説明

有機電界発光素子

【課題】発光効率および発光輝度に優れた有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】一対の電極間、少なくとも発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、少なくとも一種が燐光発光材料である相異なる少なくとも二種の発光材とホスト材とを同一発光層に含み、発光層内の厚み方向に、ホスト材と一種の発光材を含む領域と、ホスト材と二種以上の発光材を含む領域とを有することを特徴とする有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを光に変換して発光できる有機電界発光素子(発光素子、またはEL素子)に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、種々の表示素子に関する研究開発が活発であり、中でも有機電界発光(EL)素子は、低電圧で高輝度の発光を得ることができるため、有望な表示素子として注目されている。
一般に有機EL素子は、発光層もしくは発光層を含む複数の有機層を挟んだ対向電極から構成されており、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が発光層において再結合し、生成した励起子からの発光を利用するもの、又は前記励起子からエネルギー移動によって生成する他の分子の励起子からの発光を利用するものである。
【0003】
有機EL素子は自発光の面光源であることから、例えば、白色光源としての利用が考えられる。Commission Internationale d’Eclairag
e(CIE)により定義されているように、理想的な白色光源は(0.33、0.33)の座標を有する。白色発光は、青色,緑色,赤色の3色の発光材料、あるいは補色関係にある2色の発光材料の発光により得ることができる。
【0004】
白色発光素子としては、低電圧,高輝度、かつ色度の高い白色発光が望まれている。低電圧化,高輝度化のため、蛍光発光材より発光効率の高い燐光発光材の使用が望まれている(例えば、特許文献1、2、3参照。)が、特に、発光素子としての発光効率向上のために、青色発光の燐光材料の開発および青色燐光材を有効に発光させる素子の開発が望まれている。その理由として、青色の発光強度が低い場合、所望の色度を得るために、高効率発光することが知られている緑色や,赤色の燐光発光強度を下げて調整する必要が生じ、結果的に発光素子としての発光効率が低下してしまうためである。発光効率や色度の点でいまだ不十分であり、更なる改良が望まれていた
【特許文献1】特開2001−319780号公報
【特許文献2】特開2004−281087号公報
【特許文献3】特開2004−522276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、発光効率および発光輝度に優れた有機電界発光素子を提供することを目的とする。さらには、発光効率および発光輝度に優れ、かつ色度の良好な白色有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記実情に鑑み本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、上記課題を解決しうることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の手段により達成されるものである。
【0007】
<1> 一対の電極間、少なくとも発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、少なくとも一種が燐光発光材料である相異なる二種以上の発光材とホスト材とを同一発光層に含み、発光層内の厚み方向に、ホスト材と一種の発光材を含む領域と、ホスト材と二種以上の発光材を含む領域とを有することを特徴とする有機電界発光素子。
【0008】
<2> 一対の電極間、少なくとも発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、少なくとも一種が燐光発光材料である相異なる二種の発光材とホスト材とを同一発光層に含み、発光層内の陽極側から厚み方向に、ホスト材と第1の発光材を含む領域、ホスト材と第1の発光材および第2の発光材を含む領域、ホスト材と第2の発光材を含む領域がこの順で設けられていることを特徴とする上記<1>に記載の有機電界発光素子。
【0009】
<3> 一対の電極間、少なくとも発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、少なくとも一種が燐光発光材料である相異なる三種の発光材とホスト材とを同一発光層に含み、発光層内の陽極側から厚み方向に、ホスト材と第1の発光材を含む領域、ホスト材と第1の発光材および第2の発光材を含む領域、ホスト材と第2の発光材を含む領域、ホスト材と第2の発光材と第3の発光材を含む領域、ホスト材と第3の発光材を含む領域がこの順で設けられていることを特徴とする上記<1>又は<2>に記載の有機電界発光素子。
【0010】
<4> 少なくとも一種の発光材の発光層中での濃度が、陽極側から厚み方向に、漸増および/または漸減していることを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<5> 前記相異なる少なくとも二種の発光材が、異なる発光波長で発光することを特徴とする上記<1>に記載の有機電界発光素子。
【0011】
