説明

木製部材、筐体及びその製造方法

【課題】 木製部材のプレス成形における加工歩留まりを向上させる。
【解決手段】 第1の金型151と第2の金型152との間に、樹脂シート120と木製板130とが重ねて配設される。木製板130は、樹脂シート120とともに、第1及び第2の金型151及び152を用いて立体形状にプレス成形される。その後、樹脂シート120は剥離される。樹脂シート120の存在により、金型151と木製板130との間での引っ掛かり等に起因する屈曲部での割れの発生が抑制される。一部の実施形態において、木製板又は樹脂シートの一方に所定パターンで接着剤が配設され、プレス成形時の木製板の折り畳み位置が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製部材、筐体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減及び/又は装飾性の観点から、自然由来の木製材料を、例えば電子機器の筐体など、各種工業製品に適用する例が見受けられるようになってきた。電子機器の筐体などに木製材料を使用する場合、典型的に、木目を基調とした装飾性と、割れ又は亀裂などの発生しにくさといった加工性とを鑑み、節及び欠陥(虫食い、腐食)などを有しない部材が選定されて使用される。あるいは、表面に露出する化粧層として、一枚板で節などのない見た目に優れた部材が使用され、表面に露出しない内部構造層には、節などを有する部材、間伐材又は張り合わせ材などの安価な部材が使用される。
【0003】
電子機器の筐体などは一般的に立体形状を有する。故に、木製部分についても、より多くの部分を木目調とし、より美観を高めるためなどの理由で、立体形状に加工することが要求され得る。特に、木製部材は、湿気の吸収による反りを抑制するため、天板部の周縁に概して矩形の枠部を有するお盆形状に加工されることが望ましい。このような立体形状を有する木製部材を安価に量産性よく製造するために、木製部材のプレス成形技術の開発が進められている。
【0004】
図1は、お盆形状を有する木製部材の典型的な製造方法を断面図にて示している。先ず、図1(a)に示すように、所望の厚みを形成するように数層の木製板(又は木製合板)31及び33が接着剤35を介して積層された仮積み合板30が、水蒸気40中で柔軟化される。柔軟化された仮積み合板30は、図1(b)に示すようにメス型金型51とオス型金型52との間に挿入され、続けて、図1(c)に示すように木製部材10へとプレス成形される。その後、プレス金型51及び52が離型され、図2に示すようなお盆形状の木製部材10が取り出される。なお、図2は、筐体などの外装面となる天板部11を上にして見た木製部材10の上面図と2つの側面図とを示している。
【0005】
従来のプレス成形技術においては、図2に示すように、お盆形状の木製部材10の屈曲部、特に図示のようにコーナー部、に割れ又は亀裂17が発生することがあり、木製部材の加工歩留まりが低下され得る。筐体などのデザイン性及びその自由度を高め、且つ/或いは電子機器の内部容積を増大させるため、大きい曲げ加工や深い絞り加工が要求され得るが、そのような加工は、木製部材の屈曲部にかかる応力を高め、割れ又は亀裂17の発生を助長する。特に、加工しにくい節を持つ間伐材などを筐体の内部構造層に使用した場合、節が屈曲部に位置すると亀裂やシワが生じやすい。また、電子機器の筐体には難燃性が要求される場合があり、そのような場合には一般的に木製部材に難燃剤が含浸されるが、難燃剤の使用は木製部材を硬化させ、亀裂などを生じさせやすくする傾向にある。
【0006】
また、絞りが深い場合、木製合板30などの木製板の余剰部分が折り畳まれることになるが、折り畳み部15は、当初こそプレス形状を保持し得るが、使用環境条件に応じて次第にまくれ上がることがある。また、折り畳み部15が生じる位置は、プレス金型への木製板のセット状態や木製板が含む節の位置などに応じて変化し得るため、特定することが困難である。例えば、折り畳み部15がコーナー部に生じると、まくれ上がる危険が一層高くなり得る。また、折り畳み部の位置が一定とならないことは、電子機器の筐体などの美観的な加工歩留まりを低下させる要因となり得る。
【0007】
さらに、木製材料の成形においては、使用する木材品種や原材料の品質にも応じて割れなどの欠陥の発生確率に差があり、安定して一定以上の歩留まりで加工することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−300906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
