木材の加工方法、木材加工用型枠、および加工装置
【課題】木材の圧縮前後における形状変化が大きい場合であっても、その木材に割れを生じさせることなく成形することが可能な木材の加工方法、木材加工用型枠、および加工装置を提供する。
【解決手段】加工対象の木材に圧縮力を加える際、その圧縮力が作用する領域を前記木材の中央部から周縁部へと徐々に広げながら圧縮する。この際、前記木材の表面に当接する部分が粘性および弾性のうち少なくともいずれか一方の性質を備えた材質から成る木材加工用型枠と、所定の金型とによって前記木材を挟持して圧縮力を加える。
【解決手段】加工対象の木材に圧縮力を加える際、その圧縮力が作用する領域を前記木材の中央部から周縁部へと徐々に広げながら圧縮する。この際、前記木材の表面に当接する部分が粘性および弾性のうち少なくともいずれか一方の性質を備えた材質から成る木材加工用型枠と、所定の金型とによって前記木材を挟持して圧縮力を加える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、木材を所定の３次元形状に加工する木材の加工方法、木材加工用型枠、および加工装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、自然素材である木材が注目されている。木材はさまざまな木目を有するため、原木から形取る箇所に応じて個体差が生じ、その個体差が製品ごとの個性となる。また、長期の使用によって生じる傷や色合いの変化自体も、独特の風合いとなって使用者に親しみを生じさせることがある。これらの理由により、合成樹脂や軽金属を用いた製品にはない、個性的で味わい深い製品を生み出すことのできる素材として木材が注目されており、その加工技術も飛躍的に進歩しつつある。
【０００３】
従来、かかる木材の加工技術として、吸水軟化した一枚の木材を圧縮し、その木材を圧縮方向と略平行に切断して板状の一次固定品を得た後、この一次固定品を加熱吸水させながら所定の３次元形状に成形する技術が知られている（例えば、特許文献１を参照）。また、軟化処理した状態で圧縮した一枚の木材を仮固定し、この木材を型に入れて回復させることによって型成形する技術も知られている（例えば、特許文献２を参照）。
【０００４】
【特許文献１】特許第３０７８４５２号公報
【特許文献２】特開平１１−７７６１９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、上述した従来の木材加工技術では、木材表面が所望の木目をなすように木目優先の形取りを行うと、その形状が型枠の形状から大きく逸脱してしまう場合があった。このような場合には、形取った木材の形状を大きく変形させなければならないが、金型を用いる場合には、圧縮の際に木材に割れを生じやすかった。すなわち、圧縮による木材の形状変化が大きい場合には、その木材に割れを生じさせることなく成形することが困難であった。
【０００６】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、木材の圧縮前後における形状変化が大きい場合であっても、その木材に割れを生じさせることなく成形することが可能な木材の加工方法、木材加工用型枠、および加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項１記載の発明は、木材に圧縮力を加えることによって前記木材を所定の３次元形状に加工する木材の加工方法であって、前記圧縮力が作用する領域を前記木材の中央部から周縁部へと徐々に広げながら前記木材を圧縮する圧縮工程を有することを特徴とする。
【０００８】
請求項２記載の発明は、請求項１記載の発明において、前記圧縮工程は、前記木材の表面に当接する部分が粘性および弾性のうち少なくともいずれか一方の性質を備えた材質から成る木材加工用型枠と、所定の金型とによって前記木材を挟持して前記圧縮力を加えることを特徴とする。
【０００９】
請求項３記載の発明は、請求項１または２記載の発明において、前記圧縮工程で圧縮された木材の形状を前記３次元形状に整形する整形工程をさらに有することを特徴とする。
【００１０】
請求項４記載の発明は、所定の金型との間で木材を挟持して圧縮力を加えることによって前記木材を所定の３次元形状に加工する木材加工用型枠であって、圧縮時に前記木材のいずれかの表面に当接し、この当接する領域を前記表面の中央部から周縁部へと徐々に広げながら前記木材に圧縮力を加える突出部と、圧縮時に前記木材の端面に当接し、この端面の肉厚方向と略直交する方向に圧縮力を加える端面押圧部と、を備え、前記突出部および前記端面押圧部は、粘性および弾性のうち少なくともいずれか一方の性質を有する材質から成ることを特徴とする。
【００１１】
請求項５記載の発明に係る加工装置は、請求項４記載の木材加工用型枠と、前記木材加工用型枠との間で前記木材を挟持して圧縮力を加える金型と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【００１２】
本発明に係る木材の加工方法、木材加工用型枠、および加工装置によれば、加工対象の木材に圧縮力を加える際、その圧縮力が作用する領域を前記木材の中央部から周縁部へと徐々に広げながら圧縮することにより、木材の圧縮前後における形状変化が大きい場合であっても、その木材に割れを生じさせることなく成形することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態（以後、実施の形態と称する）を説明する。
【００１４】
