説明

有益薬剤を一定速度で送出するための装置および方法

本発明は、水室を含む有益薬剤(2)を送出するための装置(1)の態様を開示する。水移送膜(5)は水収集室(8)と連結している。抽出室は、抽出室の伸張により、水移送膜(5)を介して水(9)を受容する。有益薬剤(2)を含む分配室は、抽出室の伸張に応じて収縮するように構成される。これにより、有益薬剤(2)は、中空の剛性返し部などの下部(地下)通路を介して送出される。ある実施態様において、速度調節機構(6a、6b)によって、水(9)が水透過膜(5)を介して受容される速度を制御され、それによって、有益薬剤(2)の送出速度が制御される。水透過膜(5)は、水収集室(8)に透過する浸透圧性薬剤をはじくような構成を有する。装置(1)は、水室(8)を更新することなく低い温度依存性で一定の送出速度性能特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、下部(地下)の場所に有益薬剤を送出するための装置および方法を発明の名称とする2008年4月10日出願の米国出願第12/100,982号の一部継続出願であり、参照により本願に包含される。本願は、更に、有益薬剤を一定速度で送出するための装置および方法を発明の名称とする2008年8月28日出願の米国仮出願第61/092,538号の優先権を主張しており、参照により本願に包含される。
【0002】
本発明は、芳香剤、脱臭剤、殺菌剤、農薬、害虫忌避薬などの有益液体を長期間に渡って一定速度で送出する、浸透圧ポンプを利用した装置および方法に関する。浸透圧において代表的に使用される水は、連続的に再生されない。
【背景技術】
【0003】
芳香剤、脱臭剤、殺菌剤、農薬、害虫忌避薬などの有益液体を制御下でありきたりの方法で送出する装置および方法が必要とされている。理想的には、そのような装置および方法は、溶液、懸濁液またはそれらの混合物などの種々の異なる有益液体物質を分散させるのに適している。更に必要とされているのは、有益液体の放出を一定速度に簡単に制御できる装置および方法である。
【0004】
浸透圧動力を使用した液体の送出が検討されている。一般的に、浸透圧性薬剤は、その一部に半透膜を含み、可撓性隔膜、ピストン等を介して有益薬剤を含む容器と連結している体積可変容器の中に含まれる。作動時には、半透膜を水源に曝す。水は半透膜を介して浸透圧性薬剤容器に入り、その容積を伸長させ、有益薬剤を放出する駆動力となる。ある場合において、その装置は動物や人の体内にインプラントされ、その体を水源とする。他の場合においては、水は、装置に含まれる貯蔵部から供給される。
【0005】
Herbigらは、特許文献1に芳香剤や殺虫剤のような流体を送出するのに使用される装置を開示している。特許文献1によれば、液体の水から浸透圧性薬剤を分離するために疎水性多孔質性セパレーターを使用している。水蒸気は疎水性膜を介して液体の水から浸透圧性薬剤に透過し、浸透圧性薬剤が配置されている体積を増加させる。体積の増加が駆動力となって有益薬剤を送出する。この装置における欠点は、水蒸気圧が温度に左右されることである。例えば、水蒸気圧は、温度が50℃と0℃を比較すると20倍も異なる。より狭い温度範囲で見ても、水蒸気圧は、温度が10℃の場合23℃と比較して56%低く、温度が44℃の水蒸気圧は、温度が23℃の水蒸気圧の326%に相当する。それ故、温度変化が送出速度に大きな影響を及ぼし、ほとんどの使用状況において好ましくない装置となる。
【0006】
Faste(特許文献2)及びAtahyde等(特許文献3)には、装置内に水を含んでいる浸透圧を利用した薬剤注入装置が開示されている。これらの文献に開示されているのは、浸透圧性薬剤と水源との間に配置される半透膜として、酢酸セルロース等のセルロースエステル又はセルロースエーテル膜を利用した装置である。Herbig(特許文献1)に記載された疎水性膜に対するこれらの膜の利点は、水蒸気としてよりも液体の水として半透膜を透過拡散することである。これは、水蒸気圧の温度依存が非常に大きいのに対し、温度範囲における水の濃度が実質的に変化しないので、浸透圧の温度依存を大幅に減少させることが出来る。この種の膜の欠点としては、実質的に半透膜であるため、多くの浸透圧性薬剤もまた透過性を有することである。その結果、浸透圧性薬剤容器の中に水が拡散するのと同じように、浸透圧性薬剤は水容器の中に浸透できる。浸透圧性薬剤の拡散は小さいものの、含まれている水の体積が分配されるべき液体の量と同じ近くにになった際、特に送出の時間スケールが長い場合、その効果は時間と共に非常に大きくなる。浸透圧性薬剤が水容器の中に拡散するため、半透膜を横切る水の拡散の駆動力が減少し、送出速度が時間と共に減衰する。
