
【0037】
(凹凸シートについて)
次に、凹凸シート3の詳細について説明する。本実施形態では、凹凸シート3の屈折率は、発電素子2の最も凹凸シート3側に位置する層の屈折率よりも高くなるように設定されている。つまり、本実施形態のように、発電素子2の最も凹凸シート3側に位置する層が基板14の場合、基板14を構成するガラスの屈折率は、例えば1.52であるので、凹凸シート3は、屈折率が1.52よりも大きい材料で構成されている。このような凹凸シート3を構成する材料としては、例えばポリカーボネート(PC;屈折率1.59)、エポキシ樹脂(屈折率;1.55〜1.61)を用いることができる。また、凹凸シート3として、高屈折率(屈折率;1.8)の樹脂(例えば高屈折率を有する無機(TiO2など)微粒子を含有する有機無機混合材)を用いることもできる。
【0038】
図2は、凹凸シート3に外部から略垂直に光L1が入射した場合の光路の詳細を示している。凹凸シート3の屈折率は基板14の屈折率よりも大きいので、光L2および光L4において、凹凸シート3側から基板14との界面に入射する光は、それぞれ、上記界面にて、スネルの法則にしたがって屈折している。なお、光L5は、光L3のうちで凹凸シート3の凹凸面3aを透過して、発電に用いられない光を表している。
【0039】
本実施形態の構成によれば、従来の図25の構成や特許文献1の構成と比べて、(1)略垂直入射光が凹凸シート3に入射したときの偏向角度(光L2の偏向角度)が大きい、(2)発電層12にて吸収しきれない光L3が再び凹凸面3aで反射して光L4として再利用される割合が大きい(光が2回目に発電層12に入射して吸収される量が増大する)、という2点の効果を得ることができ、従来よりも高い光利用効率を実現することができる。以下、上記(1)(2)の点について、さらに詳細に説明する。
【0040】
(偏向角度の増大について)
図3は、凹凸シート3の構成例を示す断面図であって、凹凸面3aが楕円半球を2次元的に配置することによって形成されている場合の断面図である。なお、楕円半球とは、楕円を長軸または短軸を回転軸として回転させた立体を長軸または短軸に垂直な面でカットした形状を指す。楕円半球の底面からの高さをh(cm)、配置方向の周期(ピッチ)をd(cm)としたとき、アスペクト比aを、a=h/dと定義する。なお、楕円半球の高さhおよび周期dの一方は、楕円の長軸(または短軸)の長さの半分に相当し、他方は楕円の短軸(または長軸)の長さに相当する。なお、a=0.5の場合、楕円半球は完全な半球形状(断面が真円の半球形状)となる。
【0041】
なお、上記の高さhを、凹凸面3aの凸部と凹部との高低差に相当する高さと考え、上記の周期dを、凹凸面3aの凸部または凹部の繰り返し周期と考えれば、凹凸面3aが後述するどのような形状であっても、上記したアスペクト比の定義を用いることができる。
【0042】
図4は、凹凸シート3の平面図である。図4において、凹凸面3aのうち、凹凸部を3a1とし、凹凸部3a1以外の平面部を3a2とすると、凹凸面3aにおいて平面部3a2が占める割合Sは、凹凸部3a1の面積をS1(cm2)とし、平面部3a2の面積をS2(cm2)として、S=(S2/(S1+S2))で表される。例えば、図4のように、楕円半球の外周(平面視で円形)が互いに接するように各楕円半球を2次元的に配置した場合、Sは約0.09(9%)となる。
【0043】
図5は、参考例であって、屈折率が基板14と同じ凹凸シート3’に光が略垂直に入射した場合の、凹凸シート3’内部での光の偏向の度合いを示す説明図である。図5において、凹凸シート3’の屈折率をn1とし、楕円半球での屈折によって入射光が偏向される偏向角度をθ1とする。偏向角度θ1は、図5に示すように、楕円形状の凹凸面3bに対する入射角がほぼ90°となる部分に光が入射したときに最大となる。つまり、偏向角度θ1の最大値は、スネルの法則より、
1・sin(90°)=n1・sin(90°−θ1)
を満足する値となる。したがって、例えば、n1=1.5とすると、偏向角度θ1の最大値は、約48°となる。
【0044】
つまり、図5のように凹凸面3bが楕円半球を2次元的に配置して形成される場合は、凹凸シート3’に略垂直に入射した光は、凹凸シート3’によって0〜48°の角度に偏向される(偏向角度は凹凸面に対する入射位置によって変化する)。
【0045】
図6は、本実施形態のように、屈折率が基板14よりも大きい凹凸シート3に光が略垂直に入射した場合の、凹凸シート3内部での光の偏向の度合いを示す説明図である。図6において、凹凸シート3の屈折率をn2とし、楕円半球での屈折によって入射光が偏向される偏向角度をθ2とする。偏向角度θ2は、図6に示すように、楕円形状の凹凸面3aに対する入射角がほぼ90°となる部分に光が入射したときに最大となる。つまり、偏向角度θ2の最大値は、スネルの法則より、
1・sin(90°)=n2・sin(90°−θ2)
を満足する値となる。したがって、例えば、n2=1.8とすると、偏向角度θ2の最大値は、約56°となる。
【0046】
つまり、n1<n2の場合、θ1<θ2となり、凹凸シート3の屈折率が高いと、入射光を大きく偏向できることになる。なお、凹凸面3aが、円錐、四角錐、プリズム形状の場合は、略垂直入射光は、0〜56°の範囲の中の1つの角度に偏向される(偏向角度は1つの角度に集中する)が、この点については後述する。
【0047】
図7は、図6の凹凸シート3を基板14上に設置して、凹凸シート3に光が略垂直に入射した場合の、凹凸シート3および基板14の内部での光の偏向の度合いを示す説明図である。図7において、凹凸シート3の屈折率をn2(=1.8)とし、楕円半球での屈折によって入射光が偏向される偏向角度をθ2とし、基板14の屈折率をn1(=1.5)とし、基板14内での光の偏向角度をθ3とする。偏向角度θ2の最大値は、図6の場合と同じ(約56°)であり、また、スネルの法則より、
n2・sinθ2=n1・sinθ3
が成り立つ。この式より、基板14内での偏向角度θ3の最大値は、約84°となる。つまり、基板14の屈折率n1が凹凸シート3の屈折率よりも低いため、基板14内での偏向角度θ3の最大値は、偏向角度θ2の最大値よりも大きくなる。
【0048】
なお、図示はしないが、基板14の屈折率が凹凸シート3の屈折率よりも高い場合は、上記とは逆に、基板14内での偏向角度θ3の最大値は、偏向角度θ2の最大値よりも小さくなることは、スネルの法則より明らかである。
【0049】
以上のことから、基板14よりも屈折率の高い凹凸シート3を基板14上に設置することにより、入射光を基板14内で大きく偏向できると言える。これにより、発電層12での光の吸収量を増大させることができ、しかも、その効果を従来よりも高めることができる。ここで、発電層12の光の吸収量を増大させる効果は、発電層12が薄いほど高くなる。以下、発電層12の厚さと吸収量との関係について説明する。
【0050】
図8は、発電層12が薄い場合(例えば層厚100nm)と厚い場合(例えば層厚300nm)とにおける、発電層12での光の吸収量の入射角依存性を示すグラフである。なお、図8において、縦軸の短絡電流密度Jsc(mA/cm2)とは、太陽電池の単位面積あたりで発生する短絡電流(太陽電池の正極と負極とを導線で接続して短絡した状態での電流)を指す。発電層12での光の吸収量と短絡電流密度Jscとは対応関係にあり、発電層12での吸収量が増大すると、短絡電流密度Jscも増大することになる。
【0051】
図8より、発電層12を十分に厚くすると、内部角度にあまり依存せずに、発電層12にて吸収が最大限行われるが、発電層12が薄く、1回で光を吸収しきれない厚さの場合は、発電層12に対して斜めに入射すると、発電層12の内部を光が斜め方向に伝搬するため、吸収量が増える。発電層12が薄い場合は、入射角が約60°付近で短絡電流密度Jsc(吸収量)が最大となり、垂直入射(入射角0°)に比べて約1.3倍多いことがわかる。
【0052】
ここで、図5で示したように、基板14と同じ屈折率(例えば1.5)の凹凸シート3’を用いた構成では、上述したように、最大で約48°しか光を偏向することができず、1回の偏向で60°(発電層12が薄い場合に吸収量が最大となる角度)に偏向することはできない。このため、発電層12が薄い場合は、発電層12での1回の吸収量を増大させることはできない。
【0053】
しかし、図7で示したように、凹凸シート3の屈折率を1.8にして、基板の屈折率(1.5)よりも高くすることにより、基板14内での偏向角度を0°〜84°にすることができ、これには吸収量が最大となる偏向角度60°が含まれる。したがって、凹凸シート3の形状設計(例えばアスペクト比)を工夫して、発電層12に対する入射角が約60°付近となるように、多くの光を偏向することにより、発電層12に1回目に入射する光の吸収量を増大させる可能となる。
【0054】
なお、発電層12が厚い場合、図8より、発電層12への斜め入射による吸収量の増加の度合いが、発電層12が薄い場合に比べると小さいが、斜め入射によって垂直入射よりも吸収量が増大することに変わりはない。したがって、発電層12の厚さが、入射光の1回の吸収量が垂直入射(入射角0°)のときの吸収量よりも多くなるような入射角の範囲が存在する厚さであれば、屈折率の高い凹凸シート3によって、垂直入射のときよりも発電層12での吸収量が多くなるような角度に入射光を偏向させて、発電層12での吸収量を増大させることができると言える。
