説明

木質セメント板、及びその製造方法

【課題】木片を含有しながらも、曲げ強度、長期耐久性、耐衝撃性に優れた、型枠プレス方式で製造された木質セメント板、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】セメントと、珪酸含有物と、木質繊維と、木片とからなるスラリーを枠に流し込み、脱水、成型してなる成型物の硬化体であり、該セメントと該珪酸含有物は3:7〜7:3の質量比で含有されており、該木片は2〜5mmで、カルシウムにより被覆されており、該木質繊維と該木片とをあわせた含有量は、該木質セメント板の全固形分に対して9質量%以下である木質セメント板。及び、2〜5mmの木片を、特定の固形分濃度とした水中で、セメント組成物、又はカルシウム含有物、又はスラリーを脱水した水と混合、攪拌させることによりカルシウムで被覆し、得られた木片と、セメントと、珪酸含有物と、木質繊維を混合してスラリーとし、該スラリーを枠に流し込み、脱水、成型、養生する製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築板に好適な木質セメント板、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、セメント等の水硬性無機粉体と、木質パルプ繊維などの木質繊維とを主成分とする木質セメント板があり、該木質セメント板は比重が高く、曲げ強度などの物性に優れるので、内壁、外壁を構成する建築板として使用されている。そして、このような木質セメント板の製造方法としては、ハチェック式や長網式などの抄造方法や、型枠プレス方式が主として採用されている。このうち、型枠プレス方式は、特許文献1に記載されているように、枠にスラリーを流し込み、均し、脱水した後にプレス成型する方式であり、必要量のスラリーを枠に投入すれば良いため、厚物の木質セメント板を製造する方法として広く行われている。
【0003】
しかし、近年、住宅の長期耐久性が求められており、木質セメント板にも、更なる強度、長期耐久性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−281619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、出願人は、木質セメント板の曲げ強度と、長期耐久性を改善する原料として木片を使用することを検討した。しかし、型枠プレス方式では、木片を他の原料と一緒に配合すると、得られる木質セメント板の曲げ強度、長期耐久性、耐衝撃性は低下する。
【0006】
したがって、本発明の課題は、木片を含有しながらも、曲げ強度、長期耐久性、耐衝撃性に優れた、型枠プレス方式で製造された木質セメント板、及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、木質セメント板を提供する。本発明の木質セメント板は、セメントと、珪酸含有物と、木質繊維と、木片とからなるスラリーを枠に流し込み、脱水、成型してなる成型物の硬化体であり、該セメントと該珪酸含有物は3:7〜7:3の質量比で含有されており、該木片は2〜5mmで、カルシウムにより被覆されており、該木質繊維と該木片とをあわせた含有量は、該木質セメント板の全固形分に対して9質量%以下である。該木片の含有量は、該木質セメント板の全固形分に対して1〜3質量%であることが好ましく、更に好ましくは、該木質セメント板の全固形分に対して1〜2質量%である。
また、本発明では、木質セメント板を製造する方法も提供する。該製造方法は、木片をカルシウムで被覆する工程と、得られた木片と、セメントと、珪酸含有物と、木質繊維を混合してスラリーを製造する工程と、得られたスラリーを枠に流し込み、脱水、成型、養生する工程とからなる。木片をカルシウムで被覆する工程は、水に木片とセメント組成物の粉砕物を添加し、固形分濃度が8〜20質量%の状態で混合することにより行う、又は、水に木片とカルシウム含有物を添加し、固形分濃度が3〜10質量%の状態で混合することにより行う、又は、スラリーを脱水した水に木片を添加し、固形分濃度が3〜10質量%の状態で混合することにより行うのいずれかにより行う。なお、木片をカルシウムで被覆する工程においては、2〜5mmの木片を使用する。また、カルシウム含有物は、セメント、石膏、石灰、カルシウムを含有する珪酸含有物のすくなくともいずれかである。