説明

有機EL表示装置および電子機器

【課題】有機EL素子の劣化を抑えて信頼性を向上させることが可能な有機EL表示装置、およびそのような有機EL表示装置を備えた電子機器を提供する。
【解決手段】有機EL表示装置1は、基板11上において表示領域110Aから周辺領域110Bへ延伸するように設けられた、下層側の有機絶縁層151および上層側の有機絶縁層152と、有機絶縁層151,152の上において、表示領域110Aから周辺領域110Bの一部にまで延伸するように設けられた有機層160とを備えている。また、表示領域110Aと周辺領域110Bとの間の領域内に形成され、有機絶縁層151を表示領域110A側と周辺領域110B側とに分離する分離溝21と、有機層160の形成領域の外縁側における少なくとも一部の領域に形成され、有機絶縁層151,152のうちの少なくとも有機絶縁層152を除去してなる分離溝22(除去部)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンス(EL;Electro Luminescence)現象を利用して発光する有機EL表示装置、およびそのような有機EL表示装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料のEL現象を利用して発光する有機EL素子は、陽極と陰極との間に有機正孔輸送層や有機発光層を積層させた有機層を設けて構成されており、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。ところが、この有機EL素子を用いた表示装置(有機EL表示装置)では、吸湿によって有機EL素子における有機層の劣化が生じ、有機EL素子における発光輝度が低下したり発光が不安定になる等、経時的な安定性が低くかつ寿命が短いといった問題があった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、基板における有機EL素子やその他の回路が形成された素子形成面側に、封止のためのカバー材を配置し、基板とカバー材との周縁部をシール材で封止するようにした有機EL表示装置が提案されている。また、この特許文献1には、水蒸気などの浸入を防ぐ保護膜として、シール材の外側を硬質な炭素膜で覆う構成も提案されている。このような構成により、基板上に形成された有機EL素子が外部から完全に遮断され、有機EL素子の酸化による劣化を促す水分や酸素等の物質が外部から浸入することを防ぐことが可能となっている。
【0004】
また、この他にも、基板における有機EL素子やその他の回路が形成された素子形成面側に、接着剤を介して封止のためのカバー材を貼り合わせるようにした、完全固体型の有機EL表示装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−93576号公報
【特許文献2】特開2006−54111号公報
【特許文献3】特開2008−283222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述した構成の有機EL表示装置では、表示装置内部に残存する水分、例えば、表示装置の製造工程中に発生してそのまま表示装置内に残存している異物(ダスト)に吸着している水分の拡散を防ぐことはできなかった。このため、このような水分拡散による有機層の劣化を防止することは困難であった。
【0007】
特に、有機EL表示装置では一般に、薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)を用いて構成された駆動回路を覆う状態で層間絶縁膜が設けられており、この層間絶縁膜上に有機EL素子が配列形成された構成となっている。この場合、駆動回路の形成によって生じる段差を軽減して平坦化された面上に有機EL素子を形成するため、例えば有機感光性絶縁膜などを用いた平坦化膜によって、層間絶縁膜を形成する。ところが、このような有機材料からなる層間絶縁膜(有機絶縁膜)は水を通し易いため、上述したようにして異物に付着したまま表示装置内に取り残された水分が、この有機絶縁膜を通して拡散し易いという問題があった。
【0008】
そこで、このような問題を解決するため、表示領域を囲む位置(表示領域の外縁側)に、上記した有機絶縁膜をその内部領域側と外部領域側に分離する分離溝を形成するようにした有機EL表示装置が提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。このような分離溝を設けることにより、有機絶縁膜における上記外部領域側に存在する水分が、この有機絶縁膜内を通過して内部領域側(表示領域側)に浸入することが回避される。したがって、上記したような、表示装置内に取り残された水分が有機絶縁膜を通過することに起因した有機層(有機EL素子)の劣化を抑えることが可能となっている。
【0009】
しかしながら、この特許文献2,3に提案されている構造では、例えば白色有機EL素子等の場合のように、有機層等を成膜する際にエリアマスクを使用する場合、以下の問題が生じてしまうため、改善の余地があった。すなわち、このような場合、エリアマスクのアライメントずれ(マスクずれ領域)と膜の回り込み(テーパー領域)とを考慮すると、実際には、上記した分離溝を、表示領域から十分に離れた位置に形成する必要がある。このため、額縁を広く取る必要が生じ(表示領域と周辺領域との間の距離を広くする必要が生じ)、狭額縁化(表示装置の小型化、低コスト化)を図ることが困難となってしまう。加えて、表示領域と周辺領域との間の距離を広くする必要が生じることから、この領域(分離溝の内部領域)における有機絶縁層内に含まれる水分が有機層へ侵入することに起因して、有機層が劣化してしまうことになる。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、有機EL素子の劣化を抑えて信頼性を向上させることが可能な有機EL表示装置、およびそのような有機EL表示装置を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の有機EL表示装置は、複数の画素を有する表示領域と、この表示領域の外縁側に設けられ、周辺回路を有する周辺領域と、基板上において表示領域から周辺領域へ延伸するように設けられた、下層側の第1の絶縁層および上層側の第2の絶縁層と、第1および第2の絶縁層の上において、表示領域から周辺領域の一部にまで延伸するように設けられた有機層と、表示領域と周辺領域との間の領域内に形成され、第1の絶縁層を表示領域側と周辺領域側とに分離する第1の分離溝と、有機層の形成領域の外縁側における少なくとも一部の領域に形成され、第1および第2の絶縁層のうちの少なくとも第2の絶縁層を除去してなる除去部とを備えたものである。
【0012】
本発明の電子機器は、上記本発明の有機EL表示装置を備えたものである。
【0013】
