説明

木本植物防除のためのトリクロピルブトキシエチルエステルを含む組成物の使用

担体として脱芳香族脂肪族溶媒または植物油エステルを用いるトリクロピルブトキシエチルエステル組成物は、葉面散布で木本植生の防除の強化を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年11月18日に出願された米国仮出願第60/737,994号の利益を請求するものである。本発明は、担体として脱芳香族脂肪族溶媒、植物油または植物油エステルを有するトリクロピルブトキシエチルエステル組成物の葉面散布によって、所望しない木本植生を防除するための方法に関する。意外にも、全葉に散布する場合、担体として芳香族の溶媒を含有する類似の組成物に比べて、これらの組成物は、木本植生の防除の強化を提供する。
【背景技術】
【0002】
今日の自然および環境への配慮の高まりが、公道用地上の草類、丈の低い地被植物、および野草の発育を促進しようとするこれまでにない努力をもたらす結果となってきた。従って、植生防除プログラムにおいて丈の高くなる木本植物を除去するために、選択的な植物防除処置が望ましい。このような処置プログラムによって、効果的かつ持続的に低木が防除されるだけでなく、一年草および多年草ならびに他の所望される植物等の非標的植物が、水分、栄養および日光を求める競合から解放されるので、よく成長するようになる。
【0003】
このような処置プログラムの1つは、所望しない植生を防除するために除草剤を基部の樹皮または茎へ散布するという使用法からなっている。この特殊な方法は、植生防除ばかりでなく、個々の植物への除草剤組成物の効率的な配置および利用も提供するので、魅力的である。米国特許第5,466,659号は、様々なトリクロピルブトキシエチルエステル組成物を用いるこの処置方法を記述している。望まれない植物の樹皮または茎に除草剤を適用するこの散布法以外に、地上もしくは空中広域散布を使用して、または背負子式噴霧器もしくは他の指向性噴霧装置等の地表指向性噴霧器を使用して除草剤処置を行う場合になされるような、標的植生の葉に処置をすることは、より効率的であることが多い。
【0004】
木本植物の葉に除草剤を浸透させるためには、非水性有機担体に除草剤を溶解することが望ましい。例えば、現在使用されているようなGarlon(商標)4除草剤におけるように、葉面散布のためのこうした担体は、ディーゼル油または灯油を例とする燃料油等の石油留出物からなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの担体は、周辺環境ばかりでなく、散布者へも危険性を及ぼす。例えば空中散布では、散布者の技術または風向状況次第で、散布の間に周辺地域へ過剰に噴霧する恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、木本植生の全葉に、60〜600グラム酸当量/リットルのトリクロピルブトキシエチルエステル、25〜150グラム/リットルの乳化剤、および担体として200〜900グラム/リットルの脱芳香族化脂肪族溶媒、植物油もしくは植物油エステルのいずれかを含む除草組成物、または除草組成物の水希釈液を散布することを含む、所望しない木本植生を防除するための方法に関する。基部の樹皮に対して全葉という、より効率的な処置手順を提供すること、および芳香族担体への曝露の低減を提供することに加えて、本発明の方法は、鍵となる幾種もの木本植物の防除に予期せぬ改善を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、トリクロピルブトキシエチルエステル、1種または複数の乳化剤、および担体として脱芳香族化脂肪族溶剤、植物油または植物油エステルのいずれかを含む組成物を全葉に散布することによって、木本植物を防除するための方法を提供する。
【0008】
トリクロピルは、3,5,6−トリクロロ−2−ピリジニルオキシ酢酸の通称である。この化合物は、草原および他の不耕作地、工業地域、公道用地、針葉樹林、油ヤシ、ゴム園および稲田等の地域において、低木および木本植生、ならびに多くの広葉雑草の防除に使用される選択的な浸透移行性除草剤である。
【0009】
トリクロピルのブトキシエチルエステルは、石油留出物含有の4ポンド酸当量/ガロン製剤で、Garlon(商標)4除草剤としてDow AgroSciencesから商業的に入手可能である。
【0010】
脱芳香族化脂肪族溶媒は、芳香族成分を最小限量、例えば1パーセント未満しか含有しない炭化水素流体である。本発明に最も適した脱芳香族化脂肪族溶媒は、160〜315℃、好ましくは200〜250℃の沸点を有する。脱芳香族化脂肪族溶媒は、例えばExxsol(商標)炭化水素流体としてExxon Mobil Chemicalから入手可能である。Exxsol D80炭化水素流体は、特に本発明の目的に適した脱芳香族化脂肪族溶媒である。