更に、木片をカルシウムで被覆する工程において、該木片と、セメント組成物の質量比を1:7〜1:20とする、又は、カルシウム含有物を該木片よりも多く添加することが好ましい。更に、木片と、セメント組成物、又は、カルシウム含有物、又は、スラリーを脱水した水との混合は60秒以上行うことが好ましい。スラリーを製造する工程においては、該スラリーにおけるセメントと珪酸含有物の質量比を3:7〜7:3とし、木質繊維と木片とをあわせた量は、全固形分に対して9質量%以下とする。該木片の量は、全固形分に対して1〜3質量%とすることが好ましく、更に好ましくは、該木質セメント板の全固形分に対して1〜2質量%とすることである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、木片を含有しながらも、曲げ強度、長期耐久性、耐衝撃性に優れた、型枠プレス方式で製造された木質セメント板、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0010】
本発明の木質セメント板は、セメントと、珪酸含有物と、木質繊維と、木片とからなる成型物である。
【0011】
セメントとしては、ポルトランドセメント、早強セメント、アルミナセメント、フライアッシュセメント、高炉スラグセメント、シリカセメント、白色セメント等がある。本発明では、これらの物質のうち、いずれか1種のみを含有しても良いし、2種類以上を含有してもよい。
【0012】
珪酸含有物としては、珪砂、珪石粉、シリカ粉、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ、シラスバルーン、パーライト、珪藻土等がある。本発明では、これらの物質のうち、いずれか1種のみを含有しても良いし、2種類以上を含有してもよい。
【0013】
木質繊維としては、故紙、針葉樹未晒しクラフトパルプ(NUKP)や針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒しクラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)等がある。本発明では、これらの物質のうち、いずれか1種のみを含有しても良いし、2種類以上を含有してもよい。また、ディスクリファイナー等の叩解機で叩解してカナディアンフリーネス500ml以下にした木質繊維を用いると、強度などの物性が向上するので、好ましい。
【0014】
木片は、2〜5mmのサイズである。木片は、森林から伐採した木材を粉砕して製造することができるが、間伐材や、柱材の製造で発生する端材、木材の廃材等を粉砕することにより製造することもできる。
【0015】
本発明では、原料の一つとして、セメント組成物も使用することができる。セメント組成物としては、製造工程で発生した硬化前の木質セメント板の不良板、硬化後の木質セメント板の不良板、建築現場で発生した木質セメント板の端材、廃材などがある。いずれも衝撃式粉砕機及び/又は擦過式粉砕機で平均粒径50〜150μmに粉砕し、使用する。該セメント組成物を使用することで、製造コストを安くすることができるとともに、産業廃棄物を減らすことができる。
【0016】
更に、本発明では、原料の一つとして、カルシウム含有物も使用することができる。カルシウム含有物としては、セメント、石膏、石灰、カルシウムを含有する珪酸含有物のすくなくともいずれかである。カルシウムを含有する珪酸含有物としては、前述した珪酸含有物の内、フライアッシュ、高炉スラグなどがあげられる。
【0017】
木質セメント板の上記以外の原料として、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、蟻酸カルシウム、酢酸カルシウム、アクリル酸カルシウム、水ガラス等の硬化促進剤や、マイカ、ベントナイト、バーミキュライト等の鉱物粉末や、ロウ、ワックス、パラフィン、シリコン、コハク酸、高級脂肪酸の金属塩等の防水剤、撥水剤や、発泡性熱可塑性プラスチックビーズ、プラスチック発泡体等や、ナイロン、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ガラス繊維などの化学繊維や、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水性糊料、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリル樹脂エマルジョンなどの合成樹脂エマルジョンの強化剤がある。
【0018】
