説明

有機EL表示装置

【課題】有機EL層が形成された素子基板を、シール材を介して封止基板によって封止し、表示領域に充填用樹脂が充填された有機EL表示装置において、充填用樹脂がシール材を覆ってシール不良が発生することを防止する。
【解決手段】ガラスで形成された素子基板10の表示領域に有機EL素子30が形成され、有機EL素子30を覆って防湿膜17が形成されている。素子基板10に形成された有機EL素子30は、フリットガラスによるシール材50を介して封止基板20によってシールされている。表示領域においては、充填用樹脂40が素子基板10と封止基板20の間を充填している。充填用樹脂40がシール材50を覆うと、シール不良が発生する。これを防止するために、フリットガラスによって、充填用樹脂ストッパー61を形成し、充填用樹脂がシール材と接触することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL表示装置に係り、素子基板と封止基板の間に樹脂を充填し、周囲をシール材によって封止することにより有機EL層への水分の浸入を防止する固体封止の有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置では下部電極と上部電極との間に有機EL層を挟持し、上部電極に一定電圧を印加し、下部電極にデータ信号電圧を印加して有機EL層の発光を制御する。下部電極へのデータ信号電圧の供給は薄膜トランジスタ(TFT)を介して行われる。有機EL層は、発光層の材料によって赤、緑、青の発光を行う。このような有機EL層とTFTを有する画素をマトリクス状に配置し、各画素の発光を制御することによって画像を形成する。
【0003】
有機EL表示装置に使用される有機EL材料は水分が存在すると発光特性が劣化し、長時間動作をさせると、水分によって劣化した場所が発光しなくなる。これは有機EL素子のダークスポットとして現れる。このダークスポットは時間の経過とともに成長する。ダークスポットの発生、あるいは成長を防止するためには、有機EL表示装置内への水分の浸入を防止する必要がある。
【0004】
このために従来は、有機EL層が形成された素子基板を周囲に設置したシールを介して、封止基板によって封止し、外部から有機EL表示装置内への水分の浸入を防止する技術が開発されてきた。封止された内部の空間にはN等の不活性ガスを充填する。一方、有機EL表示装置内に進入した水分を除去するために、有機EL表示装置内に乾燥剤を設置する。これを中空封止型有機EL表示装置という。
【0005】
しかし、中空封止型有機EL表示装置では、乾燥剤を設置するため、額縁幅を広くとる必要がある。また、封止剤によって封止するときの、封止剤から放出されたガスによる有機EL材料の汚染等の問題がある。さらに完成した有機EL表示装置において素子基板あるいは封止基板に外力が加わると素子基板と封止基板が接触することによって有機EL層が破壊されるという問題点を有している。
【0006】
中空封止の問題を対策するものとして、「特許文献1」には、封止基板を使用せずに、有機EL層と上部電極が形成された有機EL表示パネルの上に無機パッシベーション膜、有機平坦化膜、さらに無機パッシベーション膜を形成することによって水分が浸入することを防止する技術が記載されている。以後このような封止構造を固体封止という。
【0007】
「特許文献2」には、素子基板と封止基板の間に接着シートを挟み、外部からの水分の浸入を防ぐ構成が記載されている。「特許文献3」には、素子基板と封止基板の間に接着シートを配置することによって固体封止とし、かつ、周辺をフリットガラスを用いたシール材によって封止する構成が記載されている。また、シール材と充填材としての接着シートとの間に隙間を形成する構成も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−156058号公報
【特許文献2】特開2009−123653号公報
【特許文献3】特開2010−80344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
「特許文献1」の構成は、最外部は防湿膜となっているが、これはSiN膜等の1μm程度の薄膜で形成されているので、外部から機械的な圧力が加わると防湿膜が破壊され、この部分から水分が浸入するという問題がある。また、外力が直接有機EL層に伝わりやすく、有機EL層が簡単に破壊されてしまうという問題がある。
【0010】
「特許文献2」の構成は、接着シートを介してガラスで形成された封止基板によって有機EL層が形成された素子基板を封止するので、外力に対する有機EL層の保護機能は優れている。また、接着シートは、封止基板あるいは素子基板に貼り付けるだけでよいので、気泡に注意すれば、生産効率も確保できる。しかし、接着シートはコストが高く、有機EL表示装置の製造コストを押し上げる。
