説明

有機顔料組成物の製造方法

【課題】乾燥時に凝集を起こさない、有機顔料組成物を製造しうる新たな方法を提供する。
【解決手段】水と有機顔料とを含む含水ケーキ、重合体樹脂および前記の有機顔料を溶解せずかつ前記の重合体樹脂を溶解する有機溶剤を混練した後に、水成分を取り除いて、前記重合体樹脂と前記有機溶剤と有機顔料とを含有する混合物を取り出す工程を有することを特徴とする有機顔料組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機顔料組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機顔料は、特にカラーフィルタやインクジェットインキには、通常、微粒化されて用いられるが、該微粒化工程において用いられた水溶性無機塩や合成工程から持ち込まれる水溶性の不純物を除去するために、水で洗浄が行われ、有機顔料および水を含有する含水ケーキが得られる。得られた含水ケーキでは、有機顔料分子間の凝集はほとんど見られないので、該含水ケーキは、そのまま水中に分散させたり、樹脂にフラッシングしてから、分散処理させたりした後、用いられる。
しかしながら、該含水ケーキは、そのハンドリングが難しかったり、水の混入を嫌う用途では使用できないため使用する用途が制限されたりするという問題があった。
そこで、ハンドリングを容易にしたり、水の混入を避けたりするために、該含水ケーキを乾燥させて粉体状にしてから使用されることが多いが、一方で、乾燥時に有機顔料分子間で凝集を起こすことが知られている。そして、有機顔料分子間での凝集を起こすと、せっかくの微粒化の効果が得られなかったり、有機顔料を含む組成物の貯蔵安定性が悪化したりすることがあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、乾燥時に凝集を起こさない、有機顔料組成物を製造しうる新たな方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記したような課題を解決し得る有機顔料の製造方法を見出すべく、鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
即ち、本発明は、水と有機顔料とを含む含水ケーキ、重合体樹脂および前記の有機顔料を溶解せずかつ前記の重合体樹脂を溶解する有機溶剤を混練した後に、水成分を取り除いて、前記重合体樹脂と前記有機溶剤と有機顔料とを含有する混合物を取り出す工程を有することを特徴とする有機顔料組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の有機顔料の製造方法によれば、乾燥時に凝集を起こさない有機顔料組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、微粒化処理後の水と有機顔料とを含む含水ケーキに、重合体樹脂と前記の有機顔料を溶解せずかつ前記の重合体樹脂を溶解する有機溶剤を添加し、混練後に、水または有機溶剤を含んだ水をろ別し、重合体樹脂と溶剤と有機顔料とを含む有機顔料組成物を取り出す工程を有する有機顔料組成物の製造方法に関する。
本発明の製造方法において用いられる有機顔料としては、公知の有機顔料であれば用いることができる。
【0007】
前記の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、74、83、86、93、94、109、110、117、125、128、137、138、139、147、148、150、153、154、166、168、173、185、194、214などの黄色顔料;
C.I.ピグメントオレンジ13、16、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65、71、73などの橙色顔料;
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、105、122、123、144、149、166、168、176、177、180、192、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、242、254、255、264、265などの赤色顔料;
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64などの青色顔料;
C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、37、38、40、50などの紫色顔料;
C.I.ピグメントグリーン7、36などの緑色顔料;
C.I.ピグメントブラウン23、25、26などの茶色顔料などが挙げられる。
また、それらの有機顔料の上位概念として知られている一般式で表される有機顔料にも適用できる。
中でも、好ましくはC.I.ピグメントイエロー128、138、150、185、C.I.ピグメントレッド48:1、254、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントグリーン7、36や、互変異性体の形態で、式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体などが挙げられ、より好ましくはC.I.ピグメントイエロー150、互変異性体の形態で、式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体、とりわけ好ましくはC.I.ピグメントイエロー150が挙げられる。
これらの有機顔料としては、市販品を用いることができ、また、混合して用いることができる。
【0008】

【0009】
