説明

有機質肥料の製造方法および得られる有機質肥料

【課題】生ごみ中の塩分を効果的に減少させ、生ごみの排出量を画期的に削減することができる、生ごみを用いた有機質肥料の製造方法および有機質肥料を提供することにある。
【解決手段】アトマイジング処理された活性CaO含有製鋼スラグ、アーク炉スラグ、取鍋スラグから金属成分(Fe、Al)を完全除去したもの100重量部に対して、生ごみ20〜100重量部を混合し、前記混合物を1トン当たり5〜180分間撹拌させることで、製鋼スラグ中の活性CaOと生ごみ中のNaClを相互反応させてCaClを生成させ、低塩化させて塩分の濃度を低減させるステップと、有機物分解剤として化学肥料を3〜10重量部混合し、有機物添加剤として鶏ふんを3〜10重量部添加するステップと、前記低塩化した混合物を乾燥させるステップと、前記乾燥した混合物を粉砕するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ごみ中の塩分(食塩分)を減らして有機質肥料を製造する、生ごみを原料とした有機質肥料の製造方法および得られる有機質肥料に関し、より詳しくは、廃棄処理される生ごみを、アトマイジング処理された製鋼スラグ、微細な取鍋スラグ、アーク炉スラグと混合し、製鋼スラグ中の活性CaOと生ごみ中のNaClを相互反応させて、CaClを生成させることにより、低塩化させるとともに、これを加工して有機肥料を製造することができる、有機質肥料の製造方法および得られる有機質肥料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、飲食物には一定量以上の塩分が含まれており、これらからの生ごみが一日でも極めて多量に排出され、国土面積の狭い国では、生ごみの処理に非常に頭を痛めており、全世界的にも適当な代案がなく、これを克服することに心血を注いでいる。さらに、食生活習慣上、多量の塩分が含まれた飲食物を摂取しており、これからの生ごみにも多量の塩分が含まれているので、ごく一部生ごみのみが飼料として用いられているのが現状である。このような生ごみ中の塩分を取り除くための様々な努力と試みが全世界的に行われており、その一環として、生ごみから遠心分離機により水分を除去するとともに、塩分を取り除こうとする試みがなされているが、このような遠心分離方法によって、生ごみの水分はある程度除去できるものの、飲食物中の繊維質に強く付着している塩分を取り除くことはできないという根本的な問題点があった。しかも、遠心分離方法は、高価の設備と動力を必要とし、塩分除去費用が多大にかかり、さらには、遠心分離された炭水化物、澱粉、塩分などのような、二次汚染物質が生成されるという問題点があった。
【0003】
また、現在、農地として耕作中の農耕地では、殆ど、大量に製造される硫酸アンモニウム、過リン酸石灰などの無機化学肥料が使用されており、これらの無機化学肥料の乱用は、その効果を発揮せず、農地の酸性化をもたらし、病虫害の増加、農作物の減産および土壌の荒廃化を招いているが、このような酸性化した土壌を中和させるための有機質肥料は、大量生産が不可であるため、その使用は微々たるものであり、土質の酸性化は拡大一路を歩いているという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、生ごみ中の塩分を効果的に減少させ、生ごみの排出量を画期的に削減することができる、生ごみを用いた有機質肥料の製造方法および有機質肥料を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、多量に発生する産業廃棄物の製鋼スラグを用いることにより、産業廃棄物をリサイクルできるとともに、安価な費用で塩分を減少させることができる、生ごみを用いた有機質肥料の製造方法および有機質肥料を提供することにある。
【0006】
本発明のまた他の目的は、生ごみ中の塩分を効果的に減少させ、生ごみ中の有機物を分解する触媒剤として3〜15部の化学肥料を添加して再加工することにより、極めて安価な費用で製造され、土壌の酸性化を防止することができ、大量生産が可能となる、有機質肥料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の観点によれば、アトマイジング処理された活性CaO含有製鋼スラグ、アーク炉スラグ、取鍋スラグから金属成分(Fe、Al)を完全除去したもの100重量部に対して、生ごみ20〜100重量部を混合し、前記混合物を1トン当たり5〜180分間撹拌させることで、製鋼スラグ等の中の活性CaOと生ごみ中のNaClを相互反応させてCaClを生成させ、低塩化させて塩分の濃度を低減させるステップと、有機物分解剤として化学肥料を3〜10重量部および有機物添加剤として鶏ふんを3〜10重量部それぞれ添加するステップと、添加された前記低塩化した混合物を乾燥させるステップと、前記乾燥した混合物を粉砕するステップと、を含むことを特徴とする、生ごみを用いた有機質肥料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塩分濃度約4.5%の生ごみ1000kgに対して、製鋼スラグ500kgを2時間30分間混合し撹拌させることによって、塩分濃度が約0.29%画期的に低減し、これに製鋼スラグをさらに投入すると、塩分濃度をより低下させることができる。