説明

木質ボードとその製造方法

【課題】水分の吸放湿による寸法変化を抑制することができる木質ボードとその製造方法を提供すること。
【解決手段】植物系のパーティクルまたは植物繊維と、接着剤とを含有する板材を備えた木質ボードにおいて、熱膨張温度の高い第1の熱膨張性バルーンを板材の両面側の表層に含有し、第1の熱膨張性バルーンよりも熱膨張温度の低い第2の熱膨張性バルーンを板材の両面側の表層の間の内層に含有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質ボードとその製造方法に関し、さらに詳しくは、植物系のパーティクルまたは植物繊維と、接着剤とを含有する板材を備えた木質ボードとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等に用いられる床材、壁材、扉材等の建材の材料として木材が広く用いられている。
【0003】
例えば床材として、ラワン合板等の天然木材のボードに、突き板、紙、オレフィン樹脂系の印刷シート等を貼着したものが知られている。
【0004】
しかしながら、このような床材はラワン合板等の天然木材を用いていることから、近年の天然資源の枯渇、環境破壊、地球温暖化等を背景として、これらの天然木材の代替品が望まれている。
【0005】
このような天然木材の代替品として、植物系のパーティクルまたは植物繊維に接着剤を添加し熱圧成形した木質ボードが注目されている。
【0006】
例えば、ラワン合板等の天然木材の使用量低減を可能とする省資源の木質ボードとして、パーティクルボードや、MDF(中密度繊維板)等のファイバーボードが床材や壁材等に用いられるようになってきている。
【0007】
しかしながら、パーティクルボードやMDFは、合板に比べて木質ボードを構成するエレメントが小さいため積層によるクロスバンド効果が小さい。そのため、水分の吸放湿による寸法変化が大きくなり、特に長尺寸法の床材においては目隙や突き上げ等の問題が発生しやすい。
【0008】
この水分の吸放湿による寸法変化を抑制する技術として、特許文献1には、ハードボードに熱膨張性バルーンを添加することが提案されている。ハードボードの原料の植物繊維に熱膨張性バルーンを添加することで、熱膨張性バルーンは熱圧成形時に膨張する。その際に、熱膨張性バルーンの高分子皮膜が植物繊維間の空隙を埋める。この技術によれば、熱膨張性バルーンの高分子皮膜による水分遮断作用により、水分の吸放湿による寸法変化を抑制する一定の作用がある可能性もあると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭59−45139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、パーティクルボードやMDF等の木質ボードにおいては、水分の吸放湿による寸法変化が比較的大きいため、寸法変化を抑制することが特に望まれている。ところが、例えば特許文献1に記載されているような木質ボードの熱圧成形においては、熱盤に近い表面近傍と、その内側の部分とで、温度差が発生しやすい。
【0011】
すなわち木質ボードの厚み方向において表面近傍はその内側の部分よりも温度が高くなり加熱温度に分布が生じやすくなる。そのため、熱膨張性バルーンを添加した場合、内側の部分では表面近傍に比べると熱膨張が起こりにくい。
【0012】
そのため熱膨張性バルーンを添加しても、内側の部分で熱膨張が起こりにくくなると水分の吸放湿による寸法変化を抑制することが困難になる。
【0013】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、水分の吸放湿による寸法変化を抑制することができる木質ボードとその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の木質ボードは、植物系のパーティクルまたは植物繊維と、接着剤とを含有する板材を備えた木質ボードにおいて、熱膨張温度の高い第1の熱膨張性バルーンを板材の両面側の表層に含有し、第1の熱膨張性バルーンよりも熱膨張温度の低い第2の熱膨張性バルーンを板材の両面側の表層の間の内層に含有することを特徴としている。
【0015】