【0011】
「特許文献3」に記載の構成は、素子基板と封止基板を周辺のフリットガラスによって封止する構成が記載されているが、素子基板と封止基板の間の充填材としては、接着シートを使用している。しかし、接着シートはコストが高く、有機EL表示装置の製造コストを押し上げることは、「特許文献2」の場合と同様である。
【0012】
一方、充填用樹脂を封止基板と素子基板の間に充填することによって固体封止とする方法は、接着シートを使用する場合に比較して製造コストは抑えることが出来るが、充填用樹脂の塗布方法と、充填用樹脂の形成範囲とが問題となる。また、充填用樹脂を使用し、「特許文献3」に記載のようなフリットガラスによるシール材によって周辺を封止する構成とする場合、充填用樹脂がシール部に流れ込んで、シール材による封止機能が阻害される現象が生ずる。
【0013】
本発明の課題は、素子基板と封止基板を周辺においてフリットガラスによって封止し、封止基板と封止基板の間に樹脂を充填することによって固体封止とする有機EL表示装置において、シール部の信頼性を向上させることができる構成を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記課題を解決するものであり、主な具体的な手段は次のとおりである。すなわち、第1の代表的な構成は、有機EL層を含む画素がマトリクス状に形成された表示領域と端子部を含む素子基板に、シール材を介して封止基板が前記表示領域を覆って配置された有機EL表示装置であって、前記表示領域において、前記素子基板と前記封止基板の間に充填用樹脂が充填され、前記シール材と前記表示領域との間に、前記表示領域を囲むように、第1の充填用樹脂用ストッパーが形成され、前記シール材と前記充填用樹脂用ストッパーとはフリットガラスによって形成されていることを特徴とする有機EL表示装置であり、
第2の代表的な構成は、有機EL層を含む画素がマトリクス状に形成された表示領域と端子部を含む素子基板に、シール材を介して封止基板が前記表示領域を覆って配置された有機EL表示装置であって、前記表示領域において、ブラックマトリクスが形成され、前記表示領域において、前記素子基板と前記封止基板の間に充填用樹脂が充填され、前記ブラックマトリクスと前記シール材は黒色フリットガラスで形成されていることを特徴とする有機EL表示装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、素子基板と封止基板とがフリットガラスによって封止され、内部に充填用樹脂が充填された固体封止タイプの有機EL表示装置において、充填用樹脂がフリットガラスを覆うこと、あるいはフリットガラスと接触することによる封止不良を防止することが出来るので、信頼性の高い、有機EL表示装置を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の有機EL表示装置の表示領域の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例による有機EL表示装置の平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】マザー基板に実施例1の液晶表示パネルが形成された状態を示す平面図である。
【図5】本発明の有機EL表示装置の製造プロセスを示すチャートである。
【図6】本発明の第2の実施例による有機EL表示装置の平面図である。
【図7】本発明の第3の実施例による有機EL表示装置の平面図である。
【図8】本発明の第4の実施例による有機EL表示装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例によって本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の固体封止における有機EL表示装置の表示領域における断面図である。図1において、赤画素、緑画素、青画素が並んで配置されている。赤画素、緑画素、青画素の組を画素と呼ぶ。また、赤画素、緑画素、青画素をサブ画素と呼ぶこともある。図1の封止基板20の上に記載した白矢印は、赤の光、緑の光、青の光が放射されることを示している。有機EL表示装置では、このような画素がマトリクス状に配置され、表示領域を形成している。
【0019】
有機EL表示装置には、有機EL層15から発光した光を、有機EL層15等が形成されたガラス基板方向に取り出すボトムエミッション型と、有機EL層15等が形成されたガラス基板と逆の方向に取り出すトップエミッション型とがある。トップエミッション型はTFTが形成された領域の上にも発光領域を形成できるという利点がある。図1はトップエミッション型有機EL表示装置である。
【0020】
