説明

有機EL照明装置および給電方法

【課題】有機EL照明装置において、複雑な制御を要さずに有機EL照明装置に発生する輝度ムラを抑制することを可能にする技術を提供する。
【解決手段】本発明の有機EL照明装置は、有機EL発光部に、複数の陰極ラインを有する陰極ライン群と、陰極ラインと交差する複数の陽極ラインを有する陽極ライン群と、陽極ライン群と陰極ライン群に挟まれた有機EL層とを有する。陰極ラインの陰極電圧入力端に電圧を供給する陰極電圧印加手段と、陽極ラインの陽極電圧入力端に電圧を供給する陽極電圧印加手段の少なくとも一方は、自身が電圧を供給する自身側ラインの電圧入力端に、自身側ラインではない複数の他方側ラインに共通した、その自身側ラインとその他方側ラインが交差する発光位置とその他方側ラインの電圧入力端との間の電気抵抗によって生じる電圧降下分を相殺する固定的な調整を加えた電圧値で電圧を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELパネルを用いた有機EL照明装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(Light Emitting Diode)による照明装置が広く用いられている。しかし、LEDが点光源であるのに対して、通常、照明装置には拡散光を発することが要求される。そのため、LEDで照明装置を構成する場合、一般に、点光源からの光を乱反射によって任意の方向に導く導光板が必要とされる。
【0003】
一方、有機EL(Electro Luminescence)素子はそれ自体が拡散光を発生させるものであるため、導光板が無くても比較的容易に拡散光源を構成することができる。そのため、有機ELは次世代の照明装置の材料として期待されている。また、有機ELによるパネルは厚さ1mm程度まで薄くできるため、液晶ディスプレイのバックライトにも適している。
【0004】
有機ELパネルを構成する有機EL素子は、有機分子を含んだ有機層を、金属などの導電体による陰極の層と陽極の層で挟んだ構成である。陰極と陽極の間に電圧が印加されると有機層内の有機分子が励起状態となり、その後、基底状態に戻る。この有機分子が励起状態から基底状態に戻るときに光を発する。したがって、有機ELパネル全体にわたって均一な電圧を印加することができれば、有機ELパネルを均一の輝度あるいは色度で発光させることができる。
【0005】
しかし、有機ELパネルの陰極および陽極は有機ELパネルの縦あるいは横の幅にわたる長さを有しており、その両端あるいは片端が電圧入力端となっている。そのため、有機ELパネルの面内の各位置によって電圧入力端からの距離が異なる。そして陰極および陽極は金属なのでそれ自体が電気抵抗となる。電圧入力端からの距離が異なれば陰極あるいは陽極の抵抗成分によって降下する電圧の値も異なる。これが有機ELパネルの輝度ムラや色度ムラの原因となる。
【0006】
これに対して、特許文献1には有機ELパネルの輝度を均一化する技術が開示されている。特許文献1に開示された有機ELパネルは、互いに平行に配置された複数の陰極ラインと、陰極ラインと直交するように、互いに平行に配置された複数の陽極ラインと、陰極ラインと陽極ラインに挟まれた有機層とを有するドットマトリクス構造である。更に、複数の陰極ラインに順次電圧を供給する行ドライバと、複数の陽極ラインに順次電圧を供給する列ドライバとがあり、行ドライバと列ドライバの交差位置が発光するマトリクスのドットをなしている。
【0007】
駆動装置は、これら行ドライバと列ドライバを制御して電圧を印加する陰極ラインと陽極ラインを選択することにより各交差位置に順次電圧を印加する。そのとき、駆動装置は、陽極ラインの電圧入力端から各交差位置までの距離に応じて、陽極ラインでの電圧降下を相殺するように、陰極ラインあるいは陽極ラインに供給する電圧を動的に制御する。これにより、有機ELパネルの各交差位置に印加される電圧のバラツキが緩和され、輝度ムラが緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−142432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された技術では、行ドライバが電圧を供給する陰極ラインを順次切り替えるのに同期して、陰極ラインあるいは陽極ラインに供給する電圧を動的に制御するための制御回路が必要である。そのため特許文献1の技術には回路規模が増大するという課題があった。
