説明

望ましくない電磁放射線への曝露を低減させるための方法および装置

【解決手段】 本発明は、望ましくない電磁放射線への曝露を低減させる方法および装置に関するものである。前記装置はターゲット・アンテナを使用して、送信中の携帯電話または調理中の電子レンジ等の作動中の放射源からの特定の電磁放射線を捕獲する。前記ターゲット・アンテナは、前記放射源から放射される望ましくない電磁放射線の周波数に同調される。前記装置は前記捕獲された電磁放射線を電流に変換し、熱装置、機械装置または電気装置を動作させることにより収集された電流を消散する。好適な実施形態では、前記電流は電流が供給されると点灯するLEDディスプレイの用途に向けられ、ユーザーに前記装置が作動していることを示すという第二の目的を果たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射線を受信するアンテナに関するものである。より具体的には、本発明は、前記作動中の電磁放射線の放射源の周辺に配置され、作動中の放射源から発生する望ましくない電磁放射線を低減させるようになっているアンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
作動中に電磁放射線を放射する装置は数多くある。例えば、無線通信装置は送信中に意図的に電磁放射線を発生させる。他の装置においては意図せずに放射される。例えば、電子レンジで調理している場合、電子レンジからマイクロ波が知らないうちに漏れている可能性がある。ハンドヘルドの携帯電話の広範囲な普及および使用により、この種の放射線による潜在的な有害性に関する懸念が高まってきている。ハンドヘルドの携帯電話は、通常、ハウジングから上垂直方向に延びるアンテナを伴う伸長したハウジングを有する。この種の電話を使用する際、ユーザーの頭部が当該携帯電話に隣接して配置されると、前記アンテナが近接されることになる。前記携帯電話により送信が行われる際、前記アンテナは電磁放射線を発生する。この種のアンテナは本明細書においては送信アンテナと呼ぶ。このように、ユーザーが会話をしているとき、前記装置は前記送信アンテナから電磁放射線を発しており、ユーザーの頭部に対し相当量の電磁エネルギーが近距離で直接投射されていることになる。
【0003】
各携帯電話は、ユーザーが曝される電磁放射線の量に関する政府の特定のガイドラインに準拠しなければならない。人体によって吸収される無線周波数(RF)の電磁放射線の量は、SARあるいは比吸収率として知られている単位で測定される。電話の動作に大きな悪影響を与えることなく前記SARを低減させることが望ましい。
【0004】
前記送信アンテナから発生する電磁エネルギーから人体を保護する試みがなされてきた。例えば、Huntに対して発行された米国特許第5,613,221号明細書は、ユーザーの頭部から電磁放射線を排除するために前記送信アンテナとユーザーの頭部の間に設置する伝導性ストリップを開示している。前記送信アンテナの位置または電磁放射線のパターンを変えることにより電磁エネルギー源を人体から遠ざける試みもなされている。例えば、Rinotに対して発行された米国特許第6,356,773号明細書では、前記送信アンテナは電話から取り外され、ユーザーの頭部の上に配置されている。前記送信アンテナとユーザーの頭部との間に絶縁シールドが帽子のように配置されており、それにより放射を防ぎ電磁放射線がユーザーの体を貫通しないようにしている。Simmonsに対して発行された米国特許第6,031,495号明細書では、送信アンテナの両極の間に伝導性ストリップを使用して、ユーザーの頭部から離れてエンドファイア型双方向パターンを生成する。電磁放射線を相殺することにより有害な放射への曝露を低減させる試みがなされている。例えば、Hsuらに対して発行された米国特許第6,314,277号明細書では、携帯電話に信号をフィードバックすることにより、吸収性のディレクショナル・シールドで携帯電話から発せられた電磁放射線をキャンセルする携帯電話のアンテナが開示されている。
【0005】
従って、本発明の目的の1つは、前記放射源に要求される性能に大きな悪影響を与えることなく作動中の放射源からのユーザーに対するSARを低減させるための方法および装置を提供することにある。特に、本発明の目的は、ユーザーが携帯電話から受ける望ましくない電磁放射線を低減させるための方法および装置を提供することである。本発明のさらなる目的は、放射源に接続することなく、または放射源を再設計することなく、既存の放射源から発生する望ましくない電磁放射線を低減させるための方法および装置を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、望ましくない電磁放射線への曝露を低減させる方法および装置に関するものである。前記装置は、ターゲット・アンテナを使用して、送信中の携帯電話または調理中の電子レンジ等の作動中の放射源から特定の電磁放射線を捕獲する。前記ターゲット・アンテナは、前記放射源から放射される望ましくない電磁放射線の周波数に同調される。前記装置は前記捕獲された電磁放射線を電流に変換し、熱装置、機械装置または電気装置を動作させることにより収集された電流を消散する。好適な実施形態では、前記電流は十分な電流が供給されると点灯するLEDディスプレイの用途に向けられ、その結果、収集された電流が消費されてユーザーに装置が作動していることを示すという第二の目的を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明を図示するブロック図である。
