説明

有機電界発光素子および有機電界発光素子の製造方法

【課題】長寿命で高輝度な有機電界発光素子を提供すること。
【解決手段】一対の電極間に有機層が狭持された有機電界発光素子基板上に特定の波長を有する光源から発せられた光をそれよりも長波長の光へと波長変換する色変換層が形成されてなり、前記有機層は、少なくとも発光層を含む発光ユニットが複数個積層され、当該各発光ユニット間に電荷発生能を備える中間層が狭持されてなり、前記色変換層は、ホスト材料と、緑色発光性または赤色発光性である燐光発光性のオルトメタル化錯体とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度かつ長寿命の有機電界発光素子に関するものである。
また本発明は、高輝度かつ長寿命の有機電界発光素子を簡便に製造可能な有機電界発光素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量で高効率のフラットパネルディスプレイが、例えばコンピュータやテレビジョンの画面表示用として盛んに研究開発されている。また、軽量で高効率のフラットパネルディスプレイとして、アクティブマトリックス駆動等の液晶ディスプレイが商品化されている。
しかしながら、液晶ディスプレイは視野角が狭く、また、自発光ではないため周囲が暗い環境下ではバックライトの消費電力が大きいことや、今後実用化が検討されている高精細度の高速ビデオ信号に対して充分な応答性能を有しないことなどの問題がある。特に、大画面サイズのディスプレイを製造することは困難であり、そのコストが高くなることなどの問題もある。
【0003】
そこで近年、これらの問題を解決する可能性のあるフラットパネルディスプレイとして、有機発光材料を用いた有機電界発光素子(所謂、有機EL素子)が注目されている。即ち、発光材料として有機化合物を用いることにより、自発光で、応答速度が高速であり、視野角依存性の無いフラットパネルディスプレイの実現が期待されている。
【0004】
有機EL素子を用いた有機ELディスプレイを、マルチカラー化またはフルカラー化する方法としては、色変換方式がある。例えば特許文献1及び2には、発光源として有機EL素子を用いて、その有機EL素子の発光域の光を吸収し、可視光領域の蛍光を発光する蛍光材料をフィルタ(色変換層)として用いる色変換方式が開示されている。色変換方式では、有機EL素子が白色の光を発光する有機EL素子に限定されないため、より輝度が高い有機EL素子を光源に適用できる。
【0005】
ここで色変換層のパターニングの方法としては、例えば下記(i)及び(ii)に記載の方法が挙げられる。
(i)無機蛍光体の場合と同様に、蛍光色素を液状のレジスト(光反応性ポリマー)中に分散させ、これをスピンコート法等で成膜した後、フォトリソグラフィ法でパターニングする方法。(例えば、特許文献2及び3参照。)
(ii)塩基性のバインダーに蛍光色素または蛍光顔料を分散させ、これを酸性水溶液でエッチングする方法。(例えば、特許文献4参照。)
【0006】
しかしながら、上記(i)及び(ii)に記載のようなウエット法によるパターニングは溶剤等を用いるため、有機EL素子のような溶剤に弱い有機層を含む素子の製造には保護層を設けるなどの多くの複雑な工程が必要であり、他の方法の開発が望まれていた。
【0007】
また、色変換層のホスト(マトリクス)として用いられるレジスト(光反応性ポリマー)には、光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂(レジスト)がある。具体的には、下記(1)〜(4)に記載の組成物などが挙げられる。
(1)アクロイル基やメタクロイル基を複数有するアクリル系多官能モノマーおよびオリゴマーと、光または熱重合開始剤とからなる組成物。
(2)ポリビニル桂皮酸エステルと増感剤とからなる組成物。
(3)鎖状または環状オレフィンとビスアジドとからなる組成物(ナイトレンが発生して、オレフィンを架橋させる。)。
(4)エポキシ基を有するモノマーと酸発生剤とからなる組成物。
【0008】
しかしながら、上記(1)〜(4)に記載の組成物では、マトリクス中に分散される色変換色素が、残存する光または熱重合開始剤等と反応して分解や劣化が発生してしまうという問題があった。このほかにも、上記(1)〜(4)に記載の組成物では、光源からの光によってさらに重合開始剤等が活性化し、レジスト(光反応性ポリマー)自身が経時的に変質してしまうという問題があった。
【0009】
従って、色変換層を(特に有機EL素子に)用いるにはウエット法を避け、且つ、分散させる色素に対してレジスト(光反応性ポリマー)を用いない工夫が必要とされる。
【0010】
ところで、前述したように色変換方式においてはより輝度が高い有機EL素子を光源として用いることにより、色変換膜により変換された変換光の輝度を向上させることができる。光源として用いる有機EL素子の輝度を上昇させる方法としては、その間に中間層を有する複数の発光層を備えてなる、所謂タンデム構造の有機EL素子が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、このタンデム構造の有機EL素子で光源としての輝度は改善されるものの、依然として変換光の輝度については充分な検討が為されているとは言えず、さらなる改善が望まれている。
【0011】
また、色変換方式においてより高輝度な有機電界発光素子を得るには、輝度が高い有機EL素子を光源に用いる以外にも、より高い色変換効率で色変換を行うことで、より高輝度の変換光が得られる。高い色変換効率の色変換を行うためには、色変換層としてレジスト中に燐光発光性のオルトメタル化錯体を分散させて、簡便に高輝度の白色光を得る方法が提案されている(例えば、特許文献6参照。)。一重項励起子よりも発生割合が高い、三重項励起子から基底状態になる際に発生する燐光を利用した有機電界発光層の場合、原理的には蛍光を利用した有機電界発光素子の場合と比べて4倍の100%の効率が期待できる。しかしながら、かかる方法を用いてもレジストに燐光発光性物質を分散させる以上、上記のような劣化・分解の問題は避けられなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平3−152897号公報
【特許文献2】特開平5−258860号公報
【特許文献3】特開平5−198921号公報
【特許文献4】特開平9−208944号公報
【特許文献5】特開2006−351398号公報
【特許文献6】特開2001−284049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記の従来技術における諸問題を解決するために為された発明であって、長寿命で高輝度な有機電界発光素子を提供すること、及び長寿命で高輝度な有機電界発光素子をドライプロセスで簡便に製造可能な有機電界発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
即ち、本発明に係る有機電界発光素子は、一対の電極間に有機層が狭持された有機電界発光素子基板上に特定の波長を有する光源から発せられた光をそれよりも長波長の光へと波長変換する色変換層が形成されてなり、前記有機層は、少なくとも発光層を含む発光ユニットが複数個積層され、当該各発光ユニット間に電荷発生能を備える中間層が狭持されてなり、前記色変換層は、ホスト材料と、緑色発光性または赤色発光性である燐光発光性のオルトメタル化錯体とを含有するものである。
【0015】
また、本発明に係る有機電界発光素子の製造方法は、所定の波長のレーザー光を透過する支持基板上に光熱変換層を形成する工程(1)と、該光熱変換層が形成された支持基板上に、特定の波長を有する光源から発せられた光をそれよりも長波長の光へと波長変換する色変換層を形成して、転写ドナー基板を作製する工程(2)と、前記色変換層が形成された転写ドナー基板と、透明基板上にカラーフィルタ層を形成したカラーフィルタ基板とを、前記カラーフィルタ層と前記色変換層とが対向するように平行に、かつ離間させて配置する工程(3)と、前記転写ドナー基板の前記支持基板側からレーザー光を照射し、前記色変換層を前記カラーフィルタ基板の所定位置に転写させて色変換層のパターンを形成し、色変換フィルタ基板を作製する工程(4)と、一対の電極間に有機層が狭持された有機電界発光素子基板上に、前記色変換フィルタ基板を前記色変換層側から貼り合わせて有機電界発光素子を作製する工程(5)とを備え、前記有機層は、少なくとも発光層を含む発光ユニットが複数個積層され、当該各発光ユニット間に電荷発生能を備える中間層が狭持されてなり、前記色変換層は、ホスト材料と、緑色発光性または赤色発光性である燐光発光性のオルトメタル化錯体とを含有するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長寿命で高輝度な有機電界発光素子を提供することができる。
また本発明によれば、長寿命で高輝度な有機電界発光素子をドライプロセスで簡便に製造可能な有機電界発光素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る有機電界発光素子の第1の実施の形態である上面発光方式の構成例を示す概略断面図である。
【図2】第1の実施の形態の有機電界発光素子における中間層の酸化物含有層の構成例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る有機電界発光素子の第2の実施の形態である上面発光方式の構成例を示す概略断面図である。
【図4】本発明に係る有機電界発光素子の製造方法の概略工程図である。
【図5】本発明に係る有機電界発光素子の製造方法に用いられる転写ドナー基板の構成の変形例を説明するための断面概略図である。
【図6】色変換フィルタ基板の構成の変形例を説明するための断面概略図である。
【図7】実施例1の測定初期のスペクトル形状と、100mA/cm2の電流密度で100時間通電した後のスペクトル形状とを比較するグラフである
【発明を実施するための形態】
【0018】
《有機電界発光素子10;第1の実施の形態》