開示の技術は、以上の問題の一部又は全てを鑑み、木製部材のプレス成形における加工歩留まりを向上させ得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一観点によれば、木製部材又は筐体の製造方法が提供される。第1の金型と第2の金型との間に、木製板と樹脂シートとが重ねて配設される。木製板は、樹脂シートとともに、第1及び第2の金型を用いて立体形状にプレス成形される。その後、樹脂シートは剥離される。
【発明の効果】
【0011】
木製板のプレス加工時に、樹脂シートの存在により、金型と木製板との間での引っ掛かり等に起因する屈曲部での割れなどの発生が抑制され、木製部材又は筐体の加工歩留まりが向上され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】木製部材の典型的な製造方法を示す断面図である。
【図2】図1の方法により製造され得る木製部材を例示する図である。
【図3】第1実施形態に係る木製部材の製造方法を例示する図である。
【図4】図3の方法により製造され得る木製部材を例示する図である。
【図5】第2実施形態に係る木製部材の製造方法を例示する図である。
【図6】図5の方法により製造され得る木製部材を例示する図である。
【図7】第3実施形態に係る木製部材の製造方法を例示する図である。
【図8】図7の方法により製造され得る木製部材を例示する図である。
【図9】一実施形態に係る電子機器の筐体の一例を示す図である。
【図10】一実施形態に係る電子機器の筐体の他の一例を示す図である。
【図11】一実施形態に係る電子機器の筐体の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。なお、図面において、種々の構成要素は必ずしも同一の尺度で描いていない。また、図面全体を通して、同一あるいは対応する構成要素には同一又は類似の参照符号を付する。
【0014】
(第1実施形態)
図3を参照して、第1実施形態に係る木製部材の製造方法を説明する。先ず、図3(a)の上面図に示すような均質な樹脂シート120を用意する。樹脂シート120は平滑な表面を有する。樹脂シート120はまた、一定以上の強度及び伸縮性を有し、且つ後に行われるプレス工程における温度(例えば、150°程度)に対して耐性を有するものとし得る。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)又はポリイミド(PI)などの樹脂で形成されたシートが使用され得る。樹脂シート120の粘着性は必ずしも必要ないが、例えばカプトン(登録商標)テープなどのポリイミドテープといった、片面に粘着性を有するものも使用され得る。ただし、その粘着剤は、木材に転写しないものとすることが好ましい。また、一例において、樹脂シート120は、弾性及び熱収縮性を有するものとしてもよい。樹脂シート120の厚さは、一定以上の強度及び加工性が得られれば特に限定されず、例えば5μm−300μmの範囲内とし得る。
【0015】
また、図3(b)の断面図に示すように、加工対象の木製板130を、例えば水蒸気140中で柔軟化する。木製板130は1枚以上の木製の板材を有する。例えば、木製板130は、所望の厚みを形成するように複数の板材131及び133がコーンスターチ系熱硬化接着剤などの接着剤135を介して仮積みされた木製合板とし得る。また、外装面として露出する化粧層131として、一枚板で節などのない板材が使用され、表面に露出しない内部構造層133として、節などを有する部材、間伐材又は張り合わせ材などの安価な部材が使用されてもよい。化粧層131及び内部構造層133は各々が、数層の板材を含んでいてもよい。各板材の厚さは例えば200μm−500μm程度とし得る。水蒸気140による柔軟化に要する時間は例えば30秒程度である。
【0016】
次いで、図3(c)の断面図に示すように、樹脂シート120と木製板130とを重ね合わせて、メス型金型151とオス型金型152との間に配設する。金型151及び152は、屈曲部を有する所望の立体形状、例えばお盆形状、を有する木製部材が得られるように作製されている。得られた木製部材が電子機器などの筐体に使用される場合、典型的に、木製部材の外装面は凸形状になる。故に、木製板130の複数の板材のうち板材131が化粧層である場合、木製板130は、化粧層131がメス型金型151側に位置するように配設される。樹脂シート120は、メス型金型151と木製板130との間に配設される。また、樹脂シート120が、カプトン(登録商標)テープなどの片面に粘着性を有するものである場合、金型間への配設に先立って、木製板130(化粧層131)に樹脂シート120を貼り付けておいてもよい。
