説明

有限要素解析法におけるビーム−面接触をシミュレートする改善方法およびシステム

【課題】有限要素解析法(FEA)におけるビーム−面接触をシミュレートする方法およびシステムを提供する。
【解決手段】FEAモデルは、少なくとも1つのビームエレメントと1つの面メッシュとを有する。面メッシュは、任意のメッシュ密度を有する複数の二次元有限要素を備える。面メッシュの最小特性長さ(CL)が演算され、1つ以上の内側点が、CLより長い長さのビームエレメントに対して定義される。すべてのノード点に対して、0と1の間のパラメーター座標が、制定され、FEA解析の全体にわたって一定に保たれる。分配されたノードの質量は、貫通に抵抗するノードの力を演算するための強度値を演算するために用いられる。ビームエレメントに沿ったそれぞれのノード点における面メッシュとの初期の貫通は、初期のノードの変位から減算される1セットの変位によって補償され、これにより、補償力はノード点の初期相互貫通が減少するとき0である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、コンピュータ支援工学解析に関し、特に、ユーザが工業製品(例えば車、飛行機)設計の改善における決定を行うことを支援するために時間進行エンジニアリングシミュレーションに用いられる有限要素解析法におけるビーム−面接触をシミュレートする改善方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ支援工学(CAE)は多くの分野において技術者を支援するために用いられている。例えば、構造体あるいは製品設計のプロシージャにおいて、CAE解析は、特に有限要素解析法(FEA)は、種々の荷重条件(例えば、静的あるいは動的な)の下での応答(例えば応力、変位など)を評価するためによく用いられている。
【0003】
FEAは、三次元非線形構造設計および解析など複雑な製品あるいはシステム(例えば車、飛行機等)に関連するエンジニアリング問題をシミュレートする(つまりモデル化し解決する)ために産業において広く用いられる、コンピュータ化された方法である。FEAのその名前は、検討される対象のジオメトリ(幾何学的配置)を特定する方法に由来する。ジオメトリはエレメント(要素)とノードとによって定義される。体積あるいは連続体に対するソリッドエレメント、面に対するシェルあるいはプレートエレメント、および一次元構造体オブジェクトに対するビームあるいはトラスエレメントといった多くのタイプのエレメントがある。最も能力が試されるシミュレーションのうちの1つは、FEAのモデルの2つ以上の位置の間の接触と関連する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接触のシミュレートは主に、2つのオブジェクトの衝突イベント、例えば自動車衝突、シートメタル加工等において用いられている。ほとんどの従来技術アプローチは、面と面の接触に焦点を当てている。自動車および/またはシートメタルがシェルエレメント(つまり面エレメント)を用いて主としてモデル化されるからである。コンピュータ能力および技術の出現により、より精巧なエンジニアリングシミュレーション、例えば、コンジット内に収容されたケーブル、構造表面の付近のケーブル、骨格と作用する筋肉と腱の人体モデル、面上の織ってある布地等が望まれている。これらのシミュレーションの多くは、1つ以上の面メッシュ(つまりシェルエレメントのグループ)に接触するビームエレメントを必要とする。特に面メッシュがある特徴、例えば、異なるサイズのシェルエレメント、小さい半径の多くの異なる曲率、任意のメッシュ化(連続的あるいはジョイントが外れた(disjoint))を含んでいる場合、また、ビームエレメントの長さが面メッシュサイズよりはるかに大きい場合、このような接触をシミュレートする従来技術アプローチは不適当で非効率的であった。
【0005】
従来技術アプローチの問題を説明するために、2つ例を、図1Aおよび図1Bに示す(図の簡単化および見易さのために二次元で示す)。まず、ビームエレメント110が面118に接触しているところを、図1Aに示す。従来技術アプローチにおいてはビームエレメント110が2つの端部ノード112〜114によって表わされるので、2箇所の接触のみをビームエレメント110と面118との間で検出することができる。ビームエレメント110の内側部分と面118と間のどのような接触も無視される。さらにその問題を説明するために、図1Bは、ビームエレメント120が小さい半径の多くの曲率を有する面128と接触しているところを示している。ここでも、2つの接触のみを、端部ノード122〜124における面128とビームエレメント120との間に検出することができる。しかしながら、ビームエレメント120と面128との間には3つの接触があることは明らかである。したがって、ビーム−面接触をより正確に効率的にシミュレートするために用いることができる方法およびシステムの改善が望まれよう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