【0010】
本発明の目的は、有機EL照明装置において、複雑な制御を要さずに有機EL照明装置に発生する輝度ムラを抑制することを可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の有機EL照明装置は、マトリクスをなす複数の発光位置から光を発する有機EL照明装置であって、
陰極電圧入力端を有し、長手方向が第一の方向である、互いに平行に配置された複数の陰極ラインを有する陰極ライン群と、陽極電圧入力端を有し、長手方向が前記第一の方向と交差する第二の方向である、互いに平行に配置された複数の陽極ラインを有する陽極ライン群と、前記陽極ライン群と前記陰極ライン群に挟まれた有機EL層と、を有する有機EL発光部と、
それぞれの前記陰極ラインの陰極電圧入力端に電圧を供給する陰極電圧印加手段と、
それぞれの前記陽極ラインの陽極電圧入力端に電圧を供給する陽極電圧印加手段と、を有し、
前記陰極電圧印加手段と前記陽極電圧印加手段の少なくとも一方は、自身が電圧を供給する自身側ラインの電圧入力端に、前記自身側ラインではない複数の他方側ラインに共通した、該自身側ラインと該他方側ラインが交差する発光位置と該他方側ラインの電圧入力端との間の電気抵抗によって生じる電圧降下分を相殺する固定的な調整を加えた電圧値で電圧を供給する。
【0012】
本発明の給電方法は、陰極電圧入力端を有し、長手方向が第一の方向である、互いに平行に配置された複数の陰極ラインを有する陰極ライン群と、陽極電圧入力端を有し、長手方向が前記第一の方向と交差する第二の方向である、互いに平行に配置された複数の陽極ラインを有する陽極ライン群と、前記陽極ライン群と前記陰極ライン群に挟まれた有機EL発光体と、を有する有機EL照明装置の給電方法において、
前記陰極ラインと前記陽極ラインのうち少なくとも一方の電圧入力端に、自身側ラインではない複数の他方側ラインに共通した、該自身側ラインと該他方側ラインが交差する発光位置と該他方側ラインの電圧入力端との間の電気抵抗によって生じる電圧降下分を相殺する固定的な調整を加えた電圧値で電圧を供給することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、有機EL照明装置において、複雑な制御を要さずに有機EL照明装置の輝度むらを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態の有機EL照明装置の構成を示すブロック図である。
【図2】発光位置41〜415に印加される電圧の例を示す図である。
【図3】陽極ラインおよび陰極ラインの一端から電圧を印加する場合の発光位置41〜415に印加される電圧の例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の有機EL照明装置の構成を示すブロック図である。
【図5】液晶ディスプレイにおいて所定領域ごとに有機EL発光体の発光、消灯を制御したときの模式図である。
【図6】本発明の第3の実施形態の有機EL照明装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態の有機EL照明装置の構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の有機EL照明装置1は、有機ELパネル12、陽極電圧印加部13および陰極電圧印加部14を有する。
【0018】
有機ELパネル12は、有機EL層(不図示)と、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電体で形成された複数の陽極ライン21〜25と、アルミニウム等の金属で形成された複数の陰極ライン31〜33とがガラス等の透明基板上に形成された構成である。
【0019】
1つの陽極ライン群をなす複数の陽極ライン21〜25は互いに平行に配置され、1つの層をなしている。
【0020】
1つの陰極ライン群をなす複数の陰極ライン31〜33は互いに平行であり、かつ陽極ライン21〜25と直角に交差するように配置され、やはり1つの層をなしている。
【0021】
有機EL層は、陽極ライン21〜25の層と陰極ライン31〜33の層に挟まれており、有機EL発光体を含有している。有機EL層における陽極ライン21〜25と陰極ライン31〜33の各交差部分が発光位置41〜415となる。
【0022】
陽極電圧印加部13は、陽極ライン21〜25の各電圧入力端にそれぞれ電圧を印加する。以降、陽極電圧印加部13が印加する電圧を陽極電圧と称する。