本発明に係る有機電界発光素子10は、一対の電極13,15間に有機層14が狭持された有機電界発光素子基板11上に特定の波長を有する光源から発せられた光をそれよりも長波長の光へと波長変換する色変換層16が形成されてなり、前記有機層14は、少なくとも発光層14cを含む発光ユニット14a〜dが複数個積層され、当該各発光ユニット14a〜d間に電荷発生能を備える中間層14eが狭持されてなり、前記色変換層16は、ホスト材料と、緑色発光性または赤色発光性である燐光発光性のオルトメタル化錯体とを含有するものである。
【0019】
次に、本発明に係る有機電界発光素子についてさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0020】
<有機電界発光素子の構成>
図1は、本発明に係る有機電界発光素子の第1の実施の形態である上面発光方式の有機電界発光素子の構成例を示す概略断面図である。
本発明において有機電界発光素子10は、有機電界発光素子基板11上に色変換層16が形成されてなる。
有機電界発光素子基板11は、一対の電極13,15間に有機層14を狭持してなり、本実施の形態では基板12上にこれらが積層されてなる。この一対の電極13,15は、基板12側が陽極13、有機層14を挟んで反対側が陰極15である。
【0021】
また、有機層14は、少なくとも発光層14cを含む発光ユニット14a〜dが複数個積層され、当該各発光ユニット14a〜d間に電荷発生能を備える中間層14eが狭持されてなる。本実施の形態では、有機層14は2個の発光ユニット14a1〜d1,14a2〜d2を有し、この2個の発光ユニット間に中間層14eが介在し、発光ユニット14a1〜d1と発光ユニット14a2〜d2とは隣接せずに積層されている。
【0022】
本発明における発光ユニット14a〜dとは、少なくとも発光層14cを含むものであればよく、発光層14c以外の層が含まれていても良い。本実施の形態では、陽極13側から順に、ホール注入層14a/ホール輸送層14b/発光層14c/電子輸送層14dが積層された構成であり、以下においてかかる構成を発光ユニット14a〜dと称する。
そして本発明において、各発光ユニット14a〜dの間の夫々に中間層14eが設けられている。本実施の形態における中間層14eは陽極13側から順に、酸化物含有層14ei、電荷輸送性有機材料層14eii、トリフェニレン層14eiiiが積層された構成を採る。
【0023】
本実施の形態は、第1の発光層14c1生じた発光光と、これと同時に第2の発光層14c2で生じた発光光とを、基板12と反対側の陰極15側から取り出し、色変換層16を透過させ変換光を得る、所謂、上面発光方式の構成例である。ここで、第1の発光層14c1生じた発光光とは、陽極13から注入されたホールと後述する中間層14eにおいて発生した電子が第1の発光層14c1で結合する際に生じたものである。また、第2の発光層14c2生じた発光光とは、陰極15から注入された電子と中間層14eにおいて発生したホールが第2の発光層14c2で結合する際に生じたものである。尚、言うまでもなく本発明は上面発光方式に限定されるものではなく、下面発光方式のものであっても良く、その他の公知の発光方式を採用しても良い。
【0024】
次いで、本発明に係る有機電界発光素子を構成する各層について図1における基板12側から順に説明する。
<有機電界発光素子基板11−基板12>
有機電界発光素子基板11の一部を構成する基板12は、その一主面側に有機電界発光素子10(基板12を除く)が配列形成される支持体であって、公知のものであって良く、例えば、石英、ガラス、金属箔、樹脂製のフィルムやシートなどが用いられる。この中でも石英やガラスが好ましく、樹脂製の場合には、その材質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるメタクリル樹脂類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル類、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂などが挙げられるが、透水性や透ガス性を抑える積層構造としたものや、表面処理を行ったものであっても良い。
また、この有機電界発光素子10を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、基板12には、画素毎にTFTを設けてなるTFT基板が用いられる。
【0025】
<有機電界発光素子基板11−陽極13>
陽極13には、効率良くホールを注入するために電極材料の真空準位からの仕事関数が大きいものが用いられる。例えば、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、モリブテン(Mo)、タングステン(W)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)の金属又はその合金、若しくはこれらの金属又は合金の酸化物等、酸化スズ(SnO2)とアンチモン(Sb)との合金、ITO(インジウムチンオキシド)、InZnO(インジウ亜鉛オキシド)、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金、さらにはこれらの金属又は合金の酸化物等から選ばれる1種が、または2種以上を混在させた状態のものが用いられる。
【0026】
また、陽極13は、光反射性に優れた第1層と、この上部に設けられた光透過性を有すると共に仕事関数の大きい第2層との積層構造であっても良い。
第1層は、アルミニウムを主成分とする合金からなる。その副成分は、主成分であるアルミニウムよりも相対的に仕事関数が小さい元素を少なくとも一つ含むものでも良い。このような副成分としては、ランタノイド系列元素が好ましい。ランタノイド系列元素の仕事関数は、大きくないが、これらの元素を含むことで陽極の安定性が向上し、かつ陽極のホール注入性も満足する。また副成分として、ランタノイド系列元素の他に、シリコン(Si)、銅(Cu)などの元素を含んでも良い。
【0027】
第1層を構成するアルミニウム合金層における副成分の含有量は、例えば、アルミニウムを安定化させるNdやNi、Ti等であれば、合計で約10重量%以下であることが好ましい。これにより、アルミニウム合金層においての反射率を維持しつつ、有機電界発光素子10の製造プロセスにおいてアルミニウム合金層を安定的に保ち、さらに加工精度および化学的安定性も得ることができる。また、陽極13の導電性および基板12との密着性も改善することが出来る。
【0028】
また第2層は、アルミニウム合金の酸化物、モリブデンの酸化物、ジルコニウムの酸化物、クロムの酸化物、およびタンタルの酸化物の中の少なくとも一つからなる層を例示できる。ここで、例えば、第2層が副成分としてランタノイド系元素を含むアルミニウム合金の酸化物層(自然酸化膜を含む)である場合、ランタノイド系元素の酸化物の透過率が高いため、これを含む第2層の透過率が良好となる。このため、第1層の表面において、高反射率を維持することが可能である。さらに、第2層は、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電層であっても良い。これらの導電層は、陽極13の電子注入特性を改善することができる。
【0029】
また陽極13は、基板12と接する側に、陽極13と基板12との間の密着性を向上させるための導電層を設けて良い。このような導電層としては、ITOやIZOなどの透明導電層が挙げられる。
【0030】
そして、この有機電界発光素子10を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合には、陽極13は画素毎にパターニングされ、基板12に設けられた駆動用の薄膜トランジスタに接続された状態で設けられている。またこの場合、陽極13の上には、ここでの図示を省略したが絶縁膜が設けられ、この絶縁膜の開口部から各画素の陽極13の表面が露出されるように構成されていることとする。
【0031】
<有機電界発光素子基板11−有機層14>
有機層14は、一対の電極である陽極13と陰極15とに狭持されてなり、層が複数積層された複数層構成である。特に本発明では、上述のとおり少なくとも発光層14cを含む発光ユニット14a〜dが複数個積層され、当該各発光ユニット14a〜d間に電荷発生能を備える中間層14eが狭持されてなる。2個の発光ユニット14a〜dは、中間層14eを狭持することで、当該中間層14eによって互いに隣接せずに配置され、これらはあたかも直列的に配設された2つの有機電界発光素子のように振舞うようになり、高輝度の発光が可能となる。
【0032】
以下、本実施の形態に基づき本発明に係る有機電界発光素子10における有機層14を構成する各層を説明する。
尚、本実施の形態では、陽極13側から「ホール注入層14a/ホール輸送層14b/発光層14c/電子輸送層14d」の積層構成からなる複数の発光ユニットが直列的に配置された所謂タンデム構造を採る。しかし、本発明に係る有機電界発光素子はこの構成に何ら限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記した層14a〜eの中の複数の層の代わりに、これらの機能を併せ持つ1層を有する構成であっても良い。例えば発光層14cがホール輸送層14b及び/または電子輸送層14dの機能を併せ持つような構成が挙げられる。また、その他の任意の層をさらに設けた構成であっても良く、上記した層14a〜dの夫々が複数層からなる構成であっても良い。
以下、発光ユニット14a〜dを構成する各層について詳細に説明する。
【0033】
(ホール注入層14a/ホール輸送層14b)
ホール注入層14aおよびホール輸送層14bは、それぞれ発光層14cへのホール注入効率を高めるためのものである。このようなホール注入層14aもしくはホール輸送層14bの材料としては特に限定はなく公知のものを適用することができ、例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマーあるいはポリマーを用いることができる。
【0034】
