説明

木質化粧板

【課題】 耐候性に優れかつ環境に優しい化粧シートが貼着された木質化粧板を提供する。
【解決手段】 木目意匠を有する木質板上に接着剤層を介して化粧シートが貼着された木質化粧板であって、前記化粧シートが透明基材シート上に透明アクリル樹脂シートが積層され、前記透明基材シート又は前記透明アクリル樹脂シートの少なくとも一方のシート表面に裏面が透視可能に木目絵柄層が設けられており、かつ、前記透明基材シートには平均粒径が0.1〜10μmの微粒子からなる無機充填材が樹脂分100重量部に対して5〜50重量部添加されてなるシートであり、前記化粧シートの前記透明アクリル樹脂シート側から見た際に、化粧シートに設けられた前記木目絵柄層を通して木質板表面の木目意匠が見えることを特徴とする木質化粧板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具、建具等の建材の表面装飾材料として有用な木目絵柄が施された化粧シートが貼着された木質化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、木質化粧シートとして、例えば、透明着色ポリ塩化ビニル(PVC)フィルムに,必要に応じて、木目絵柄印刷層、木目導管エンボス加工、ワイピング加工等が施された化粧シートが知られている。また、木質化粧板として、ムク、突板あるいは集成材等にウレタン塗装が施された木質化粧板等が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭63−93132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来のPVCフィルムからなる化粧シートは、耐候性に劣り、外装用途に適さないものである。また、廃棄・燃焼時に有害な塩化物ガスが発生するため、環境衛生上も問題があった。また、前記木質化粧板も、木質材にウレタン塗装を施すだけのものであるため、耐候性が劣るという問題があった。さらに、木質材上にゴミ等が付着することに起因する不良品の発生も問題となっていた。
【0004】
従って、本発明は、耐候性に優れかつ環境に優しい化粧シートが貼着された木質化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく、本発明は、木目意匠を有する木質板上に接着剤層を介して化粧シートが貼着された木質化粧板であって、前記化粧シートが透明基材シート上に透明アクリル樹脂シートが積層され、前記透明基材シート又は前記透明アクリル樹脂シートの少なくとも一方のシート表面に裏面が透視可能に木目絵柄層が設けられており、かつ、前記透明基材シートには平均粒径が0.1〜10μmの微粒子からなる無機充填材が樹脂分100重量部に対して5〜50重量部添加されてなるシートであり、前記化粧シートの前記透明アクリル樹脂シート側から見た際に、化粧シートに設けられた前記木目絵柄層を通して木質板表面の木目意匠が見えることを特徴とする木質化粧板を提供することであり、また、前記化粧シートの前記透明基材シートおよび前記透明アクリル樹脂シートのいずれにも紫外線吸収剤が含有されていることを特徴とする木質化粧板を提供することである。
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の化粧シートの透明基材シート材料は、高密度ポリエチレン、ゴム及び無機充填材、又はアイソタクチックポリプロピレン、ゴム及び無機充填剤を含有する。前記高密度ポリエチレンは、エチレン重合体であって、比重が0.941〜0.965程度のものである。アイソタクチックポリプロピレンは、アイソタクチック構造を有し、結晶性が高く、密度0.92g/cm3程度、2次転移点160〜170℃のプロピレン重合体をいう。例えば、プロピレンをチーグラー・ナッタ触媒を用い、n−ヘプタン中で重合させることにより得ることができる。
【0007】
本発明の化粧シートに用いられる基材シート材料には、高密度ポリエチレン及びアイソタクチックポリプロピレン等のオレフィン系樹脂に柔軟性、耐衝撃性、易接着性を付与するために、各種ゴム類が添加されている。
【0008】
添加するゴム類としては、ジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム、オレフィン系エラストラマー等があるが、中でも、水素添加ジエン系ゴムが好ましい。水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるもので、本発明においては、高密度ポリエチレン及びアイソタクチックポリプロピレン等のオレフィン系樹脂の結晶化を抑え、柔軟性、透明性を向上させる役割を有する。また、一般に、前記オレフィン系樹脂にジエン系ゴムを添加するとジエン系ゴムの二重結合の為、耐候性、耐熱性はジエン系ゴム無添加のポリオレフィン系樹脂より低下するが、ジエン系ゴムの二重結合を水素で飽和させているため、前記高密度ポリエチレン及びアイソタクチックポリプロピレン等のオレフィン系樹脂の耐候性、耐熱性の低下もなく、良好なものとなる。