本発明の有機EL表示装置および電子機器では、表示領域と周辺領域との間の領域内に、第1の絶縁層を表示領域側と周辺領域側とに分離する第1の分離溝が形成されている。また、有機層の形成領域の外縁側における少なくとも一部の領域に、第1および第2の絶縁層のうちの少なくとも第2の絶縁層を除去してなる除去部が形成されている。これにより、有機層の形成領域の外縁側の一部の領域に第1および第2の絶縁層を分離する分離溝を形成している従来とは異なり、除去部と第1の分離溝との間の領域(従来の場合における上記分離溝の内部領域に対応)における第1の絶縁層内に含まれる水分が、有機層へ浸入することが回避される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の有機EL表示装置および電子機器によれば、表示領域と周辺領域との間の領域内に、第1の絶縁層を表示領域側と周辺領域側とに分離する第1の分離溝を形成すると共に、有機層の形成領域の外縁側における少なくとも一部の領域に、第1および第2の絶縁層のうちの少なくとも第2の絶縁層を除去してなる除去部を形成するようにしたので、除去部と第1の分離溝との間の領域における第1の絶縁層内に含まれる水分が有機層へ浸入することを回避することができる。よって、有機EL素子の劣化を抑えて信頼性を向上させることが可能となると共に、狭額縁化を図ることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【図3】図1に示した表示領域および周辺領域と各分離溝との配置関係例を模式的に表す平面図である。
【図4】図3に示したII−II線に沿った領域における矢視断面図である。
【図5】比較例に係る有機EL表示装置の構成を表す断面図である。
【図6】変形例1に係る有機EL表示装置の構成を表す断面図である。
【図7】変形例2に係る有機EL表示装置の構成を表す断面図である。
【図8】変形例3に係る有機EL表示装置の構成を表す断面図である。
【図9】変形例4に係る有機EL表示装置の構成を表す断面図である。
【図10】変形例5に係る有機EL表示装置の構成を表す断面図である。
【図11】変形例6に係る有機EL表示装置の構成を表す断面図である。
【図12】変形例7に係る有機EL表示装置の概略構成を模式的に表す平面図である。
【図13】図12に示したIII−III線に沿った領域の構成例を表す矢視断面図である。
【図14】図12に示したIII−III線に沿った領域の他の構成例を表す矢視断面図である。
【図15】図12に示したIV−IV線に沿った領域の構成例を表す矢視断面図である。
【図16】上記実施の形態等の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図17】上記実施の形態等の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図18】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図19】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図20】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図21】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態(第1〜第4の分離溝を設けた例)
2.変形例
変形例1〜3(第3の分離溝を設けないようにした例)
変形例4(第4の分離溝を設けないようにした例)
変形例5(第3,第4の分離溝の双方を設けないようにした例)
変形例6,7(第2〜第4の分離溝の代わりに、基板の端部までの全領域で有機絶縁層を除去してなる除去部を設けた例)
3.適用例(電子機器への適用例)
【0017】
<実施の形態>
[有機EL表示装置の全体構成例]
図1は、本発明の一実施の形態に係る有機EL表示装置(後述する有機EL表示装置1)の全体構成例を表すものである。この有機EL表示装置は、有機ELテレビジョン装置などとして用いられるものであり、基板11の上に表示領域110Aが設けられている。この表示領域110A内には、複数の画素(赤色画素10R,緑色画素10G,青色画素10B)がマトリクス状に配置されている。また、表示領域110Aの周辺(外縁側,外周側)に位置する周辺領域110Bには、映像表示用のドライバ(後述する周辺回路12B)である信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が設けられている。
【0018】
表示領域110A内には、画素駆動回路140が設けられている。図2は、この画素駆動回路140の一例(赤色画素10R,緑色画素10G,青色画素10Bの画素回路の一例)を表したものである。画素駆動回路140は、後述する下部電極161の下層に形成されたアクティブ型の駆動回路である。この画素駆動回路140は、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、これらトランジスタTr1,Tr2の間のキャパシタ(保持容量)Csとを有している。画素駆動回路140はまた、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において、駆動トランジスタTr1に直列に接続された白色有機EL素子10Wを有している。すなわち、赤色画素10R,緑色画素10G,青色画素10B内にはそれぞれ、この白色有機EL素子10Wが設けられている。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)により構成され、その構成は例えば逆スタガ構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガ構造(トップゲート型)でもよく、特に限定されない。
【0019】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、赤色画素10R,緑色画素10G,青色画素10Bのいずれか1つに対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0020】
[有機EL表示装置の平面構成例]
図3は、図1に示した表示領域110Aおよび周辺領域110Bと、後述する各分離溝(分離溝21〜24)との配置関係例を平面図で模式的に表したものである。
【0021】
この図3に示したように、表示流域110Aおよび周辺領域110Bの形成領域付近(これらの内周や外周、内部)には、4つ(4種類)の分離溝21,22,23,24が形成されている。具体的には、表示領域110Aと周辺領域110Bとの間の領域内には、分離溝21が形成されている。また、周辺領域110B内の一部の領域に、分離溝22が形成されている。更に、この分離溝22と基板11の端部との間の領域には、分離溝23が形成されている。加えて、この分離溝23と基板11の端部との間の領域(後述するシール材18Bに対応する領域)には、分離溝24が形成されている。なお、これら分離溝21〜24の詳細構成については、後述する(図4)。