また、上記ホール注入層14aもしくはホール輸送層14bのさらに具体的な材料としては、α−ナフチルフェニルフェニレンジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、ヘキサシアノアザトリフェニレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(F4−TCNQ)、テトラシアノ4、4、4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N、N、N’、N’−テトラキス(p−トリル)p−フェニレンジアミン、N、N、N’、N’−テトラフェニル−4、4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール、4−ジ−p−トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2、2’−チエニルピロール)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
(発光層14c)
発光層14cは、陽極13と陰極15による電圧印加時に、陽極13と中間層14e、又は、中間層14eと陰極15のそれぞれからホールまたは電子が注入され、さらにこれらが再結合する領域である。このため発光層14cは、発光効率が高い材料、例えば、低分子蛍光色素、蛍光性の高分子、金属錯体等の有機発光材料を用いて構成される。
【0036】
発光層14cに用いられる材料としては、フェニレン核、ナフタレン核、アントラセン核、ピレン核、ナフタセン核、クリセン核もしくはペリレン核から構成される芳香族炭化水素化合物であり、具体的には9,10−ジフェニルアントラセン、9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、1,6−ジフェニルピレン、1,6−ジ(1−ナフチル)ピレン、1,6−ジ(2−ナフチル)、1,8−ジフェニルピレン、1,8−ジ(1−ナフチル)ピレン、1,8−ジ(2−ナフチル)ピレン、ルブレン、6,12−ジフェニルクリセン、6,12−ジ(1−ナフチル)クリセン、6,12−ジ(2−ナフチル)クリセン等を好適に用いることができる。
【0037】
また、この発光層14cには、発光層14cでの発光スペクトルの制御を目的として、他のゲスト材料を微量添加しても良い。このような他のゲスト材料としては、ナフタレン誘導体、アミン化合物、ピレン誘導体、ナフタセン誘導体、ベリレン誘導体、クマリン誘導体、ピラン系色素等の有機物質が用いられ、なかでもこれらの芳香族第三級アミン化合物が好適に用いられる。
【0038】
(電子輸送層14d)
電子輸送層14dは、陰極15または後述する中間層14eから注入される電子を発光層14cに輸送するためのものである。電子輸送層14dの材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、フルオレノン、及びこれらの誘導体が挙げられる。具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq3)、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0039】
以上説明した発光ユニット14a〜dを構成する各層は、例えば真空蒸着法や、スピンコート法などの方法によって形成することができる。
【0040】
(中間層14e)
中間層14eは、上記した層14a〜dからなる発光ユニット14a〜d間に狭持されてなり、電荷発生能を備えるものである。中間層14eの構成は、例えば本実施の形態においては、3層構造を採る。この3層構造の場合、陽極13側から順に、酸化物含有層14ei、電荷輸送性有機材料層14eii、及びトリフェニレン層14eiiiが積層された積層部を備えることが好ましい。尚、本発明における電荷発生能を備えるとは、電圧印加時において、中間層14eの陰極15側に配置された発光ユニット14−1に対してホールを注入する一方、中間層14eの陽極13側に配置された発光ユニット14−2に対して電子を注入する役割を果たすものである。
以下、酸化物含有層14ei、電荷輸送性有機材料層14eii、及びトリフェニレン層14eiiiについて夫々詳細に説明する。
【0041】
・酸化物含有層14ei
酸化物含有層14eiは、アルカリ金属並びにアルカリ土類金属(ベリリウム及びマグネシウムを含む)の少なくとも一方を含む酸化物を用いて構成されている。ここで、アルカリ金属は、Li、Na、K、Rb、Cs、Frであり、またアルカリ土類金属は、ベリリウム(Be)、及びマグネシウム(Mg)を含む、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raを指す。
【0042】
そして、この酸化物含有層14eiを構成する酸化物としては、一般的なアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物の他、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方と共に他の元素を含む複合酸化物が用いられる。そして、アルカリ金属やアルカリ土類金属と共に複合酸化物を構成する酸化物の具体例としては、メタ硼酸化物、テトラ硼酸化物、ゲルマン酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、珪酸化物、タンタル酸化物、チタン酸化物、バナジン酸化物、タングステン酸化物、ジルコン酸化物、炭酸化物、蓚酸化物、亜クロム酸化物、クロム酸化物、重クロム酸化物、フェライト、亜セレン酸化物、セレン酸化物、スズ酸化物、亜テルル酸化物、テルル酸化物、ビスマス酸化物、テトラホウ酸化物、メタホウ酸化物の中から少なくとも1種類以上選ばれる。このうち、特に、主成分としてLi2CO3、Cs2CO3またはLi2SiO3を用いることが好ましい。
【0043】
このような酸化物を用いた酸化物含有層14eiとして、次の図2(1)〜図2(4)に示される層構造が例示される。
【0044】
即ち、図2(1)に示すように、酸化物含有層14eiは、上述した酸化物と電荷輸送材料とを混合した「混合層14ei−1」の単層構造であっても良い。この場合に、上述した酸化物と共に混合層14ei−1を構成する電荷輸送材料としては、ホール輸送材料や電子輸送材料が用いられる。このような酸化物含有層14eiとしては、例えば、上述した酸化物のうちLi2CO3を主成分とし、ホールや電子(電荷)のホッピングサイトとして、例えばホール輸送材料や電子輸送材料等の電荷輸送性有機材料を、上述した酸化物(例えばLi2CO3)と共に共蒸着してなる混合層であっても良い。
【0045】
また、図2(2)に示すように、酸化物含有層14eiは、陽極13側から順に、上述した酸化物と電子輸送材料との混合層14ei−2と、上述した酸化物からなる層14ei−3とを積層した「混合層14ei−2/酸化物層14ei−3」の積層構造であっても良い。
【0046】
さらに、図2(3)に示すように、酸化物含有層14eiは、陽極13側から順に、上述した酸化物からなる層14ei−3と、上述した酸化物とホール輸送材料との混合層14ei−4とを積層した「酸化物層14ei−3/混合層14ei−4」構造であっても良い。この場合ホール輸送性材料としては、アザトリフェニレン系材料のようなアリールアミン系でない有機材料によって構成されることが好ましい。この理由は、電荷輸送性がアリールアミン系材料よりも大きくなることが期待できるからである。
尚、この構成と、図2(2)の構成とを組み合わせ、陽極13側から順に「電子輸送性有機材料を含む混合層/酸化物層/ホール輸送性有機材料を含む混合層」として酸化物含有層14eiを構成しても良い。即ち、「混合層14ei−2/酸化物層14ei−3/混合層14ei−4」構造であっても良い。
【0047】
またさらに、図2(4)に示すように、酸化物含有層14eiは、陽極13側から順に、上述した酸化物からなる層14ei−3と、他の酸化物または複合酸化物からなる層14ei−5とを積層した「酸化物層14ei−3/他の酸化物層14ei−5」の積層構造であっても良い。この場合、他の酸化物層14ei−5としては、酸化物または複合酸化物が用いられ、メタ硼酸化物、テトラ硼酸化物、ゲルマン酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、珪酸化物、タンタル酸化物、チタン酸化物、バナジン酸化物、タングステン酸化物、ジルコン酸化物、炭酸化物、蓚酸化物、亜クロム酸化物、クロム酸化物、重クロム酸化物、フェライト、亜セレン酸化物、セレン酸化物、スズ酸化物、亜テルル酸化物、テルル酸化物、ビスマス酸化物、テトラホウ酸化物、メタホウ酸化物等の他の一般的な酸化物または複合酸化物が例示される。
【0048】
・電荷輸送性有機材料層14eii
次に、上述した酸化物含有層14eiの上部(陰極15側)に設けられた電荷輸送性有機材料層14eiiは、電荷輸送性有機材料を用いた層であって、電子輸送性有機材料、ホール輸送性有機材料、または両電荷輸送性有機材料を含む。そして特に、この電荷輸送性有機材料層14eiiは、金属材料や電子吸引性が強い材料などの添加成分を含まず、電子輸送性有機材料及び/またはホール輸送性有機材料のみからなる層であることが好ましい。しかし、場合によってはアルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方との混合層として用いた場合が好ましいこともある。
【0049】
電荷輸送性有機材料として用いられる電子輸送性有機材料またはホール輸送性有機材料として好ましいものは、例えば特開2006−351398号公報において例示されている「電子輸送性有機材料」や「ホール輸送性有機材料」が挙げられる。
尚、電荷輸送性有機材料層14eiiを構成する電子輸送性有機材料及びホール輸送性有機材料としては、上述した内容に特に限定されることはなく、電子輸送性を有する材料またはホール輸送性を有する材料であれば、その効果が広く認められる。
【0050】
・トリフェニレン層14eiii
次に、上述した電荷輸送性有機材料層eiiの上部に設けられたトリフェニレン層14eiiiは、下記一般式(I)に示すトリフェニレン誘導体及びアザトリフェニレン誘導体の少なくとも一方を用いて構成されていることが好ましい。尚、トリフェニレン誘導体とは母骨格が炭素のみからなるトリフェニレン骨格からなり、アザトリフェニレン誘導体とは母骨格が、トリフェニレン骨格に窒素を含むアザトリフェニレン骨格からなる化合物である。
【0051】
【化1】