<6> 前記相異なる三種の発光材が、異なる発光波長で発光することを特徴とする上記<3>又は<4>に記載の有機電界発光素子。
<7> 白色発光であることを特徴とする上記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い発光効率および発光輝度を示し、かつ色度にも優れた有機EL素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の発光素子は、支持基板上に設けた少なくとも陽極、発光層を含む有機化合物層、陰極からなり、少なくとも一種が燐光発光材料である相異なる二種以上の発光材(以下、発光材料ともいう。)とホスト材(以下、ホスト材料ともいう。)を同一発光層に含み、発光層内の厚み方向に、ホスト材と一種の発光材を含む領域と、ホスト材と二種以上の発光材を含む領域とを有する。
【0014】
以下、本発明について図1〜5を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の発光素子の態様の一例であり、特に、発光層内の発光材料の分布を示す概略図である。または、図2は、本発明の発光素子の別の態様の一例を示し、発光層内の発光材料の分布を示す概略図である。
本発明の発光素子は、発光層内の厚み方向に、ホスト材と一種の発光材を含む領域と、ホスト材と二種以上の発光材を含む領域とを有するが、前記「発光層の厚み方向に、ホスト材と一種の発光材を含む領域と、ホスト材と二種以上の発光材とを含む領域とを有する」とは、例えば、図1a及びbに示すように、発光層の陽極側にホスト材料と一種の発光材料を含有する領域Aと、陰極側にホスト材料と二種以上の発光材を含有する領域Bと、を有する構成(図1a)、あるいはその逆の構成で、発光層の陽極側にホスト材料と二種の発光材料を含有する領域Cと、陰極側にホスト材料と一種の発光材料を含有する領域Dと、を有する構成(図1b)を挙げることができる。
【0015】
また、図2(a)及び(b)に示すように、発光層の電極側にホスト材料と一種の発光材を含む領域E及びGで、ホスト材料と二種以上の発光材を含む領域Fを挟んだ構成(図2a)、またはその逆の構成で、発光層の電極側にホスト材料と二種の発光材料を含む領域H及びJで、ホスト材料と一種の発光材を含む領域Iを挟んだ構成(図2b)を挙げることもできる。
【0016】
図3(a)は、本発明の発光素子の別の態様の一例を示し、発光層内の発光材料の分布を示す概略図である。図3(b)は、従来の発光素子の例を示し、発光層内の発光材料の分布を示す概略図である。
本発明においては、色度の良好な白色発光を得るために、発光波長の異なる2種類の発光材料を好ましく使用することができるが、この場合の構成としては、図3aに示すように、発光層内の陽極側から厚み方向に、ホスト材料と第1の発光材料を含む領域Kと、ホスト材料と第1の発光材料および第2の発光材料を含む領域Lと、ホスト材料と第2の発光材料を含む領域Mと、がこの順で設けられていることが好ましい。
このような構成とすることによって、従来の発光素子の図3(b)に示されるように、第1の発光材料を含む領域K’と、第2の発光材料を含む領域M’と、の界面における電荷移動障壁を軽減することができ、従来にみられる領域K’と領域M’との間の電荷輸送性が向上し、発光効率の向上を図ることができる。
前記領域K、L、及びMにおける、ホスト材料と発光材との量比及び発光材の含有量は、前記それぞれ対応するE、F、Gのそれと同様である。
【0017】
図4は本発明の発光素子の別の態様の一例を示し、発光層内の発光材料の分布を表す概略図である。
本発明においては、さらに色度の良好な白色発光を得るために、発光波長の異なる3種類の発光材料を使用することがさらに好ましい。その場合は、図4に示すように、発光層内の陽極側から厚み方向に、ホスト材料と第1の発光材料とを含む領域Nと、ホスト材料と第1の発光材料および第2の発光材料とを含む領域Oと、ホスト材料と第2の発光材料とを含む領域Pと、ホスト材料と第2の発光材料と第3の発光材料とを含む領域Q、ホスト材料と第3の発光材料とを含む領域Rと、がこの順で設けられていることが特に好ましい。
【0018】
発光層内における、上記各種領域(例えば、図1〜図3におけるA〜M領域、図4におけるN〜R領域)の厚みについては、所望の性能が得られるよう適宜調整して使用することができる。
二種以上の発光材を含む領域(例えば、図1〜4におけるB、C、F、H、J、L、O、及びQ領域)の厚みは、含有する発光材料種および濃度により異なるが、低濃度の場合は厚みが薄すぎると所望の効果が得られず、厚みが厚すぎると駆動電圧が高くなったり、発光効率が悪化する傾向にある。高濃度の場合、厚みが厚いと発光材間のエネルギー移動が生じて色度が悪化する傾向にある。
従って、駆動電圧,発光効率の観点から、二種以上の発光材を含む領域の厚みは、0.5nm以上10nm以下が好ましく、0.5nm以上5nm以下がさらに好ましく、0.5nm以上2nm以下が特に好ましい。二種以上の発光材を含む領域中の発光材の濃度は、上記と同様の観点から、各々0.5質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。
【0019】
二種以上の発光材を含む領域中における発光材間の質量比としては、1:10〜10:1であることが好ましい。
【0020】
一方、一種のみの発光材を含む領域の発光材の濃度は、発光効率等の観点から、二種以上の発光材を含む領域での濃度より高くまたは低くすることができる。
すなわち、発光層中で発光材の濃度が厚み方向に対して漸増および/または漸減している濃度分布をとることもできる。この濃度分布の一例を図5に示す。
