説明

有機EL表示装置およびその製造方法

【課題】内在するガス等の排出が簡単かつ高精度に実現でき、信頼性に優れた有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】基板1上に層間絶縁膜22や複数の第1電極23、有機EL層24、エッジカバー25が形成され、これらを覆うように第2電極26が形成されている。エッジカバー25は、少なくとも有機EL層24よりも上側に突出する複数の凸部82を有している。凸部82の先端を覆っている第2電極26の部分の少なくとも一部に貫通孔31が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置に関し、その中でも特に表面側に位置する電極の細部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(ディスプレイ)は、電圧の印加により自発光する有機EL素子を利用した表示装置である。バックライトを必要としないことから、消費電力の低下や軽量化、薄型化に有利なため、近年、携帯端末や薄型TVなどの分野での開発が期待されている。
【0003】
特に、一つ一つの画素に駆動素子を設けて画素ごとに発光を制御するアクティブマトリクス方式の有機EL表示装置は、単純マトリクス方式のものと比べて高輝度、低電力が実現できることから、注目されつつある。
【0004】
しかしながら、アクティブマトリクス方式の場合、内部で発生するガスや水分の影響で輝度が低下し、長期信頼性の確保が難しいという問題がある。
【0005】
例えば、図1に、この種の有機EL表示装置の要部を示す。図中、101はガラス基板であり、102はTFT(thin film transistor)、103は層間膜、104は陽電極、105は有機発光材料を含む有機EL層、106は画素間に設けられるエッジカバー、107は陰電極である。層間膜103およびエッジカバー106はアクリル樹脂等で形成されている。
【0006】
アクリル樹脂等には水やガスの発生成分が含まれているため、層間膜103やエッジカバー106の成形後に乾燥が不十分な状態で陰電極107を積層してしまうと、その後に層間膜103等から発生するガスや水分は、陰電極107によって遮断され、透過できずに陰電極107とガラス基板101との間に滞る。滞ったガス等は、矢印線で示すように有機EL層105に作用して、有機発光材料の劣化を促進し、その結果、輝度が低下して有機EL表示装置の長期信頼性が確保できなくなる。
【0007】
そこで、層間膜等から発生するガス等を除去するために、様々な提案が行われている(特許文献1〜3)。
【0008】
例えば、特許文献1や特許文献2では、陰電極で被覆する前に個々の画素や全画素の周りに樹脂製の平坦膜を露出させ、その状態で脱水処理を行うことが提案されている。
【0009】
また、特許文献3では、陰電極の一部に平坦化膜に到達する開口部を形成し、そこから内部の水分が放出できるようにしている。その開口部を形成する方法として、陰電極の形成時にエッチング等により除去して形成する方法や、陰電極の形成後に針を用いて形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−250244号公報
【特許文献2】特開2007−294413号公報
【特許文献3】特開2005−141960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1や特許文献2の場合、製造時に平坦膜の脱水を促進させることはできるが、いったん陰電極で被覆してしまうとその後に発生するガス等は除去できない。従って、脱水処理で確実にガス等を除去することが要求され、脱水処理が難しくなるし信頼性に欠けるきらいがある。
【0012】
その点、特許文献3の場合、陰電極を形成した後にも内部で発生するガス等を除去できるので、脱水処理で確実にガス等を除去する必要がなくなり、作業負担が軽減されるし信頼性も向上する。
【0013】
しかし、エッチング等によって陰電極の所定位置に逆テーパーを利用した開口部を形成するのは高い精度が要求され、作業工数の増加や余計な不良品の発生を招くおそれがある。