【0052】
ここで一般式(I)中、R1〜R6は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、ニトリル基、ニトロ基、シアノ基またはシリル基である。また、R1〜R6のうち、隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合していてもよい。そして、一般式(I)中、X1〜X6は、それぞれ独立に、炭素もしくは窒素原子である。
【0053】
ここで、トリフェニレン層eiiiは、上記で例示したトリフェニレン誘導体およびアザトリフェニレン誘導体のうちの少なくとも1つまたは複数を組み合わせて構成されていることとする。また、このトリフェニレン層eiiiには、トリフェニレン誘導体やアザトリフェニレン誘導体の他に、例えばホール輸送性を有する芳香族アミン類を含有しても良い。
【0054】
尚、以上説明した中間層14eやその界面に積層される各層は、必ずしも明確に分離されている構成に限定されることはなく、各層の界面においてそれぞれの構成材料が混ざり合っていても良い。
【0055】
例えば、中間層14eであれば、中間層各層(14ei、14eii、14eiii)が、必ずしも明確に分離されている構成に限定されることはない。例えば、酸化物含有層14eiに、電荷輸送性材料層14eiiを構成する材料が含有されていても、またこの逆であっても良い。さらに、電荷輸送性有機材料層14eiiの界面側においては、電荷輸送性有機材料層14eiiの上下層を構成する材料との混合層が設けられても良い。
【0056】
また、中間層14eの中のトリフェニレン層14eiiiが、上記一般式(I)で示される有機化合物を用いて構成されている場合、このトリフェニレン層14eiiiがホール注入層14aを兼ねても良い。この場合、中間層14よりも陰極15側に隣接する発光ユニット14a〜d(本実施の形態における14b2〜d2)との間には、ホール注入層14aを必ずしも設ける必要はない。
【0057】
以上のような構成の有機電界発光素子10によれば、各発光ユニット14a〜d間に、酸化物含有層14eiと電荷輸送性有機材料14eiiとを積層した中間層14eを狭持したことにより、中間層14eから陽極13側の発光層14cへの電子注入効率が向上する。また、酸化物含有層14eiとトリフェニレン層14eiiiとの相互作用による劣化を抑制することで駆動に対しての安定性が改善される。従って、中間層14eを介して発光ユニット14a〜dを複数個積層してなるタンデム型の有機電界発光素子10の安定化が図られる。
【0058】
特に、上述した酸化物含有層14eiと、例えばトリフェニレン層14eiii等の有機材料の間に、電子輸送性の電荷輸送性有機材料層14eiiを狭持させた構成が好ましい。かかる構成とすることで中間層14eの駆動安定性の改善効果が大きく、タンデム型の有機電界発光素子10の安定化を図る効果も大きいことが分かった。さらにかかる構成とすることで、タンデム型有機電界発光素子でN段N倍の効率を得ることができ、かつ寿命の面においても、初期劣化を抑制することができ、長寿命な素子を得ることが可能である。
【0059】
この結果、タンデム型の有機電界発光素子10において、輝度の向上だけではなく、耐環境性の向上による寿命特性の向上、即ち長期信頼性の向上を図ることが可能になる。また、安定的な材料を用いて、このような電荷の注入特性に優れた中間層14eが構成されるため、その作製においても化学量論比を考慮した成膜などを行う必要はなく、容易に作製可能となる。しかも、一般的なV25からなる中間層を用いた場合と比較して、駆動電圧が抑えられる効果もあり、これによる長期信頼性の向上を得ることも可能である。
【0060】
また本実施の形態の有機電界発光素子10においては、中間層14eを構成する電荷輸送性有機材料層14eiiが、添加物を含まず、電子輸送性材料またはホール輸送性材料のみで構成されている。このことから、N型及びP型ドープト層を用いた場合と比較して、中間層14eの安定化を図ることが可能になり、これによる素子の長寿命化を図ることも可能である。
【0061】
尚、以上説明した実施の形態においては、中間層14eが、酸化物含有層酸化物含有層14ei,電荷輸送性有機材料層14eii、およびトリフェニレン層14eiiiを積層させた3層構造の場合を説明した。しかしながら、中間層14eは、さらに陰極15側の界面に、銅フタロシアニン(CuPc)のようなフタロシアニン骨格を持つホール注入性材料からなる層を中間的な陽極層(中間陽極層)として設けても良い。これにより、中間層14eの陰極15側に設けられた発光層14cへの、中間層14eからのホールの注入効率を高めることができる。
【0062】
また、トリフェニレン層14eiiiの代わりに特開2003−45676号公報及び特開2003−272860号公報に記載されている接続層であるV25を用いて構成しても良い。
【0063】
<有機電界発光素子基板11−陰極15>
陰極15は、例えば、有機層14側から順に第1層15a、第2層15bを積層させた2層構造で構成されている。
第1層15aは、仕事関数が小さく、かつ光透過性の良好な材料を用いて構成される。このような材料としては、例えばリチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(LiO)や、セシウム(Cs)の酸化物である酸化セシウム(CsO)、さらにはこれらの酸化物の混合物を用いることができる。また、第1層15aは、このような材料に限定されることはなく、例えば、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、さらにはインジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属、さらにはこれらの金属の酸化物等を、単体でまたはこれらの金属および酸化物の混合物や合金として安定性を高めて使用しても良い。
【0064】
第2層15bは、例えば、MgAgなどの光透過性を有する層を用いた薄膜により構成されている。この第2層15bは、さらに、アルミキノリン錯体、スチリルアミン誘導体、フタロシアニン誘導体等の有機発光材料を含有した混合層であっても良い。この場合には、さらに第3層としてMgAgのような光透過性を有する層を別途有していてもよい。
【0065】
以上の陰極15を構成する各層は、真空蒸着法、スパッタリング法、更にはプラズマCVD法などの手法によって形成することができる。また、この有機電界発光素子を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合、陰極15は、有機層14と上述の絶縁膜(不図示)とによって、陽極13と絶縁された状態で基板12上にベタ膜状に形成され、各画素の共通電極として用いられる。
【0066】
尚、陰極15は上記のような積層構造に限定されることはなく、作製されるデバイスの構造に応じて最適な組み合わせ、積層構造を取れば良いことは言うまでもない。例えば、上記実施の形態の陰極15の構成は、電極各層の機能分離、すなわち有機層14への電子注入を促進させる無機層(第1層15a)と、電極を司る無機層(第2層15b)とを分離した積層構造である。しかしながら、有機層14への電子注入を促進させる無機層が、電極を司る無機層を兼ねても良く、これらの層を単層構造として構成しても良い。また、この単層構造上にITOなどの透明電極を形成した積層構造としても良い。
【0067】
<色変換層16>
色変換層16は、有機電界発光素子基板11から発せられた光をそれよりも長波長の光へと波長変換する機能を有し、ホスト材料と、緑色発光性または赤色発光性である燐光発光性のオルトメタル化錯体とを含有するものである。
また、本実施の形態では、色変換層16は陰極15上に積層されてなる。このとき、陰極15上には色変換層16のみが積層されるものでも良く、後述する透明基板17b上に色変換層16を積層して色変換基板を作製し、該色変換基板を、積層された色変換層16側から有機電界発光素子基板11の陰極15側に貼り合わせたものでも良い。
【0068】
色変換層16を構成するホスト材料としては、好ましいものとしてBis-(2-methyl-8-quinolinolate)-4-(phenylphenolato)-aluminium(BAlq)等が例示される。
またこの他にも、例えばカルバゾール誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体が挙げられる。具体的には4,4’-N,N'-dicarbazole-biphenyl(CBP)が例示される。尚、ホスト材料は所望の波長変換となるように、適宜選択された材料が用いられる。
【0069】
燐光発光性のオルトメタル化錯体としては、Ir、Pt、Pdから選ばれる少なくとも一つを中心金属とした金属錯体が好ましい。これらの中でも中心金属がIrのものが特に好ましい。
オルトメタル化錯体を形成する配位子としては特に限定されず種々のものが使用可能である。例えば、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、2−フェニルキノリン誘導体、1−フェニルイソキノリン誘導体、及び、2−(2−ベンゾチエニル)ピリジン誘導体等が挙げられる。
【0070】
具体的には下記化学式(1)で示されるビス(2-(2-ベンゾ[4,5-a]チエニル)ピリジナート-N,C3)イリジウム(アセチルアセトナート)、下記化学式(2)で示されるビス(1-フェニルイソキノリラート-N,C2’)イリジウム(アセチルアセトナート)、Ir(ppy)3:イリジウム−フェニルピリジン錯体、より具体的には下記化学式(3)で示されるトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム等が例示される。尚、燐光発光性のオルトメタル化錯体は所望の波長変換となるように、緑色発光性または赤色発光性であるものから適宜選択された材料が用いられる。このようなオルトメタル化錯体を用いることで、所望の波長変換が為された高輝度の変換光が得られる。
【0071】
【化2】