【図2】図2は、放射源近くの本発明を図示するブロック図である。
【図3】図3は、外部シェルに本発明を装着した携帯電話の斜視図である。
【図4】図4は、外部ハウジングに本発明を装着した電子レンジの斜視図である。
【図5】図5は、本発明を近くに配置した状態の電子レンジの斜視図である。
【図6】図6は、本発明の好適な1実施形態である、携帯電話に使用するプリント基板のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
10に示す本発明は、望ましくない電磁放射線を低減させるものである。本発明は、1本のターゲット・アンテナ14および1つの放散アセンブリ17を有している。図1を参照。前記ターゲット・アンテナは、近くで作動中の放射源11の周波数に同調させる。前記ターゲット・アンテナ14の同調には、放射されている電磁放射線の望ましくない波長に一致させるために、適切な長さのアンテナを選択することが含まれる。前記放射源11が作動すると、前記放射源は電磁放射線を発する。ターゲット・アンテナ14が電磁放射線により攻撃されると、前記ターゲット・アンテナ14において電子の動きが活発となり、電子流(電流)が発生する。何れかの時点において、本電流を前記アンテナから排出する必要がある、さもないと前記アンテナはもはや電磁放射線を吸収しなくなる。本電流は、コンダクタ12により前記ターゲット・アンテナ14から排出された後、放散アセンブリ17へ移動し、前記放散アセンブリは熱装置、機械装置または電気装置を作動させることにより本電流を消費する。小型の放射源については、電流も小さく、前記コンダクタはワイヤまたはプリント基板のリードのようにシンプルなものになるであろう。 大型の放射源の場合は、より大型のコンダクタが必要となるであろう。
【0009】
ここで使用されているアンテナは電磁エネルギーのレシーバまたはコレクタとして機能する何らかの導体である−本明細書におけるターゲット・アンテナ14は意図して電磁エネルギーを発するものではない。アンテナには数多くの重要なパラメータがあるが、最も興味深いものの中にはゲイン、放射パターン、バンド幅およびポラライゼーションが含まれている。受信アンテナにおいては、適用した電磁界は、望ましくない電磁放射線を受信するため、前記アンテナの全長にわたって分配される。信号がぶつかるターゲット・アンテナ14が、受信した電磁放射線の波長と相対する特定の長さを有している場合、誘導電流はより強くなる。前記アンテナの望ましい長さは、良く知られている方程式である(λ)(f)=cを使って決定することができる、その場合、λは入射電磁放射線の波長であり、fは入射電磁放射線の周波数である。例えば、2.4GHzの信号が空中を移動している場合、その信号は約12cmで1サイクルを完了する。前記信号が12cmのアンテナまたはその分数の長さ(1/2または1/4または1/16波長=それぞれ6または3または0.75cm)のアンテナにぶつかった場合、信号がはっきりとした波長の分数でない長さのターゲット・アンテナにぶつかった場合に比べ、その誘導電流はかなり高くなる。
【0010】
通常、携帯電話およびその他の無線通信技術(PCS、G3またはブルートゥース(登録商標))は、送信中に、ラジオレンジまたはマイクロ波領域またはその両方のレンジにおいて電磁放射線を発する。これらの製品およびその他の民生用製品は、しばしば複数の波長(周波数)を発する。これは、ターゲット・アンテナ14が一定の周波数レンジにおいて問題なく機能する必要があることを意味している。従って、ターゲット・アンテナが、一般的にアンテナのバンド幅と呼ばれているその周波数レンジの中央で共振することを目標にしなければならない。例えば、好ましい実施形態では、前記装置10は携帯電話からの有害な放射を低減させるために使用される。好ましい実施形態においては、Digi−Key Corporation社のパートナンバー311−1232−1−ND等の1.88/2.1GHzの周波数に同調させた、100MHzのバンド幅を持つセラミックRFアンテナを使用する。しかしながら、前記アンテナは、前記放射源に適切と考えられる、素材、ゲイン、放射パターン、バンド幅およびポラライゼーションに基づいて製作されてもよい。
【0011】
携帯電話の送信レベルを弱めることは携帯電話の中継局に送信される信号レベルを弱めるという悪影響がある一方、ユーザーが受ける有害な電磁放射線の量を低減させるというプラスの影響もある。正しいアンテナ14を選択することにより、送信信号にわずかな影響を与えるだけで、有害な電磁放射線をかなり低減させることができる(送信信号は遠方の中継局により必要なレベルにまで増幅させることができる)。
