説明

有機電界発光素子

【課題】本発明の課題は、発光層に本発明の粒子を含まない構成の有機電界発光素子に比べて、輝度の向上された有機電界発光素子を提供することである。
【解決手段】有機電界発光素子10は、基板10上に、電極14、正孔注入層16、正孔輸送層18、発光層20、及び電極22が順に設けられた多層構成とされている。発光層20は、有機発光材料20Bと、この有機発光材料20Bの発光による光を吸収することによって発光する粒子20Aと、を含んだ構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、電極の間に有機発光材料を含む発光層を設け、電極間に電圧を印加することによって発光層内に正孔、電子を注入し、これら電荷(キャリア)が再結合することにより発光する電荷注入型の発光素子である。
【0003】
引用文献1には、2つの電極の間に設けられた発光素子と、該2つの電極の外側に設けられた、フォトルミネッセント材料を含む層と、から構成された発光装置が提案されている。引用文献1では、この発光素子を、上記2つの電極に印加された電圧に応答して第1スペクトルの第1電磁放射線を発光する有機エレクトロルミネッセント材料を含んだ構成としている。また、引用文献1では、フォトルミネッセント材料として、発光素子に含まれる有機エレクトロルミネッセント材料における三重項励起子(燐光)を吸収して有機エレクトロルミネッセント材料とは異なるスペクトルの第2スペクトルの第2電磁放射線を発光する材料を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−207223公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、発光層に本発明の粒子を含まない構成の有機電界発光素子に比べて、輝度の向上された有機電界発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、一対の電極と、前記一対の電極の間に設けられ、電気的なエネルギーが与えられることによって発光する有機発光材料と、該有機発光材料の発光による光を吸収することによって発光する粒子と、を含む発光層と、を備えた有機電界発光素子である。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記発光層の、前記一対の電極の内の何れか一方側の第1の領域における前記粒子の密度が、該第1の領域以外の第2の領域の密度より高い請求項1に記載の有機電界発光素子。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記粒子は、表面に絶縁膜を有する請求項1又は請求項2に記載の有機電界発光素子である。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記粒子の形状係数SF1が100以上106以下である請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の有機電界発光素子である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、発光層に本発明の粒子を含まない構成の有機電界発光素子に比べて、輝度が向上される。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、発光層において一対の電極の内の何れか一方側に、第1の領域として、該第1の領域以外の第2の領域の密度より粒子の密度の高い領域が設けられていない構成に比べて、輝度が向上される。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、粒子の表面に絶縁膜が設けられていない構成に比べて、更に輝度が向上される。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、粒子の形状係数が該請求項4に記載の範囲外である場合に比べて、輝度が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係る有機電界発光素子を示す概略構成図である。
【図2】(A),(B),(C)本実施の形態に係る有機電界発光素子の図1とは異なる形態を示す概略構成図である。
【図3】粒子に絶縁膜の設けられた形態を示す模式図である。
【図4】(A),(B),(C),(D)粒子の偏在した発光層の形成方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、本実施の形態の表示装置30は、有機電界発光素子10と、電圧印加部32と、を含んだ構成とされている。
【0016】
有機電界発光素子10は、基板10上に、電極14、正孔注入層16、正孔輸送層18、発光層20、及び電極22が順に設けられた多層構成とされている。電圧印加部32は、電極14及び電極22に電気的に接続されており、これらの電極に電圧を印加する。
なお、本実施の形態の有機電界発光素子10では、電極14が正極とされ、電極22が陰極とされた構成であるものとして説明する。また、本実施の形態の有機電界発光素子10では、説明を簡略化するために、1画素単位の構成について説明する。
【0017】
発光層20は、有機発光材料20Bと、この有機発光材料20Bの発光による光を吸収することによって発光する粒子20Aと、を含んだ構成とされている。