有限要素解析法におけるビーム−面接触をシミュレートする改善方法およびシステムを開示する。本発明の一の面では、有限要素解析法モデルは、互いに接触する少なくとも1つのビームエレメントと少なくとも1つの面メッシュとを含んでいる。面メッシュは、任意のメッシュ密度を有する複数の二次元有限要素(つまり異なるおよび/または同様なサイズを有するシェルエレメント)を備える。面メッシュの最小特性長さ(CL)が演算される。1つ以上の内側点が、CLより長い長さのビームエレメントに対して定義される。すべてのノード点(つまり、端部ノード、およびもしあれば内側点)に対して、0と1の間(0と1を含む)のパラメーター座標が、制定され、時間進行エンジニアリングシミュレーションにおいて有限要素解析法の全体にわたって一定に保たれる。分配されたノードの質量は、貫通に抵抗するノードの力を演算するための強度値を演算するために用いられる。ビームエレメントに沿ったノード点には、ビームエレメントの外面を近似するビーム厚さが割り当てられる。ビームエレメントに沿ったそれぞれのノード点における面メッシュとの初期の貫通は、初期のノードの抵抗力から減算される1セットの力によって補償される。その1セットの補償力は、平衡がシミュレーションの最初に存在することを保証する。
【0007】
他の面では、ビームエレメントが最初に扱われた後、ノード点のそれぞれと、面メッシュのすべてのシェルエレメントと、の間の接触が、断続的な全体的サーチ手法においてチェックされる。全体的サーチは、ビームエレメントと、ジョイントが外れたセグメント(disjointed segment)および可変曲率(例えば、曲率は任意に変化する)を有する面との間の接触を検出するよう構成される。
【0008】
さらに他の面では、局所的サーチ法は、ノード点のそれぞれが面メッシュと接触しているか否かを決定するために用いられる。もし接触している場合、1セットの接触力がそのノード点に対して演算される。もし接触していない場合、現在の条件の下での特定のノード点が面メッシュと接触する予想に基づく推定が推定される。推定は、概して、特定回数(N回)の時間ステップあるいはソリューションサイクルの形で演算される。そのノード点に対する局所的サーチは、推定あるいは推測が行われた直後の次の数回(N/2回)のソリューションサイクルに対してスキップされるように構成される。局所的サーチにおいて、ノード点は、セグメントからセグメントに移動するとき、面が連続的である(つまり、ジョイントが外されておらず、すぐ近くである)限り、追跡(トラック(tracked))される。
【0009】
本発明の他の目的、特徴および利点は、添付の図面を参照した以下の実施形態の詳細な説明を考察することで明らかになるであろう。
【0010】
本発明のこれらおよび他の特徴、面および利点は、以下の説明、添付した特許請求の範囲および以下の添付図面との関連から一層よく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、面メッシュと接するビームエレメントの例を示す二次元の図である。
【図1B】図1Bは、面メッシュと接するビームエレメントの例を示す二次元の図である。
【図2A】図2Aは、本発明の実施形態にかかる、有限要素解析法におけるビーム−面接触をシミュレートする例示的なプロセスを集合的に示すフローチャートである。
【図2B】図2Bは、本発明の実施形態にかかる、有限要素解析法におけるビーム−面接触をシミュレートする例示的なプロセスを集合的に示すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の実施形態にかかる、面メッシュと接する複数の内側点を有する例示的なビームエレメントを示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態にかかる、ビームエレメントの例示的なノード点およびそのパラメーター座標を示す図である。
【図5A】図5Aは、本発明の実施形態にかかる、ビーム−面接触境界における例示的なビームエレメントの初期貫通点をシミュレートするために用いられる種々の定義を集合的に示す図である。
【図5B】図5Bは、本発明の実施形態にかかる、ビーム−面接触境界における例示的なビームエレメントの初期貫通点をシミュレートするために用いられる種々の定義を集合的に示す図である。
【図5C】図5Cは、本発明の実施形態にかかる、ビーム−面接触境界における例示的なビームエレメントの初期貫通点をシミュレートするために用いられる種々の定義を集合的に示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態が構築された演算デバイスの主要なコンポーネントを示す機能図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を、図1乃至図6を参照してここに説明する。しかしながら、これらの図を参照してここで与える詳細な説明は例示の目的であって発明がこれらの限定的な実施形態を越えて広がっていることは、当業者には容易に理解されよう。
【0013】