図1において、ガラスで形成されたTFT基板10の上にTFT回路11が形成されている。TFT回路11は、TFT、走査線、映像信号線、層間絶縁膜等を含む概念であるが、詳細な説明は省略する。図1において、TFT回路11の上に、反射電極12が形成されている。反射電極12は、有機EL層15からの光を上側に反射して光の利用効率を上げるためのものである。反射電極12はAlによって形成されている。
【0021】
図1において、反射電極12の上に下部電極13がITO(Indium Tin Oxide)等によって形成されている。下部電極13はアノードであり、図示しないTFTのソース電極と接続して映像信号が入力される。赤画素、緑画素、青画素との間にはバンク14が形成されている。バンク14は、各画素を区画するとともに、有機EL層15が段切れを生ずることを防止する。
【0022】
バンク14とバンク14の間に有機EL層15が形成されている。有機EL層15は複数の層からなっている。有機EL層が5層の場合、例えば、下部電極であるアノード側からホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等から構成されている。有機EL層の各層は非常に薄く、例えば、5層合わせても200nm程度であるので、外部から機械的な圧力がかかると容易に破壊する。
【0023】
有機EL層15の上には上部電極16がMgAg合金等によって形成されている。上部電極16はカソードとなっている。図1はトップエミッションであるから光を透過させるために、上部電極16は5〜10nm程度と非常に薄く形成される。有機EL層は水分によって特性が劣化する。したがって、水分が有機EL層15に浸入することを阻止するために、上部電極16の上に防湿膜17がSiN等によって形成される。防湿膜17は、CVDあるいはスパッタリングによって形成される。
【0024】
防湿膜17はこの他にSiO、SiNxOy等によって形成されることもある。防湿膜17は充填用樹脂40に内在する水分ならびに形成時のダメージに対する保護膜なので、0.3μm程度に形成される。
【0025】
防湿膜17の上に、素子基板10と封止基板20の間を充填して固体封止とするための充填用樹脂40が形成される。充填用樹脂40は、封止基板20に印刷、あるいは、ディスペンサ等によって形成され、この封止基板20を素子基板10に貼り合わせる。充填用樹脂40は熱硬化等して、素子基板10と封止基板20を接着する。なお、後で説明するように、シールは周辺に形成されたフリットガラスによるシール材50によって行われるので、充填用樹脂40はかならずしも接着性を有していなくともよい。図1において、封止基板20側から有機EL層の光が取り出され、画像が認識される。
【0026】
ここで、充填用樹脂40は、硬化する前は流動的であり、充填用樹脂40の塗布範囲を規定することが難しいという問題がある。例えば、充填用樹脂40を封止基板20に塗布し、封止基板20と素子基板10を接着した際、充填用樹脂40が流れ出して、シール材の一部を覆うようなことがあるとシール不良を生じてしまう。
【0027】
図2および図3に示す本発明は、このような問題を防止するために、封止基板20に充填用樹脂40が広がる範囲を規定する充填用樹脂ストッパー50を形成することである。図2は本発明の第1の実施例における封止構造を示す平面図であり、図3は、図2のA−A断面図である。
【0028】
図2において、封止基板20が素子基板10にフリットガラスによって形成されたシール材50によって接着している。表示領域100においては、封止基板20と素子基板10の間は図2では図示しない充填用樹脂40によって充填されている。図2に示すように、素子基板10は封止基板20よりも大きく形成され、素子基板10が封止基板20と重なった部分に表示領域100が形成されている。
【0029】
図2において、表示領域100とシール材50との間に、表示領域100を囲むように、第1充填用樹脂ストッパー61が形成されている。第1充填用樹脂ストッパー61はシール材50と同様にフリットガラスによって形成されている。しかし、第1充填用樹脂ストッパー61の幅は、シール材50の幅よりも小さい。シール材50は、有機EL表示装置の内部を外気から遮断する役割を持つのに対し、充填用樹脂用ストッパー61は表示領域100に充填されている充填用樹脂40に対するダムの役割を持てばよいからである。なお、充填用樹脂61は複数形成される場合があるので、図2においては、第1充填用樹脂ストッパーと呼んでいる。
【0030】
図2において、素子基板10に封止基板20が重ねられていない部分には、各画素の回路を駆動するための駆動IC70、表示領域100に形成された走査線、映像信号線と駆動IC70と接続するため、あるいは、駆動IC70と端子部90を接続するための引出し線80、液晶表示パネルを外部回路と接続するための端子部90等が形成されている。