この木質ボードにおいては、植物系のパーティクルと接着剤とを含有する板材を備えたパーティクルボードであることが好ましい。このパーティクルボードは、植物系のパーティクルとして微小片を含有する表層と、植物系のパーティクルとして粗大片を含有する内層とを備えることが好ましい。
【0016】
この木質ボードにおいては、木質ボードは、植物繊維と接着剤とを含有する板材を備えたMDFであることが好ましい。
【0017】
また上記の課題を解決するために、本発明の木質ボードの製造方法は、植物系のパーティクルまたは植物繊維と、接着剤とを含有する板材を備えた木質ボードの製造方法において、植物系のパーティクルまたは植物繊維と、接着剤と、熱膨張温度の高い第1の熱膨張性バルーンとを混合して表層形成用混合物を調製する工程と、植物系のパーティクルまたは植物繊維と、接着剤と、第1の熱膨張性バルーンよりも熱膨張温度の低い第2の熱膨張性バルーンとを混合して内層形成用混合物を調製する工程と、表層形成用混合物が両面に位置しその内側に内層形成用混合物が位置するようにこれらを積層した積層マットを形成する工程と、この積層マットを熱圧成形して第1の熱膨張性バルーンと第2の熱膨張性バルーンとを熱膨張させ、両面側の表層とその間の内層とを備える板材を得る工程とを含むことを特徴としている。
【0018】
この木質ボードの製造方法においては、木質ボードは、植物系のパーティクルと接着剤とを含有する板材を備えたパーティクルボードであることが好ましい。このパーティクルボードは、植物系のパーティクルとして微小片を含有する表層と、植物系のパーティクルとして粗大片を含有する内層とを備えることが好ましい。
【0019】
この木質ボードの製造方法においては、木質ボードは、植物繊維と接着剤とを含有する板材を備えたMDFであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の木質ボードによれば、水分の吸放湿による寸法変化を抑制することができる。
【0021】
本発明の木質ボードの製造方法によれば、水分の吸放湿による寸法変化を抑制することができる木質ボードを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0023】
本発明の木質ボードは、両面の表層とその内層に熱膨張温度の異なる熱膨張性バルーンを添加したことを特徴としている。
【0024】
この熱膨張温度の異なる第1および第2の熱膨張性バルーンは、熱圧成形時における熱盤またはスチールベルトからの加熱により熱膨張する。これにより、第1および第2の熱膨張性バルーンの熱膨張後の高分子皮膜は、木質ボード内において植物系のパーティクルまたは植物繊維の間の空隙を埋める。
【0025】
熱圧成形時には、木質ボードの表層が熱盤またはスチールベルトに接触するため、表層のほうが内層よりも熱圧成形時の温度は高くなる。この温度差に起因する熱膨張の不均一性を抑制するために、表層に用いる植物系のパーティクルまたは植物繊維には、高温で発泡する熱膨張温度の高い第1の熱膨張性バルーンが添加される。内層に用いる植物系のパーティクルまたは植物繊維には、この第1の熱膨張性バルーンよりも低温で発泡する第2の熱膨張性バルーンが添加される。
【0026】
木質ボードの製造時には接着剤が添加されるが、その接着剤により、第1および第2の熱膨張性バルーンの膨張後の高分子皮膜が植物系のパーティクルまたは植物繊維に接着する。これにより、木質ボード内の空隙を第1および第2の熱膨張性バルーンの高分子皮膜で充填することができる。
【0027】
従って植物系のパーティクルまたは植物繊維は、第1および第2の熱膨張性バルーンの高分子皮膜で接着剤を介して全体的に覆われる。このように膨張したバルーンの高分子皮膜が木質ボードの空隙に存在し、かつ植物系のパーティクルまたは植物繊維を木質ボードの内部から覆うことになる。そして熱圧成形時の温度を考慮した第1および第2の熱膨張性バルーンを選定することで、表層から内層まで効率的に木質ボードの空隙において熱膨張させることができる。これにより膨張が表層と内層とで不均一になることを抑制し、内層においても第2の熱膨張性バルーンの膨張後の高分子皮膜により植物系のパーティクルまたは植物繊維を覆うことができる。このバリア効果により、植物系のパーティクルまたは植物繊維による水分の吸放湿を抑制することができる。その結果として、木質ボードの寸法変化を抑制することができる。
