説明

有機EL表示装置

【課題】バンクの端部で生じ得る浮きや剥れを低減し、かつ製造が容易な有機EL装置を提供する。
【解決手段】基板10と、基板10上に設けられ、下部電極23と、発光層を含む有機EL層24と、上部電極25と、からなる有機EL素子部20と、有機EL素子部20を画素単位で区画するバンク30と、から構成され、下部電極23が、下地層21と、被覆層22とをこの順で有し、下地層21の端部がバンク30に覆われており、バンク30の端部が被服層22に覆われており、バンク30上に第一補助配線26が設けられており、第一補助配線26が、被覆層22と同一の薄膜層から加工されてなる部材であって、かつ被覆層22と絶縁していることを特徴とする、有機EL装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陽極又は陰極となる透明導電膜は、金属材料からなる薄膜と比べて膜抵抗が高いことが知られている(特許文献1参照)。ここで電極層となる透明導電膜の膜抵抗が高いと、電圧降下により面内電位分布が不均一になり、発光素子の輝度バラツキ、いわゆるシェーディングといった不具合が生じる。
【0003】
特許文献1では、透明導電膜の膜抵抗を低減させた発光装置が提案されている。具体的には、下部電極の端部を被覆し画素間を分離する絶縁性材料からなる第1の隔壁(バンク)の天面に補助配線を、この第1の隔壁の側面に同じく絶縁性材料からなる第2の隔壁(バンク)が覆う構造を、それぞれ有する発光装置が提案されている。特許文献1の発光装置により、上記の膜抵抗の問題を解決するだけでなく、第1の隔壁(バンク)の段差を第2の隔壁が緩和することでカバレッジ不良を低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−127933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献1の発光装置では、画素を区画する第1の隔壁(バンク)と、この第1の隔壁上に設けられる補助配線とが、同一のマスクを用いたパターニングにより一括して形成される。しかしこのパターニングの際に、第1の隔壁の端部においてエッチングの回り込みが発生し、これにより第1の隔壁が基板から浮く(浮き)という問題が生じていた。この浮きの問題は、第1の側壁を補助する第2の隔壁を形成し、基板からの浮きを修復することにより解決できる。しかしこの第2の隔壁を形成するための工程を新たに設ける必要があるので、製造コストの増大を招いてしまう。
【0006】
一方で、第1の隔壁が基板から剥がれたり浮いたりした場合、この剥がれや浮きが、例えば、下部電極と上部電極とが短絡する原因となり、結果として非発光画素が発生する。ここで非発光画素が発生すると、表示領域内に黒点が発生し、有機EL表示装置の表示品位は低下してしまう。
【0007】
そこで本発明の目的は、上述のような従来技術の問題点を解決するために、バンクの端部で生じ得る浮きや剥れを低減し、かつ製造が容易な有機EL装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機EL装置は、基板と、
該基板上に設けられ、下部電極と、発光層を含む有機EL層と、上部電極と、からなる有機EL素子部と、
該有機EL素子部を画素単位で区画するバンクと、から構成され、
該下部電極が、下地層と、被覆層とをこの順で有し、
該下地層の端部が該バンクに覆われており、
該バンクの端部が該被服層に覆われており、
該バンク上に第一補助配線が設けられており、
該第一補助配線が、該被覆層と同一の薄膜層から加工されてなる部材であって、かつ該被覆層と絶縁していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造コストの増大を招くことなく発光特性を維持向上する品質の良い有機EL素子を得ることができる。
【0010】
即ち、本発明において、被覆層がバンクの端部を覆っていることで、バンクの端部の剥がれが防止される。このため、バンク上に積層される有機EL層を始めとする機能層の断切れが防止されると共に、下部電極と上部電極と間のショート欠陥や上部電極の断線がない画素を形成することができる。従って、非点灯画素欠陥のない有機EL装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の有機EL装置における第一の実施形態を示す断面概略図である。