まず図2A乃至図2Bを参照して、本発明の実施形態にかかる、有限要素解析法におけるビーム−面接触をシミュレートする例示的なプロセス200を例示するフローチャートを集合的に示す。プロセス200は、好ましくはソフトウェアで実行される。
【0014】
プロセス200は、ステップ202において、設計されるあるいは改善される工業製品、例えば、衝突ダミー(つまり車両乗員)を有する自動車を定義する有限要素解析法(FEA)モデルを受け取ることによって、スタートする。FEAを用いる時間進行エンジニアリングシミュレーションは、設計イベント(例えば自動車衝突)下の工業製品の構造挙動を評価するために行なわれる。時間進行シミュレーションは、多くの回数の時間ステップつまりソリューションサイクルからなる。
【0015】
FEAモデルは、互いに接触することができる少なくとも1つの面メッシュと少なくとも1つのビームエレメントとを有する。面メッシュは、複数の二次元エレメント(例えばシェルエレメント)を備える。面メッシュで衝突ダミーの骨格をモデル化する際、ビームエレメントは腱をモデル化するために用いることができる。次にステップ204において、面メッシュの最小特性長さ(CL)が制定される。CLは、エレメント(例えばシェルエレメント)を横断する最小距離として定義される。最小CLは、面メッシュのエレメントのすべての最小のCLである。そして、ステップ206において、少なくとも1つの内側点が、長さがCLより長いビームエレメントに対して生成される。少なくとも1つの内側点は、ビームエレメントの2つの端部ノード間に均等に間隔をあけて配置される。図3は、例示的なビームエレメント310および例示的な面メッシュ320を示す(スケールされていない)。ビームエレメントは、2つの端部ノード304a〜bを有する。1セットの内側点302がビームエレメント310に対して生成される。面メッシュは、多くの二次元エレメントを有する。概念を説明するために、最小CL330(例のみ)を示す。2つの端部ノード304a〜b、ビームエレメント310の内側点302,308をまとめて、本明細書においてはノード点306という。ビームエレメント310のすべてのノード点306は、面メッシュ320との接触演算に用いられる。初期貫通点308は、面メッシュ320と初期相互貫通しているノード点である。
【0016】
ステップ208において、それぞれのノード点306にパラメーター座標が割り当てられる。図4は、例示的な内側点PIのパラメーター座標SIの定義を示す図である。
SI = LP / L
ここで、Lはビームエレメント310の長さであり、LPは第1端部ノードn1から測定された内側点PIの距離である。ビームエレメント310の2つの端部ノードが、第1端部ノードn1および第2端部ノードn2としてそれぞれ表示されている。第1端部ノードのパラメーター座標は0(ゼロ)である。一方、第2端部ノードのパラメーター座標は1である。
【0017】
次に、ステップ210において、ビームエレメントの厚さが、ビームエレメントの外皮を近似するために、ビームエレメント310に沿ったそれぞれのノード点306に任意選択的に割り当てられる。そして、ビームエレメントと面メッシュの外皮と間の接触を演算することができる。厚さは、均一なジオメトリに対して定数、あるいは不均一なジオメトリに対して変数とできる。一の実施形態においては、2つの端部ノードの厚さを、テーパ状のジオメトリに対するそれぞれの内側点における厚さを導き出すために用いることができる。他の実施形態において、ビーム(例えば、円形、I字状、U溝など)の正確な横断面形状を、接触において考慮することができる。正確な横断面形状を表わす円形の近似は、演算上最も効率的である。
【0018】
次に、ステップ212において、ビームエレメントに沿ったそれぞれのノード点306の1セットの接触抵抗力が演算される。面メッシュ320と初期相互貫通しているノード308に対しては、1セットの補償力が初期相互貫通を相殺するよう演算される。1セットの補償力は、相互貫通が減少するにつれて0へと単調に減少する。接触抵抗力および補償力を演算するために、それぞれのノード点306には強度値Kが割り当てられる。例えば、明示的時間積分法(explicit time integration scheme)においては、
K = αM / Δt2
ここで、Mはノードの質量であり、αはユーザ定義の定数(例えばα=0.10)であり、Δtは2つのソリューションサイクル間の時間ステップサイズである。ノードの質量Mを以下のように演算することができる。
それぞれの内側点302、308において、
Mpoint = ρAL / (n+1)
ここで、ρはビームの密度であり、Aはビームの面積であり、Lはビームの長さであり、そして、nは内側点の数である。
それぞれの端部ノード304a〜bにおいて
Mnode = Mpoint / 2
暗黙的時間積分法(implicit time integration scheme)においては、ノードの強度を以下のように演算することができる。
内側点302、308において、
Kpoint = fac (AE) / (L x (n+1))
facはユーザ定義係数(例えば0.10)であり、Eはヤング率であり、A,Lおよびnは上に定義されている。
