説明

有機電界発光素子

【課題】発光特性が低下することなく、駆動耐久性が良好な有機電界発光素子の提供にある。
【解決手段】一対の電極間に少なくとも発光層と該発光層の陰極側に隣接するホールブロック層とを有する有機電界発光素子であって、該発光層が燐光発光材料とホスト材料とを含有し、かつ該ホールブロック層が燐光発光材料と電子輸送材料とを含有し、かつ該発光層と該ホールブロック層とに含有される燐光発光材料は同一であり、かつ該ホールブロック層に含有される電子輸送材料のイオン化ポテンシャルIP(ET)が燐光発光材料のイオン化ポテンシャルIP(EM)よりも1eV以上大きいことを特徴とする有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを光に変換して発光できる有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」、「発光素子」、または「EL素子」ともいう。)に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、種々の表示素子に関する研究開発が活発であり、中でも有機電界発光(EL)素子は、低電圧で高輝度の発光を得ることができるため、有望な表示素子として注目されている。
有機電界発光素子は、発光層もしくは発光層を含む複数の有機層を挟んだ対向電極から構成されており、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が発光層において再結合し、生成した励起子からの発光を利用するもの、又は前記励起子からエネルギー移動によって生成する他の分子の励起子からの発光を利用するものである。
燐光材料が中にドープされたホール輸送層、同じ燐光材料が中にドープされた電子輸送層を有する構造にすることによって高効率な青色発光を得る技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、燐光発光素子は、特に青色、緑色発光において耐久性が低く、耐久性の向上が求められている。
【特許文献1】特表2004−522264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は,発光特性が低下することなく、駆動耐久性が良好な有機電界発光素子の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記実情に鑑み本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、上記課題を解決しうることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の手段により達成されるものである。
【0005】
<1> 一対の電極間に少なくとも発光層と該発光層の陰極側に隣接するホールブロック層とを有する有機電界発光素子であって、該発光層が燐光発光材料とホスト材料とを含有し、かつ該ホールブロック層が燐光発光材料と電子輸送材料とを含有し、かつ該発光層と該ホールブロック層とに含有される燐光発光材料は同一であり、かつ該ホールブロック層に含有される電子輸送材料のイオン化ポテンシャルIP(ET)が燐光発光材料のイオン化ポテンシャルIP(EM)よりも1eV以上大きいことを特徴とする有機電界発光素子。
【0006】
<2> 該ホールブロック層に含有される電子輸送材料のイオン化ポテンシャルIP(ET)が6.3eV以上であることを特徴とする上記<1>に記載の有機電界発光素子。
【0007】
<3> 該ホールブロック層に含有される電子輸送材料が下記一般式(A−1)または(B−1)で表されることを特徴とする上記<1>または<2>に記載の有機電界発光素子。
【0008】
【化1】

【0009】
(一般式(A−1)中、ZA1は含窒素ヘテロ環の形成に必要な原子群を表す。LA1は連結基を表す。nA1は2以上の整数を表す。)
【0010】
【化2】