【図2】本発明の有機EL装置における第二の実施形態を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の有機EL装置は、基板と、この基板上に設けられる有機EL素子部と、この有機EL素子部を画素単位で区画するバンクと、から構成される。本発明の有機EL装置において、有機EL素子部は、下部電極と、発光層を含む有機EL層と、上部電極と、からなる部材である。尚、有機EL素子部に含まれる下部電極は、下地層と、被覆層とをこの順で有する積層型電極層である。
【0013】
ところで下部電極に含まれる下地層の端部はバンクに覆われており、このバンクの端部は下部電極に含まれる被服層に覆われている。一方、バンク上には有機EL装置を駆動するときに使用される第一補助配線が設けられている。ここでこの第一補助配線は、被覆層と同一の薄膜層から加工されてなる部材であって、かつ被覆層とは絶縁されている。
【0014】
以下、本発明に係る表示装置の実施の形態について図面を参照して説明する。尚、本明細書で特に図示又は記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知又は公知技術を適用することができる。また以下に説明する実施形態は、あくまでも実施形態の一つであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の有機EL装置における第一の実施形態を示す断面概略図である。図1の有機EL装置1は、基本的には、基板10と、基板10上に設けられる有機EL素子部20と、基板10上に設けられ有機EL素子部20を画素単位で区画するバンク30と、から構成される。尚、図1の有機EL装置1は、1つの画素を単色発光させることが可能である。また図1の有機EL装置1は、発光色がそれぞれ異なる3個の画素にて各画素の発光を制御することによりR発光、G発光及びB発光からなるカラー表示を行うことが可能となる。
【0016】
基板10は、ガラス基材等の基材11と、基材11上に順次積層して設けられる絶縁層12と平坦化層13とからなる部材である。
【0017】
絶縁層12内には、薄膜トランジスタ(TFT)14が画素ごとにそれぞれ形成される。図1の有機EL装置1においては、画素1個当り1個のTFTを記しているが、電流制御用TFT、駆動制御用TFT等の有機EL素子部20の駆動を制御するために必要な複数種のTFTを1組にして画素ごとに設けることができる。
【0018】
平坦化層13は、TFT14を形成する際に生じる凹凸を平坦にするために設けられる。また平坦化層13には、所定の位置に2種類のコンタクトホール(15、16)が設けられている。ここでコンタクトホール15は、TFT14とソース側の引き出し電極18とを電気接続するために設けられている。一方、コンタクトホール16は、TFT14とドレイン側の引き出し電極19とを電気接続するために設けられている。
【0019】
平坦化層13上には、上述した2種類の引き出し電極(18,19)、下部電極23、第二補助配線27及びバンク30が所定の位置に設けられている。これらの部材の位置関係及び電気接続関係について以下に説明する。
【0020】
下部電極23は、下地層21と、被覆層22とをこの順で有する積層型電極層である。下地層21は、ドレイン側の引き出し電極19と電気接続している。このため、下地層21はTFT14と電気接続していることになる。尚、下地層21の端部はバンク30に覆われている。一方、被覆層22は、後述する有機EL層24に接しており、その一部は、バンク30の端部を覆っている。本発明において、被覆層22と有機EL層24との密着性の向上の観点から、被覆層22の膜厚は下地層21の膜厚よりも薄いのが好ましい。
【0021】