【0014】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内在するガス等の排出が簡単かつ高精度に実現でき、信頼性に優れた有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明では、表面を覆う電極の所定部位を突出させ、そこに貫通孔を形成した。
【0016】
具体的には、本発明は、基板と、前記基板の上に形成される絶縁膜と、前記絶縁膜の上に互いに隙間を隔てて格子状に区画形成される複数の第1電極と、少なくとも前記第1電極の上に形成される有機EL層と、前記隙間を覆うように設けられる絶縁部と、前記有機EL層及び前記絶縁部を覆うように形成される第2電極と、を備え、前記絶縁部が、前記第1電極の上に形成される前記有機EL層よりも上側に突出する複数の凸部を有し、前記凸部の先端を覆っている前記第2電極の部分の少なくとも一部に貫通孔が形成されている有機EL表示装置である。
【0017】
係る構成の有機EL表示装置によれば、有機EL層の上側に形成される膜は剥離され易くなるが、絶縁部の凸部が、第1電極の上に形成される、主たる有機EL層よりも上側に突出しているため、その有機EL層に影響を与えずに、凸部の先端を覆っている第2電極の部分に対して容易に外力を加えることができる。しかも、凸部の先端であれば、外力が小さくても容易に第2電極を変形させることができる。
【0018】
また、一般には、凸部を含めた絶縁部の上にも有機EL層の一部あるいは全部が形成されるため、その場合には、更に容易に第2電極を変形させることができる。本構成であれば、凸部は順テーパー構造でもよいため、絶縁部の材料に一般に利用されている材料が流用でき、特別な材料を用いて逆テーパー構造を形成する必要もない。
【0019】
従って、第2電極の所定部位に、簡単かつ高精度に複数の貫通孔を形成することができる。
【0020】
そのようにして、絶縁部を露出させる複数の貫通孔が第2電極に形成されていれば、第2電極の形成後に絶縁膜や絶縁部にガス等の発生成分が残存していても、貫通孔を通じてガス等を外部に排出することができ、内在するガス等の影響による有機発光材料の劣化を軽減できる。従って、輝度の低下が抑制されるため、有機EL表示装置の長期信頼性を向上させることができる。
【0021】
前記複数の凸部のそれぞれの先端部分に、先端に向かって次第に細くなる先窄まり部が設けられているのが好ましい。
【0022】
そうすれば、凸部の先端を覆う第2電極の部分によりいっそう貫通孔が形成し易くなる。
【0023】
前記複数の凸部のそれぞれは、前記隙間に沿って延びる線状に形成することができる。
【0024】
そうすれば、貫通孔を線状に開口させることができるため、開口率が大きくなって、ガス等の排出を促進することができ、更に有機EL表示装置の長期信頼性を向上させることができる。
【0025】
前記貫通孔は前記第2電極を破断することによって形成し、前記第2電極の前記貫通孔の周辺部分に破断形状部が形成されているようにすればよい。つまり、第2電極の形成後に、凸部を覆っている第2電極の部分に外力を加えて破壊するのである。そうすれば、凸部をうまく利用して一度に複数の貫通孔を精度高く形成することができる。
【0026】
このような形態の有機EL表示装置は、例えば、平らな接触面を有する電極破断具を用い、前記第2電極の形成後に前記接触面を前記第2電極に接触させることにより、前記凸部の先端を覆っている第2電極の部分を破断させる工程を含む製造方法によって容易に実現することができる。
【0027】
すなわち、電極破壊具の平らな接触面を第2電極に接触させることで、凸部の先端を覆っている第2電極の部分に満遍なく均等な外力を加えて破断させることができる。従って、一度に複数の貫通孔を精度高く形成することができる。
【0028】
特に、前記接触面には粘着性を有する層を形成するのが好ましい。
【0029】