【0011】
(一般式(B−1)中、ZB1は芳香族炭化水素環またはヘテロ環の形成に必要な原子群を表す。LB1は連結基を表す。nB1は2以上の整数を表す。)
【0012】
<4> 該ホールブロック層に含有される電子輸送材料が、窒素原子を3個以上含有する材料であることを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【0013】
<5> 該発光層に含有されるホスト材料がカルバゾール基を有することを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,発光特性が低下することなく、駆動耐久性が良好な有機電界発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の有機電界発光素子(以下、適宜「有機EL素子」と称する場合がある。)について詳細に説明する。
本発明の有機電界発光素子は、一対の電極間に少なくとも発光層と該発光層の陰極側に隣接するホールブロック層とを有する有機電界発光素子であって、該発光層が燐光発光材料とホスト材料とを含有し、かつ該ホールブロック層が燐光発光材料と電子輸送材料とを含有し、かつ該発光層と該ホールブロック層とに含有される燐光発光材料は同一であり、かつ該ホールブロック層に含有される電子輸送材料のイオン化ポテンシャルIP(ET)が燐光発光材料のイオン化ポテンシャルIP(EM)よりも1eV以上大きいことを特徴とする。
本発明の有機電界発光素子は、上記構成としたことにより、発光特性(高外部量子効率)を低下させることなく、駆動耐久性に優れた効果を奏することができる。
【0016】
本発明におけるホールブロック層は、発光層からのホールおよび励起子の漏れを防止して発光効率を向上させる機能を持つ。
一般にホールブロック層には電子輸送材料が適用されるが、素子駆動時には発光層からホールおよび励起子が電子輸送材料に漏れ出すことによって電子輸送材料の分解が起こる。そこで、ホールブロック層に燐光発光材料を含有することによって、電子輸送材料の分解を防止し、素子耐久性を向上させることができる。
本発明は、電子輸送材料にホールを注入させないために、電子輸送材料のイオン化ポテンシャルIP(ET)が燐光発光材料のイオン化ポテンシャルIP(EM)よりも1eV以上大きく設計することにより、また、素子駆動時にはホールブロック層に含有する燐光発光材料もEL発光するため、素子の発光色を変化させないためにホールブロック層と発光層には同一の燐光発光材料を適用することにより、発光特性が低下することなく、駆動耐久性が極めて優れた有機電界発光素子とすることができることを見出したものである。
尚、該イオン化ポテンシャルはAC−1(理研計器社)を用いて室温・大気下で測定した値で規定する。AC−1の測定原理については、安達千波矢等著「有機薄膜仕事関数データ集」シーエムシー出版社2004年発行に記載されている。
該イオン化ポテンシャルが6.2eVを超える材料については、測定範囲の問題からUSP(真空紫外光電子分光)法を用いる。
【0017】
次に、本発明の有機電界発光素子における構成について説明する。
本発明の発光素子は一対の陰極と陽極を有し、両電極の間に少なくとも発光層と、該発光層の陰極側に隣接するホールブロック層から構成される。前記陰極及び陽極は基板上に形成されることが好ましい。更に該発光層と陽極との間、及びホールブロック層と陰極との間には他の有機化合物層を有していてもよい。発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。通常の場合、陽極が透明である。
【0018】
本発明における有機電界発光素子の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、ホールブロック層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と発光層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。
本発明において、一対の電極間に有する発光層を含む前記各層は、総称して「有機化合物層」ともいう。
次に、本発明を構成する要素について、詳細に説明する。
【0019】
<基板>
本発明で使用することができる基板としては、発光層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。その具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
例えば、基板としてガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0020】
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
【0021】
基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
【0022】
基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0023】
<陽極>
陽極は、通常、前記有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられ、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましい。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
本発明の有機電界発光素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0024】
<陰極>
陰極は、通常、前記有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0025】
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0026】
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0027】
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの公報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0028】
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0029】
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0030】
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0031】
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0032】
<有機化合物層>
本発明の有機電界発光素子は、前記発光層、該発光層の陰極側に隣接するホールブロック層を有するが、前述の通りその他の層を含んでもよい。
該前述のその他の層としては、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
発光層と陽極側で隣接する層としては、正孔注入層、正孔輸送層、及び電子ブロック層等が挙げられ、正孔輸送層であることが好ましい。これらの層の詳細については後述する。
【0033】
−有機化合物層の形成−
本発明の有機電界発光素子における有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0034】
−発光層−
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、燐光発光材料を含むドーパントと、ホスト材料と、を含む。ホスト材料としては、特に限定されるものではないが、電荷輸送材料であることが好ましい。
また、発光層は1層であっても2層以上であってもよい。
【0035】
発光層に含有される燐光発光材料は、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体である。
【0036】
遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金である。
ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0037】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
【0038】
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
また、燐光発光材料は、単独で用いてもまた複数併用してもよい。
燐光発光材料は、発光層中に、0.1〜20質量%含有されることが好ましく、0.5〜15質量%含有されることがより好ましく、2〜10質量%含有されることが特に好ましい。
【0039】
また、本発明における発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの及びアリールシラン骨格を有するもの等が挙げられ、特に限定されるものではないが、中でも、素子耐久性の観点から、カルバゾール骨格(カルバゾール基ともいう)を有するものが好ましい。
【0040】
ホスト材料のT1(最低多重項励起状態のエネルギーレベル)は、ドーパント材料のT1レベルより大きいことが好ましい。なお、ホスト材料とドーパント材料とを共蒸着することによって、ドーパント材料がホスト材料にドープされた発光層を好適に形成することができる。
【0041】
ホスト材料は、発光層中に、50〜99.9質量%含有されることが好ましく、70〜99.9質量%含有されることがより好ましく、80〜99質量%含有されることが特に好ましい。
【0042】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0043】
−ホールブロック層−
ホールブロック層は、陽極側から発光層に輸送されたホールが、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明においては、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、ホールブロック層を設ける。
ホールブロック層は、少なくとも燐光発光材料と電子輸送材料を含有する。
【0044】
また、該ホールブロック層に含有される電子輸送材料のイオン化ポテンシャルIP(ET)が前記燐光発光材料のイオン化ポテンシャルIP(EM)よりも1eV以上大きいことが発光層からのホールの漏れを防いで発光効率を向上させるためには必要である。
また、発光層からのホールの漏れを防いで発光効率を向上させる観点から、該ホールブロック層に含有される電子輸送材料のイオン化ポテンシャルIP(ET)は、6.3eV以上であることが好ましく、6.5eV以上であることがさらに好ましい。
【0045】
前述の通り、用いることができる前記電子輸送材料としては、燐光発光材料との関係で選択する必要があり、特に限定されるものではない。中でも、例えば、アゾール類(例えば、オキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、チアジアゾール、及び、その誘導体(縮合体も含む)等が挙げられる。)、アジン類(例えば、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、及び、その誘導体(縮合体も含む)等が挙げられる。)、有機シラン類(例えば、シロール、アリール置換シラン、及び、その誘導体(縮合体も含む)等が挙げられる。)、フッ素置換芳香族炭価水素環類、8−キノリノールの金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、及びそれらの誘導体等が挙げられる。
【0046】
本発明で用いる電子輸送材料として好ましくは、アゾール化合物、アジン化合物であり、より好ましくは下記一般式(A−1)または(B−1)で表される化合物である。
【0047】
【化3】