[式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基を表す。また、式(I)において破線で示すように、5−もしくは6−員環を形成することができ、さらに環が縮合していてもよい。この場合、R〜Rは、それぞれ、前記の定義に対応する二価または三価の基を表す。
は、−OH、−N(R)R、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基を表す。
は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表す。
は、水素、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基またはアシル基を表す。
環Xおよび環Yは、それぞれ独立して、=O、=S、=NR、−N(R)R、−OR、−SR、−COOR、−CN、−CON(R)R、−SO、−N(R)CN、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有していてもよい。
は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基を表す。
〜Rに関して挙げたCH結合を含有する置換基はさらに置換されていることができる。
環Xおよび環Yのそれぞれについて、破線で示される5−もしくは6−員環を含めて、環内外の二重結合の合計は3つである。
m、n、oおよびpは、それぞれ1であるか、あるいは式(I)において、環窒素原子が二重結合のための出発点である場合、ゼロであることもできる。
金属錯体化させる金属は、鉄、銅、コバルト、ニッケルおよびクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である。]
【0010】
前記の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、1−メチル−n−プロピル基、2−メチル−n−プロピル基、n−ペンチル基、1−メチル−n−ブチル基、2−メチル−n−ブチル基、3−メチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−プロピル基、1,2−ジメチル−n−プロピル基、2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−n−プロピル基、2−エチル−n−プロピル基、n−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、2−メチル−n−ペンチル基、3−メチル−n−ペンチル基、4−メチル−n−ペンチル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2−ジメチル−n−ブチル基、1,3−ジメチル−n−ブチル基、2,2−ジメチル−n−ブチル基、2,3−ジメチル−n−ブチル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−エチル−n−ブチル基、2−エチル−n−ブチル基、3−エチル−n−ブチル基、(1−メチル)エチル−n−プロピル基などが挙げられる。
前記の炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などが挙げられる。
前記の炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
前記の炭素数7〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチル基などが挙げられる。
金属錯体化させる金属は、鉄、銅、コバルト、ニッケルおよびクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、好ましくはニッケル、クロムである。
中でも、互変異性体の形態で、式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体が、式(II)で表される化合物のニッケル錯体(C.I.ピグメントイエロー150)であることが好ましい。
【0011】

【0012】
本発明の製造方法で用いられる有機顔料は、通常、合成反応後には有機顔料および水を含む状態にある。また、合成反応後の有機顔料および水を含む組成物は、微粒化された状態になってもよい。微粒化の方法としては、ソルトミリング法や、一旦、酸や有機溶剤といった液体に溶解させた後に析出させる方法を用いることができる。
具体的なソルトミリング法としては、有機顔料、水溶性の無機塩および水溶性の溶剤の混合物を、ニーダーなどの装置を用いて混練して、有機顔料の粒子径を小さくする方法であり、本発明においても適用でき、その条件は、混練に用いる装置、スケール等により、適宜調整できる。
【0013】
ソルトミリングに用いられる前記の水溶性の無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの無機塩は、有機顔料を微小化するために使用され、市販の食塩などを粉砕機にて粉砕し、使用される。これらの無機塩の使用量は、有機顔料に対して質量比で、好ましくは3質量倍以上20質量倍以下、より好ましくは3質量倍以上10質量倍以下である。無機塩の使用量が前記の範囲にあると、所望の粒子径の有機顔料が得られ、また、後の工程における洗浄処理が多大でなく、さらにソルトミリング処理装置の容積効率の点から有機顔料の処理量が少なくならないので、好ましい。
ソルトミリング法において用いられる水溶性の溶剤は、ソルトミリング時に湿潤剤として用いられるものであり、水溶性であれば特に限定されない。しかし、ソルトミリング時に温度が上昇し、溶剤が蒸発しやすい状態になるため、高沸点の溶剤が好ましい。水溶性の溶剤の使用容量は、有機顔料の質量に対する比で、好ましくは0.5〜10倍、より好ましくは0.6〜7倍である。水溶性の溶剤の使用量が前記の範囲にあると、混練が可能であり、また混合物が液状に近くならずに、混練時に適度にシェアがかかり、有機顔料の微細化ができるので、好ましい。
