説明

木材用水系接着剤組成物

【課題】ホルムアルデヒド、アンモニア、酢酸、VOC13物質を放散せず、耐水性に優れる1液型の木材用水系接着剤組成物の提供。
【解決手段】2個以上のケト基を有する樹脂エマルジョンと、2個以上のヒドラジノ基を有するヒドラジノ化合物と、ブロックイソシアネート基を有し軟化点が80℃以上のブロックウレタンプレポリマーエマルジョンとを含有し、前記樹脂エマルジョンおよび前記ブロックウレタンプレポリマーエマルジョンに使用される中和剤が、アンモニア以外のアミン化合物である木材用水系接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材用水系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
国宝など貴重な文化財の長期間に渡る展示・収納用家具には、意匠性に優れた木質系の合板が多用されている。しかし、合板から放散されるホルムアルデヒド、アンモニア、酢酸が文化財の劣化に深刻な影響を及ぼすことが明らかとなり、文化財収納庫内のホルムアルデヒド、アンモニア、酢酸の気中濃度の推奨値として、東京国立文化財研究所が、ホルムアルデヒド80ppm以下、アンモニア30ppm以下、酢酸430μg/m3以下と設定した。また、VOC13物質も厚生労働省指針値以下としている。それに伴い、合板用接着剤としてもホルムアルデヒド、アンモニア、酢酸、VOC13物質の放散量が上記規定以下とされている。
合板用水系接着剤としては、酢酸ビニルエマルジョンをベースとしたものが一般的に使用されているが、酢酸ビニルエマルジョンからは酢酸が放出されるという問題があり、酢酸ビニルエマルジョンを含有する組成物は耐水性に劣る。また、木材用接着剤は1液型が取り扱いがしやすい。以上のことから、上記の物質を放出しない1液型の水系接着剤が望まれている。
従来、ホルムアルデヒドを放出しない接着剤(例えば、特許文献1等)が提案されているものの、アンモニア、酢酸、VOC13物質まで規定したものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−313530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、ホルムアルデヒド、アンモニア、酢酸、VOC13物質を放散せず、耐水性に優れる1液型の木材用水系接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、2個以上のケト基を有する樹脂エマルジョンと、2個以上のヒドラジノ基を有するヒドラジノ化合物と、ブロックイソシアネート基を有し軟化点が80℃以上のブロックウレタンプレポリマーエマルジョンとを含有し、前記樹脂エマルジョンおよび前記ブロックウレタンプレポリマーエマルジョンに使用される中和剤が、アンモニア以外のアミン化合物である組成物が、ホルムアルデヒド、アンモニア、酢酸、VOC13物質を放散せず、耐水性に優れる1液型の木材用水系接着剤組成物となりうることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記1〜3を提供する。
1. 2個以上のケト基を有する樹脂エマルジョンと、2個以上のヒドラジノ基を有するヒドラジノ化合物と、ブロックイソシアネート基を有し軟化点が80℃以上のブロックウレタンプレポリマーエマルジョンとを含有し、前記樹脂エマルジョンおよび前記ブロックウレタンプレポリマーエマルジョンに使用される中和剤が、アンモニア以外のアミン化合物である木材用水系接着剤組成物。
2. 前記樹脂エマルジョンが、ウレタンエマルジョンである上記1に記載の木材用水系接着剤組成物。
3. 前記ヒドラジノ基の量が、前記ケト基1モルに対して、0.1〜6モルである上記1または2に記載の木材用水系接着剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の木材用水系接着剤組成物は、ホルムアルデヒド、アンモニア、酢酸、VOC13物質を放散せず、耐水性に優れる1液型の組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の木材用水系接着剤組成物は、2個以上のケト基を有する樹脂エマルジョンと、2個以上のヒドラジノ基を有するヒドラジノ化合物と、ブロックイソシアネート基を有し軟化点が80℃以上のブロックウレタンプレポリマーエマルジョンとを含有し、前記樹脂エマルジョンおよび前記ブロックウレタンプレポリマーエマルジョンに使用される中和剤が、アンモニア以外のアミン化合物である組成物である。
以下本発明の木材用水系接着剤組成物を「本発明の組成物」ということがある。
【0009】
樹脂エマルジョンについて以下に説明する。本発明の木材用水系接着剤組成物に含有される樹脂エマルジョンは、樹脂エマルジョンに含有される樹脂が2個以上のケト基を有し、樹脂エマルジョンに使用される中和剤がアンモニア以外のアミン化合物であれば特に制限されない。