【0055】
(2回目以降に発電層12に入射する光の吸収量の増大について)
図9は、屈折率が1.5の凹凸シート3’の内部における、発電層12にて吸収されずに反射された光L3の光路を示す説明図である。光L3は、凹凸シート3’の凹凸面3bに入射し、その凹凸面3bの構造によって、スネルの法則により屈折して透過する光L5と、反射する光L4に分けられる。
【0056】
これに対して、図10は、屈折率が1.8の凹凸シート3の内部における、発電層12にて吸収されずに反射された光L3の光路を示す説明図である。光L3は、凹凸シート3の凹凸面3aに入射し、その凹凸面3aの構造によって、スネルの法則により屈折して透過する光L5と、反射する光L4に分けられる。このとき、凹凸シート3の屈折率が1.8と高いため、凹凸面3aに入射した光L3のうち、凹凸面3aでの全反射条件を満たす光が増大する。凹凸面3aの凸形状の内部で全反射を繰り返した光は、最終的に、基板14および発電層12側へ戻る光L4となる。
【0057】
ここで、凹凸面3aを有する凹凸シート3では、凹凸面3aに基板14側から入射した光が反射する割合(反射率R)が、凹凸シート3の屈折率nの関数(R=1−1/n2)で大まかに表されることが数値計算等で判明した。つまり、図11は、凹凸シート3の屈折率nと、基板14側から入射した光の凹凸面3aでの反射率Rとの関係を示している。凹凸シート3の凹凸形状(楕円半球、円錐、四角錐)によって多少の数値の違いはあるものの、それぞれの構造にて、屈折率nが高くなると反射率Rが高くなる傾向が見られた。しかも、屈折率nと反射率Rとの関係は、R=1−1/n2の関数に漸近しており、凹凸シート3の屈折率nが高いほうが、反射率Rが高くなって、発電層12に2回目に入射する光が増大することがわかった。
【0058】
(まとめ)
以上、太陽電池1において、凹凸シート3の屈折率が発電素子2の最も凹凸シート3側に位置する層(上記の例では基板14)の屈折率よりも高いことにより、凹凸シート3から発電素子2に入射する光の入射角を増大させることができ、1回目に発電層12に入射する光を、発電層12での吸収量が多い入射角(発電層12が吸収しやすい入射角)に偏向することができる。これにより、1回目に入射する光の発電層12での吸収量を増大させる効果を高めることができる。特に、発電層12が薄い場合には、垂直入射よりも斜め入射のほうが発電層12での吸収量が顕著に増大するため、上述した効果がさらに高まる。
【0059】
また、凹凸シート3の屈折率が高いことにより、入射光が1回目に発電層12で吸収されずにそこで反射されたとしても、その反射された光が凹凸シート3の凹凸面3aで全反射する割合(反射率R)が増大するため、上記光を発電層12側に戻す閉じ込め効果を高めることができる。その結果、2回目以降に発電層12に入射する光の吸収量を増大させて、トータルでの光の利用効率(発電効率)を確実に増大させることができる。
【0060】
なお、図11で示した凹凸シート3の屈折率nと反射率Rとの関係により、屈折率nが高いほど反射率Rが多くなるため、上記の閉じ込め効果は、凹凸シート3の屈折率nが高いほど大きいと言える。
【0061】
また、発電素子2において、基板14が最も凹凸シート3側に位置している構成において、凹凸シート3の屈折率が基板14の屈折率よりも高いので、そのような構成の太陽電池1において、上述した効果を得ることができる。
【0062】
また、発電層12は、図8で示したように、入射光の1回の吸収量が垂直入射のときの吸収量よりも多くなるような入射角の範囲が存在する厚さを有しているので、発電層12での吸収量を増大させるべく、屈折率の高い凹凸シート3を設けて、発電素子2に対して入射光を斜めに入射させる本実施形態の構成が非常に有効となる。
【0063】
(補足)
凹凸シート3の凹凸面3aの高さhを増大させると、凹凸面3aを介して発電層12に入射する光の入射角を増大させることができる。したがって、凹凸シート3の屈折率の調節と併せて、凹凸面3aの高さの調節を行うことにより、偏向角度を効率よく、発電層12での1回の吸収量が多い入射角に合わせることができる。
【0064】
また、例えば、凹凸シート3の屈折率によっては、凹凸シート3にて1回で偏向できる角度が、発電層12での1回の吸収量が多い入射角(例えば60°)に届かない場合もある。このような場合でも、凹凸面3aの高さを調節することで、屈折率のさらに大きな凹凸シート3で代替することなく、偏向角度を発電層12での1回の吸収量が多い入射角に合わせることができる。
【0065】
(反射防止機構について)
凹凸シート3の屈折率を基板14よりも高くする利点は上述の通りであるが、凹凸シート3の屈折率を高くすると、外部から凹凸シート3に光が入射する場合の表面反射(フレネル反射)による損失(光利用効率の低下)が考えられる。そこで、図12および図13に示すように、凹凸シート3の凹凸面3aに、入射光の表面反射を防止するための反射防止機構20を設けることが望ましい。
【0066】
図12は、反射防止機構20を反射防止膜21で構成した場合の凹凸シート3の断面図であり、図13は、反射防止膜20を反射防止構造22で構成した場合の凹凸シート3の断面図である。反射防止膜21は、凹凸面3aの表面にコーティングされる誘電体多層膜である。反射防止構造22は、凹凸面3aの表面をさらに凹凸状に粗面化した構造である。このような反射防止構造22は、凹凸面3aの表面に形成される凹凸が一方向(例えば凹凸シート3と基板14との界面に垂直な方向)を向くものであれば、凹凸シート3の成形時に用いる金型の形状を工夫することにより、実現することができる。
【0067】
このように、凹凸シート3の凹凸面3aに反射防止機構20が設けられていることにより、凹凸面3aでの表面反射による光の損失(フレネル損失)を低減して、発電層12での入射光量および吸収量を増大させ、光利用効率(発電効率)を高めることができる。
【0068】
また、反射防止機構20を反射防止膜21または反射防止構造22で構成することにより、凹凸面3aでのフレネル損失を確実に低減して、光利用効率を確実に高めることができる。
【0069】
また、特に太陽光発電では、非常に広い波長領域、入射角度において反射防止効果を高める必要があるが、反射防止膜21では、広い波長域で反射防止効果を高めるためには、膜構成(材料、層数など)が複雑になる。この点、反射防止構造22では、反射防止構造22を構成する凹部または凸部の形成ピッチおよび高低差を、利用波長、すなわち、発電層12にて光電変換される光の波長域(例えば400nm〜700nm)の最短波長よりも短くすることで(例えばピッチ200nm以下、高低差200nm以上400nm未満)、入射光の波長域が広く、入射角度範囲が広い場合でも、フレネル損失を低減する効果を得ることができる。したがって、反射防止機構20としては、反射防止構造22を用いることが望ましい。
【0070】
(実施例)
次に、太陽電池1の発電層12の厚さ、凹凸シート3の有無、凹凸シート3の屈折率、反射防止構造22の有無と、発電層12で発生する短絡電流密度との関係について、実施例1〜4として説明する。また、実施例1〜4との比較のため、比較例1〜3も併せて示す。なお、凹凸シート3の凹凸面3aは、いずれも、楕円半球の2次元配置によって形成されているものとした。また、凹凸シート3が設置される基板14の屈折率は、いずれも1.52とした。
【0071】
【表1】
【0072】
比較例1および2、実施例1および2は、発電層12の厚さが100nmと薄い場合の結果を示している。一方、比較例3、実施例3および4は、発電層12の厚さが300nmと比較的厚い場合の結果を示している。これらの比較例および実施例から、発電層12が厚い場合でも、薄い場合でも、基板(屈折率;1.52)よりも高い屈折率の凹凸シート3を設けることで、短絡電流密度が増大し、反射防止構造22を設けることにより、短絡電流密度がさらに増大することがわかった。
【0073】
(凹凸面の形状のバリエーションについて)
図14〜図20は、凹凸シート3の凹凸面3aの形状のバリエーションを示すものであって、いずれも、(a)は凹凸シート3の断面図を示し、(b)は凹凸シート3の平面図を示している。凹凸シート3の凹凸面3aの形状は、楕円半球の2次元配置によって形成されるものに限定されるわけではない。
【0074】
つまり、図14(a)(b)に示すように、凹凸面3aは、断面が真円の半球を2次元的に配置することによって形成されていてもよい。また、図15(a)(b)に示すように、凹凸面3aは、円錐を2次元的に配置することによって形成されていてもよい。また、図16(a)(b)に示すように、凹凸面3aは、四角錐を2次元的に配置することによって形成されていてもよい。また、図17(a)(b)に示すように、凹凸面3aは、円錐台を2次元的に配置することによって形成されていてもよい。また、図18(a)(b)に示すように、凹凸面3aは、四角錐台を2次元的に配置することによって形成されていてもよい。また、図19(a)(b)に示すように、凹凸面3aは、一方向に伸びたプリズム(例えば断面三角形の三角プリズム)を並列に設けることによって形成されていてもよい。また、図20(a)(b)に示すように、凹凸面3aは、一方向に伸びたシリンドリカルレンズを並列に設けることによって形成されていてもよい。
【0075】