【0014】
前記のソルトミリング法において用いられる水溶性の溶剤としては、2−(メトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールなどが挙げられ、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが挙げられる。
【0015】
混練終了後、ろ過などの方法で、水溶性の溶剤を除いた後、有機顔料と混在している水溶性の無機塩および残っている水溶性の溶剤を除去するために水で洗浄し、さらにろ過して微粒化された有機顔料の含水ケーキを得る。このとき、前記の含水ケーキ中の固形分としては、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%である。含水ケーキ中の固形分が前記の範囲にあると、前記の含水ケーキの取り扱いが容易であることから好ましい。
【0016】
有機顔料および水を含む含水ケーキの固形分は、赤外線加熱乾燥質量測定法などによって、測定することができる。なお、前記の含水ケーキ中の固形分以外の成分は、水である。
【0017】
そして、ソルトミリング工程を経て得られる有機顔料を含む組成物は、有機溶剤および重合体樹脂を添加されて、混練される。そして、混練後、水または有機溶剤を含んだ水をデカンテーションなどの方法で分離し、重合体樹脂を含んだ有機顔料の含溶剤組成物が取り出し、乾燥する。
【0018】
本発明の製造方法において用いられる有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、その他の溶剤などが挙げられる。
前記のアルコール系溶剤としては、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール;
ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケントン、シクロヘキサノン、;
エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル;
エーテル系溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート;
脂肪族炭化水素系溶剤としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン;
芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレンなどが挙げられる。
前記の有機溶剤のうち、好ましくはシクロヘキサノン、酢酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、より好ましくはシクロヘキサノン、エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
前記の有機溶剤は、単独でも、2種以上を混合して用いられてもよい。
【0019】
重合体樹脂としては、天然樹脂および合成樹脂から選ばれる少なくとも1種の高分子重合体などが挙げられる。前記の重合体樹脂は、有機顔料の含水ケーキに添加する有機溶剤に事前に溶解させても別々に添加してもよく、好ましくは事前に有機溶剤に溶解させて添加される。また、有機顔料の含水ケーキを有機溶剤で処理するときだけでなく、溶剤組成物から顔料分散液を調製するときに加えられてもよく、好ましくは有機顔料の含水ケーキを有機溶剤で処理するときに加えられる。
【0020】
重合体樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂などが挙げられる。
アクリル系樹脂としては、不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸無水物ならびに不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸無水物と共重合可能な単量体を含んでなる共重合体が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸が挙げられる。
不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水シトラコン酸、無水メサコン酸および無水イタコン酸が挙げられる。
不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸無水物と共重合可能な単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(メタ)アクリレート(当該技術分野で慣用名としてジシクロペンタニル(メタ)アクリレートといわれている)、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレートなどのメタ(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル類;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル類;
マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどのジカルボン酸ジエステル;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2’−ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(2’−ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジエトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシメチル−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン無水物(ハイミック酸無水物)、5−tert−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(tert−ブトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(シクロヘキシルオキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のビシクロ不飽和化合物類;
フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、ベンジルマレイミド、N−スクシンイミジル−3−マレイミドベンゾエート、N−スクシンイミジル−4−マレイミドブチレート、N−スクシンイミジル−6−マレイミドカプロエート、N−スクシンイミジル−3−マレイミドプロピオネート、N−(9−アクリジニル)マレイミド等のジカルボニルイミド誘導体類;
スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂が挙げられる。
フェノールノボラック樹脂としては、フェノール類の少なくとも1種とアルデヒド類とを縮重合することによって得られるノボラック型のフェノール樹脂が挙げられる。
前記のフェノール類としては、フェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、2,5−キシレノール、2,3−キシレノール、3,4−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3−ジメトキシフェノール、2,5−ジメトキシフェノール、3,5−ジメトキシフェノール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2,3,5−トリエチルフェノール、3,5−ジエチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、などの一価フェノール;レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−tert−ブチルカテコール、3−メトキシカテコール、2−メトキシレゾルシノール、4−メトキシレゾルシノール、ビスフェノールA、フロログリシノールなどの多価フェノールなどが挙げられる。これらは、単独または2種以上を組合せて用いられる。
前記のアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、シクロペンタンアルデヒド、フルフラール、フリルアクロレインなどの脂肪族または
脂環式アルデヒド類;ベンズアルデヒド、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,5−ジメチルベンズアルデヒド、3,4−または3,5−ジメチルベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、ケイ皮アルデヒド、o−アニスアルデヒド、m−アニスアルデヒド、p−アニスアルデヒドなどの芳香族アルデヒド類が挙げられる。これらは、単独または2種以上を組合せて用いられる。
前記のアクリル系樹脂に代えて、ポリイミド樹脂を用いることもできる。
また、市販の高分子顔料分散剤、例えば、EFKA−4400、4401、4402、4403、4406、4008、4009、4010、4015、4046、4047、4050、4055、4060、4080(EFKA Additive社製);ソルスパース3000、9000、13240、13940、17000、20000、24000、26000、28000、32000(アビシア(株)製);アジスパーPB821、822、823、824(味の素ファインテクノ(株)製);Disperbyk−110、112、116、161、162、163、164、166、167、168、2000、2001、2050、2070、2150(ビックケミー・ジャパン(株)製);ディスパロンDA−325、375、703−50、705、725、7300(楠本化成(株)製)等や、市販のワックスなども用いることができる。
これらの重合体樹脂は、単独で用いてもよくまた2種以上組合せて用いてもよい。
【0021】
また、本発明による有機顔料組成物には、添加剤が含まれていてもよい。前記の添加剤としては、顔料分散体等が挙げられる。
例えば、BYK−Synergist2100(ビックケミー・ジャパン(株)製)、
ソルスパース5000、12000、22000(アビシア(株)製)等の顔料誘導体系分散剤;
アーマックC、アーカードC−50、T−28、T−50(ライオン(株)製)等のカチオン系界面活性剤;
T50アルキル(C14〜C18)アミン酢酸塩
ノイゲンET−83、102、69、89、109、97、107、65、95、EA−87(第一工業製薬(株)製)、
ナロアクティーN−40、50、70、
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
ニューポールPE−61、62、64(三洋化成工業(株)製)、
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン ブロックポリマー
レオドールSP−L10、SP−O10、SP−O30(花王(株)製)等のノニオン系界面活性剤;
フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)等のフッ素系界面活性剤;