【0048】
一般式(A−1)中、ZA1は含窒素ヘテロ環の形成に必要な原子群を表す。LA1は連結基を表す。nA1は2以上の整数を表す。
【0049】
【化4】

【0050】
一般式(B−1)中、ZB1は芳香族炭化水素環またはヘテロ環の形成に必要な原子群を表す。LB1は連結基を表す。nB1は2以上の整数を表す。
【0051】
次に、一般式(A−1)で表される化合物について説明する。
一般式(A−1)におけるLA1は、連結基を表す。LA1で表される連結基としては、好ましくは、単結合の他、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子、ゲルマニウム原子等で形成される連結基であり、より好ましくは単結合、炭素原子、ケイ素原子、ホウ素原子、酸素原子、硫黄原子、ゲルマニウム原子、芳香族炭化水素環、芳香族ヘテロ環であり、さらに好ましくは炭素原子、ケイ素原子、芳香族炭化水素環、芳香族ヘテロ環であり、さらに好ましくは、二価以上の芳香族炭化水素環、二価以上の芳香族ヘテロ環、炭素原子であり、さらに好ましくは、二価以上の芳香族炭化水素環、二価以上の芳香族ヘテロ環であり、特に好ましくは1,3,5−ベンゼントリイル基、1,2,5,6−ベンゼンテトライル基、1,2,3,4,5,6−ベンゼンヘキサイル基、2,2’−ジメチル−4,4’−ビフェニレン基、2,4,6−ピリジントリイル基、2,3,4,5,6−ピリジンペンタイル基、2,4,6−ピリミジントリイル基、2,4,6−トリアジントリイル基、2,3,4,5−チオフェンテトライル基である。LA1で表される連結基の具体例としては以下のものが挙げられる。
【0052】
【化5】