【0021】
図5の縦軸は、模式的に発光層中に存在する発光材の濃度を表している。第1の発光材を含む領域、第2の発光材を含む領域、第3の発光材を含む領域をそれぞれ第1発光領域S,第2発光領域T,第3発光領域Uとして以下説明する。
陽極側から順に、第1発光領域Sにおいては第1の発光材の濃度が次第に増加し、最大値になった後、次第に減少している。続いて、第2発光領域Tにおいては第2の発光材の濃度が漸増し、漸減している。さらに、第3発光領域Uにおいては第3の発光材の濃度が漸増し、漸減している。
【0022】
前記漸増及び漸減は、図5において、(1)一次直線的に増減、となっているが、前記濃度の最大値のまでの履歴は特に限定されるものではない。即ち、(2)領域Sにおいて第1の発光材の濃度を蒸着開始時は濃度勾配を小さく、その後徐々に濃度勾配を大きくしても、またその逆に、(3)第1の発光材の濃度を蒸着開始時は濃度勾配を大きく、その後徐々に濃度勾配を小さくしていってもよい。
また、前記濃度の最大値から減少する濃度勾配についても、前記同様の方法とすることができる。即ち、(4)領域Sにおける第1の発光材の濃度の最大値に達した時点から、濃度の減少する勾配を小さく、その後徐々に濃度の減少させる勾配を大きくしても、またその逆に、(5)第1の発光材の濃度の最大値に達した時点から、濃度を減少させる勾配を大きくして、その後徐々に濃度の減少する勾配を小さくしていってもよい。また、それらの組合せであってもよい。
【0023】
また、前記濃度の漸増、漸減は、階段状に増減させてもよい。即ち、図5の前記(1)のタイプの「1次直線状に増減」を、(6)「階段状に増減」させてもよい。さらに、同様に、(6)「階段状の増減」が(2)〜(5)のタイプであってもよい。また、いずれの組み合わせも取ることができる。
【0024】
以上より作製された発光層は、陽極側から順に、第1の発光材を含む領域S、第1と第2の発光材を含む領域S+T、第2の発光材を含む領域T、第2と第3の発光材を含む領域T+U、第3の発光材を含む領域Uが存在する層構成となっている。
ここでは、第1から第3の3種の発光材がそれぞれの濃度分布を有している例を示したが、1種あるいは2種の発光材が濃度分布を有する構成とすることもできる。即ち、領域S、領域S+U、及び領域Uの3領域を有する場合であり、濃度分布も前記3種の発光材を用いたのと同様とすることができる。
【0025】
図5に示す第1の発光材の初期濃度は、特に限定されず、0質量%〜100質量%の値をとり得る。
本発明の前記態様の中でも、図2(a)及び(b)、図4、図5の態様が好ましく、図4及び5がより好ましく、図5が特に好ましい。
【0026】
図1から図5に例示した発光層は、例えば蒸着法で作成する場合、ホスト材料と各発光材の蒸着速度を適宜変更することにより作成することができる。以下に、図4を用いて発光層の作製方法の一例について説明するが、これに限定されるものではない。
【0027】
(発光層の蒸着)
蒸着する基板上に、第1の発光材を含むN層の成分を蒸着する。前記蒸着の途中の、該蒸着膜厚が所望の膜厚となった時点で、第2の発光材を含むP層の成分の蒸着を開始し、この時点から混合層であるO層が形成される。O層が所望の膜厚となった時点でN層の成分の蒸着を終了する。
続いて、第2発光層の蒸着開始から蒸着膜厚がQ層を形成する膜厚(第1発光層からの全膜厚)になった時点で、第3の発光材を含むR層の成分の蒸着を開始し、この時点から混合層であるQ層が形成される。Q層が所望の膜厚となった時点でP層の成分の蒸着を終了する。
さらに、R層の蒸着膜厚が所望の膜厚となった時点でR層の蒸着を終了する。
前記N層〜R層の各成分の蒸着は、適宜蒸着速度、及び発光材濃度を変更することにより適宜調整することができる。
以上により陽極側からN、O、P、Q、及びR層からなる発光層を形成することができる。
【0028】
本発明に使用できる基板、陽極および陰極は、特に制限はなく、公知のものから適宜選択することができるが、発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
【0029】
本発明における有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。
【0030】
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層におけるホスト材料は1種であっても2種以上であっても良く、2種以上の場合は、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しないホスト材料を含んでいても良い。
ホスト材料に用いられる材料は、特に限定はなく、公知の物から適宜選択して用いることができる。例えば、電子輸送性ホスト材料およびホール輸送性ホスト材料は、それぞれ、電子輸送層,電子注入層に用いられる材料、正孔輸送層、正孔注入層に用いられる材料を好適に使用することができる。
【0031】
ホスト材料の好ましい例としては、例えばカルバゾ−ル誘導体、トリアゾ−ル誘導体、オキサゾ−ル誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、イミダゾ−ル誘導体、ポリアリ−ルアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリ−ルアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾ−ル)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマ−、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマ−、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。これらは一種もしくは二種以上を混合して用いることができる。