上記したいずれの構成であっても、凹凸面3aの高さ(凹部と凸部との高低差)を適切に設定することにより、外部から入射する光を凹凸面3aで大きく偏向させて、発電層12に対して斜めに入射させ、発電層12での吸収量を高める効果を増大させることができる。また、
【0076】
また、図21は、凹凸面3aが半球形状である場合に、凹凸シート3に垂直に入射して発電層12に入射する光の入射角ごとの相対的な比率(配光分布)を示している。ここでは、上記の半球形状として、断面が真円の半球と断面が楕円の半球との両者について示す。
【0077】
凹凸面3aが半球形状である場合、入射光の凹凸面3aに対する入射位置によって屈折方向が異なるため、図21に示すように、発電層12に入射する光の入射角に分布を持たせることができる。これにより、広い入射角範囲で発電層12に光を入射させて、発電層12での吸収量を上げることが可能となる。
【0078】
また、図22は、凹凸面3aが円錐形状である場合に、凹凸シート3に垂直に入射して発電層12に入射する光の入射角ごとの相対的な比率(配光分布)を示している。図22に示すように、凹凸面3aを円錐で形成した場合には、発電層12に対する光の入射角がほぼ1つの角度に集中する。つまり、凹凸面3aでの屈折により、入射光を1つの方向に集中して偏向することができる。しかも、凹凸面3aのアスペクト比a(=h/d)を変えることで、集中する入射角を変えることができる。これにより、上述した凹凸シート3の屈折率の調節と併せて、発電層12にて吸収量が多い入射角に合うように、凹凸面3aのアスペクト比aを設定することで、発電層12での光の吸収効率を上げることが可能となる。
【0079】
なお、このような効果は、凹凸面3aが円錐以外の錐系(例えば四角錐)で形成されている場合や、プリズムの並列配置によって形成されている場合でも、同様に得ることができる。
【0080】
なお、図21および図22において、入射角0°における比率が高いのは、凹凸面3aが平面部(図4の平面部3a2に相当)を有していることに起因する。つまり、半球や円錐を2次元的に並べて凹凸面3aを形成すると、いくらこれらを密に並べても、隣接する半球や円錐間には凹凸が生じない平面部ができる。この平面部に光が垂直に入射すると、その光は平面部にて偏向されずに、発電層12に垂直に(入射角0°で)入射する。このため、図21および図22では、入射角0°における比率が高くなっている。
【0081】
なお、以上では、凹凸面3aの形状が、半球凸形状(楕円半球凸形状、真円半球凸形状)、円錐凸形状、四角錐凸形状、円錐台凸形状、四角錐台凸形状、プリズム凸形状、シリンドリカル凸形状である場合について説明したが、上記とは逆の凹凸形状、つまり、半球凹形状(楕円半球凹形状、真円半球凹形状)、円錐凹形状、四角錐凹形状、円錐台凹形状、四角錐台凹形状、プリズム凹形状、シリンドリカル凹形状であっても、凸形状の場合と同様の傾向を示す。
【0082】
したがって、以上のことを総合すると、凹凸シート3の凹凸面3aは、発電素子2とは反対側に凸または発電素子2側に凹となる単位構造を2次元的に配置することによって形成されており、上記の単位構造は、楕円半球を含む半球、円錐、四角錐、円錐台、四角錐台のいずれかの形状であってもよいと言える。また、凹凸シート3の凹凸面3aは、発電素子2とは反対側に凸または発電素子2側に凹となる単位構造を並列に配置することによって形成されており、上記の単位構造は、プリズムまたはシリンドリカルレンズの形状であってもよいと言える。
【0083】
なお、凹凸面3aの平面部の面積、つまり、凹凸面3aにおける基板14と平行な面の面積は小さいほうが望ましい。これは、平面部の面積が小さいほうが、光発電層12に対する垂直入射光の割合が減って、凹凸面3a全体としての偏向効果が高くなり、発電効率もよりよくなるためである。
【0084】
(太陽電池の他の構成について)
図23は、太陽電池1の他の構成を示す説明図である。太陽電池1の発電素子2は、以下の構成であってもよい。すなわち、発電素子2は、上記の基板14上に、裏面電極11、発電層12、透明電極13、保護層15の各層をこの順で積層して構成されてもよい。そして、凹凸シート3は、保護層15上に設置されてもよい。
【0085】
つまり、この太陽電池1では、発電層12に対して基板14とは反対側で、発電素子2の最も凹凸シート3側に、保護層15が位置している。保護層15は、発電層12を保護するための光透過性のラミネート層であり、例えばEVA樹脂(Ethylene-Vinyl Acetate )やETFE樹脂(Ethylene tetrafluoroethylene)で構成されている。
【0086】
なお、基板14は、ガラス基板のほかに可撓性を有するフレキシブル基板で構成されていてもよい。また、裏面電極11は、ITOなどを材料とする透明電極で構成されていてもよい。
【0087】
発電素子2が上記のように構成される場合、凹凸シート3の屈折率は、発電素子2の最も凹凸シート3側に位置する保護層15の屈折率よりも高く設定されていればよい。例えば、保護層15が、上記したETFE(屈折率;1.42)やEVA(屈折率;1.482)で構成されている場合、凹凸シート3としては、例えばPC(屈折率1.59)やエポキシ樹脂(屈折率;1.55〜1.61)用いることができ、その他、高屈折率(屈折率;1.8)の樹脂(例えば高屈折率を有する無機(TiO2など)微粒子を含有する有機無機混合材)を用いることもできる。
【0088】
このように、発電素子2の最も凹凸シート3側に保護層15を位置させて、この保護層15上に凹凸シート3を設置する構成の太陽電池1においても、凹凸シート3の屈折率を保護層15の屈折率よりも高く設定することにより、上述した本実施形態の効果を得ることができる。すなわち、凹凸シート3によって入射光の偏向角度を増大させて、1回目に発電層12に入射する光の吸収量を増大させる効果を高めることができる。また、発電層12に入射してそこで反射された光の凹凸面3aでの反射率を増大させて、上記光の閉じ込め効果を高めることができ、2回目以降に発電層12に入射する光の吸収量を増大させて、トータルでの光の利用効率を確実に増大させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、有機薄膜太陽電池に利用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 太陽電池(有機薄膜太陽電池)
2 発電素子
3 凹凸シート
3a 凹凸面
12 発電層
14 基板
15 保護層
20 反射防止機構
21 反射防止膜
22 反射防止構造
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜からなる発電層を含む発電素子の光入射側の面に凹凸シートを配置した有機薄膜太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池として、図24に示す構成の発電素子100が知られている。この発電素子100は、裏面電極101、有機薄膜からなる発電層102、透明電極103および光透過性の基板104をこの順で積層したものである。この構成では、発電素子100に対して基板104側から光が入射すると、入射光は発電層102で吸収されて電力に変換され、裏面電極101および透明電極103から取り出される。
【0003】
このとき、同図に示すように、発電素子100に対して外部から垂直に入射する光L11を考えると、光L11は基板104の表面でほとんど偏向されず基板104に入射し、光L12として伝搬する。そして、光L12の一部は発電層102にて吸収されるが、残りは吸収しきれずに光L13として反射される。光L13は、基板104の表面で、フレネル反射によって発電層102側に反射される光L14と、基板104を透過する光L15とに分離される。光L14は発電層102に入射して発電(発電層102での光電変換)に用いられるが、光L15は発電には用いられない。
【0004】
基板104の屈折率がガラスのように1.5程度であれば、上記のように略垂直入射の場合、光L14と光L15との比率は、4:96となり、光L13のうちのほとんどが発電に用いられなくなる。
【0005】
そこで、このような光利用効率(発電効率)の低下を回避するために、従来から、図25に示す構成の太陽電池200も知られている。この太陽電池200は、図24の発電素子100の基板104側の表面に、基板104と屈折率の同じ凹凸シート105を設置したものである。なお、この構成は、凹凸シート105を設けずに、基板104の表面に凹凸形状を形成した構成と等価である。
【0006】
この構成において、太陽電池200に対して外部から垂直に入射する光L21は、凹凸シート105により偏向され、光L22として基板104に入射する。偏向された光L22の一部は発電層102にて吸収され、電気に変換されるが、残りは発電層102で吸収しきれずに光L23として基板104側に向かって反射される。光L23は、凹凸シート105がない場合は、そのほとんどが基板104を透過し、発電に用いられないが、凹凸シート105があることで、その多くが凹凸シート105の凹凸面105aで反射され、発電層102側に向かう光L24となる。光L24は、発電層102に2回目の入射によって吸収され、発電に用いられる。なお、光L23の残りは、凹凸シート105の凹凸面105aで屈折し、光L25として外部に出射される。以降、発電層102に入射して吸収しきれなかった光については、発電層102と凹凸シート105との間で反射を繰り返すことにより、その多くが発電層102にて吸収される。