【0009】
ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンンゴム、アクリロニトリル・イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム等がある。本発明の目的からは、特に、スチレン・ブタジエンゴムが好ましい。
【0010】
ゴムの添加量は、高密度ポリエチレン又はアイソタクチックポリプロピレン100重量部に対し、1〜90重量部、より好ましくは5〜70重量部程度が好ましい。1重量部未満では、ゴム添加による弾性、伸び率、衝撃性が不足し、Vカット加工、絞り加工等の折り曲げ加工時に亀裂、割れを生じ易くなる。又、90重量部超過の場合には、弾性、及び伸び率が大きくなりすぎ、印刷等の見当合わせが不良となり好ましくない。
【0011】
さらに、前記基材シート材料には、耐クリープ変形性、易接着性などの物性を改良する目的で無機充填材が添加されている。無機充填材としては透明性の高いもの、例えば、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、アルミナ、雲母、石英又はシリカ、ガラス等の平均粒径0.1〜10μm程度の微粒子を挙げることができる。前記無機充填材の添加量は、高密度ポリエチレン又はアイソタクチックポリプロピレン100重量部に対し、5〜50重量部程度が好ましい。5重量部未満では、耐クリープ変形性、易接着性等の効果が不十分であり、又、50重量部超過の場合には、引張強度、耐衝撃性、及び伸度が不足し、又透明性が低下する。
【0012】
さらに、本発明の化粧シートの透明基材シートには、必要に応じ、他の難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。難燃剤は、プラスチックス材料に耐燃性を付与するために添加されるものであり、例えば、塩化パラフィン、トリクレジルホスフェート、塩素化油、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモプロピルホスフェート、トリ(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、酸化アンチモン、含水アルミナ、ほう酸バリウム等がある。酸化防止剤は、プラスチックスの酸化分解を抑制するために添加されるものであり、例えば、アルキルフェノール類、アミン類、キノン類等がある。紫外線吸収剤としては、後述の物が用いられる。
【0013】
また、前記基材シート表面には、所望により木目絵柄(木目模様)層が設けられる。木目絵柄層を設けるには、例えば、必要に応じて木目の基調色になる様に、顔料(又は染料)添加により着色された前記透明基材シートに木目絵柄を設け、公知の印刷法で設ける方法等がある。
【0014】
前記添加する顔料としては、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニンリンブラック等の有機顔料(或いは染料を含む。)、アルミニウム、真鍮等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等がある。顔料添加による着色の場合は、透明着色である必要がある。その為、これらの中から適当な添加量及び材料を選定する。
【0015】
木目絵柄印刷方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷等公知の印刷法を用いてインキ(或いは塗料)にて模様を形成することができる。なお、木目絵柄層は、化粧シートの表面、裏面、表裏両面、或いは層間に設けることができる。木目絵柄は、杉、檜、欅、松等所望の樹種の木目板の絵柄を選ぶが、裏面を透視可能である様に形成する。その為には、例えば透明性の高いインキで印刷する、或いは木目のうち一部分(例えば冬材部分のみ、導管溝のみ等)のみ印刷する等の手段による。木目絵柄は、あくまでの木質板自体の木目意匠の不足分を補うだけの絵柄があれば良い。
【0016】
インキ或いは塗料としては、バインダーとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂等を用いることができ、これらの一種又は二種以上を混合して使用する。これに、前記列挙した顔料を添加したものを使用する。
【0017】
基材シート表面に直接木目絵柄を印刷する場合には、バインダーとして塩素化ポリオレフィン、ウレタン樹脂等が接着性の点で好ましいが、易接着プライマーを適当に選択して層を形成すれば、その他のバインダーを用いても十分な接着性を与えることができる。
【0018】
前記基材シート層の厚さは、25〜100μm程度であり、延伸シート、未延伸シートのいずれも使用可能であるが、Vカット加工時の成形適性上は未延伸のものの方が良好である。