【0031】
図2において、素子基板10と封止基板20を接着する充填用樹脂40は、硬化前は液体であり、流動性を有している。そして、封止基板20と素子基板10を接着する際、充填用樹脂40がはみ出してフリットガラスで形成されたシール材50の一部を覆う場合がある。フリットガラスによるシール材50は、後でレーザによって加熱され、溶融し、その後固化して素子基板10と封止基板20を接着するが、充填用樹脂40がシール材50の一部を覆っていると、シール材50による素子基板10と封止基板20のシールが不完全になる。
【0032】
本実施例では、図2に示すように第1充填用樹脂ストッパー61を、表示領域100を囲むように配置して、充填用樹脂40が充填用樹脂ストッパー61よりも外側に流動することを防止している。これによって、シール材50が充填用樹脂40によって覆われる現象を回避することが出来る。
【0033】
図3は図2のA−A断面図であり、充填用樹脂40が第1充填用樹脂ストッパー61によって外側への流出が阻止される状態を示している。図3において、素子基板10と封止基板20とが周辺において、シール材50によってシールされ、素子基板10と封止基板20の間に充填用樹脂40が充填されている。素子基板10も封止基板20もガラスで形成され、厚さはいずれも0.5mmである。充填用樹脂40の存在範囲は、第1充填用樹脂ストッパー61によって規定されている。第1充填用樹脂ストッパー61の高さは8〜10μm、幅は0.1〜0.2mm程度である。
【0034】
充填用樹脂40厚さは10μm程度であり、第1充填用樹脂ストッパー61の高さよりも僅かに厚くなっている。しかし、この程度の差であれば、第1充填用樹脂ストッパー61は充填用樹脂40に対するストッパーとしての役割を十分に果たすことができる。また、仮に、充填用樹脂40の流出防止が第1充填用樹脂ストッパー61だけでは十分でない場合であっても、後で説明する素子基板10側に形成された素子基板側充填用樹脂ストッパー63によって充填用樹脂40はそれ以上広がることを阻止される。したがって、充填用樹脂40がフリットガラスによって形成されたシール材50を覆うことはない。
【0035】
図3において、充填用樹脂40は熱硬化性のアクリル樹脂あるいはエポキシ樹脂によって形成される。第1充填用樹脂ストッパー61は、シール材50と同じフリットガラスによって形成されている。シール材の幅は1mm、高さは10μm、第1充填用樹脂ストッパー61の幅は0.1mm、高さは8〜10μmである。シール材50の幅は、第1充填用樹脂ストッパー61に比べて大きいが、同時に形成することが出来る。すなわち、シール材50と第1充填用樹脂ストッパー61を印刷で形成する場合は、印刷用のマスクの開口の設定によって可能である。
【0036】
一方、ディスペンサを用いて、シール材50および第1充填用樹脂ストッパー61を形成する場合は、シール材50を形成する場合と、第1充填用樹脂ストッパー61を形成する場合とで、ディスペンサのノズルの移動速度を変えればよい。すなわち、ディスペンサの移動速度を大きくすれば、フリットガラスの塗布量は少なくなるので、それだけ、幅と高さを小さくすることが出来る。また、速度を大きく変えたくない場合は、ディスペンサによる吐出圧を変えることによってディスペンサからのフリットガラスの吐出量を制御することが出来る。
【0037】
ディスペンサのノズルの径を換えることによって、シール材50と第1充填用樹脂ストッパー61の幅を変えることも可能である。ノズルの径が小さいと、フリットガラスの粒径によって、ディスペンサのノズルつまりの問題が生ずる場合があるが、この場合、第1充填用樹脂ストッパー61におけるフリットガラスの粒径を小さくすればよい。
【0038】
シール材および第1充填用樹脂ストッパー61を形成するフリットガラスは、見栄えの点からは、黒色フリットガラスを使用するのがよい。黒色フリットガラスとしては、Vを主成分とするフリットガラスを用いることが出来る。Vは黒色である。黒色フリットガラスとしては、その他にSnO、Bi、AgO等を成分とし、あるいは、これらの混合物を成分とし、黒色添加材として、カーボンブラック、酸化鉄(Fe)、五酸化バナジウムV等を加えたものを用いることが出来る。
【0039】
図3において、表示領域100に対応する部分には、有機EL素子30が形成されている。有機EL素子30は、図1におけるTFT回路から有機EL層の上部電極までを含む概念である。有機EL素子30はSiN等の防湿膜17によって覆われている。防湿膜17は、表示領域のみでなく、端子部90を除いて素子基板10の全面に形成されている。
【0040】