それぞれの端部ノード304a〜bにおいて
Knode = Kpoint / 2
暗黙的時間積分法においては、時間ステップサイズΔtsをユーザが指定することができる。これは接触強度演算のみに適用される。暗黙的時間積分手法における時間ステップサイズは、必要とされる明示的時間積分の時間ステップサイズより相当大きく、例えば100〜1000倍大きい。
【0019】
ノード点306における接触抵抗力Fは式F=KΔuを用いて演算される。ここで、Δuは接触面(つまり面メッシュ)を通ってビームエレメントのノード点の相互貫通距離を与える変位ベクトルである。図5Aに示すように、ビーム510上のノード502(つまり特定のノード点306)は、面512との初期相互貫通距離Δu522aを有する。大きな初期の力による数値的な不安定性を回避するために、補償変位ベクトルを初期相互貫通変位ベクトルから減算する。その結果としての接触抵抗力は以下のとおりである。
F = K(Δu-δu)
ここで、δu524aは、最初に初期相互貫通の値を割り当てられノードの貫通が減少するにつれて単調に減少する補償変位ベクトルである。
【0020】
図5Aは、ビーム510と面メッシュ512との間の接触の初期構成を示す。ノード502は、初期貫通ベクトルΔu522aと補償変位ベクトルδu524aとを有する。これらの2つの項が等しい大きさを有するので、その結果接触抵抗力は最初には0である。
【0021】
図5Bは、ノード502が面メッシュ512をより大きく貫通している新しい位置511bにビーム510が移動した、次の構成を示す。したがって相互貫通距離ベクトルΔu522bが増加しており、一方、補償変位ベクトルδu524aは同じままである。このため、正の接触抵抗力が結果として生じる。
【0022】
図5Cに示す他のシナリオ(図5Bに示したものの反対)において、ノード502が面メッシュ512をより小さく貫通している新しい位置511cにビーム510が移動している。したがって相互貫通変位ベクトルΔu522cが減少し、一方、補償変位ベクトルδu524cもまた同じ量だけ減少している。この結果、接触抵抗力は0である。言いかえれば、ビームエレメント510が元の位置から離れるよう移動する場合、ノード502に対する抵抗はない。
【0023】
再び図2Aを参照して、ステップ214において、ビームエレメントと面との間の接触を有している時間進行エンジニアリングシミュレーションを、ユーザが工業製品の改善において決定を行うことを支援するために用いることができる有限要素解析法において行うことができる。
【0024】
ビームエレメント沿ったそれぞれのノード点と面メッシュとの間の接触を検出する例示的なプロセス250を、図2Bにおけるフローチャートに示す。プロセス250は、ソフトウェアで好ましくは実行される。
【0025】
プロセス250は、ステップ252において所定時間間隔で、すべてのノード点306と、すべてのセグメント(例えば面メッシュにおけるすべての二次元エレメント)との、間で断続的な全体的サーチを行なうことによってスタートする。全体的サーチは、ビームエレメントと面メッシュ上の1セットのジョイントが外れたセグメントとの間の接触の検出を確実に行うよう構成される。最も効率的な手法のうちの1つが接触を見つけることを可能にするには、バケットソート(bucket sorting)法を用いて実行することができる。暗黙的時間積分法ベースのFEAに関しては、状態の変化がかなり大きいので、全体的サーチはすべてのソリューションサイクルあるいは時間ステップ毎に行なわれる。明示的時間積分ベースのFEAに関しては、時間ステップインクリメントが非常に小さいので、所定時間間隔をかなり大きくする(例えば200回のソリューションサイクル)ことができる。
【0026】
次に、ステップ254において、局所的サーチが、ノード点とセグメントとの間の接触の正確な位置を見つけるために行なわれる。プロセス250はまずノード点がセグメントと接触しているか否かを判定する判断255に移行する。「yes」の場合、プロセス250はそれに応じてステップ256においてジオメトリおよび力を更新する。例えば、以前のソリューションサイクルからノード点のセグメント上の対応するパラメーター座標値を見つける。現在調査しているセグメント上にない場合、隣接するセグメントが接触に関してチェックされる。そうでない場合、現在調査しているセグメント上の接触が確認されると、以下のアイテムが演算される。1)貫通距離(例えばΔu522a)、2)補償力を含んでいる接触抵抗力(例えばF=K(Δu−δu))、3)クーロン摩擦がシミュレーションにおいて考慮される場合、摩擦力、4)所望に応じて減衰力。演算された力はすべて、次のソリューションサイクルの全体的な力ベクトルに加算される。
【0027】
再び判断255を参照して、「no」の場合、これらのノードがセグメントに近いがまだ接触していない。ステップ258において、ノードのそれぞれがセグメントと接触する可能性のある推定数回の時間ステップあるいはソリューションサイクル(Nest回)が演算される。次に、ステップ260において、接触する可能性のあるノードのそれぞれとセグメントと間の接触が、数回(Nest/2回)の時間ステップあるいはソリューションサイクルの後に再チェックされる。推定が行われた直後の次の数回(Nest/2回)のソリューションサイクルをスキップすることにより、効率的で効果的な接触検出が保証される。