【0022】
ここで、上記した分離溝21〜24はそれぞれ、本発明における「第1の分離溝」、「第2の分離溝」、「第3の分離溝」および「第4の分離溝」の一具体例に対応している。また、分離溝22は、本発明における「除去部」の一具体例にも対応している。
【0023】
[有機EL表示装置1の断面構成]
図4は、図3に示したII−II線に沿った領域(表示領域110Aと周辺領域110Bとの境界領域付近から、基板11の端部までの領域)における矢視断面構成を表したものである。本実施の形態の有機EL表示装置1は、前述した白色有機EL素子10Wと後述するカラーフィルタとを用いることによってR(赤),G(緑),B(青)のいずれかの色光が上面(基板11と反対側の面)側から出射される、上面発光型(いわゆるトップエミッション型)の表示装置である。
【0024】
この有機EL表示装置1は、基板11上に、画素駆動回路12A(前述した画素駆動回路140に対応)、周辺回路12Bおよび金属層13A,13Bと、無機絶縁層14と、有機絶縁層151と、下部電極161と、有機絶縁層152と、有機層160と、上部電極162と、保護層17と、充填剤層(接着層)18Aおよびシール材18Bと、BM(ブラックマトリクス)層19Bとがこの順に積層された積層構造を有している。また、この積層構造上には封止用基板19が貼り合わせられており、積層構造が封止されるようになっている。
【0025】
基板11は、その一主面側に白色有機EL素子10Wが配列形成される支持体である。この基板11としては、例えば、石英、ガラス、金属箔、もしくは樹脂製のフィルムやシートなどが用いられる。
【0026】
周辺回路12Bは、前述した信号線駆動回路120および走査線駆動回路130等からなる駆動回路(映像表示用のドライバ)である。この周辺回路12Bは、基板11上の表示領域110A内において、有機絶縁層151の下層側(具体的には、基板11と無機絶縁層14との間)に形成されている。
【0027】
金属層13Aは、画素駆動回路12A(140)や周辺回路12Bに対する配線層として機能するものである。金属層13Bは、後述する下部電極161とのコンタクトをとるための配線層(電極)として機能するもの(カソードコンタクトライン)である。これらの金属層13A,13Bはそれぞれ、例えばアルミニウム(Al),銅(Cu),チタン(Ti)等の金属元素の単体または合金からなる。
【0028】
無機絶縁層14は、画素駆動回路12A、周辺回路12B、金属層13A,13Bおよび基板11の上にほぼ一様に形成されている。この無機絶縁膜14は、例えば、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、酸化窒化シリコン(SiNxy)、酸化チタン(TiOx)または酸化アルミニウム(Alxy)等の無機材料からなる。
【0029】
有機絶縁層151,152はそれぞれ、画素間絶縁膜として機能するものであり、有機絶縁膜151が下層側、有機絶縁膜152が上層側に形成されている。これらの有機絶縁層151,152はそれぞれ、基板11上において、表示領域110Aからその外部領域にまで(周辺領域110Bを介して基板11の端部にまで)延伸するように形成されている。有機絶縁膜151,152はそれぞれ、例えばポリイミド、アクリルまたはシロキサン等の有機材料からなる。なお、有機絶縁層151が本発明における「第1の絶縁層」の一具体例に対応し、有機絶縁層152が本発明における「第2の絶縁層」の一具体例に対応している。
【0030】
下部電極161、有機層160および上部電極162は、前述した白色有機EL素子10Wを構成する積層構造となっている。
【0031】
下部電極161は、陽極(アノード電極)として機能するものであり、表示領域110A内においては各色の画素ごとに設けられている。この下部電極161はまた、表示領域110Aの外部領域(主に周辺領域110B)においては、ほぼ一様に形成されている。そして、図4中の符号P1で示したように、表示領域110Aと周辺領域110Bとの境界付近において下部電極161が切断され、両領域間が電気的にも非導通となっている。このような下部電極161は、例えば光反射率が70%程度以上の金属材料(例えば、アルミニウム(Al)や、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム錫)と銀(Ag)との合金など)からなる。
【0032】
上部電極162は、陰極(カソード電極)として機能するものであり、表示領域110A内において各画素に共通の電極として設けられている。この上部電極162はまた、基板11上において、表示領域110Aからその外部領域(周辺領域110Bを介して金属層13Bの形成領域付近まで)にまで延伸するように形成されている。このような上部電極162は透明電極からなり、例えばITOやIZO(Indium Zink Oxide:酸化インジウム亜鉛)、ZnO(酸化亜鉛)などの材料からなるのが好ましい。
【0033】
有機層160は、有機絶縁層151,152の上(具体的には、有機絶縁層152上)において、表示領域110Aから周辺領域110Bの一部にまで延伸するように形成されている。具体的には、有機層160は、表示領域110Aから図4中に示したテーパー領域A1にまで渡って形成されている。このテーパー領域A1とは、有機層160の形成時における膜の回り込み領域のことであり、表示領域110Aの外縁(外周)に形成される領域である。
【0034】
この有機層160は、下部電極161の側から順に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層(いずれも図示せず)を積層した積層構造を有している。これらの層のうち、発光層以外の層は必要に応じて設ければよい。正孔注入層は、正孔注入効率を高めると共に、リークを防止するために設けられる。正孔輸送層は、発光層への正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層は、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層は、発光層への電子輸送効率を高めるためのものである。なお、有機層160の構成材料は、一般的な低分子または高分子有機材料であればよく、特に限定されない。
【0035】
保護層17は、上部電極162および有機絶縁層152の上にほぼ一様に形成されている。この保護層17は、例えば、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、酸化窒化シリコン(SiNxy)、酸化チタン(TiOx)または酸化アルミニウム(Alxy)等の無機材料からなる。
【0036】
充填剤層18Aは、保護層17の上にほぼ一様に形成されており、接着層として機能するものである。この充填剤層18Aは、例えばエポキシ樹脂またはアクリル樹脂等からなる。