【0011】
本発明に用いられる適切な植物油には、コーン油、大豆油、菜種もしくはキャノーラ油、ヒマワリ油、亜麻仁油または綿実油を含むことができる。
【0012】
本発明に用いられる適切な植物油のエステルには、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、キャノーラ油および綿実油のエステルを含むことができる。好ましいのは大豆油、ヒマワリ油およびキャノーラ油のエステルである。更に好ましい植物油のエステルには、C6〜C18の範囲の飽和、不飽和の両種脂肪酸の、直鎖および分岐鎖C1〜C4アルキルエステルが含まれる。飽和脂肪酸エステルには、例えば、カプロン酸エステル、カプリル酸エステル、カプリン酸エステル、ラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、マルガリン酸エステル、およびステアリン酸エステルがある。不飽和脂肪酸エステルには、例えば、ミリストレイン酸エステル、パルミトレイン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、およびリノレン酸エステルがある。脂肪酸メチルエステルが好ましく、更に、不飽和脂肪酸エステルが、飽和脂肪酸エステルより好ましい。本発明で用いられる好ましい脂肪酸エステルには、カプリル酸メチル−カプリン酸メチル(Emery(商標)2209、Henkel Corporation)、ラウリン酸メチル(Emery2296、Emery2290、またはEmery2270、Henkel Corporation)およびオレイン酸メチル(Emery2301、Henkel Corporation)がある。より好ましい脂肪酸エステルは、オレイン酸メチルである。
【0013】
適切な乳化剤は、特性が陰イオン性、陽イオン性または非イオン性でもよい。通常の乳化剤には、ジエタノールアンモニウムラウリル硫酸塩等のアルキル硫酸塩、カルシウムドデシルベンゼンスルホン酸塩等のアルキルアリールスルホン酸塩、ノニルフェノール−C18エトキシレート等のアルキルフェノールアルキレンオキサイド付加生成物、トリデシルアルコール−C16エトキシレート等のアルコールアルキレンオキサイド付加生成物、ステアリン酸ナトリウム等の石鹸、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩のジアルキルエステル、ソルビトールオレイン酸等のソルビトールエステル、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等の第4級アミン、ステアリン酸ポリエチレングリコール等の脂肪酸のポリエチレングリコールエステル、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのブロック共重合体、ならびにモノおよびジアルキルリン酸エステルの塩が含まれる。
【0014】
本発明の葉面散布に役立つ組成物は、60〜600グラム酸当量/リットルのトリクロピルブトキシエチルエステル、25〜150グラム/リットルの乳化剤および200〜900グラム/リットルの担体を含有する。この組成物は、60〜480グラム酸当量/リットルのトリクロピルブトキシエチルエステル、50〜100グラム/リットルの乳化剤および230〜865グラム/リットルの担体を含有することが好ましい。
【0015】
上で説明したこの組成物および使用に加えて、本発明は、この組成物および1種または複数の適合する追加成分と組み合わせたこれらのトリクロピルブトキシエチルエステル組成物の使用も包含する。他の追加成分には、例えば、1種または複数の他の除草剤、色素、ならびに例えば安定剤、香料、粘度低減添加物、および凝固点降下剤等の機能的有用性を提供するいかなる他の追加的成分をも含むことができる。
【0016】