そして、本発明の木質セメント板は、セメントと珪酸含有物を3:7〜7:3の質量比で含有し、木質繊維と木片とをあわせて9質量%以下含有する。
セメントと珪酸含有物を質量比で3:7〜7:3の範囲で含有するのは、この範囲であれば、木質セメント板は十分な強度を発現できるとともに、十分なたわみも得られ、作業性、釘打ち性等にも問題が発生しないからである。この範囲から外れると、木質セメント板は強度を発現できず脆くなる、又は、比重が高くなるとともにたわみが少なくなり、堅くて重く、運搬しづらく、作業性、釘打ち性等に問題が発生する。
木質繊維と木片とをあわせて9質量%以下含有するのは、9質量%より多いとセメントの硬化が阻害され、得られる木質セメント板の強度が低下する恐れがあるためである。木質繊維が4〜8質量%、木片が1〜3質量%であると、得られる木質セメント板は、強度に優れるので好ましい。特に、木片が、該木質セメント板の全固形分に対して1〜2質量%であると、より強度等の物性に優れるので好ましい。
【0019】
そして、本発明の木質セメント板は、枠にスラリーを流し込むという湿式製法により製造することができる。
本発明の製造方法は、木片をカルシウムにより被覆する工程と、得られた木片と、セメントと、珪酸含有物と、木質繊維を混合してスラリーを製造する工程と、得られたスラリーを枠に流し込み、脱水、成型、養生する工程とからなる。
【0020】
木片をカルシウムで被覆する工程は、水に木片とセメント組成物の粉砕物を添加し、固形分濃度が8〜20質量%の状態で混合することにより行う、又は、水に木片とカルシウム含有物を添加し、固形分濃度が3〜10質量%の状態で混合することにより行う、又は、スラリーを脱水した水に木片を添加し、固形分濃度が3〜10質量%の状態で混合することにより行うのいずれかである。木片とセメント組成物の粉砕物を混合した水の固形分濃度を8〜20質量%、木片とカルシウム含有物を混合した水の固形分濃度を3〜10質量%、スラリーを脱水した水と木片の固形分濃度を3〜10質量%とするのは、この濃度が木片をカルシウムで被覆させるのに適切であり、かつ、作業しやすいためである。すなわち、セメント組成物は、組成によりカルシウムの溶出程度が異なるが、カルシウム含有物よりもカルシウムの溶出が少ないので、カルシウム含有物のみを用いる場合よりも固形分濃度を高くする必要があり、木片をカルシウムで被覆するためには、固形分濃度を8質量%以上とする必要がある。しかし、固形分濃度が20質量%を超えると、流動性が悪く、作業しにくいので、固形分濃度を8〜20質量%とする。一方、カルシウム含有物は、セメント、石膏、石灰、カルシウムを含有する珪酸含有物のすくなくともいずれかであるので、カルシウムの溶出がセメント組成物よりも多く、固形分濃度を10質量%より高くする必要はないが、3質量%より少ないと、木片をカルシウムで十分に被覆できないので、固形分濃度を3〜10質量%とする。そして、スラリーを脱水した水は、既にカルシウムが溶出しており、固形分濃度を10質量%より高くする必要はないが、3質量%より少ないと、木片をカルシウムで十分に被覆できないので、固形分濃度を3〜10質量%とする。
そして、木片は、いずれの場合でも2〜5mmの大きさのものを使用する。2〜5mmの大きさの木片を使用するのは、この範囲から外れると、得られる木質セメント板は、十分な物性を得られないためである。
木片の量は、木質セメント板の全固形分に対して、木質繊維とあわせて9質量%以下とするが、1〜3質量%とすることが好ましく、更に1〜2質量%とすることがより好ましい。
また、木片をカルシウムで被覆する工程を、水に木片とセメント組成物の粉砕物を添加、混合することにより行う場合には、該木片と、該セメント組成物の質量比が1:7〜1:20であると、該木片がカルシウムに覆われやすいとともに、得られる木質セメント板は十分な強度を得られるので、好ましい。木片をカルシウムで被覆する工程を、水に木片とカルシウム含有物を添加、混合することにより行う場合には、該カルシウム含有物の量を該木片の量よりも多くすると、該木片がカルシウムに覆われやすいとともに、得られる木質セメント板は、十分な強度を得られるので、好ましい。
更に、木片と、セメント組成物、又は、カルシウム含有物、又は、スラリーを脱水した水との混合を60秒以上行うと、該木片が確実にカルシウムにより被覆されるので、好ましい。なお、木片と、セメント組成物、又は、カルシウム含有物の混合の順番は、木片を先に添加しても良いし、木片を後に添加しても良い。
【0021】