また、肥料にはNaCl含量が1%未満でなければならないので、塩分の濃度を容易に低減することができる。これにより、多量に発生して塩分が含まれてその処理が困難であった生ごみと、製鋼スラグとを、混合して反応させて、生ごみ中の塩分を効果的かつ安価な費用で除去することができることとなった。このため、極めて安価な費用で有機肥料を供給することができ、農家所得を増大させ、さらに、リサイクルの困難な生ごみをリサイクルし、生ごみの量を効果的に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る生ごみを用いた有機質肥料の製造方法および有機質肥料は、以下に詳述される実施例によって、その特徴および長所が明白に理解されるものである。
本発明に係る生ごみを用いた有機質肥料の製造方法は、アトマイジング処理された活性CaO含有製鋼スラグ、アーク炉スラグ、取鍋スラグから金属成分(Fe、Al)を完全除去したもの100重量部に対して、生ごみ20〜100重量部を混合し、前記混合物を1トン当たり5〜180分間撹拌させることで、製鋼スラグ等の中の活性CaOと生ごみ中のNaClを相互反応させてCaClを生成させ、低塩化させて塩分の濃度を低減させるステップと、有機物分解剤として化学肥料を3〜10重量部混合し、また有機物添加剤として鶏ふんを3〜10重量部添加するステップと、添加された前記低塩化した混合物を乾燥させるステップと、前記乾燥した混合物を粉砕するステップと、を含んでなる。
【0010】
本発明においては、有機物分解剤として化学肥料を用いるので、撹拌時間が遥かに短くなり、生産性を向上することができる。化学肥料としては、市販される窒素肥料、リン酸肥料またはカリウム肥料や、これらが混合された複合肥料が用いられる。
前記Fe、Al成分が除かれた製鋼スラグは、その成分としては、CaO 36〜43wt%、Fe 22〜25wt%、SiO 7〜10wt%、MgO 6〜9wt%、P 1〜2wt%、Al 1wt%以下を含有しており、このような製鋼スラグを用いることが、本発明の最も核心的な要素である。Fe、Al等の金属成分の除去は従来公知の方法によることができる。製鋼スラグ等のように、活性CaOを多量に含有しながら容易に得られる物質は、現在は存在しない。また、製鋼スラグの鉱物相は、Pが固溶したB−C3S(急冷した場合、α−C2Sとなる)、ウスタイト(Wustite)、水化アルミン酸カルシウム(calcium aluminate hydrate)、およびAlなどが固溶したカルシウムフェライトが主成分であり、数%の活性CaOや活性MgO、およびCaOに富むものでは、若干量のケイ酸三カルシウム(C3S)を含んでいる。最も不安定な鉱物は、活性CaOである。これは、高温で生成したC3Sが降温時にC2Sに分解するときに生じる微結晶であるものと、装入された石灰質副原料が完全にスラグ化せず、比較的大きな粒子のまま残存するものとがある。本発明において用いられる製鋼スラグは、高炉で発生する高炉スラグとは、その性質が全く異なるものである。なお製鋼スラグには転炉スラグが含まれる。高炉スラグは、石灰石、鉄鉱石、コークスなどのように、溶融して発生する完全酸化物であるのに対して、製鋼スラグは、高炉スラグとは異なり、高炉で生産された銑鉄を転炉で精錬するときに発生する不完全酸化物であるため、高炉スラグのように利用できず、廃棄処理されなければならないが、本発明ではこれを肥料の主成分として用いていることである。このように製鋼スラグ中に含有された活性CaOが、生ごみ中の塩分であるNaClと反応を起こしてCaClが生成され、塩分が減少することになる。なお、製鋼スラグ等の代わりに、生石灰、消石灰も同様に使用することができる。
また、このような低塩化を促進するために、過酸化水素などの様々な触媒を用いてもよい。
【実施例】
【0011】
生ごみ100kg、転炉スラグ50kg、触媒剤10kg、鶏ふん10kgを混合し、30分間常温で撹拌して、成分を分析した結果は次のとおりである。
すなわち、有機物は、灰化法で検出した結果、41重量%検出され、窒素は、ケルダール法で検出した結果、8.9重量%検出され、塩分は、硝酸銀法で検出した結果、0.9重量%が検出されたことから、有機物と窒素に富み、塩分含量が基準値以下に検出され、肥料として好適に使用できる成分を有していることが明らかになった。