【0032】
本発明の発光素子は、少なくとも一種が燐光発光材料である相異なる二種以上の発光材とホスト材料を同一発光層に含む。
前記燐光発光材料としては、特に限定されることはなく、公知の材料から適宜選択して使用することができる。例えば、特開2004−221068号の[0051]から[0057]等に記載のものを挙げることができるが、中でも、オルトメタル化金属錯体、又はポルフィリン金属錯体が好ましい。
【0033】
上記オルトメタル化金属錯体とは、例えば山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」150頁、232頁、裳華房社(1982年発行)やH.Yersin著「Photochemistry and Photophisics of Coodination Compounds」71〜77頁、135〜146頁、Springer-Verlag社(1987年発行)等に記載されている化合物群の総称である。該オルトメタル化金属錯体を発光材料として発光層に用いることは、高輝度で発光効率に優れる点で有利である。
【0034】
上記オルトメタル化金属錯体を形成する配位子としては、種々のものがあり、上記文献にも記載されているが、その中でも好ましい配位子としては、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、2−フェニルキノリン誘導体等が挙げられる。これらの誘導体は必要に応じて置換基を有してもよい。また、上記オルトメタル化金属錯体は、上記配位子のほかに、他の配位子を有していてもよい。
【0035】
本発明で用いるオルトメタル化金属錯体は、Inorg Chem., 1991年, 30号, 1685頁、同 1988年, 27号, 3464頁.、同 1994年, 33号, 545頁、Inorg.Chim.Acta, 1991年, 181号, 245頁、J.Organomet.Chem., 1987年, 335号, 293頁、J.Am.Chem.Soc. 1985年, 107号, 1431頁 等、種々の公知の手法で合成することができる。
上記オルトメタル化錯体の中でも、三重項励起子から発光する化合物が本発明においては発光効率向上の観点から好適に使用することができる。また、ポルフィリン金属錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。
【0036】
前記発光材の発光層中における含有量としては、特に限定されるものではないが、発光材料として燐光発光材料を使用する場合には、発光材層(発光材領域)1層当たり、0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。また、発光材料として、蛍光発光材料を含む場合は、蛍光発光材料のみで発光材層(発光材領域)を形成することも好適に用いることができるし、また、ホスト材料中に蛍光発光材料を混合して発光材層(発光材領域)を形成することも好適に用いることができる。
ホスト材料と蛍光発光材料の混合層(混合領域)の場合、蛍光発光材料の濃度は、発光層1層当たり、0.1〜99.9質量%含有されることが好ましく、1〜99質量%含有されることがより好ましく、10〜90質量%含有されることが更に好ましい。
【0037】
ホスト材料の発光層中における含有量としては、特に限定されるものではないが、中でも、0.1〜99.9質量%が好ましく、60〜99.9質量%がより好ましく、80〜99.5質量%が特に好ましい。
【0038】
本発明においては、上記燐光発光材料を少なくとも一種含む相異なる少なくとも二種の発光材を用いることにより、任意の色の発光素子を得ることができる。白色発光素子は、上記燐光発光材料を少なくとも一種含む相異なる少なくとも二種の発光材、中でも、三種以上の発光材を選択することが、より高発光効率で、より高発光輝度な白色発光体を得る観点から好ましい。
【0039】
本発明において、相異なる少なくとも二種の発光材は、異なる発光波長であることが好ましく、例えば、2種の発光材として補色関係にある青色発光材と橙色発光材との組み合わせにより白色発光素子を得ることができる。
さらに、相異なる三種の発光材が、異なる発光波長で発光することが好ましく、例えば、青色発光材、緑色発光材、赤色発光材の相異なる三種以上の発光材を適切に選択することにより、白色発光素子を得ることができる。
前記青色発光材としては、発光波長400〜500nmが好ましく、また、緑色発光材としては、500〜570nmが好ましく、また、赤色発光材としては、580〜670nmが好ましく、これら2種以上の発光材を有機化合物層の発光層に含ませることにより白色発光素子を得ることができる。これらの発光材は上記例より適切に選ぶことができる。
【0040】
また、本発明においては、上記燐光発光材料に加え、蛍光発光材料を併用して使用することもできる。本発明で使用できる蛍光発光材料の例としては、特に制限はなく、公知のものから適宜選択することができる。例えば、特開2004−146067号の[0027]、特開2004−103577号の[0057]等に記載のものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されない。