【0007】
Wong等(特許文献4)及びChen等(特許文献5)は、動物体内や人体内に埋込んだ際に、体から水を供給し、半透膜付近の水の濃度は、体の活動本質によってほぼ同じままであるような浸透圧駆動力装置を開示している。Wong等(特許文献4)は、「酢酸セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、酢酸ブタン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース等のセルロース系ポリマー、不透過材料と半透膜とするための親水性ポリマー又は分子量水溶性促進剤などのブレンド物」の使用が開示されている。Chen等(特許文献5)は、それに対し、装置としては低い透過速度であるため、若干水に対して透過可能なポリウレタン材料の使用を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5798119号明細書
【特許文献2】米国特許第4898582号明細書
【特許文献3】米国特許第5672167号明細書
【特許文献4】米国特許第4874388号明細書
【特許文献5】米国特許第6923800号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の従来技術において、浸透圧性薬剤が一方の側に存在し且つ不連続の水注入源が反対側に存在する場合で、温度変化による水の流量の変化を最小としながら、半透膜を透過する水の定常的な流量を達成する方法は示唆されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み、本発明の一実施態様として、水室を有する有益薬剤を送出する装置を開示する。水移送膜は水室と連結して配置される。抽出室は水移送膜を介して抽出室に移送される水を受用し、それによって伸長する。分配室は有益薬剤を含み、抽出室の伸長に応じて収縮する。これにより、分配室は有益薬剤を放出し、ある場合には、発散芯を介して液体を蒸散させるような散布特性を有する。ある実施態様において、送出速度制御機構が、水移送膜を介して受容する水の速度を制御し、有益薬剤の放出速度を制御してもよい。水室は、使用者が水を注いで充填できるような開口形状に設計されてもよく、また水室は、水の流出を防ぐように囲まれていてもよい。囲いこみ形状の場合、その容積は、好ましくは、可撓性膜を介して可変であり、それはピストン部材を有して可変であってもよい。また、放出時に水室が部分的減圧になるのを防ぐために通気(ベント)を行ってもよい。ベントは疎水性多孔性プラグ又は膜を有して流出を防ぐ。
【0011】
本発明の水移送膜は、従来の物とは異なる。要求される膜特性は、浸透圧性薬剤をはじき且つ水を透過可能であるような構成である。膜の例としては、イオン交換膜の構造を有する物である。イオン交換膜は種々の骨格構造を有し、特定の極性の種々の官能基を有する。例えば、その骨格構造は、フッ素系ポリマー、スチレン−ジビニルベンゼン系であってもよい。膜は、ポリ塩化ビニル等の材料から成る裏材を更に有して耐破壊力を増加させてもよい。官能基は、第4級アンモニウム基などの正電荷や、スルホン酸基などの負電荷を有していてもよい。官能基が正電荷を有する場合、膜は陰イオン交換膜として分類され、反対に、官能基が負電荷を有する場合、陽イオン交換膜に分類される。このような膜を使用した場合の1つの利点は、水が透過性でありながら、塩や極性分子の拡散が遅くなることである。浸透圧性薬剤が水室中に拡散し、水の速度が減少すると、浸透圧の駆動力が減少し、水室中の水が連続的に新しく置換されないため、浸透圧性薬剤の拡散が減少することは有利である。イオン交換膜としては、Dupont社製「nafion」、ASTOM Corporation社製「Neosepta CMX」、「AMX」、「CIMS」、「CMB」、「AHA」、「ACM」、「ACS」、「AFN」、「AFX」が挙げられる。他のイオン交換膜やその銘柄としては、旭硝子社製「Selemion」が挙げられる。特に「Neosepta CMX」が、水の流量が良好で且つ塩の拡散が非常に少ないため特に好ましい。この膜を使用し、アンモニウムフォスフェートを浸透圧性薬剤として使用することにより、非更新部分の水を伴う定常的な送出速度が得られる。
【0012】
浸透圧性薬剤をはじき且つ水を透過可能であるような構成を有する膜の他の例としては、類似の負電荷または正電荷をはねつけるような電荷を有するスルホン酸基または第4級アンモニウム基を移送膜の表面に接続されているような水透過膜である。通常のセルロース型膜の表面にそのような官能基を付加して変成することにより得られる。