図3において、仮に、充填用樹脂40が外に向かって流動し、シール材50に付着すると、この部分において、シール不良が発生する。すなわち、フリットガラスによって形成されたシール材50は、素子基板10と封止基板20と接着する際に、レーザによって高温にして溶融させるが、この時、封止膜17とシール材50との間に充填用樹脂40が存在していると、この充填用樹脂40が分解してガスを発生し、シール不良を発生させる。また、充填用樹脂40がフリットガラスの下側に入り込むと、フリットガラスと素子基板10との接着が出来なくなる。
【0041】
シール不良を防止するために、図3において、シール材50の内側に第1充填用樹脂ストッパーが形成されている。すなわち、充填用樹脂40は、第1充填用樹脂ストッパー61によって外側には流出しない構成となっている。しかし、第1充填用樹脂ストッパー61を超えて充填用樹脂40が外側に流出する場合もありうる。
【0042】
これを対策するために、素子基板10において、有機EL素子30の外側に素子基板側充填用樹脂ストッパー63が形成されている。素子基板側充填用樹脂ストッパー63は、図1におけるバンク14を形成するときに同時に形成される。したがって、素子基板側充填用樹脂ストッパー63の高さはバンク14の高さと同じ1μm程度である。素子基板側充填用樹脂ストッパー63によって形成される1μm程度の段差が、第1充填用樹脂ストッパー61がストッパーとして十分でない場合に、充填用樹脂40に対してストッパーとなる。第1充填用樹脂ストッパー61によってカバーできない充填用樹脂40は僅かであるので、1μm程度の段差で十分なストッパー作用を発揮することが出来る。
【0043】
ところで、有機EL表示装置の製造では、生産効率を上げるために、大きなマザー基板200に多数の有機EL表示パネルを形成し、その後、スクライビング等によって各有機EL表示パネルに分離する。図4は、マザー基板200に多数の有機EL表示パネルが形成されている状態を示している。図4に示すように、各有機EL表示パネルごとにシール材50が形成され、シール材50の内側に表示領域を囲むようにして第1充填用樹脂ストッパー61が形成されている。
【0044】
マザー基板200の周辺部には、多くの有機EL表示パネルが形成された領域を囲うように、マザー基板シール材55が形成されている。マザー基板シール材55はエポキシ等の樹脂で形成されている。すなわち、素子基板10が多数形成されたマザー素子基板と、封止基板20が多数形成されたマザー封止基板とを窒素雰囲気中で重ね合わせ、マザー基板シール材55で接着する。そうすると、マザー基板シール材55の内部は、窒素雰囲気となる。この状態で各液晶表示パネル毎にフリットガラスで形成されたシール材をレーザ照射によって溶融し、素子基板と封止基板を接着する。そうすると、フリットガラスが酸素の影響を受けないので、安定したシール性能を確保することが出来る。その後、マザー基板200を個々の有機EL表示パネルに分離する。
【0045】
図5は、有機EL表示パネルが個々に分離される前のマザー基板200の製造プロセスを示す。図5において、左側がマザー素子基板の概略プロセスである。すなわち、マザー素子基板に蒸着によって有機EL層15および上部電極16を形成する。その上に防湿膜17を形成する。なお、図5では、有機EL素子30製作のための詳細なプロセスは省略して記載している。
【0046】
図5の右側は、マザー封止基板の概略プロセスである。すなわち、マザー封止基板にシール材50、第1充填用樹脂ストッパー61、および、アラインメントマークをフリットガラスによって同時に形成する。アラインメントマークは、マザー素子基板とマザー封止基板を接着する時の位置あわせのためのマークである。シール材50、第1充填用樹脂ストッパー61、およびアラインメントマークは印刷で形成してもよいし、ディスペンサで形成してもよい。
【0047】
その後、仮焼成をおこなって、シール材50、第1充填用樹脂ストッパー61、およびアラインメントマークを硬化させる。仮焼成によって、フリットガラス中のバインダは飛散する。その後、充填用樹脂40を表示領域に塗布する。充填用樹脂40の塗布は、印刷でもよいし、ディスペンサでもよい。その後、マザー封止基板の周辺に、マザー基板シール材をエポキシ等の樹脂によって形成する。
【0048】
このようにして形成したマザー素子基板とマザー封止基板を、窒素雰囲気中で重ね合わせ、仮接着する。この仮接着は、マザー基板シール材によるマザー素子基板とマザー封止基板の接着である。これによって、マザー基板200の内部は窒素雰囲気になる。
【0049】
その後、レーザを各有機EL表示パネルのフリットガラスで形成されたシール材50に照射することによって、フリットガラスを溶融し、固化することによって、各有機EL表示パネルの封止を行う。レーザ照射時は、窒素雰囲気中で行うので、フリットガラスの劣化による封止不良が生ずることは無い。また、先に行った仮焼成によってフリットガラス内のバインダは飛散してしまっているので、バインダによる汚染も生じない。