本発明における前記ホスト材と前記発光材の好適な組合せとしては、それぞれの好ましい例の組合せがより好ましい。
【0041】
本発明の有機電界発光素子における、基板、電極、各有機層、その他の層、等の構成要素については、例えば、特開2004−221068号の[0013]から[0082]、特開2004−214178号の[0017]から[0091]、特開2004−146067号の[0024]から[0035]、特開2004−103577号の[0017]から[0068]、特開2003−323987号の[0014]から[0062]、特開2002−305083号の[0015]から[0077]、特開2001−172284号の[0008]から[0028]、特開2000−186094号の[0013]から[0075]、特表2003−515897号の[0016]から[0118]等に記載のものが本発明においても同様に適用することができる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
本発明の有機EL素子の正孔注入層あるいは正孔輸送層には、素子内の電荷のバランスを調整したり、駆動電圧を調節するために、電子受容性ドーパントを含有させることができる。正孔注入層、あるいは正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
【0043】
具体的には、無機化合物は塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどのハロゲン化金属、五酸化バナジウム、三酸化モリブデンなどの金属酸化物などが挙げられる。
【0044】
有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
この他にも、特開平6−212153、特開平11−111463、特開平11−251067、特開2000−196140、特開2000−286054、特開2000−315580、特開2001−102175、特開2001−160493、特開2002−252085、特開2002−56985、特開2003−157981、特開2003−217862、特開2003−229278、特開2004−342614、特開2005−72012、特開2005−166637、特開2005−209643等に記載の化合物を好適に用いることが出来る。
【0045】
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔注入材料、あるいは正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。
【0046】
本発明の有機EL素子の電子注入層あるいは電子輸送層には、素子内の電荷のバランスを調整したり、駆動電圧を調節するために、電子供与性ドーパントを含有させることができる。電子注入層、あるいは電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、およびYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
この他にも、特開平6−212153、特開2000−196140、特開2003−68468、特開2003−229278、特開2004−342614等に記載の材料を用いることが出来る。
【0047】
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子注入材料、あるいは電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であることが更に好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
【0048】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0049】
有機電界発光素子の重要な特性値として、外部量子効率(発光効率)がある。外部量子効率は、「外部量子効率φ=素子から放出されたフォトン数/素子に注入された電子数」で算出され、この値が大きいほど消費電力の点で有利な素子と言える。
【0050】
前記外部量子効率としては、消費電力を下げられる点、駆動耐久性を上げられる点で、6%以上が好ましく、12%以上が特に好ましい。
該外部量子効率の数値は、20℃で素子を駆動したときの外部量子効率の最大値、もしくは、20℃で素子を駆動した時の100〜300cd/m2 付近(好ましくは200cd/m 2 )での外部量子効率の値を用いることができる。
また、発光素子の外部量子効率は、発光輝度、発光スペクトル、電流密度を測定し、その結果と比視感度曲線から算出することができる。すなわち、電流密度値を用い、入力した電子数を算出することができる。そして、発光スペクトルと比視感度曲線(スペクトル)を用いた積分計算により、発光輝度を発光したフォトン数に換算することができる。これらから外部量子効率(%)は、「(発光したフォトン数/素子に入力した電子数)×100」で計算することができる。
【0051】
本発明においては、東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流定電圧をEL素子に印加し発光させ、トプコン社製分光放射輝度計SR−3を用いて発光性能(輝度)を測定した。そのときの最高輝度、及び最高輝度時の駆動電力を測定し、1000cd/m 2 における発光効率を外部量子効率とした。また、その時の発光スペクトルよりCIE色度座標(x,y)を求める。
【0052】