次のスラリーを製造する工程は、得られた木片と、セメントと、珪酸含有物と、木質繊維を混合することにより行う。セメントと、珪酸含有物と、木質繊維は、粉体(乾燥)状態で添加しても良いし、予め各原料を別の水に混合しておいてから添加しても良いが、スラリーの固形分濃度が20〜40質量%となるように調整する。スラリーの固形分濃度を20質量%以上とするのは、20質量%より少ないとスラリーを脱水する際に時間がかかり、脱水された抄造シートに亀裂が入りやすく、抄造しにくいなどの問題が発生するためである。スラリーの固形分濃度を40質量%以下とするのは、40質量%より多いとスラリーの流動性が悪くなり、脱水された抄造シートに亀裂が入りやすく、抄造しにくいなどの問題が発生するためである。
【0022】
得られたスラリーを枠に流し込み、脱水、成型、養生する工程では、下側に吸引脱水装置を備えた枠内にスラリーを流し込み、下側側から吸引脱水して、スラリーを水と固形物に分離する。そして、得られたマットを、プレスし、その後、60〜90℃で5〜10時間の条件で一次養生し、更に、自然養生、又は、蒸気養生、又は、オートクレーブ養生することにより行う。なお、プレスの際に、型板はマットの上、又は下に配置する。また、オートクレーブ養生する場合の条件は、120℃以上、0.5MPa以上の圧力で7〜15時間である。
【0023】
次に、本発明の実施例をあげる。
【0024】
間伐材を粉砕して平均3mmのサイズの木片を製造し、得られた木片を水に添加した。次に、硬化後の木質セメント板の不良板を粉砕して平均粒径100μmのサイズにし、得られた木質セメント板の粉砕品を、木片を加えた水に添加し、60秒混合させた。なお、該水の固形分濃度は15質量%とした。このようにして得られた水に、ポルトランドセメントと、珪石粉と、フライアッシュと、パーライトと、カナディアンフリーネス500mlの針葉樹未晒しクラフトパルプと、故紙と、別の水を添加し、混合してスラリーを得た。なお、スラリーの全固形分に対する各原料の割合は、表1に示すとおりであり、該スラリーの固形分濃度は25質量%であった。該スラリーを、下側に吸引脱水装置を備えた枠内にスラリーを流し込み、下側側から吸引脱水してマットを得た。該マットは、プレス圧2.5MPa、プレス時間7秒でプレスした。その後、170℃で、10時間オートクレーブ養生し、実施例1の木質セメント板を得た。
【0025】
木片の添加量を全固形分に対して2質量%とし、木片の増加分だけ故紙を減らした以外は実施例1と同じ条件で木質セメント板を製造し、実施例2の木質セメント板を得た。なお、木片は全て最初に水に添加しており、スラリーの全固形分に対する各原料の割合は、表1に示すとおりであった。
【0026】
木質セメント板の粉砕品の添加量を変更した以外は実施例1と同じ条件で木質セメント板を製造し、実施例3の木質セメント板を得た。スラリーの全固形分に対する各原料の割合は、表1に示すとおりであった。なお、木質セメント板の粉砕品は全て木片の次に水に添加した。
【0027】
木質セメント板の粉砕品を添加し、次に木片を添加した以外は実施例1と同じ条件で木質セメント板を製造し、実施例4の木質セメント板を得た。なお、木質セメント板の粉砕品は全て木片の前に水に添加しており、スラリーの全固形分に対する各原料の割合は、表1に示すとおりであった。
【0028】
硬化後の木質セメント板の不良板を、硬化前の木質セメント板の不良板に変更した以外は実施例1と同じ条件で木質セメント板を製造し、実施例5の木質セメント板を得た。なお、硬化前の木質セメント板の不良板も、平均粒径が100μmとなるよう粉砕して使用しており、スラリーの全固形分に対する各原料の割合は、表1に示すとおりであった。
【0029】
木片の添加量を全固形分に対して2質量%となるように変更した以外は実施例5と同じ条件で木質セメント板を製造し、実施例6の木質セメント板を得た。なお、木片は全て最初に水に添加しており、スラリーの全固形分に対する各原料の割合は、表1に示すとおりであった。
【0030】
木片を添加、混合する水に、スラリーを脱水した後の水を使用し、該水の固形分濃度を4質量%となるように変更したとともに、木質セメント板の粉砕品を他の原料と同じタイミングで添加した以外は実施例1と同じ条件で木質セメント板を製造し、実施例7の木質セメント板を得た。なお、スラリーの全固形分に対する各原料の割合は、表1に示すとおりであった。
【0031】