【0012】
本発明は、携帯電話での使用に加え、衛星電話、BlackBerrys(登録商標)および他の電子メール送信装置等のその他の無線通信装置、電子レンジ、ポータブル・ラジオ、音楽プレーヤーおよびビデオ・プレーヤー;車庫およびビルの扉の自動オープナ、警察のレーダーガン、短波およびその他のハムラジオ、テレビまたはその他のブラウン管およびプラズマ・ディスプレイ、送電線;放射性の化学薬品、またはその他のあらゆる放射源といったその他の放射源での使用が可能である。
【0013】
前記装置10は、前記放射源11に何らかの方法で接続されている必要はない。好ましい実施形態では、前記装置10は、前記放射源11に電気的に接続されていない。しかしながら、好ましい実施形態では、単に前記装置10が前記放射源11から不注意に分離され、意図した機能を停止しないように、前記装置10は前記放射源11に物理的に接続されている。例えば、図3が示すように、前記装置10を携帯電話30の外部ハウジング31に接着剤で取り付けてもよい。例えば、ネジ、ピン、圧入または摩擦ばめ等の他のメカニズムを使って前記装置10を前記放射源11に取り付けることもできるし、または前記装置10を前記放射源11と一体で成型することもできる。代替的に、前記装置10は、ユーザーが首の回りに紐で付けたり、または衣服にピンまたはクリップで留めたりして身につけることもできる。
【0014】
図4および図5は、電子レンジ40との関連における前記装置10を示している。図4が示すように、前記携帯電話30の場合と同様に、前記装置10を前記電子レンジ40の外部ハウジングに取り付けることができる。または、前記電子レンジ40が定期的に交換される等の場合は、前記装置10を前記放射源に取り付けないほうがよいかもしれない。このような場合は、図5が示すように、前記装置を前記放射源から分離してもよい。前記装置10が物理的に取り付けられているか否かに関わらず、前記装置10は、望ましくない電磁放射線を捕獲するために一定の距離内に存在しなければならない。本距離は、放射頻度、パワー、電磁放射線が移動する媒体等を含む、数多くの要因によって変わってくる。許容可能な距離20は、図2において点線記号で示されている。
【0015】
集めた電流は、電流の1つの若しくはそれ以上のユーザーとして定義されている、あらゆる放散アセンブリ17を作動するために使用することができる。例えば、前記放散アセンブリ17は、ブザー、ベルまたは電気エネルギーを音に変換するその他のトランスデューサ;モータまたは電気エネルギーを動きに変換するその他のトランデューサ、ヒータまたは電気エネルギーを熱に変換するその他のトランスデューサ、ランプまたは電気エネルギーを光に変換するその他のトランスデューサの1つ若しくはそれ以上、またはそれらの組み合わせ、であることができる。前記電流は、化学反応を触媒するために使用してもよい。好適な実施形態では、前記電流は電流が供給されると点灯するLEDに振り向けられ、ユーザーに前記装置10が作動していることを示すという第二の目的を果たすことになる。他の実施形態では、前記電流はLCDディスプレイに振り向けられる。前記放散アセンブリ17は、前記放射源11内において、1つ若しくはそれ以上の電流のユーザーを作動するために使用することができる。
【0016】
図6は、好適な実施形態である、携帯電話に使用されるプリント基板を図示したものである。本実施形態は、携帯電話から携帯タワー(中継基地)または基地局への送信に大きな悪影響を与えることなく、携帯電話のユーザーに対してSARsを低減させる効果を有することが判明している。ターゲット・アンテナ14は、LED18を駆動するため、キャパシタ15およびダイオード16に接続されている。前記キャパシタおよびダイオードは、前記LED18を駆動するために必要な十分な電圧を発生させるための電圧倍率器の役割を演じる。例えば、この低レベルのアプリケーションにおいては、4つのキャパシタ15が2つのダイオード16とともに使用されている。前記ダイオード16は、約0.2〜0.3Vという非常に低い順方向電圧を持つ高周波RFショットキ・ダイオードであることが好ましい。この種のダイオードは、例えば、カリフォルニア州SunnyvaleのAeroflex/Metelics社から購入することができる。
【0017】
キャパシタおよびダイオードの数は、電磁放射線の放射源のレベルに合わせて、必要に応じて増やしたり減らしたりすることができる。例えば、短波ラジオのように高エネルギーを発する放射源からの望ましくない放射を低減させる場合、そのアンテナから排出される電圧そのものが放散アセンブリを駆動するのに十分であるため、キャパシタの数を減らすことができる。
【0018】