【0017】
次いで、図3(d)に示すように、金型151及び152を用いて、木製板130を樹脂シート120とともにプレス成形し、木製部材100を形成する。プレス条件は、木製板130の木材品種及び/又は厚さなどに依存し得る。例えば、総厚が数mmの木製板130のプレス成形では、金型温度を100℃−150℃、成形圧力を9MPa程度、加圧時間を5分程度とし得る。金型151の温度と金型152の温度とを異ならせてもよい。
【0018】
そして、プレス金型151及び152を離型し、樹脂シート120を剥離することにより、図4に示すような木製部材100が取り出される。なお、図4は、筐体などの外装面となる天板部101を上にして見た木製部材100の上面図と2つの側面図とを示している。図示の例において、木製部材100はお盆形状を有している。
【0019】
木製部材100は、屈曲部に、曲げの大きさ及び絞りの深さに応じて木製板130の余剰部分が折り畳まれた折り畳み部105を有している。しかしながら、木製部材100においては、図2に示した割れ又は亀裂17のような欠陥の発生が抑制あるいは防止されている。割れなどは、特に、年輪などの凹凸による木製板と金型との引っ掛かりに起因して、応力の集中するコーナー部に生じやすい。しかしながら、図3に示した方法によれば、樹脂シート120の平滑面により金型との引っ掛かりが防止され、且つ/或いは樹脂シート120により応力が緩和されるため、割れなどの発生が抑制されるのである。
【0020】
故に、木製部材100の製造歩留まりを向上させ、ひいては木製部材100の製造コストを低減することができる。また、曲げや絞りなどの加工制約が緩和され、木製部材のデザインの自由度を高めることができる。このことは、木製部材130を電子機器の筐体に用いる場合に、電子機器の内部容積を増大させ得ることをも意味する。さらに、難燃剤の含浸により硬化された木製板を使用した場合にも同様の効果が得られるため、電子機器筐体の難燃性要求を満たすことが容易になる。
【0021】
また、樹脂シート120に弾性及び熱収縮性を有するものを用いた場合、木材が有する年輪などの凹凸がプレス加工により平坦化されることを抑制し、木材特有の触感を残した木製部材を得ることができる。
【0022】
図4に示した木製部材100は、切断加工などの所定の工程を経て、例えば、デスクトップ型若しくはノート型のPC、携帯情報端末、又は携帯電話などの電子機器の筐体として使用され得る。木製部材100は、同様にして、各種工業製品に使用されてもよい。
【0023】
(第2実施形態)
図5を参照して、第2実施形態に係る木製部材の製造方法を説明する。先ず、図5(a)の上面図に示すような樹脂シート220を用意する。樹脂シート220は、均質な樹脂フィルム221上に所定のパターンで形成された接着剤222を有している。樹脂フィルム221は、例えば、第1実施形態に関連して説明した樹脂シート120と同様のものとし得る。接着剤222は好ましくは、熱可塑性及び熱硬化性を有し、且つ樹脂フィルム221に対してより木材に対して高い接着性を有する。例えば、コーンスターチ系接着剤(日本NSC製H298など)が使用され得る。また、メラミン、フェノール及びエポキシなどの熱硬化系接着剤が使用されてもよい。接着剤222は、樹脂フィルム221より硬く、樹脂シート220に所定パターンの硬い部分を形成し、木製板の折り畳み部の起点を定めることになる。
【0024】
また、図5(b)の断面図に示すように、加工対象の木製板230を、例えば水蒸気140中で柔軟化する。木製板230は1枚以上の木製の板材を有し、例えば、第1実施形態に関連して説明した木製板130と同様の構成を有し得る。一例として、木製板230は、コーンスターチ系熱硬化接着剤などの接着剤235を介して仮積みされた化粧層231及び内部構造層233を有する。
【0025】
次いで、図5(c)の断面図に示すように、樹脂シート220と木製板230とを重ね合わせて、メス型金型151とオス型金型152との間に配設する。木製板230は、化粧層231がメス型金型151側に位置するように配設される。樹脂シート220は、接着剤222が形成された面を木製板230側にして、メス型金型151と木製板230との間に配設される。
【0026】