【0018】
有機発光材料20Bは、電気的なエネルギーが与えられることによって発光する材料である。具体的には、電極14及び電極22に電圧を印加することによって発光層20内の有機発光材料20Bに正孔及び電子を注入する。有機発光材料20Bでは、注入された電子と正孔との再結合によって高エネルギー(例えば、一重項励起状態)な励起子が形成され、次いで、この励起子が、該高エネルギー状態よりエネルギーの低い、低エネルギーのレベルへ遷移することによって発光する。
【0019】
ここで、発光層20中に含まれる有機発光材料20Bの光が有機電界発光素子10の外部へと放出されるためには、いくつかの屈折率の異なる媒質の界面を通過する必要がある。スネルの屈折の法則に従えば、各界面にその臨界角以上の角度で入射した光は、界面で全反射されて発光層20中を導波して喪失するか、該発光層20内を面方向(厚み方向に交差する方向)に導波して発光層20の側面(有機電界発光素子10の厚み方向に交差する方向側の面)から放出されると考えられる。このため、発光層20に含まれる有機発光材料20Bの発光による、有機電界発光素子10の外部への光の取り出し効率が低下し、結果的に、輝度の低下が生じると考えられる。
【0020】
なお、光取り出し効率とは、発光層20内における発光による光の光量に対する、有機電界発光素子10の厚み方向側の面から大気中に放出される光の光量の割合を示している。具体的には、発光層20の屈折率をnとすると、発光層20から有機電界発光素子10の厚み方向の面側から大気中へ放出される光の光取り出し効率ηは、η≒1/(2n)で近似される。例えば、発光層20の屈折率nが0.7であるとすると、η≒17%程度となることから、80%以上の光は、発光層20の厚み方向ではなく、該発光層20内を面方向(厚み方向に交差する方向)に導波して有機電界発光素子10の側面側(有機電界発光素子10の厚み方向に交差する方向の面側)から放出されると考えられる。
【0021】
一方、本実施の形態の有機電界発光素子10では、発光層20には、上記有機発光材料20Bと共に、粒子20Aが含まれている。すなわち、本実施の形態の有機電界発光素子10では、界面を有さない同じ層内に、有機発光材料20Bと粒子20Aとが含まれている。
この粒子20Aは、有機発光材料20Bが発光する光を吸収することによって発光する粒子である(詳細後述)。
本発明者らは、発光層20を、これらの粒子20A及び有機発光材料20Bを含んだ構成とすることによって、発光層20に粒子20Aを含まない構成とした有機電界発光素子に比べて、有機電界発光素子10の輝度が向上されることを見いだした。
【0022】
これは、有機発光材料20Bからの光の内の上記界面によって全反射して発光層20中に閉じこめられた光が、粒子20Aによって吸収されることで粒子20Aが発光し、この粒子20Aを中心として再度光が放射されるためと考えられる。すなわち、有機発光材料20Bから放射される光の内の上記界面によって全反射して発光層20中に閉じこめられた光が、粒子20Aによって該界面への光の入射角を変更されて、再度該界面に向かって放射されることとなる。このため、有機発光材料20Bの発光による光の内の、上記界面によって全反射して発光層20中に閉じこめられた光の放射角度が変化されて、再度該界面に至ることとなり、発光層20から有機電界発光素子10の厚み方向へ取り出される光の取り出し効率が、粒子20Aを含まない発光層20に比べて向上すると考えられる。
【0023】
なお、本実施の形態において、有機電界発光素子10の「輝度」とは、有機電界発光素子10の厚み方向に放出される光の1平方メートルあたりの光量(cd/m)を示している。具体的には、有機電界発光素子10における、視認される側の面から放出される光の輝度を示しており、図1に示す有機電界発光素子10では、例えば、基板12側から放出される光の輝度を示している。以下、輝度を、「正面輝度」と称して説明する場合がある。
【0024】
なお、本実施の形態において、有機電界発光素子10の発光層20に含まれる粒子20A及び有機発光材料20Bの発光したときの色は、同じであってもよいし、異なっていても良い。この発光したときの色は、詳細を後述する粒子20A及び有機発光材料20Bの構成材料を選択することによって調整され、有機電界発光素子10の発色させる対象となる色に応じて選択すればよい。なお、この粒子20A及び有機発光材料20Bを、有機電界発光素子10の発色させる対象の色に応じて選択することで、有機電界発光素子10の発光層20が容易に調光されると考えられる。
【0025】
次に、本実施形態に係る有機電界発光素子10について、詳細に説明する。
【0026】
―有機電界発光素子―
上述のように、有機電界発光素子10は、基板10上に、電極14、正孔注入層16、正孔輸送層18、発光層20、及び電極22が順に重ねられた多層構成とされている。
【0027】
―基板―
基板12としては、有機電界発光素子10における発光層20からの光を外部に取り出すために、透明であることがよく、また絶縁性であることが良い。
ここで、透明とは、可視領域の光の透過率が10%以上であることを意味している。この基板12としては、ガラス基板、プラスチックフィルム等が挙げられる。また、絶縁性とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。以下同様である。
【0028】