【0019】
本発明の化粧シートの透明アクリル系樹脂としては、メタクリル酸エステル又はアクリル酸エステル(両方を包括して(メタ)アクリル酸エステルと表記する)の重合体がある。重合は、(メタ)クリル酸エステル単量体、又はプレポリマーに過酸化ベンゾイル等の過酸化物触媒を加えて80〜90℃で重合させる。重合法には、塊状重合、溶液重合、乳化重合、粒状重合等がある。前記(メタ)クリル酸エステルとしては、(メタ)クリル酸メチル、(メタ)クリル酸エチル、(メタ)クリル酸プロピル、(メタ)クリル酸イソプロピル、(メタ)クリル酸ブチル等がある。これらから選んだ1種以上の単量体(又はそのプリポリマー)の単独重合体、又は共重量体としてアクリル系樹脂を得る。アクリル系樹脂は、耐候性、透明性、対衝撃性に優れている。
【0020】
前記アクリル系樹脂シートの厚さは、25〜100μm程度であり、延伸シート、未延伸シートのいずれも使用可能であるが、Vカット加工時の成形適性上は未延伸のものの方が良好である。
【0021】
また、本発明の化粧シートにおいては、前記基材シートと透明アクリル樹脂とは、直接ラミネートすることもできるが、層間密着性を向上させるために基材シートと透明アクリル樹脂シート層との間に接着剤層を設けることができる。
【0022】
該接着剤の樹脂系及び接着法としては、好ましくはポリオレフィン系樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等を用い、該接着剤層を熔融押出(エクストルージョンコート法)で基材シートと透明アクリル樹脂シートの層間に塗工し、冷却前に両者を積層する方法、或いは、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂に、必要に応じて、イソシアネート、アミン等の架橋剤、メチルエチルケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、アザビスイソブチロニトリル等の重合開始剤、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリン等の重合促進剤等を添加した接着剤を基材シートと透明アクリル樹脂シートの層間にロールコータ等で塗工し、両層をドライラミネートする方法を採用することができる。接着剤層の厚さは通常10〜30μm程度とする。
【0023】
これらのうち、耐熱性を改良する意味で、ポリウレタンをベースに、イソシアネート基を付与したタイプの接着剤、すなわち、非結晶のポリエステルポリオールに、過剰のポリイソシアネートを反応させ、末端がイソシアネート基となっているプレポリマーを主成分とするものが好ましい。
【0024】
前記ウレタン系樹脂接着剤は、例えば、ポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂を主成分とするものである。
【0025】
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が用いられる。また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシネートが用いられる。
【0026】
例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環族)イソシアネートが用いられる。或いは、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体を用いる事もできる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネートの3量体等がある。なお、必要に応じ、接着面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、脱脂処理、表面粗面化処理などの公知の易接着処理を施すこともできる。
【0027】
本発明においては、前記基材シート上に、基材シートと木目絵柄層間の密着性を向上させる為に、さらに、プライマー層を設けることができる。該プライマー層は、通常、基材シート表面はコロナ放電処理が施されているため、表面に存在する水酸基、カルボキシル基等の極性官能基と反応させることにより基材シートと絵柄インキとの密着性を向上させるために設けられる。前記プライマー層としては、2液硬化型のウレタン系樹脂の使用が好ましい。イソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等の脂肪酸(乃至は脂肪族)イソシアネートを、ポリオールとしてアクリルポリオールを使用すると、耐光密着性がよいので特に好ましく使用することができる。
【0028】
また、本発明の化粧シートにおいては、前記基材シート上に、基材シートと絵柄印刷層間の密着性を向上させる為に、該プライマー層の上に、さらにベタインキ層を設けることができる。前記ベタインキ層は、下地の色を調整するために全面に着色透明層として設けるもので、透明インキで着色を施すことが好ましい。