【0028】
一の側面において、本発明は、ここで説明した機能性を実行可能な1つ以上のコンピュータシステムに対してなされたものである。コンピュータシステム600の一例を図6に示す。コンピュータシステム600は、プロセッサ604などの1つ以上のプロセッサを有する。プロセッサ604はコンピュータシステム内部通信バス602に接続されている。種々のソフトウェアの実施形態を、この例示的なコンピュータシステムで説明する。この説明を読むと、いかにして、他のコンピュータシステムおよび/またはコンピューターアーキテクチャーを用いて、本発明を実行するかが、関連する技術分野に習熟している者には明らかになるであろう。
【0029】
コンピュータシステム600は、また、メインメモリ608好ましくはランダムアクセスメモリ(RAM)を有しており、また二次メモリ610を有していてもよい。二次メモリ610は、例えば、1つ以上のハードディスクドライブ612、および/またはフレキシブルディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブなどに代表される1つ以上のリムーバブルストレージドライブ614を有することができる。リムーバブルストレージドライブ614は、よく知られている方法でリムーバブルストレージユニット618から情報を読み取り、および/またはリムーバブルストレージユニット618に情報を書き込む。リムーバブルストレージユニット618は、リムーバブルストレージドライブ614によって読み取り・書き込みされるフレキシブルディスク、磁気テープ、光ディスクなどを表わす。以下にわかるように、リムーバブルストレージユニット618は、コンピューターソフトウェアおよび/またはデータを内部に記憶しているコンピュータ可読媒体を含む。
【0030】
別の実施形態において、二次メモリ610は、コンピュータプログラムあるいは他の命令をコンピュータシステム600にロードすることを可能にする他の同様な手段を有することもできる。そのような手段は、例えば、リムーバブルストレージユニット622およびインターフェース620を有することができる。そのようなものの例は、プログラムカートリッジおよびカートリッジインターフェース(ビデオゲーム機に見られるようなものなど)、リムーバブルメモリチップ(消去可能プログラマブルROM(EPROM)、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュメモリ、あるいはPROMなど)およびそれらに対応するソケットと、ソフトウェアおよびデータをリムーバブルストレージユニット622からコンピュータシステム600に転送させることを可能にする他のリムーバブルストレージユニット622およびインターフェース620と、が含まれうる。一般的に、コンピュータシステム600は、プロセススケジューリング、メモリ管理、ネットワーク管理およびI/Oサービスなどのタスクを行なうオペレーティングシステム(OS)ソフトウェアによって制御され連係される。
【0031】
通信インターフェース624も、また、バス602に接続することができる。通信インターフェース624は、ソフトウェアおよびデータがコンピュータシステム600と外部デバイスとの間で転送されることを可能にする。通信インターフェース624の例には、モデム、ネットワークインターフェース(イーサネット(登録商標)・カードなど)、コミュミケーションポート、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)、スロットおよびカードなど、が含まれうる。
【0032】
コンピュータシステム600は、特定の通信手段(つまりプロトコル)を実行してデータを送受信する。一般的なプロトコルの1つは、インターネットにおいて一般的に用いられているTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)である。一般的に、通信インターフェース624は、データファイルをデータネットワーク上で伝達される小さいパケットへ分割し、あるいは受信したパケットを元のデータファイルへ組み立てる(再構築する)、いわゆるパケットのアセンブル・リアセンブル管理を行う。さらに、通信インターフェース624は、正しい宛先に届くようそれぞれのパケットのアドレス部分に対処し、あるいは、コンピュータ600が宛先となっているパケットを他に向かわせることなく確実に受信する。
【0033】
この書類において、「コンピュータ記録可能記憶媒体」、「コンピュータ記録可能媒体」および「コンピュータ可読媒体」という用語は、リムーバブルストレージドライブ614および/またはハードディスクドライブ612に組み込まれたハードディスクなどの媒体を通常意味して用いられる。これらのコンピュータプログラム製品は、ソフトウェアをコンピュータシステム600に提供する手段である。本発明は、このようなコンピュータプログラム製品に対してなされたものである。