次いで、図5(d)の断面図に示すように、金型151及び152を用いて、木製材230を樹脂シート220とともに仮加圧条件でプレス成形する。それにより、接着剤222の少なくとも一部が平滑な樹脂フィルム221から比較的粗い木製板230に転写されるとともに、木製板230の折り曲げ及び余剰部分の折り畳みが達成され、仮成形された木製部材200’が形成される。仮加圧条件は、例えば、総厚が数mmの木製板230の場合で、金型温度100℃−150℃程度、成形圧力9MPa程度、加圧時間4分程度とし得る。
【0027】
次いで、図5(e)の断面図に示すように、一旦金型151及び152を離型して樹脂フィルム221を剥離した後、再び金型151及び152を用いて仮成形された木製部材200’を本加圧条件でプレス成形する。それにより、プレス成形が完了された木製部材200が形成される。本加圧前に樹脂フィルム221を除去することにより、木製部材200へのフィルムの巻き込みを確実に防止することができる。本加圧条件は、例えば、総厚が数mmの木製板130のプレス成形で、金型温度を100℃−150℃、成形圧力を9MPa程度、加圧時間を1分程度とし得る。
【0028】
そして、プレス金型151及び152を離型し、図6に示すような木製部材200が取り出される。なお、図6は、筐体などの外装面となる天板部201を上にして見た木製部材200の上面図と2つの側面図とを示している。図示の例において、木製部材200はお盆形状を有している。
【0029】
木製部材200においては、図2に示した割れ又は亀裂17のような欠陥の発生が抑制あるいは防止されている。また、折り畳み部205が、樹脂シートの接着剤222の形成パターンに従った位置に形成されるとともに、転写された接着剤222によって固着されている。これは、転写された接着剤222が持つ硬さによって木製板230の折り畳みの起点が決定され、且つ接着剤222が転写された部分が折り畳まれるからである。
【0030】
故に、木製部材の製造歩留まり及びデザインの自由度が高められるなどの第1実施形態に関連して説明した効果に加え、折り畳み部205のその後のまくれ上がりを防止することができる。また、折り畳み部205の発生位置を所定の位置に制御して、美観的な加工歩留まりをも向上させ得る。例えば、プラグなどの形成のために除去されることになる筐体部分に折り畳み部205を誘導することにより、最終的に折り畳み部が実質的に存在しない木目の揃った筐体を得てもよい。
【0031】
なお、図5(d)及び(e)に示した二段階成形及びその間の樹脂フィルム(樹脂シート)の剥離は、他の実施形態(例えば、図3(d)、図7(e)の工程)にも適用することができる。逆に、樹脂フィルムの巻き込みの虞を確実に排除することは困難になるものの、図3(d)に示したような一段階成形及びその後の樹脂フィルムの剥離を、この実施形態に適用してもよい。
【0032】
(第3実施形態)
図7を参照して、第3実施形態に係る木製部材の製造方法を説明する。先ず、図7(a)に示すように、例えば化粧層とし得る木製板331上にスクリーンメッシュ360を配置し、スキージ365を用いて接着剤370を擦り付ける。スクリーンメッシュ360は、所定の位置に所定のパターンを有する開口部362を有しており、この開口部362のパターンに従って、図7(b)に示すように木製板331上に接着剤332が印刷される。接着剤332は例えば熱硬化性接着剤とし得る。また、接着剤332には、好ましくは、硬度および撥水性が高い樹脂が用いられる。
【0033】
次いで、図7(c)の断面図に示すように、接着剤332が設けられた面を外側にして、木製板331を、必要に応じて更なる木製板333を接着剤335を介して仮積みして木製合板330とし、例えば水蒸気140中で柔軟化する。一例として、木製板333は間伐材とし、接着剤335はコーンスターチ系熱硬化接着剤とし得る。
【0034】
なお、以上の説明では、仮積み前の木製板331に接着剤332を印刷したが、木製板330として仮積みした後に、木製板331に接着剤332を印刷することも可能である。
【0035】
次いで、図7(d)の断面図に示すように、樹脂シート320と木製板330とを重ね合わせて、メス型金型151とオス型金型152との間に配設する。樹脂シート320は例えばPETフィルムとし得る。第1実施形態に係る樹脂シート120に関連して説明したその他の樹脂シートが用いられてもよい。木製板330は、化粧層331がメス型金型151側に位置するように配設され、樹脂シート320は、メス型金型151と木製板330との間に配設される。故に、木製板330の接着剤332が樹脂シート320の表面に当接される。