第二補助配線27は、その周囲をバンク30に覆われている。また第二補助配線27は、画素間を横断するようにパターン形成されており、ソース側の引き出し電極18と電気接続している。このため、下地層21はTFT14を介して第二補助配線27と電気接続している。従って、下部電極23は、第二補助配線27から送信される電気信号によって有機EL装置を駆動させるために機能する。また各画素の有機EL素子部20の発光制御は、下地層21を含む下部電極23と上部電極25との間に狭持される有機EL層24に印加される電流を制御することによって行われる。また第二補助配線27は、好ましくは、下地層21と同一の薄膜層から加工されてなる部材である。同一の薄膜層から形成することで、製造コストが削減され、有機EL装置の開口率が向上し、下部電極23へ安定した電流の供給が図れる。一方、短絡防止という観点から第二補助配線27は、下地層21と絶縁している。
【0022】
バンク30は、絶縁性の材料からなる部材であって、第二補助配線27及び2種類の引き出し電極(18,19)を覆うように設けられている。つまり、バンク30内に、第二補助配線27及び2種類の引き出し電極(18,19)が内蔵されている。またバンク30は、下地層21の端部を覆う一方で、その端部は被覆層22に覆われている。このように、バンク30の端部を覆うように被覆層22を設けることにより、バンク30の端部について第二補助配線27の形成時(パターニング形成時)で生じ得るダメージを軽減することができる。これは、第二補助配線27の形成時において、バンク30へのダメージが大きい場合に生じるバンク30の端部の剥がれや浮きを防ぐことになる。またこの剥れや浮きに起因する上部電極25と下部電極23との短絡を防ぐことになる。このため表示領域内での欠陥の発生を防ぐと共に、表示装置の歩留まりの低下を防ぐことができる。
【0023】
一方、バンク30の上面上には、第一補助配線26が設けられている。この第一補助配線26は、画素間を横断するようにパターン形成されており、共通電極となる上部電極25の電位線として機能する。また第一補助配線26は、表示領域外に設けられるコンタクトライン(不図示)にも接続されている。そしてこのコンタクトラインに電気接続される接続端子(不図示)を介して、共通電位が第一補助配線26を経由して上部電極25へ供給される。また本実施例の構成では、上部電極25に第一補助配線26が電気接続されているため、表示領域(不図示)における上部電極25の電位勾配を小さく抑えることが可能となる。つまり、本実施例の構成では、シェーディングは小さく抑えられ、有機EL装置の表示品位を高められる。
【0024】
本発明の有機EL装置において、第一補助配線26は、被覆層22と同一の薄膜層から加工されてなる部材である。このため被覆層22の形成工程と、第一補助配線26の形成工程とを別々に行うことがないので、工程数増加による表示装置の製造コスト増加を防ぎ、製造工程の歩留まりの低下を防止することができる。また第一補助配線26及び被覆層22が同一の薄膜層から加工されてなる部材であることにより、上部電極25の電流許容量増加が図れる。尚、第一補助配線26は、被覆層22との短絡を防止するために、被覆層22とは絶縁されている。
【0025】
一方、本発明の有機EL装置は、図1に示されるように、バンク30内及びバンク30の上面上にそれぞれ補助配線(26,27)が形成されている。このため、バンク30とは別個に補助配線を配置するために必要な平面的・空間的領域を確保する必要がないので、補助配線の形成による画素の開口率の低下を防ぐことができる。
【0026】
有機EL素子部20の構成部材である有機EL層24は、発光層を含む単層薄膜又は複数の層からなる積層体である。尚、有機EL層24は、発光層を含んでいればその層構成については特に限定されるものではない。例えば、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層及び電子輸送層のいずれかの層が含まれていてもよい。また複数の機能を持つ層を設けてもよい。
【0027】
有機EL素子部20の構成部材である上部電極25は、上述したように、第一補助配線26と電気的に接続している。尚、上部電極25と第一補助配線26との電気接続の態様は、例えば、図1に示されるように、バンク30上にて、上部電極25と第一補助配線26とが接続している態様が挙げられる。ただし、上部電極25と第一補助配線26との電気接続の態様はこれに限定されるものではない。例えば、上部電極25を有機EL装置、特に、その発光領域の全面に形成し、全ての第一補助配線26と上部電極25とを電気接続させるような態様であってもよい。また各画素に個別に上部電極25が設けられるように、上部電極25のパターンを形成し、いずれかの第一補助配線26と個別に電気接続する態様であってもよい。さらに、任意に選択した複数の画素に対して部分的な共通電極として上部電極25を設けて対応する複数の第一補助配線26と電気接続していてもよい。