【0053】
【化6】

【0054】
【化7】

【0055】
A1は置換基を有していてもよく、置換基としては例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、
【0056】
アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスメチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
【0057】
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子であり、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、
【0058】
シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。
これらの置換基は更に置換されてもよい。置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シリル基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基原子である。これらの置換基は前記LA1が有しても良い置換基が適用でき、好ましい範囲も同様である。
【0059】
A1は含窒素ヘテロ環を形成するに必要な原子群を表し、ZA1が形成する含窒素ヘテロ環は単環であっても二環以上の環が縮合した縮環であっても良い。ZA1が形成する含窒素ヘテロ環として好ましくは、5〜8員の含窒素ヘテロ環であり、より好ましくは5〜7員の含窒素ヘテロ環であり、更に好ましくは5又は6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、特に好ましくは5員の芳香族ヘテロ環である。LA1に連結する複数の、ZA1が形成する含窒素ヘテロ環は、同一でも異なっていてもよい。
A1が形成する含窒素ヘテロ環の具体例としては、例えばピロール環、インドール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアザイゾール環、アザインドール環、カルバゾール環、カルボリン環(ノルハルマン環)、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環、プリン環、ピラゾ−ル環、インダゾール環、アザインダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、アゼピン環、イミノスチルベン環(ジベンゾアゼピン環)、トリベンゾアゼピン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環等が挙げられ、好ましくはオキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環であり、より好ましくはベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環である。
【0060】
A1は可能であればさらに他の環と縮合環を形成してもよく、また置換基を有していても良い。ZA1の置換基としては、例えば一般式(A−1)におけるLA1が有しても良い置換基として挙げたものが適用でき、好ましい範囲も同様である。
A1は2以上の整数を表し、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6を表す。
【0061】
次に、前記一般式(B−1)で表される化合物について説明する。
一般式(B−1)におけるLB1は、連結基を表す。LB1で表される連結基としては、一般式(A−1)における連結基LA1の具体例として挙げたものが適用でき、LB1として好ましくは、単結合、二価以上の芳香族炭化水素環、二価以上の芳香族ヘテロ環、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子であり、より好ましくは、二価以上の芳香族炭化水素環、二価以上の芳香族ヘテロ環であり、さらに好ましくは1,3,5−ベンゼントリイル基、1,2,5,6−ベンゼンテトライル基、1,2,3,4,5,6−ベンゼンヘキサイル基、2,2’−ジメチル−4,4’−ビフェニレン基、2,4,6−ピリジントリイル基、2,3,4,5,6−ピリジンペンタイル基、2,4,6−ピリミジントリイル基、2,4,6−トリアジントリイル基、2,3,4,5−チオフェンテトライル基、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子である。
B1はさらに置換基を有していてもよく、置換基としては例えば一般式(A−1)におけるLA1の置換基として挙げたものが適用でき、好ましい範囲も同様である。
【0062】
B1は芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環を形成するに必要な原子群を表し、ZB1が形成する芳香族炭化水素環、芳香族ヘテロ環は単環であっても二環以上の環が縮合した縮環であっても良い。LB1に連結する複数の、ZB1が形成する芳香族炭化水素環または芳香族ヘテロ環は、同一でも異なっていてもよい。
B1が形成する芳香族炭化水素環は、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、トリフェニレン環などが挙げられ、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環である。
B1が形成する芳香族ヘテロ環は、単環または二環以上の環が縮合した縮合環のヘテロ環であり、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜10の芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環として好ましくは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子の少なくとも一つを含む芳香族ヘテロ環である。
B1が形成するヘテロ環の具体例としては、例えばピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナントリジン環、プテリジン環、ピラジン環、キノキサリン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、シンノリン環、フタラジン環、トリアジン環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、イソチアゾール環、ベンゾイソチアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、インドール環、イミダゾピリジン環、カルバゾール環、フェナントロリン環等が挙げられ、好ましくはピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナントリジン環、ピラジン環、キノキサリン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、フタラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾピリジン環、カルバゾール環、フェナントロリン環であり、より好ましくはピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピラジン環、キノキサリン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、フタラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾピリジン環、フェナントロリン環であり、更に好ましくはベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾピリジン環、フェナントロリン環であり、特に好ましくはベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環である。
【0063】
B1が形成する芳香族炭化水素環、芳香族ヘテロ環はさらに他の環と縮合環を形成してもよく、また置換基を有していても良い。置換基としては、例えば一般式(A−1)におけるLA1の置換基として挙げたものが適用でき、好ましい範囲も同様である。
B1は2以上の整数を表し、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6を表す。
【0064】
本発明における化合物、一般式(A−1)及び一般式(B−1)は低分子化合物であっても良く、また、オリゴマー化合物、ポリマー化合物(重量平均分子量(ポリスチレン換算)は好ましくは1000〜5000000、より好ましくは2000〜1000000、さらに好ましくは3000〜100000である。)であっても良い。本発明における化合物は低分子化合物が好ましい。
【0065】
以下に、本発明における前記一般式(A−1)及び一般式(B−1)の具体例を列挙するが、本発明はこれらの化合物に限定されることはない。
【0066】
【化8】