【0023】
なお、各陽極ラインは電気抵抗になるので、電圧入力端から各発光位置までの間で電圧降下が発生する。各陽極ラインでは、電圧入力端と各発光位置との間の距離が長くなるほど、その間の電気抵抗が大きくなるため、降下電圧は大きくなる。本実施形態の陽極電圧印加部13は、電圧の降下を抑えるために各陽極ライン21〜25の両端から電圧を印加している。
【0024】
陰極電圧印加部14は、陰極ライン31〜33の各電圧入力端にそれぞれ電圧を印加する。以降、陰極電圧印加部14が印加する電圧を陰極電圧と称する。
【0025】
やはり、各陰極ラインも電気抵抗になるので、各発光位置から電圧入力端までの間で電圧降下が発生する。各陰極ラインでは、電圧入力端と各発光位置との間の距離が長くなるほど、その間の陰極ラインの電気抵抗が大きくなるため、降下電圧は大きくなる。本実施形態の陰極電圧印加部14は、電圧の降下を抑えるために各陰極ライン31〜33の両端から電圧を印加している。
【0026】
陽極電圧印加部13から陽極ライン21〜25に陽極電圧が印加され、陰極電圧印加部14から陰極ライン31〜33に陰極電圧が印加されると、発光位置41〜415の有機EL層に陽極ライン21〜25から正孔が注入され、陰極ライン31〜33から電子が注入される。これらの正孔と電子が結合すると、結合によるエネルギーで有機分子がいったん励起状態に遷移する。励起された有機分子は、その後、基底状態に戻り、その基底状態に戻るときに光を発する。
【0027】
任意の1つの陽極ラインと全ての陰極ライン31〜33に着目すると、その陽極ラインと各陰極ライン31〜33の交差位置と、各陰極ライン31〜33の電圧入力端との間の距離は陰極ラインによらず同一である。
【0028】
同様に、任意の1つの陰極ラインと全ての陽極ライン21〜25に着目すると、その陰極ラインと各陽極ライン21〜25の交差位置と、各陽極ライン21〜25の電圧入力端との間の距離は陽極ラインによらず同一である。
【0029】
そのため、陰極ラインと交差する陽極ライン21〜25での降下電圧を、その陰極ラインに印加する陰極電圧を一定の電圧分だけ低くすることにより相殺し、陽極ラインと交差する陰極ライン31〜33での降下電圧を、その陽極ラインに印加する陽極電圧を一定の電圧分だけ高くすることにより相殺することができる。
【0030】
具体的には、予め定められた第1の電圧から、補正電圧として、各陰極ラインと陽極ライン21〜25のうちのいずれかの陽極ラインとの交差位置とその陽極ラインの電圧入力端との間に生じる電圧降下によって降下する電圧を減じた電圧(以降、補正後陰極電圧と称する)を各陰極ラインに印加する陰極電圧とする。また、第1の電圧より高い予め定められた第2の電圧に、補正電圧として、各陽極ラインと陰極ライン31〜33のうちのいずれかの陰極ラインとの交差位置とその陰極ラインの電圧入力端との間に生じる電圧降下によって降下する電圧を加えた電圧(以降、補正後陽極電圧と称する)を各陽極ラインに印加する陽極電圧とする。
【0031】
図2に各発光位置41〜415に印加される電圧値の一例を示す。図2では、陽極電圧印加部13が各陽極ライン21〜25の両端に30Vの陽極電圧を印加し、陰極電圧印加部14が各陰極ライン31〜33の両端に10Vの陰極電圧を印加する例を示す。
【0032】
図2の各発光位置41〜415の上段に、各発光位置41〜415に印加される補正前の実効電圧を示す。補正前というのは、本実施形態による電圧の補正を行わなかった場合という意味である。図2の各発光位置41〜415の上段に示すように、陽極ライン21〜25と陰極ライン31〜33とが交差する発光位置41〜415が陽極ライン21〜25および陰極ライン31〜33の各電圧入力端から離れるほど、陽極ライン21〜25および陰極ライン31〜33での降下電圧が大きくなるため、その発光位置に実際に印加される実効電圧は小さくなる。
【0033】
各陽極ライン21〜25の補正電圧の例を図2の上部の点線の四角形内に、各陰極ライン31〜33の補正電圧の例を図2の左部の点線の四角形内にそれぞれ示す。
【0034】
また、図2の各発光位置41〜415の下段に、各発光位置41〜415に印加される補正後の実効電圧を示す。補正後というのは、本実施形態による電圧の補正を行なった場合という意味である。図2の各発光位置41〜415の下段に示すように、各発光位置41〜415に印加される補正後の実効電圧は全ての発光位置で同一になっている。
【0035】