図１は、本発明の一実施の形態に係る木材の加工方法によって形成された圧縮木製品の構成を示す斜視図である。また、図２は図１のＡ−Ａ線断面図である。これら二つの図に示す圧縮木製品１は、略長方形状の表面をなす主板部１ａと、この主板部１ａ表面の長手方向に略平行な２辺の各々から当該主板部１ａに対して所定の角度をなして延出する二つの側板部１ｂと、主板部１ａ表面の短手方向に略平行な２辺の各々からその主板部１ａに対して所定の角度をなして延出する二つの側板部１ｃとを備える。この圧縮木製品１の肉厚（ｒとする）はほぼ均一であり、その主板部１ａの表面は板目面をなす。なお、図１のＢ−Ｂ線断面は、寸法が異なる点を除いて、図２に示すＡ−Ａ線断面と略同形である。
【００１５】
次に、この実施の形態に係る木材の加工方法を説明する。以後の説明では、上述した形状を有する圧縮木製品１を形成する場合について説明するが、この実施の形態に係る木材の加工方法は、他の形状を有する圧縮木製品に対しても適用可能である。
【００１６】
まず、圧縮木製品１の原材料となる木材を原木から形取る。図３は、原木である無圧縮状態の無垢材から切削等によって形取った木材の構成を示す斜視図である。また、図４は、図３のＣ−Ｃ線断面図である。これらの図に示す木材１１は、成形後の圧縮木製品１（図１を参照）よりも椀状に近く、外側面１１ａおよび内側面１１ｂは、それぞれ滑らかな曲面をなしており、肉厚はほぼ均一である（ｒ0とする）。また、木材１１は、後述する圧縮工程によって減少する分の容積を予め加えた容積を有する。なお、図３のＤ−Ｄ線断面は、寸法が異なる点を除いて、図４に示すＣ−Ｃ線断面と略同形をなす。
【００１７】
図５は、以上の構成を有する木材１１を形取る時の形取位置を模式的に示す図であり、より具体的には、図４に示す断面部分の無垢材からの形取位置を模式的に示す断面図である。圧縮木製品１の主板部１ａが図１に示すような板目面をなすためには、木材１１の表面が板目面をなすように無垢材から形取らなければならない。このため、無垢材１０から木材１１を形取る際には、図５に示すように木目１０Ｇの曲率よりも木材１１の側面の曲率の方が概ね大きくなるように形取る。この無垢材１０として、檜、檜葉、桐、杉、松、桜、欅、黒檀、チーク、マホガニー、ローズウッドなどを用いることができる。
【００１８】
なお、木材１１として柾目材または追柾材を適用することも可能である。したがって、加工対象となる木材を無垢材１０からどのように形取るかは、その木材を用いて加工された結果物としての圧縮木製品の用途や、その圧縮木製品に要求される強度または美観など、各種条件を考慮して決定すればよい。
【００１９】
続いて、上記の如く形取った木材１１を圧縮する（圧縮工程）。この圧縮工程を行う前に、木材１１を高温高圧の水蒸気雰囲気中に所定時間放置する。ここでいう高温高圧とは、温度が１００〜２３０℃、より好ましくは１８０〜２３０℃程度であり、圧力が０.１〜３ＭＰａ（メガパスカル）、より好ましくは０.４５〜２.５ＭＰａ程度の状態を指す。これにより、木材１１は過剰に水分を吸収して軟化する。なお、上述した水蒸気雰囲気中で木材１１を放置する代わりに、例えば木材１１をマイクロウェーブの如き高周波の電磁波によって加熱してから圧縮を行ってもよい。
【００２０】
その後、同じ水蒸気雰囲気中で圧縮工程を実施する。図６は、本実施の形態に係る木材加工用型枠および加工装置要部の構成を示す縦断面図であり、圧縮工程の概要を示す図である。同図に示すように、この実施の形態に係る加工装置は、加工対象の木材である木材１１を挟持して圧縮力を加える型枠３１と金型４１とを備える。なお、図６では、木材１１の断面の上下が図４と逆転している。すなわち、図６では、木材１１の内側面１１ｂの方が上方に来ている。
【００２１】
この実施の形態に係る木材加工用型枠である型枠３１は、木材１１の表面の一つである内側面１１ｂに当接するシリコンゴム等の材質（弾性体）から成るゴム型３２と、このゴム型３２の上端に接着されて上下動可能な略直方体状の可動金型３３とを備える。ゴム型３２は、図６で下方に突出して木材１１の内側面１１ｂの少なくとも一部に当接する突出部３４と、木材１１の端面１１ｃを保持し、圧縮時にその端面１１ｃの肉厚方向と略直交する方向に圧縮力を加える端面押圧部３５とを有する。なお、使用するゴム型３２の硬度によっては、ゴム型３２の外周に金型を設けることにより、ゴム型３２の変形を制限するようにしてもよい。
【００２２】
これに対して、圧縮時に木材１１の下方から圧縮力を加える金型４１は、木材１１の外側面１１ａを嵌入する凹部４２を有する。この凹部４２の縁端部４３はＲ形状をなしており、木材１１を圧縮する際、外側面１１ａのうち縁端部４３に当接する箇所に過度の応力が加わって木材１１に割れが生じるのを防止する。
【００２３】
図７は、型枠３１を下降させていき、ゴム型３２と金型４１とが当接した状態を示す断面図である。この図７に示すように、木材１１の外側面１１ａは、金型４１の凹部４２の中央部に当接している。また、突出部３４の下端近傍は、木材１１の内側面１１ｂの中央部に当接している。この状態では、外側面１１ａの形状が凹部４２の形状と大きく異なるため、外側面１１ａの周縁部と凹部４２との間には隙間が生じている。これに対し、内側面１１ｂの形状と突出部３４の形状も完全に一致しているわけではない（外側面１１ａの形状と凹部４２の形状との違いほど大きくはない）ので、内側面１１ｂの周縁部と突出部３４との間にも隙間が生じている。この結果、図７に示す状態から型枠３１の下降を開始した直後は、木材１１の中央部付近にのみ圧縮力が作用する。
【００２４】