【0067】
【化9】

【0068】
【化10】

【0069】
【化11】

【0070】
【化12】

【0071】
【化13】

【0072】
【化14】

【0073】
【化15】

【0074】
【化16】

【0075】
【化17】

【0076】
【化18】

【0077】
本発明におけるホールブロック層に用いる前記電子輸送材料は、更に窒素原子を3個以上含有する材料であることが好ましい。
本発明におけるホールブロック層に用いる前記電子輸送材料は、単独で用いても、複数種を併用してもよい。
【0078】
本発明におけるホールブロック層に含有する燐光発光材料は、0.1〜30質量%含有されることが好ましく、0.5〜15質量%含有されることがより好ましい。
また該ホールブロック層に含有する電子輸送材料は、50〜99.9質量%含有されることが好ましく、70〜99.9質量%含有されることがより好ましく、80〜99質量%含有されることが特に好ましい。
本発明におけるホールブロック層の好ましい形態の一つは、前記電子輸送材料および燐光発光材料のみから構成されることであるが、さらに別の材料を含有することも可能である。
本発明におけるホールブロック層に用いる前記電子輸送材料の電子移動度は、発光層への十分な電子注入の観点から、1×10-5cm2/Vs以上であることが好ましいが、1×10-4cm2/Vs以上であればさらに好ましい。
該電子輸送材料の電子移動度は、TOF(Time of Flight)法から求めることができ、本発明における電子移動度は、TOF法により求めた値を採用する。
【0079】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々50nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、5〜50nmであることが好ましく、10〜40nmであることが更に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.5〜50nmであることが好ましく、1〜40nmであることが更に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0080】
本発明の有機EL素子の正孔注入層あるいは正孔輸送層には、素子の駆動電圧の低下のために、電子受容性ドーパントを含有させることができる。正孔注入層、あるいは正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
【0081】
具体的には、無機化合物は塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどのハロゲン化金属、五酸化バナジウム、三酸化モリブデンなどの金属酸化物などが挙げられる。
【0082】
有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
この他にも、特開平6−212153号、特開平11−111463号、特開平11−251067号、特開2000−196140号、特開2000−286054号、特開2000−315580号、特開2001−102175号、特開2001−160493号、特開2002−252085号、特開2002−56985号、特開2003−157981号、特開2003−217862号、特開2003−229278号、特開2004−342614号、特開2005−72012号、特開2005−166637号、特開2005−209643号等の各公報に記載の化合物を好適に用いることが出来る。
【0083】
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層または正孔注入層材料に対して0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。
【0084】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物及びイミド、ベンゼン及びナフタレン等の芳香環ジカルボン酸の無水物及びイミド、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々50nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、5〜50nmであることが好ましく、10〜50nmであることが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1〜50nmであることが好ましく、0.5〜20nmであることが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上を含む単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層を含む多層構造であってもよい。
【0085】
本発明の有機EL素子の電子注入層あるいは電子輸送層には、素子の駆動電圧の低下のために、電子供与性ドーパントを含有させることができる。電子注入層、あるいは電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、およびYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
この他にも、特開平6−212153号、特開2000−196140号、特開2003−68468号、特開2003−229278号、特開2004−342614号等の各公報に記載の材料を用いることが出来る。
【0086】
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層又は電子注入層材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であることが更に好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
【0087】
<保護層>
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2等の金属酸化物、SiNx、SiNxy等の金属窒化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0088】
<封止>
さらに、本発明の有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
【0089】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0090】
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0091】
本発明の有機EL素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等に好適に利用できる。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[比較例1]
0.5mm厚み、2.5cm角のガラス基板にIn23含有率が95質量%であるITOタ−ゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタ(条件:基材温度100℃、酸素圧1×10-3Pa)により、透明陽極としてのITO薄膜(厚み0.2μm)を形成した。ITO薄膜の表面抵抗は10Ω/□であった。
次に、前記透明陽極を形成した基板を洗浄容器に入れ、IPA洗浄した後、これにUV−オゾン処理を30分おこなった。この透明陽極上に銅フタロシアニン(CuPC)を真空蒸着法にて、0.5nm/秒の速度で10nmの正孔注入層を設けた。
その上に、α−NPD((N,N’−ジ−α−ナフチル−N,N’−ジフェニル)−ベンジジン)を真空蒸着法にて0.5nm/秒の速度で30nmの正孔輸送層を設けた。
この上に発光層中のホスト材料としてCBP、発光層中の燐光発光材料としてIr(ppy)3を真空蒸着法にて100:5の割合で共蒸着して、30nmの発光層を得た。
発光層の上に、ホールブロック層として下記化合物aを真空蒸着法にて0.5nm/秒の速度で10nm蒸着し、その上に、電子輸送材料としてAlq3を真空蒸着法にて0.2nm/秒の速度で蒸着して40nmの電子注入層を設けた。該化合物aの単独層のイオン化ポテンシャルを、UPS法にて測定したところ、7.1eVであった。
さらにこの層上にパタ−ニングしたマスク(発光面積が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、フッ化リチウムを真空蒸着法にて1nm蒸着した。更に、この上にアルミニウムを真空蒸着法にて蒸着し0.1μmの陰極を設けた。
得られた発光積層体を窒素ガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、乾燥剤を設けたステンレス製の封止缶および紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ製)を用いて封止し、本発明の発光素子を得た。
銅フタロシアニンの蒸着から封止までの作業は、真空または窒素雰囲気下で行い、大気に暴露することなく素子作製を行った。
【0093】
【化19】