【0028】
本発明の木質ボードにおいては、植物系のパーティクルと接着剤とを含有する板材を備えたパーティクルボードが好ましい。また、植物繊維と接着剤とを含有する板材を備えたファイバーボード、特にMDFが好ましい。
【0029】
パーティクルボードは、植物系のパーティクルと接着剤とを含有する板材を備えている。パーティクルボードは通常、MDF等のファイバーボードに比べてボード内に空隙が多く発生する。従って、本発明の木質ボードがパーティクルボードである場合には、熱膨張温度の異なる第1および第2の熱膨張性バルーンをそれぞれ表層と内層に含有させることで、水分の吸放湿による寸法変化を特に抑制することができる。
【0030】
パーティクルボードは、植物系のパーティクルとして、例えば、マツ、スギ、ヒノキ等の針葉樹、またはラワン、カポール、ポプラ等の広葉樹、ケナフの芯部等を原料として微小片(木粉状のチップ)や粗大片(木片状のチップ)としたものを用いることができる。
【0031】
パーティクルボードとしては、単層ボード、3層ボード、多層ボードを挙げることができる。
【0032】
中でも、3層ボードが好ましい。3層ボードは、植物系のパーティクルとして微小片を含有する表層と、植物系のパーティクルとして粗大片を含有する内側層とを備えている。
【0033】
本発明の木質ボードを3層ボードにすることで、表層は緻密になり、内層は粗になる。そのため突き板や印刷シート等の化粧層が貼着される場合等に、緻密な表面の平滑性により、後の表面二次加工を容易にすることができる。そして全体の密度を低くし、かつ、曲げ強さを高めることができる。さらに熱膨張温度の異なる第1および第2の熱膨張性バルーンをそれぞれ表層と内層に含有させることで、水分の吸放湿による寸法変化を特に抑制することができる。
【0034】
第1および第2の熱膨張性バルーンをそれぞれ表層と内層に含有するパーティクルボードは、例えば、従来のパーティクルボードの製造ラインを用いて製造することができる。このような製造ラインによるパーティクルボードの製造は、原料の小片化、小片乾燥、第1または第2の熱膨張性バルーンや接着剤の添加、マット成形(フォーミング)、熱圧成形、仕上げ工程を経て行われる。
【0035】
原料の小片化は、例えば、原料が丸太の場合はドラムフレーカー、原料が廃材チップの場合はリングフレーカー等を用いることができる。3層ボードの場合、内層の粗大片は、例えば厚み0.5mm前後、長さ10〜20mmとされる。表層の微小片はさらに細かく粉砕される。小片乾燥は、熱圧成形時におけるパンクを抑制するために必要な工程である。
【0036】
例えば、従来のパーティクルボードの製造ラインを用いて、各層用の材料を供給してベルトに堆積し、この堆積した積層マットを熱盤やスチールベルトで熱圧成形することでパーティクルボードを製造することができる。
【0037】
一方、MDFは、植物繊維と接着剤とを含有する板材を備えている。本発明の木質ボードがMDFであることで、ファイバーを原料とし緻密であるため、曲げ強さ、剥離強さ等をパーティクルボードに比べて高めることができる。
【0038】
MDFは、植物繊維として、マツ、スギ、ヒノキ等の針葉樹、またはラワン、カポール、ポプラ等の広葉樹を高温、高圧で分解して得られるウッドファイバーを加熱および加圧しながら加工したものを用いることができる。
【0039】
第1および第2の熱膨張性バルーンをそれぞれ表層と内層に含有するMDFは、例えば、従来のMDFの製造ラインを用いて製造することができる。このような製造ラインによるMDFの製造は、チップヤードからの集荷、チップ洗浄、チップのスチーミング、リファイナーによる繊維化、第1または第2の熱膨張性バルーンや接着剤の添加、熱風等によるファイバー乾燥、マット成形(フォーミング)、熱圧成形、仕上げ工程を経て行われる。これらの工程においてチップやファイバーは、例えば空気により圧送される。
【0040】
本発明の木質ボードを製造する際には、表層形成用混合物および内層形成用混合物を調製する。
【0041】