【0013】
作動機構は、使用に供するまで膜に水を曝さないような設計を有する。作動機構は、米国特許第4838862号および米国特許第4898582号に記載されており、本発明に参照によって引用され、この装置を使用することが出来る。
【0014】
本装置の送出速度は膜の一部を覆う機構によって調節してもよく、膜に曝す水の量を増減させることによって調節することも出来る。
【0015】
水室は水で満たされてもよく、また、貯蔵中や作動中に凍結しないような塩などの1つ以上の構成要素を含む溶液で満たされていてもよい。
【0016】
ある選択された実施態様において、抽出室および分配室がピストンで分離されている。他の実施態様において、抽出室および分配室が可撓性隔膜で分離されている。この実施態様において可撓性隔膜を使用した場合、可撓性隔膜は、可撓性隔膜を透過する水の拡散を防ぐか又は減少させるように何層かで構成されていてもよい。ある実施態様において、空気または他のガス或はそれらの混合物などの分離材料が、水の拡散を更に防ぐように層の間に導入されてもよい。
【0017】
他の実施態様において、抽出室、分配室またはその両方が、少なくとも部分的に嚢の中に含まれていてもよい。ある実施態様において、その嚢は、金属などの水不透過性を有する材料が塗布されて、水がそれを透過することを防いでもよい。
【0018】
ある実施態様において、抽出室が塩などの浸透圧性薬剤を含み、水移送膜を介して浸透圧により抽出室に水を引き込む。他の実施態様において、装置は、更に、水移送膜を介して流れる電流を制御する回路を有し、それにより水移送膜を介した抽出室への水の流れを電気浸透圧によって制御する。
【0019】
本発明のある実施態様において、有益薬剤の送出方法は、実質的に開放端を有する水室に水を集める工程を含む。この水は、抽出室に水移送膜を介して移送され、それにより抽出室を伸長させられる。それにより、分配室から有益薬剤を下部領域(地下領域)に送出する。
【0020】
本発明のある実施態様において、水室への浸透圧性薬剤の拡散を更に減少させるために、水室と抽出室との間に複数の半透膜を使用してもよい。これらの膜は、空間的に液体を介して別れていてもよい。浸透圧性薬剤の滲み出しを防ぐのに特に効果のあるこれらの膜の組合せは、少なくとも1つの膜が、少なくとも他の膜に対して異なる極性の官能基を有してもよく、例えば、アニオン交換膜をカチオン交換膜と組合せて使用することが出来る。
【0021】
本発明のある実施態様において、改良された有益薬剤の送出装置および方法を提供する。本発明の特徴や利点は以下の記載や請求の範囲によって、又、以下に記載の本発明を実践することによっても更に明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、芳香剤、脱臭剤、殺菌剤、農薬、害虫忌避薬などの有益液体を長期間に渡って一定速度で送出する、浸透圧ポンプを利用した装置および方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施態様の概略的な断面図であり、1aは図1のハウジングの一部の概略的な断面図であり、1bは隔膜の一部の概略的な断面図である。
【図2】図2は、図1の速度制御機構の概略図である。
【図3】図3は、図1の速度制御機構の概略図である。
【図4】図4は、本発明の6装置において異なる膜の領域を曝した際の、20日間の液体送出量を示すグラフである。
【図5】図5は、図4と同じ測定において、測定期間中の送出速度の増加分について示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の3装置において、異なる温度で使用した際の送出速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の利点をより理解しやすくするために、添付の図面に記載された特定の実施態様を参照して、上記の簡単な説明のより詳細な説明を行う。しかしながら、これらの図面は本発明の代表的な実施態様を示したに過ぎず、本発明の要旨を限定するものではないことを理解すべきである。実施態様は、図を伴って参照して、以下に特異性や詳細について説明される。
【0025】
本発明は、本技術分野の現況、特に本技術分野の問題点やニーズ、すなわち、芳香剤、脱臭剤、殺菌剤、農薬、害虫忌避薬などの液体有益薬剤を送出する装置を充分に得られていないという要望に応えて開発されたものである。そのような装置は、使用期間中にその利点がこれ以上提供できないような送出性能の劣化に悩まされるか、又は、装置が作動可能で性能が許容できる時は、装置が複雑で高価である。従って、本発明では、制御され、予測可能な手段で、温度変化の影響を最小とした、目的の場所に液体有益薬剤を送出する新規の装置および方法を開発した。本発明の特徴および利点は以下の記載および添付の請求の範囲ならびにその均等範囲、更に引続く請求の範囲または補正、そして以下の本発明を実践することにより更に明らかになるであろう。装置は単独型とすることが出来、電源や外部接続は必要としない。