【0050】
レーザは、フリットガラスで形成された第1充填用樹脂ストッパー61に対しては照射する必要は無い。第1充填用樹脂ストッパー61は、先の仮焼成によって固化しており、ストッパーとしては十分な機能を有しているで、あえて、溶融、接着をする必要は無い。
【0051】
本実施例では、充填用樹脂40は、第1充填用樹脂ストッパー61あるいは、素子基板側充填用樹脂ストッパー63によって外側への流出は防止され、充填用樹脂40がフリットガラスで形成されたシール材を50覆うことが無いので、各有機EL表示パネルのシールの信頼性を向上させることが出来る。なお、図3における素子基板10に形成された素子基板側充填用樹脂ストッパー63は、第1充填用樹脂ストッパー61によって充填用樹脂の広がりを十分に制御することが出来る場合は必須ではない。
【実施例2】
【0052】
図6は、本発明の第2の実施例を示す有機EL表示装置の平面図である。図6では有機EL表示装置における端子部90は省略され、素子基板10と封止基板20が重なった部分のみの平面図となっている。図6において、表示領域100を囲むように、第1充填用樹脂ストッパー61が形成されている。第1充填用樹脂ストッパー61を囲むように、第2充填用樹脂ストッパー62が形成され、さらにその外側にシール材50が形成されている。
【0053】
本実施例が実施例1と異なる点は、充填用樹脂用ストッパー61の外側に第2充填用樹脂ストッパー62が形成されていることであり、その他の構成は実施例1と同様である。図6における第2充填用樹脂ストッパー62は第1充填用樹脂ストッパー61と形状も材料も同じである。すなわち、第2充填用樹脂ストッパー62はフリットガラスで形成され、幅は0.1mm程度、高さは8〜10μm程度である。
【0054】
第2充填用樹脂ストッパー62も第1充填用樹脂ストッパー61と同様に、印刷あるいはディスペンサによって形成することが出来る。形成方法は実施例1で述べたと同様であるので、説明は省略する。第2充填用樹脂ストッパー62の役割は、第1充填用樹脂ストッパー61によってせきとめられなかった充填用樹脂40を第2充填用樹脂ストッパー62によってせき止めることである。
【0055】
したがって、本実施例では、充填用樹脂40がシール材50を覆うことをより確実に防止することが出来る。なお、実施例1で説明した素子基板10に形成された素子基板側充填用樹脂ストッパー63は、本実施例においても、使用することが出来る。ただし、素子基板10に形成された第3充填用樹脂用ストッパー63は必須ではない。
【実施例3】
【0056】
図7は、本発明の第3の実施例を示す有機EL表示装置の平面図である。図7も有機EL表示装置における端子部90は省略され、素子基板10と封止基板20が重なった部分のみの平面図となっている。図7において、表示領域100を囲むように、第1充填用樹脂ストッパー61が形成され、第1充填用樹脂ストッパー61を囲むように、第2充填用樹脂ストッパー62が形成され、さらにその外側にシール材50が形成されている。この構成は図6で示す実施例2と同様である。
【0057】
本実施例が図6と異なる点は、表示領域100にブラックマトリクス110が形成されていることである。ブラックマトリクス110は各画素の間に黒色の物質を形成することによって、画面のコントラストを向上させる役割を有する。図7におけるブラックマトリクス110はシール材50や充填用樹脂用ストッパーと同じ、黒色フリットガラスを用いている。したがって、ブラックマトリクス110をシール材50や第1充填用樹脂ストッパー61、第2充填用樹脂用ストッパー62等と同時に印刷によって形成することが出来る。
【0058】
本実施例においては、ブラックマトリクス110を印刷で形成するので、細かなパターンを形成することは困難である。したがって、図7の構成は、比較的大画面であり、画素のサイズが大きい表示装置に適している。図7におけるブラックマトリクス110の幅は0.1mm程度であり、高さは、1μm〜8ミクロン程度で、マスクの構成、印刷条件等によって制御することが出来る。なお、図7において、ブラックマトリクス110の周りに、第1充填用樹脂ストッパー61と第2充填用樹脂ストッパー62の2本の充填用樹脂ストッパーが形成されているが、第1充填用樹脂用ストッパー1本のみでもよい。
【実施例4】
【0059】
図8は、本発明の第4の実施例を示す有機EL表示装置の平面図である。図8も有機EL表示装置における端子部90は省略され、素子基板10と封止基板20が重なった部分のみの平面図となっている。図8において、表示領域100を囲むように、シール材50が形成されているが、第1充填用樹脂ストッパー61および第2充填用樹脂ストッパー62は形成されていない。そのかわり、ブラックマトリクス110がシール材50付近にまで形成されている。本実施例においてもブラックマトリクス110は黒色フリットガラスで形成されている。