―電極―
電極14は、発光層20から放射された光を有機電界発光素子10の外部へ取り出す観点から透明であることがよい。本実施の形態では、上述のように、電極14は正極とされていることから、この電極14としては、発光層20へ正孔の注入を行うため発光層20における有機発光材料20Bのイオン化ポテンシャルの値より仕事関数の大きな物がよい。好ましくは仕事関数が4eV以上のものがよい。
【0029】
この電極14としては、例えば、酸化膜(例えば酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、又は酸化亜鉛等)、金属膜(例えば金、白金、又はパラジウム等)が挙げられる。この電極14は、上記基板12上に、蒸着法や、スパッタリング法等の公知の方法を用いて形成すればよい。
【0030】
―正孔注入層―
正孔注入層16は、発光層20へ正孔を注入する機能を有する材料から構成される。この正孔を注入する機能を有する材料としては、例えば、MTDATA(4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、銅フタロシアニン、ポリアニリン、PEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォネート)、又は、これらの混合物が挙げられる。
【0031】
この正孔注入層16は、例えば、上記に挙げた正孔を注入する材料と、この材料を溶解又は分散させる溶剤と、を含む塗布液を用いて、上記電極14上に成膜することで形成すればよい。この成膜方法としては、例えば、スピンコーティング法や、ディップ法等が挙げられる。
【0032】
正孔輸送層18は、正孔を輸送する機能を有する材料から構成される。この正孔を輸送する機能を有する材料としては、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられる。
【0033】
この正孔輸送層18は、例えば、正孔を輸送する機能を有する材料と、この材料を溶解又は分散させる溶剤とを含む塗布液を用いて、正孔注入層16上に成膜することによって形成すればよい。この成膜方法としては、例えば、スプレー法、エレクトロスプレー法にスピンコーティング法、及びディップ法等が挙げられる。
【0034】
―発光層―
発光層20は、粒子20A及び有機発光材料20Bを含んで構成されている。
【0035】
―粒子―
粒子20Aは、有機発光材料20Bが発光する光を吸収することによって発光する粒子である。
【0036】
この粒子20Aは、発光層20に分散されていることがよい。この粒子20Aが発光層20中に「分散されている」とは、発光層20の単位体積あたりの粒子20Aの一次粒子(未凝集粒子)に対する2次粒子(凝集粒子)の割合(個数)が5%以下であることを示している。
この粒子20Aが発光層20中に「分散されている」状態は、例えば、ミクロトームにより発光層20の断面の切片を作製し、透過型電子顕微鏡で直接粒子20Aを観察することによって確認される。
【0037】
また、この粒子20Aは、図1に一例を示した有機電界発光素子10のように発光層20中の全体に渡って分散された形態であってもよいし、発光層20中において偏在した状態であってもよい。なお、これらの「発光層20の全体に渡って分散」した状態及び「偏在した状態」の何れの状態であっても、上記「分散」の定義で規定した要件を満たす範囲内で各粒子20Aが存在していることが良い。
【0038】
なお、粒子20Aが「発光層20の全体に渡って分散」された状態とは、発光層20を厚み方向及び厚み方向に交差する方向に複数の領域に分割したときに、各領域における粒子20Aの密度(各領域における粒子20Aの単位体積当たりの含有量(質量%))10点辺りにおけるばらつきが、±5%の範囲内の値であることを示している。
【0039】
また、粒子20Aが発光層20中において偏在した状態、とは、発光層20を厚み方向及び厚み方向に交差する方向に複数の領域に分割したときに、一部の領域で他の領域よりも粒子20Aの密度が高くなっている状態を示している。
【0040】
なお、この粒子20Aが発光層20中において「偏在した」状態は、例えば、ミクロトームにより発光層20の断面の切片を作製し、透過型電子顕微鏡で直接粒子20Aを観察することによって確認される。
【0041】
ここで、発光層20中に含まれる有機発光材料20Bは、電極14及び電極22に電圧を印加することによって発光するが、発光層20中に含まれる全ての有機発光材料20Bが発光するとは限られない。例えば、正孔輸送層18における正孔移動度よりも、発光層20における電子移動度の方が大きい場合、発光層20中において電極14側の領域に存在する有機発光材料20Bが主に発光に寄与する場合がある。
【0042】
そこで、粒子20Aを、発光層20中における有機発光材料20Bによる発光の生じにくい領域に偏在させれば、発光層20全体が発光することとなり、有機電界発光素子10の更なる輝度の向上が図れると考えられる。
【0043】
この発光層20中の何れの領域における有機発光材料20Bが発光し、何れの領域における有機発光材料20Bが発光しにくい(又は発光しない)か、という点は、有機電界発光素子10の構成や、有機発光材料20Bの材料選択によって異なる。このため、有機電界発光素子10毎に、発光層20中における有機発光材料20Bによる発光の生じにくい領域を観察し、該発光の生じにくい領域に、予め粒子20Aを偏在させた構成とすればよい。
