説明

木粒子及び同木粒子の製造方法並びに同木粒子を使用したリグニンの抽出方法

【課題】原料として用いた場合に原料の形状に依存した質や量のばらつきをなくすこと。
【解決手段】本発明では、木材から所定のサイズの粒子状に削り出した木粒子において、乾燥を行った後に酸性物質又はアルカリ性物質を各木粒子の内部に含浸させることにした。特に、木材から所定のサイズの粒子を削り出し、乾燥させ、その後、酸性物質又はアルカリ性物質を各粒子の内部に含浸させることにした。また、その後、木粒子を加熱することによって木粒子に含有されるリグニンを抽出することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材から所定のサイズの粒子状に削り出した木粒子及び同木粒子の製造方法並びに同木粒子を使用したリグニンの抽出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、天然の木から切り出した木材は、建造物や家具などの材料として広く利用されており、また、木材を塊状にした木材チップは、製紙用パルプなどの原料として利用されている。特に、近年においては、化石燃料の枯渇化や高騰化などの影響によって、木材チップから抽出したバイオマス燃料が注目を集めている。
【0003】
このバイオマス燃料の抽出においては、製紙用パルプの漂白と同様に、木材チップを原料とし、加熱炉の内部に木材チップとアルカリ剤を投入し、高温度に加熱することによって木材チップの内部に含有されるリグニンをアルカリ蒸解させ、これにより木材チップからリグニンを抽出し、その後、さらに高温度に加熱することによって木材チップからセルロースを抽出するようにしていた(たとえば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2007−119934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、原料として木材チップを用いた場合には、その形状が個々の木材チップで異なっているために、同一条件下で全ての木材チップから良好にリグニンやセルロースを抽出させることが困難であった。
【0006】
そのため、加熱炉にて多量の木材チップを同一条件化で処理した場合に、原料として用いる木材チップのそれぞれの形状に依存して、抽出されるリグニンやセルロースの質や量にばらつきが生じてしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、請求項1に係る本発明では、木材から所定のサイズの粒子状に削り出した木粒子であって、乾燥を行った後に酸性物質又はアルカリ性物質を各木粒子の内部に含浸させることにした。
【0008】
また、請求項2に係る本発明では、木材から所定のサイズの粒子状に削り出した木粒子の製造方法であって、木材から所定のサイズの粒子を削り出し、乾燥させ、その後、酸性物質又はアルカリ性物質を各粒子の内部に含浸させることにした。
【0009】
また、請求項3に係る本発明では、木材から所定のサイズの粒子状に削り出した木粒子の製造方法であって、木材を乾燥させた後に酸性物質又はアルカリ性物質を木材の内部に含浸させ、その後、所定のサイズの粒子を削り出すことにした。
【0010】
また、請求項4に係る本発明では、リグニンの抽出方法であって、木材から所定のサイズの粒子を削り出し、乾燥させた後に、内部にアルカリ性物質を含浸させて木粒子を製造し、その後、木粒子を加熱することによって木粒子に含有されるリグニンを抽出することにした。
【0011】
また、請求項5に係る本発明では、リグニンの抽出方法であって、木材を乾燥させた後にアルカリ性物質を内部に含浸させ、その後、所定のサイズの粒子を削り出して木粒子を製造し、その後、木粒子を加熱することによって木粒子に含有されるリグニンを抽出することにした。
【発明の効果】
【0012】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0013】
すなわち、本発明では、木材から所定のサイズに粒子状に削り出した木粒子であって、乾燥を行った後に酸性物質又はアルカリ性物質を各木粒子の内部に含浸させることにしているために、木材が有する呼吸性を利用して内部にまで酸性物質又はアルカリ性物質を良好に含浸させることができ、しかも、所定のサイズに揃えられた木粒子であるために各種原料として用いた場合に原料の形状に依存した質や量のばらつきをなくすことができる。
【0014】