【0072】
【化3】

【0073】
【化4】

【0074】
特に発光源としての発光層14cが青色発光源の場合、緑色発光性の燐光発光性のオルトメタル化錯体を含有する緑色変換層16gと、赤色発光性の燐光発光性のオルトメタル化錯体を含有する赤色変換層16rとを用いることで、高輝度なフルカラー表示が可能となる。
【0075】
燐光発光性のオルトメタル化錯体の含有量は、ホスト材料に対して0.1〜50%膜厚比であることが好ましく、0.1〜20%膜厚比であることがより好ましい。燐光発光性のオルトメタル化錯体の含有量が上記した膜厚比の範囲内であることで、オルトメタル化錯体とホスト材料との割合が好適なものとなり、良好な波長変換を行うことができる。
【0076】
色変換層の膜厚は、色変換がなされるほどの厚みが確保されていれば良く、具体的には100nm以上3μm以下、である。膜厚が100nm未満では光源からの光を吸収するより透過する率が高くなり、充分な色変換がなされない。また、膜厚が3μmより厚いと色変換がなされた光が取り出せずに効率が低下する。
【0077】
そして、以上説明した構成の有機電界発光素子10に印加する電流は、通常は直流であるが、パルス電流や交流を用いても良い。電流値、電圧値は、素子が破壊されない範囲内であれば特に制限はないが、有機電界発光素子の消費電力や寿命を考慮すると、なるべく小さい電気エネルギーで効率良く発光させることが望ましい。
【0078】
また、この有機電界発光素子10がキャビティ構造となっている場合、有機層14と、透明材料あるいは半透明材料からなる電極層(本実施の形態では陰極15)との合計膜厚は、発光波長によって規定され、多重干渉の計算から導かれた値に設定されることになる。そして、この有機電界発光素子10を用いた表示装置が、所謂TAC(Top Emitting Adoptive Current drive)構造である場合、このキャビティ構造を積極的に用いることにより、外部への光取り出し効率の改善や発光スペクトルの制御を行うことが可能である。TAC構造とは、TFTが形成された基板上に上面発光型の有機電界発光素子を設けた構造を言う。
【0079】
また、本発明の有機電界発光素子10は、上面発光型、これを用いたTAC構造への適用に限定されるものではない。即ち、陽極13と陰極15との間に少なくとも複数の発光ユニット14a〜dが積層された有機層14(中間層14eを含む)を狭持してなる構成に広く適用可能である。従って、基板側から順に、陰極、有機層、陽極を順次積層した構成のものや、下部電極側からのみ光を取り出すようにした、所謂下面発光型の有機電界発光素子にも適用可能である。下面発光型の有機電界発光素子とは、基板側に位置する電極(陰極または陽極としての下部電極)を透明材料で構成し、基板と反対側に位置する電極(陰極または陽極としての上部電極)を反射材料で構成することによって、下部電極側からのみ光を取り出す構成である。
【0080】
さらに、本発明の有機電界発光素子10とは、一対の電極(陽極13と陰極15)、及びその電極間に複数の発光ユニット14a〜dと電荷発生能を備える中間層14eとを有する有機層14が挟持されることによって形成される素子であれば良い。このため、本発明は一対の電極(陽極13と陰極15)及び複数の発光ユニット14a〜dと中間層14eとを有する有機層14のみで構成されたものに限定されることはない。即ち、これらに加えて本発明の効果を損なわない範囲で他の構成要素(例えば、無機化合物層や無機成分)が共存することを排除するものではない。
【0081】
以上説明した構成により、長寿命で高輝度な有機電界発光素子とすることができる。
また以上説明した本発明に係る有機電界発光素子は、様々な電子機器に適用可能である。例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラなど、電子機器に入力された映像信号、電子機器内で生成した映像信号を画像及び/または映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置等に適用可能である。
【0082】
《有機電界発光素子10;第2の実施の形態》
次に、本発明に係る有機電界発光素子の第2の実施の形態について説明する。
図3は、本発明に係る有機電界発光素子の第2の実施の形態である上面発光方式の有機電界発光素子の構成例を示す概略断面図である。
第2の実施の形態における有機電界発光素子10は、一対の電極13,15間に有機層14が狭持された有機電界発光素子基板11上に色変換フィルタ基板17が貼り合わされてなる。
ここで、有機電界発光素子基板11の構成は上記第1の実施の形態におけるものと同一であるため、説明は省略する。
【0083】
<色変換フィルタ基板17>
色変換フィルタ基板17は、有機電界発光素子基板11に貼り合わされる側から順に、色変換層16、カラーフィルタ層17a、透明基板17bが積層された構成であり、カラーフィルタ層17aと透明基板17bとを併せてカラーフィルタ基板17cと称する。ここで、色変換層16については上記第1の実施の形態におけるものと同一であるため、説明は省略する。
【0084】
(カラーフィルタ基板17c−透明基板17b)
本発明に用いられる透明基板17bは、色変換層16及びカラーフィルタ層17aを支持するものであって、入射する光を充分透過すると共に、当該透明基板17b上に積層される層を支持可能なものであれば良い。通常透明基板17bとしては、400nm〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上で、平滑な基板が好ましい。具体的には、ガラス板、ポリマー板等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。また、その厚さは0.1〜10mmであることが好ましい。さらに必要に応じて、ブラックマトリクスを設けても良い。この透明基板17bは前述の色変換基板の透明基板17bとしてもそのまま用いることができる。
【0085】
(カラーフィルタ基板17c−カラーフィルタ層17a)
カラーフィルタ層17aについては、その材料は特に制限されるものではないが、例えば、染料、顔料及び樹脂からなるもの、並びに、染料及び顔料のみからなるものが挙げられる。染料、顔料及び樹脂からなるカラーフィルタ層には、染料及び顔料をバインダー樹脂中に溶解または分散させた固形状のものが挙げられる。カラーフィルタ層17aに用いられる染料及び顔料の好ましいものとしては、ペリレン、イソインドリン、シアニン、アゾ、オキサジン、フタロシアニン、キナクリドン、アントラキノン、及びジケトピロロ−ピロール等が挙げられる。
カラーフィルタ層17aの層厚は、0.1〜5μmであることが好ましい。
【0086】
ここで、カラーフィルタ層17aは、色の異なる複数のカラーフィルタ部を有するカラーフィルタ層17aが形成されていることが好ましい。特に、透明基板17b上に緑色カラーフィルタ部17ag、赤色カラーフィルタ部17ar、及び青色カラーフィルタ部17abの三色からなるカラーフィルタ層17aが形成されていることが好ましい。緑色、赤色、および青色のカラーフィルタ部17ag,r,bが形成されたカラーフィルタ層17aを有するカラーフィルタ基板17cとすることで、高画質なフルカラー表示が可能な構成となる。
【0087】
また、緑色カラーフィルタ部17ag上には緑色変換層16gが形成され、赤色カラーフィルタ部17ar上には赤色変換層16rが形成され、青色カラーフィルタ部17ab上には色変換層が形成されていない構成が好ましい。青色発光源を用いることで、青色カラーフィルタ部17abを透過して出射された光が青色光となるため、色変換機能は不要となり、青色カラーフィルタ部17ab上に色変換層を形成しなくても青色光を得ることができる。即ち、かかる構成とすることで、青色変換層を有しない安価で簡易な構成であっても青色カラーフィルタ部17abから青色光を出射することができる。
尚、本発明に用いられる光源は青色発光源であることが好ましいがこれに限られるものではなく、いかなる色の光源であっても良い。
【0088】
本実施の形態における有機電界発光素子10によれば、各色カラーフィルタ部17ag,r,bを設けることで、長寿命で高輝度であり、且つ、高画質なフルカラー表示が可能となる。
【0089】
《有機電界発光素子の製造方法》
さらに、本発明に係る有機電界発光素子の製造方法について説明する。かかる製造方法は、上記第2の実施の形態の有機電界発光素子を製造する方法である。
本発明に係る有機電界発光素子10の製造方法は、所定の波長のレーザー光を透過する支持基板1上に光熱変換層2を形成する工程(1)と、該光熱変換層2が形成された支持基板1上に、特定の波長を有する光源から発せられた光をそれよりも長波長の光へと波長変換する色変換層16を形成して、転写ドナー基板3を作製する工程(2)と、前記色変換層16が形成された転写ドナー基板3と、透明基板17b上にカラーフィルタ層17aを形成したカラーフィルタ基板17cとを、前記カラーフィルタ層17aと前記色変換層16とが対向するように平行に、かつ離間させて配置する工程(3)と、前記転写ドナー基板3の前記支持基板1側からレーザー光を照射し、前記色変換層16を前記カラーフィルタ基板17cの所定位置に転写させて色変換層のパターン16Aを形成し、色変換フィルタ基板17を作製する工程(4)と、一対の電極13,15間に有機層14が狭持された有機電界発光素子基板11上に、前記色変換フィルタ基板17を前記色変換層16側から貼り合わせて有機電界発光素子10を作製する工程(5)とを備え、前記有機層14は、少なくとも発光層14cを含む発光ユニット14a〜dが複数個積層され、当該各発光ユニット14a〜d間に電荷発生能を備える中間層14eが狭持されてなり、前記色変換層14cは、ホスト材料と、緑色発光性または赤色発光性である燐光発光性のオルトメタル化錯体とを含有するものである。
【0090】
図4は、本発明に係る有機電界発光素子の製造方法の概略工程図である。本発明に係る有機電界発光素子の製造方法は、下記において詳述する工程(1)乃至(5)を備えるものである。以下、各工程について説明する。
【0091】
<工程(1)>
まず、工程(1)では、図4(1)に示すように、所定波長のレーザー光を透過する支持基板1上に、光熱変換層2を形成する。
【0092】
(支持基板1)
支持基板1は、後述する転写ドナー基板3を用いて行う転写において照射される所定波長のレーザー光hrを透過する材料からなる。例えば、このレーザー光hrとして、固体レーザー光源からの波長800nm程度のレーザー光を用いる場合には、ガラス基板を支持基板1として用いて良い。このとき、支持基板1の構成は、レーザー光hrを充分に透過し、また、当該支持基板1上に積層される層を支持可能な構成であれば良い。支持基板1としては、ガラス基板の他に、石英板、アクリル板等が挙げられる。
【0093】
(光熱変換層2)