【0034】
コンピュータシステム600は、また、コンピュータシステム600にモニタ、キーボード、マウス、プリンタ、スキャナ、プロッターなどにアクセスさせる入出力(I/O)インターフェース630を有していてもよい。
【0035】
コンピュータプログラム(コンピュータ制御ロジックともいう)は、メインメモリ608および/または二次メモリ610にアプリケーションモジュール606として記憶される。コンピュータプログラムを、また、通信インターフェース624を介して受け取ることもできる。このようなコンピュータプログラムが実行された時、コンピュータプログラムによって、コンピュータシステム600がここに説明した本発明の特徴を実現することが可能になる。詳細には、コンピュータプログラムが実行された時、コンピュータプログラムによって、プロセッサ604がここに説明した本発明の特徴を実現することが可能になる。したがって、このようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステム600のコントローラを表わしている。
【0036】
ソフトウェアを用いて発明が実行されるある実施形態においては、当該ソフトウェアは、コンピュータプログラム製品に記憶され、あるいは、リムーバブルストレージドライブ614、ハードディスクドライブ612あるいは通信インターフェース624を用いて、コンピュータシステム600へとロードされる。アプリケーションモジュール606は、プロセッサ604によって実行された時、アプリケーションモジュール606によって、プロセッサ604がここに説明した本発明の機能を実現する。
【0037】
所望のタスクを実現するために、I/Oインターフェース630を介したユーザ入力によって、あるいは、よることなしに、1つ以上のプロセッサ604によって実行することができる1つ以上のアプリケーションモジュール606、メインメモリ608に、ロードすることもできる。動作においては、少なくとも1つのプロセッサ604がアプリケーションモジュール606のうち1つが実行されると、結果が演算され二次メモリ610(つまりハードディスクドライブ612)に記憶される。時間進行エンジニアリングシミュレーションの状況(例えば、変形したビームエレメント、変形した面およびそれらの相対的な位置)は、テキストあるいはグラフィックス表現でI/Oインターフェース630を介してユーザに報告される。
【0038】
本発明を具体的な実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態は単に例示的なものであって、本発明を限定するものではない。具体的に開示した例示的な実施形態に対する種々の変形あるいは変更が当業者よって提案されよう。例えば、バケットソートアルゴリズムを用いて全体的サーチ法を説明し示したが、他の均等物な方法を同じことを達成するために用いることができる。さらに、面メッシュを円形状の有限要素メッシュであるとして示したが、他のタイプの面メッシュを用いることができる。さらにまた、図示の簡略化のため、面メッシュを二次元で示したが、面メッシュを任意の形状の三次元オブジェクトの面にすることができる。つまり、本発明の範囲は、ここに開示した具体的な例示的実施形態に限定されるのではなく、当業者が容易に思いつくあらゆる変形は、本願の精神および認識範囲内および添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
110 ビームエレメント
112 端部ノード
114 端部ノード
118 面
120 ビームエレメント
122 端部ノード
124 端部ノード
128 面
302 内側点
304a,b 端部ノード
306 ノード点
308 初期貫通点
310 ビームエレメント
320 面メッシュ
330 最小CL
502 ノード
510 ビーム
511b,c 新しい位置
512 面メッシュ
522a〜c 相互貫通変位ベクトルΔu
524a,c 補償変位ベクトルδu
600 コンピュータシステム
602 バス
604 プロセッサ
606 アプリケーションモジュール
608 メインメモリ
610 二次メモリ
612 ハードディスクドライブ
614 リムーバブルストレージドライブ
618 リムーバブルストレージユニット
620 インターフェース
622 リムーバブルストレージユニット
624 通信インターフェース
630 I/Oインターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有限要素解析法において面メッシュと接触するビームエレメントをシミュレートする方法であって、
コンピュータシステムに、互いに接触する1つ以上のオブジェクトを表わすよう、少なくとも1つのビームエレメントと少なくとも1つの面メッシュとを有する有限要素解析法モデルを受け取るステップであって、少なくとも1つのビームエレメントのそれぞれが第1および第2端部ノードを有するとともに、少なくとも1つの面メッシュは複数の二次元有限要素を含んでいるステップと、