そうすれば、凸部の先端を覆っている第2電極の部分を電極破断具で引き剥がすことができるため、より安定して複数の貫通孔を精度高く形成することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、表面を覆う電極の所定部位に、容易に精度高く複数の貫通孔が形成できるようになるため、内在するガス等の排出が促進でき、信頼性に優れた有機EL表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来の有機EL表示装置の要部を示す概略断面図である。
【図2】本実施形態の有機EL表示装置の概略斜視図である。
【図3】図2における矢印X方向から見た概略断面図である。
【図4】有機EL層及び第2電極の形成前の、図2における矢印Y方向から見た概略平面図である。
【図5】有機EL層の概略断面図である。
【図6】破断工程の説明図である。(a)〜(c)はそれぞれ異なる段階を示している。
【図7】変形例の有機EL表示装置の図3相当図である。
【図8】変形例の破断工程の説明図である。(a)〜(c)はそれぞれ異なる段階を示している。
【図9】変形例の凸部を示す図4相当図である。
【図10】変形例の凸部を示す図4相当図である。
【図11】変形例の凸部を示す図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0033】
(有機EL表示装置の構造)
図2に、本実施形態の有機EL表示装置の要部を示す。この有機EL表示装置は、基板側から発光を取り出すボトムエミッション構造となっており、基板1と、基板1の一方(便宜上、この方向を「上」とする)の面に積層された複数の薄膜からなる薄膜層2とを備えている。薄膜層2には、電圧を印加すると自発光する有機EL素子や駆動回路などが設けられている。基板1の上面には、画素を構成する有機EL素子が格子状に配列されていて、駆動回路で各有機EL素子を電気的に制御することにより、有機EL表示装置は画像表示が可能となっている。なお、薄膜層2の上側には、通常、樹脂膜やガラス板等の封止部材が配設されるが、ここでは便宜上省略している。
【0034】
図3は、有機EL表示装置の要部の断面構造を示しており、薄膜層2には、TFT21や層間絶縁膜22、第1電極23、有機EL層24、エッジカバー25(絶縁部)、第2電極26などが設けられている。
【0035】
本実施形態の有機EL表示装置はボトムエミッション構造であるため、基板1には透光性を有するガラス基板が用いられている。ただし、ガラス基板に限らず、PET等のプラスチック基板であってもよい。また、発光を基板の上面側から取り出すトップエミッション型の場合、基板1に透光性は必要とされないため、シリコンウェハー等の半導体基板や絶縁処理した金属基板を用いることもできる。
【0036】
基板1の上には、複数のTFT(thin film transistor)21,21,…が形成されている。本実施形態のTFT21は、公知の材料、形成方法により形成されている。
【0037】
層間絶縁膜22は、TFT21を被覆するように形成されている。本実施形態の層間絶縁膜22は、上面の凹凸を軽減させる平坦化膜としての機能も兼ねており、窒化シリコン膜とアクリル樹脂からなる樹脂膜とを積層することによって構成されている。層間絶縁膜22には、TFT21のソース領域やドレイン領域に通ずるコンタクトホール28が形成されている。なお、樹脂膜には、アクリル樹脂に限らず、ポリイミド系、ノボラック系の樹脂を用いてもよい。
【0038】
第1電極23は、透光性を有するITO等の公知の電極材料を用いて層間絶縁膜22の上にパターン化されている。具体的には、図4に示すように、基板1を上面側から見たとき、矩形に形成された複数の第1電極23,23,…が互いに隙間を隔てて格子状に区画形成されている。本実施形態の第1電極23は、陽極とされ、層間絶縁膜22に設けられたコンタクトホール28を介してTFT21のドレイン電極等と接続されている。
【0039】
エッジカバー25は、リークを防止するために、互いに隣接する第1電極23と第1電極23との隙間を覆うように設けられている。エッジカバー25は、図3に示すように、第1電極23の上面よりも上側に隆起し、隙間に沿って延びる畝形状に形成されている。第2電極26の断線を防止するため、エッジカバー25の側面25aは、基板1に対する傾斜角が90°を超えないように形成されている(順テーパー形状)。本実施形態のエッジカバー25は、樹脂層と同じアクリル樹脂で形成されているが、ポリイミド系、ノボラック系の樹脂で形成してあってもよい。