【0029】
本発明の化粧シートの前記透明基材シート、透明アクリル系樹脂層あるいは接着剤層等には、耐候性の向上を図る目的で紫外線吸収剤を含有させることができる。該紫外線吸収剤としては、公知のものの中から、より紫外線で劣化し易いポリオレフィンの劣化を引き起こす280〜450nm領域の紫外線を吸収しうるものを任意に選択することができる。
【0030】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、サリチレート系、ベンゾトリアゾール系、アクリロニトリル系等の各紫外線吸収剤を挙げることができる。例えば、分子中にOH基を有する有機系の化合物を使用することができ、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−アミル−5’−イソブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−プロピルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の2’−ヒドロキシフェニル−5−クロロベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤類、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等の2’−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤類等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2、2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等の2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニル、4−tert−ブチルフェニルサリチレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤が用いられる。
【0031】
その他に、ベンゾトリアゾール骨格にアクリロイル基又はメタクリロイル基を導入した反応型紫外線吸収剤等を用いることもできる。これらの内、吸収波長と着色性の問題を考慮してベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0032】
さらに、本発明の化粧シートの前記基材シート層、アクリル系樹脂層、接着剤層等には、耐候性の付与、即ち、日光による変褪色、亀裂、白化、強度劣化等の防止のため、各種のアミン系ラジカル捕捉剤を添加することもできる。
【0033】
ラジカル捕捉剤としては、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、その他、例えば、特公平4−82625号公報に開示されている化合物等のヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ピペリジル系ラジカル捕捉剤等が使用される。
【0034】
本発明の化粧シートの最表面には、好ましくは、エンボス加工等により凹凸模様が施される。さらに好ましくは、前記エンボス凹部にインキを充填するワイピング加工を施し、その表面を2液硬化型ウレタン系樹脂で被覆(オーバーコート処理)した構造を有する。
【0035】
前記エンボス加工は、化粧シートに木材板表面等所望のテクスチァーを付与するために行われる。例えば、エンボス加工は、加熱ドラム上でアクリル系樹脂を加熱軟化させ、更に赤外線輻射ヒーターで160〜180℃に加熱し、所望の形の凹凸模様を設けたエンボス板で加圧、賦形し、冷却固定して形成するもので、公知の枚葉或いは輪転式のエンボス機が用いられる。凹凸模様としては、木目導管溝、浮造模様(浮出した年輪の凹凸模様)、ヘアライン、砂目、梨地等が用いられる。
【0036】
ワイピング加工とは、エンボス加工で設けた凹部にドクターブレードで表面をかきながらインキを充填する加工をいう。ワイピングインキとしては、通常、2液硬化型のウレタン樹脂を用いることができる。ワイピング加工は、特に木目導管溝凹凸に対して行うことによって、より実際の木目に近い意匠を表現する事により商品価値を高めるために施される。
【0037】
さらに、本発明の化粧シートの最表面には、好ましくは、オーバコート(OP加工)が施される。該OP加工は、化粧シート表面の傷のつきやすさをカバーし、耐擦傷性を向上させるために設けられる。OP加工に用いられる樹脂としては、例えば、2液硬化型のウレタン系樹脂を挙げることができる。2液硬化型のウレタン系樹脂は、ポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂である。ポリオール、及びイソシアネートとしては、前記に列記したもの全てを好ましく使用することができる。