樹脂エマルジョンに含有される樹脂の主鎖としては、例えば、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系ポリマー、ポリエステル、ポリオレフィン、これらの共重合体が挙げられる。
樹脂エマルジョンは、耐水性により優れ、酢酸を放出しないことに優れるという観点から、ウレタンエマルジョンであるのが好ましい。
【0010】
樹脂は、ケト基を2個以上有する。
樹脂が有するケト基は、カルボニル基が2つの炭化水素基に結合していれば特に制限されない。炭化水素基は特に制限されず、例えば、分岐していてもよい脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組合せが挙げられる。炭化水素基は、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。
ケト基は、樹脂の主鎖および/または末端に結合することができる。
【0011】
ケト基が有する炭化水素基はそれぞれ1価、または2価とすることができる。
脂肪族炭化水素基の場合、その炭素原子数が1〜10であるのが好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が挙げられる。
【0012】
ケト基としては、例えば、R1−CO−R2−が挙げられる。R1は1価の炭化水素基であり、R2は2価の炭化水素基である。
1−CO−R2−で表されるケト基としては、例えば、式(3)で表される基が挙げられる。
【化1】


式(3)で表される基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を介して樹脂と結合することができる。
樹脂が有するケト基の数は、樹脂1モル当り2個以上であり、耐水性により優れ、ホルムアルデヒドを捕捉する(ホルムアルデヒドの捕捉性)のに優れるという観点から、樹脂1モルが有するケト基は、2〜20個であるのが好ましく、2〜10個であるのがより好ましい。
【0013】
樹脂は親水性アニオン性基を有する自己乳化型樹脂であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
本発明において、親水性アニオン性基は、自己乳化型樹脂が有することができるものであれば特に制限されない。
親水性アニオン性基としては、例えば、カルボン酸(カルボキシル基)、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、チオスルホン酸等のような酸の塩(例えば、酸と、塩基性中和剤とからなるもの)が挙げられる。
なかでも、耐水接着性により優れ、耐温水接着性、貯蔵安定性に優れるという観点から、カルボン酸の塩(例えば、カルボン酸とアンモニア以外のアミン化合物とからなるもの)が好ましい。
【0014】
ケト基を有する樹脂エマルジョンは、その製造について特に制限されない。ケト基を有する樹脂を製造する際に、例えば、以下に示すモノマーAを使用することによって、ケト基を樹脂に導入することができる。
樹脂エマルジョンの樹脂がウレタン樹脂である場合、例えば、ポリイソシアネートと、ポリオールと、イソシアネート基と反応性のある2個以上の活性水素基およびケト基を有するモノマー(以下これを「モノマーA」ということがある。)と、を反応させることにより得られるものが好適に挙げられる。
【0015】
イソシアネート基と反応性のある活性水素基としては、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等が挙げられ、好ましくはヒドロキシ基が挙げられる。モノマーAは、これらの活性水素基のうち1種のみを有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
【0016】
モノマーAとしては、例えば、ケト基と不飽和結合とを有する化合物とポリアルカノールアミンとを付加反応させた反応物等が好適に挙げられる。
ケト基は、カルボニル基が2個の炭化水素基に結合している。炭化水素基は上記と同義である。
不飽和結合はケト基が有する炭化水素基に結合することができる。不飽和結合を有する基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリル基のような鎖状不飽和炭化水素基;スチリル基のような芳香族炭化水素基を有する鎖状不飽和炭化水素基が挙げられる。
【0017】
モノマーAは更に親水性基を有していてもよい。親水性基としては、例えば、親水性ノニオン性基、親水性アニオン性基、親水性カチオン性基、親水性両性基等が挙げられる。
親水性ノニオン性基としては、例えば、モノマーAの主鎖や側鎖に導入されたオキシエチレン基の繰り返し単位の部分等が挙げられる。親水性アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基等が挙げられる。親水性カチオン性基としては、例えば、第三級アミノ基等が挙げられる。
【0018】
ケト基と不飽和結合とを有する化合物としては、例えば、ケト基を有するアクリルアミドが挙げられる。ケト基を有するアクリルアミドとしては、例えば、ダイアセトンアクリルアミドが挙げられる。
ポリアルカノールアミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミンのようなジアルカノールアミンが挙げられる。
モノマーAの製造方法としては、例えば、ケト基と不飽和結合とを有する化合物(例えば、ケト基を有するアクリルアミド)1モルとポリアルカノールアミン1.0〜1.1モルとを60〜120℃の条件下においてバルクで反応させる方法が挙げられる。
【0019】
モノマーAとしては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化2】


モノマーAはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
樹脂エマルジョンを製造する際に使用されるポリイソシアネートは、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンのような脂環族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネート;テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)のような芳香族炭化水素基が脂肪族炭化水素基に結合している脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。なかでも、常温において水との反応性が低く、水中でイソシアネート基を保持することができるという観点から、イソホロンジイソシアネート、TMXDIが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
樹脂エマルジョンを製造する際に使用されるポリオールは特に制限されない。例えば、ヘキサンジオールから得られるポリカーボネートポリオール;ポリエステルポリオール;ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコールのようなポリエーテルポリオール;ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールのようなポリオレフィンポリオール;アクリルポリオール;ポリマーポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の低分子ポリオールが挙げられる。
なかでも、接着強度に優れるという観点から、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールが好ましい。
ポリカーボネートポリオールは、特に制限されない。例えば、ヘキサンジオールのポリカーボネートポリオール、ポリプロピレンポリオールのポリカーボネートポリオールが挙げられる。
ポリオールはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
樹脂エマルジョンが自己乳化型樹脂である場合、その製造の際に、上記に加えてさらにモノマーとして、2個以上の活性水素基を有するカルボキシル基含有化合物を使用することができる。カルボキシル基含有化合物は、2個以上の活性水素基と1個以上のカルボキシル基とを有する化合物であれば特に制限されない。例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のヒドロキシアルカン酸等が挙げられる。なかでも、容易に入手できるという観点から、2,2−ジメチロールプロピオン酸が好ましい。カルボキシル基含有化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
ポリオールのヒドロキシ基とモノマーAの活性水素基との合計量は、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基1モルに対して、0.5〜2.0モルであるのが好ましく、1.5〜2.0モルであるのがより好ましい。
モノマーとしてさらにカルボキシル基含有化合物を使用する場合、ポリオールのヒドロキシ基とモノマーAの活性水素基とカルボキシル基含有化合物の活性水素基との合計量は、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基1モルに対して、0.5〜2.0モルであるのが好ましく、1.5〜2.0モルであるのがより好ましい。
【0024】
樹脂エマルジョンの製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法を採用できる。例えば、ポリイソシアネートと、ポリオールと、モノマーAと、必要に応じて使用することができる、カルボキシル基含有化合物と、ケトン系溶剤と、触媒とを反応装置に仕込んで重合する。このとき、全ての原料を一度に仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよい。また、バッチ的にまとめて仕込んでもよいし、連続的に仕込んでもよい。また、反応温度40〜150℃の条件下で重合が行われることが好ましい。
【0025】