【0028】
本発明の有機EL装置は、大気中の水分や酸素から有機EL素子部20を保護するために、封止層41や保護膜42を適宜設ける。尚、封止層41や保護膜42の構成材料の具体例や具体的な形成方法については後述する。
【0029】
次に、本実施形態の有機EL装置の具体的な製造方法について説明する。
【0030】
まず、TFT14を有する基板10を用意する。ここで、基板10は、例えば、以下に示す工程で作製される。尚、下記(a)〜(d)を行う際には、公知の方法を用いることができる。
(a)基材11上にTFT14を形成する工程
(b)絶縁層12を形成する工程
(c)平坦化層13を形成する工程
(d)平坦化層13の所定の領域にコンタクトホール15,16を設ける工程
【0031】
絶縁層12及び平坦化層13の構成材料としては、感光性ポリイミド樹脂、感光性アクリル樹脂等といった、感光性及び絶縁性を有する樹脂材料が挙げられる。平坦化層13の好適な形成方法として、具体的には、感光性ポリイミド樹脂を膜厚2μm程度で成膜する方法が挙げられる。また、上記工程(d)によって、コンタクトホール15,16を設ける具体的な方法としては、レジスト塗布後の混酸ウエットエッチングによるパターニング(パターン除去)が挙げられる。
【0032】
次に、コンタクトホール15に、ソース側の引き出し電極18を形成し、コンタクトホール16に、ドレイン側の引き出し電極19を形成する。2種類の引き出し電極(18,19)は、導電性材料から形成される。また2種類の引き出し電極(18,19)は、TFT14と下部電極23とを電気的に接続する役割を担っている。このため、2種類の引き出し電極(18,19)の構成材料として、TFT14と下部電極23との双方に対してコンタクト抵抗が低く、密着性が高い材料が選択される。また形成プロセスについてもTFT14と下部電極23との双方に対してコンタクト抵抗を低くし、かつ密着性を高くするという観点から適宜選択される。尚、ドレイン側の引き出し電極19は、下部電極23との電気的な接続が維持されていれば、その形状(パターン形状)については特に制限されるものではない。例えば、下部電極23の一部と接続している態様であってもよいし、ドレイン側の引き出し電極19を下部電極23よりも大きく形成し、この引き出し電極19のパターン上に下部電極23を形成してもよい。
【0033】
引き出し電極(18,19)の構成材料として、導電性材料が挙げられる。また引き出し電極(18,19)は、断面テーパー形状を有するコンタクトホール(15,16)内に形成されるため、外光反射の抑制の観点から考慮すると低反射率の材料が好ましいが、これに限定されるものではない。引き出し電極(18,19)の構成材料としては、例えば、ITO、IZO、ZnO等の透明導電膜、Cr、Al、Ag、Au、Pt等の金属を膜厚50nm〜150nmの範囲で形成した薄膜等が挙げられる。引き出し電極(18,19)の好適な形成方法として、具体的には、ITOを膜厚50nm程度で成膜し、次いで公知の方法により所望の形状にパターンニングする方法が挙げられる。
【0034】
次に、基板10上に、バンク30や有機EL素子部20を形成する。本発明において、バンク30や有機EL素子部20を形成する工程には、下記工程(1)〜(5)が含まれる。
(1)基板上に、下部電極1層目を形成する工程
(2)該下部電極1層目を加工して、下地層と、第二補助配線部とを形成する工程
(3)バンクを形成する工程
(4)該バンク又は該下地層上に下部電極2層目を形成する工程
(5)該下部電極2層目を加工して、被覆層と、第一補助配線部とを形成する工程
【0035】
以下、バンク30や有機EL素子部20の具体的な形成方法について説明する。まず、基板上に、下部電極1層目を形成する。下部電極1層目の構成材料は、反射率が高く、かつ導電性を有する電極材料であれば特に限定されるものではない。下部電極1層目の構成材料として、例えば、Cr、Al、Ag、Au、Pt等の金属材料が挙げられる。これら金属材料の中でも反射率が高い金属材料であるほど光取り出し効率を向上できるので、より好ましい。下部電極1層目の膜厚は、好ましくは、50nm〜300nm程度である。尚、下部電極1層目を形成する前に、平坦化層13との密着性を改善する密着層(不図示)を形成してもよい。下部電極1層目の好適な形成方法として、具体的には、Agを膜厚150nm程度で成膜する方法が挙げられる。