【0037】
シール材18Bは、基板11の端部(端縁部)に配設されており、基板11と封止用基板19との間の各層を外部から封止するための部材である。このようなシール材18Bもまた、例えばエポキシ樹脂またはアクリル樹脂等からなる。
【0038】
封止用基板19は、充填剤層18Aおよびシール材18Bとともに、白色有機EL素子10Wを封止するものである。封止用基板19は、赤色画素10R,緑色画素10G,青色画素10Bから出射される各色光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。この封止用基板19における基板11側の面上には、例えば、赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタからなるカラーフィルタ(図示せず)と、BM層(遮光膜)とが設けられている。これにより、赤色画素10R,緑色画素10G,青色画素10B内の各白色有機EL素子10Wから発せられた白色光が、上記した各色のカラーフィルタを透過することによって、赤色光,緑色光,青色光がそれぞれ出射されるようになっている。また、赤色画素10R,緑色画素10G,青色画素10B内ならびにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっている。
【0039】
(分離溝21〜24)
本実施の形態の有機EL表示装置1ではまた、前述した分離溝21〜24が形成されている。
【0040】
分離溝21は、表示領域110Aと周辺領域110Bとの間の領域に形成されており、有機絶縁層151を表示領域110A側と周辺領域110B側とに分離するための溝である。この分離溝21は、少なくとも有機絶縁層152(ここでは、有機絶縁層152、有機層160、上部電極162および保護層17等)により被覆されている。なお、分離溝21の内径は、例えば10〜100μm程度であり、分離溝21の深さは、例えば500〜5000nm程度である。
【0041】
分離溝22は、周辺領域110B内(周辺回路12Bに対応する領域内)の一部の領域、具体的には、有機層160の形成領域ならびに想定されるテーパー領域A1およびマスクずれ領域A2の外周側(外縁側)の領域に形成されている。この分離溝22は、有機絶縁層151,152のうちの少なくとも有機絶縁層152(ここでは有機絶縁層152のみ)が除去されてなる溝であり、少なくとも有機絶縁層152(ここでは有機絶縁層152のみ)をその内部領域側と外部領域側とに分離させている。なお、分離溝22の内径は、例えば10〜100μm程度であり、分離溝22の深さは、例えば500〜5000nm程度である。
【0042】
分離溝23は、分離溝22と基板11の端部との間の領域に形成されており、有機絶縁層151,152をそれぞれ、その内部領域側と外部領域側とに分離するための溝である。なお、この分離溝23の内径は、例えば10〜100μm程度であり、分離溝23の深さは、例えば500〜5000nm程度である。
【0043】
分離溝24は、分離溝23と基板11の端部との間の領域、具体的にはシール材18Bに対応する領域に形成されており、有機絶縁層151,152をそれぞれ、その内部領域側と外部領域側とに分離するための溝である。なお、この分離溝24の内径は、例えば10〜1000μm程度であり、分離溝24の深さは、例えば500〜5000nm程度である。
【0044】
[有機EL表示装置1の製造方法]
この有機EL表示装置1は、例えば次のようにして製造することができる。
【0045】
まず、上述した材料からなる基板11の上に、画素駆動回路12A(140)および周辺回路12Bを形成する。また、それと共に、上述した材料からなる金属層13A,13Bを、例えばスパッタ法により成膜した後、例えばフォトリソグラフィー法により所望の形状にパターニングすることにより形成する。そののち、これら画素駆動回路12A、周辺回路12Bおよび金属層13A,13Bの上に、上述した材料からなる無機絶縁層14を、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法を用いて形成する。ただし、このときの成膜方法としては、上記したCVD法には限られず、例えば、PVD(Physical Vapor Deposition;物理気相成長)法やALD(Atomic Layer Deposition;原子層堆積)法、(真空)蒸着法などを用いるようにしてもよい。
【0046】
続いて、この無機絶縁層14上に、上述した材料からなる有機絶縁層151を、例えばスピンコート法や液滴吐出法などの塗布法(湿式法)により形成する。そののち、例えばフォトリソグラフィー法を用いた有機絶縁層151に対する選択的なエッチングにより、表示領域110Aと周辺領域110Bとの間の領域に分離溝21を形成する。これにより、この分離溝21の底部に無機絶縁層14が露出し、有機絶縁層151を表示領域110A側と周辺領域110B側とに分離される。次いで、有機絶縁層151上に、上述した材料からなる下部電極161を、例えばスパッタ法により成膜した後、例えばフォトリソグラフィー法により所望の形状にパターニングすることにより形成する。これにより、分離溝21の側面および底部(底面)がそれぞれ、この下部電極161により被覆される。なお、このような下部電極161の形成の際には、図4中の符号P1で示したように、表示領域110Aと周辺領域110Bとの境界付近において下部電極161を切断し、両領域間が電気的にも非導通となるようにする。
【0047】
次に、下部電極161および有機絶縁層151の上に、上述した材料からなる有機絶縁層152を、例えばスピンコート法や液滴吐出法などの塗布法(湿式法)により形成する。そののち、例えばフォトリソグラフィー法を用いた有機絶縁層152に対する選択的なエッチングにより、周辺領域110B内(周辺回路12Bに対応する領域内)の一部の領域に、分離溝22を形成する。具体的には、前述した有機層160の形成予定領域ならびに想定されるテーパー領域A1およびマスクずれ領域A2の外周側(外縁側)の領域に、分離溝22を形成する。これにより、この分離溝22の底部に下部電極161が露出し、有機絶縁層152がその内部領域側と外部領域側とに分離される。
【0048】
続いて、有機絶縁層152上に、上述した材料からなる有機層160(における各層)を、表示領域110Aをカバーするエリアマスクを用いて、例えば蒸着法により形成する。このとき、実際には、表示領域110Aから図4中に示したテーパー領域A1にまで、有機層160が回り込んで成膜される。また、上記したエリアマスクの位置ずれを考慮すると、図4中に示したマスクずれ領域A2にまで、有機層160が成膜されることもあり得ることになる。
【0049】