【0007】
また、例えば特許文献1には、凹凸シートを複数の層で構成するとともに、各層の屈折率を、発電層側から光入射側(発電層から離れる側)に向かって段階的に小さくすることにより、発電素子に入射した光を長く、発電素子内に止める閉じ込め効果を得て、発電効率を改善するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−340583号公報(請求項2、段落〔0012〕、〔0037〕、図6等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、一般的に、発電層は入射光を1回では吸収しきれないこと、また、発電層に対して光が垂直に入射するときよりも斜めに入射するときのほうが、光が発電層の内部を斜め方向に伝搬するため、発電層での光の吸収量が増えること、が知られている。このような傾向は、発電層の厚さが薄くなるほど顕著である。
【0010】
この点、図25の構成や、特許文献1のように凹凸シートの屈折率を設定する構成では、入射光を偏向する効果が小さいため、発電層での吸収量を増大させる効果を高めることができない。また、凹凸シートの最も光入射側の層の屈折率が発電素子の基板と同じか、それよりも小さいと、入射光が1回目に発電層で吸収されずにそこで反射されて、凹凸シートの凹凸面に到達しても、到達した光の上記凹凸面での反射率が小さいため、上記光を発電層側に戻す閉じ込め効果が小さい。このため、トータルでの光の利用効率(発電効率)を確実に増大させることができない。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、凹凸シートにて入射光を偏向する効果を高めて、発電層での吸収量を増大させる効果を高めるとともに、発電層で反射して凹凸シートに入射する光の凹凸面での反射率を増大させて、光の閉じ込め効果を大きくし、トータルでの光の利用効率を確実に増大させることができる有機薄膜太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の有機薄膜太陽電池は、有機薄膜からなる発電層を含む複数の層を積層した発電素子と、前記発電素子の光入射側の面に設置され、前記発電素子とは反対側の表面が凹凸面である凹凸シートとを備えた有機薄膜太陽電池であって、前記凹凸シートの屈折率は、前記発電素子の最も前記凹凸シート側に位置する層の屈折率よりも高いことを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、凹凸シートの屈折率が、発電素子の最も凹凸シート側(光入射側)に位置する層の屈折率と同じかそれよりも低い構成に比べて、凹凸シートから発電素子に入射する光の入射角を増大させることができ、1回目に発電層に入射する光を、発電層が吸収しやすい入射角に偏向することができる。これにより、1回目に入射する光の発電層での吸収量を増大させる効果を高めることができ、特に発電層が薄い場合には、その効果を顕著に得ることができる。
【0014】
また、入射光が1回目に発電層で吸収されずにそこで反射されたとしても、その反射された光が凹凸シートの凹凸面で全反射する割合が増大し、上記光を発電層側に戻す閉じ込め効果を高めることができる。その結果、2回目以降に発電層に入射する光の吸収量を増大させて、トータルでの光の利用効率(発電効率)を確実に増大させることができる。
【0015】
本発明の有機薄膜太陽電池において、前記発電素子は、前記発電層を支持するための光透過性の基板を、前記複数の層のうちの1つの層として含んでおり、前記基板は、前記発電素子の最も前記凹凸シート側に位置しており、前記凹凸シートの屈折率は、前記基板の屈折率よりも高い構成であってもよい。
【0016】
この場合、発電素子の最も凹凸シート側に光透過性の基板を位置させて、この基板上に凹凸シートを設置する構成の有機薄膜太陽電池において、上述した本発明の効果を得ることができる。
【0017】
本発明の有機薄膜太陽電池において、前記発電素子は、前記発電層を支持するための基板と、前記発電層に対して前記基板とは反対側に位置して、前記発電層を保護する光透過性の保護層とを、それぞれ前記複数の層のうちの1つの層として含んでおり、前記保護層は、前記発電素子の最も前記凹凸シート側に位置しており、前記凹凸シートの屈折率は、前記保護層の屈折率よりも高い構成であってもよい。
【0018】
この場合、発電素子の最も凹凸シート側に光透過性の保護層を位置させて、この保護層上に凹凸シートを設置する構成の有機薄膜太陽電池において、上述した本発明の効果を得ることができる。
【0019】
本発明の有機薄膜太陽電池において、前記発電層は、入射光の1回の吸収量が垂直入射のときの吸収量よりも多くなるような入射角の範囲が存在する厚さを有していてもよい。
【0020】
垂直入射よりも斜め入射のほうが発電層での光の吸収量が増える場合に、凹凸シートを設けて、発電素子に対して入射光を斜めに入射させ、発電層での吸収量を増大させる本発明の構成が有効となる。特に、発電層が薄い場合には、垂直入射よりも斜め入射のほうが発電層での吸収量の増大が顕著であるため、上述した本発明の構成が非常に有効となる。
【0021】
本発明の有機薄膜太陽電池において、前記凹凸シートの前記凹凸面には、入射光の表面反射を防止するための反射防止機構が設けられていることが望ましい。
【0022】
凹凸シートの屈折率を高くすると、外部から凹凸シートに光が入射する際の表面反射による光利用効率(発電効率)の低下が懸念される。凹凸シートの凹凸面に反射防止機構が設けられていることにより、表面反射による光の損失(フレネル損失)を低減して、光利用効率を高めることができる。
【0023】
本発明の有機薄膜太陽電池において、前記反射防止機構は、前記凹凸面の表面にコーティングされる誘電体多層膜からなる反射防止膜であってもよい。また、本発明の有機薄膜太陽電池において、前記反射防止機構は、前記凹凸面の表面を粗面化した反射防止構造で構成されていてもよい。
【0024】
このような反射防止膜または反射防止構造により、凹凸面でのフレネル損失を確実に低減して、光利用効率を確実に高めることができる。
【0025】
本発明の有機薄膜太陽電池において、前記凹凸シートの前記凹凸面は、前記発電素子とは反対側に凸または前記発電素子側に凹となる単位構造を2次元的に配置することによって形成されており、前記単位構造は、楕円半球を含む半球、円錐、四角錐、円錐台、四角錐台のいずれかの形状であってもよい。また、本発明の有機薄膜太陽電池において、前記凹凸シートの前記凹凸面は、前記発電素子とは反対側に凸または前記発電素子側に凹となる単位構造を並列に配置することによって形成されており、前記単位構造は、プリズムまたはシリンドリカルレンズの形状であってもよい。
【0026】
凹凸シートの凹凸面が上記いずれの形状であっても、凹凸面の高さの設定次第で、外部から入射する光を凹凸面で大きく偏向させて、発電層に対して斜めに入射させ、吸収量を増大させる効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のように凹凸シートの屈折率を設定することにより、凹凸シートから発電素子に入射する光の入射角を増大させて、1回目に入射する光の発電層での吸収量を増大させる効果を高めることができる。また、1回目に発電層で吸収されずにそこで反射された光を、凹凸シートの凹凸面での全反射によって発電層側に戻す閉じ込め効果を高めて、2回目以降に発電層に入射する光の吸収量を増大させることができる。その結果、トータルでの光の利用効率を確実に増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る太陽電池の概略の構成を示す説明図である。
【図2】上記太陽電池が備える凹凸シートに外部から略垂直に光が入射した場合の光路の詳細を示す説明図である。
【図3】上記凹凸シートの構成例を示す断面図である。
【図4】上記凹凸シートの平面図である。
【図5】参考例の凹凸シートに光が略垂直に入射した場合の、上記凹凸シート内部での光の偏向の度合いを示す説明図である。
【図6】上記実施の形態の凹凸シートに光が略垂直に入射した場合の、上記凹凸シート内部での光の偏向の度合いを示す説明図である。
【図7】図6の凹凸シートを基板上に設置して、上記凹凸シートに光が略垂直に入射した場合の、上記凹凸シートおよび上記基板の内部での光の偏向の度合いを示す説明図である。
【図8】上記太陽電池の発電層での光の吸収量の入射角依存性を示すグラフである。
【図9】参考例の凹凸シートの内部における、発電層にて吸収されずに反射された光の光路を示す説明図である。
【図10】上記実施の形態の凹凸シートの内部における、発電層にて吸収されずに反射された光の光路を示す説明図である。
【図11】上記凹凸シートの屈折率と、基板側から入射した光の凹凸面での反射率との関係を示すグラフである。
【図12】反射防止機構として反射防止膜を凹凸面に設けた凹凸シートの断面図である。
【図13】反射防止機構として反射防止構造を凹凸面に設けた凹凸シートの断面図である。