現時点で本発明の好適な実施形態と考えられるものを図示および説明してきたが、当業者であれば、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく様々な変更および修正を行うことが可能であり、且つ本明細書の要素を均等物に置き変えることができることを理解するであろう。従って、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を包含することを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動中の放射源から発生する望ましくない電磁放射線への曝露を低減させる方法であって、
a)ターゲット・アンテナで前記作動中の放射源から電磁放射線を受信する工程であって、これにより当該ターゲット・アンテナにおいて電流が誘導されるものである、前記電磁放射線を受信する工程と、
b)消散(dissipation)アセンブリに前記電流を通電させる工程と、
c)前記電流によって前記消散アセンブリを動作させる工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記消散アセンブリは、電気装置、機械装置または熱装置の1つ若しくはそれ以上を有するものである。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記消散アセンブリは、発光ダイオードを有するものである。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記ターゲット・アンテナは、前記作動中の放射源から放射される前記電磁放射線の波長に同調されるものである。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、この方法は、さらに、
前記ターゲット・アンテナを前記作動中の放射源に物理的に接続する工程を有するものである。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記ターゲット・アンテナは、前記作動中の放射源に電気的に接続されていないものである。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記作動中の放射源は携帯電話である。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記携帯電話から発生する電磁放射線は、送信アンテナから放射されるものである。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、この方法は、さらに、
前記携帯電話により送信される信号に大きな悪影響を与えることなくSAR(specific absorption rate:比吸収率)を低減させる工程を有するものである。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記作動中の放射源は電子レンジである。
【請求項11】
作動中の放射源から発生する有害な電磁放射線を低減させる装置であって、
a)前記作動中の放射源から放射される電磁放射線を受信するためのターゲット・アンテナと、
b)前記ターゲット・アンテナに接続された消散アセンブリと
を有する装置。
【請求項12】
請求項11記載の装置において、前記消散アセンブリは、電気装置、機械装置または熱装置の1つ若しくはそれ以上を有するものである。
【請求項13】
請求項11記載の装置において、前記消散アセンブリは、発光ダイオードを有するものである。
【請求項14】
請求項11記載の装置において、前記ターゲット・アンテナは、前記作動中の放射源から放射される電磁放射線の波長に同調されるものである。
【請求項15】
請求項11記載の装置において、この方法は、さらに、
前記ターゲット・アンテナを前記作動中の放射源に物理的に接続する工程を有するものである。
【請求項16】
請求項11記載の装置において、前記ターゲット・アンテナは、前記作動中の放射源に電気的に接続されていないものである。
【請求項17】
請求項11記載の装置において、前記作動中の放射源は携帯電話である。
【請求項18】
請求項17記載の装置において、前記携帯電話から発生する電磁放射線は、送信アンテナから放射されるものである。
【請求項19】
請求項18記載の装置において、この方法は、さらに、
前記携帯電話が送信する信号に大きな悪影響を与えることなくSARを低減させる工程を有するものである。
【請求項20】
請求項11記載の装置において、前記作動中の放射源は電子レンジである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−544217(P2009−544217A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520729(P2009−520729)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/033625
【国際公開番号】WO2008/008078
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(509014043)セラピー プロダクツ、インク.ディービーエー アーコニア メディカル (1)
【Fターム(参考)】