次に、例えばフォトリソグラフィー法を用いた有機絶縁層151,152および無機絶縁層14に対する選択的なエッチングにより、分離溝22と基板11の端部との間の領域に、分離溝23を形成する。これにより、この分離溝23の底部に金属層13Bが露出し、有機絶縁層151,152がそれぞれ、その内部領域側と外部領域側とに分離される。そののち、有機絶縁層152および有機層160の上に、上述した材料からなる上部電極162を、所定のエリアマスクを用いて、例えば蒸着法により形成する。これにより、分離溝22,23の側面および底部(底面)がそれぞれ、この下部電極161により被覆される。
【0050】
次いで、例えばフォトリソグラフィー法を用いた有機絶縁層151,152に対する選択的なエッチングにより、分離溝23と基板11の端部との間の領域(具体的には、シール材18Bの形成予定領域)に、分離溝24を形成する。これにより、この分離溝24の底部に無機絶縁層14が露出し、有機絶縁層151,152がそれぞれ、その内部領域側と外部領域側とに分離される。そののち、有機絶縁層152および上部電極162の上に、上述した材料からなる保護層17を、例えばプラズマCVD法やPVD法、ALD法、蒸着法等を用いて形成する。これにより、分離溝22,23,24の側面および底部(底面)がそれぞれ、この保護層17により被覆される。
【0051】
続いて、上述した材料からなる封止用基板19上に、BM層19およびカラーフィルタをそれぞれ、例えばスピンコート法などにより塗布した後、フォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより形成する。
【0052】
次に、封止用基板19上に、前述した材料からなる充填剤層18Aおよびシール材18Bをそれぞれ形成する。このとき、基板11と封止用基板19とを貼り合わせた際の分離溝24の形成領域に対応して、シール材18Bを配設し、この分離溝24の内部をシール材18Bによって充填させるようにする。そののち、これらの充填剤層18Aおよびシール材18Bを間にして、封止用基板19を貼り合わせる。以上により、図3および図4に示した有機EL表示装置1が完成する。
【0053】
[有機EL表示装置1の作用・効果]
この有機EL表示装置1では、各画素に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、白色有機EL素子10Wに駆動電流Idが注入され、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、ここでは有機EL表示装置1が上面発光型(トップエミッション型)であるため、上部電極162、保護層17、充填剤層18A、各色のカラーフィルタ(図示せず)および封止用基板19を透過して取り出される。このようにして、有機EL表示装置1において映像表示(カラー映像表示)がなされる。
【0054】
ところで、このような有機EL表示装置では一般に、吸湿によって有機EL素子における有機層の劣化が生じ、有機EL素子における発光輝度が低下したり発光が不安定になる等、経時的な安定性が低くかつ寿命が短いといった問題がある。
【0055】
(比較例)
そこで、図5に示した比較例に係る有機EL表示装置(有機EL表示装置100)では、以下のようにして上記の問題(水分に起因した、有機EL素子における有機層の劣化)を解決している。図5は、この比較例に係る有機EL表示装置100の断面構成を表したものである。この有機EL表示装置100では、表示領域110Aを囲む位置(表示領域110Aの外縁側,外周側)に、2つ(2種類)の分離溝102,24が形成されている。
【0056】
具体的には、まず、シール材18Bに対応する領域(基板11の端部付近)に、本実施の形態の有機EL表示装置1と同様に、有機絶縁層151,152をそれぞれその内部領域側と外部領域側とに分離する分離溝24が形成されている。また、表示領域110Aと周辺領域110Bとの間の領域、具体的には、前述したテーパー領域A1およびマスクずれ領域A2の外周側(外縁側)と周辺領域110Bとの間の領域に、分離溝102が形成されている。この分離溝102は、本実施の形態の有機EL表示装置1における分離溝21とは異なり、有機絶縁層151,152の双方を、表示領域110A側と周辺領域110B側とに分離するものとなっている。
【0057】
この比較例の有機EL表示装置100では、上記した分離溝102が設けられていることにより、有機絶縁膜151,152における上記周辺領域110B側に存在する水分が、これら有機絶縁膜151,152内を通過して表示領域110A側に浸入することが回避される。したがって、分離溝24によって外部から有機層160への水分の侵入を防ぐことが可能となるのに加え、有機表示装置100内に取り残された水分が有機絶縁膜151,152を通過することに起因した、有機層160の劣化を抑えることが可能となっている。
【0058】
ところが、前述した本実施の形態の有機EL表示装置1の場合のように、白色有機EL素子10Wを構成する有機層160等の成膜の際にエリアマスクを使用する場合、この比較例の有機EL表示装置100では、以下の問題が生じてしまう。すなわち、このような場合、エリアマスクのアライメントずれ(図中のマスクずれ領域A2)と膜の回り込み(図中のテーパー領域A1)とを考慮すると、上記した分離溝102を、表示領域110Aから十分に離れた位置に形成する必要がある。具体的には、上記したように、テーパー領域A1およびマスクずれ領域A2の外周側(外縁側)と周辺領域110Bとの間の領域に、分離溝102を形成することになる。これは、この分離溝102が、有機絶縁膜151,152の双方を分離するための溝であることから、有機層160が形成される(可能性がある)テーパー領域A1やマスクずれ領域A2には、分離溝102を形成することができないことに起因している。
【0059】
このことから、比較例の有機EL表示装置100では、図5のように額縁を広く取る必要が生じ(表示領域110Aと周辺領域110Bとの間の距離を広くする必要が生じ)、狭額縁化(表示装置の小型化、低コスト化)を図ることが困難となってしまう。加えて、表示領域110Aと周辺領域110Bとの間の距離を広くする必要が生じることから、この領域(分離溝102の内部領域)における有機絶縁層151,152内に含まれる水分が有機層160へ侵入することに起因して、有機層160が劣化してしまうことになる。
【0060】
(本実施の形態)
これに対して本実施の形態の有機EL表示装置1では、上記比較例とは異なり、表示領域110Aと周辺領域110Bとの間の領域内に、有機絶縁層151のみを表示領域110A側と周辺領域110B側とに分離する分離溝21が形成されている。また、周辺領域110B内(周辺回路12Bに対応する領域内)の一部の領域、具体的には、有機層160の形成領域ならびに想定されるテーパー領域A1およびマスクずれ領域A2の外周側(外縁側)の領域に、分離溝22が形成されている。そして、この分離溝22は、有機絶縁層152のみが除去されてなる溝であり、有機絶縁層152のみをその内部領域側と外部領域側とに分離させるものとなっている。すなわち、この有機EL表示装置1では、上記比較例とは異なり、内周側において下層側の有機絶縁膜151を選択的に分離する分離溝21と、外周側において上層側の有機絶縁膜152を選択的に分離する分離溝22と、の2段構成の分離溝構造となっている。