【0036】
次いで、図7(e)の断面図に示すように、金型151及び152を用いて、木製材330を樹脂シート320とともにプレス成形する。それにより、木製部材300が形成される。プレス条件は、例えば、総厚が数mmの木製板330のプレス成形では、金型温度を100℃−150℃、成形圧力を9MPa程度、加圧時間を5分程度とし得る。
【0037】
そして、プレス金型151及び152を離型し、図8に示すような木製部材300が取り出される。なお、図8は、筐体などの外装面となる天板部301を上にして見た木製部材300の上面図と2つの側面図とを示している。図示の例において、木製部材300はお盆形状を有している。
【0038】
木製部材300においては、図2に示した割れ又は亀裂17のような欠陥の発生が抑制あるいは防止されている。また、折り畳み部305が、接着剤332の印刷パターンに従った位置に形成されるとともに、接着剤332によって固着されている。これは、印刷された接着剤332及びそれに当接された樹脂シート320が持つ硬さによって木製板330の折り畳みの起点が決定され、且つ接着剤332が印刷された部分が折り畳まれるからである。
【0039】
故に、木製部材300においては、製造歩留まり及びデザインの自由度が高められるなどの第1実施形態に関連して説明した効果と、折り畳み部のその後のまくれ上がりの防止及び位置制御が可能であるなどの第2実施形態に関連して説明した効果とが達成され得る。
【0040】
次に、上述の第1実施形態から第3実施形態に関連する実施例、及び比較のための一例を説明する。
【0041】
(比較例)
木目を揃えた2層の木製の化粧層(各々厚さ500μm程度)と、木目を交互にした4層の間伐材木製シート(各々厚さ500μm程度、節あり)とを重ね合わせて木製合板を作成した。このとき、積層する際に重なり合う面に、スキージを用いて熱硬化性接着剤を塗布した。この木製合板を、約30秒間スチームにさらして柔軟化した後、金型にセットして加圧した。プレス形状は長さ30×幅45×厚さ3cm、角部及び深さ端部形状はR3cmの曲線形状とし、プレス成形条件は、上型(外装面側)130℃、下型(裏面側)140℃、成形圧力9MPa、加圧時間5分間とした。割れなどのない良品の歩留まりは42%(21/50枚)であった。
【0042】
(実施例1)
木目を揃えた2層の木製の化粧層(各々厚さ500μm程度)と、木目を交互にした4層の間伐材木製シート(各々厚さ500μm程度、節あり)とを重ね合わせて木製合板を作成する。このとき、積層する際に重なり合う面に、スキージを用いて熱硬化性接着剤を塗布し得る。この木製合板を、30秒程度スチームにさらして柔軟化した後、PET樹脂で形成されたシート(例えば、厚さ50μm程度)に乗せ、金型にセットして加圧する。プレス形状は、一例として、長さ30×幅45×厚さ3cm、角部及び深さ端部形状はR3cmの曲線形状とし、プレス成形条件は、上型(外装面側)130℃、下型(裏面側)140℃、成形圧力9MPa、加圧時間5分間とし得る。例示した条件にて木製部材を試作したところ、割れなどのない良品の歩留まりは88%(44/50枚)であった。
【0043】
(実施例2)
実施例1と同様にして木製合板を作成する。この木製合板を、30秒程度スチームにさらして柔軟化した後、カプトンテープ(例えば、厚さ30μm程度)の粘着面上に乗せ、金型にセットして加圧する。プレス形状及びプレス成形条件は、実施例1にて例示した条件と同様とし得る。例示した条件にて木製部材を試作したところ、歩留まりは96%(48/50枚)であった。
【0044】
(実施例3)
実施例1と同様にして木製合板を作成する。この木製合板を、30秒程度スチームにさらして柔軟化した後、PET樹脂(軟質化、熱収縮性付与品)で形成されたシート(例えば、厚さ50μm程度)に乗せ、金型にセットして加圧する。プレス形状及びプレス成形条件は、実施例1にて例示した条件と同様とし得る。例示した条件にて木製部材を試作したところ、歩留まりは80%(40/50枚)であった。また、木製合板の化粧層の年輪部を起点に約20μmの凹凸が形成され、年輪部を強調した触感の試料が形成された。
【0045】
(実施例4)