【図14】(a)は、上記実施の形態の凹凸シートの他の構成を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の凹凸シートの平面図である。
【図15】(a)は、上記凹凸シートのさらに他の構成を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の凹凸シートの平面図である。
【図16】(a)は、上記凹凸シートのさらに他の構成を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の凹凸シートの平面図である。
【図17】(a)は、上記凹凸シートのさらに他の構成を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の凹凸シートの平面図である。
【図18】(a)は、上記凹凸シートのさらに他の構成を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の凹凸シートの平面図である。
【図19】(a)は、上記凹凸シートのさらに他の構成を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の凹凸シートの平面図である。
【図20】(a)は、上記凹凸シートのさらに他の構成を示す断面図であり、(b)は、同図(a)の凹凸シートの平面図である。
【図21】凹凸シートの凹凸面が半球形状である場合に、上記凹凸シートに垂直に入射して発電層に入射する光の入射角ごとの相対的な比率を示す説明図である。
【図22】凹凸シートの凹凸面が円錐形状である場合に、上記凹凸シートに垂直に入射して発電層に入射する光の入射角ごとの相対的な比率を示す説明図である。
【図23】上記太陽電池の他の構成を示す説明図である。
【図24】従来の太陽電池としての発電素子の概略の構成を示す説明図である。
【図25】従来の太陽電池の他の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0030】
(有機薄膜太陽電池について)
図1は、本実施形態の有機薄膜太陽電池(以下、単に太陽電池と称する)1の概略の構成を示す説明図である。本実施形態の太陽電池1は、発電素子2と、凹凸シート3とを備えている。凹凸シート3は、発電素子2の光入射側の面に設置され、発電素子2とは反対側の表面が凹凸状の凹凸面3aとなっている。なお、凹凸シート3の詳細については、後述する。
【0031】
発電素子2は、複数の層を積層して構成されている。具体的には、発電素子2は、裏面電極11、発電層12、透明電極13および基板14をこの順で積層して構成されている。裏面電極11、発電層12、透明電極13および基板14は、それぞれ独立した層を構成しており、これらの複数の層で発電素子2が構成されている。
【0032】
発電層12は、光を受光して電力(電気)に変換する光電変換層であり、本実施形態では、有機薄膜で構成されている。より具体的には、発電層12は、P層、I層、N層をこの順で積層して構成される。P層は、p型有機半導体材料で構成され、I層は、p型有機半導体材料とn型有機半導体材料との混合層で構成され、N層は、n型有機半導体材料で構成されている。p型有機半導体材料では、電気伝導に寄与するのは正孔であり、n型有機半導体材料では、電気伝導に寄与するのが電子である。p型有機半導体材料としては、例えば、P3HT(ポリ−3−ヘキシルチオフェン)を用いることができ、n型有機半導体材料としては、例えばPCBM(6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を用いることができる。
【0033】
発電層12に光が入射すると、励起子(電子、正孔)が生じ、電子はN層側に、正孔はP層側に集まるため、裏面電極11および透明電極13間に電位差が生ずる。したがって、裏面電極11および透明電極13を介して、上記の電位差に相当する電流を取り出すことができる。
【0034】
裏面電極11および透明電極13は、発電層12にて発生した電力を取り出すための電極であり、一方は正極に対応し、他方は負極に対応している。裏面電極11は、例えばアルミニウムで構成されており、透明電極13は、例えばITO(Indium Tin Oxide)で構成されている。基板14は、発電層12を支持するための光透過性の透明基板であり、例えばガラスで構成されている。本実施形態では、基板14は、発電素子2において最も光入射側、つまり、最も凹凸シート3側に位置している。
【0035】
上記の構成において、外部から太陽電池1に対して略垂直に入射した光(太陽光)L1は、凹凸シート3により偏向され、光L2として基板14に入射する。光L2は、透明電極13を透過し、発電層12に入射して、その一部が発電層12にて吸収され、電気に変換されるが、残りは発電層12で吸収しきれずに光L3として基板14側に向かって反射される。なお、光L2のうち、発電層12を透過した光は、裏面電極11で反射されて発電層12側に戻され、再利用が図られる。
【0036】
光L3は、凹凸シート3がない場合は、そのほとんどが基板14を透過し、発電に用いられないが、凹凸シート3があることで、その多くが凹凸シート3の凹凸面3aで反射され、発電層12側に向かう光L4となる。光L4は、発電層12に2回目の入射によって吸収され、発電に用いられる。以降、発電層12に入射して吸収しきれなかった光については、発電層12と凹凸シート3(凹凸面3a)との間で反射を繰り返すことにより、その多くが発電層12にて吸収される。
【0037】
(凹凸シートについて)
次に、凹凸シート3の詳細について説明する。本実施形態では、凹凸シート3の屈折率は、発電素子2の最も凹凸シート3側に位置する層の屈折率よりも高くなるように設定されている。つまり、本実施形態のように、発電素子2の最も凹凸シート3側に位置する層が基板14の場合、基板14を構成するガラスの屈折率は、例えば1.52であるので、凹凸シート3は、屈折率が1.52よりも大きい材料で構成されている。このような凹凸シート3を構成する材料としては、例えばポリカーボネート(PC;屈折率1.59)、エポキシ樹脂(屈折率;1.55〜1.61)を用いることができる。また、凹凸シート3として、高屈折率(屈折率;1.8)の樹脂(例えば高屈折率を有する無機(TiO2など)微粒子を含有する有機無機混合材)を用いることもできる。
【0038】
図2は、凹凸シート3に外部から略垂直に光L1が入射した場合の光路の詳細を示している。凹凸シート3の屈折率は基板14の屈折率よりも大きいので、光L2および光L4において、凹凸シート3側から基板14との界面に入射する光は、それぞれ、上記界面にて、スネルの法則にしたがって屈折している。なお、光L5は、光L3のうちで凹凸シート3の凹凸面3aを透過して、発電に用いられない光を表している。
【0039】
本実施形態の構成によれば、従来の図25の構成や特許文献1の構成と比べて、(1)略垂直入射光が凹凸シート3に入射したときの偏向角度(光L2の偏向角度)が大きい、(2)発電層12にて吸収しきれない光L3が再び凹凸面3aで反射して光L4として再利用される割合が大きい(光が2回目に発電層12に入射して吸収される量が増大する)、という2点の効果を得ることができ、従来よりも高い光利用効率を実現することができる。以下、上記(1)(2)の点について、さらに詳細に説明する。
【0040】
(偏向角度の増大について)
図3は、凹凸シート3の構成例を示す断面図であって、凹凸面3aが楕円半球を2次元的に配置することによって形成されている場合の断面図である。なお、楕円半球とは、楕円を長軸または短軸を回転軸として回転させた立体を長軸または短軸に垂直な面でカットした形状を指す。楕円半球の底面からの高さをh(cm)、配置方向の周期(ピッチ)をd(cm)としたとき、アスペクト比aを、a=h/dと定義する。なお、楕円半球の高さhおよび周期dの一方は、楕円の長軸(または短軸)の長さの半分に相当し、他方は楕円の短軸(または長軸)の長さに相当する。なお、a=0.5の場合、楕円半球は完全な半球形状(断面が真円の半球形状)となる。
【0041】
なお、上記の高さhを、凹凸面3aの凸部と凹部との高低差に相当する高さと考え、上記の周期dを、凹凸面3aの凸部または凹部の繰り返し周期と考えれば、凹凸面3aが後述するどのような形状であっても、上記したアスペクト比の定義を用いることができる。
【0042】
図4は、凹凸シート3の平面図である。図4において、凹凸面3aのうち、凹凸部を3a1とし、凹凸部3a1以外の平面部を3a2とすると、凹凸面3aにおいて平面部3a2が占める割合Sは、凹凸部3a1の面積をS1(cm2)とし、平面部3a2の面積をS2(cm2)として、S=(S2/(S1+S2))で表される。例えば、図4のように、楕円半球の外周(平面視で円形)が互いに接するように各楕円半球を2次元的に配置した場合、Sは約0.09(9%)となる。
【0043】
図5は、参考例であって、屈折率が基板14と同じ凹凸シート3’に光が略垂直に入射した場合の、凹凸シート3’内部での光の偏向の度合いを示す説明図である。図5において、凹凸シート3’の屈折率をn1とし、楕円半球での屈折によって入射光が偏向される偏向角度をθ1とする。偏向角度θ1は、図5に示すように、楕円形状の凹凸面3bに対する入射角がほぼ90°となる部分に光が入射したときに最大となる。つまり、偏向角度θ1の最大値は、スネルの法則より、
1・sin(90°)=n1・sin(90°−θ1)