【0061】
これにより本実施の形態では、上記した分離溝102が形成されている比較例とは異なり、分離溝21によって、分離溝21,22間の領域(比較例における分離溝102の内部領域に対応)における有機絶縁層151内に含まれる水分が有機層160へ浸入することが回避される。また、このような分離溝21を、表示領域110Aと周辺領域110Bとの間の領域内(マスクずれ領域A2およびテーパー領域A1の内部領域側)に形成できるため、その分上記比較例と比べ、周辺回路12B(周辺領域110B)を表示領域110A側に形成することができるようになる。すなわち、上記比較例と比べて額縁を狭くする(表示領域110Aと周辺領域110Bとの間の距離を小さくする)ことができ、狭額縁化(表示装置の小型化、低コスト化)が実現される。
【0062】
更に、このような分離溝21,22の外周側に、前述した分離溝23,24が更に形成されているようにしたので、これら分離溝23,24によって、外部から有機層160への水分の侵入が回避される。また、外部から周辺回路12Bの形成領域(周辺領域110B)への水分の侵入も防ぐことができるため、そのような水分に起因した周辺回路12Bの特性劣化も低減される。
【0063】
以上のように本実施の形態では、表示領域110Aと周辺領域110Bとの間の領域内に、有機絶縁層151,152を表示領域110A側と周辺領域110B側とに分離する分離溝21を形成すると共に、有機層160の形成領域の外縁側における少なくとも一部の領域に、有機絶縁層151,152のうちの少なくとも有機絶縁層152を除去してなる分離溝22を形成するようにしたので、分離溝21,22間の領域における有機絶縁層151内に含まれる水分が有機層160へ浸入することを回避することができる。よって、有機EL素子の劣化を抑えて信頼性を向上させることが可能となると共に、表示領域110Aと周辺領域110Bとの間の距離を小さくすることができ、狭額縁化(表示装置の小型化、低コスト化)を図ることも可能となる。
【0064】
<変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1〜7)について説明する。なお、上記実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0065】
[変形例1〜3]
図6は、変形例1に係る有機EL表示装置(有機EL表示装置1A)の断面構成を、図7は、変形例2に係る有機EL表示装置(有機EL表示装置1B)の断面構成を、図8は、変形例3に係る有機EL表示装置(有機EL表示装置1C)の断面構成を、それぞれ表したものである。なお、これらの図6〜図8に示した断面構成もまた、表示領域110Aと周辺領域110Bとの境界領域付近から基板11の端部までの領域における断面構成に対応している。
【0066】
変形例1〜3の有機EL表示装置1A,1B,1Cはそれぞれ、上記実施の形態の有機EL表示装置1において、分離溝23を形成しない(設けない)ようにしたものであり、他の構成は同様となっている。また、有機EL表示装置1A,1Bではそれぞれ、上部電極162および保護層17によって分離溝22が被覆されているのに対し、有機EL表示装置1Cでは、保護層17のみによって分離溝22が被覆されている。更に、有機EL表示装置1Bでは特に、分離溝22が下層側の有機絶縁層151まで到達するように形成されている。すなわち、有機EL表示装置1,1A,1Cではそれぞれ、分離溝22は上層側の有機絶縁層152のみを分離するものであったのに対し、有機EL表示装置1Bでは、有機絶縁層152に加えて有機絶縁層151もまた、分離溝22によって内部領域側と外部領域側とに分離されている。また、この有機EL表示装置1Bでは、下部電極161が、分離溝21,22の形成領域同士の間にまでしか延伸されておらず、これにより下部電極161と上部電極162とが周辺領域110B内で互いに接触していない(電気的に接続されていない)。
【0067】
このような構成の有機EL表示装置1A〜1Cにおいても、上記実施の形態と同様の作用により同様の効果を得ることができる。すなわち、有機EL素子の劣化を抑えて信頼性を向上させることが可能となると共に、狭額縁化(表示装置の小型化、低コスト化)を図ることが可能となる。
【0068】
また、特に有機EL表示装置1Bでは、下部電極161と上部電極162とが周辺領域110B内で互いに接触していない(電気的に接続されていない)ので、例えば下部電極161がAlから構成されると共に上部電極162がITOから構成されている場合に、以下の利点が得られる。すなわち、このような材料の組み合わせの場合、下部電極161と上部電極162とが接触していると、その接触箇所において電極が電蝕するおそれがあるのに対し、有機EL表示装置1Bではそのような電蝕の発生を回避することが可能となる。
【0069】
[変形例4,5]
図9は、変形例4に係る有機EL表示装置(有機EL表示装置1D)の断面構成を、図10は、変形例5に係る有機EL表示装置(有機EL表示装置1E)の断面構成を、それぞれ表わしたものである。なお、これらの図9および図10に示した断面構成もまた、表示領域110Aと周辺領域110Bとの境界領域付近から基板11の端部までの領域における断面構成に対応している。
【0070】
図9に示した変形例4に係る有機EL表示装置1Dは、上記実施の形態の有機EL表示装置1において、分離溝24を形成しない(設けない)ようにしたものであり、他の構成は同様となっている。
【0071】
また、図10に示した変形例5に係る有機EL表示装置1Eは、上記実施の形態の有機EL表示装置1において、分離溝23,24の双方を形成しない(設けない)ようにしたものであり、他の構成は同様となっている。
【0072】
このような構成の有機EL表示装置1D,1Eにおいても、上記実施の形態と同様の作用により同様の効果を得ることができる。すなわち、有機EL素子の劣化を抑えて信頼性を向上させることが可能となると共に、狭額縁化(表示装置の小型化、低コスト化)を図ることが可能となる。
【0073】
ただし、分離溝23や分離溝24を形成するようにしたほうが、前述したように水分に起因した有機層160の劣化や周辺回路12Bの特性劣化をより効果的に抑えることができることから、これらの分離溝23,24を形成したほうが望ましいと言える。
【0074】
[変形例6]
図11は、変形例6に係る有機EL表示装置(有機EL表示装置1F)の断面構成(表示領域110Aと周辺領域110Bとの境界領域付近から基板11の端部までの領域における断面構成)を表したものである。
【0075】
本変形例の有機EL表示装置1Fでは、これまで説明した有機EL表示装置1,1A〜1Eとは異なり、分離溝22〜24の代わりに、以下説明する除去部25が形成されたものとなっている。