【0026】
図1に、有益薬剤2を送出するための装置の1実施態様の概略図を示す。有益薬剤2は、室3の容積が減少できるような可撓性蛇腹(ベローズ)4又は隔膜4を有する以外は実質的に剛性の壁を有する室3の中に存在する。イオン交換膜5は、可撓性蛇腹4から室8に含まれる水9を分離する。第1調節部材6aは開口部7(図示せず)を有する。第1調節部材6aと第2調節部材6bとの位置関係によっては、膜5は覆い隠されるか、又は、作動中に膜5の段々と大きくなる面積部分が水9に曝される。浸透圧性薬剤の塊(図示せず)は、可撓性ベローズ4と膜5との間に配置される。ベローズ4は好ましくは、金属、金属コート層を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)、Halar、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)等の水低透過性材料から成るか、被覆される。水低透過性材料としての他のポリマーは、HDPE(高密度ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PET、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)が挙げられる。動作水9は膜5を介して流れ、膜5とベローズ4との間の体積を増加させる。これにより、有益薬剤2はポート(排出口)10から送出される。この場合、芯材が有益薬剤2をポート10から移送され、装置1の側壁を上昇して、有益薬剤2をより容易に蒸散させてもよい。部屋などの空間内に設置できる複数の場所に提供するために、装置は基材14及びフック(ハンガー)13の構造の中に格納される。水室8は、疎水性多孔性フィルムを有する通気口(ベント)12を有し、水9が膜を横切って移動するために水室8に空気を導入する。
【0027】
本図は本発明の1つの実施態様であると理解すべきである。装置は、有益薬剤2が嚢または可撓性袋内に含まれており、水9が、膜5と可撓性ベローズ4との間のゾーンに移送するために圧縮されるような構成も取り得る。ベローズ4は、浸透圧性薬剤を含む伸張ゾーンが存在して膜5を横切る水を受容し、有益薬剤2を機械的に押して装置1から送出するような可撓性隔膜またはピストンに置換えることも出来る。
【0028】
ある実施態様において、有益薬剤の制御送出するための装置は、水室;水室と連結する水透過膜;水透過膜を透過してきた水を受容し、それにより伸張する抽出室;抽出室に存在する浸透圧性薬剤;抽出室の伸張に応じて収縮する有益薬剤を含む分配室;および有益薬剤を送出するための分配室に連結した排出口(ポート)から成る。
【0029】
他の実施態様において、有益薬剤の制御送出するための装置は、水室;水室と連結し、且つ1つ以上の浸透圧性薬剤をはじくように構成されている水移送膜;水移送膜を介して抽出室に移送される水を受用し、それによって伸長し、浸透圧性薬剤を含む抽出室;抽出室に存在する浸透圧性薬剤;抽出室の伸長に応じて収縮し、有益薬剤を含む分配室;および有益薬剤を送出するための分配室に連結した排出口(ポート)から成る。
【0030】
浸透圧性薬剤をはじくような膜の特性または構造は、水移送膜の表面に官能基を有していてもよく、そのような官能基は第4級アンモニウム基、スルホン酸基またはこれらの組合せから成る群より選択でされてもよい。透圧性薬剤をはじくような膜の特性または構造のある実施態様では、移送膜中に荷電官能基を有していてもよい。移送膜中の荷電官能基は、第4級アンモニウム基、スルホン酸基またはこれらの組合せから成る群より選択でされてもよい。
【0031】
装置の膜がイオン交換膜であってもよい。ある実施態様においてイオン交換膜が、陰イオン交換膜または陽イオン交換膜から成る群より選択されてもよい。ある実施態様において、イオン交換膜がポリマーから構成されている。イオン交換膜を構成するポリマーは、フッ素系ポリマー、スチレン−ジビニルベンゼン系ポリマー及びこれらの組合せの少なくとも1つであってもよい。ポリマー構造のイオン交換膜としては、Dupont社製「nafion」、ASTOM Corporation社製「Neosepta CMX」、「AMX」、「CIMS」、「CMB」、「AHA」、「ACM」、「ACS」、「AFN」、「AFX」、旭硝子社製「Selemion」及びこれらの組合せから選択されてもよい。