【0040】
エッジカバー25には、第1電極23の上に形成された有機EL層24よりも上側に先端部分が突出する複数の凸部30,30,…が形成されている。本実施形態の各凸部30は、点状に形成されていて、図4に示すように、互いに隣接する一方の第1電極23の辺と他方の第1電極23の辺との間に形成されている。各凸部30の先端部分には、先端に向かって次第に細くなる先窄まり部30aが設けられている。
【0041】
有機EL層24は、積層された複数の薄膜層2からなり、各第1電極23の上に積層形成されている。有機EL層24の構成は特に限定しないが、本実施形態の有機EL層24は、図5に示すように、下側から順に正孔輸送層41、有機発光層42、バッファ層43、電子輸送層44、電子注入層45で構成されている。有機発光層42には、電圧の印加によって自発光する有機発光材料が含まれている。
【0042】
なお、有機EL層24は、一般に、エッジカバー25の上にもその一部、あるいは全部が蒸着して形成される場合が多いが、本実施形態では、主体となる、第1電極23の上に形成される有機EL層24のみを表してある。
【0043】
第2電極26は、各有機EL層24やエッジカバー25を覆うように形成されている。本実施形態の第2電極26は、第1電極23と対になるように陰極とされ、ボトムエミッション構造であることから比較的厚みの大きいアルミニウム(Al)膜で形成されている。
【0044】
第2電極26のうち、各凸部30の先端を覆っている部分(突出被覆部26aともいう)の少なくとも一部には、第2電極26の内外面を貫通する貫通孔31が形成されている。詳細は後述するが、貫通孔31は突出被覆部26aを破断することによって形成されており、貫通孔31の周辺には破断痕を有する破断形状部31aが形成されている。
【0045】
このように、本実施形態の有機EL表示装置には、第2電極26にエッジカバー25を露出させる多数の貫通孔31,31,…が形成されているため、第2電極26の形成後に層間絶縁膜22やエッジカバー25にガス等の発生成分が残存していても、貫通孔31を通じてガス等を薄膜層2の外部に排出することができる。従って、薄膜層2に内在するガス等の影響で有機発光材料が劣化するのを軽減できるため、輝度の低下が抑制され、有機EL表示装置の長期信頼性を向上させることができる。
【0046】
(有機EL表示装置の製造方法)
本実施形態の有機EL表示装置は、例えば、次に示すようにガラス基板1の上に順次各薄膜を積層等することにより製造することができる。
【0047】
具体的には、ガラス基板1の上面に、プラズマCVD法によりシリコン半導体膜を形成し、結晶化処理を施して多結晶シリコン半導体膜を形成する。続いて、多結晶シリコン半導体膜をエッチング処理し、複数の島状パターンを形成する。これら島状パターンの多結晶シリコン半導体膜の上にゲート絶縁膜及びゲート電極層を順次形成し、エッチング処理によってパターニングを行う。続いて、ドーピングにより、多結晶シリコン半導体膜の各島状パターンにソース領域及びドレイン領域を形成し、複数のTFT21,21,…を形成する(TFT形成工程)。
【0048】
続いて、プラズマCVD法で窒化シリコン膜を形成し、スピンコーターで樹脂層を形成する(層間絶縁膜形成工程)。具体的には、まず、窒化シリコンの薄膜からなる窒化シリコン膜を形成した後、エッチングによってゲート絶縁膜と窒化シリコン膜とに、ソース領域やドレイン領域に通ずるコンタクトホール28を形成する。そして、ソース配線を形成し、その後、平坦化膜としての機能を付与するために、アクリル樹脂からなる樹脂膜を形成する。樹脂膜の形成後、ゲート絶縁膜等に穿孔したコンタクトホール28と通ずるように樹脂膜にもコンタクトホール28を形成する。
【0049】
次に、所定の厚さでITOを成膜し、パターニングして第1電極23を形成する(第1電極形成工程)。
【0050】