【0044】
例えば、発光層20中における電極14側の領域(第1の領域)の有機発光材料20Bが、該領域以外の領域(第2の領域)の有機発光材料20Bに比べて発光しにくい(又は発光しない)構成の有機電界発光素子である場合には、図2(A)に示すように、発光層20を厚み方向に複数の領域に分割したときにおける電極14側の領域に、粒子20Aを偏在させた構成とすればよい。この構成とすることによって、図2(A)に示すように、有機電界発光素子10Aの発光層20における電極14側の領域の粒子20Aの密度が、該発光層20における該領域以外の領域の粒子20Aの密度より高い状態となる。
【0045】
また、例えば、発光層20中における電極22側の領域の有機発光材料20Bが、該領域以外の他の領域に存在する有機発光材料20Bに比べて発光しにくい(又は発光しない)構成の有機電界発光素子である場合には、図2(B)に示すように、発光層20を厚み方向に複数の領域に分割したときにおける電極22側の領域に、粒子20Aを偏在させた構成とすればよい。この構成とすることによって、図2(B)に示すように、有機電界発光素子10Aの発光層20における電極22側の領域の粒子20Aの密度が、該発光層20における該領域以外の領域の粒子20Aの密度より高い状態となる。
【0046】
また、例えば、発光層20の厚み方向の中央部における有機発光材料20Bが、該領域以外の他の領域(発光層20中における電極22側及び電極14側の領域)に存在する有機発光材料20Bに比べて発光しにくい(又は発光しない)構成の有機電界発光素子である場合には、図2(C)に示すように、発光層20を厚み方向に複数の領域に分割したときにおける厚み方向の中央部の領域に、粒子20Aを偏在させた構成とすればよい。この構成とすることによって、図2(C)に示すように、有機電界発光素子10Cの発光層20の厚み方向の中央部の領域の粒子20Aの密度が、該発光層20における該領域以外の領域の粒子20Aの密度より高い状態となる。
なお、図2に示す有機電界発光素子10A、有機電界発光素子10B、及び有機電界発光素子10Cの構成は、発光層20中の粒子20Aの分散の状態が有機電界発光素子10と異なる以外は、図1に示す有機電界発光素子10と同じ構成であるため各構成部材の説明を省略する。
【0047】
この発光層20中に含まれる粒子20Aは、粒子状であればよく、球状、多角形の何れであってもよいが、粒子20Aにおける有機発光材料20Bの光を吸収して発光する材料を含む部分の形状係数SF1が100以上106以下であることが良い。
なお、この形状係数SF1は、下記式(1)で定義される。
式(1) SF1=((第1の粒子の径の絶対最大長)/第1の粒子の投影面積)×(π/4)×100
なお、形状係数SF1の値は、丸さを示すものであり、真球の場合には100となり、形状が不定形になるに従って値が増大する。この形状係数SF1が、上述のように106以下であると、粒子20Aは真球又は真球に近い形状となる。この粒子20Aが真球又は真球に近い形状であるほど、有機発光材料20Bによる光を吸収することによって粒子20Aから放射された光は、粒子20Aの全方向(360°の全方向)に向かって放射されると考えられる。従って、有機発光材料20Bから発光した光の上記界面による全反射成分(発光層20内に閉じこめられた光)が、粒子20Aによって効果的に角度を変更されることとなり、該粒子20Aが真球からかけ離れた形状である場合に比べて、発光層20から有機電界発光素子10の外部へと該有機電界発光素子10の厚み方向側に取り出される光の量が増え、輝度が向上すると考えられる。
【0048】
発光層20における粒子20Aの含有量は、有機電界発光素子10の構成や、発光層20中に含まれる有機発光材料20Bの量、及び粒子20Aの密度分布(偏在させるか否か、及びどの領域に偏在させるか)等によって異なるが、例えば、発光層20中に含まれる有機発光材料100質量部に対して0.001質量部以上10質量部以下である。
【0049】
この粒子20Aとしては、有機発光材料20Bが発光する光の少なくとも一部を吸収することによって発光する特性を有する粒子であればよく、有機発光材料20Bから放射された光を吸収することによって励起されて発光する材料を粒子状としたものや、量子ドットを用いればよい。
【0050】
有機発光材料20Bから放射された光を吸収することによって励起されて発光する材料としては、無機PL(フォトルミネッセンス)材料や、有機PL材料が挙げられる。
【0051】
無機PL材料としては、Tb3+;BaMgAl1627:Eu2+,Mn2+;GdBO:Ce3+,Tb3+;CeMgAl1119:Tb3+;YSiO:Ce3+,CaMg(SiOCl:Eu2+,Mn2+;(Ca,Sr)S:Ce;SrSi・2SrCl:Eu2+;SrAl1425:Eu2+;Y(Gd,Tb,Lu)(Al,Ga)12:Ce3+等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
粒子20Aとして、上記の無機PL材料を粒子状としたものを用いる場合には、上記に挙げた無機PL材料を粒子状にして用いればよい。この粒子状とする方法としては、上記の無機PL材料の破片を粉砕や粒子化法、例えばジルコニア強化ボールを用いるボールミル粉砕やジェットミル粉砕により粉砕する方法が挙げられる。また、上記無機PL材料を溶解した溶液からの結晶成長によって粒子状としてもよい。結晶成長によって無機PL材料を粒子状とする場合には、その粒径は、結晶成長の時間を調整することによって制御される。