【0036】
次に、下部電極1層目を加工して、下地層21と、第二補助配線部27とを形成する。形成方法として、例えば、フォトプロセスによるパターニング形成が挙げられる。例えば、第二補助配線部27の配線幅が10μm程度になるようにパターニング形成するのが好ましい。尚、パターニング形成を行う際には、下地層21と第二補助配線部27とが絶縁するようにパターンニングを行う。
【0037】
また有機EL層24への電子もしくは正孔の注入性を改善する目的で、当該パターニングが終わった後、下地層21上に、電位制御層(不図示)を形成してもよい。また下地層21又は後述する被覆層22の表面に界面密着層(不図示)を積層してもよい。界面密着層は、下地層21と被覆層22との界面密着性を向上させたり、被覆層22上に積層する有機発光材料との正孔又は電子の注入効率を改善させたりする機能を有する薄膜層である。この界面密着層の構成材料として、例えば、ITO、IZO、ZnO等の透明導電材料、Al、Cr、W、Mo、Ti、Cu等の金属材料あるいはこれら金属材料を複数種混合した合金、アルカリ金属を含む金属合金等を用いることができる。界面密着層の好適な形成方法として、具体的には、ITOを膜厚50nmで形成する方法が挙げられる。
【0038】
次に、下地層21の端部及び第二補助配線部27を覆うようにバンク30を形成する。バンク30の構成材料として、感光性ポリイミド樹脂、感光性アクリル樹脂等といった、感光性及び絶縁性を有する樹脂材料が挙げられる。バンク30は、例えば、下地層21上及び第二補助配線部27上に、上記樹脂材料を塗布・成膜して、フォトリソ工程による加工(パターン形成)により、所望のパターンで形成される。尚、樹脂材料の塗布・成膜工程の好適な形成方法として、具体的には、感光性ポリイミド樹脂を膜厚2μm程度で成膜する方法が挙げられる。
【0039】
次に、バンク30又は下地層21上に下部電極2層目を形成し、次いで、下部電極2層目を加工して、被覆層22と、第一補助配線部26とをそれぞれ形成する。ここで下部電極2層目の構成材料として、下部電極1層目の構成材料と同様の材料を使用することができる。また下部電極2層目の好適な形成方法として、具体的には、Agを膜厚100nm程度で成膜する方法が挙げられる。
【0040】
下部電極2層目の加工方法は、下部電極1層目の加工方法と同様の方法を利用することができる。例えば、第一補助配線部26の配線幅が10μm程度になるようにパターニング形成するのが好ましい。尚、下部電極1層目の場合と同様にパターニング形成を行う際には、被覆層22と第一補助配線部26とが絶縁するようにパターンニングを行う。
【0041】
以上に示されるように、下部電極23を構成する下地層21及び第二補助配線27と下部電極23を構成する被覆層22及び第一補助配線26を、それぞれ共通する電極薄膜から形成することにより、補助配線の形成のための工程を新たに追加する必要がない。また、バンク30の端部が被覆層22で覆われるように下部電極2層目を加工するため、下部電極2層目を加工する際に、バンク30の端部を傷めることがないので、従来問題となっていたバンク30の浮きや剥がれを防ぐことができる。またバンク30の浮きや剥がれを防ぐことにより、後で積層される有機EL層24の断切れ又は上部電極25と下部電極23との間においてショートの発生を防止することができる。
【0042】
次に、被覆層22上に有機EL層24を形成する。有機EL層24を形成する際には、第一補助配線26と上部電極25とが電気的に接続するように、第一補助配線26の表面が露出するように有機EL層24を形成する。例えば、マスクを用いた塗り分けにより有機EL層24を形成する方法がある。また別法として、有機EL層24となる積層体を被覆層22、バンク30及び第一補助配線26を覆うように成膜した後、上部電極25と電気的に接続する第一補助配線26の部分について、レーザー加工により当該積層体を除去する方法がある。
【0043】