また、本実施形態の有機EL照明装置1では、例えば、陽極ライン21〜25での電圧降下が最も大きい陰極ラインに印加すべき電圧を基準電圧とし、その基準電圧を基に他の陰極電圧および陽極電圧を生成してもよい。
【0036】
また、陽極ライン21〜25と陰極ライン31〜33に印加する電圧として、有機ELパネル12の個体差による電圧降下のばらつきを考慮し、有機ELパネル12ごとに異なる値が設定できるように調整値を可変にしておいてもよい。
【0037】
また、本実施形態の有機EL照明装置1では、陽極ライン21〜25と陰極ライン31〜33に印加する電圧を調整することにより、各発光位置41〜415に印加される電圧を均一にして輝度むらの発生を抑制する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、陽極ライン21〜25と陰極ライン31〜33に流れる電流の大きさを調整することにより、各発光位置41〜415の有機EL層に流れる電流の大きさを均一にして輝度むらの発生を抑制してもよい。
【0038】
図3に、第1の実施形態の変形例として、陽極ラインおよび陰極ラインの一端から電圧を印加する場合の発光位置41〜415に印加される電圧の例を示す。図3では、陽極電圧印加部13が各陽極ライン21〜25の上端に30Vの陽極電圧を印加し、陰極電圧印加部14が各陰極ライン31〜33の左端に10Vの陰極電圧を印加する例を示す。また、図3に示された各値の意味は、図2と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態では、有機EL照明装置1は、有機EL照明装置1は、平行に配置された複数の陽極ライン21〜25と、陽極ライン21〜25と交差するように平行に配置された複数の陰極ライン31〜33とを有している。陽極ライン21〜25と陰極ライン31〜33の各交差部分には発光位置41〜415が存在する。
【0040】
本実施形態では、予め定められた第1の電圧から、各陰極ラインと陽極ライン21〜25のうちのいずれかの陽極ラインとの交差位置とその陽極ラインの電圧入力端との間に生じる降下電圧を減じた電圧を各陰極ラインの電圧入力端に印加する。
【0041】
ある陰極ライン上の発光位置に着目すると、その陰極ラインと各陽極ラインが交差する発光位置と、各陽極ラインの電圧入力端との間に生じる降下電圧は、陽極ラインによらず同じである。そのため、その陰極ラインに印加する陰極電圧を一定の電圧分だけ低くすることにより、各陽極ラインでの降下電圧を等しく相殺することができる。
【0042】
つまり、有機EL照明装置1では、各陰極ライン31〜33に印加する電圧を固定的に定めることができ、動的に変化させる必要はないため、電圧を変化させるための特別な制御回路を必要としない。そのため、有機EL照明装置1は、簡易な構成で、各発光位置41〜415に対する各陽極ライン21〜25での電圧降下の影響を抑制することができる。したがって、有機EL照明装置において、回路規模の増大を抑制しつつ、輝度むらの発生を抑制することができる。
【0043】
また、第1の電圧より高い予め定められた第2の電圧に、各陽極ラインと陰極ライン31〜33のうちのいずれかの陰極ラインとの交差位置とその陰極ラインの電圧入力端との間に生じる降下電圧を加えた電圧を各陽極ラインの電圧入力端に印加する。なお、第1の電圧と第2の電圧は、第2の電圧と第1の電圧の電位差が有機EL層に印加すべき電圧の値となるように設定される。
【0044】
ある陽極ライン上の発光位置に着目すると、その陽極ラインと各陰極ラインが交差する発光位置と各陰極ラインの電圧入力端との間に生じる降下電圧は、陰極ラインによらず同じである。そのため、その陽極ラインに印加する陽極電圧を一定の電圧分だけ高くすることにより、各陰極ラインでの降下電圧を等しく相殺することができる。
【0045】
つまり、有機EL照明装置1では、各陽極ライン21〜25に印加する電圧を固定的に定めることができ、動的に変化させる必要はないため、電圧を変化させるための特別な制御回路を必要としない。そのため、有機EL照明装置1は、簡易な構成で、各発光位置41〜415に対する各陰極ライン31〜33での電圧降下の影響を抑制することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、陰極電圧印加部14と陽極電圧印加部13の両方が、自身が電圧を供給する側の電極ライン(自身側ライン)の電圧入力端に、自身側ではない他方側の複数の電極ライン(他方側ライン)に共通した、その自身側ラインとその他方側ラインが交差する発光位置とその他方側ラインの電圧入力端との間の電気抵抗によって生じる電圧降下分を相殺する固定的な調整を加えた電圧値で電圧を供給するものであった。しかし、本発明がこの構成に限定されるものではない。他の例として、