を満足する値となる。したがって、例えば、n1=1.5とすると、偏向角度θ1の最大値は、約48°となる。
【0044】
つまり、図5のように凹凸面3bが楕円半球を2次元的に配置して形成される場合は、凹凸シート3’に略垂直に入射した光は、凹凸シート3’によって0〜48°の角度に偏向される(偏向角度は凹凸面に対する入射位置によって変化する)。
【0045】
図6は、本実施形態のように、屈折率が基板14よりも大きい凹凸シート3に光が略垂直に入射した場合の、凹凸シート3内部での光の偏向の度合いを示す説明図である。図6において、凹凸シート3の屈折率をn2とし、楕円半球での屈折によって入射光が偏向される偏向角度をθ2とする。偏向角度θ2は、図6に示すように、楕円形状の凹凸面3aに対する入射角がほぼ90°となる部分に光が入射したときに最大となる。つまり、偏向角度θ2の最大値は、スネルの法則より、
1・sin(90°)=n2・sin(90°−θ2)
を満足する値となる。したがって、例えば、n2=1.8とすると、偏向角度θ2の最大値は、約56°となる。
【0046】
つまり、n1<n2の場合、θ1<θ2となり、凹凸シート3の屈折率が高いと、入射光を大きく偏向できることになる。なお、凹凸面3aが、円錐、四角錐、プリズム形状の場合は、略垂直入射光は、0〜56°の範囲の中の1つの角度に偏向される(偏向角度は1つの角度に集中する)が、この点については後述する。
【0047】
図7は、図6の凹凸シート3を基板14上に設置して、凹凸シート3に光が略垂直に入射した場合の、凹凸シート3および基板14の内部での光の偏向の度合いを示す説明図である。図7において、凹凸シート3の屈折率をn2(=1.8)とし、楕円半球での屈折によって入射光が偏向される偏向角度をθ2とし、基板14の屈折率をn1(=1.5)とし、基板14内での光の偏向角度をθ3とする。偏向角度θ2の最大値は、図6の場合と同じ(約56°)であり、また、スネルの法則より、
n2・sinθ2=n1・sinθ3
が成り立つ。この式より、基板14内での偏向角度θ3の最大値は、約84°となる。つまり、基板14の屈折率n1が凹凸シート3の屈折率よりも低いため、基板14内での偏向角度θ3の最大値は、偏向角度θ2の最大値よりも大きくなる。
【0048】
なお、図示はしないが、基板14の屈折率が凹凸シート3の屈折率よりも高い場合は、上記とは逆に、基板14内での偏向角度θ3の最大値は、偏向角度θ2の最大値よりも小さくなることは、スネルの法則より明らかである。
【0049】
以上のことから、基板14よりも屈折率の高い凹凸シート3を基板14上に設置することにより、入射光を基板14内で大きく偏向できると言える。これにより、発電層12での光の吸収量を増大させることができ、しかも、その効果を従来よりも高めることができる。ここで、発電層12の光の吸収量を増大させる効果は、発電層12が薄いほど高くなる。以下、発電層12の厚さと吸収量との関係について説明する。
【0050】
図8は、発電層12が薄い場合(例えば層厚100nm)と厚い場合(例えば層厚300nm)とにおける、発電層12での光の吸収量の入射角依存性を示すグラフである。なお、図8において、縦軸の短絡電流密度Jsc(mA/cm2)とは、太陽電池の単位面積あたりで発生する短絡電流(太陽電池の正極と負極とを導線で接続して短絡した状態での電流)を指す。発電層12での光の吸収量と短絡電流密度Jscとは対応関係にあり、発電層12での吸収量が増大すると、短絡電流密度Jscも増大することになる。
【0051】
図8より、発電層12を十分に厚くすると、内部角度にあまり依存せずに、発電層12にて吸収が最大限行われるが、発電層12が薄く、1回で光を吸収しきれない厚さの場合は、発電層12に対して斜めに入射すると、発電層12の内部を光が斜め方向に伝搬するため、吸収量が増える。発電層12が薄い場合は、入射角が約60°付近で短絡電流密度Jsc(吸収量)が最大となり、垂直入射(入射角0°)に比べて約1.3倍多いことがわかる。
【0052】
ここで、図5で示したように、基板14と同じ屈折率(例えば1.5)の凹凸シート3’を用いた構成では、上述したように、最大で約48°しか光を偏向することができず、1回の偏向で60°(発電層12が薄い場合に吸収量が最大となる角度)に偏向することはできない。このため、発電層12が薄い場合は、発電層12での1回の吸収量を増大させることはできない。
【0053】
しかし、図7で示したように、凹凸シート3の屈折率を1.8にして、基板の屈折率(1.5)よりも高くすることにより、基板14内での偏向角度を0°〜84°にすることができ、これには吸収量が最大となる偏向角度60°が含まれる。したがって、凹凸シート3の形状設計(例えばアスペクト比)を工夫して、発電層12に対する入射角が約60°付近となるように、多くの光を偏向することにより、発電層12に1回目に入射する光の吸収量を増大させる可能となる。
【0054】
なお、発電層12が厚い場合、図8より、発電層12への斜め入射による吸収量の増加の度合いが、発電層12が薄い場合に比べると小さいが、斜め入射によって垂直入射よりも吸収量が増大することに変わりはない。したがって、発電層12の厚さが、入射光の1回の吸収量が垂直入射(入射角0°)のときの吸収量よりも多くなるような入射角の範囲が存在する厚さであれば、屈折率の高い凹凸シート3によって、垂直入射のときよりも発電層12での吸収量が多くなるような角度に入射光を偏向させて、発電層12での吸収量を増大させることができると言える。
【0055】
(2回目以降に発電層12に入射する光の吸収量の増大について)
図9は、屈折率が1.5の凹凸シート3’の内部における、発電層12にて吸収されずに反射された光L3の光路を示す説明図である。光L3は、凹凸シート3’の凹凸面3bに入射し、その凹凸面3bの構造によって、スネルの法則により屈折して透過する光L5と、反射する光L4に分けられる。
【0056】
これに対して、図10は、屈折率が1.8の凹凸シート3の内部における、発電層12にて吸収されずに反射された光L3の光路を示す説明図である。光L3は、凹凸シート3の凹凸面3aに入射し、その凹凸面3aの構造によって、スネルの法則により屈折して透過する光L5と、反射する光L4に分けられる。このとき、凹凸シート3の屈折率が1.8と高いため、凹凸面3aに入射した光L3のうち、凹凸面3aでの全反射条件を満たす光が増大する。凹凸面3aの凸形状の内部で全反射を繰り返した光は、最終的に、基板14および発電層12側へ戻る光L4となる。
【0057】
ここで、凹凸面3aを有する凹凸シート3では、凹凸面3aに基板14側から入射した光が反射する割合(反射率R)が、凹凸シート3の屈折率nの関数(R=1−1/n2)で大まかに表されることが数値計算等で判明した。つまり、図11は、凹凸シート3の屈折率nと、基板14側から入射した光の凹凸面3aでの反射率Rとの関係を示している。凹凸シート3の凹凸形状(楕円半球、円錐、四角錐)によって多少の数値の違いはあるものの、それぞれの構造にて、屈折率nが高くなると反射率Rが高くなる傾向が見られた。しかも、屈折率nと反射率Rとの関係は、R=1−1/n2の関数に漸近しており、凹凸シート3の屈折率nが高いほうが、反射率Rが高くなって、発電層12に2回目に入射する光が増大することがわかった。
【0058】
(まとめ)
以上、太陽電池1において、凹凸シート3の屈折率が発電素子2の最も凹凸シート3側に位置する層(上記の例では基板14)の屈折率よりも高いことにより、凹凸シート3から発電素子2に入射する光の入射角を増大させることができ、1回目に発電層12に入射する光を、発電層12での吸収量が多い入射角(発電層12が吸収しやすい入射角)に偏向することができる。これにより、1回目に入射する光の発電層12での吸収量を増大させる効果を高めることができる。特に、発電層12が薄い場合には、垂直入射よりも斜め入射のほうが発電層12での吸収量が顕著に増大するため、上述した効果がさらに高まる。
【0059】
また、凹凸シート3の屈折率が高いことにより、入射光が1回目に発電層12で吸収されずにそこで反射されたとしても、その反射された光が凹凸シート3の凹凸面3aで全反射する割合(反射率R)が増大するため、上記光を発電層12側に戻す閉じ込め効果を高めることができる。その結果、2回目以降に発電層12に入射する光の吸収量を増大させて、トータルでの光の利用効率(発電効率)を確実に増大させることができる。
【0060】
なお、図11で示した凹凸シート3の屈折率nと反射率Rとの関係により、屈折率nが高いほど反射率Rが多くなるため、上記の閉じ込め効果は、凹凸シート3の屈折率nが高いほど大きいと言える。
【0061】
また、発電素子2において、基板14が最も凹凸シート3側に位置している構成において、凹凸シート3の屈折率が基板14の屈折率よりも高いので、そのような構成の太陽電池1において、上述した効果を得ることができる。
【0062】
また、発電層12は、図8で示したように、入射光の1回の吸収量が垂直入射のときの吸収量よりも多くなるような入射角の範囲が存在する厚さを有しているので、発電層12での吸収量を増大させるべく、屈折率の高い凹凸シート3を設けて、発電素子2に対して入射光を斜めに入射させる本実施形態の構成が非常に有効となる。
【0063】
(補足)