第1電極23の形成後、エッジカバー25と凸部30とを形成する(エッジカバー形成工程)。具体的には、まず、第1電極23等が形成されたガラス基板1の上面に、コーターにて感光剤を含むアクリル樹脂を塗布して樹脂層を形成する。その後、フォトリソグラフィにてパターン化を行うが、その際、凸部30を形成する部分とその他の部分とで露光量に差をつけて露光を行う。詳しくは、凸部30を形成する部分の露光量が小さくなるようにする。その後、現像を行って樹脂層の所定部分を除去すれば、一度にエッジカバー25と凸部30とを形成することができる。なお、露光量に差をつけて露光する方法としては、例えば、異なるマスクを用いて露光を複数回に分けて行う方法や、所定部位の開口度合を異ならせたマスクを用いて露光を一回で行う方法などがある。
【0051】
その後、エッジカバー25等が形成された基板1の洗浄を行い、UVオゾン処理によって表面に付着した塵埃を取り除いた後、真空ベーク(200℃、1.0×10−4Pa、3h)、窒素雰囲気下ベーク(200℃、2h)を順次行う(ベーク工程)。
【0052】
放冷後、有機EL層24を形成する(有機EL層形成工程)。具体的には、まず、α-NPDを真空蒸着法により蒸着して正孔輸送層41を100nmの膜厚で形成する(蒸着速度設定:1Å/sec)。そして、ホストとしてのCBPと、ドーパントとしてのIr(ppy)とを、30nmの膜厚となるように真空下で共蒸着することにより有機発光層42を形成する(蒸着速度設定は、CBP:1Å/sec、Ir(ppy):0.1Å/sec)。次に、BCPを蒸着してバッファ層43を10nmの膜厚で形成し(蒸着速度設定:1Å/sec)、Alq3を蒸着して電子輸送層44を30nmの膜厚で形成し(蒸着速度設定:1Å/sec)、LiFを真空蒸着法により蒸着して電子注入層45を0.5nmの膜厚で形成する(蒸着速度設定:1Å/sec)。
【0053】
有機EL層24の形成後、第2電極26としてAl膜を100nmの膜厚で形成する(第2電極形成工程)。
【0054】
従来の製造方法であれば、その後、薄膜層2が形成された基板1の上面を封止膜などで被覆等すれば有機EL表示装置の完成となるが、本実施形態では、その前に、第2電極26の所定部位を破断してエッジカバー25の一部を露出させる工程が設けられている(破断工程)。
【0055】
具体的には、図6に示すように、金属板に粘着性を有するシートを被せることによって表面に粘着層52が形成された冶具51(電極破断具)を用意する。粘着層52が形成された冶具51の表面(接触面51a)は、高い平面度を有するように形成されていて、少なくとも凸部30の突出量に比べて十分に表面の凹凸が無視できる程度の平面となっている。なお、粘着層52の厚みは凸部30の突出量よりも小さく設定しておくのが好ましい。より精度高く破断処理が行えるからである。
【0056】
窒素雰囲気下で、図6の(a)に示すように、冶具51の表面を基板1に対して平行に支持し、その状態を保持しながら、冶具51の表面が第2電極26の各突出被覆部26aにのみ接触するように冶具51を基板1の上面側に軽く接触させる。そうすると、同図の(b)に示すように、粘着層52は各突出被覆部26aに粘着する。その後、同図の(c)に示すように、冶具51を引き上げれば、各突出被覆部26aの一部が粘着層52に付着して破断するため、第2電極26に多数の貫通孔31,31,…を一度に簡単に形成することができる。
【0057】
その後は、例えば、乾燥材を貼り付けた封止部材(キャップ材)等で薄膜層2を封止すればよい(封止工程)。
【0058】
(性能評価)
本実施形態の有機EL表示装置の性能を評価するために、破断処理が行なわれて貫通孔31が形成されたもの(実施例)と、破断処理が行われずに貫通孔31が形成されていないもの(比較例)とについて、同じ条件下で連続点灯させる比較試験を行った。
【0059】
その結果、比較例品では、試験開始後1週間で画素周辺部に暗い(シュリンク)部分が確認されたが、実施例品では確認されなかった。
【0060】
−有機EL表示装置の変形例−
上述した実施形態では、ボトムエミッション構造の場合を示したが、トップエミッション構造であってもかまわない。
【0061】
例えば、図7に示すように、上記実施形態の第2電極26に代えて、膜厚の薄いAl膜61aと透光性を有するSiN等の無機膜61bとで第2電極26Aを形成すればよい。
【0062】