【0076】
この除去部25は、分離溝22〜24とは異なり、有機層160の形成領域の外縁側において、基板11の端部までの領域にわたって有機絶縁層151,152が除去されてなるものである。具体的には、この除去部25では、有機層160の形成領域の外縁から基板11の端部までの全領域において、有機絶縁層152が除去されていると共に、周辺領域110B(周辺回路)の外縁から基板11の端部までの全領域において、有機絶縁層151が除去されている。より詳細には、有機層160の形成領域ならびに想定されるテーパー領域A1およびマスクずれ領域A2の外周側(外縁側)の全領域において、有機絶縁層152が除去されている。なお、本変形例においても、この基板11の端部には、シール材18Bが配設されている。
【0077】
本変形例の有機EL表示装置1Fにおいても、分離溝21によって、分離溝21と除去部25との間の領域における有機絶縁層151内に含まれる水分が有機層160へ浸入することが回避される。また、本変形例では、有機絶縁層152が、テーパー領域A1およびマスクずれ領域A2の外周側(外縁側)の全領域において除去されていると共に、周辺領域110Bの外周側(外縁側)の全領域において、有機絶縁層151が除去されている。これにより、上記比較例と比べて有機絶縁層151,152の形成領域が小さくなり、有機絶縁層151,152に含まれる水分が減少するため、表示領域110Aへの侵入を防ぐ必要がある水分量が減少する。
【0078】
したがって、本変形例においても、上記実施の形態と同様の作用により同様の効果を得ることができる。すなわち、有機EL素子の劣化を抑えて信頼性を向上させることが可能となると共に、狭額縁化(表示装置の小型化、低コスト化)を図ることが可能となる。
【0079】
[変形例7]
図12は、変形例7に係る有機EL表示装置(有機EL表示装置1G)の概略構成を模式的に平面図で表わしたものである。具体的には、この図12では、表示領域110Aおよび周辺領域110Bと、分離溝21の形成領域と、有機層160および上部電極162の形成領域と、金属層13B(カソードコンタクトライン)の形成領域との配置関係例を示している。
【0080】
また、図13および図14はそれぞれ、図12に示したIII−III線に沿った領域における矢視断面構成例を、図15は、図12に示したIV−IV線に沿った領域における矢視断面構成例を、それぞれ表したものである。すなわち、これらの図13〜図15に示した断面構成例は、表示領域110Aと周辺領域110Bとの境界領域付近から基板11の端部までの領域における断面構成例に対応している。そして、図13および図14はそれぞれ、上記したカソードコンタクトライン側以外の領域における断面構成例に対応する一方、図15は、上記したカソードコンタクトライン側の領域における断面構成例に対応している。
【0081】
本変形例の有機EL表示装置1Gでは、上記変形例6の有機EL表示装置1Fにおいて、除去部25の代わりに、以下説明する除去部26が形成されたものとなっている。
【0082】
この除去部26は、変形例6における除去部25とは異なり、分離溝21の形成領域の外縁側において、基板11の端部までの全領域における有機絶縁層152が除去されてなるものである。具体的には、周辺領域110Bの形成領域とその外周部の全領域において、有機絶縁層152が除去されている。なお、本変形例においても、この基板11の端部には、シール材18Bが配設されている。
【0083】
本変形例の有機EL表示装置1Gにおいても、分離溝21によって、この分離溝21と除去部26との間の領域における有機絶縁層151内に含まれる水分が有機層160へ浸入することが回避される。また、本変形例では、周辺領域110Bの形成領域とその外周部の全領域において、有機絶縁層152が除去されている。これにより、表示領域110Aの外縁側にある有機絶縁層152の形成領域が上記変形例6と比べてより小さくなり、表示領域110Aに浸入する水分の量が、変形例6と比べてより減少する。よって、本変形例では、変形例6と比べて有機EL素子の劣化を更に抑えることができ、信頼性を更に向上させることが可能となる。
【0084】
<適用例>
以下、上記実施の形態および変形例で説明した有機EL表示装置(有機EL表示装置1,1A〜1G)の適用例について説明する。上記実施の形態等の有機EL表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなどのあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。言い換えると、上記実施の形態等の有機EL表示装置は、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0085】
(モジュール)
上記実施の形態等の有機EL表示装置は、例えば、図16に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板11の一辺に、封止用基板19等から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0086】
(適用例1)
図17は、上記実施の形態等の有機EL表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記実施の形態等に係る有機EL表示装置により構成されている。
【0087】
(適用例2)
図18は、上記実施の形態等の有機EL表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記実施の形態等に係る有機EL表示装置により構成されている。
【0088】
(適用例3)
図19は、上記実施の形態等の有機EL表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記実施の形態等に係る有機EL表示装置により構成されている。
【0089】
(適用例4)
図20は、上記実施の形態等の有機EL表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記実施の形態等に係る有機EL表示装置により構成されている。
【0090】
(適用例5)
図21は、上記実施の形態等の有機EL表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記実施の形態等に係る有機EL表示装置により構成されている。
【0091】
<その他の変形例>
以上、実施の形態、変形例および適用例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0092】
例えば、上記実施の形態等において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。具体的には、例えば上記実施の形態等では、本発明における「第1および第2の絶縁層」がそれぞれ有機絶縁層(有機絶縁層151,152)である場合について説明したが、場合によっては、これらの絶縁層を有機材料以外の材料によって構成してもよい。