表層形成用混合物は、植物系のパーティクルまたは植物繊維と、接着剤と、熱膨張温度の高い第1の熱膨張性バルーンとを混合して調製される。
【0042】
内層形成用混合物は、植物系のパーティクルまたは植物繊維と、接着剤と、熱膨張温度の低い第2の熱膨張性バルーンとを混合して調製される。
【0043】
これらの調製は、例えば、従来のパーティクルボードやMDFの製造ラインに組み込んで行うことができる。例えば、製造ラインを表層と内層の2系列にして、原料、植物系のパーティクルまたは植物繊維、乾燥度、接着剤等の添加量を別々に規制することができる。
【0044】
植物系のパーティクルまたは植物繊維への接着剤、第1または第2の熱膨張性バルーンの添加方法、添加順序は特に限定されない。例えば、植物系のパーティクルまたは植物繊維を調製した後、これに第1または第2の熱膨張性バルーンを添加して混合し、その後接着剤を散布、含浸、塗布等により添加することができる。また植物系のパーティクルまたは植物繊維に先に接着剤を添加した後に第1または第2の熱膨張性バルーンを添加してもよい。あるいは植物系のパーティクルまたは植物繊維に接着剤と第1または第2の熱膨張性バルーンを同時に添加してもよい。
【0045】
パーティクルボードの製造においては接着剤の添加にグルーブレンダー等の定量供給機を用いることができる。また、植物系のパーティクル、第1または第2の熱膨張性バルーン、および接着剤の混合には、従来から用いられているリボンブレンダー、高速ミキサー、タンブラー等の混合設備を用いることができ、これらにより均一に混合することができる。また、製造ラインに設けたロータリフィーダー、スクリューフィーダー等で植物系のパーティクルに一定量ずつ均一に第1または第2の熱膨張性バルーンと接着剤を混入して供給するようにしてもよい。
【0046】
パーティクルボードの製造における接着剤の添加量は、特に限定されないが、例えば、乾燥状態の植物系のパーティクル100質量部に対して表層10〜15質量部、内層5〜10質量部とすることができる。
【0047】
パーティクルボードの製造に用いる表層形成用混合物には、本発明の効果を損なわない範囲内において、ワックス等の他の添加剤を添加することができる。
【0048】
パーティクルボードの製造における第1および第2の熱膨張性バルーンの添加量は、内部の空隙を充填すること等を考慮すると、植物系のパーティクル100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0049】
MDFの製造においては、第1または第2の熱膨張性バルーンおよび接着剤の添加は、例えば、解繊中や、乾燥のためのドライヤーに空気搬送される直前に行うことができる。
【0050】
MDFの製造における接着剤の添加量は、特に限定されないが、例えば、平面引張強度、曲げ強度、耐水性等を考慮して、乾燥状態の植物繊維100質量部に対して5〜25質量部とすることができる。
【0051】
MDFの製造に用いる表層形成用混合物には、本発明の効果を損なわない範囲内において、ワックス等の他の添加剤を添加することができる。
【0052】
MDFの製造における第1および第2の熱膨張性バルーンの添加量は、内部の空隙を充填すること等を考慮すると、植物系のパーティクル100質量部に対して0.5〜2質量部が好ましく、0.5〜1質量部がより好ましい。
【0053】
接着剤としては、パーティクルボードやMDF等の木質ボードの種類に応じた合成樹脂接着剤を用いることができる。例えば、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDIプレポリマー、TDIプレポリマー等のイソシアネート樹脂接着剤、ユリア樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、ユリア・メラミン共縮合樹脂接着剤、フェノール樹脂接着剤等を用いることができる。接着剤の選択には、木質ボードの耐水性や、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの放出量等を考慮することができる。イソシアネート樹脂接着剤はホルムアルデヒドを原料としないため木材用の安全性の高い接着剤である。
【0054】