具体的には、上記実施形態と同様の一連の工程により薄膜層2を形成し、第2電極形成工程において、Al膜61aを20nmの膜厚で形成し、続いてSiNの無機膜61bを100nmの膜厚で形成する。その後、上記実施形態と同様に破断工程を行って、第2電極26Aの突出被覆部26aの部分を引き剥がし、貫通孔31を形成させる。
【0063】
次に、封止部材として、いずれも熱硬化性の樹脂からなる、乾燥機能を有する乾燥材添加樹脂と、封止樹脂とを用意する。そして、基板1の上面の周辺を囲むように封止樹脂を塗布し、その中に、乾燥材添加樹脂を流し入れて薄膜層2を被覆した後、加熱して熱硬化させる(封止工程)。
【0064】
この場合でも、性能評価を行ったところ、実施例品(貫通孔31が形成されている)は、比較例品(貫通孔31が形成されていない)と比べて画素劣化(輝度劣化)が起こり難く、優位性を確認することができた。
【0065】
−破断工程の変形例−
破断工程は、突出被覆部26aを剥離して破断させるのではなく、物理的な衝撃によって破断させることもできる。
【0066】
すなわち、図8に示すように、平面度の高い大型の硬質な平板71を用意し、水平に設置する。そして、第2電極形成工程の後、薄膜層2が形成された基板1の薄膜層2側を下に向けた状態で、基板1を平板71の上面に対して平行に支持し、その状態を保持しながら、同図の(a)に示すように基板1の自重を利用して下降させ、同図の(b)に示すように平板71に基板1の全面を衝突させる。
【0067】
そうすると、第2電極26の各突出被覆部26aが平板71と衝突し、その衝撃により各突出被覆部26aが破断される。各突出被覆部26aと凸部30とでは硬度に差があり、比較的容易に破断させることができる。特に、凸部30に有機EL層24が蒸着していると、より容易に破断させることができる。その後、同図の(c)に示すように、平行状態を保持しながら基板1を上昇させれば、第2電極26に多数の貫通孔31,31,…を一度に簡単に形成することができる。
【0068】
(性能評価)
本変形例の有機EL表示装置の性能を評価するために、衝撃による破断処理が行なわれて貫通孔31が形成されたもの(実施例)と、破断処理が行われずに貫通孔31が形成されていないもの(比較例)とについて、同じ条件下で連続点灯させる比較試験を行った。
【0069】
実施例品では、全ての突出被覆部26aに貫通孔31を形成することができず、部分的に貫通孔31の無い突出被覆部26aが残存していたが、それでも、比較例品と比べて実施例品の画素劣化の優位性を確認することができた。
【0070】
−凸部の変形例−
凸部の形態は必要に応じて適宜変更できる。
【0071】
例えば、図9にその1つを示す。この変形例では、上記実施形態と同様の形態の凸部30が、4つの第1電極23,…,23の互いに隣接する隅部の間の部分に形成されている。この場合、凸部30を各第1電極23から離れて形成することができるので、凸部30や貫通孔31の形成によって有機EL素子本来の機能が損なわれるのを信頼性をもって阻止できる。また、凸部30を相対的に大きく形成することができる点でも有利である。このように、第1電極23の近傍であれば凸部30の配置や大きさは任意に設定できる。
【0072】
また、凸部の形状は点状に限らず、隙間に沿って延びる線状に形成することができる。例えば、図10に示すように、互いに隣接する一方の第1電極23の長辺と他方の第1電極23の長辺との間に、略平行に並ぶ一群の凸部30A,30A,…を形成することができる。各凸部30Aの先端部分には、先端に向かって次第に幅が狭くなる先窄まり部30aが設けられている。
【0073】
この場合、破断工程で第2電極26を破断させると、突出被覆部26aに沿って線状に破断されるため、隙間に沿って延びる細長い貫通孔31が形成される。
【0074】
線状の貫通孔31であれば、点状の貫通孔31に比べて開口率が大きくなるため、それだけガス等の排出効果が期待できる。また、個々の凸部30Aを略平行に形成した場合、破断工程において、冶具51の粘着層52を突出被覆部26aに接触させた後、凸部30Aの一方の端部側から捲るようにして冶具51を取り外すことで、突出被覆部26aを効率よく引き剥がすことができ、精度高く貫通孔31を形成することができる利点がある。