【0053】
有機PL材料としては、P.F.Gordon and P.Gregory,”Organic Chemistry in Colour,”Springer−Verlag,Berlin,p.p.99−101,105−106,126,180,253−255及び257(1983)に開示されているように、アゾ色素、アントラキノン色素、ニトロジフェニルアミン色素、1−ニトロソ−2−ナフトール及び6−スルホール−1−ニトロソ−2−ナフトールの鉄(II)錯体が挙げられる。また、有機PL材料としては、クマリン色素や、キサンテン色素が挙げられる。なお、有機PL材料としては、これらに限定されない。
【0054】
粒子20Aとして、上記の有機PL材料を粒子状としたものを用いる場合には、上記に挙げた有機PL材料を粒子状として用いればよい。この有機PL材料を粒子状とする方法としては、例えば、有機PL材料の希薄溶液をスプレー噴霧し、乾燥させることで粒子をエアロゾル形成する方法が挙げられる。
【0055】
粒子20Aとして、上記の無機PL材料や有機PL材料を粒子状としたものを用いる場合には、粒子20Aの平均粒子径としては、例えば、1nm以上20nm以下、1nm以上5nm以下が挙げられる。
【0056】
上述のように、粒子20Aとしては、量子ドットを用いても良い。
【0057】
なお、この量子ドットとは、半導体ナノ粒子とも呼ばれ、量子サイズ効果により、吸収する光の波長や発光する光の波長が粒子径により調整される粒子である。なお、この量子サイズ効果とは、粒子が小さくなるにつれて材料中の電子の状態が変わって、より短い波長の光を吸収したり放出したりする現象であり、直径が原子のド・ブロイ波長(数nm以上20nm以下)である半導体の粒子において見られるものである。
【0058】
量子ドットの構成材料としては、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe及びHgZnSTeから構成される群から選択される少なくとも1種のII−VI族化合物半導体ナノ結晶;
GaN、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSbInNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs及びInAlPSbから構成される群から選択される少なくとも1種のIII−V族化合物半導体ナノ結晶;
PbS、PbSe、PbTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe及びSnPbSTeから構成される群から選択される少なくとも1種のIV−VI族化合物半導体ナノ結晶;ならびに、Si、Ge、SiC及びSiGeから構成される群から選択される少なくとも1種のIV族化合物半導体ナノ結晶;
等が挙げられる。
【0059】
この量子ドットの合成手法としては、市販の粉末を用いてもよいが、例えば、ゾルゲル法、共沈法、水熱法などによる液相合成法、前駆物質を噴霧して過熱分解する噴霧熱分解法などが挙げられる。
【0060】
粒子20Aとして、上記の量子ドットを用いる場合には、平均粒子径を原子のド・ブロイ波長である数nm以上20nm以下とすればよい。
【0061】
なお、発光層20中に含まれる粒子20Aとしては、上記に挙げた無機PL材料を粒子状としたもの、上記有機PL材料を粒子状としたもの、及び上記量子ドットの各々を単独で用いても良いし、これらを混合して発光層20中に分散させたものを用いても良い。
【0062】
また、粒子20Aとしては、表面に絶縁膜が設けられていることが良い。具体的には、図3に示すように、粒子20Aの表面に絶縁膜21が設けられていることが良い。この絶縁膜21としては、絶縁性の材料であればよいが、具体的には、SiO,SiN,Al等が挙げられる。また、この絶縁膜の厚みとしては、0.7nm以上3nm以下が挙げられる。
【0063】
粒子20Aの表面に絶縁膜21を設けた構成とすることで、電極22及び電極14から発光層20へ注入される電荷が粒子20A内で再結合することが抑制される。このため、更なる有機電界発光素子10の輝度の向上が図れると考えられる。また、粒子20Aの化学的な安定性が向上すると考えられる。なお、粒子20Aの化学的な安定性とは、粒子20Aの構成材料の酸化が抑制されることを意味している。
ここで、絶縁膜の「絶縁性」とは、体積抵抗率が10Ω・cm以上であることを示している。
【0064】
――有機発光材料――
発光層20に含まれる有機発光材料20Bは、上述のように、電気的なエネルギーを与えることによって発光する材料である。本実施の形態では、電極14及び電極22に電圧を印加することによって発光層20内の有機発光材料20Bに正孔及び電子が注入され、これらの電荷が結合して励起子を形成し、この形成された励起子が、該形成された直後の状態よりエネルギーの低い、低エネルギーのレベルへ遷移することによって発光する。
【0065】
この有機発光材料20Bとしては、上記特性を満たす材料であればよく、例えば、低分子発光材料、高分子発光材料が挙げられる。