第1および第2の熱膨張性バルーンは、熱可塑性樹脂の高分子殻の中に、液状炭化水素等の揮発性液体が閉じ込められた構造である。加熱すると高分子殻が軟化し、中の液状炭化水素が気化するため、その圧力で第1および第2の熱膨張性バルーンは膨張する。揮発性液体の種類を選ぶことでその沸点の違いにより熱膨張温度を調整することができる。
【0055】
高分子殻の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニルベンジル樹脂等を用いることができる。
【0056】
揮発性液体としては、例えば、次の有機化合物を用いることができる。
【0057】
プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、ネオヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等の好ましくは炭素数3〜8の鎖状または環状飽和炭化水素。
【0058】
n−ペンテン、n−ヘキセン、シクロヘキセン、n−オクテン等の好ましくは炭素数5〜8の鎖状または環状不飽和炭化水素。
【0059】
ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル等のエーテル、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン。
【0060】
酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸エステル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ等のセロソルブ、メタノール、エタノール等のアルコール。
【0061】
以上のような高分子殻と揮発性液体を用いた第1および第2の熱膨張性バルーンは、例えば、公知の方法に従って製造したものを用いることができ、また既に市販されているものを用いることができる。
【0062】
第1および第2の熱膨張性バルーンの粒径は、例えば、平均粒径で15〜50μmである。なお、平均粒径は、電子顕微鏡写真等において統計的に有意な数を抽出し、それらの直径の平均値として算出することができる。
【0063】
第1および第2の熱膨張性バルーンの熱膨張温度は、加熱によりこれらの形状が膨張変形を開始する温度として定義され、主に高分子殻の軟化温度と揮発性液体の沸点により依存する。
【0064】
第1の熱膨張性バルーンと第2の熱膨張性バルーンの熱膨張温度(膨張開始温度)は、熱圧成形時の加熱温度よりも40〜60℃程度低い温度が好ましい。
【0065】
第1の熱膨張性バルーンと第2の熱膨張性バルーンの熱膨張温度の差は、木質ボード内の空隙を表層と内層の全てに渡り効率的に高分子皮膜で充填することを考慮すると、20〜80℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。
【0066】
なお、両面側の表層の内側の内層は、単一のコア層であってもよいが、複層であってもよい。内層を複層とする場合には、熱膨張温度の低い第2の熱膨張性バルーンとして異なる種類、熱膨張温度のものを添加し、あるいは植物系のパーティクルまたは植物繊維の種類等を変更した複数種類の内層形成用混合物を調製する。そしてこれらの複数の内層形成用混合物をマットにして積層し、複層の内層を形成することができる。
【0067】
このようにして調製した表層形成用混合物と内側層形成用混合物を用いて、積層マットを形成する。この積層マットは、表層形成用混合物が両面に位置しその内側に内層形成用混合物が位置するようにこれらが堆積される。
【0068】
この積層マットを形成する工程は、例えば、パーティクルボードやMDFの製造において行われているフォーミングと同様に行うことができる。
【0069】
例えば、表層形成用混合物を成形ベルトに堆積させ、次に内層形成用混合物をその上に堆積させ、その後表層形成用混合物をその上に堆積させることで積層マットを得ることができる。
【0070】
こうして得られるケーキ状の積層マットは、室温等において予備圧縮することが好ましい。成形台やスチールベルト等への堆積前または堆積後に予め目的とする木質ボードの形状を考慮して予備圧縮し、その後に熱圧成形することで、木質ボードの品質を安定させることができる。