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0053】
本発明の発光素子は、表示素子、ディスプレイ(例えば、フルカラ−ディスプレイ)、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源(例えば、光源アレイ)、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等の分野に好適に使用できる。
【実施例】
【0054】
以下に、本発明について実施例を用いて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、%及び部は特に断わりのない限り、質量%及び質量部を表す。
【0055】
[比較例1](図6参照)
0.5mm厚み、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。Baytron P(PEDOT−PSS溶液(ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸ドープ体)/バイエル社製)をUV−オゾン処理したITO基板上にスピンコートし(4000rpm、40sec)、120℃にて10分、真空乾燥した。PEDOT−PSS層の膜厚は40nmであった。
このPEDOT−PSS層上に、真空蒸着法にて以下の有機層を順次蒸着した。発光層については、図6に示すように、陽極側から第1発光材層、第2発光材層、第3発光材層の順に蒸着して作製した。
本発明の実施例における蒸着速度は特に断りのない場合は0.2nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。以下に記載の膜厚も水晶振動子を用いて測定したものである。
【0056】
(正孔輸送層)
NPD:膜厚40nm
(発光層)
−第1発光材層−
A(CBP=92%、Firpic=8%)の層:膜厚10nm
−第2発光材層−
B(CBP=92%、Btp2Ir(acac)=8%)の層:膜厚11nm
−第3発光材層−
C(CBP=92%、Ir(ppy)3=8%)の層:膜厚10nm
(電子輸送層)
BCP:膜厚10nm
【0057】
【化1】

【0058】
【化2】

【0059】
続いて、電子輸送層上にパターニングしたマスク(発光領域が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、フッ化リチウムを0.1nm/秒の蒸着速度にて0.5nm蒸着し電子注入層とした。最後に金属アルミニウムを100nm蒸着し陰極とした。
このものを、大気に触れさせる事無くアルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ製)を用いて封止し、比較用素子を得た。
【0060】
[実施例1](図7参照)
比較例1において、発光層の層構成及び蒸着を下記のように変更する以外は、比較例1と同様の方法で本発明の素子を作成した。
【0061】
(発光層の構成)
−第1発光材層−
CBP:Firpic=96〜92:4〜8(%)の層:膜厚11nm
−第1発光材層と第2発光材層との混合領域−
CBP:Firpic:Btp2Ir(acac)の混合領域:膜厚1nm
−第2発光材層−
CBP:Btp2Ir(acac)=96〜92:4〜8(%)の層:膜厚11nm
−第2発光材層と第3発光材層との混合領域−
CBP:Btp2Ir(acac):Ir(ppy)3の混合領域:膜厚1nm
−第3発光材層−
CBP:Ir(ppy)3=96〜92:4〜8(%)の層:膜厚11nm
【0062】
(発光層の蒸着)
比較例1と同様にして得られた正孔輸送層上への第1発光材層の蒸着は、上記CBP及びFirpicの蒸着速度を調整して、蒸着膜厚が11nmになるまで共蒸着した。
前記第1発光材層の蒸着の途中の、該蒸着膜厚が10nmになった時点で、第2発光材層の成分CBP及びBtp2Ir(acac)の蒸着を開始した。第2発光材層の蒸着開始から蒸着膜厚が11nm(第1発光材層からの全膜厚21nm)になるまで共蒸着した。
前記第2発光材層の蒸着の途中の、該蒸着膜厚が10nm(第1発光材層から20nm)になった時点で、第3発光材層の成分CBP及びIr(ppy)3の蒸着を開始した。第3発光材層の蒸着開始から蒸着膜厚が11nm(第1発光材層からの全膜厚31nm)になるまで共蒸着した。
以上により、第1発光材層〜第3発光材層、及びそれぞれの混合領域を有する発光層を形成した。
【0063】
[実施例2](図8参照)
比較例1において、発光層の層構成及び蒸着を下記のように変更する以外は、比較例1と同様の方法で本発明の素子を作成した。
【0064】
(発光層の構成と成分)
−第1発光材層−
CBP:Firpic=100〜92:0〜8(%)の層:膜厚11nm
−第1発光材層と第2発光材層との混合領域−
CBP:Firpic:Btp2Ir(acac)の混合領域:膜厚1nm
−第2発光材層−
CBP:Btp2Ir(acac)=100〜92:0〜8(%)の層:膜厚11nm
−第2発光材層と第3発光材層との混合領域−
CBP:Btp2Ir(acac):Ir(ppy)3の混合領域:膜厚1nm
−第3発光材層−
CBP:Ir(ppy)3=92:8(%)の層:膜厚11nm
【0065】
(発光層の蒸着)
上記で得られた正孔輸送層上への第1発光材層の蒸着は、第1発光材層の蒸着開始時と終了時のCBP:Firpicの濃度比率が100:0で、第1発光材層の蒸着膜厚が5.5nmとなった時点のCBP:Firpicの濃度比率が92:8となるように、各成分の蒸着速度を調整して第1発光材層内に濃度勾配をつけて共蒸着した。