低分子発光材料としては、キレート型有機金属錯体、多核又は縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、又はオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。高分子発光材料としては、例えば、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、又はポリアセチレン誘導体等が挙げられる。
【0066】
有機発光材料20Bとして低分子発光材料を用いる場合、発光層20には、結着樹脂を含んで構成させることがよい。また、発光層20は、有機電界発光素子10の耐久性の向上や発光効率の向上を目的として、上記に挙げた有機発光材料20Bとは異なる色を示す色素を添加してもよい。発光層20中における色素化合物の添加の割合としては、例えば、0.001質量%以上40質量%以下、0.001質量%以上10質量%以下が挙げられる。この色素としては、有機発光材料20B及び粒子20Aの相容性が良く、かつ発光層20の薄膜形成を妨げない有機化合物が用いられる。この色素としては、具体的には、4−ジシアンメチレン−2−メチル−6−(p2ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)誘導体、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、又はポルフィリン等が挙げられる。
【0067】
発光層20は、上記粒子20Aと、有機発光材料20Bと、粒子20Aを分散及び有機発光材料20Bを分散又は溶解する溶剤と、を含む塗布液と用いて、上記正孔輸送層18上に成膜することによって形成すればよい。なお、有機発光材料20Bとして、低分子発光材料を用いる場合、該発光層20を成膜するために用いられる塗布液には、結着樹脂が含まれる。
【0068】
この発光層20の成膜方法としては、例えば、スプレー法、エレクトロスプレー法,スピンコーティング法、及びディップ法等が挙げられる。
なお、この発光層20を成膜するために用いられる溶剤としては、有機発光材料を溶液かできる溶剤であればよく、具体的には、モノクロロベンゼンや、トルエン、キシレン、o−ジクロロベンゼン等が挙げられる。
【0069】
なお、発光層20を、粒子20Aが発光層20中において偏在した状態の発光層20とするためには、粒子20Aと、有機発光材料20Bと、粒子20Aを分散及び有機発光材料20Bを分散又は溶解する溶剤と、を含む塗布液として、粒子20Aの含有量を変えた塗布液を数種類用意し、粒子20Aを偏在させる領域に応じた種類の塗布液を順次塗布することによって成膜すればよい。
【0070】
この成膜方法として、図2(A)に示す、発光層20を厚み方向に複数の領域に分割したときにおける電極14側の領域に、粒子20Aを偏在させた構成とする場合を一例として挙げる。まず、粒子20Aと、有機発光材料20Bと、粒子20Aを分散及び有機発光材料20Bを分散又は溶解する溶剤と、を含む塗布液として、粒子20Aの含有量だけを変えた塗布液を複数種類用意する。
次に、これらの複数種類の塗布液の内の、最も粒子20Aの含有量の高い塗布液を正孔輸送層18上に塗布することで、発光層20を成膜する(図4(A))。次に、該複数種類の塗布液の内の、該最も粒子20Aの含有量の高い塗布液より含有量の低い(又は粒子20Aを含まない)塗布液を順次塗布して発光層20及び発光層20を成膜する(図4(B)及び4(C))。これによって、図4(D)に示すように、発光層20を厚み方向に複数の領域に分割したときにおける電極14側の領域に、粒子20Aを偏在させた構成の発光層20(発光層20、発光層20、発光層20)が成膜される。
【0071】
―電極―
電極22は、発光層20へ電子の注入を行うため発光層のLUMO準位より仕事関数の小さな金属が良い。例えば、仕事関数が3.0eV以下であることが好ましい。
【0072】
この電極22としては、例えば、アルミニウム、銀、インジウム、又はこれらの合金が挙げられる。この電極22は、上記発光層20上に、蒸着法や、スパッタリング法等の公知の方法を用いて形成すればよい。
【0073】
なお、図示しないが、電極22上(電極22の発光層20とは反対側の面)には、さらに有機電界発光素子10の水分や酸素による劣化を防ぐために、保護層を形成してもよい。具体的な保護層の材料としては、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、又はAlなど)、金属酸化物(MgO、SiO、又はTiO等)、又は樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、又はポリイミド樹脂等)等が挙げられる。保護層の形成には、例えば、蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、コーティング法が挙げられる。
【0074】
なお、本実施の形態の有機電界発光素子10では、説明を簡略化するために、1画素単位の構成について説明したが、この単位を複数並べてマトリクス状(行又は列方向に複数配置)、及びセグメント状(断片的に複数配置)とすれば、各種表示装置に適用される形態となる。
【0075】