【0093】
また、上記実施の形態等では、有機EL表示装置が上面発光型(トップエミッション型)のものである場合について説明したが、これには限られず、例えば下面発光型(ボトムエミッション型)の構成としてもよい。このような下面発光型の有機EL表示装置の場合、有機層160内の発光層からの光は、下部電極および基板11を透過して外部へ取り出されることになる。また、このような有機EL表示装置において、いわゆるマイクロキャビティ(微小共振器)構造を設けるようにしてもよい。この微小共振器構造は、例えば、一対の反射膜間に所定の屈折率差を有する複数の層を積層した構造であり、入射光を一対の反射膜間で繰り返し反射させることにより光閉じ込めを行うものである。
【0094】
更に、上記実施の形態等では、有機EL素子の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【0095】
加えて、上記実施の形態等では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。更にまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記実施の形態で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130の他に、必要な駆動回路を追加してもよい。
【符号の説明】
【0096】
1,1A〜1G…有機EL表示装置、10R…赤色画素、10G…緑色画素、10B…青色画素、10W…白色有機EL素子、11…基板、110A…表示領域、110B…周辺領域、12A(140)…画素駆動回路、12B…周辺回路、13A,13B…金属層、14…無機絶縁層、151,152…有機絶縁層、160…有機層、161…下部電極、162…上部電極、17…保護層、18A…充填剤層、18B…シール材、19…封止用基板、19B…BM層、21〜24…分離溝、25,26…除去部、A1…テーパー領域、A2…マスクずれ領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有する表示領域と、
前記表示領域の外縁側に設けられ、周辺回路を有する周辺領域と、
基板上において前記表示領域から前記周辺領域へ延伸するように設けられた、下層側の第1の絶縁層および上層側の第2の絶縁層と、
前記第1および第2の絶縁層の上において、前記表示領域から前記周辺領域の一部にまで延伸するように設けられた有機層と、
前記表示領域と前記周辺領域との間の領域内に形成され、前記第1の絶縁層を前記表示領域側と前記周辺領域側とに分離する第1の分離溝と、
前記有機層の形成領域の外縁側における少なくとも一部の領域に形成され、前記第1および第2の絶縁層のうちの少なくとも前記第2の絶縁層が除去されてなる除去部と
を備えた有機EL表示装置。
【請求項2】
前記除去部は、前記有機層の形成領域の外縁側において、前記基板の端部までの領域にわたって前記第1および第2の絶縁層が除去されているものである
請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記基板の端部に、シール材が配設されている
請求項2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記除去部が、前記有機層の形成領域の外縁側における一部の領域に形成され、少なくとも前記第2の絶縁層を内部領域側と外部領域側とに分離する第2の分離部である
請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記第2の分離溝と前記基板の端部との間の領域に、前記第1および第2の絶縁層を内部領域側と外部領域側とに分離する第3の分離溝が形成されている
請求項4に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記基板の端部にシール材が配設され、
前記シール材に対応する領域に、前記第1および第2の絶縁層を内部領域側と外部領域側とに分離する第4の分離溝が形成されている
請求項5に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記第2の分離溝が、前記周辺回路の形成領域に対応する領域内に設けられている
請求項4に記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
前記第1の分離溝が、少なくとも前記第2の絶縁層により被覆されている
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項9】
前記周辺回路が、前記基板上において前記第1の絶縁層の下層側に形成されている
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項10】
前記第1および第2の絶縁層がそれぞれ、有機絶縁層である
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項11】
前記基板上に、陽極と、前記有機層としての正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層と、陰極とをこの順に備えた
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項12】
前記複数の画素が、赤色画素、緑色画素および青色画素からなる
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項13】
有機EL表示装置を備え、
前記有機EL表示装置は、
複数の画素を有する表示領域と、
前記表示領域の外縁側に設けられ、周辺回路を有する周辺領域と、
基板上において前記表示領域から前記周辺領域へ延伸するように設けられた、下層側の第1の絶縁層および上層側の第2の絶縁層と、
前記第1および第2の絶縁層の上において、前記表示領域から前記周辺領域の一部にまで延伸するように設けられた有機層と、
前記表示領域と前記周辺領域との間の領域内に形成され、前記第1の絶縁層を前記表示領域側と前記周辺領域側とに分離する第1の分離溝と、
前記有機層の形成領域の外縁側における少なくとも一部の領域に形成され、前記第1および第2の絶縁層のうちの少なくとも前記第2の絶縁層が除去されてなる除去部と
を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−150901(P2012−150901A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6779(P2011−6779)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】