第2発光材層の蒸着は、第1発光材層の膜厚が10nmになった時点で開始した。蒸着開始時及び終了時のCBP:Btp2Ir(acac)の濃度比率が100:0で、第2発光材層の蒸着開始してからの膜厚が5.5nm(第1発光材層からの蒸着膜厚が15.5nm)となった時点で濃度比が92:8となるように、各成分の蒸着速度を調整して第2発光材層内に濃度勾配をつけて共蒸着した。この時までに第1の発光材と第2の発光材の混合層が1nm形成された。
第3発光材層の蒸着は、第2発光材層の蒸着開始からの膜厚が10nm(即ち、第1発光材層からの膜厚が20nm)になった時点で開始した。蒸着開始時及び終了時のCBP:Ir(ppy)3の濃度比率が100:0で、第3発光材層の蒸着開始からの膜厚が5.5nm(第1発光材層からの膜厚が25.5nm)となった時点で濃度比が92:8となるように、各成分の蒸着速度を調整して第3発光材層内に濃度勾配をつけて共蒸着した。この時までに第2の発光材と第3の発光材の混合層が1nm形成された。
以上により、第1発光材層〜第3発光材層、及びそれぞれの混合領域を有する発光層を形成した。
【0066】
これらの発光素子を用いて、以下の方法で評価した。
東洋テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を発光素子に印加し発光させて、発光性能を測定した。その時の最高輝度をLmaxとし、最高輝度時の駆動電圧をVmaxとし、さらに1000Cd/m2時の発光効率を外部量子効率(η1000)とした。また、その時の発光スペクトルより、CIE1964色度座標(x、y)を求めた。
【0067】
【表1】

【0068】
[比較例2](図9参照)
比較例1において、有機層構成を下記のように変更する以外は、比較例1と同様の方法で比較用素子を作成した。
【0069】
(正孔輸送層)
NPD:膜厚40nm
(発光層)
−第1発光材層−
CBP:Firpic=94:6(%)の層:膜厚20nm
−第2発光材層−
CBP:Btp2Ir(acac)=92:8(%)の層:膜厚11nm
(電子輸送層)
BCP:膜厚10nm
【0070】
[実施例3](図10参照)
比較例2において、有機層構成及び発光層の蒸着を下記のように変更する以外は、比較例2と同様の方法で行い本発明の発光素子を作成した。
【0071】
(発光層の構成と成分)
−第1発光材層−
CBP:Firpic=94〜92:6〜8(%)の層:膜厚21nm
−第1発光材層と第2発光材層との混合領域−
CBP:Firpic:Btp2Ir(acac)の混合領域:膜厚1nm
−第2発光材層−
CBP:Btp2Ir(acac)=94〜92:6〜8(%)の層:膜厚11nm
【0072】
(発光層の蒸着)
上記で得られた正孔輸送層上への第1発光材層の蒸着は、上記組成で、蒸着膜厚が21nmになるまで蒸着した。
前記第1発光材層の蒸着の途中の、該蒸着膜厚が20nmになった時点で、第2発光材層の成分の蒸着を開始した。第2発光材層の蒸着開始から蒸着膜厚が11nm(第1発光材層からの全膜厚31nm)になるまで蒸着した。
以上により、第1発光材層、第2発光材層、及びそれぞれの混合領域を有する発光層を形成した。
【0073】
[実施例4](図11参照)
比較例2において、発光層の層構成及び発光層の蒸着を下記のように変更する以外は、比較例2と同様の方法で本発明の素子を作成した。
【0074】
(発光層の構成と成分)
−第1発光材層−
CBP:Firpic=100〜94:0〜6(%)の層:膜厚21nm
−第1発光材層と第2発光材層との混合領域−
CBP:Firpic:Btp2Ir(acac)の混合領域:膜厚1nm
−第2発光材層−
CBP:Btp2Ir(acac)=100〜92:0〜8(%)の層:膜厚11nm
【0075】
(発光層の蒸着)
上記で得られた正孔輸送層上への第1発光材層の蒸着は、第1発光材層の蒸着開始時と終了時のCBP:Firpicの濃度比率が100:0で、第1発光層の蒸着膜厚が10.5nmとなった時点のCBP:Firpicの濃度比率が94:6となるように、各成分の蒸着速度を調整して第1発光材層内に濃度勾配をつけて共蒸着した。
第2発光材層の蒸着は、第1発光材層の膜厚が20nmになった時点で開始した。蒸着開始時及び終了時のCBP:Btp2Ir(acac)の濃度比率が100:0で、第2発光材層の蒸着開始してからの膜厚が5.5nm(第1発光材層からの蒸着膜厚が25.5nm)となった時点で濃度比が92:8となるように、各成分の蒸着速度を調整して第2発光層内に濃度勾配をつけて共蒸着した。この時までに第1の発光材と第2の発光材の混合層が1nm形成された。
以上により、第1発光材層〜第2発光材層、及びそれぞれの混合領域を有する発光層を形成した。
【0076】
上記で得られたこれらの発光素子を用いて、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
前記表1及び表2の結果より、発光層中に、一種の発光材を含む領域と二種の発光材を含む領域とを有する実施例1〜4の本発明の発光素子は、一種の発光材を含む領域のみを複数有する比較例1及び2の発光素子に比べ、発光輝度、発光効率、駆動電圧、色度において著しく優れていることが分かる。
また、前記実施例1〜4において、Btp2Ir(acac)(赤色燐光発光材料)の代わりに、ルブレン(赤色蛍光発光材料)を用いて、本発明の素子を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の発光素子の2つの態様の一例(a),(b)で、発光層内の発光材料の分布を示す概略図である。