なお、上記1画素単位の有機電界発光素子10をマトリクス状に配置する場合には、電極22及び電極14と、発光層20と、の内の電極22及び電極14だけをマトリクス状に配置してもよいし、また、電極22及び電極14と、発光層20と、の双方をマトリクス状に配置してもよい。また、上記1画素単位の有機電界発光素子10をセグメント状に配置する場合についても、電極22及び電極14と、発光層20と、の内の電極22及び電極14だけをセグメント状に配置してもよいし、また、電極22及び電極14と、発光層20と、の双方をセグメント状に配置してもよい。
【0076】
―表示装置―
本実施の形態の表示装置30では、電圧印加部32から有機電界発光素子10の電極22及び電極14へ電圧を印加することによって、有機電界発光素子10の発光層20を発光させる。
【0077】
表示装置30では、例えば、電極22を陰極とし、電極14を正極として、電極22及び電極14の電極間に4V以上20V以下で、電流密度1mA/cm以上200mA/cm以下の直流電圧を印加することによって有機電界発光素子10を発光させる。
【0078】
ここで、本実施の形態の有機電界発光素子10では、上記に説明したように、発光層20は、有機発光材料20Bと、この有機発光材料20Bの発光による光を吸収することによって発光する粒子20Aと、を含んだ構成とされている。このため、発光層20に粒子20Aを含まない構成とした有機電界発光素子に比べて、有機電界発光素子10の輝度が向上されると考えられる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例によって本実施の形態を説明する。なお、本実施の形態はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
正極としてのITO電極が幅2mmの短冊状に形成されたガラス基板を準備し、これを中性洗剤、アセトン、イソプロピルアルコールを用いて洗浄した。
次に、基板表面を、紫外線/オゾン(UV/O)洗浄した後、3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)をスピンコーティング法により3000rpmで60秒間塗布し、膜厚10nmの正孔注入層を形成した。
【0081】
次に、有機発光材料としてのポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)の0.8質量%モノクロロベンゼン溶液中に、平均粒径1.5nmの粒子(量子ドット)としてのシリコン粒子(Si粒子)の表面を、絶縁膜としてのSiOによって0.7nmの厚みに被覆した粒子を0.001質量%添加してペイントシェイカーにて分散した塗布液A1を調整した。
そして、この塗布液A1を、上記に形成した正孔注入層上にスピンコーターにより塗布することで、膜厚80nmの発光層を形成した。
【0082】
なお、上記粒子としてのシリコン粒子の形状係数SF1を測定したところ、103であった。
【0083】
次に、上記のITO電極、正孔注入層、及び発光層の形成されたガラス基板を、真空蒸着装置に移し、LiFを5nmの膜厚に成膜する。続けてCaを30nmの膜厚に成膜した後、Alを150nm蒸着して、これらの積層体Aを電極(陰極)とした。
【0084】
次に、上記のITO電極(正極)、正孔注入層、発光層、及び電極(陰極)の形成されたガラス基板を、真空蒸着装置から取り出した後に、エポキシ樹脂を用いてガラス(表示面側)を封止することによって、有機電界発光素子A1を得た。
【0085】
作製した有機電界発光素子A1の発光層について、該発光層に含まれる粒子の分散されている状態を、透過型電子顕微鏡を用いて確認したところ、複数領域の密度ばらつきが±5%以下であり、粒子が発光層の全体に渡って分散されていることが確認された。
【0086】
(実施例2)
実施例1で調整した塗布液A1における、「平均粒径1.5nmの粒子(量子ドット)としてのシリコン粒子(Si粒子)の表面を、絶縁膜としてのSiOによって0.7nmの厚みに被覆した粒子0.001質量%」に変えて、「平均粒径3.2nmの粒子(量子ドット)としてのCdSe粒子の表面を、絶縁膜としてのZnSeによって7Åの厚みに被覆した粒子(SF1=100)0.001質量%」を用いた以外は、実施例1で調整した塗布液A1と同じ材料の構成及び同じ方法を用いて塗布液A2を調整した。
【0087】
そして、本実施例2では、実施例1で用いた塗布液A1に変えて、上記調整した塗布液A2を用いた以外は、実施例1と同じ材料及び同じ条件で有機電界発光素子A2を作製した。
【0088】
(実施例3)
発光材料中に分散する蛍光粒子として、酸化膜で被覆されていない平均粒径1.5nmのSi粒子(SF1=100)を用いた以外は実施例1と同様の手法で塗布液A3を調整し、また、実施例1と同じ材料及び同じ条件で有機電界発光素子A3を作製した。
【0089】
(実施例4)
実施例1において発光層中に粒子を含有させないと、正孔輸送層18における正孔移動度よりも、発光層20における電子移動度の方が大きく、発光層20中において電極14側の領域に存在する有機発光材料20Bが主に発光に寄与した。
そこで、以下に発光層中に粒子を偏在(厚み方向における粒子の密度が異なる)させた素子の実施例を記す。
【0090】
正極としてのITO電極が幅2mmの短冊状に形成されたガラス基板を準備し、これを中性洗剤、アセトン、イソプロピルアルコールを用いて洗浄した。
次に、基板表面を、紫外線/オゾン(UV/O)洗浄した後、3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)をスピンコーティング法により3000rpmで60秒間塗布し、膜厚10nmの正孔注入層を形成した。