【0032】
浸透圧性薬剤は塩であってもよい。ある実施態様において、浸透圧性薬剤がアンモニウム、リン酸塩およびこれらの組合せの少なくとも1つである。
【0033】
装置は、可撓性隔膜およびピストンの1つによって分離されている抽出室および分配室を含む。ある実施態様において、可撓性隔膜は水低透過性材料から成るか、または水低透過性材料が塗布されている。水低透過性材料は、金属、金属コート層を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)、Halar、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PET、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)から選択されるポリマー及びこれらの組合せの少なくとも1つであってもよい。
【0034】
ある実施態様において、有益薬剤が芳香剤である。
【0035】
装置は、更に、水移送膜を介して流れる電流を制御する回路を有し、それにより水移送膜を介した抽出室への水の流れを制御してもよい。装置は、更に、水移送膜を介して受用される水の速度を制御する速度調節機構を有してもよい。速度調節機構が、水移送膜から水室を遮るような種々の程度を有する障害物であってもよい。
【0036】
装置は、水移送膜を水が透過するにつれて体積が変化する構成を有する可撓性壁から成る水室を有していてもよい。
【0037】
有益薬剤の送出方法も開示する。本方法は、水室に水を集める工程と、浸透圧性薬剤を有する抽出室に水移送膜を介して水を移送し、抽出室を伸長させる工程と、抽出室の伸長に応じて分配室から有益薬剤を分配する工程と、有益薬剤を送出する工程とから成る。
【0038】
抽出室の伸長は、可撓性隔膜またはピストン或は置換可能部材を歪めることによって行われてもよい。可撓性隔膜は、水低透過性または無視し得る水透過性を有する材料から成るか、または水低透過性または無視し得る水透過性を有する材料が塗布されていてもよい。水低透過性または無視し得る水透過性を有する材料が、金属、金属コート層を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)、Halar、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PET、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)から選択されるポリマー及びこれらの組合せであってもよい。
【0039】
水移送膜が水を集める室に接続されてもよく、水移送膜が1つ以上の浸透圧性薬剤をはじく性質を有していてもよい。
【0040】
図1aを参照すると、容器8の拡大図は、容器8の外面の下側に装置1のポート10に伸びている芯材層11を有することを示す。この場合、芯材層11又は芯材11は、有益薬剤2をポート10から送出し、装置1の側壁を上昇して有益薬剤2をより容易に蒸散させる。
【0041】
図1bを参照すると、可撓性ベローズ4又は隔壁4が、膜5を介して流体が透過して容器3の体積が減少可能なことを示す。ベローズ4は、可撓性隔膜は、水低透過性または無視し得る水透過性を有する材料から成るか、または水低透過性または無視し得る水透過性を有する材料が塗布されていてもよい。水低透過性または無視し得る水透過性を有する材料が、金属、金属コート層を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)、Halar、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)等のバリア性ポリマーから成るまたはその被覆層を有していてもよい。
【0042】
図2及び3を参照すると、速度調節機構が示される。第1の調節部材6aは、第1の調節部材6aの中間点から容易に伸張する開口部7を含む。第2の調節部材6bは開口27を含む。調節部材6a及び6bに対応する開口部7及び27は、調節部材6aは調節部材6bに対して回転させられ、膜5に水9を異なる量で接するために開口部7及び27の重複部位を増減させるように、装置1の中で互いに近傍に配置される。
【0043】
図5及び6を参照すると、ASTOM Corporation社製「Neosepta CMX」のイオン交換膜を使用した本発明の6装置が作られた。そのうちの2装置は、第2リン酸アンモニウム飽和溶液から成る浸透圧性薬剤と水との間の膜露出面が0.342cmであった。他の2装置は、第2リン酸アンモニウム飽和溶液から成る浸透圧性薬剤と水との間の膜露出面が0.519cmであった。更に他の2装置は、第2リン酸アンモニウム飽和溶液から成る浸透圧性薬剤と水との間の膜露出面が1.026cmであった。作動中、装置は、膜露出面の面積に比例して有益薬剤を一定の速度で送出した。