プライサーフA212E、A210G、A208B、A208F、A208S、ハイテノール18E、N−07、N−08、N−17、NF−13、NF−17(第一工業製薬(株)製)、NF13;ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩
が挙げられる。これらの分散剤は、単独で用いてもよくまた2種以上組合せて用いてもよい。
【0022】
重合体樹脂の含有量は有機顔料に対して質量分率で、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは5〜50質量%である。
【0023】
混練における温度は、好ましくは用いられる有機溶剤の沸点以下であり、臭気や引火の危険性の観点から、より好ましくは40℃以下である。
【0024】
混練における有機溶剤の量は、含水ケーキ中の水に対して質量比で、好ましくは0.1〜2.0倍、より好ましくは0.15〜1.6倍、とりわけ好ましくは0.3〜1.4倍、中でも好ましくは0.5〜1.3倍である。溶剤の量が前記の範囲にあると、処理量や水の除去性の点から、好ましい。
そして含溶剤組成物中の顔料の含有量は顔料の固形分換算で溶剤組成物に対して質量分率で、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜50質量%である。顔料の量が前記の範囲にあると、含溶剤組成物の取り扱いが容易であることから望ましい。
【0025】
混練における処理時間は、好ましくは5〜120分、より好ましくは5〜90分、とりわけ好ましくは5〜60分である。処理時間が前記の範囲にあると、混練が進み水から有機溶剤を含む樹脂への置き換えが効率よく行われる傾向があり、好ましい。
【0026】
混練に用いられる装置としては、ディスパー、ニーダー、3本ロール、プラネタリーミキサー、トリミックス((株)井上製作所製)などが挙げられる。
【0027】
次いで、混練後に、有機顔料がろ過されて水または有機溶剤を含んだ水と分離され、有機溶剤と重合体樹脂を含む有機顔料組成物が得られる。また、必要に応じて、得られた有機溶剤と重合体樹脂を含む有機顔料組成物は、さらに溶剤で洗浄されてもよい。
ここで洗浄に用いられる溶剤は、前記の混練時に用いられた有機溶剤と同一でも異なってもよい。
【0028】
有機溶剤と重合体樹脂を含む有機顔料組成物は、固形分を測定した後、必要に応じて添加剤を添加されてよい。
【0029】
有機溶剤と重合体樹脂を含む有機顔料組成物の乾燥は、有機溶剤の沸点以上の温度で行われることが好ましいが、沸点よりも低い温度であっても乾燥時間を延長することにより対応することができる。
また、乾燥は、減圧しながら行われることが好ましい。減圧する場合、その圧力は、好ましくは10〜1.01×10Pa程度である。
乾燥後、得られた該固形状の有機顔料組成物は、粉砕されて、粉体状の有機顔料組成物として得られる。
次いで、粉体状の有機顔料組成物は、必要に応じて、有機溶剤中において顔料分散剤や界面活性剤などの添加剤が添加され、ビーズミルなどの装置を用いて分散処理されて、着色組成物とされる。
【0030】
上記の各工程を経て得られた有機顔料組成物を含む着色組成物をガラス上に塗布したときのヘイズ値は、有機溶剤処理をすることなく含水ケーキを直接乾燥する製造方法によって得られる有機顔料を含む着色組成物をガラス上に塗布したときと比較してヘイズ値を小さくでき、また着色組成物中の平均粒子径(以下、D50と省略することがある。)および最大粒子の粒子径(以下、Dmaxと省略することがある。)を小さくできる。
【0031】
本発明の製造方法により得られる有機顔料組成物は、着色用の組成物に用いることができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0033】
実施例1
<ソルトミリング処理>
市販のPY150(イエローE4 GN−GT;LANXESS製 比表面積;126.6m/g):130g、塩化ナトリウム:520g、およびジエチレングリコール:195gをステンレス製1Lニーダー(モリヤマ製)に仕込み、10時間混練した。次にこの混合物を10Lの水に投入し、ディスパーで3時間撹拌した後、ろ過、水洗をくりかえして塩化ナトリウムおよび溶剤を除き、固形分25質量%の顔料の含水ケーキを得た。
<溶剤処理>
微粒化後のC.I.ピグメントイエロー150(LANXESS社製)の含水ケーキ(固形分28質量%)464.3g(顔料純分で130gに相当)を秤量し、卓上ニーダー(PNV−1型;(株)入江商会製)に投入した。
該ニーダーを、羽根の回転数30rpm、温調温度25℃の条件で運転しながら、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gおよびアジスパーPB822(味の素ファインテクノ(株)製)65gを加えて、10分間攪拌した。その後、デカンテーションにより、液状成分を取り除いた後、C.I.ピグメントイエロー150の有機溶剤と重合体樹脂を含む有機顔料組成物がニーダーから取り出され、さらにバット上に広げられた。バット上の有機溶剤と重合体樹脂を含む有機顔料組成物は、オーブン中において、80℃で24時間かけて乾燥された。得られた乾燥有機顔料組成物は、粉砕されて、粉末状の顔料組成物として得られた。
【0034】
<分散処理>
ついで、得られた粉末状の顔料組成物を顔料純分で2gを秤量し、ポリエチレン製の50mL容量の瓶に入れ、アジスパーPB822をさらに0.2g加えた。
さらに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.33gを加えて、有機顔料の濃度が、全組成物に対して15質量%となるようにした。