実施例1と同様にして木製合板を作成し、30秒程度スチームにさらして柔軟化する。次に、木製合板をPET樹脂シート(例えば、厚さ50μm程度)に乗せ、金型にセットして加圧する。このPET樹脂シートの積層時に木製合板の化粧層に当接される面には、木製合板を折り畳ませる部分に対応して、熱硬化性の接着剤がスクリーン印刷によりパターン印刷されている。プレス形状及びプレス成形条件は、実施例1にて例示した条件と同様とし得る。例示した条件にて木製部材を試作したところ、歩留まりは88%(44/50枚)であった。
【0046】
(実施例5)
木製の化粧層に、積層の際に折り畳ませる部分に対応して、熱硬化性の接着剤をスクリーン印刷によりパターン印刷する。接着剤が印刷された木目を揃えた2層の木製の化粧層(各々厚さ500μm程度)と、木目を交互にした4層の間伐材木製シート(各々厚さ500μm程度、節あり)とを重ね合わせて木製合板を作成する。このとき、積層する際に重なり合う面に、スキージを用いて熱硬化性接着剤を塗布し得る。この木製合板を、30秒程度スチームにさらして柔軟化した後、PET樹脂シート(例えば、厚さ50μm程度)に乗せ、金型にセットして加圧する。プレス形状及びプレス成形条件は、実施例1にて例示した条件と同様とし得る。例示した条件にて木製部材を試作したところ、歩留まりは88%(44/50枚)であった。
【0047】
(電子機器筐体への適用例)
以下、図9−11を参照して、例えば上述した木製部材100、200又は300などの木製部材を電子機器の筐体として使用する例を説明する。
【0048】
図9は、ノート型PCの筐体400に一実施形態に係る木製部材を適用した例を示しており、このノート型PCはその天板を含む上蓋筐体部分に木目化粧板を有している。ノート型PCは、上蓋筐体に加えて、あるいは代えて、例えば下蓋筐体などのその他の部分に木目化粧板を有していてもよい。
【0049】
図10は、携帯電話の筐体500に一実施形態に係る木製部材を適用した例を示しており、この携帯電話は、表示ディスプレイ及び操作ボタン類を除く外形のほぼ全ての部分に木目化粧板を有している。また、操作ボタン類も実施形態に係る木製部材を用いて構成されてもよい。
【0050】
図11は、モニタ又はテレビ受像機などの表示装置の筐体600に実施形態に係る木製部材を適用した一例を示しており、この表示装置は、表示スクリーン601を除く外形のほぼ全ての部分に木目化粧板を有している。
【0051】
以上、実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。例えば、木製板130、230、330のオス型金型152側にも樹脂シートを配設してもよい。また、樹脂シート120、220、320は、木製板130、230、330の、屈曲されるべき領域を含む一部のみに重ねて配設されてもよい。
【0052】
以上の説明に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
第1の金型と第2の金型との間に、木製板と樹脂シートとを重ねて配設する工程と、
前記第1及び第2の金型を用いて、前記木製板を前記樹脂シートとともに立体形状にプレス成形する工程と、
前記第1及び第2の金型を離型して、前記樹脂シートを剥離する工程と、
を有することを特徴とする木製部材の製造方法。
(付記2)
前記樹脂シートは、前記木製板と当接される側に、所定のパターンで形成された接着剤を有し、
前記プレス成形する工程は、前記接着剤を前記木製板に転写し、前記接着剤が転写された箇所に前記木製板の折り畳み部を形成することを含む、
ことを特徴とする付記1に記載の木製部材の製造方法。
(付記3)
前記木製板は、前記樹脂シートと当接される側に、所定のパターンで形成された接着剤を有し、
前記プレス成形する工程は、前記接着剤が形成された箇所に前記木製板の折り畳み部を形成することを含む、
ことを特徴とする付記1に記載の木製部材の製造方法。
(付記4)
前記接着剤は熱可塑性及び熱硬化性を有する、ことを特徴とする付記2又は3に記載の木製部材の製造方法。
(付記5)
前記樹脂シートは熱硬化性樹脂を有する、ことを特徴とする付記2乃至4の何れか一に記載の木製部材の製造方法。
(付記6)
前記樹脂シートを剥離する工程の後に、前記第1及び第2の金型を用いて前記木製板を加圧する更なるプレス成形工程を有する、ことを特徴とする付記1乃至5の何れか一に記載の木製部材の製造方法。
(付記7)
前記樹脂シートは、弾性及び熱収縮性を有する樹脂フィルムである、ことを特徴とする付記1乃至5の何れか一に記載の木製部材の製造方法。
(付記8)
前記第1の金型はメス型金型であり、前記樹脂シートは前記木製板と前記第1の金型との間に配設され、前記木製板及び前記第2の金型は互いに直接的に当接される、ことを特徴とする付記1乃至7の何れか一に記載の木製部材の製造方法。