図８は、図７に示す状態から型枠３１を下降させている途中の状態を示す図である。この図８に示すように、型枠３１を下降させることによってゴム型３２自体も可動金型３３と木材１１とによって押圧されて徐々に変形していき、内側面１１ｂに当接する領域が木材１１の表面の中央部から周縁部へと徐々に広がっていく。同時に、ゴム型３２の端面押圧部３５は、端面１１ｃに当接してその端面１１ｃの肉厚方向と直交する方向に圧縮力を加える。この結果、木材１１の表面で圧縮力が作用する領域が型枠３１の下降とともに広がっていき、外側面１１ａと金型４１との間の隙間、および内側面１１ｂとゴム型３２との間の隙間が変形に伴って徐々に減少していく。それと同時に木材１１の肉厚も、中央部から周縁部へと徐々に薄くなっていく。
【００２５】
この変形の際、外側面１１ａは、縁端部４３に当接する箇所が摺動しながら変形していく。このため、縁端部４３の表面にテフロン（登録商標）等の素材をコーティングしておけば、木材１１との間に生じる動摩擦力が低減して木材１１の摺動が一段と容易となるので、割れを防止する意味でもより好ましい。
【００２６】
以上説明したように、木材１１を挟持する一方の型枠３１にゴム型３２を適用することにより、圧縮時のゴム型３２自身の変形によって木材１１の急激な変形を緩和することができる。したがって、従来のように一対の金型を用いて木材を挟持、圧縮する場合とは異なり、木材１１に過度の圧縮力が作用することがなくなり、圧縮に伴う形状変化が大きくても、木材１１に割れ等が生じるのを防ぐことが可能となる。
【００２７】
この後、ゴム型３２によって木材１１との隙間が完全に埋め尽くされ、木材１１に対して所定の圧縮力が加わる状態に達した時点で可動金型３３の下降を止める。図９は、圧縮工程において、木材１１の変形がほぼ完了した状態を示す図である。この図９に示す状態では、弾性体としてのゴム型３２が有する特性により、ゴム型３２から木材１１に対して、場所によらずに均一な圧縮力が作用する。この状態で所定時間経過させた後、型枠３１と金型４１を離間させる。
【００２８】
続いて、上記圧縮工程と同様の水蒸気雰囲気中で、型枠３１とは異なる整形用の金型（以後、整形金型と称する）を下降させ、金型４１との間で木材１１を挟持することによって整形を行う（整形工程）。図１０は、この整形工程における木材圧縮時の状況（木材１１の変形がほぼ完了した状態）を示す図であり、図７と同じ切断面で見たときの縦断面図である。
【００２９】
この整形工程において、木材１１の上方から圧縮力を加える整形金型５１は、木材１１の内側面１１ｂに嵌合する形状をなす凸部５２を有する。この凸部５２は、木材１１の端面１１ｃの付近など、上記圧縮工程においてゴム型３２による圧縮が不十分であった箇所を整形可能な形状をなしている。図１０に示す圧縮状態で所定時間放置した後、金型４１と整形金型５１を離間して圧縮を解除し、上記水蒸気雰囲気を解いて木材１１を乾燥させることにより、図１に示す圧縮木製品１が完成する。
【００３０】
圧縮工程および整形工程を経た結果、圧縮木製品１の肉厚ｒは、無垢材１０から形取った木材１１の圧縮前の肉厚ｒ0の３０〜５０％程度となる。換言すると、木材の圧縮率
（ｒ0−ｒ）／ｒ0は、０.５〜０.７程度となる。圧縮工程および整形工程における圧縮率は、木材１１の種類や圧縮木製品１の用途等の条件に応じて変更可能である。例えば、圧縮工程では肉厚をあまり変えないで形状のみを大きく変化させ、整形工程の方で肉厚方向の圧縮を主に行うようにしてもよい。
【００３１】
なお、加工すべき圧縮木製品の形状や用途によっては、圧縮工程を終えた段階で所定の３次元形状が十分な精度で得られることもある。このような場合には、必ずしも整形工程を行う必要はない。
【００３２】
以上説明した二つの工程（圧縮工程、整形工程）において、型枠３１または整形金型５１を金型４１に対して上下動させる際には、これらの型枠３１または整形金型５１を電気的に駆動する駆動手段を加工装置に具備させ、型枠３１または整形金型５１を電気的に駆動して木材１１に加える圧縮力の制御を行うようにしてもよい。これに対して、型枠３１または整形金型５１と金型４１とをねじで連結し、このねじを手動または自動で締めることによって型枠３１または整形金型５１を金型４１に対して上下動させ、木材１１に加える圧縮力を制御するようにしてもよい。
【００３３】
また、整形工程として、加工対象の木材の表面を切削することによってその表面の形状を整形してもよい。かかる整形工程は、例えば圧縮工程後の状態において、木材の節の部分の肉厚が他の部分の肉厚よりも大きい状態で残っている場合、その木材の表面を平らに整形する場合などに好適である。
【００３４】
圧縮工程時における高温高圧の水蒸気雰囲気は、例えば圧力容器の内部で実現される。この場合、圧力容器の内部では限られた空間しか確保できないため、駆動側の型枠や金型のストロークを長く取ることができない。上述した型枠３１の場合、ゴム型３２が変形する分だけ通常の金型よりもストロークを余分に取ることができるので、制限された空間内でも圧縮力を自在に加えることが可能となる。
【００３５】
以上説明した本発明の一実施の形態に係る木材の加工方法、木材加工用型枠、および加工装置によれば、加工対象の木材に圧縮力を加える際、その圧縮力が作用する領域を前記木材の中央部から周縁部へと徐々に広げながら圧縮することにより、木材の圧縮前後における形状変化が大きい場合であっても、その木材に割れを生じさせることなく成形することが可能となる。この結果、圧縮木製品を製造する際の歩留まりを向上させることもできる。
【００３６】
また、この実施の形態によれば、木材加工用型枠がゴム型を備えることにより、そのゴム型が圧縮時に変形して木材表面に対して一様に圧縮力を加えることができるため、加工すべき木材の形状によらずにその木材の密度を一様にすることができ、圧縮後の木材に一様な強度を付与することが可能となる。
【００３７】