有機EL層24の構成材料として、有機発光材料、正孔注入材料、電子注入材料、正孔輸送材料、電子輸送材料より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。また正孔注入材料あるいは正孔輸送材料に有機発光材料をドーピングしたものや電子注入材料あるいは電子輸送材料に有機発光材料をドーピングしたものも使用することができる。電荷注入・輸送材料に有機発光材料をドープすることにより発色の選択の幅を広げることができる。一方、有機EL層24は、発光効率の観点からアモルファス膜であることが好ましい。
【0044】
有機発光材料として、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリーレン、芳香族縮合多環化合物、芳香族複素環化合物、芳香族複素縮合環化合物、金属錯体化合物等が使用できる。また、これらの単独オリゴ体あるいは複合オリゴ体が使用できる。但し、本発明はこれら例示材料に限定されるものではない。
【0045】
正孔注入・輸送材料として、フタロシアニン化合物、トリアリールアミン化合物、導電性高分子、ペリレン系化合物、Eu錯体等が使用できるが、本発明はこれら例示材料に限定されるものではない。
【0046】
電子注入・輸送材料として、アルミニウムイオンに8−ヒドロキシキノリンの3量体が配位したAlq3、アゾメチン亜鉛錯体、ジスチリルビフェニル誘導体系等が使用できる。
【0047】
有機EL層24の形成方法としては、有機EL層24の構成材料に応じて、真空蒸着法、転写法等の方法を適宜選択することができる。また、有機EL層24の膜厚は、好ましくは、50nm〜300nmであり、より好ましくは、50nm〜150nmである。
【0048】
次に、バンク30、第一補助配線部26及び有機EL層24上に上部電極25を形成して、第一補助配線26と上部電極25との電気接続を行う。本発明の有機EL装置において、上部電極25は、各画素から発せられた光を装置外部へ出力するための光取り出し電極として機能する。このため上部電極25の構成材料として、透過率の高い導電性材料が挙げられる。例えば、ITO、IZO、ZnO等の透明導電膜が挙げられる。またAg、Au、Al等の金属を10nm〜30nmの範囲で形成した半透過膜でもよい。一方、上部電極25の形成方法として、真空スパッタ法等が挙げられる。
【0049】
上部電極25を形成した後、封止層41と、保護層42とを順次形成することにより、図1の有機EL表示装置が得られる。
【0050】
封止層41は、水分や酸素に弱い有機EL素子部20を、大気中の水分や酸素から保護できるものであれば、その材質、形態は、特に限定されない。例えば、SiN、SiO、SiON等の無機パッシベーション膜、防湿性の高い樹脂膜、吸湿材を供えた掘り込みガラス基板等を好適に用いることができる。
【0051】
保護層42は、封止層41を保護し、外光反射によるコントラスト低下を防ぐ目的で設けられる。本発明において、保護層42は、偏光板や反射防止膜としての機能を備えていてもよい。保護層42として、例えば、アクリル板、PET樹脂板等を使用することができる。
【0052】
以上に述べた本実施例の構成によれば、下部電極23には、下部電極23と電気接続される第二補助配線27により、各画素への発光電流を安定して供給することができる。一方、上部電極25には、上部電極25と電気接続される第二補助配線27により、表示領域内における上部電極25の電圧勾配を小さく抑えることができる。また本実施例の構成によれば、2種類の補助配線(26,27)を下部電極23の構成部材と同時進行で形成することができる。このため、2種類の補助配線(26,27)を形成するための工程を改めて設ける必要はない。さらに、2種類の補助配線(26,27)は、バンク30の内部又は上面上に、補助配線(26,27)をそれぞれ設けているため、装置の開口率の低下を防ぐことができる。従って、製造容易性、高精細化に優れた有機EL表示装置を提供することができる。
【実施例2】
【0053】
図2は、本発明の有機EL装置における第二の実施形態を示す断面概略図である。以下、実施例1との相異点を中心に説明する。
【0054】