凹凸シート3の凹凸面3aの高さhを増大させると、凹凸面3aを介して発電層12に入射する光の入射角を増大させることができる。したがって、凹凸シート3の屈折率の調節と併せて、凹凸面3aの高さの調節を行うことにより、偏向角度を効率よく、発電層12での1回の吸収量が多い入射角に合わせることができる。
【0064】
また、例えば、凹凸シート3の屈折率によっては、凹凸シート3にて1回で偏向できる角度が、発電層12での1回の吸収量が多い入射角(例えば60°)に届かない場合もある。このような場合でも、凹凸面3aの高さを調節することで、屈折率のさらに大きな凹凸シート3で代替することなく、偏向角度を発電層12での1回の吸収量が多い入射角に合わせることができる。
【0065】
(反射防止機構について)
凹凸シート3の屈折率を基板14よりも高くする利点は上述の通りであるが、凹凸シート3の屈折率を高くすると、外部から凹凸シート3に光が入射する場合の表面反射(フレネル反射)による損失(光利用効率の低下)が考えられる。そこで、図12および図13に示すように、凹凸シート3の凹凸面3aに、入射光の表面反射を防止するための反射防止機構20を設けることが望ましい。
【0066】
図12は、反射防止機構20を反射防止膜21で構成した場合の凹凸シート3の断面図であり、図13は、反射防止膜20を反射防止構造22で構成した場合の凹凸シート3の断面図である。反射防止膜21は、凹凸面3aの表面にコーティングされる誘電体多層膜である。反射防止構造22は、凹凸面3aの表面をさらに凹凸状に粗面化した構造である。このような反射防止構造22は、凹凸面3aの表面に形成される凹凸が一方向(例えば凹凸シート3と基板14との界面に垂直な方向)を向くものであれば、凹凸シート3の成形時に用いる金型の形状を工夫することにより、実現することができる。
【0067】
このように、凹凸シート3の凹凸面3aに反射防止機構20が設けられていることにより、凹凸面3aでの表面反射による光の損失(フレネル損失)を低減して、発電層12での入射光量および吸収量を増大させ、光利用効率(発電効率)を高めることができる。
【0068】
また、反射防止機構20を反射防止膜21または反射防止構造22で構成することにより、凹凸面3aでのフレネル損失を確実に低減して、光利用効率を確実に高めることができる。
【0069】
また、特に太陽光発電では、非常に広い波長領域、入射角度において反射防止効果を高める必要があるが、反射防止膜21では、広い波長域で反射防止効果を高めるためには、膜構成(材料、層数など)が複雑になる。この点、反射防止構造22では、反射防止構造22を構成する凹部または凸部の形成ピッチおよび高低差を、利用波長、すなわち、発電層12にて光電変換される光の波長域(例えば400nm〜700nm)の最短波長よりも短くすることで(例えばピッチ200nm以下、高低差200nm以上400nm未満)、入射光の波長域が広く、入射角度範囲が広い場合でも、フレネル損失を低減する効果を得ることができる。したがって、反射防止機構20としては、反射防止構造22を用いることが望ましい。
【0070】
(実施例)
次に、太陽電池1の発電層12の厚さ、凹凸シート3の有無、凹凸シート3の屈折率、反射防止構造22の有無と、発電層12で発生する短絡電流密度との関係について、実施例1〜4として説明する。また、実施例1〜4との比較のため、比較例1〜3も併せて示す。なお、凹凸シート3の凹凸面3aは、いずれも、楕円半球の2次元配置によって形成されているものとした。また、凹凸シート3が設置される基板14の屈折率は、いずれも1.52とした。
【0071】
【表1】
【0072】
比較例1および2、実施例1および2は、発電層12の厚さが100nmと薄い場合の結果を示している。一方、比較例3、実施例3および4は、発電層12の厚さが300nmと比較的厚い場合の結果を示している。これらの比較例および実施例から、発電層12が厚い場合でも、薄い場合でも、基板(屈折率;1.52)よりも高い屈折率の凹凸シート3を設けることで、短絡電流密度が増大し、反射防止構造22を設けることにより、短絡電流密度がさらに増大することがわかった。
【0073】
(凹凸面の形状のバリエーションについて)
図14〜図20は、凹凸シート3の凹凸面3aの形状のバリエーションを示すものであって、いずれも、(a)は凹凸シート3の断面図を示し、(b)は凹凸シート3の平面図を示している。凹凸シート3の凹凸面3aの形状は、楕円半球の2次元配置によって形成されるものに限定されるわけではない。
【0074】
つまり、図14(a)(b)に示すように、凹凸面3aは、断面が真円の半球を2次元的に配置することによって形成されていてもよい。また、図15(a)(b)に示すように、凹凸面3aは、円錐を2次元的に配置することによって形成されていてもよい。また、図16(a)(b)に示すように、凹凸面3aは、四角錐を2次元的に配置することによって形成されていてもよい。また、図17(a)(b)に示すように、凹凸面3aは、円錐台を2次元的に配置することによって形成されていてもよい。また、図18(a)(b)に示すように、凹凸面3aは、四角錐台を2次元的に配置することによって形成されていてもよい。また、図19(a)(b)に示すように、凹凸面3aは、一方向に伸びたプリズム(例えば断面三角形の三角プリズム)を並列に設けることによって形成されていてもよい。また、図20(a)(b)に示すように、凹凸面3aは、一方向に伸びたシリンドリカルレンズを並列に設けることによって形成されていてもよい。
【0075】
上記したいずれの構成であっても、凹凸面3aの高さ(凹部と凸部との高低差)を適切に設定することにより、外部から入射する光を凹凸面3aで大きく偏向させて、発電層12に対して斜めに入射させ、発電層12での吸収量を高める効果を増大させることができる。また、
【0076】
また、図21は、凹凸面3aが半球形状である場合に、凹凸シート3に垂直に入射して発電層12に入射する光の入射角ごとの相対的な比率(配光分布)を示している。ここでは、上記の半球形状として、断面が真円の半球と断面が楕円の半球との両者について示す。
【0077】
凹凸面3aが半球形状である場合、入射光の凹凸面3aに対する入射位置によって屈折方向が異なるため、図21に示すように、発電層12に入射する光の入射角に分布を持たせることができる。これにより、広い入射角範囲で発電層12に光を入射させて、発電層12での吸収量を上げることが可能となる。
【0078】
また、図22は、凹凸面3aが円錐形状である場合に、凹凸シート3に垂直に入射して発電層12に入射する光の入射角ごとの相対的な比率(配光分布)を示している。図22に示すように、凹凸面3aを円錐で形成した場合には、発電層12に対する光の入射角がほぼ1つの角度に集中する。つまり、凹凸面3aでの屈折により、入射光を1つの方向に集中して偏向することができる。しかも、凹凸面3aのアスペクト比a(=h/d)を変えることで、集中する入射角を変えることができる。これにより、上述した凹凸シート3の屈折率の調節と併せて、発電層12にて吸収量が多い入射角に合うように、凹凸面3aのアスペクト比aを設定することで、発電層12での光の吸収効率を上げることが可能となる。
【0079】
なお、このような効果は、凹凸面3aが円錐以外の錐系(例えば四角錐)で形成されている場合や、プリズムの並列配置によって形成されている場合でも、同様に得ることができる。
【0080】
なお、図21および図22において、入射角0°における比率が高いのは、凹凸面3aが平面部(図4の平面部3a2に相当)を有していることに起因する。つまり、半球や円錐を2次元的に並べて凹凸面3aを形成すると、いくらこれらを密に並べても、隣接する半球や円錐間には凹凸が生じない平面部ができる。この平面部に光が垂直に入射すると、その光は平面部にて偏向されずに、発電層12に垂直に(入射角0°で)入射する。このため、図21および図22では、入射角0°における比率が高くなっている。
【0081】
なお、以上では、凹凸面3aの形状が、半球凸形状(楕円半球凸形状、真円半球凸形状)、円錐凸形状、四角錐凸形状、円錐台凸形状、四角錐台凸形状、プリズム凸形状、シリンドリカル凸形状である場合について説明したが、上記とは逆の凹凸形状、つまり、半球凹形状(楕円半球凹形状、真円半球凹形状)、円錐凹形状、四角錐凹形状、円錐台凹形状、四角錐台凹形状、プリズム凹形状、シリンドリカル凹形状であっても、凸形状の場合と同様の傾向を示す。
【0082】
したがって、以上のことを総合すると、凹凸シート3の凹凸面3aは、発電素子2とは反対側に凸または発電素子2側に凹となる単位構造を2次元的に配置することによって形成されており、上記の単位構造は、楕円半球を含む半球、円錐、四角錐、円錐台、四角錐台のいずれかの形状であってもよいと言える。また、凹凸シート3の凹凸面3aは、発電素子2とは反対側に凸または発電素子2側に凹となる単位構造を並列に配置することによって形成されており、上記の単位構造は、プリズムまたはシリンドリカルレンズの形状であってもよいと言える。
【0083】
なお、凹凸面3aの平面部の面積、つまり、凹凸面3aにおける基板14と平行な面の面積は小さいほうが望ましい。これは、平面部の面積が小さいほうが、光発電層12に対する垂直入射光の割合が減って、凹凸面3a全体としての偏向効果が高くなり、発電効率もよりよくなるためである。
【0084】
(太陽電池の他の構成について)