【0044】
図6を参照すると、「Neosepta CMB」のイオン交換膜と第2リン酸アンモニウム飽和溶液を浸透圧性薬剤として使用した本発明の3装置が作られた。膜露出面がそれぞれ約10cmであった。第1の装置は10℃で作動させ、第2の装置は24℃で作動させ、第3の装置は44℃で作動させた。作動時間を通じた送出速度を示す。44℃で作動した装置の送出速度は、24℃で作動した装置の送出速度の約83%であり、10℃で作動した装置の送出速度は約52%であった。これらの3つの送出速度は異なるものの、疎水性膜が浸透圧性薬剤から水を分離するために使用され、水蒸気がそれを横切って移送される場合よりもはるかに接近した値といえる。
【0045】
ここに記載されている本発明の基本理念または基本的な特徴を大きく逸脱することなく他の特定の実施態様を取ってもよい。記載された実施態様は、あらゆる点で例示でありこれに限定されないと考えるべきである。本発明の範囲は、上述の記載よりもむしろ添付の請求の範囲によって規定される。請求の範囲内の手段およびその均等における全ての変更は、本発明の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有益薬剤の制御送出を行う装置であって、当該装置は水室、水移送膜、抽出室、浸透圧性薬剤、分配室およびポート(排出口)から成り、水移送膜は水室と連結しており、抽出室は水移送膜を介して抽出室に移送される水を受用し、それによって伸長し、浸透圧性薬剤は抽出室に存在し、分配室は有益薬剤を含み、抽出室の伸長に応じて収縮し、ポートは有益薬剤を送出できるように分配室に接続されていることを特徴とする有益薬剤の制御送出を行う装置。
【請求項2】
有益薬剤の制御送出を行う装置であって、当該装置は水室、水移送膜、抽出室、浸透圧性薬剤、分配室およびポート(排出口)から成り、水移送膜は水室と連結し、且つ1つ以上の浸透圧性薬剤をはじくように構成されており、抽出室は水移送膜を介して抽出室に移送される水を受用し、それによって伸長し、浸透圧性薬剤は抽出室に存在し、分配室は有益薬剤を含み、抽出室の伸長に応じて収縮し、ポートは有益薬剤を送出できるように分配室に接続されていることを特徴とする有益薬剤の制御送出を行う装置。
【請求項3】
水移送膜の表面が、1つ以上の浸透圧性薬剤をはじくような官能基から成る請求項2に記載の装置。
【請求項4】
移送膜の表面の1つ以上の浸透圧性薬剤をはじくような官能基が、少なくとも第4級アンモニウム基、スルホン酸基またはこれらの組合せである請求項3に記載の装置。
【請求項5】
移送膜中の1つ以上の浸透圧性薬剤をはじくような官能基が荷電官能基である請求項2に記載の装置。
【請求項6】
移送膜中の荷電官能基が、少なくとも第4級アンモニウム基、スルホン酸基またはこれらの組合せである請求項5に記載の装置。
【請求項7】
移送膜がイオン交換膜から成る請求項2に記載の装置。
【請求項8】
イオン交換膜が、陰イオン交換膜および陽イオン交換膜の少なくとも1つである請求項7に記載の装置。
【請求項9】
イオン交換膜がポリマーから構成されている請求項7に記載の装置。
【請求項10】
イオン交換膜を構成するポリマーが、フッ素系ポリマー、スチレン−ジビニルベンゼン系ポリマー及びこれらの組合せの少なくとも1つである請求項9に記載の装置。
【請求項11】
イオン交換膜が、Dupont社製「nafion」、ASTOM Corporation社製「Neosepta CMX」、「AMX」、「CIMS」、「CMB」、「AHA」、「ACM」、「ACS」、「AFN」、「AFX」、旭硝子社製「Selemion」及びこれらの組合せの少なくとも1つである請求項8に記載の装置。
【請求項12】
浸透圧性薬剤が塩である請求項2に記載の装置。
【請求項13】
浸透圧性薬剤がアンモニウム、リン酸塩およびこれらの組合せの少なくとも1つである請求項3に記載の装置。
【請求項14】
抽出室および分配室が可撓性隔膜およびピストンで分離されている請求項1に記載の装置。
【請求項15】
可撓性隔膜が、水低透過性材料から成るか、または水低透過性材料が塗布されている請求項1に記載の装置。
【請求項16】