光熱変換層2は、上記レーザー光hrを熱に変換する光熱変換効率が高く、かつ融点が高い材料を用いて構成される。例えば、レーザー光hrとして、先に示した波長800nm程度のレーザー光を用いる場合には、クロム(Cr)やモリブデン(Mo)等の低反射率で高融点の金属からなる光熱変換層2が好ましく用いられる。またこの光熱変換層2は、必要充分な光熱変換効率が得られるような膜厚に調整されていることが好ましく、通常50〜1000nmとする。ここで、例えばモリブデン(Mo)膜を光熱変換層2とする場合、膜厚200nm程度の均一な構成であることが好ましい。このような光熱変換層2は、例えばスパッタ成膜法によって形成されるが、本発明はこれに限定されるものではなく、公知の膜形成方法を適用できる。尚、光熱変換層2としては、上述した金属材料に限定されることはなく、光吸収材料として、金属フタロシアニン等の顔料を含有する膜や、フラーレン、カーボンナノチューブ等のカーボンからなる膜であっても良い。また、金属としてはクロムやモリブデンの他に、タングステン、タンタル等が挙げられる。光熱変換層2を設けることにより、後述する工程(4)における色変換層16の転写を、転写残りを生じさせることなく、また色変換機能を損なうことなく、良好に行うことが可能となる。
【0094】
<工程(2)>
次に、図4(2)に示すように、工程(1)で作製された、光熱変換層2が設けられた支持基板1上に、さらに色変換層16を光熱変換層2側に形成して転写ドナー基板3とする。
【0095】
色変換層16は、転写ドナー基板3を用いた熱転写の際に、パターン化されて転写されるものであり、ホスト材料と、緑色発光性または赤色発光性である燐光発光性のオルトメタル化錯体を含有する有機材料層である。この色変換層16は、公知のドライプロセスで形成することができ、例えば、光熱変換層2上にオルトメタル化錯体を蒸着する方法が挙げられる。
色変換層16の膜厚は、好ましくは50nm〜5μm、より好ましくは100nm〜2μmである。膜厚が50nm未満であると光を吸収できないため好ましくない。また膜厚が5μmより大きいとレーザー転写が困難となるため好ましくない。
【0096】
ここで、例えば緑色の変換光を得るためには、転写ドナー基板3には緑色発光性である燐光発光性のオルトメタル化錯体を含む緑色変換層16gが設けられる。また例えば、赤色の変換光を得るためには、転写ドナー基板3には赤色発光性である燐光発光性のオルトメタル化錯体を含む赤色変換層16rが設けられる。これらと同様に例えば、青色の変換光を得るためには、転写ドナー基板3には青色発光性である燐光発光性のオルトメタル化錯体を含む青色変換層16bを設ければ良い。
【0097】
(拡散防止層4)
工程(2)においては、色変換層16を形成する前に、図5に示すような拡散防止層4を光熱変換層2上に積層形成し、しかる後に色変換層16を形成しても良い。拡散防止層4を形成することで、光熱変換層2を構成する材料の拡散を防ぐことができると言う利点がある。
【0098】
図5は、本発明に係る有機電界発光素子の製造方法に用いられる転写ドナー基板の構成の変形例であって、拡散防止層4を備えた転写ドナー基板3の構成を説明するための断面概略図である。
拡散防止層4は、公知の形成方法で形成することができ、例えばプラズマCVD法やスパッタ法によって形成される。膜厚は50nm〜5μmであることが好ましい。
【0099】
拡散防止層4は、光熱変換層2を構成する材料の拡散を防止するための層として設けられている。このような拡散防止層4は、熱伝導性に優れ、光や熱に対して安定な材料で構成することが好ましい。例えばシリコンの窒化物、またはシリコンの酸化物で構成される。具体的には、酸化シリコン膜(SiO)、窒化シリコン膜(SiNx)、酸窒化シリコン膜(SiONx)などが挙げられる。特に、窒化シリコン膜(SiNx)は、緻密な膜構成での成膜が可能であると共に、この拡散防止層4の影響による色変換層16や光熱変換層2の酸化も防止できるため好ましい。また拡散防止層4は、窒化チタン(TiN)や酸窒化チタン(TiON)などの金属の酸化膜または窒化膜で構成されていても良く、さらには有機材料で構成されていても良い。有機材料を用いる場合には、例えば充分に架橋が進んだポリイミドなど、耐熱性の良好な材料が用いられることが好ましい。また拡散防止層4は、上記した材料膜の積層体であっても良い。
【0100】
<工程(3)>
図4(3)に示すように、工程(3)では工程(2)で作製された転写ドナー基板3の色変換層16側に、転写ドナー基板3と平行に、かつ離間させて、透明基板17b上にカラーフィルタ層17aを形成したカラーフィルタ基板17cを、前記カラーフィルタ層17aと前記色変換層16とが対向するように配置する。
転写ドナー基板3は、カラーフィルタ層17aに対して100nm〜5μm離間して配置されることが好ましい。
【0101】
尚、ここではカラーフィルタ基板17c上には緑色カラーフィルタ部17ag、赤色カラーフィルタ部17ar、及び青色カラーフィルタ部17abの三色からなるカラーフィルタ層17aが形成されている例について説明する。
また本発明においてカラーフィルタ層17aは、上述した材料に対応した既知の方法によって塗布及びパターン化を行うことによって形成することができる。
【0102】
<工程(4)>
前記工程(3)の後、図4(4)に示すように、転写ドナー基板3の支持基板1側からレーザー光hrを照射し、色変換層16をカラーフィルタ基板17cの所定位置に転写させてパターン化された色変換層16Aを形成することで色変換フィルタ基板17を作製する。
ここで、所定の位置とはカラーフィルタ基板17c上に所望のパターン化された色変換層16Aを形成するに際し、パターン化された色変換層16Aを形成すべきカラーフィルタ基板17c上の位置を指す。
【0103】
ここで、本発明におけるレーザー光hrの波長は、好ましくは800〜1000nmである。また、レーザー光hrの強度は、例えばエネルギー密度は、0.1E-3mJ/μm〜10E-3mJ/μmであり、照射時間は例えば1μs〜10sである。レーザー光hrの強度および照射時間は、良好な転写形成をするものであれば良く、色変換層16に用いられる燐光発光性のオルトメタル化錯体、支持基板1の材質等に応じて決定される。
【0104】
工程(4)において形成されるパターン化された色変換層16Aの膜厚は、100nm〜10μmであることが好ましい。
本発明では、1回の転写でパターン化された色変換層16Aを形成しても良く、複数回の転写でパターン化された色変換層16Aを形成しても良い。
1回の転写を行うだけでは所望の膜厚のパターン化された色変換層16Aが得られない場合は、前記工程(4)の転写を複数回行いパターン化された色変換層16Aを形成することが好ましい。
【0105】
工程(4)を繰り返して転写を複数回の行う際には、カラーフィルタ基板17cの所定位置を変更せずに、転写ドナー基板3を移動させて転写を複数回行い、パターン化された色変換層16Aを形成する。このとき、初回(各色における初回)の転写時においてアライメントを行うことが好ましい。このアライメントは、転写ドナー基板3及びカラーフィルタ基板17cに位置調整のために形成されているアライメントマーク(不図示)を用いて行うことが好ましい。
【0106】
本発明の有機電界発光素子の製造方法では、異なる種類のオルトメタル化錯体を用いて前記工程(1)乃至(4)(工程(4)が複数回行われる場合も含む)を繰り返し行うことで、色の異なる複数のパターン化された色変換層16Aを転写形成できる。特に、緑色転写ドナー基板3g、及び赤色転写ドナー基板3rの夫々について前記工程(1)乃至(4)を繰り返し行い、1のカラーフィルタ基板17c上に2色のパターン化された色変換層16Aを転写形成することが好ましい。または、これに加えてさらに青色転写ドナー基板3bについて前記工程(1)乃至(4)を行い、1のカラーフィルタ基板17c上に3色のパターン化された色変換層16Aを転写形成することが好ましい。
即ち、緑色転写ドナー基板3gを用いることでパターン化された緑色変換層16Agが、及び赤色転写ドナー基板3rを用いることでパターン化された赤色変換層16Arが、カラーフィルタ層17a上に夫々転写形成される。または、これに加えてさらに青色転写ドナー基板3bを用いることでパターン化された青色変換層16Abが、カラーフィルタ層17a上に転写形成される。尚、各色の何れにおいても、パターン化された色変換層16Aは、当該パターン化された色変換層16Aと同色のカラーフィルタ部(所定のカラーフィルタ部)上に形成される。
【0107】
<工程(5)>
さらに工程(4)の後、図4(5)に示すように、一対の電極13,15間に有機層14が狭持された有機電界発光素子基板11上に、工程(4)で得られた色変換フィルタ基板17を前記色変換層16側から貼り合わせて有機電界発光素子10を作製する。このとき有機電界発光素子10は、有機電界発光素子基板11上に工程(4)で得られた色変換フィルタ基板17を、陰極15と色変換層16とが接するように貼り合わされて形成される。
【0108】
尚、本発明では有機電界発光素子基板11の作製は従来公知の方法を用いることができ、例えば、有機電界発光素子基板11の各層の構成の説明の際において既に述べたような方法を用いることができる。また、有機電界発光素子基板11と色変換フィルタ基板17との貼り合わせの方法についても特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
【0109】
(その他の構成)
さらに色変換フィルタ基板17は色変換層16A側全面に、可視域における透明性と、電気絶縁性と、水分、酸素及び低分子成分に対するバリア性とを有するポリマー材料からなる保護層18(図6参照)をさらに積層してプロテクトする構成としても良い。この保護層18は、色変換フィルタ基板17における上面(カラーフィルタ基板17cの反対面)を平坦化する作用もある。
保護層18を形成するポリマー材料としては熱硬化型エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
保護層18は、膜厚1〜100μmであることが好ましい。
【0110】
以上説明した本発明に係る有機電界発光素子の製造方法によれば、長寿命で高輝度な有機電界発光素子をドライプロセスで簡便に製造可能となる。また、光熱変換層2を設けることにより、色変換層16の転写を、転写残りを生じさせることなく、また色変換機能を損なうことなく、良好に行うことが可能となり、高品質な色変換膜を備えた有機電界発光素子を製造することができる。
【実施例】
【0111】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
<実施例1>
透明基板として30mm×30mmのガラス板からなる基板上に、陽極13として銀合金(膜厚100nm)を形成し、保護層兼ホール注入電極としてITO(膜厚約10nm)を形成した。さらにSiO2蒸着により2mm×2mmの発光領域以外を絶縁膜(図示省略)でマスクした有機電界発光素子用のトップエミッション用評価基板を作製した。
【0112】
次に、第1層目の発光ユニット(14a1〜14d1)を構成するホール注入層14a1として、下記化学式(4)で示されるトリフェニレン誘導体からなるホール注入材料を、真空蒸着法により11nm(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)の膜厚で形成した。
【0113】
【化5】