図23は、太陽電池1の他の構成を示す説明図である。太陽電池1の発電素子2は、以下の構成であってもよい。すなわち、発電素子2は、上記の基板14上に、裏面電極11、発電層12、透明電極13、保護層15の各層をこの順で積層して構成されてもよい。そして、凹凸シート3は、保護層15上に設置されてもよい。
【0085】
つまり、この太陽電池1では、発電層12に対して基板14とは反対側で、発電素子2の最も凹凸シート3側に、保護層15が位置している。保護層15は、発電層12を保護するための光透過性のラミネート層であり、例えばEVA樹脂(Ethylene-Vinyl Acetate )やETFE樹脂(Ethylene tetrafluoroethylene)で構成されている。
【0086】
なお、基板14は、ガラス基板のほかに可撓性を有するフレキシブル基板で構成されていてもよい。また、裏面電極11は、ITOなどを材料とする透明電極で構成されていてもよい。
【0087】
発電素子2が上記のように構成される場合、凹凸シート3の屈折率は、発電素子2の最も凹凸シート3側に位置する保護層15の屈折率よりも高く設定されていればよい。例えば、保護層15が、上記したETFE(屈折率;1.42)やEVA(屈折率;1.482)で構成されている場合、凹凸シート3としては、例えばPC(屈折率1.59)やエポキシ樹脂(屈折率;1.55〜1.61)用いることができ、その他、高屈折率(屈折率;1.8)の樹脂(例えば高屈折率を有する無機(TiO2など)微粒子を含有する有機無機混合材)を用いることもできる。
【0088】
このように、発電素子2の最も凹凸シート3側に保護層15を位置させて、この保護層15上に凹凸シート3を設置する構成の太陽電池1においても、凹凸シート3の屈折率を保護層15の屈折率よりも高く設定することにより、上述した本実施形態の効果を得ることができる。すなわち、凹凸シート3によって入射光の偏向角度を増大させて、1回目に発電層12に入射する光の吸収量を増大させる効果を高めることができる。また、発電層12に入射してそこで反射された光の凹凸面3aでの反射率を増大させて、上記光の閉じ込め効果を高めることができ、2回目以降に発電層12に入射する光の吸収量を増大させて、トータルでの光の利用効率を確実に増大させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、有機薄膜太陽電池に利用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 太陽電池(有機薄膜太陽電池)
2 発電素子
3 凹凸シート
3a 凹凸面
12 発電層
14 基板
15 保護層
20 反射防止機構
21 反射防止膜
22 反射防止構造
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機薄膜からなる発電層を含む複数の層を積層した発電素子と、
前記発電素子の光入射側の面に設置され、前記発電素子とは反対側の表面が凹凸面である凹凸シートとを備えた有機薄膜太陽電池であって、
前記凹凸シートの屈折率は、前記発電素子の最も前記凹凸シート側に位置する層の屈折率よりも高いことを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【請求項2】
前記発電素子は、前記発電層を支持するための光透過性の基板を、前記複数の層のうちの1つの層として含んでおり、
前記基板は、前記発電素子の最も前記凹凸シート側に位置しており、
前記凹凸シートの屈折率は、前記基板の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項3】
前記発電素子は、前記発電層を支持するための基板と、前記発電層に対して前記基板とは反対側に位置して、前記発電層を保護する光透過性の保護層とを、それぞれ前記複数の層のうちの1つの層として含んでおり、
前記保護層は、前記発電素子の最も前記凹凸シート側に位置しており、
前記凹凸シートの屈折率は、前記保護層の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項4】
前記発電層は、入射光の1回の吸収量が垂直入射のときの吸収量よりも多くなるような入射角の範囲が存在する厚さを有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項5】
前記凹凸シートの前記凹凸面には、入射光の表面反射を防止するための反射防止機構が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項6】
前記反射防止機構は、前記凹凸面の表面にコーティングされる誘電体多層膜からなる反射防止膜であることを特徴とする請求項5に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項7】
前記反射防止機構は、前記凹凸面の表面を粗面化した反射防止構造で構成されていることを特徴とする請求項5に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項8】
前記凹凸シートの前記凹凸面は、前記発電素子とは反対側に凸または前記発電素子側に凹となる単位構造を2次元的に配置することによって形成されており、
前記単位構造は、楕円半球を含む半球、円錐、四角錐、円錐台、四角錐台のいずれかの形状であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項9】
前記凹凸シートの前記凹凸面は、前記発電素子とは反対側に凸または前記発電素子側に凹となる単位構造を並列に配置することによって形成されており、
前記単位構造は、プリズムまたはシリンドリカルレンズの形状であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項1】
有機薄膜からなる発電層を含む複数の層を積層した発電素子と、
前記発電素子の光入射側の面に設置され、前記発電素子とは反対側の表面が凹凸面である凹凸シートとを備えた有機薄膜太陽電池であって、
前記凹凸シートの屈折率は、前記発電素子の最も前記凹凸シート側に位置する層の屈折率よりも高いことを特徴とする有機薄膜太陽電池。
【請求項2】
前記発電素子は、前記発電層を支持するための光透過性の基板を、前記複数の層のうちの1つの層として含んでおり、
前記基板は、前記発電素子の最も前記凹凸シート側に位置しており、
前記凹凸シートの屈折率は、前記基板の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項3】
前記発電素子は、前記発電層を支持するための基板と、前記発電層に対して前記基板とは反対側に位置して、前記発電層を保護する光透過性の保護層とを、それぞれ前記複数の層のうちの1つの層として含んでおり、
前記保護層は、前記発電素子の最も前記凹凸シート側に位置しており、
前記凹凸シートの屈折率は、前記保護層の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項4】
前記発電層は、入射光の1回の吸収量が垂直入射のときの吸収量よりも多くなるような入射角の範囲が存在する厚さを有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項5】
前記凹凸シートの前記凹凸面には、入射光の表面反射を防止するための反射防止機構が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項6】
前記反射防止機構は、前記凹凸面の表面にコーティングされる誘電体多層膜からなる反射防止膜であることを特徴とする請求項5に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項7】
前記反射防止機構は、前記凹凸面の表面を粗面化した反射防止構造で構成されていることを特徴とする請求項5に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項8】
前記凹凸シートの前記凹凸面は、前記発電素子とは反対側に凸または前記発電素子側に凹となる単位構造を2次元的に配置することによって形成されており、
前記単位構造は、楕円半球を含む半球、円錐、四角錐、円錐台、四角錐台のいずれかの形状であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項9】
前記凹凸シートの前記凹凸面は、前記発電素子とは反対側に凸または前記発電素子側に凹となる単位構造を並列に配置することによって形成されており、
前記単位構造は、プリズムまたはシリンドリカルレンズの形状であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の有機薄膜太陽電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2013−98518(P2013−98518A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243256(P2011−243256)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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