陰極電圧印加部14と陽極電圧印加部13いずれか一方だけが、自身側ラインの電圧入力端に、複数の他方側ラインに共通した、その自身側ラインとその他方側ラインが交差する発光位置とその他方側ラインの電圧入力端との間の電気抵抗によって生じる電圧降下分を相殺する固定的な調整を加えた電圧値で電圧を供給するものであってもよい。
【0047】
また、本実施形態の有機EL照明装置1では、陽極ライン21〜25と陰極ライン31〜33の各交差部分に配置された各発光位置41〜415に印加する電圧を均一に保つことができるので、この技術を三原色の輝度設定によって色を表現する構成のカラーディスプレイに適用して色度ムラを抑制することもできる。
【0048】
また、本実施形態の有機EL照明装置1では、陽極ライン21〜25と陰極ライン31〜33の各交差部分の発光位置41〜415ごとに印加する電圧を均一に保ち、各発光位置41〜415の輝度および色度を均一に保つ。そのため、有機ELパネル12のサイズが大きくなって、陽極ラインおよび陰極ラインが長くなっても、輝度むらおよび色度むらの発生を抑制することができる。したがって、発光特性を良好に保ちつつ、有機ELパネル12の大型化が可能になる。
【0049】
また、本実施形態によれば、陽極ラインでの電圧降下を相殺し、また陰極ラインでの電圧降下を相殺することができるので、陽極ラインや陰極ラインが長くなっても輝度ムラを抑制することができる。そのため、陽極ライン同士および陰極ライン同士を連結して複数の有機ELパネルにより大型の照明装置やディスプレイを構成することも比較的容易である。
【0050】
また、本実施形態では、陽極電圧印加部13および陰極電圧印加部14が、陽極ラインおよび陰極ラインの両端から電圧を印加する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、陽極電圧印加部13および陰極電圧印加部14は、陽極ラインおよび陰極ラインの一端から電圧を印加するようにしてもよい。電圧降下を相殺するように印加電圧を調整するので、一端から電圧を印加する構成であっても両端から電圧を印加する場合と同様に輝度ムラを防止することができる(図3参照)。
【0051】
(第2の実施形態)
有機ELパネルは液晶ディスプレイのバックライトにも適用される。液晶ディスプレイには、コントラストを高めるために所定領域ごとに輝度を制御する機能を有するものがある。その制御に対して、第1の実施形態と同様の陽極ライン21〜25や陰極ライン31〜33での電圧降下分の固定的な調整を加えれば、有機ELパネル12の全領域に対して領域によらず所望の制御を行うことができる。
【0052】
そこで、第2の実施形態では、所定領域ごとに発光を制御する構成の有機EL照明装置に本発明を適用した場合の例について説明する。
【0053】
図4は本発明の第2の実施形態の有機EL照明装置の構成を示すブロック図である。
【0054】
図4に示すように、本実施形態の有機EL照明装置1は、第1の実施形態の有機EL照明装置の構成に加えて、制御部11を有する。
【0055】
本実施形態の陽極電圧印加部13は、制御部11からの制御に対して第一の実施形態と同様の固定的な調整を加えて得た電圧を各陽極ラインに印加する。具体的には、陽極電圧を印加する陽極ラインを指定する電圧印加信号が制御部11から入力されると、その電圧印加信号で指定された陽極ラインの電圧入力端に、調整した陽極電圧を印加する。
【0056】
本実施形態の陰極電圧印加部14は、制御部11からの制御に従って各陰極ラインに陰極電圧を印加する。具体的には、陰極電圧を印加する陰極ラインを指定する電圧印加信号が制御部11から入力されると、その電圧印加信号で指定された陰極ラインの電圧入力端に、調整した陰極電圧を印加する。
【0057】
制御部11は、陽極電圧印加部13に電圧印加信号を出力することにより、陽極電圧印加部13に、陽極ライン21〜25に陽極電圧を印加させる。同様に、制御部11は、陰極電圧印加部14に電圧印加信号を出力することにより、陰極電圧印加部14に、陰極ライン31〜33に陰極電圧を印加させる。
【0058】