得られた組成物に、0.3mmΦのジルコニアビーズ15gを加えて、ペイントコンディショナー(BA−S 20K;オーウェル社製)を用いて、で2時間分散処理して、ジルコニアビーズを除去して、顔料分散液を得た。
【0035】
<ヘイズ値測定>
得られた顔料分散液を、清浄なガラス板(大きさ;5cmの正方形、厚み;1mm)上に、スピンコーター(ASS−302;エイブル社製)を用いて、500rpmの条件で、塗布して塗布板を得た。得られた塗布板は、オーブン中で、100℃で10分間乾燥された。乾燥後の塗布板のヘイズ値が、auto matic haze meter(東京電色社製)を用いて測定され、そのヘイズ値は1.7であった。ヘイズ値が大きいと、例えば16以上であれば、乾燥後の顔料組成物において凝集が起こっていることが判る。
【0036】
<粒度分布測定>
顔料分散液をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで有機顔料分が0.2w/v%となるように希釈して、希釈液を得た。希釈液中の有機顔料の粒度分布を、粒度分布計(LB500;(株)堀場製作所製)を用いて測定したところ、D50は125nmであり、Dmaxは508nmであった。Dmaxが大きいと、例えば5900を越えると、乾燥後の顔料組成物において凝集が起こっており、微粒化の効果が発揮されていないことが判る。
【0037】
比較例1
溶剤と樹脂で処理をすることなく、微粒化後の含水ケーキを乾燥する以外は、実施例1と同様にして顔料分散液を得た。
得られた顔料分散液を用いて実施例1と同様にしてヘイズ値を測定したところ、16.7であった。
また、粒度分布を測定したところ、D50は384nmであり、Dmaxは5989nmであった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の製造方法によれば、乾燥時に凝集を起こさない有機顔料組成物を得ることができる。そして、該有機顔料組成物をカラーフィルタ用の着色材として用いると、得られるカラーフィルタにおいて高いコントラストを得ることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と有機顔料とを含む含水ケーキ、重合体樹脂および前記の有機顔料を溶解せずかつ前記の重合体樹脂を溶解する有機溶剤を混練した後に、水成分を取り除いて、前記重合体樹脂と前記有機溶剤と有機顔料とを含有する混合物を取り出す工程を有することを特徴とする有機顔料組成物の製造方法。
【請求項2】
有機溶剤が、シクロヘキサノン、エトキシプロピオン酸エチルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む有機溶剤である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
有機溶剤とともに添加する重合体樹脂が天然樹脂および合成樹脂から選ばれる少なくとも1種の高分子重合体である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
有機顔料が、互変異性体の形態で、式(I)で表されるアゾ化合物の金属錯体である請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。

[式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基を表す。また、式(I)において破線で示すように、5−もしくは6−員環を形成することができ、さらに環が縮合していてもよい。この場合、R〜Rは、それぞれ、前記の定義に対応する二価または三価の基を表す。
は、−OH、−N(R)R、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基を表す。
は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表す。
は、水素、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基またはアシル基を表す。
環Xおよび環Yは、それぞれ独立して、=O、=S、=NR、−N(R)R、−OR、−SR、−COOR、−CN、−CON(R)R、−SO、−N(R)CN、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数7〜20のアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有していてもよい。
は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基を表す。
〜Rに関して挙げたCH結合を含有する置換基はさらに置換されていることができる。
環Xおよび環Yのそれぞれについて、破線で示される5−もしくは6−員環を含めて、環内外の二重結合の合計は3つである。
m、n、oおよびpは、それぞれ1であるか、あるいは式(I)において、環窒素原子が二重結合のための出発点である場合、ゼロであることもできる。
金属錯体化させる金属は、鉄、銅、コバルト、ニッケルおよびクロムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である。]
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の製造方法により得られる有機顔料組成物を含む着色組成物。

【公開番号】特開2009−242527(P2009−242527A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89649(P2008−89649)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(591229440)住化カラー株式会社 (22)
【Fターム(参考)】