少なくとも1つの面メッシュの最小特性長さ(CL)を制定するステップと、
少なくとも1つのビームエレメントの前記それぞれの長さが最小CLより長い場合、最小CLの関数としての式に応じて少なくとも1つのビームエレメントの前記それぞれの第1および第2端部ノード間に1つ以上の内側点を生成するステップと、
前記それぞれの少なくとも1つのビームエレメントに沿ったそれぞれのノード点における1セットの接触抵抗力を演算するステップであって、前記それぞれのノード点が前記第1および第2端部ノードならびに前記1つ以上の内側点のうちの1つであり、1セットの接触抵抗力のそれぞれが前記それぞれのノード点において少なくとも1つの面メッシュとの初期相互貫通距離を相殺する補償力を含んでいるステップと、
前記第1および第2端部ノードならびに前記1つ以上の内側点のうちのどの1つが複数の二次元有限要素のそれぞれと接触しているかを決定するよう、局所的サーチと組み合わせた断続的な全体的サーチを介して、接触効果を含んでいる有限要素解析法を用いた有限要素モデルを用いてコンピュータシステムにおける時間進行エンジニアリングシミュレーションを行なうステップであって、時間進行エンジニアリングシミュレーションの結果がコンピュータシステムに連結された出力インターフェースを介してユーザに提示され、これにより、ユーザが結果を用いて工業製品設計の改善における決定を行うことができ、時間進行エンジニアリングシミュレーションは複数回のソリューションサイクルを含んでいるステップと、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、特性長さは前記それぞれの二次元有限要素を横断する最小距離である方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記1つ以上の内側点はビームエレメントを複数のセグメントに分割しており、それぞれのセグメントは最小CL以下の長さを有している方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記それぞれのノードが少なくとも1つの面メッシュのうちの1つの内部に位置すると判別された場合、初期相互貫通距離には正の値が割り当てられ、その他の場合、初期相互貫通には0が割り当てられる方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、補償力は、対応する相互貫通距離が初期相互貫通距離から減少するとき、0のままである方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、補償力は、前記それぞれのノードにおける相互貫通距離と割り当てられたノードの強度との関数である方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、有限要素解析法が明示的なソリューション法を用いて行なわれる場合、ノードの強度はノードの質量の関数である方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、さらに、少なくとも1つのビームエレメントの前記それぞれに沿った前記それぞれのノードに対するパラメーター座標を定義するステップを備える方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、さらに、ビームエレメントの外皮と面メッシュと間の接触をチェックするために、少なくとも1つのビームエレメントの前記それぞれに沿った前記それぞれのノードにおける厚さを割り当てるステップを備える方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、少なくとも1つの面メッシュの前記それぞれは、任意の不均一な密度を有する二次元有限要素を含んでいる方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、断続的な全体的サーチは、少なくとも1つのビームエレメントと、少なくとも1つの面メッシュに含まれているジョイントが外れたセグメントと、の間の接触を検出するよう構成されている方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、局所的サーチと組み合わせた断続的な全体的サーチを介して、接触効果を含んでいる有限要素解析法を用いた有限要素モデルを用いてコンピュータシステムにおける時間進行エンジニアリングシミュレーションを行なう前記ステップは、さらに、時間進行エンジニアリングシミュレーションの現在の条件に基づいて、前記それぞれのノード点と前記少なくとも1つの面メッシュとの間の次の接触に対する推定を行うステップであって、次の接触がNest回のソリューションサイクル内において起こることを予測するステップを備えている方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記それぞれのノード点に対する局所的サーチは、それぞれの前記推定が行われた直後のNest回の次の半分のソリューションサイクルに対してスキップされるように構成される方法。
【請求項14】