次に、本実施の形態の変形例を説明する。図１１は、本実施の形態の一変形例に係る木材加工用型枠および加工装置要部の構成を示す縦断面図であり、無垢材１０から平板状に形取った木材１２を圧縮する場合の圧縮工程の概要を示す図である。この場合、木材１２の上方から木材１２に対して圧縮力を加える型枠６１（木材加工用型枠）は、ゴム型６２と、このゴム型６２の上端に接着される略直方体状の可動金型６３とを備える。なお、木材１２の下方から木材１２に対して圧縮力を加える金型４１は、上記一実施の形態と同じである。
【００３８】
型枠６１を構成するゴム型６２は、圧縮力を加える直前の状態において、平板状の木材１２の一方の表面（図１１で上方の表面）の中央部に当接する突出部６４と、圧縮時に木材１２の端面に当接し、その端面の肉厚方向と略直交する方向に圧縮力を加える端面押圧部６５とを備える。
【００３９】
この図１１に示す状態から可動金型６３を下降させていくと、ゴム型６２の突出部６４は、自身が変形することによって木材１２の表面で当接する領域をその木材１２の中央部から周縁部へと徐々に広げていきながら、木材１２を変形していく。そして、木材１２の下側の表面の中央部が凹部４２に当接すると、その中央部の肉厚方向に圧縮力が加わり始め、肉厚が薄くなリ始める。その後、凹部４２に当接する木材１２の下側の表面が徐々に周縁部に広がっていくのに伴って圧縮力が作用する領域も同様に広がっていく。この際、端面押圧部６５は上記の如く木材１２の端面に圧縮力を加え続ける。最終的には、木材１２の下側の表面が金型４１の凹部４２に完全に当接し、図９に示すのと同様の断面形状をなすまで圧縮される。この後の工程（整形工程を含む）は、上記一実施の形態と同様である。
【００４０】
ここまで、本発明を実施するための最良の形態を説明してきたが、本発明は上記一実施の形態によってのみ限定されるべきではない。例えば、木材加工用型枠として弾性体であるゴム型を用いる代わりに、より一般の高分子ゲルを含む粘弾性体等から成る型を用いてもよい。すなわち、木材加工用型枠のうち加工対象の木材に当接する部分の材質として、粘性および弾性のうち少なくともいずれか一方を備えた材質を適用してもよい。
【００４１】
このように、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【００４２】
本発明に係る木材の加工方法、木材加工用型枠、および加工装置によって形成された圧縮木製品は、デジタルカメラ、携帯電話、ＰＨＳまたはＰＤＡ等の携帯型通信端末、携帯型オーディオ装置、ＩＣレコーダ、携帯型テレビ、携帯型ラジオ、各種家電製品のリモコン、デジタルビデオなどの外装材として適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【００４３】
【図１】本発明の一実施の形態に係る木材の加工方法によって形成された圧縮木製品の構成を示す斜視図である。
【図２】図１のＡ−Ａ線断面図である。
【図３】無垢材から形取った木材の構成を示す斜視図である。
【図４】図３のＣ−Ｃ線断面図である。
【図５】木材を無垢材から形取る状況を示す図である。
【図６】本発明の一実施の形態に係る木材加工用型枠および加工装置要部の構成を示す縦断面図である。
【図７】木材加工用型枠と金型とによって木材を挟持した状態を示す断面図である。
【図８】圧縮工程において、木材が変形している途中の状態を示す断面図である。
【図９】圧縮工程において、木材の変形が完了した状態を示す断面図である。
【図１０】本発明の一実施の形態に係る木材の加工方法の整形工程の概要を示す縦断面図である。
【図１１】本発明の一実施の形態の変形例に係る木材加工用型枠および加工装置要部の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【００４４】
１ 圧縮木製品
１ａ 主板部
１ｂ、１ｃ 側板部
１０ 無垢材
１０Ｇ 木目
１１、１２ 木材
１１ａ 外側面
１１ｂ 内側面
１１ｃ 端面
３１、６１ 型枠（木材加工用型枠）
３２、６２ ゴム型
３３、６３ 可動金型
３４、６４ 突出部
３５、６５ 端面押圧部
４１ 金型
４２ 凹部
４３ 縁端部
５１ 整形金型
５２ 凸部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、木材を所定の３次元形状に加工する木材の加工方法、木材加工用型枠、および加工装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、自然素材である木材が注目されている。木材はさまざまな木目を有するため、原木から形取る箇所に応じて個体差が生じ、その個体差が製品ごとの個性となる。また、長期の使用によって生じる傷や色合いの変化自体も、独特の風合いとなって使用者に親しみを生じさせることがある。これらの理由により、合成樹脂や軽金属を用いた製品にはない、個性的で味わい深い製品を生み出すことのできる素材として木材が注目されており、その加工技術も飛躍的に進歩しつつある。
【０００３】
従来、かかる木材の加工技術として、吸水軟化した一枚の木材を圧縮し、その木材を圧縮方向と略平行に切断して板状の一次固定品を得た後、この一次固定品を加熱吸水させながら所定の３次元形状に成形する技術が知られている（例えば、特許文献１を参照）。また、軟化処理した状態で圧縮した一枚の木材を仮固定し、この木材を型に入れて回復させることによって型成形する技術も知られている（例えば、特許文献２を参照）。
【０００４】
【特許文献１】特許第３０７８４５２号公報