(付記9)
前記木製板は、1枚以上の化粧層と該化粧層の片側に積層された1枚以上の非化粧層とを有し、前記化粧層側を前記第1の金型側にして、前記第1の金型と前記第2の金型との間に配設される、ことを特徴とする付記8に記載の木製部材の製造方法。
(付記10)
屈曲部を有する立体形状の木製部材であって、
前記屈曲部の一部に、プレス成形による折り畳み部を有し、
前記折り畳み部が接着剤により固着されている、
ことを特徴とする木製部材。
(付記11)
第1の金型と第2の金型との間に、木製板と樹脂シートとを重ねて配設する工程と、
前記第1及び第2の金型を用いて、前記木製板を前記樹脂シートとともに立体形状にプレス成形する工程と、
前記第1及び第2の金型を離型して、前記樹脂シートを剥離する工程と、
を有することを特徴とする筐体の製造方法。
(付記12)
屈曲部を有する立体形状の筐体であって、
前記屈曲部の一部に、プレス成形による折り畳み部を有し、
前記折り畳み部が接着剤により固着されている、
ことを特徴とする筐体。
【符号の説明】
【0053】
100、200、300 木製部材
105、205、305 折り畳み部
120、220、320 樹脂シート
130、230、330 木製板(木製合板など)
131、231、331 木製板(化粧板など)
135、235、335 木製板(間伐材など)
135、235、335 接着剤
140 水蒸気
151、152 金型
222 接着剤
332、370 接着剤
360 スクリーンメッシュ
362 開口部
365 スキージ
400、500、600 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金型と第2の金型との間に、木製板と樹脂シートとを重ねて配設する工程と、
前記第1及び第2の金型を用いて、前記木製板を前記樹脂シートとともに立体形状にプレス成形する工程と、
前記第1及び第2の金型を離型して、前記樹脂シートを剥離する工程と、
を有することを特徴とする木製部材の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂シートは、前記木製板と当接される側に、所定のパターンで形成された接着剤を有し、
前記プレス成形する工程は、前記接着剤を前記木製板に転写し、前記接着剤が転写された箇所に前記木製板の折り畳み部を形成することを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の木製部材の製造方法。
【請求項3】
前記木製板は、前記樹脂シートと当接される側に、所定のパターンで形成された接着剤を有し、
前記プレス成形する工程は、前記接着剤が形成された箇所に前記木製板の折り畳み部を形成することを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の木製部材の製造方法。
【請求項4】
前記接着剤は熱可塑性及び熱硬化性を有する、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の木製部材の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂シートを剥離する工程の後に、前記第1及び第2の金型を用いて前記木製板を加圧する更なるプレス成形工程を有する、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載の木製部材の製造方法。
【請求項6】
屈曲部を有する立体形状の木製部材であって、
前記屈曲部の一部に、プレス成形による折り畳み部を有し、
前記折り畳み部が接着剤により固着されている、
ことを特徴とする木製部材。
【請求項7】
第1の金型と第2の金型との間に、木製板と樹脂シートとを重ねて配設する工程と、
前記第1及び第2の金型を用いて、前記木製板を前記樹脂シートとともに立体形状にプレス成形する工程と、
前記第1及び第2の金型を離型して、前記樹脂シートを剥離する工程と、
を有することを特徴とする筐体の製造方法。
【請求項8】
屈曲部を有する立体形状の筐体であって、
前記屈曲部の一部に、プレス成形による折り畳み部を有し、
前記折り畳み部が接着剤により固着されている、
ことを特徴とする筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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