有限要素解析法において面メッシュと接するビームエレメントをシミュレートするシステムであって、
アプリケーションモジュールに対するコンピュータ可読コードを記憶するメインメモリと、
メインメモリに連結される少なくとも1つのプロセッサと、を備えるシステムであって、前記少なくとも1つのプロセッサがメインメモリにおけるコンピュータ可読コードを実行してアプリケーションモジュールに方法に基づくオペレーションを行わせるシステムであり、その方法が、
システムに、互いに接触する1つ以上のオブジェクトを表わすよう、少なくとも1つのビームエレメントと少なくとも1つの面メッシュとを有する有限要素解析法モデルを受け取るステップであって、少なくとも1つのビームエレメントのそれぞれが第1および第2端部ノードを有するとともに、少なくとも1つの面メッシュは複数の二次元有限要素を含んでいるステップと、
少なくとも1つの面メッシュの最小特性長さ(CL)を制定するステップと、
少なくとも1つのビームエレメントの前記それぞれの長さが最小CLより長い場合、最小CLの関数としての式に応じて少なくとも1つのビームエレメントの前記それぞれの第1および第2端部ノード間に1つ以上の内側点を生成するステップと、
少なくとも1つのビームエレメントの前記それぞれに沿ったそれぞれのノード点における1セットの接触抵抗力を演算するステップであって、前記それぞれのノード点が前記第1および第2端部ノードならびに前記1つ以上の内側点のうちの1つであり、1セットの接触抵抗力のそれぞれが前記それぞれのノード点において少なくとも1つの面メッシュとの初期相互貫通距離を相殺する補償力を含んでいるステップと、
前記第1および第2端部ノードならびに前記1つ以上の内側点のうちのどの1つが複数の二次元有限要素のそれぞれと接触しているかを決定するよう、局所的サーチと組み合わせた断続的な全体的サーチを介して、接触効果を含んでいる有限要素解析法を用いた有限要素モデルを用いてシステムにおける時間進行エンジニアリングシミュレーションを行なうステップであって、時間進行エンジニアリングシミュレーションの結果がシステムに連結された出力インターフェースを介してユーザに提示され、これにより、ユーザが結果を用いて工業製品設計の改善における決定を行うことができ、時間進行エンジニアリングシミュレーションは複数のソリューションサイクルを含んでいるステップと、
を備えているシステム。
【請求項15】
方法に基づいて、有限要素解析法において面メッシュと接するビームエレメントをシミュレートするコンピュータシステムを制御する命令を有するコンピュータ可読媒体であって、その方法が、
コンピュータシステムに、互いに接触する1つ以上のオブジェクトを表わすよう、少なくとも1つのビームエレメントと少なくとも1つの面メッシュとを有する有限要素解析法モデルを受け取るステップであって、少なくとも1つのビームエレメントのそれぞれが第1および第2端部ノードを有するとともに、少なくとも1つの面メッシュは複数の二次元有限要素を含んでいるステップと、
少なくとも1つの面メッシュの最小特性長さ(CL)を制定するステップと、
少なくとも1つのビームエレメントの前記それぞれの長さが最小CLより長い場合、最小CLの関数としての式に応じて少なくとも1つのビームエレメントの前記それぞれの第1および第2端部ノード間に1つ以上の内側点を生成するステップと、
少なくとも1つのビームエレメントの前記それぞれに沿ったそれぞれのノード点における1セットの接触抵抗力を演算するステップであって、前記それぞれのノード点が前記第1および第2端部ノードならびに前記1つ以上の内側点のうちの1つであり、1セットの接触抵抗力のそれぞれが前記それぞれのノード点において少なくとも1つの面メッシュとの初期相互貫通距離を相殺する補償力を含んでいるステップと、
前記第1および第2端部ノードならびに前記1つ以上の内側点のうちのどの1つが複数の二次元有限要素のそれぞれと接触しているかを決定するよう、局所的サーチと組み合わせた断続的な全体的サーチを介して、接触効果を含んでいる有限要素解析法を用いた有限要素モデルを用いてコンピュータシステムにおける時間進行エンジニアリングシミュレーションを行なうステップであって、時間進行エンジニアリングシミュレーションの結果がコンピュータシステムに連結された出力インターフェースを介してユーザに提示され、これにより、ユーザが結果を用いて工業製品設計の改善における決定を行うことができ、時間進行エンジニアリングシミュレーションは複数のソリューションサイクルを含んでいるステップと、
を備えているコンピュータ可読媒体。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−262654(P2010−262654A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103206(P2010−103206)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(509059893)リバーモア ソフトウェア テクノロジー コーポレーション (29)
【Fターム(参考)】