【特許文献２】特開平１１−７７６１９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、上述した従来の木材加工技術では、木材表面が所望の木目をなすように木目優先の形取りを行うと、その形状が型枠の形状から大きく逸脱してしまう場合があった。このような場合には、形取った木材の形状を大きく変形させなければならないが、金型を用いる場合には、圧縮の際に木材に割れを生じやすかった。すなわち、圧縮による木材の形状変化が大きい場合には、その木材に割れを生じさせることなく成形することが困難であった。
【０００６】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、木材の圧縮前後における形状変化が大きい場合であっても、その木材に割れを生じさせることなく成形することが可能な木材の加工方法、木材加工用型枠、および加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項１記載の発明は、木材に圧縮力を加えることによって前記木材を所定の３次元形状に加工する木材の加工方法であって、前記圧縮力が作用する領域を前記木材の中央部から周縁部へと徐々に広げながら前記木材を圧縮する圧縮工程を有することを特徴とする。
【０００８】
請求項２記載の発明は、請求項１記載の発明において、前記圧縮工程は、前記木材の表面に当接する部分が粘性および弾性のうち少なくともいずれか一方の性質を備えた材質から成る木材加工用型枠と、所定の金型とによって前記木材を挟持して前記圧縮力を加えることを特徴とする。
【０００９】
請求項３記載の発明は、請求項１または２記載の発明において、前記圧縮工程で圧縮された木材の形状を前記３次元形状に整形する整形工程をさらに有することを特徴とする。
【００１０】
請求項４記載の発明は、所定の金型との間で木材を挟持して圧縮力を加えることによって前記木材を所定の３次元形状に加工する木材加工用型枠であって、圧縮時に前記木材のいずれかの表面に当接し、この当接する領域を前記表面の中央部から周縁部へと徐々に広げながら前記木材に圧縮力を加える突出部と、圧縮時に前記木材の端面に当接し、この端面の肉厚方向と略直交する方向に圧縮力を加える端面押圧部と、を備え、前記突出部および前記端面押圧部は、粘性および弾性のうち少なくともいずれか一方の性質を有する材質から成ることを特徴とする。
【００１１】
請求項５記載の発明に係る加工装置は、請求項４記載の木材加工用型枠と、前記木材加工用型枠との間で前記木材を挟持して圧縮力を加える金型と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【００１２】
本発明に係る木材の加工方法、木材加工用型枠、および加工装置によれば、加工対象の木材に圧縮力を加える際、その圧縮力が作用する領域を前記木材の中央部から周縁部へと徐々に広げながら圧縮することにより、木材の圧縮前後における形状変化が大きい場合であっても、その木材に割れを生じさせることなく成形することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態（以後、実施の形態と称する）を説明する。
【００１４】
図１は、本発明の一実施の形態に係る木材の加工方法によって形成された圧縮木製品の構成を示す斜視図である。また、図２は図１のＡ−Ａ線断面図である。これら二つの図に示す圧縮木製品１は、略長方形状の表面をなす主板部１ａと、この主板部１ａ表面の長手方向に略平行な２辺の各々から当該主板部１ａに対して所定の角度をなして延出する二つの側板部１ｂと、主板部１ａ表面の短手方向に略平行な２辺の各々からその主板部１ａに対して所定の角度をなして延出する二つの側板部１ｃとを備える。この圧縮木製品１の肉厚（ｒとする）はほぼ均一であり、その主板部１ａの表面は板目面をなす。なお、図１のＢ−Ｂ線断面は、寸法が異なる点を除いて、図２に示すＡ−Ａ線断面と略同形である。
【００１５】
次に、この実施の形態に係る木材の加工方法を説明する。以後の説明では、上述した形状を有する圧縮木製品１を形成する場合について説明するが、この実施の形態に係る木材の加工方法は、他の形状を有する圧縮木製品に対しても適用可能である。
【００１６】
まず、圧縮木製品１の原材料となる木材を原木から形取る。図３は、原木である無圧縮状態の無垢材から切削等によって形取った木材の構成を示す斜視図である。また、図４は、図３のＣ−Ｃ線断面図である。これらの図に示す木材１１は、成形後の圧縮木製品１（図１を参照）よりも椀状に近く、外側面１１ａおよび内側面１１ｂは、それぞれ滑らかな曲面をなしており、肉厚はほぼ均一である（ｒ0とする）。また、木材１１は、後述する圧縮工程によって減少する分の容積を予め加えた容積を有する。なお、図３のＤ−Ｄ線断面は、寸法が異なる点を除いて、図４に示すＣ−Ｃ線断面と略同形をなす。
【００１７】
図５は、以上の構成を有する木材１１を形取る時の形取位置を模式的に示す図であり、より具体的には、図４に示す断面部分の無垢材からの形取位置を模式的に示す断面図である。圧縮木製品１の主板部１ａが図１に示すような板目面をなすためには、木材１１の表面が板目面をなすように無垢材から形取らなければならない。このため、無垢材１０から木材１１を形取る際には、図５に示すように木目１０Ｇの曲率よりも木材１１の側面の曲率の方が概ね大きくなるように形取る。この無垢材１０として、檜、檜葉、桐、杉、松、桜、欅、黒檀、チーク、マホガニー、ローズウッドなどを用いることができる。
【００１８】
なお、木材１１として柾目材または追柾材を適用することも可能である。したがって、加工対象となる木材を無垢材１０からどのように形取るかは、その木材を用いて加工された結果物としての圧縮木製品の用途や、その圧縮木製品に要求される強度または美観など、各種条件を考慮して決定すればよい。
【００１９】