また、制御部11は、陰極電圧印加部14に陰極電圧を印加させる陰極ライン31〜33を時分割に切り替え、その切り替えたタイミングに同期して、陰極電圧が印加された陰極ラインに沿った発光位置のうち、発光させるべき発光位置でその陰極ラインと交差する陽極ラインにのみ陽極電圧印加部13に陽極電圧を印加させる。
【0059】
ここでは、制御部11から指示された陽極電圧および陰極電圧を陽極電圧印加部13および陰極電圧印加部14で調整する構成例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。他の構成例として、制御部11から、補正後の陽極電圧および陰極電圧を陽極電圧印加部13および陰極電圧印加部14に指示することにしてもよい。その場合、陽極電圧印加部13および陰極電圧印加部14での電圧調整は不要となる。
【0060】
また、陰極ライン31〜33を切り替える順序は、どのような順序でもよく、例えば、上から下や、下から上に向かって順次切り替えてもよいし、ランダムに切り替えてもよい。更に、複数のラインを同時に選択して電圧を印加することにより、複数の発光位置を同時に発光させてもよい。
【0061】
図5に、液晶ディスプレイにおいて所定領域ごとに発光を制御したときの模式図を示す。
【0062】
なお、有機ELパネルの領域を細分化するほど、液晶ディスプレイの画質は向上する。しかし、細分化すればするほど制御は複雑なものになり、コストアップの要因となる。
【0063】
有機ELパネルの分割単位と液晶ディスプレイの画質との関係について評価した結果によれば、水平方向に20行、垂直方向に25列程度に分割すれば、液晶ディスプレイの画質を十分に向上できる。また、有機ELパネルを水平方向に20行、垂直方向に25列の領域に分割して、その領域ごとに発光を制御するようにしても、有機EL照明装置のコストにも大きな影響を与えないという評価結果も得られ、また、その場合でも十分な輝度および寿命を確保できるという評価結果も得られている。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、陽極ライン21〜25および陰極ライン31〜33での電圧降下を相殺しつつ、有機ELパネル12に配置された発光位置41〜415ごとに発光を制御できる。したがって、有機EL照明装置1を液晶ディスプレイのバックライトに適用した場合、所定領域ごとに輝度を制御することができる。これにより、部分的なパターン点灯や部分的なコントラストの調整が可能となる。
【0065】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、複数の有機ELパネルを用いた有機EL照明装置において、各有機ELパネルの輝度を均一に保つ例について説明する。
【0066】
図6は本発明の第3の実施形態の有機EL照明装置の構成を示すブロック図である。
【0067】
図6に示すように、本実施形態の有機EL照明装置10は、陽極電圧印加部13、陰極電圧印加部14、複数の陽極ライン群201〜205、複数の陰極ライン群301〜303および複数の有機ELパネル51〜515を有する。
【0068】
有機ELパネル51〜515のそれぞれは第1の実施形態の有機ELパネル12と同様の構成である。有機ELパネル51〜515の陽極ライン群201〜205の陽極ライン同士、陰極ライン群301〜303の陰極ライン同士を連結して縦横に大きな有機EL照明装置10が実現されている。複数の有機ELパネル51〜515からなる部分は、陽極電圧印加部13および陰極電圧印加部14から見ると、1つの有機ELパネルと見ることができる。また、連結した陽極ラインを1本の陽極ラインと、連結した陰極ラインを1本の陰極ラインと見ることができる。
【0069】
陽極電圧印加部13はそれぞれの陽極ラインについて第1の実施形態と同様に印加電圧を固定的に調整すればよく、陰極電圧印加部14はそれぞれの陰極ラインについて第1の実施形態と同様に印加電圧を固定的に調整すればよい。
【符号の説明】
【0070】
1 有機EL照明装置
10 有機EL照明装置
11 制御部
12、5 有機ELパネル
13 陽極電圧印加部
14 陰極電圧印加部
20 陽極ライン群
2 陽極ライン
30 陰極ライン群
3 陰極ライン
4 発光位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクスをなす複数の発光位置から光を発する有機EL照明装置であって、