木片の添加量を全固形分に対して2質量%となるように変更した以外は実施例7と同じ条件で木質セメント板を製造し、実施例8の木質セメント板を得た。なお、木片は全て最初にスラリーを脱水した後の水に添加しており、スラリーの全固形分に対する各原料の割合は、表1に示すとおりであった。
【0032】
木片を水に添加した後、該木片の倍の量のポルトランドセメントを添加し、60秒混合した。なお、該水の固形分濃度は10質量%とした。次に、硬化後の木質セメント板の不良板を粉砕して得られた、平均粒径が100μmの木質セメント板の粉砕品と、ポルトランドセメントと、珪石粉と、フライアッシュと、パーライトと、カナディアンフリーネス500mlの針葉樹未晒しクラフトパルプと、故紙と、別の水を添加し、混合してスラリーを得た。すなわち、ポルトランドセメントは、木片とともに添加するとともに、スラリーを製造する際にも更に添加した。そして、スラリーの全固形分に対する各原料の割合は、表1に示すとおりであった。他は実施例1と同じ条件で木質セメント板を製造し、実施例9の木質セメント板を得た。
【0033】
ポルトランドセメントと、珪石粉と、フライアッシュと、パーライトと、カナディアンフリーネス500mlの針葉樹未晒しクラフトパルプと、故紙と、硬化後の木質セメント板の粉砕品を水に添加し、混合して、木片を含まないスラリーを得た。なお、スラリーの全固形分に対する各原料の割合は、表1に示すとおりであり、固形分濃度は25質量%であった。得られたスラリーは、実施例1と同じ条件で枠に流し込み、脱水、成型、養生し、比較例1の木質セメント板を得た。
【0034】
木片を添加した後、すぐに他の原料を添加した以外は実施例1と同じ条件で木質セメント板を製造し、比較例2の木質セメント板を得た。なお、スラリーの全固形分に対する各原料の割合は、表1に示すとおりであった。
【0035】
木片の添加量を全固形分に対して2質量%とし、木片の増加分だけ故紙を減らした以外は比較例2と同じ条件で木質セメント板を製造し、比較例3の木質セメント板を得た。なお、木片は全て最初に水に添加しており、スラリーの全固形分に対する各原料の割合は、表1に示すとおりであった。
【0036】
木片と木質セメント板の粉砕品を含む水の固形分濃度を2質量%となるように変更した以外は実施例2と同じ条件で木質セメント板を製造し、比較例4の木質セメント板を得た。なお、スラリーの全固形分に対する各原料の割合は、表1に示すとおりであった。
【0037】
木片のサイズを平均6mmに変更した以外は実施例2と同じ条件で木質セメント板を製造し、比較例5の木質セメント板を得た。なお、スラリーの全固形分に対する各原料の割合は、表1に示すとおりであった。
【0038】
そして、得られた実施例1〜9、及び比較例1〜5の各木質セメント板について、比重、厚さ、曲げ強度、長期耐久性、耐衝撃性を測定したので、その結果も表1に示す。なお、曲げ強度はJIS A 1408に準じて測定した。長期耐久性は、30cm角の木質セメント板の端部を水に4時間侵漬した後、二酸化炭素を充満させた密閉容器内に4時間置き、その後、16時間80℃で乾燥させることを1サイクルとし、10サイクル行った後の木質セメント板の状況を確認して、反りが0.5mm未満の場合には”○”とし、0.5〜1.0mmの場合には”△”とし、1.0mm以上の反りが発生した場合は”×”と評価した。耐衝撃性は、500gの球形おもりを140cmの高さから落下させ、亀裂が無い場合を”◎”とし、僅かに亀裂がある場合を”○”とし、目立つ亀裂がある場合を”△”とし、著しい亀裂がある場合を”×”と評価した。
【0039】
【表1】

【0040】
実施例1〜9の木質セメント板は、曲げ強度に優れた。また、木片を含有していない比較例1の木質セメント板は、長期耐久性が”△”、耐衝撃性が”○”であるのに対し、実施例1〜9の木質セメント板は、長期耐久性が”○”、耐衝撃性が”◎”であり、長期耐久性と耐衝撃性にも優れた。
一方、木片を添加した後、すぐに他の原料を添加した比較例2の木質セメント板は、同じ配合の実施例1の木質セメント板よりも曲げ強度が低く、かつ、長期耐久性が”×”、耐衝撃性が”△”であり、長期耐久性と耐衝撃性に劣った。この傾向は、木片の添加量を全固形分に対して2質量%となるように変更した比較例3でも同じであった。すなわち、比較例3の木質セメント板は、同じ配合の実施例2よりも曲げ強度が低く、かつ、長期耐久性と耐衝撃性が”×”であり、長期耐久性と耐衝撃性に劣った。
木片と木質セメント板の粉砕品を含む水の固形分濃度を2質量%とした比較例4の木質セメント板は、同じ配合の実施例2よりも曲げ強度が低く、かつ、長期耐久性と耐衝撃性が”×”であり、長期耐久性と耐衝撃性に劣った。