続いて、上記の如く形取った木材１１を圧縮する（圧縮工程）。この圧縮工程を行う前に、木材１１を高温高圧の水蒸気雰囲気中に所定時間放置する。ここでいう高温高圧とは、温度が１００〜２３０℃、より好ましくは１８０〜２３０℃程度であり、圧力が０.１〜３ＭＰａ（メガパスカル）、より好ましくは０.４５〜２.５ＭＰａ程度の状態を指す。これにより、木材１１は過剰に水分を吸収して軟化する。なお、上述した水蒸気雰囲気中で木材１１を放置する代わりに、例えば木材１１をマイクロウェーブの如き高周波の電磁波によって加熱してから圧縮を行ってもよい。
【００２０】
その後、同じ水蒸気雰囲気中で圧縮工程を実施する。図６は、本実施の形態に係る木材加工用型枠および加工装置要部の構成を示す縦断面図であり、圧縮工程の概要を示す図である。同図に示すように、この実施の形態に係る加工装置は、加工対象の木材である木材１１を挟持して圧縮力を加える型枠３１と金型４１とを備える。なお、図６では、木材１１の断面の上下が図４と逆転している。すなわち、図６では、木材１１の内側面１１ｂの方が上方に来ている。
【００２１】
この実施の形態に係る木材加工用型枠である型枠３１は、木材１１の表面の一つである内側面１１ｂに当接するシリコンゴム等の材質（弾性体）から成るゴム型３２と、このゴム型３２の上端に接着されて上下動可能な略直方体状の可動金型３３とを備える。ゴム型３２は、図６で下方に突出して木材１１の内側面１１ｂの少なくとも一部に当接する突出部３４と、木材１１の端面１１ｃを保持し、圧縮時にその端面１１ｃの肉厚方向と略直交する方向に圧縮力を加える端面押圧部３５とを有する。なお、使用するゴム型３２の硬度によっては、ゴム型３２の外周に金型を設けることにより、ゴム型３２の変形を制限するようにしてもよい。
【００２２】
これに対して、圧縮時に木材１１の下方から圧縮力を加える金型４１は、木材１１の外側面１１ａを嵌入する凹部４２を有する。この凹部４２の縁端部４３はＲ形状をなしており、木材１１を圧縮する際、外側面１１ａのうち縁端部４３に当接する箇所に過度の応力が加わって木材１１に割れが生じるのを防止する。
【００２３】
図７は、型枠３１を下降させていき、ゴム型３２と金型４１とが当接した状態を示す断面図である。この図７に示すように、木材１１の外側面１１ａは、金型４１の凹部４２の中央部に当接している。また、突出部３４の下端近傍は、木材１１の内側面１１ｂの中央部に当接している。この状態では、外側面１１ａの形状が凹部４２の形状と大きく異なるため、外側面１１ａの周縁部と凹部４２との間には隙間が生じている。これに対し、内側面１１ｂの形状と突出部３４の形状も完全に一致しているわけではない（外側面１１ａの形状と凹部４２の形状との違いほど大きくはない）ので、内側面１１ｂの周縁部と突出部３４との間にも隙間が生じている。この結果、図７に示す状態から型枠３１の下降を開始した直後は、木材１１の中央部付近にのみ圧縮力が作用する。
【００２４】
図８は、図７に示す状態から型枠３１を下降させている途中の状態を示す図である。この図８に示すように、型枠３１を下降させることによってゴム型３２自体も可動金型３３と木材１１とによって押圧されて徐々に変形していき、内側面１１ｂに当接する領域が木材１１の表面の中央部から周縁部へと徐々に広がっていく。同時に、ゴム型３２の端面押圧部３５は、端面１１ｃに当接してその端面１１ｃの肉厚方向と直交する方向に圧縮力を加える。この結果、木材１１の表面で圧縮力が作用する領域が型枠３１の下降とともに広がっていき、外側面１１ａと金型４１との間の隙間、および内側面１１ｂとゴム型３２との間の隙間が変形に伴って徐々に減少していく。それと同時に木材１１の肉厚も、中央部から周縁部へと徐々に薄くなっていく。
【００２５】
この変形の際、外側面１１ａは、縁端部４３に当接する箇所が摺動しながら変形していく。このため、縁端部４３の表面にテフロン（登録商標）等の素材をコーティングしておけば、木材１１との間に生じる動摩擦力が低減して木材１１の摺動が一段と容易となるので、割れを防止する意味でもより好ましい。
【００２６】
以上説明したように、木材１１を挟持する一方の型枠３１にゴム型３２を適用することにより、圧縮時のゴム型３２自身の変形によって木材１１の急激な変形を緩和することができる。したがって、従来のように一対の金型を用いて木材を挟持、圧縮する場合とは異なり、木材１１に過度の圧縮力が作用することがなくなり、圧縮に伴う形状変化が大きくても、木材１１に割れ等が生じるのを防ぐことが可能となる。
【００２７】
この後、ゴム型３２によって木材１１との隙間が完全に埋め尽くされ、木材１１に対して所定の圧縮力が加わる状態に達した時点で可動金型３３の下降を止める。図９は、圧縮工程において、木材１１の変形がほぼ完了した状態を示す図である。この図９に示す状態では、弾性体としてのゴム型３２が有する特性により、ゴム型３２から木材１１に対して、場所によらずに均一な圧縮力が作用する。この状態で所定時間経過させた後、型枠３１と金型４１を離間させる。
【００２８】
続いて、上記圧縮工程と同様の水蒸気雰囲気中で、型枠３１とは異なる整形用の金型（以後、整形金型と称する）を下降させ、金型４１との間で木材１１を挟持することによって整形を行う（整形工程）。図１０は、この整形工程における木材圧縮時の状況（木材１１の変形がほぼ完了した状態）を示す図であり、図７と同じ切断面で見たときの縦断面図である。
【００２９】
この整形工程において、木材１１の上方から圧縮力を加える整形金型５１は、木材１１の内側面１１ｂに嵌合する形状をなす凸部５２を有する。この凸部５２は、木材１１の端面１１ｃの付近など、上記圧縮工程においてゴム型３２による圧縮が不十分であった箇所を整形可能な形状をなしている。図１０に示す圧縮状態で所定時間放置した後、金型４１と整形金型５１を離間して圧縮を解除し、上記水蒸気雰囲気を解いて木材１１を乾燥させることにより、図１に示す圧縮木製品１が完成する。