特に、酸性物質を含浸させた場合には、酸性物質によって木粒子の殺菌を行うことができ、木粒子の腐敗を防止することができ、また、アルカリ性物質を含浸させた場合には、アルカリ性物質によって木粒子の酸化を防止することができ、よって、木粒子の長期保存を可能とすることができる。
【0015】
また、木材から所定のサイズの粒子を削り出し、乾燥させ、その後、酸性物質又はアルカリ性物質を各粒子の内部に含浸させることにした場合には、各木粒子の内部に酸性物質又はアルカリ性物質を均一に含浸させることができる。
【0016】
また、木材から所定のサイズの粒子を削り出し、乾燥させた後に、内部にアルカリ性物質を含浸させて木粒子を製造し、その後、木粒子を加熱することによって木粒子に含有されるリグニンを抽出することにした場合には、同一条件化で均一にリグニンを抽出することができ、原料の形状に依存した質や量のばらつきをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る木材から所定のサイズの粒子状に削り出した木粒子及び同木粒子の製造方法並びに同木粒子を使用したリグニンの抽出方法について図面を参照しながら説明する。
【0018】
本発明でいう木粒子とは、木材から所定のサイズの粒子状に削り出したものをいい、たとえば、木材をロータリーカッターで破砕して粉状の木材(木粉)を生成し、その木粉を篩を用いて所定のサイズ毎に分粒(選別)したものである。
【0019】
そして、本発明に係る木粒子は、上記木粒子の内部に酸性物質(酸性溶液や酸性ガスなど)又はアルカリ性物質(アルカリ性溶液やアルカリ性ガスなど)を含浸させたものである。
【0020】
この本発明に係る木粒子は、以下の2通りの方法で製造することができる。なお、以下の説明では酸性溶液又はアルカリ性溶液を用いた場合について説明するが、酸性ガス又はアルカリ性ガスを用いてもよい。
【0021】
第1の木粒子の製造方法では、図1に示すように、まず、木材をロータリーカッターで粉砕(破砕)することによって木材から粉状の木材(木粉)を生成する。
【0022】
次に、生成された木粉を篩を用いて所定のサイズ毎に分粒(選別)することによって、所定のサイズの粒子状の木材(木粒子)を生成する。
【0023】
次に、生成された木粒子を所定の水分濃度以下になるまで乾燥させる。なお、乾燥は、放置による自然乾燥でもよく、加熱による強制乾燥でもよい。
【0024】
そして、乾燥直後に木粒子を酸性溶液又はアルカリ性溶液の入った容器内に投入して浸漬させ、所定時間放置することによって木粒子の内部に酸性溶液又はアルカリ性溶液を含浸させる。この含浸処理は、乾燥後に水分濃度が上昇する前に行うのが好ましい。
【0025】
以上の方法により、内部に酸性溶液又はアルカリ性溶液を含浸させた木粒子を製造することができる。
【0026】
また、第2の木粒子の製造方法では、図2に示すように、まず、木材を所定の水分濃度以下になるまで乾燥させる。なお、乾燥は、放置による自然乾燥でもよく、加熱による強制乾燥でもよい。
【0027】
そして、乾燥直後に木材を酸性溶液又はアルカリ性溶液の入った容器内に投入して浸漬させ、所定時間放置することによって木材の内部に酸性溶液又はアルカリ性溶液を含浸させる。この含浸処理は、乾燥後に水分濃度が上昇する前に行うのが好ましい。
【0028】
次に、酸性溶液又はアルカリ性溶液を含浸させた木材をロータリーカッターで粉砕(破砕)することによって木材から粉状の木材(木粉)を生成する。
【0029】
次に、生成された木粉を篩を用いて所定のサイズ毎に分粒(選別)することによって、所定のサイズの粒子状の木材(木粒子)を生成する。
【0030】
以上の方法により、内部に酸性溶液又はアルカリ性溶液を含浸させた木粒子を製造することができる。なお、木粒子又は木材の内部に酸性物質を含浸させた後にアルカリ性物質を含浸させて中和させたり、木粒子又は木材の内部にアルカリ性物質を含浸させた後に酸性物質を含浸させて中和させるようにしてもよい。
【0031】
そして、木粒子の内部に酸性溶液を含浸させることによって、各種原料となる木粒子の殺菌を行うことができる。
【0032】
また、木材にはリグニンが含有されており、そのままでは製紙用パルプやバイオマス燃料の原料としては使用することができないために、リグニンを抽出除去する必要があるが、木粒子の内部にアルカリ性溶液を含浸させることによって、後述するように木材が本来含有しているリグニンを容易に抽出することができる。
【0033】