【0012】
その他の成分としては、ヒ素2.7mg/kg、カドニウムと水銀は不検出、鉛14.3mg/kg、クロム121.7mg/kg、銅236.3mg/kg、亜鉛143.6mg/kg、ニッケル33.8mg/kgが検出され、前記検出試験は、強酸分解後、原子吸光法によって行った。
過酸化水素を触媒剤として用いる場合、CaO、NaCl、Hの化学反応は、次のように行われる。
2NaCl+CaO+2H→ CaCl+2NaOH+H
【0013】
肥料ではNaClが1%未満であることが必要であるため、前記低塩化した生ごみは、塩度が0.01〜1%であって1%未満であり、塩度をより低下させようとする場合は、さらに製鋼スラグを混合して、一定期間の間経過すると、生ごみの塩度はさらに低下することになる。生ごみ中への製鋼スラグの混合は、生ごみ中に製鋼スラグを、所望の塩分濃度に至るまで徐々に投入することにより、生ごみ中の塩分濃度を所望の水準に減少させることができ、このような塩分濃度の変化量は、通常に使用される塩分測定装置によって容易に測定することができる。また、前記触媒剤としては、前記過酸化水素以外のものを用いてもよいことは勿論である。
【0014】
このように生ごみを低塩化した後、低塩化した混合物をタンクから引き取り、これを乾燥させる。
前記低塩化後、乾燥した混合物に、適当量、好ましくは生ごみ全量に対して約5〜10%の化学肥料を添加し、粉砕機で適当な大きさに粉砕することにより、肥料を製造することができる。すなわち、低塩化・乾燥した混合物をそのまま有機肥料として用いてもよく、或いはこれに従来の化学肥料、例えば、配合成分9%の窒素肥料、配合成分6%のリン酸肥料、配合成分9%のカリウム肥料のいずれか1種または複数種を混合して用いてもよい。また、製鋼スラグの代わりに生石灰や消石灰を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、生ごみ中の塩分を効果的に減少させ、低塩分の有機質肥料を提供するものであり、また用いる製鋼スラグ等は、従来は廃棄処理されものである所これも有効利用することができるものであり、産業上おおいに利用され得るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アトマイジング処理された活性CaO含有製鋼スラグ、アーク炉スラグ、取鍋スラグから金属成分(Fe、Al)を完全除去したもの100重量部に対して、生ごみ20〜100重量部を混合し、前記混合物を1トン当たり5〜180分間撹拌させることで、製鋼スラグ中の活性CaOと生ごみ中のNaClを相互反応させてCaClを生成させ、低塩化させて塩分の濃度を低減させるステップと、
有機物分解剤として化学肥料を3〜10重量部混合し、有機物添加剤として鶏ふんを3〜10重量部添加するステップと、
前記低塩化した混合物を乾燥させるステップと、
前記乾燥した混合物を粉砕するステップと、を含むことを特徴とする、生ごみを用いた有機質肥料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法によって製造された生ごみを主成分とする有機質肥料。
【請求項3】
アトマイジング処理された活性CaO含有製鋼スラグ、アーク炉スラグ、取鍋スラグから金属成分(Fe、Al)を完全除去したもの100重量部に対して、生ごみ20〜100重量部を添加して混合し、前記混合物を1トン当たり140〜180分間撹拌させることで、製鋼スラグ等の中の活性CaOと生ごみ中のNaClを相互反応させてCaClを生成させ、低塩化させて塩分の濃度を低減させることを特徴とする、生ごみ中の塩分除去方法。
【請求項4】
生石灰または消石灰100重量部に対して、生ごみ20〜100重量部を混合し、前記混合物を1トン当たり5〜180分間撹拌させることで、製鋼スラグ中の活性CaOと生ごみ中のNaClを相互反応させてCaClを生成させ、低塩化させて塩分の濃度を低減させるステップと、
有機物分解剤として化学肥料を3〜10重量部混合し、有機物添加剤として鶏ふんを3〜10重量部添加するステップと、
添加された前記低塩化した混合物を乾燥させるステップと、
前記乾燥した混合物を粉砕するステップと、を含むことを特徴とする、生ごみを用いた有機質肥料の製造方法。

【公開番号】特開2006−321703(P2006−321703A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316094(P2005−316094)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(505406176)
【出願人】(505406187)
【Fターム(参考)】