【0075】
なお、凸部30Aは第1電極23の短辺側に形成することや、短辺と長辺の両側に形成することもできる。
【0076】
更に、必ずしも1画素単位で凸部を形成する必要はなく、数画素単位で凸部を形成してあってもよい。
【0077】
例えば、図11に示すように、複数の第1電極23,23,…にわたる隙間の部分に沿って線状に延びるように複数の凸部30B,30B,…を形成することができる。そうすれば、開口率を変えずに凸部30Bの個数を減らすことができる。この場合でも、個々の凸部30Bが略平行に並ぶように形成すれば、より精度高く貫通孔31を形成することができる。また、各凸部30Bを互い違いに配置しておけば、凸部30Bの個数が減少してもバランスよくガス等を排出させることができ、輝度劣化が部分的に生じるのを効果的に抑制することができるので、より信頼性を向上させることができる。
【0078】
なお、本発明にかかる有機EL表示装置は、前記の実施の形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0079】
例えば、破断工程では、突出被覆部26aを削ることによって破断してもよい。具体的には、表面に研磨可能な研磨層が形成された平板を用意し、平板と平行に基板1を支持して研磨層に第2電極26の突出被覆部26aを接触させる。そして、基板1と平板とを擦り合わせて突出被覆部26aを削り取ればよい。
【符号の説明】
【0080】
1 基板
2 薄膜層
21 TFT
22 層間絶縁膜
23 第1電極
24 有機EL層
25 エッジカバー(絶縁部)
26 第2電極
30 凸部
30a 先窄まり部
31 貫通孔
31a 破断形状部
51 冶具(電極破断具)
51a 接触面
52 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に形成される絶縁膜と、
前記絶縁膜の上に互いに隙間を隔てて格子状に区画形成される複数の第1電極と、
少なくとも前記第1電極の上に形成される有機EL層と、
前記隙間を覆うように設けられる絶縁部と、
前記有機EL層及び前記絶縁部を覆うように形成される第2電極と、
を備え、
前記絶縁部が、前記第1電極の上に形成される前記有機EL層よりも上側に突出する複数の凸部を有し、
前記凸部の先端を覆っている前記第2電極の部分の少なくとも一部に貫通孔が形成されている有機EL表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL表示装置であって、
前記複数の凸部のそれぞれの先端部分に、先端に向かって次第に細くなる先窄まり部が設けられている有機EL表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の有機EL表示装置であって、
前記複数の凸部のそれぞれが、前記隙間に沿って延びる線状に形成されている有機EL表示装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の有機EL表示装置であって、
前記第2電極の前記貫通孔の周辺部分に破断形状部が形成されている有機EL表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の有機EL表示装置の製造方法であって、
平らな接触面を有する電極破断具を用い、前記第2電極の形成後に前記接触面を前記第2電極に接触させることにより、前記凸部の先端を覆っている第2電極の部分を破断させる工程を含む有機EL表示装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の有機EL表示装置の製造方法であって、
前記接触面に粘着性を有する層が形成されている有機EL表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−14504(P2011−14504A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159946(P2009−159946)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】