陰極電圧入力端を有し、長手方向が第一の方向である、互いに平行に配置された複数の陰極ラインを有する陰極ライン群と、陽極電圧入力端を有し、長手方向が前記第一の方向と交差する第二の方向である、互いに平行に配置された複数の陽極ラインを有する陽極ライン群と、前記陽極ライン群と前記陰極ライン群に挟まれた有機EL層と、を有する有機EL発光部と、
それぞれの前記陰極ラインの陰極電圧入力端に電圧を供給する陰極電圧印加手段と、
それぞれの前記陽極ラインの陽極電圧入力端に電圧を供給する陽極電圧印加手段と、を有し、
前記陰極電圧印加手段と前記陽極電圧印加手段の少なくとも一方は、自身が電圧を供給する自身側ラインの電圧入力端に、前記自身側ラインではない複数の他方側ラインに共通した、該自身側ラインと該他方側ラインが交差する発光位置と該他方側ラインの電圧入力端との間の電気抵抗によって生じる電圧降下分を相殺する固定的な調整を加えた電圧値で電圧を供給する、有機EL照明装置。
【請求項2】
前記陰極電圧印加手段は、それぞれの前記陰極ラインの前記陰極電圧入力端に、予め定められた第一の電圧値から、複数の前記陽極ラインに共通した、該陰極ラインと該陽極ラインが交差する発光位置と該陽極ラインの前記陽極電圧入力端との間の電気抵抗によって生じる電圧降下分を減算した電圧値で電圧を供給する、請求項1に記載の有機EL照明装置。
【請求項3】
前記陰極電圧印加手段がそれぞれの前記陰極ラインの前記陰極電圧入力端に供給する電圧値は、それぞれの該陰極ライン毎に定まる固定値である、請求項2に記載の有機EL照明装置。
【請求項4】
前記陽極電圧印加手段は、それぞれの前記陽極ラインの前記陽極電圧入力端に、予め定められた第二の電圧値に、複数の前記陰極ラインに共通した、該陽極ラインと該陰極ラインが交差する発光位置と該陰極ラインの前記陰極電圧入力端との間の電気抵抗によって生じる電圧降下分を加算した電圧値で電圧を供給する、請求項1から3のいずれか一項に記載の有機EL照明装置。
【請求項5】
前記陽極電圧印加手段がそれぞれの前記陽極ラインの前記陽極電圧入力端に供給する電圧値は、それぞれの該陽極ライン毎に定まる固定値である、請求項4に記載の有機EL照明装置。
【請求項6】
前記陰極電圧印加手段に電圧を供給させる陰極ラインと前記陽極電圧印加手段に電圧を供給させる陽極ラインとを選択することにより、前記陰極ラインと前記陽極ラインが交差する各発光位置の発光を制御する制御手段を更に有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の有機EL照明装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記陰極ラインを順次選択しつつ前記陽極ラインを順次選択することにより、発光させる発光位置を時間分割で走査する、請求項6のいずれか一項に記載の有機EL照明装置。
【請求項8】
前記陰極電圧入力端は該陰極ラインの一方の端部であり、前記陽極電圧入力端は該陽極ラインの一方の端部である、請求項1から7のいずれか一項に記載の有機EL照明装置。
【請求項9】
前記有機EL発光部は、前記陰極ライン群と前記陽極ライン群と前記有機EL層とを有する複数の有機ELパネルを含み、複数の該有機ELパネルが、前記陰極ライン群同士を接続し、前記陽極ライン群同士を接続することにより連結されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の有機EL照明装置。
【請求項10】
陰極電圧入力端を有し、長手方向が第一の方向である、互いに平行に配置された複数の陰極ラインを有する陰極ライン群と、陽極電圧入力端を有し、長手方向が前記第一の方向と交差する第二の方向である、互いに平行に配置された複数の陽極ラインを有する陽極ライン群と、前記陽極ライン群と前記陰極ライン群に挟まれた有機EL発光体と、を有する有機EL照明装置の給電方法において、
前記陰極ラインと前記陽極ラインのうち少なくとも一方の電圧入力端に、自身側ラインではない複数の他方側ラインに共通した、該自身側ラインと該他方側ラインが交差する発光位置と該他方側ラインの電圧入力端との間の電気抵抗によって生じる電圧降下分を相殺する固定的な調整を加えた電圧値で電圧を供給することを特徴とする給電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−4419(P2012−4419A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139327(P2010−139327)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】