【0094】
[評価]
ホールブロック層の電子輸送材料及び燐光発光材料におけるそれぞれのイオン化ポテンシャル(Ip)および電子移動度を、それぞれ単層膜(単独層)として測定した。また、上記により得られた発光素子を用いて、以下の方法で駆動耐久性を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0095】
(1)駆動耐久性
発光素子を電流密度10mA/cm2の条件で連続駆動試験をおこない、輝度が半減した時間を輝度半減時間T(1/2)として、評価した。
【0096】
[実施例1]
比較例1のホールブロック層において、電子輸送材料として化合物a及び燐光発光材料としてIr(ppy)3をそれぞれ真空蒸着法にて100:5の割合で共蒸着して10nmのホールブロック層を設けた以外は、比較例1と同様に行い発光素子を得て、同様の評価試験を行った。結果を下記表1に示す。
【0097】
[実施例2]
実施例1のホールブロック層において、化合物aとIr(ppy)3の共蒸着比を100:12の割合とした以外は、実施例1と同様に行い発光素子を得て、同様の評価試験を行った。結果を下記表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
表1より明らかな通り、本発明によって発光効率を殆ど変化させることなく素子駆動耐久性を向上することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に少なくとも発光層と該発光層の陰極側に隣接するホールブロック層とを有する有機電界発光素子であって、該発光層が燐光発光材料とホスト材料とを含有し、かつ該ホールブロック層が燐光発光材料と電子輸送材料とを含有し、かつ該発光層と該ホールブロック層とに含有される燐光発光材料は同一であり、かつ該ホールブロック層に含有される電子輸送材料のイオン化ポテンシャルIP(ET)が燐光発光材料のイオン化ポテンシャルIP(EM)よりも1eV以上大きいことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
前記ホールブロック層に含有される電子輸送材料のイオン化ポテンシャルIP(ET)が6.3eV以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記ホールブロック層に含有される電子輸送材料が下記一般式(A−1)または(B−1)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の有機電界発光素子。
【化1】

(一般式(A−1)中、ZA1は含窒素ヘテロ環の形成に必要な原子群を表す。LA1は連結基を表す。nA1は2以上の整数を表す。)
【化2】

(一般式(B−1)中、ZB1は芳香族炭化水素環またはヘテロ環の形成に必要な原子群を表す。LB1は連結基を表す。nB1は2以上の整数を表す。)
【請求項4】
該ホールブロック層に含有される電子輸送材料が、窒素原子を3個以上含有する材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
該発光層に含有されるホスト材料がカルバゾール基を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。