【図2】本発明の発光素子の別の2つの態様の一例(a),(b)で、(a)は一種の発光材を含む領域で、二種以上の発光材を含む領域を挟んだ発光層の構成概略図であり、(b)は、二種の発光材料を含む領域で、一種の発光材を含む領域を挟んだ発光層の構成概略図である。
【図3】(a)は、本発明の発光素子のさらに別の態様の一例で、発光層内の発光材料の分布を示す概略図である。(b)は、従来の発光素子の例で、発光層内の発光材料の分布を示す概略図である。
【図4】本発明の発光素子のさらに別の態様の一例を示し、発光層内の発光材料の分布を表す概略図である。
【図5】本発明の発光素子のさらに別の態様の一例を示し、発光層内の層構成、及び縦軸に発光層内の発光材料の濃度(質量%)、横軸に発光層の厚みとしたときの、発光層中の発光材の濃度分布を表す模式図である。
【図6】比較例1の発光素子の発光層内の層構成を示し、発光層内の層構成、縦軸に発光層内の発光材料の濃度(質量%)、横軸に発光層の厚みとしたときの、発光層中の発光材の濃度分布を表す模式図である。
【図7】実施例1の発光素子において、発光層内の層構成、及び縦軸に発光層内の発光材料の濃度(質量%)、横軸に発光層の厚みとしたときの、発光層中の発光材の濃度分布を表す模式図である。
【図8】実施例2の発光素子において、発光層内の層構成、及び縦軸に発光層内の発光材料の濃度(質量%)、横軸に発光層の厚みとしたときの、発光層中の発光材の濃度分布を表す模式図である。
【図9】比較例2の発光素子において、発光層内の層構成、及び縦軸に発光層内の発光材料の濃度(質量%)、横軸に発光層の厚みとしたときの、発光層中の発光材の濃度分布を表す模式図である。
【図10】実施例3の発光素子において、発光層内の層構成、及び縦軸に発光層内の発光材料の濃度(質量%)、横軸に発光層の厚みとしたときの、発光層中の発光材の濃度分布を表す模式図である。
【図11】実施例4の発光素子において、発光層内の層構成、及び縦軸に発光層内の発光材料の濃度(質量%)、横軸に発光層の厚みとしたときの、発光層中の発光材の濃度分布を表す模式図である。
【符号の説明】
【0080】
A、D、E、G、I ホスト材料と一種の発光材を含む領域
B、C、F、H、J ホスト材料と二種以上の発光材を含む領域
K、K’、N、S ホスト材料と第1の発光材を含む領域
L ホスト材料と第1の発光材と第2の発光材を含む領域
M、M’、P、T ホスト材料と第2の発光材を含む領域
O ホスト材料と第1の発光材と第2の発光材を含む領域
Q ホスト材料と第2の発光材と第3の発光材を含む領域
R、U ホスト材料と第3の発光材を含む領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間、少なくとも発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、少なくとも一種が燐光発光材料である相異なる少なくとも二種の発光材とホスト材とを同一発光層に含み、発光層内の厚み方向に、ホスト材と一種の発光材を含む領域と、ホスト材と少なくとも二種の発光材を含む領域とを有することを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
一対の電極間、少なくとも発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、、少なくとも一種が燐光発光材料である相異なる二種の発光材とホスト材とを同一発光層に含み、発光層内の陽極側から厚み方向に、ホスト材と第1の発光材を含む領域、ホスト材と第1の発光材および第2の発光材を含む領域、ホスト材と第2の発光材を含む領域がこの順で設けられていることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
一対の電極間、少なくとも発光層を含む有機化合物層を有する有機電界発光素子であって、少なくとも一種が燐光発光材料である相異なる三種の発光材とホスト材とを同一発光層に含み、発光層内の陽極側から厚み方向に、ホスト材と第1の発光材を含む領域、ホスト材と第1の発光材および第2の発光材を含む領域、ホスト材と第2の発光材を含む領域、ホスト材と第2の発光材と第3の発光材を含む領域、ホスト材と第3の発光材を含む領域がこの順で設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
少なくとも一種の発光材の発光層中での濃度が、陽極側から厚み方向に、漸増および/または漸減していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記相異なる少なくとも二種の発光材が、異なる発光波長で発光することを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記相異なる三種の発光材が、異なる発光波長で発光することを特徴とする請求項3又は4に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
白色発光であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−310748(P2006−310748A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363441(P2005−363441)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】