次に、得られた反応物に中和剤としてアンモニア以外のアミン化合物を添加して、親水性基(例えば、親水性アニオン性基)を中和した後、この混合物を水中に分散させてウレタンエマルジョンを得ることができる。
更に、得られたウレタンエマルジョンからケトン系溶剤を留去することが好ましい。留去の方法は、加熱・減圧して行うことが好ましい。
【0026】
反応装置としては、例えば、撹拌装置の付いた反応釜、ニーダー、一軸または多軸押し出し反応機等の混合混練装置が挙げられる。
【0027】
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジアセトンアルコール、アセトニルアセトン、アセトンアルコール、アセトエチルアルコール等が挙げられる。
【0028】
触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチルスズ−2−エチルへキソエート、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等が挙げられる。
【0029】
樹脂エマルジョンの製造の際に使用される中和剤はアンモニア以外のアミン化合物である。アンモニア以外のアミン化合物は樹脂の親水性アニオン性基を中和するものである。
アンモニア以外のアミン化合物は、炭化水素基を有する有機アミン化合物であれば特に制限されない。窒素原子に結合する炭化水素基は特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基が挙げられる。
アンモニア以外のアミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミンのような第3級アミン類;第1級アミン類;第2級アミン類が挙げられる。
またアミン化合物以外の中和剤として、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の塩基性中和剤が挙げられる。
樹脂が親水性カチオン性基を有する場合、これに対して使用する中和剤として、例えば、塩酸、プロピオン酸、乳酸、シアノ酢酸、リン酸、硫酸等の酸性中和剤を使用することができる。
【0030】
また、樹脂エマルジョンがウレタンエマルジョンである場合、ウレタンエマルジョンの末端イソシアネート基を、ポリアミンのような鎖延長剤を用いて伸長させてもよい。
鎖延長剤としてのポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノシクロへキシルメタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。なかでも、疎水性でウレタンエマルジョンとの親和性が良好で、イソシアネート基と反応しやすいという観点から、ピペラジンが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
鎖延長剤の量は、耐水性により優れるという観点から、ウレタン樹脂が有するイソシアネート基1モルに対して、0.01〜0.5モルであるのが好ましい。
【0031】
ウレタンエマルジョンの末端イソシアネート基を伸長させる際、界面活性剤を添加して乳化性を保持してもよい。
界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸、樹脂酸、酸性脂肪アルコール、硫酸エステル、高級アルキルスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸、スルホン化ひまし油、スルホコハク酸エステル等のアニオン系界面活性剤;エチレンオキシドと長鎖脂肪アルコールまたはフェノール類との反応生成物等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0032】
樹脂エマルジョン中の樹脂の重量平均分子量は、耐水性により優れ、接着強度に優れるという観点から、10,000〜50,000であるのが好ましい。
本発明において、樹脂の重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で表わされる重量平均分子量であるものとする。
【0033】
樹脂エマルジョンは、ケト基を500〜8000g/mol有することが好ましく、1000〜5000g/mol有することがより好ましい。この範囲であると、硬化収縮が大きくなり過ぎることがなく、また、架橋が不十分となることがない。
樹脂エマルジョンはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
ヒドラジノ化合物について以下に説明する。
本発明の組成物に含有されるヒドラジノ化合物は、2個以上のヒドラジノ基を有する化合物であれば特に限定されない。
ヒドラジノ化合物が有するヒドラジノ基は樹脂エマルジョン中の樹脂が有するケト基と反応することができる。また、ヒドラジノ化合物はホルムアルデヒドと反応することができホルムアルデヒド捕捉剤としての機能を有するので、本発明の組成物は木材から発生するホルムアルデヒドを捕捉することができる。
【0035】