補足物または添加物として用いられる追加の除草化合物は、本発明で用いられるようなトリクロピルブトキシエチルエステル組成物の活性に対して拮抗すべきではない。適切な除草化合物には、2,4−D、2,4−MCPA、アメトリン、アミノピラリド、アシュラム、アトラジン、ブタフェナシル、カルフェントラゾンエチル、クロルフルレノール、クロルメカット、クロルプロファム、クロルスルフロン、クロルトルロン、シノスルフロン、クレトディム、クロピラリド、シクロスルファムロン、ピロクスシュラム、ジカンバ、ジクロロベニル、ジクロルプロップ−P、ジクロスラム、ジフルフェニカン、ジフルフェンゾピル、ジウロン、フルロキシピル、グリフォサート、ヘキサジノン、イマザモックス、イマザピック、イマザピル、イマザキン、イマゼタピル、イマゾスルフロン、MCPA、メトスルフロンメチル(metsulfuron−methyl)、ピクロラム、ピリチオバックナトリウム、セトキシジム、スルフォメツロン、スルフォサート、スルフォスルフロン、テブチウロン、ターバシル、チアゾピル、チフェンスルフロン、トリアスルフロン、およびトリベヌロンが含まれるが、それらだけに限定されない。低木防除葉面散布においてトリクロピルブトキシエチルエステルと共に使用するために特に有用な除草化合物は、クロピラリドのエステルおよびアミン、例えば3,6−ジクロロ−2−ピリジンカルボン酸モノエタノールアミン塩、ならびに2,4−Dブトキシエチルエステル、フルロキシピル1−メチルヘプチルエステル、ピクロラムiso−オクチルエステルおよびアミノピラリド塩との各混合物である。本発明の方法において使用される除草組成物は、1種または複数の他の除草剤と共に処方し、1種または複数の他の除草剤とタンク混合する、または1種または複数の他の除草剤と共に連続して散布することができる。
【0017】
色素を標識として処方組成物中に使用することが可能である。一般的には、好ましい色素は、EPA承認済の耐久性免除不活性物質リストから選択されたいかなる油溶性色素であってもよい。このような色素には、例えばD&C Red#17、D&C Violet#2、およびD&C Green#6を含むことができる。色素は、一般的に、攪拌しながら処方された組成物に所望量の色素を加えることによって組成物に添加される。色素は、一般的に、0.1〜1.0重量パーセントの濃度で最終製剤組成物中に存在する。
【0018】
本発明の組成物をそのままで木本植生の全葉に散布することができ、または散布前に水で希釈してもよい。木本植生に通常散布される希釈組成物は、一般的に0.0001〜20.0重量パーセントのトリクロピルブトキシエチルエステルを含有する。
【0019】
次の実施例は、本発明を例証している。
[実施例]
【実施例1】
【0020】
メチル化大豆油製剤の調製
室温で攪拌しながらCognis33971乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム−アルコキシ化アルコール)(5.0g)を、60.45gの工業用トリクロピルブトキシエチルエステルおよび34.55gのEdenor ME12−18(メチル化大豆油)に加えた。単一相が得られるまで、攪拌を続けた。
【実施例2】
【0021】
Exxsol D−80製剤の調製
室温で攪拌しながらSponto AC31−2乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン塩3.5gを混合)およびWitconol AL69−66乳化剤(アルコールエトキシレート1.5g)を、62.1gの工業用トリクロピルブトキシエチルエステルおよび32.9gのExxsol D−80溶媒(脱芳香族化炭化水素溶媒)に加えた。単一相が得られるまで、攪拌を続けた。
【実施例3】
【0022】
Exxsol D−80製剤の調製
室温で攪拌しながらWitconate P−120乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸のカルシウム塩2.88g)およびT−Det C−40乳化剤(ヒマシ油エトキシレート2.27g)を、172.1gの工業用トリクロピルブトキシエチルエステル、369.1gの工業用2,4−Dブトキシエチルエステルおよび453,7gのExxsol D−80溶媒(脱芳香族化炭化水素溶媒)に加えた。単一相が得られるまで、攪拌を続けた。
【実施例4】
【0023】
除草試験
試験は、4箇所の混合種および単一種の木本植物試験地で実施した。標的木本低木は、6フィートまたはそれ未満で、手持ち式竿で頂端より上から散布を実施した。研究は、実施例1のメチル化大豆油製剤および実施例2のExxsol D−80製剤を、灯油含有の商業的に入手可能なGarlon4製剤と比較するように計画した。選択した散布率は、標的種に基づいて決めた。混合低木では、散布率は、1.5および3.0ポンド酸当量毎エーカー(lbs ae/ac)(1.68および3.36キログラム酸当量毎ヘクタール(kg ae/ha))であった。エニシダに対しては、散布率は、1.25lbs ae/ac(1.4kg ae/ha)であった。製剤を、水で希釈し、20ガロン毎エーカー(gpa)(187リットル毎ヘクタール(L/ha))の放出体積で散布した。混合物に界面活性剤は加えなかった。試験地を、生育季に処置し、防除は翌年評価した。結果(防除パーセントで)を表1にまとめた。