【0071】
このようにして積層マットを形成した後、熱圧成形し、両面側の表層とその間の内側層とを備える板材を製造する。このときの熱圧条件(含水率、温度、圧締圧、時間等)は木質ボードの特性、例えば表面状態、曲げ強さ、接着剤、ホルムアルデヒド放出量、難燃性等を決める要因となり得る。
【0072】
熱圧成形時の熱盤またはスチールベルトの表面温度は、接着剤の種類等によるが、パーティクルボードの場合は、例えば、140〜250℃である。熱圧成形時の圧力(圧締圧)は、例えば、15〜35kg/cm2である。熱圧成形の時間は、例えば、板材の厚み1mm当たり3〜15秒である。
【0073】
MDFの場合は、熱圧成形時の熱盤またはスチールベルトの表面温度は、接着剤の種類等によるが、例えば、100〜200℃である。熱圧成形時の圧力(圧締圧)は、例えば、10〜30kg/cm2である。熱圧成形の時間は、例えば、数分程度である。
【0074】
熱圧成形のプレス方式は、スチールベルトを用いる連続プレスや、バッチ式の多段プレス、一段プレス等の平面プレス等を挙げることができる。中でも、生産性を考慮すると、連続プレスが好ましい。
【0075】
この熱圧成形時において、表層は熱盤またはスチールベルトに接触するため、表層のほうが内層よりも熱圧成形時の温度は高くなる。
【0076】
しかし、この温度差に起因する熱膨張の不均一性を抑制するために、表層に用いる植物系のパーティクルまたは植物繊維には、高温で発泡する熱膨張温度の高い第1の熱膨張性バルーンが添加されている。内層に用いる植物系のパーティクルまたは植物繊維には、この第1の熱膨張性バルーンよりも低温で発泡する第2の熱膨張性バルーンが添加されている。
【0077】
このように熱圧成形時の温度を考慮した第1および第2の熱膨張性バルーンを選定することで、表層から内層まで効率的に熱膨張させることができ、表層と内層のいずれにおいても植物系のパーティクルまたは植物繊維を木質ボードの内部から高分子皮膜で覆うことができる。このバリア効果により、植物系のパーティクルまたは植物繊維による水分の吸放湿を抑制することができる。その結果として、木質ボードの寸法変化を抑制することができる。
【0078】
その後、パーティクルボードの場合にはトリミング、サンダーによる表面仕上げ等の仕上げ工程を経て製造することができる。そして素地パーティクルボードの他、板材に単板を貼着した単板張りパーティクルボード、板材の表面に化粧層を貼着した化粧張りパーティクルボード等として木質ボードを得ることができる。
【0079】
MDFの場合には、熱圧成形後のボードを一旦積載して養生した後、仕上げ工程として、サンダーによる表面仕上げを行い、さらに所望の寸法にカットして製造することができる。そして素地のままのもの、突き板、紙、オレフィン樹脂系の印刷シート等を板材に貼着したもの等として木質ボードを得ることができる。
【0080】
このようにして得られる木質ボードにおいて、植物系のパーティクルまたは植物繊維と、接着剤とを含有する板材は、木質ボード内の空隙を表層と内層の全てに渡り効率的に充填することを考慮すると、第1の熱膨張性バルーンを含有する表層の厚みは全体の厚みが12mmの場合で1〜3mmが好ましい。
【0081】
本発明の木質ボードは、水分の吸放湿による寸法変化が小さいため、床材、壁材、扉材、内装材、外装材等の建材、家具、造作材等に好適に用いることができる。特に長尺寸法の床材においては目隙や突き上げを抑制することができる。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0083】
<実施例1>
パーティクルボードとして次の3層ボードを製造した。
【0084】
植物系のパーティクルとして微小片100質量部、接着剤としてMDI10質量部、第1の熱膨張性バルーン(熱膨張温度(膨張開始温度)120℃)2質量部を高速ミキサーに投入し混合して表層形成用混合物を調製した。
【0085】
植物系のパーティクルとして粗大片100質量部、接着剤としてMDI10質量部、第2の熱膨張性バルーン(熱膨張温度(膨張開始温度)80℃)4質量部を高速ミキサーに投入し混合して内層形成用混合物を調製した。