ヒドラジノ化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、カルボヒドラジド等のジヒドラジド;多価カルボン酸ポリヒドラジド化合物;末端に2個以上のヒドラジノ基を有する末端ヒドラジノ基含有ウレタンプレポリマーが挙げられる。
【0036】
多価カルボン酸ポリヒドラジド化合物の市販品としては例えば、アミキュアVDH(味の素社製)等が挙げられる。
末端に2個以上のヒドラジノ基を有する末端ヒドラジノ基含有ウレタンプレポリマーは、末端に2個以上のイソシアネート基を有する末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、2個以上のヒドラジノ基を有する化合物を反応させて得ることができる。この2個以上のヒドラジノ基を有する化合物として、アジピン酸ジヒドラジドを用いることが好ましい。
ヒドラジノ化合物は、汎用であり、水への溶解性が良好である点から、アジピン酸ジヒドラジドが好ましい。
ヒドラジノ化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
ヒドラジノ基の量は、ケト基1モルに対して、耐水性により優れ、ホルムアルデヒドの捕捉性に優れるという観点から、0.1〜6モルであるのが好ましい。
また、ヒドラジノ基の量は、ケト基1モルに対して、4.5〜6モルの割合で含有するのが好ましい。この範囲である場合、ホルムアルデヒド捕捉性が極めて高く、木材に対する接着性および耐水性により優れる木材用水系接着剤組成物となる。
【0038】
ブロックウレタンプレポリマーエマルジョンについて以下に説明する。
本発明の組成物に含有されるブロックウレタンプレポリマーエマルジョンは、ブロックイソシアネート基を有し、軟化点が80℃以上であり、ブロックウレタンプレポリマーエマルジョンに使用される中和剤がアンモニア以外のアミン化合物であるブロックウレタンプレポリマーのエマルジョンである。
ブロックウレタンプレポリマーは、ウレタンプレポリマーに含まれる一部または全部のイソシアネート基がブロック化剤でブロックされていればよい。ブロックイソシアネート基は、熱等によりブロック化剤が解離してイソシアネート基を生ずることができる。
【0039】
ブロックウレタンプレポリマーは親水性アニオン性基を有する自己乳化型樹脂であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
親水性アニオン性基としては、例えば、カルボン酸(カルボキシル基)、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、チオスルホン酸等のような酸の塩(例えば、酸と、塩基性中和剤とからなるもの)が挙げられる。
親水性アニオン性基を有するブロックウレタンプレポリマーは、少なくとも1個のカルボキシル基またはその塩を有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0040】
ブロックウレタンプレポリマーとしては、例えば、ポリオールとポリイソシアネートと2個以上のヒドロキシ基を有するカルボキシル基含有化合物とブロック化剤とを反応させることにより得られるウレタンプレポリマーが好適に挙げられる。
【0041】
ブロックウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート、ポリオールは特に限定されない。例えば、上記と同義のものが挙げられる。
【0042】
ブロックウレタンプレポリマーエマルジョンの製造の際に使用される2個以上の活性水素基を有するカルボキシル基含有化合物は、2個以上の活性水素基と1個以上のカルボキシル基とを有する化合物であれば特に制限されない。例えば、上記と同義のものが挙げられる。
【0043】
ブロックウレタンプレポリマーエマルジョンの製造の際に使用されるブロック化剤は特に制限されない。例えば、2,6−ジメチル−4−ヘプタノンオキシム、メチルエチルケトオキシム、2−ヘプタノンオキシムのようなオキシム類;アルコール類;フェノール類;ピラゾール類;トリアゾール類;カプロラクタム類等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、貯蔵安定性に優れるという点から、オキシム類が好ましく、メチルエチルケトオキシムがより好ましい。
【0044】
ブロック化剤の使用量は、例えば、原料であるウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対するブロック化剤の活性水素の当量比(活性水素/イソシアネート基)が、0.5〜2.0であるのが好ましく、0.8〜1.2であるのがより好ましい。この範囲であると、貯蔵安定性、接着性および耐水性により優れる。
【0045】
ブロックウレタンプレポリマーエマルジョン中のブロックウレタンプレポリマーの重量平均分子量は、耐水性により優れ、低粘度であるため作業性に優れるという観点から、1,000〜5,000であるのが好ましい。
本発明において、ブロックウレタンプレポリマーの重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で表わされる重量平均分子量であるものとする。