【0060】
本実施例の特徴は、ブラックマトリクス110が充填用樹脂用ストッパーの役割を兼ねていることである。本実施例によるブラックマトリクス110は幅が0.1mm程度で、高さは8μm程度と、実施例1〜3における第1充填用樹脂ストッパー61あるいは第2充填用樹脂ストッパー62と同じくらいの高さである。したがって、ブラックマトリクス110が充填用樹脂のストッパーの役割を持つ。
【0061】
本実施例では、表示領域の周辺に第1充填用樹脂ストッパーあるいは第2充填用樹脂ストッパー62を形成する必要が無いので、表示領域100から有機EL表示パネルの端部までのいわゆる額縁領域を小さくすることが出来る。また、ブラックマトリクス110によって、充填用樹脂40がシール材50を覆う現象を防止することが出来るので、シール部の信頼性を確保することが出来る。
【符号の説明】
【0062】
10…素子基板、 11…TFT回路、 12…反射電極、 13…下部電極、 14…バンク、 15…有機EL層、 16…上部電極、 17…防湿膜、 20…封止基板、 30…OLED素子、 40…充填用樹脂、 50…シール材、 55…マザー基板シール材、 61…第1充填用樹脂ストッパー、 62…第2充填用樹脂ストッパー、 63…素子基板側充填用樹脂ストッパー、 70…駆動IC、 80…引出し線、 90…端子部、 100…表示領域、 110…ブラックマトリクス、 200…マザー基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL層を含む画素がマトリクス状に形成された表示領域と端子部を含む素子基板に、シール材を介して封止基板が前記表示領域を覆って配置された有機EL表示装置であって、
前記表示領域において、前記素子基板と前記封止基板の間に充填用樹脂が充填され、前記シール材と前記表示領域との間に、前記表示領域を囲むように、第1の充填用樹脂用ストッパーが形成され、
前記シール材と前記充填用樹脂用ストッパーとはフリットガラスによって形成されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記第1の充填用樹脂用ストッパーと前記シール材との間に第2の充填用樹脂用ストッパーが形成され、前記第2の充填用樹脂用ストッパーもフリットガラスで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記素子基板には、前記充填用樹脂をせき止めるための素子基板側充填用樹脂用ストッパーが形成され、前記素子基板側充填用樹脂用ストッパーは樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記フリットガラスは黒色フリットガラスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記黒色フリットガラスはバナジウムフリットガラスであることを特徴とする請求項4に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記充填用樹脂は印刷またはディスペンサによって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
有機EL層を含む画素がマトリクス状に形成された表示領域と端子部を含む素子基板に、シール材を介して封止基板が前記表示領域を覆って配置された有機EL表示装置であって、
前記表示領域において、ブラックマトリクスが形成され、
前記表示領域において、前記素子基板と前記封止基板の間に充填用樹脂が充填され、
前記ブラックマトリクスと前記シール材は黒色フリットガラスで形成されていることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項8】
前記表示領域と前記シール材の間に、前記表示領域を囲んで、充填用樹脂ストッパーが形成されていることを特徴とする請求項7に記載の有機EL表示装置。
【請求項9】
前記充填用樹脂ストッパーと前記シール材の間に、前記充填用樹脂用ストッパーを囲むように、第2の充填用樹脂ストッパーが形成されていることを特徴とする請求項8に記載の有機EL表示装置。
【請求項10】
前記黒色フリットガラスはバナジウムフリットガラスであることを特徴とする請求項9に記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−109030(P2012−109030A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254621(P2010−254621)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】