【００３０】
圧縮工程および整形工程を経た結果、圧縮木製品１の肉厚ｒは、無垢材１０から形取った木材１１の圧縮前の肉厚ｒ0の３０〜５０％程度となる。換言すると、木材の圧縮率
（ｒ0−ｒ）／ｒ0は、０.５〜０.７程度となる。圧縮工程および整形工程における圧縮率は、木材１１の種類や圧縮木製品１の用途等の条件に応じて変更可能である。例えば、圧縮工程では肉厚をあまり変えないで形状のみを大きく変化させ、整形工程の方で肉厚方向の圧縮を主に行うようにしてもよい。
【００３１】
なお、加工すべき圧縮木製品の形状や用途によっては、圧縮工程を終えた段階で所定の３次元形状が十分な精度で得られることもある。このような場合には、必ずしも整形工程を行う必要はない。
【００３２】
以上説明した二つの工程（圧縮工程、整形工程）において、型枠３１または整形金型５１を金型４１に対して上下動させる際には、これらの型枠３１または整形金型５１を電気的に駆動する駆動手段を加工装置に具備させ、型枠３１または整形金型５１を電気的に駆動して木材１１に加える圧縮力の制御を行うようにしてもよい。これに対して、型枠３１または整形金型５１と金型４１とをねじで連結し、このねじを手動または自動で締めることによって型枠３１または整形金型５１を金型４１に対して上下動させ、木材１１に加える圧縮力を制御するようにしてもよい。
【００３３】
また、整形工程として、加工対象の木材の表面を切削することによってその表面の形状を整形してもよい。かかる整形工程は、例えば圧縮工程後の状態において、木材の節の部分の肉厚が他の部分の肉厚よりも大きい状態で残っている場合、その木材の表面を平らに整形する場合などに好適である。
【００３４】
圧縮工程時における高温高圧の水蒸気雰囲気は、例えば圧力容器の内部で実現される。この場合、圧力容器の内部では限られた空間しか確保できないため、駆動側の型枠や金型のストロークを長く取ることができない。上述した型枠３１の場合、ゴム型３２が変形する分だけ通常の金型よりもストロークを余分に取ることができるので、制限された空間内でも圧縮力を自在に加えることが可能となる。
【００３５】
以上説明した本発明の一実施の形態に係る木材の加工方法、木材加工用型枠、および加工装置によれば、加工対象の木材に圧縮力を加える際、その圧縮力が作用する領域を前記木材の中央部から周縁部へと徐々に広げながら圧縮することにより、木材の圧縮前後における形状変化が大きい場合であっても、その木材に割れを生じさせることなく成形することが可能となる。この結果、圧縮木製品を製造する際の歩留まりを向上させることもできる。
【００３６】
また、この実施の形態によれば、木材加工用型枠がゴム型を備えることにより、そのゴム型が圧縮時に変形して木材表面に対して一様に圧縮力を加えることができるため、加工すべき木材の形状によらずにその木材の密度を一様にすることができ、圧縮後の木材に一様な強度を付与することが可能となる。
【００３７】
次に、本実施の形態の変形例を説明する。図１１は、本実施の形態の一変形例に係る木材加工用型枠および加工装置要部の構成を示す縦断面図であり、無垢材１０から平板状に形取った木材１２を圧縮する場合の圧縮工程の概要を示す図である。この場合、木材１２の上方から木材１２に対して圧縮力を加える型枠６１（木材加工用型枠）は、ゴム型６２と、このゴム型６２の上端に接着される略直方体状の可動金型６３とを備える。なお、木材１２の下方から木材１２に対して圧縮力を加える金型４１は、上記一実施の形態と同じである。
【００３８】
型枠６１を構成するゴム型６２は、圧縮力を加える直前の状態において、平板状の木材１２の一方の表面（図１１で上方の表面）の中央部に当接する突出部６４と、圧縮時に木材１２の端面に当接し、その端面の肉厚方向と略直交する方向に圧縮力を加える端面押圧部６５とを備える。
【００３９】
この図１１に示す状態から可動金型６３を下降させていくと、ゴム型６２の突出部６４は、自身が変形することによって木材１２の表面で当接する領域をその木材１２の中央部から周縁部へと徐々に広げていきながら、木材１２を変形していく。そして、木材１２の下側の表面の中央部が凹部４２に当接すると、その中央部の肉厚方向に圧縮力が加わり始め、肉厚が薄くなリ始める。その後、凹部４２に当接する木材１２の下側の表面が徐々に周縁部に広がっていくのに伴って圧縮力が作用する領域も同様に広がっていく。この際、端面押圧部６５は上記の如く木材１２の端面に圧縮力を加え続ける。最終的には、木材１２の下側の表面が金型４１の凹部４２に完全に当接し、図９に示すのと同様の断面形状をなすまで圧縮される。この後の工程（整形工程を含む）は、上記一実施の形態と同様である。
【００４０】
ここまで、本発明を実施するための最良の形態を説明してきたが、本発明は上記一実施の形態によってのみ限定されるべきではない。例えば、木材加工用型枠として弾性体であるゴム型を用いる代わりに、より一般の高分子ゲルを含む粘弾性体等から成る型を用いてもよい。すなわち、木材加工用型枠のうち加工対象の木材に当接する部分の材質として、粘性および弾性のうち少なくともいずれか一方を備えた材質を適用してもよい。
【００４１】
このように、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【００４２】
本発明に係る木材の加工方法、木材加工用型枠、および加工装置によって形成された圧縮木製品は、デジタルカメラ、携帯電話、ＰＨＳまたはＰＤＡ等の携帯型通信端末、携帯型オーディオ装置、ＩＣレコーダ、携帯型テレビ、携帯型ラジオ、各種家電製品のリモコン、デジタルビデオなどの外装材として適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【００４３】