【0046】
ブロックウレタンプレポリマーの製造方法は、特に制限されず、従来公知の方法により製造することができる。例えば、ポリオールとポリイソシアネートと2個以上のヒドロキシ基を有するカルボキシル基含有化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーにブロック化剤を反応させる方法が挙げられる。
【0047】
本発明の組成物において、ブロックウレタンプレポリマーは水中でエマルジョンとなっている。ブロックウレタンプレポリマーを水中でエマルジョンとする方法としては、例えば、ブロックウレタンプレポリマーを中和剤としてアンモニア以外のアミン化合物と反応させ、その反応物を水中に分散させてエマルジョンとする方法等が挙げられる。また乳化剤を使用することができる。
【0048】
中和剤はアンモニア以外のアミン化合物であり、アミン化合物は上記と同義である。また、アミン化合物以外に使用することができる中和剤は上記と同義である。
【0049】
乳化剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、非イオン系の界面活性剤等が挙げられる。
【0050】
ブロックウレタンプレポリマーは、軟化点が80℃以上である。例えば、合板を製造する場合は一般的に100〜150℃で加熱プレスを行い、そのときの合板の温度は70〜100℃になるが、軟化点が80℃以上であるため、熱により樹脂が柔らかくなり過ぎることがなく、合板に対するなじみがよくなり接着性に優れ、熱圧着直後に剥離が生じることがない。ブロックウレタンプレポリマーは、より高温で接着させる場合にも適用できる点から、軟化点が100℃以上であるのが好ましい。
また、ブロックウレタンプレポリマーは、接着性および耐水性に優れる点から、軟化点が150℃以下であるのが好ましい。
【0051】
本明細書において、軟化点は、JIS K5601−2−2(1999)の規定に準じて測定した値を意味する。
ブロックウレタンプレポリマーエマルジョンはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
ブロックウレタンプレポリマー(固形分)の量は、耐水性により優れるという観点から、樹脂エマルジョン中の樹脂の固形分100質量部に対して、10〜90質量部であるのが好ましく、20〜80質量部であるのがより好ましい。
【0053】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した各成分以外に添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、増粘剤、顔料、染料、防腐剤、防カビ剤、抗菌剤、分散安定剤、造膜助剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、滑剤、補強材、硬化剤、消泡剤が挙げられる。
【0054】
増粘剤としては、例えば、ポリエーテル系増粘剤、ウレタン変成ポリエーテル系増粘剤、変成ポリアクリル酸系増粘剤等が挙げられる。
増粘剤の量は、耐水性により優れ、作業性に優れるという観点から、樹脂エマルジョン中の樹脂(固形分)とブロックウレタンプレポリマーエマルジョン中のブロックウレタンプレポリマー(固形分)との合計100質量部に対して、0.1〜2.0質量部であるのが好ましく、0.1〜1.0質量部であるのがより好ましい。
充填剤としては、例えば、重質炭酸カルシウムのような炭酸カルシウムが挙げられる。
充填剤の量は、作業性、接着性に優れるという観点から、樹脂エマルジョン中の樹脂(固形分)とブロックウレタンプレポリマーエマルジョン中のブロックウレタンプレポリマー(固形分)との合計100質量部に対して、10〜200質量部であるのが好ましく、10〜100質量部であるのがより好ましい。
【0055】
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、容器に樹脂エマルジョンとヒドラジノ化合物とブロックウレタンプレポリマーエマルジョンと必要に応じて使用することができる添加剤とを入れ、減圧下で混合ミキサー等の撹拌機を用いて十分に混合する方法が挙げられる。
【0056】
本発明の組成物は木材用接着剤(例えば、合板用、木材組立用)として使用することができる。基材としての木材は特に制限されない。本発明の組成物を基材に塗布する方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0057】
本発明の組成物は、ブロックウレタンプレポリマーエマルジョンを含有することにより、貯蔵安定性に優れ、熱圧着後の剥離がなく、接着性および耐水性に優れる。
即ち、ブロックウレタンプレポリマーはイソシアネート基がブロックされているので、1液型にすることができ、更に、貯蔵安定性にも優れる。
また、ブロックイソシアネート基は加熱することによりイソシアネート基を生成し、このイソシアネート基が木材表面のヒドロキシ基等と反応することにより、優れた接着性および耐水性を発現する。