次に、有機発光材料としてのポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)の0.8質量%モノクロロベンゼン溶液中に、平均粒径1.5nmの粒子(量子ドット)としてのシリコン粒子(Si粒子,SF1=100)の表面を、絶縁膜としてのSiOによって0.7nmの厚みに被覆した粒子を0.001質量%添加してペイントシェイカーにて分散した塗布液A1を調整した。
そして、スプレー装置にてまず、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)の0.8質量%モノクロロベンゼン溶液を65nm分スプレー成膜した後、塗布液A1を5nm分成膜し、さらに10nm分ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)の0.8質量%モノクロロベンゼン溶液を成膜することにより、発光層において膜厚方向40nm付近に発光粒子を偏在させた。
次に、上記のITO電極、正孔注入層、及び発光層の形成されたガラス基板を、真空蒸着装置に移し、LiFを5nmの膜厚に成膜する。続けてCaを30nmの膜厚に成膜した後、Alを150nm蒸着して、これらの積層体Aを電極(陰極)とした。
【0091】
次に、上記のITO電極(正極)、正孔注入層、発光層、及び電極(陰極)の形成されたガラス基板を、真空蒸着装置から取り出した後に、エポキシ樹脂を用いてガラス(表示面側)を封止することによって、粒子偏在型有機電界発光素子A4を得た。
作製した有機電界発光素子A4の発光層について、該発光層に含まれる粒子の偏在されている状態を、透過型電子顕微鏡を用いて確認したところ、発光層において膜圧方向40nm付近に粒子が偏在していることが確認された。
【0092】
(実施例5)
実施例1において、蛍光粒子のSF1が100であること以外は、実施例1と同条件で有機電界発光素子A5を作製した。
【0093】
(実施例6)
実施例1において、蛍光粒子のSF1が106であること以外は、実施例1と同条件で有機電界発光素子A6を作製した。
【0094】
(実施例7)
実施例1において、蛍光粒子のSF1が110であること以外は、実施例1と同条件で有機電界発光素子A7を作製した。
【0095】
(比較例1)
実施例1で調整した塗布液A1における、「平均粒径1.5nmの粒子(量子ドット)としてのシリコン粒子(Si粒子)の表面を、絶縁膜としてのSiOによって7Åの厚みに被覆した粒子」を含有しない以外は、実施例1で調整した塗布液A1と同じ材料の構成及び同じ方法を用いて比較塗布液A1を調整した。
【0096】
そして、本比較例1では、実施例1で用いた塗布液A1に変えて、上記調整した比較塗布液A1を用いた以外は、実施例1と同じ材料及び同じ条件で比較素子A1を作製した。
【0097】
(評価)
上記実施例及び比較例で作製した有機電界発光素子A1〜A7、及び比較素子A1について、大気中で、ITO電極側を正極、実施例1で電極として調整した積層体A側を陰極として、これらの電極間に7Vの直流電圧を印加し、有機電界発光素子及び比較素子の各々から発せられる光について測定を行い、最高輝度を測定した。
なお、輝度の測定は、輝度計(トプコン社製、商品名 BM9)を用いて、電極として調整した積層体A上に形成したガラス(表示面側)側から放射される光の輝度(正面輝度ともいう)を測定した。
【0098】
測定結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
表1に示すように、発光層に粒子を含む有機電界発光素子である実施例では、発光層に粒子を含まない比較素子に比べて、輝度が向上されている、という結果が得られた。
また、さらに、粒子の偏在された発光層を有する実施例4の有機電界発光素子A4は、該粒子が発光層の全体に渡って分散されている以外は同じ構成の実施例5の有機電界発光素子A5に比べて、さらに輝度が向上されている、という結果が得られた。
また、さらに、粒子の形状係数SF1が真球を示す100に近い実施例5は、該形状係数SF1が該実施例に比べて真球から離れた形状である実施例7に比べて、さらに輝度が向上されている、という結果が得られた。
また、粒子に絶縁膜が設けられている実施例5では、絶縁膜が設けられていない以外は同じ構成の実施例3に比べて、輝度が向上するという結果が得られた。
【符号の説明】
【0101】
10 有機電界発光素子
14 電極
20 発光層
20A 粒子
20B 有機発光材料
21 絶縁膜
22 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の電極と、
前記一対の電極の間に設けられ、電気的なエネルギーが与えられることによって発光する有機発光材料と、該有機発光材料の発光による光を吸収することによって発光する粒子と、を含む発光層と、を備えた有機電界発光素子。
【請求項2】
前記発光層の、前記一対の電極の内の何れか一方側の第1の領域における前記粒子の密度が、該第1の領域以外の第2の領域の密度より高い請求項1に記載の有機電界発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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