【0114】
次いで、ホール輸送層14b1として、下記化学式(5)で示されるα−NPD(Bis[N-(1-naphthyl)-N-phenyl]bendizine)を、真空蒸着法により11nm(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)の膜厚で形成した。
【0115】
【化6】

【0116】
さらに、発光層14c1として、下記化学式(6)で示されるADNをホストにして、ドーパントとしてBD−052x(出光興産株式会社:商品名)を用い、真空蒸着法によりBD−02xが膜厚比で5%になるように、これらの材料を28nmの合計膜厚で成膜した。
【0117】
【化7】

【0118】
次いで、電子輸送層14d1として、下記化学式(7)で示されるAlq3[Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminum(III)]を、真空蒸着法により10nmの膜厚で蒸着成膜した。
【0119】
【化8】

【0120】
以上のようにして第1層目の発光ユニット14a1〜14d1を形成した後、酸化物含有層14eiとして、Li2CO3を0.3nmの膜厚で真空蒸着法により成膜した。さらにその後電子輸送性の電荷輸送性有機材料層14eiiとしてAlq3を5nmの膜厚で真空蒸着法により成膜した。そして最後に前記化学式(4)で示されるトリフェニレン誘導体を60nmの膜厚で真空蒸着法により成膜し、これにより三層構成の中間層14eを形成した。
【0121】
以上の後、第2層目の発光ユニット14b2〜14d2を、第1層目の発光ユニットにおけるホール輸送層14b1から電子輸送層14d1と同様に形成した(α−NPD以降を繰り返し形成した)。
【0122】
次いで、第1層目の陰極15aとして、LiFを真空蒸着法により約0.3nmの膜厚で形成した(蒸着速度0.01nm/sec以下)。さらに、第2層目の陰極15bとしてMgAgを真空蒸着法により10nmの膜厚で形成して2層構造の陰極15を形成し有機電界発光素子基板11を作製した。
【0123】
しかる後に、有機電界発光素子基板11の陰極15上において、ホスト材料として下記化学式(8)で示されるビス(2-メチル-8-キノリノラート-N1,O8)-(1,1'-ビフェニル-4-オラート)アルミニウム(BAlq)を蒸着し、膜厚500nmの膜を形成した。その際、BAlqには前記化学式(1)で示されるビス(2-(2-ベンゾ[4,5-a]チエニル)ピリジナート-N,C3)イリジウム(アセチルアセトナート)をドーパント材料として相対膜厚比で10%ドーピングして色変換層を形成した。
【0124】
【化9】

【0125】
以上のようにして、タンデム構造の発光ユニット14a1〜d1,14b2〜d2を有する燐光発光性色変換型の有機電界発光素子を作製した。
【0126】
実施例1で作製された有機電界発光素子に10mA/cm2の電流を印加したところ、白色として観測された。また、色変換層由来の616nmの赤色の発光成分が観測されると共に、光源となる発光層由来の460nmの青色の発光成分が観測された。
さらに、この有機電界発光素子を50℃環境において100mA/cm2の電流密度で100時間通電したところ、616nmの発光成分のピーク波長は200Hrで2%の輝度劣化が観測された。また、通電後も実施例1で作製された有機電界発光素子からは白色発光が観測された。
【0127】
<実施例2>
実施例1のドーパントとして前記化学式(1)で示される化合物の代わりに、前記化学式(2)で示されるビス(1-フェニルイソキノリラート-N,C2’)イリジウム(アセチルアセトナート)を10%ドーピングして用いた他は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0128】
実施例2で作製された有機電界発光素子に10mA/cm2の電流を印加したところ、白色として観測された。また、色変換層由来の623nmの赤色の発光成分が観測されると共に、光源となる発光層由来の460nmの青色の発光成分が観測された。
【0129】
<実施例3>
実施例1のドーパントとして前記化学式(1)で示される化合物を5%ドーピングすると共に、前記化学式(3)で示されるトリス(2−フェニルピリジン)イリジウムを同時に10%ドーピングして用いた他は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0130】
実施例3で作製された有機電界発光素子に10mA/cm2の電流を印加したところ、色純度の良い白色として観測された。また、色変換層由来の513nmの緑色の発光成分と616nmの赤色の発光成分が観測されると共に、光源となる発光層由来の460nmの青色の発光成分が観測された。
【0131】
<実施例4>
実施例1のホストとして前記化学式(8)で示されるBAlqの代わりに、下記化学式(9)で示されるCBP、ドーパントとして前記化学式(1)で示される化合物の代わりに、下記化学式(10)で示されるをPtTPPを10%ドーピングして用いた他は、実施例1と同様にして有機電界発光素子を作製した。
実施例4で作製された有機電界発光素子に10mA/cm2の電流を印加したところ、白色として観測された。また、色変換層由来の670nmの赤色の発光成分が観測されると共に、光源となる発光層由来の460nmの青色の発光成分が観測された。
【0132】
【化10】