また、ブロックウレタンプレポリマーの軟化点が80℃以上であるため、加熱プレス等する際に、樹脂が軟らかくなり過ぎることがなく、熱圧着後に剥離が生じることがない。
【0058】
また、本発明の組成物は被着材等に塗布された後、本発明の組成物中の水が塗膜から飛散すると、樹脂エマルジョンの樹脂が有するケト基とヒドラジノ化合物のヒドラジノ基とが反応して架橋構造を形成する。
【0059】
本発明の組成物は、ヒドラジノ基を樹脂エマルジョンのケト基に対して当量より多く含有する場合、ヒドラジノ基がケト基と反応した後でもヒドラジノ基を有しているので、ホルムアルデヒドを捕捉することができる。
また、ヒドラジノ基を特定の割合で含有する場合、極めて高いホルムアルデヒド捕捉性を有し、木材に対する接着性および耐水性に優れ、添加剤のブリードアウトを抑制できる木材用水系接着剤組成物となる。
また、本発明の組成物は、1液型の水系接着剤であるため、VOC(揮発性有機化合物)が放出されず、人体や環境に与える影響が小さい。
本発明の組成物は、上述したような優れた特性を有するため、木材用接着剤として極めて有用である。
【実施例】
【0060】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.評価
下記の項目に関して下記の方法によって本発明の木材用水系接着剤組成物を評価した。結果を第1表に示す。
(1)加熱接着性
木材(カラマツ、縦300mm×横300mm×厚さ2mm)を2枚用意し、下記のようにして得られた組成物を一方の木材の縦300mm×横300mmの面に塗布量150〜200g/m2となるように刷毛で塗布した後、組成物を塗布した木材に他方の木材を密着させ、150℃の条件で10分間、プレス機を用いて圧着させて、合板を作製した。得られた合板を合板1とする。
目視で合板1の接着面に剥離があるか否かを確認した。
加熱接着性の評価基準としては、合板1の接着面に剥離がなかったものを「○」、剥離していたものを「×」とした。
【0061】
(2)耐水性(JAS2類試験)
合板1を用いて、JAS2類試験に準じて、合板1を70℃の温水に2時間浸漬させた後、60℃で3時間乾燥させて目視で接着面に剥離があるか否かを確認した。
耐水性の評価基準としては、JAS2類試験後接着面に剥離がなかったものを「○」、わずかに剥離していたものを「△」、大きく剥離していたものを「×」とした。
合板がJAS2類試験後剥離していない場合、使用された組成物は合板加工用の水系接着剤組成物として実用的であるといえる。
【0062】
(3)プレス接着性
縦300mm×横300mmの合板1を2枚用い、1枚の合板1を合板1−1とし、もう1枚の合板1を合板1−2とした。合板1−1の片面の下半分(縦150mm×横300mm)に得られた組成物を塗布し、合板1−1において組成物を塗布した部分と合板1−2の片面の上半分(縦150mm×横300mm)とが重なるように(このとき、合板1−1の上半分と合板1−2の下半分とは重ならない。)合板1−1と合板1−2とを重ねて、得られた積層体を常温下においてプレス圧1MPaの条件で60分間圧着してプレス加工された合板を作製した。
プレス直後に、プレス加工された合板を手で剥離させる剥離試験を行った。
プレス接着性の評価基準としては、プレス加工された合板が剥離試験で剥離しなかったものを「○」、簡単ではないが剥離したものを「△」、簡単に剥離したものを「×」とした。
プレス加工された合板が剥離していない場合、使用された組成物は家具組立用の水系接着剤組成物として実用的であるといえる。
【0063】
2.樹脂エマルジョンの製造
(1)モノマーA−1の合成
ダイアセトンアクリルアミド(日本化成社製)100質量部に対して、ジエタノールアミン55.9質量部を添加し、90℃で6時間加熱撹拌して、下記式(1)で表される化合物を得た。得られた化合物をモノマーA−1とする。
【化3】

【0064】
(2)ウレタンエマルジョンの製造
1,6−ヘキサンジオールのカーボネート(ラベカーブ105、ミテックス社製)100質量部に、イソホロンジイソシアネート(IPDI、三井ポリウレタン社製)35.7質量部およびメチルエチルケトン(モービル石油社製)38質量部を添加し、75〜80℃で100分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は4.90質量%であった。
次に、反応系の温度を50〜55℃にして、ジメチロールプロピオン酸(広栄パーストープ社製)6.0質量部、上記で得られたモノマーA−1:13.2質量部を添加して、75〜80℃で180分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.0質量%であった。
続いて、反応液に中和剤としてのトリエチルアミン2.4質量部を添加して混合液を撹拌しながら水で希釈したピペラジン(鎖延長剤として使用。関東化学社製)を1.9質量部添加して末端イソシアネート基をアミン伸長した。
その後、メチルエチルケトンを留去して、固形分35質量%の側鎖にケト基を有するウレタン樹脂のエマルジョンを得た。得られたエマルジョンを樹脂Emとする。