以下に、本発明に係るアルカリ性溶液を含浸させた木粒子からリグニンを抽出する方法について説明する。
【0034】
図3に示すように、まず、上記製造方法によって製造した木材を原料として加熱炉の内部に投入して所定の温度で加熱する。加熱する温度は、リグニンの溶解温度以上の温度であればよいが、ここではセルロースの抽出も別途行えるようにするために、リグニンの溶解温度以上でセルロースの溶解温度以下の温度で加熱する。
【0035】
これにより、木粒子の内部でアルカリ性溶液が加熱され気化し、木粒子の内部でリグニンがアルカリ蒸解され、木粒子の内部からリグニンを抽出除去することができる。
【0036】
その後、加熱炉の温度を更に上昇させてセルロースの溶解温度以上の温度で加熱すると、木粒子の内部のセルロースが溶解され、木粒子の内部からセルロースを抽出することができる。
【0037】
以上に説明したように、本発明では、木材から所定のサイズに粒子状に削り出した木粒子であって、乾燥を行った後に酸性物質又はアルカリ性物質を各木粒子の内部に含浸させることにしている。
【0038】
そのため、本発明では、木材が有する呼吸性を利用して内部にまで酸性物質又はアルカリ性物質を良好に含浸させることができる。
【0039】
しかも、本発明では、所定のサイズに揃えられた木粒子であるために各種原料として用いた場合に原料の形状に依存した質や量のばらつきをなくすことができる。
【0040】
特に、酸性物質を含浸させた場合には、酸性物質によって木粒子の殺菌を行うことができ、木粒子の腐敗を防止することができ、また、アルカリ性物質を含浸させた場合には、アルカリ性物質によって木粒子の酸化を防止することができ、よって、木粒子の長期保存を可能とすることができる。
【0041】
また、本発明では、木材から所定のサイズの粒子を削り出し、乾燥させ、その後、酸性溶液又はアルカリ性溶液を各粒子の内部に含浸させることによって木粒子を製造している。
【0042】
そのため、本発明では、各木粒子の内部に酸性物質又はアルカリ性物質を均一に含浸させることができる。
【0043】
また、本発明では、木材から所定のサイズの粒子を削り出し、乾燥させた後に、内部にアルカリ性物質を含浸させて木粒子を製造し、その後、木粒子を加熱することによって木粒子に含有されるリグニンを抽出するようにしている。
【0044】
そのため、本発明では、同一条件化で均一にリグニンを抽出することができ、原料の形状に依存した質や量のばらつきをなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】木粒子の製造方法を示す説明図。
【図2】木粒子の製造方法を示す説明図。
【図3】リグニンの抽出方法を示す説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材から所定のサイズの粒子状に削り出した木粒子であって、
乾燥を行った後に酸性物質又はアルカリ性物質を各木粒子の内部に含浸させたことを特徴とする木粒子。
【請求項2】
木材から所定のサイズの粒子状に削り出した木粒子の製造方法であって、
木材から所定のサイズの粒子を削り出し、乾燥させ、その後、酸性物質又はアルカリ性物質を各粒子の内部に含浸させることを特徴とする木粒子の製造方法。
【請求項3】
木材から所定のサイズの粒子状に削り出した木粒子の製造方法であって、
木材を乾燥させた後に酸性物質又はアルカリ性物質を木材の内部に含浸させ、その後、所定のサイズの粒子を削り出すことを特徴とする木粒子の製造方法。
【請求項4】
木材から所定のサイズの粒子を削り出し、乾燥させた後に、内部にアルカリ性物質を含浸させて木粒子を製造し、その後、木粒子を加熱することによって木粒子に含有されるリグニンを抽出することを特徴とするリグニンの抽出方法。
【請求項5】
木材を乾燥させた後にアルカリ性物質を内部に含浸させ、その後、所定のサイズの粒子を削り出して木粒子を製造し、その後、木粒子を加熱することによって木粒子に含有されるリグニンを抽出することを特徴とするリグニンの抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−115840(P2010−115840A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290061(P2008−290061)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(503453484)有限会社紅屋 (6)
【Fターム(参考)】