【図１】本発明の一実施の形態に係る木材の加工方法によって形成された圧縮木製品の構成を示す斜視図である。
【図２】図１のＡ−Ａ線断面図である。
【図３】無垢材から形取った木材の構成を示す斜視図である。
【図４】図３のＣ−Ｃ線断面図である。
【図５】木材を無垢材から形取る状況を示す図である。
【図６】本発明の一実施の形態に係る木材加工用型枠および加工装置要部の構成を示す縦断面図である。
【図７】木材加工用型枠と金型とによって木材を挟持した状態を示す断面図である。
【図８】圧縮工程において、木材が変形している途中の状態を示す断面図である。
【図９】圧縮工程において、木材の変形が完了した状態を示す断面図である。
【図１０】本発明の一実施の形態に係る木材の加工方法の整形工程の概要を示す縦断面図である。
【図１１】本発明の一実施の形態の変形例に係る木材加工用型枠および加工装置要部の構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【００４４】
１ 圧縮木製品
１ａ 主板部
１ｂ、１ｃ 側板部
１０ 無垢材
１０Ｇ 木目
１１、１２ 木材
１１ａ 外側面
１１ｂ 内側面
１１ｃ 端面
３１、６１ 型枠（木材加工用型枠）
３２、６２ ゴム型
３３、６３ 可動金型
３４、６４ 突出部
３５、６５ 端面押圧部
４１ 金型
４２ 凹部
４３ 縁端部
５１ 整形金型
５２ 凸部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
木材に圧縮力を加えることによって前記木材を所定の３次元形状に加工する木材の加工方法であって、
前記圧縮力が作用する領域を前記木材の中央部から周縁部へと徐々に広げながら前記木材を圧縮する圧縮工程を有することを特徴とする木材の加工方法。
【請求項２】
前記圧縮工程は、
前記木材の表面に当接する部分が粘性および弾性のうち少なくともいずれか一方の性質を備えた材質から成る木材加工用型枠と、所定の金型とによって前記木材を挟持して前記圧縮力を加えることを特徴とする請求項１記載の木材の加工方法。
【請求項３】
前記圧縮工程で圧縮された木材の形状を前記３次元形状に整形する整形工程をさらに有することを特徴とする請求項１または２記載の木材の加工方法。
【請求項４】
所定の金型との間で木材を挟持して圧縮力を加えることによって前記木材を所定の３次元形状に加工する木材加工用型枠であって、
圧縮時に前記木材のいずれかの表面に当接し、この当接する領域を前記表面の中央部から周縁部へと徐々に広げながら前記木材に圧縮力を加える突出部と、
圧縮時に前記木材の端面に当接し、この端面の肉厚方向と略直交する方向に圧縮力を加える端面押圧部と、
を備え、
前記突出部および前記端面押圧部は、粘性および弾性のうち少なくともいずれか一方の性質を有する材質から成ることを特徴とする木材加工用型枠。
【請求項５】
請求項４記載の木材加工用型枠と、
前記木材加工用型枠との間で前記木材を挟持して圧縮力を加える金型と、
を備えたことを特徴とする加工装置。
【請求項１】
木材に圧縮力を加えることによって前記木材を所定の３次元形状に加工する木材の加工方法であって、
前記圧縮力が作用する領域を前記木材の中央部から周縁部へと徐々に広げながら前記木材を圧縮する圧縮工程を有することを特徴とする木材の加工方法。
【請求項２】
前記圧縮工程は、
前記木材の表面に当接する部分が粘性および弾性のうち少なくともいずれか一方の性質を備えた材質から成る木材加工用型枠と、所定の金型とによって前記木材を挟持して前記圧縮力を加えることを特徴とする請求項１記載の木材の加工方法。
【請求項３】
前記圧縮工程で圧縮された木材の形状を前記３次元形状に整形する整形工程をさらに有することを特徴とする請求項１または２記載の木材の加工方法。
【請求項４】
所定の金型との間で木材を挟持して圧縮力を加えることによって前記木材を所定の３次元形状に加工する木材加工用型枠であって、
圧縮時に前記木材のいずれかの表面に当接し、この当接する領域を前記表面の中央部から周縁部へと徐々に広げながら前記木材に圧縮力を加える突出部と、
圧縮時に前記木材の端面に当接し、この端面の肉厚方向と略直交する方向に圧縮力を加える端面押圧部と、
を備え、
前記突出部および前記端面押圧部は、粘性および弾性のうち少なくともいずれか一方の性質を有する材質から成ることを特徴とする木材加工用型枠。
【請求項５】
請求項４記載の木材加工用型枠と、
前記木材加工用型枠との間で前記木材を挟持して圧縮力を加える金型と、
を備えたことを特徴とする加工装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【公開番号】特開２００６−３１５２８４（Ｐ２００６−３１５２８４Ａ）
【公開日】平成１８年１１月２４日（２００６．１１．２４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−１３９９００（Ｐ２００５−１３９９００）
【出願日】平成１７年５月１２日（２００５．５．１２）
【出願人】（００００００３７６）オリンパス株式会社 (11,466)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年１１月２４日（２００６．１１．２４）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年５月１２日（２００５．５．１２）
【出願人】（００００００３７６）オリンパス株式会社 (11,466)
【Ｆターム（参考）】
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