得られた樹脂エマルジョンをポリエチレンの上に塗布し、20℃、60RH%の条件下で24時間乾燥させたのち、得られた膜を用いて、樹脂エマルジョンに含有される樹脂の重量平均分子量を測定した。
樹脂エマルジョンに含有される樹脂の重量平均分子量(テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で表わされる。)は25,000であった。
【0065】
3.ブロックウレタンプレポリマーエマルジョンの製造
1,6−ヘキサンジオールのカーボネート(ラベカーブ105、ミテックス社製)100質量部に、イソホロンジイソシアネート(IPDI、三井ポリウレタン社製)35.7質量部およびメチルエチルケトン(モービル石油社製)38質量部を添加し、75〜80℃で100分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は4.90質量%であった。
次に、反応系の温度を50〜55℃にして、ジメチロールプロピオン酸(広栄パーストープ社製)6.0質量部を添加して、75〜80℃で180分間反応させた。
続いて、反応液にメチルエチルケトオキシム10質量部(関東化学社製)を徐々に加えて、メチルエチルケトオキシムとイソシアネート基とを反応させ、イソシアネート基がブロックされたブロックウレタンプレポリマーを得た。これに中和剤としてトリエチルアミン2.4質量部を添加して撹拌した。ブロックウレタンプレポリマーを攪拌しながら水で希釈した後、メチルエチルケトンを留去することによって、固形分50質量%のブロックウレタンプレポリマーのエマルジョンを得た。得られたエマルジョンをブロックウレタンプレポリマーEmとする。
得られたブロックウレタンプレポリマーエマルジョンをポリエチレンの上に塗布し、20℃、60RH%の条件下で24時間乾燥させたのち、得られた膜を用いてブロックウレタンプレポリマーエマルジョン含有されるブロックウレタンプレポリマーの重量平均分子量を測定した。
ブロックウレタンプレポリマーエマルジョンに含有されるブロックウレタンプレポリマーの重量平均分子量(テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で表わされる。)は2,400であった。
【0066】
4.木材用水系接着剤組成物の製造
第1表に示す各成分を同表に示す割合(質量部)で撹拌機を用いて混合し、木材用水系接着剤組成物を得た。
なお、第1表において樹脂Em、ブロックウレタンプレポリマーEmの量は、エマルジョンとしての量である。
【0067】
【表1】

【0068】
第1表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・樹脂Em:上記のようにして製造した樹脂エマルジョン
・ヒドラジノ化合物:アジピン酸ジヒドラジド(8質量%水溶液、日本化成社製)。第1表中のヒドラジノ化合物の量はアジピン酸ジヒドラジドの正味の量である。ヒドラジノ化合物の量は樹脂エマルジョンが有するケト基に対して2モルである。
・ブロックウレタンプレポリマーEm:上記のようにして製造したブロックウレタンプレポリマーエマルジョン。ブロックウレタンプレポリマーの軟化点100℃
・充填剤:商品名スーパーSS、丸尾カルシウム社製
・増粘剤:ポリオキシエチレン誘導体(商品名M2005A、第一工業製薬社製)
【0069】
第1表に示す結果から明らかなように、ブロックウレタンプレポリマーエマルジョンを含有しない比較例1は、熱解離によるイソシアネート基と木材成分であるセルロースのヒドロキシ基との反応がないため、耐水性(耐水接着性)に劣った。樹脂エマルジョンおよびヒドラジノ化合物を含有しない比較例2は、常温におけるケト基とヒドロキシ基との反応による架橋がないため、木材への密着性が低く、プレス接着性に劣った。
これに対して、実施例1〜6は、耐水性、接着性(加熱接着性、プレス接着性)に優れた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個以上のケト基を有する樹脂エマルジョンと、2個以上のヒドラジノ基を有するヒドラジノ化合物と、ブロックイソシアネート基を有し軟化点が80℃以上のブロックウレタンプレポリマーエマルジョンとを含有し、前記樹脂エマルジョンおよび前記ブロックウレタンプレポリマーエマルジョンに使用される中和剤が、アンモニア以外のアミン化合物である木材用水系接着剤組成物。
【請求項2】
前記樹脂エマルジョンが、ウレタンエマルジョンである請求項1に記載の木材用水系接着剤組成物。
【請求項3】
前記ヒドラジノ基の量が、前記ケト基1モルに対して、0.1〜6モルである請求項1または2に記載の木材用水系接着剤組成物。

【公開番号】特開2011−26464(P2011−26464A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174019(P2009−174019)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】