図2の有機EL装置2は、図1の有機EL装置1において、サブバンク31が新たに設けられている。図2に示されるように、サブバンク31は、被覆層22の端部と、バンク30を覆うように設けられている。ただし、実施例1と同様に、第一補助配線26と上部電極25との電気接続を確保するために、サブバンク31となる薄膜の一部を加工する。具体的には、少なくとも第一補助配線26を覆っている当該薄膜を部分的に除去する加工を行い、第一補助配線26を露出させる。
【0055】
サブバンク31の構成材料としては、バンク30の構成材料と同様の材料を使用することができるが、ブラックマトリックス材料を使用してもよい。またサブバンク31を、基板洗浄によるバンク30の剥離を防止するための機能層としてもよい。サブバンク31となる薄膜の好適な形成方法として、具体的には、感光性ポリイミド樹脂を膜厚2μm程度で成膜する方法が挙げられる。一方、サブバンク31の加工方法としては、例えば、フォトリソ工程による加工、レーザー加工等が挙げられる。
【0056】
このサブバンク31を、有機EL層24を形成する前に予め形成することにより、バンク30や被覆層22を傷つけることなくパターニング形成等による有機EL層24の加工が可能となる。またサブバンク31を設けることで、バンク30の端部がより確実に保護されるので、パターニング形成によるダメージを抑えることができ、装置の歩留まり低下の防止に寄与する。ただしこれだけでなく、バンク30上に積層される有機EL層24の断切れや上部電極25と下部電極23と間でショートの発生を防止することができる。
【0057】
以上、本実施例の有機EL表示装置は、実施例1と同様に、表示領域内における上部電極25の電圧勾配を小さく抑えることができる。また、バンク30端部の浮きを抑制した状態でサブバンク31の加工を行うことができる。よって、製造容易性、高精細化に優れ品質のよい有機EL表示装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:有機EL装置、10:基板、20:有機EL素子部、21:下地層、22:被覆層、23:下部電極、24:有機EL層、25:上部電極、26:第一補助配線部、30:バンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に設けられ、下部電極と、発光層を含む有機EL層と、上部電極と、からなる有機EL素子部と、
該有機EL素子部を画素単位で区画するバンクと、から構成され、
該下部電極が、下地層と、被覆層とをこの順で有し、
該下地層の端部が該バンクに覆われており、
該バンクの端部が該被服層に覆われており、
該バンク上に第一補助配線部が設けられており、
該第一補助配線が、該被覆層と同一の薄膜層から加工されてなる部材であって、かつ該被覆層と絶縁していることを特徴とする、有機EL装置。
【請求項2】
前記基板上に、第二補助配線がさらに設けられており、
該第二補助配線が、前記下地層と同一の薄膜層から加工されてなる部材であって、かつ該下地層と絶縁していることを特徴とする、請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記被覆層の膜厚が、前記下地層の膜厚よりも薄いことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記被覆層の端部が、絶縁性の薄膜層で被覆されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機EL素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法において、下記工程(1)〜(5)が含まれることを特徴とする、有機EL装置の製造方法。
(1)基板上に、下部電極1層目を形成する工程
(2)該下部電極1層目を加工して、下地層と、第二補助配線部とを形成する工程
(3)バンクを形成する工程
(4)該バンク又は該下地層上に下部電極2層目を形成する工程
(5)該下部電極2層目を加工して、被覆層と、第一補助配線部とを形成する工程

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−34931(P2011−34931A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183061(P2009−183061)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】