【0024】
【表1】

【0025】
第2の研究は、メスキートに対する大規模空中散布を評価した。0.25lbs ae/エーカー(0.28kg ae/ha)の代替製剤を、水に希釈し、10エーカー(4.04ヘクタール)区画(2区画ずつ処置)上に5gpa(46.8L/ha)の放出体積で固定翼航空機によって散布した。除草剤は、トリクロピルBEEおよび第2の除草剤であるReclaim(商標)除草剤からなる混合物にして散布した。混合物に界面活性剤は加えなかった。試験地を、生育季に処置し、防除は翌年に評価した。結果を表2にまとめた。
【0026】
【表2】

【0027】
第3の研究では、Crossbow(商標)除草剤を用いたブラックベリーの防除を評価した。0.5パーセントv/vおよび1.0パーセントv/vの代替製剤を、水に希釈し、ブラックベリーの茂み上(4区画ずつ処置)に湿式噴霧処置(spray to wet treatment)(ブラックベリーの個体植物を取り扱う方法として通例である)として固定翼航空機によって散布した。混合物に、0.25パーセントv/vの界面活性剤を加えた。試験地を、生育季に処置し、防除は翌年に評価した。結果を表3にまとめた。
【0028】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
木本植生の全葉に、60〜600グラム酸当量/リットルのトリクロピルブトキシエチルエステル、25〜150グラム/リットルの乳化剤、および担体として200〜900グラム/リットルの脱芳香族化脂肪族溶媒、植物油もしくは植物油のエステルのいずれかを含む除草組成物、または該除草組成物の水希釈液を散布すること
を含む、所望しない木本植生を防除するための方法。
【請求項2】
前記除草組成物が、60〜480グラム酸当量/リットルのトリクロピルブトキシエチルエステル、50〜100グラム/リットルの乳化剤、および担体として230〜865グラム/リットルの脱芳香族化脂肪族溶媒、植物油または植物油のエステルのいずれかを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱芳香族化脂肪族溶媒が、160〜315℃の範囲の沸点を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記脱芳香族化脂肪族溶媒が、200〜250℃の範囲の沸点を有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記植物油が、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、菜種もしくはキャノーラ油、綿実油または亜麻仁油である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記植物油のエステルが、コーン油、大豆油、ヒマワリ油、キャノーラ油または綿実油のエステルである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記植物油のエステルが、C6〜C18の範囲の飽和、不飽和の両種脂肪酸の、直鎖および分岐鎖C1〜C4アルキルエステルである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記植物油のエステルが、カプリル酸メチル−カプリン酸メチル、ラウリン酸メチルまたはオレイン酸メチルである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
木本植生の全葉への散布に先立って、除草組成物が水で希釈される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記除草組成物が、追加の除草剤と共に用いられる請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記追加の除草剤が、2,4−D、アミノピラリド、クロピラリド、フロロキシピルまたはピクロラムである請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2009−516688(P2009−516688A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541412(P2008−541412)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/044946
【国際公開番号】WO2007/061976
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】