【0086】
表層形成用混合物をベルトに堆積させ、次に内層形成用混合物をその上に堆積させ、表層形成用混合物をさらにその上に堆積させることで積層マットを得た。これらの質量比は20:60:20とした。
【0087】
この積層マットを予備圧縮した後、180℃、40kg/cm2の条件で熱圧成形し、仕上げ工程を経て縦横300×300mm、厚み12mmのパーティクルボードを得た。
【0088】
<比較例1>
実施例1において、第2の熱膨張性バルーンを第1の熱膨張性バルーンに代えて内層形成用混合物を調製した。それ以外は実施例1と同様にしてパーティクルボードを製造した。
【0089】
[吸湿寸法変化率]
実施例1および比較例1のパーティクルボードの吸湿寸法変化率を測定した。20℃、60%RHで恒量とした後、40℃、90%RHで恒量とし、そのときの平面方向の寸法変化を測定した。
【0090】
その結果を表1に示す。
【表1】

【0091】
表1より、実施例1では、熱膨張温度の異なる第1および第2の熱膨張性バルーンをそれぞれ表層と内層に含有させることで、水分の吸放湿による寸法変化を抑制することができた。表層と内層の両方に単一の熱膨張性バルーンを添加した比較例1に比べても寸法変化を大きく抑制することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物系のパーティクルまたは植物繊維と、接着剤とを含有する板材を備えた木質ボードにおいて、熱膨張温度の高い第1の熱膨張性バルーンを前記板材の両面側の表層に含有し、前記第1の熱膨張性バルーンよりも熱膨張温度の低い第2の熱膨張性バルーンを前記板材の前記両面側の表層の間の内層に含有することを特徴とする木質ボード。
【請求項2】
前記木質ボードは、前記植物系のパーティクルと前記接着剤とを含有する前記板材を備えたパーティクルボードであることを特徴とする請求項1に記載の木質ボード。
【請求項3】
前記パーティクルボードは、前記植物系のパーティクルとして微小片を含有する前記表層と、前記植物系のパーティクルとして粗大片を含有する前記内層とを備えることを特徴とする請求項2に記載の木質ボード。
【請求項4】
前記木質ボードは、前記植物繊維と前記接着剤とを含有する前記板材を備えたMDFであることを特徴とする請求項1に記載の木質ボード。
【請求項5】
植物系のパーティクルまたは植物繊維と、接着剤とを含有する板材を備えた木質ボードの製造方法において、前記植物系のパーティクルまたは前記植物繊維と、前記接着剤と、熱膨張温度の高い第1の熱膨張性バルーンとを混合して表層形成用混合物を調製する工程と、前記植物系のパーティクルまたは前記植物繊維と、前記接着剤と、前記第1の熱膨張性バルーンよりも熱膨張温度の低い第2の熱膨張性バルーンとを混合して内層形成用混合物を調製する工程と、前記表層形成用混合物が両面に位置しその内側に前記内層形成用混合物が位置するようにこれらを積層した積層マットを形成する工程と、この積層マットを熱圧成形して前記第1の熱膨張性バルーンと前記第2の熱膨張性バルーンとを熱膨張させ、両面側の表層とその間の内層とを備える前記板材を得る工程とを含むことを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項6】
前記木質ボードは、前記植物系のパーティクルと前記接着剤とを含有する前記板材を備えたパーティクルボードであることを特徴とする請求項5に記載の木質ボードの製造方法。
【請求項7】
前記パーティクルボードは、前記植物系のパーティクルとして微小片を含有する前記表層と、前記植物系のパーティクルとして粗大片を含有する前記内層とを備えることを特徴とする請求項6に記載の木質ボードの製造方法。
【請求項8】
前記木質ボードは、前記植物繊維と前記接着剤とを含有する前記板材を備えたMDFであることを特徴とする請求項5に記載の木質ボードの製造方法。

【公開番号】特開2012−171147(P2012−171147A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33764(P2011−33764)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】