【0133】
【化11】

【0134】
<比較例1>
実施例1の色変換層の代わりに、以下の方法で作製された色変換基板を接着し、比較用有機電界発光素子を作製した。
前記化学式(1)で示されるビス(2-(2-ベンゾ[4,5-a]チエニル)ピリジナート-N,C3)イリジウム(アセチルアセトナート)50mgとポリメチルメタクリレート(PMMA)(和光純薬工業株式会社製)1gとを、トルエン5mlに分散してトルエン分散液を得た。一方で、スピンコーター上に設置したスライドガラス基板を1000rpmで回転させ、その基板上に得られトルエン分散液を滴下し、60秒間、回転させて塗布した。得られた膜を120℃で10分乾燥させて、樹脂バインダーに分散させた色変換基板を得た。
【0135】
比較例1で作製された有機電界発光素子を50℃環境において10mA/cm2の電流密度で100時間通電したところ、200Hrで616nm成分のピーク波長の40%の輝度劣化が観測された。また、この有機電界発光素子は作製直後には白色として観測されたが、通電後は青色の発光が主成分として観測されることとなった。
【0136】
<比較例2>
実施例1の有機電界発光素子において、電子輸送層14d1として、Alq3を、真空蒸着法により10nmの膜厚で蒸着成膜した後に、中間層14e並びに第2層目の発光ユニット14b2〜14d2を形成せず、有機層14を作製した。次いで、第1層目の陰極15aとして、LiFを真空蒸着法により約0.3nmの膜厚で形成した(蒸着速度0.01nm/sec以下)。さらに、第2層目の陰極15bとしてMgAgを真空蒸着法により10nmの膜厚で形成して2層構造の陰極15を形成し形成し有機電界発光素子基板を作製した。
【0137】
しかる後に、有機電界発光素子基板の陰極15上において、ホスト材料として前記化学式(8)で示されるビス(2-メチル-8-キノリノラート-N1,O8)-(1,1'-ビフェニル-4-オラート)アルミニウム(BAlq)を蒸着し、膜厚500nmの膜を形成した。その際、BAlqには前記化学式(1)で示されるビス(2-(2-ベンゾ[4,5-a]チエニル)ピリジナート-N,C3)イリジウム(アセチルアセトナート)をドーパント材料として相対膜厚比で10%ドーピングして色変換層を形成した。
【0138】
比較例2で作製された有機電界発光素子に10mA/cm2の電流を印加したところ、実施例1で作製された有機電界発光素子と同様に白色として観測されたが、発光効率は実施例1の半分程度であった。
【0139】
以上の各実施例、比較例で得られた有機電界発光素子の初期特性と通電後の特性を下記表1に示す。
【0140】
【表1】

【0141】
実施例1〜4と比較例1との比較から、本発明のようにホスト材料中に燐光発光性の物質を分散させることで、樹脂中に分散する添加剤(重合開始剤の残渣)などの影響を排除し、良好な輝度寿命が得られる。また、図7に例示する実施例1のように、測定初期のスペクトル形状と、100mA/cm2の電流密度で100時間通電した後のスペクトル形状とを比較すると、スペクトル形状の変化も軽微であることが確かめられた。
さらに実施例1〜4と比較例2との比較から、所謂タンデム構造の有機電界発光素子とした本発明に係る実施例では、より高輝度の白色変換光が得られることが確かめられた。
【0142】
従って本発明によれば、劣化が抑制されて長寿命で、且つ、高輝度な有機電界発光素子が得られる。
即ち、本発明のように高効率の燐光発光性のオルトメタル化錯体を用いることで、青色から白色への色変換が高効率で可能となる。また、本発明のようにホスト材料を用いることで、色変換膜の耐久性を向上することが可能となり、劣化による色の変化の少ない白色変換光が得られる有機電界発光素子となる。さらにカラーフィルタを併用することによって、青色発光体から緑色、及び赤色への色変換が可能となり、青色発光源のみからでRGB表示が可能な表示装置を製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0143】
1 支持基板、2 光熱変換層、3 転写ドナー基板、4 拡散防止層、10 有機電界発光素子、11 有機電界発光素子基板、12 基板、13 陽極、14 有機層、14a ホール注入層、14b ホール輸送層、14c 発光層、14d 電子輸送層、14e 中間層、14ei 酸化物含有層、14eii 電荷輸送性有機材料層、14eiii トリフェニレン層、15 陰極、15a 第1層(陰極)、15b 第2層(陰極)、16 色変換膜、16A パターン化された色変換膜、17 色変換フィルタ基板、17a カラーフィルタ層、17b 透明基板、17c カラーフィルタ基板、18 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に有機層が狭持された有機電界発光素子基板上に特定の波長を有する光源から発せられた光をそれよりも長波長の光へと波長変換する色変換層が形成されてなり、
前記有機層は、少なくとも発光層を含む発光ユニットが複数個積層され、当該各発光ユニット間に電荷発生能を備える中間層が狭持されてなり、
前記色変換層は、ホスト材料と、緑色発光性または赤色発光性である燐光発光性のオルトメタル化錯体とを含有する、有機電界発光素子。
【請求項2】
前記オルトメタル化錯体の中心金属は、イリジウム、白金、パラジウムから選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記オルトメタル化錯体は、前記ホスト材料に分散させられてなり、当該ホスト材料に対して0.1〜50%膜厚比で含まれる請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記色変換層の層厚は100nm以上、3μm以下である請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記中間層は、下記一般式(I)で示される有機化合物を含む請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化1】


(一般式(I)中、R1〜R6は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、アリールアミノ基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、ニトリル基、ニトロ基、シアノ基またはシリル基である。また、R1〜R6のうち、隣接するRm(m=1〜6)は環状構造を通じて互いに結合していてもよい。そして、一般式(I)中、X1〜X6は、それぞれ独立に、炭素もしくは窒素原子である。)
【請求項6】
前記一対の電極は、陽極と、陰極とからなり、
前記中間層は、アルカリ金属並びにアルカリ土類金属(ベリリウム及びマグネシウムを含む)の少なくとも一方を含む酸化物を用いた層と、電荷輸送性有機材料を用いた層と、前記一般式(I)で示されるトリフェニレン誘導体及びアザトリフェニレン誘導体の少なくとも一方を用いた層とを、この順に前記陽極側から積層させた積層部を備える請求項5に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
一対の電極間に有機層が狭持された有機電界発光素子基板上に色変換基板が貼り合わされてなり、
該色変換基板は、透明基板と、該透明基板上の前記有機電界発光素子基板側に設けられ特定の波長を有する光源から発せられた光をそれよりも長波長の光へと波長変換する色変換層とを有し、
前記有機層は、少なくとも発光層を含む発光ユニットが複数個積層され、当該各発光ユニット間に電荷発生能を備える中間層が狭持されてなり、
前記色変換層は、ホスト材料と、緑色発光性または赤色発光性である燐光発光性のオルトメタル化錯体とを含有する、有機電界発光素子。
【請求項8】
一対の電極間に有機層が狭持された有機電界発光素子基板上に色変換フィルタ基板が貼り合わされてなり、
該色変換フィルタ基板は、カラーフィルタ基板と、該カラーフィルタ基板上の前記有機電界発光素子基板側に設けられ特定の波長を有する光源から発せられた光をそれよりも長波長の光へと波長変換する色変換層とを有し、
前記カラーフィルタ基板は、透明基板と、該透明基板上の前記色変換層側に設けられたカラーフィルタ層とを備え、
前記有機層は、少なくとも発光層を含む発光ユニットが複数個積層され、当該各発光ユニット間に電荷発生能を備える中間層が狭持されてなり、
前記色変換層は、ホスト材料と、緑色発光性または赤色発光性である燐光発光性のオルトメタル化錯体とを含有する、有機電界発光素子。
【請求項9】
所定の波長のレーザー光を透過する支持基板上に光熱変換層を形成する工程(1)と、
該光熱変換層が形成された支持基板上に、特定の波長を有する光源から発せられた光をそれよりも長波長の光へと波長変換する色変換層を形成して、転写ドナー基板を作製する工程(2)と、
前記色変換層が形成された転写ドナー基板と、透明基板上にカラーフィルタ層を形成したカラーフィルタ基板とを、前記カラーフィルタ層と前記色変換層とが対向するように平行に、かつ離間させて配置する工程(3)と、
前記転写ドナー基板の前記支持基板側からレーザー光を照射し、前記色変換層を前記カラーフィルタ基板の所定位置に転写させて色変換層のパターンを形成し、色変換フィルタ基板を作製する工程(4)と、
一対の電極間に有機層が狭持された有機電界発光素子基板上に、前記色変換フィルタ基板を前記色変換層側から貼り合わせて有機電界発光素子を作製する工程(5)とを備え、
前記有機層は、少なくとも発光層を含む発光ユニットが複数個積層され、当該各発光ユニット間に電荷発生能を備える中間層が狭持されてなり、
前記色変換層は、ホスト材料と、緑色発光性または赤色発光性である燐光発光性のオルトメタル化錯体とを含有する、有機電界発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記カラーフィルタ基板のカラーフィルタ層が、赤色カラーフィルタ部、緑色カラーフィルタ部、および青色カラーフィルタ部の三色から構成され、赤色カラーフィルタ部には赤色に変換される色変換層を形成し、緑色カラーフィルタ部には緑色に変換される色変換層を形成し、青色カラーフィルタ部には色変換層を形成しない、請求項9に記載の有機電界発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−192366(P2010−192366A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37575(P2009−37575)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】