木片のサイズが平均6mmである比較例5の木質セメント板は、同じ配合の実施例2よりも曲げ強度が低く、かつ、長期耐久性が”×”で耐衝撃性が”△”であり、長期耐久性と耐衝撃性に劣った。
【0041】
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載の発明の範囲において種々の変形態を取り得る。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明によれば、表木片を含有しながらも、曲げ強度、長期耐久性、耐衝撃性に優れた、型枠プレス方式で製造された木質セメント板、及びその製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、珪酸含有物と、木質繊維と、木片とからなるスラリーを枠に流し込み、脱水、成型してなる成型物の硬化体であって、
セメントと珪酸含有物は3:7〜7:3の質量比で含有されており、
木片は2〜5mmで、カルシウムにより被覆されており、
木質繊維と木片とをあわせた含有量は、木質セメント板の全固形分に対して9質量%以下である
ことを特徴とする木質セメント板。
【請求項2】
請求項1に記載の木質セメント板であって、
前記木片の含有量は、木質セメント板の全固形分に対して1〜3質量%である
ことを特徴とする木質セメント板。
【請求項3】
木片をカルシウムで被覆する工程と、
得られた木片と、セメントと、珪酸含有物と、木質繊維を混合してスラリーを製造する工程と、
得られたスラリーを枠に流し込み、脱水、成型、養生する工程とからなり、
木片をカルシウムで被覆する工程は、2〜5mmの木片とセメント組成物の粉砕物を水に添加し、固形分濃度が8〜20質量%の状態で混合することにより行い、
スラリーを製造する工程において、該スラリーにおけるセメントと珪酸含有物の質量比を3:7〜7:3とし、木質繊維と木片とをあわせた量を全固形分に対して9質量%以下とする
ことを特徴とする木質セメント板の製造方法。
【請求項4】
木片をカルシウムで被覆する工程と、
得られた木片と、セメントと、珪酸含有物と、木質繊維を混合してスラリーを製造する工程と、
得られたスラリーを枠に流し込み、脱水、成型、養生する工程とからなり、
木片をカルシウムで被覆する工程は、2〜5mmの木片とカルシウム含有物とを水に添加し、固形分濃度が3〜10質量%の状態で混合することにより行い、
該カルシウム含有物は、セメント、石膏、石灰、カルシウムを含有する珪酸含有物のすくなくともいずれかであり、
スラリーを製造する工程において、該スラリーにおけるセメントと珪酸含有物の質量比を3:7〜7:3とし、木質繊維と木片とをあわせた量を全固形分に対して9質量%以下とする
ことを特徴とする木質セメント板の製造方法。
【請求項5】
木片をカルシウムで被覆する工程と、
得られた木片と、セメントと、珪酸含有物と、木質繊維を混合してスラリーを製造する工程と、
得られたスラリーを枠に流し込み、脱水、成型、養生する工程とからなり、
木片をカルシウムで被覆する工程は、スラリーを脱水した水に2〜5mmの木片を添加し、固形分濃度が3〜10質量%の状態で混合することにより行い、
スラリーを製造する工程において、該スラリーにおけるセメントと珪酸含有物の質量比を3:7〜7:3とし、木質繊維と木片とをあわせた量を全固形分に対して9質量%以下とする
ことを特徴とする木質セメント板の製造方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載の木質セメント板の製造方法であって、
前記木片の量を、木質セメント板の全固形分に対して1〜3質量%とする
ことを特徴とする木質セメント板の製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載の木質セメント板の製造方法であって、
前記木片をカルシウムで被覆する工程において、該木片と前記セメント組成物の粉砕物の質量比を1:7〜1:20とする
ことを特徴とする木質セメント板の製造方法。
【請求項8】
請求項3に記載の木質セメント板の製造方法であって、
前記セメント組成物が木質セメント板である
ことを特徴とする木質セメント板の製造方法。
【請求項9】
請求項4に記載の木質セメント板の製造方法であって、
前記木片をカルシウムで被覆する工程において、前記カルシウム含有物の量を該木片の量よりも多くする
ことを特徴とする木質セメント板の製造方法。