水低透過性材料が、金属、金属コート層を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)、Halar、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PET、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)から選択されるポリマー及びこれらの組合せの少なくとも1つである請求項15に記載の装置。
【請求項17】
抽出室および分配室の少なくとも1つの少なくとも一部が嚢の中に含まれている請求項1に記載の装置。
【請求項18】
嚢が、水低透過性または無視し得る水透過性を有する材料から成るか、または水低透過性または無視し得る水透過性を有する材料が塗布されている請求項17に記載の装置。
【請求項19】
水低透過性または無視し得る水透過性を有する材料が、金属、金属コート層を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)、Halar、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PET、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)から選択されるポリマー及びこれらの組合せの少なくとも1つである請求項18に記載の装置。
【請求項20】
有益薬剤が芳香剤である請求項1に記載の装置。
【請求項21】
更に、水移送膜を介して流れる電流を制御する回路を有し、それにより水移送膜を介した抽出室への水の流れを制御する請求項1に記載の装置。
【請求項22】
水移送膜を介して受用される水の速度を制御する速度調節機構を有する請求項1に記載の装置。
【請求項23】
速度調節機構が、水移送膜から水室を遮るような種々の程度を有する障害物である請求項22に記載の装置。
【請求項24】
水室が可撓性壁から成り、水移送膜を水が透過するにつれて体積が変化する構成である請求項1に記載の装置。
【請求項25】
水室がベントを有し、水移送膜を水が透過するにつれてガスが水室に入る構成である請求項1に記載の装置。
【請求項26】
水室が可動壁から成る請求項1に記載の装置。
【請求項27】
有益薬剤の送出方法であって、当該方法は、水室に水を集める工程と、浸透圧性薬剤を有する抽出室に水移送膜を介して水を移送し、抽出室を伸長させる工程と、抽出室の伸長に応じて分配室から有益薬剤を分配する工程と、有益薬剤を送出する工程とから成ることを特徴とする有益薬剤の送出方法。
【請求項28】
抽出室の伸長が、可撓性隔膜または置換可能部材を歪めることによって行われる請求項27に記載の有益薬剤の送出方法。
【請求項29】
可撓性隔膜が、水低透過性または無視し得る水透過性を有する材料から成るか、または水低透過性または無視し得る水透過性を有する材料が塗布されている請求項27に記載の有益薬剤の送出方法。
【請求項30】
水低透過性または無視し得る水透過性を有する材料が、金属、金属コート層を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)、Halar、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PET、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)から選択されるポリマー及びこれらの組合せの少なくとも1つである請求項29に記載の有益薬剤の送出方法。
【請求項31】
水を集める室に接続されている水移送膜が、1つ以上の浸透圧性薬剤をはじく性質を有する請求項27に記載の有益薬剤の送出方法。
【請求項32】
水移送膜が2つ以上の膜から成る請求項1に記載の有益薬剤の送出方法。
【請求項33】
少なくとも1つの膜が、他の少なくとも1つの膜に対して異なる極性の基を有する請求項32に記載の有益薬剤の送出方法。
【請求項34】
少なくとも1つの膜が、他の膜に対して液体を挟んで空間的に離れて配置されている請求項32に記載の有益薬剤の送出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−501233(P2012−501233A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525255(P2011−525255)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/055432
【国際公開番号】WO2010/025412
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(500039371)ミクロリン・エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】