【0038】
本発明の化粧シートは、各種木質板に貼着して、木質化粧板として使用される。貼着は、通常、適当な接着剤層を介して行うことができる。被着体となる木質板としては、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等各種素材の突板、木材単板、木材合板、パティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質材等がある。
【0039】
以上のようにして製造される木質化粧板は、種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装材、窓枠、扉、手すり等の建具の表面化粧板、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板等に好ましく用いることができる。
【0040】
本発明の化粧シートは、高密度ポリエチレン又はアイソタクチックポリプロピレン、ゴム及び無機充填剤を含有する透明基材シート上に、透明アクリル系樹脂シートを積層したものである。従って、本発明の化粧シートは、透明性、成形性、耐衝撃性及び耐候性に優れたものである。
【0041】
本発明の木質化粧板は、前記透明基材シート又は透明アクリル樹脂系シートの少なくともいずれかのシート表面に木目絵柄を施し、木質板上に貼着した場合には、天然木の外観意匠、特に、木質板固有の表面光沢木目等を活かし、且つ、天然木で不足している木目模
様を化粧シートの木目絵柄で補っている。
【0042】
また、本発明の木質化粧板は、透明性、成形性、耐衝撃性及び耐候性に優れたものであり、室内のみならず、外装、準外装用にも適した、塗装代替非塩化ビニル系化粧シート及び木質化粧板である。
【発明の効果】
【0043】
本発明の木質化粧板は、木目意匠を有する木質板上に接着剤層を介して化粧シートが貼着された木質化粧板であって、本発明の木質化粧板に用いられる化粧シートは、透明基材シート上に透明アクリル樹脂シートが積層され、前記透明基材シート又は前記透明アクリル樹脂シートの少なくとも一方のシート表面に裏面が透視可能に木目絵柄層が設けられており、かつ、前記透明基材シートには平均粒径が0.1〜10μmの微粒子からなる無機充填材が樹脂分100重量部に対して5〜50重量部添加されてなるシートであり、透明性、耐衝撃性及び耐候性に優れている。この化粧シートを木目意匠を有する木質板上に接着剤層を介して貼着した木質化粧板とすることにより、前記化粧シートの前記透明アクリル樹脂シート側から見た際に、化粧シートに設けられた前記木目絵柄層を通して木質板表面の木目意匠が見える木質化粧板とすることができ、また、前記化粧シートの前記透明基材シートおよび前記透明アクリル樹脂シートのいずれにも紫外線吸収剤が含有されている木質化粧板とすることにより、耐候性の向上を図ることができるものである。
【0044】
また、本発明の木質化粧板は、木質板固有の表面光沢等を活かし、且つ、天然木で不足している木目模様を化粧シートの木目絵柄で補っている木質化粧板である。また、化粧シート表面にワインピング加工が施され、最表面がオーバコート層で被覆されたものであるため、特に意匠効果に優れ、かつ、耐擦傷性に優れた化粧板である。
【0045】
さらに、本発明の木質化粧板は、非塩化ビニル系の材料で構成されるため、廃棄・焼却時に有毒な塩素系ガスの発生もなく、環境衛生上も問題がないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
次に、本発明の実施の形態により、本発明の木質化粧板を更に詳細に説明する。なお、以下に示すのは、本発明の化粧シートの一実施態様であり、本発明の化粧シートは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更することができる。
【0047】
第1実施形態
図1(a)に、本発明の第1実施形態の化粧シートの断面図を示す。本実施形態の化粧シートは、高密度ポリエチレン又はアイソタクチックポリプロピレン、ゴム及び無機充填剤を含有する透明基材シート層1上に、木目絵柄印刷により木目絵柄層2を設け、その上に、透明アクリル系樹脂シート層3をラミネートにより積層し、該透明アクリル系樹脂シート表面にエンボス加工4を施したものである。
【0048】
本実施形態の化粧シートは、高密度ポリエチレン又はアイソタクチックポリプロピレン、ゴム及び無機充填剤を含有する透明基材シート上に、透明アクリル系樹脂シートを積層したものである。従って、透明性、耐衝撃性及び耐候性に優れている。また、前記透明基材シート又は透明アクリル樹脂系シートの少なくともいずれかのシート表面に木目絵柄を施し、木質板上に貼着した場合には、天然木の外観意匠、特に、木質板固有の表面光沢等を活かし、且つ、天然木で不足している木目模様を化粧シートの木目絵柄で補っている化粧シートである。
【0049】
第2実施形態
図1(b)に本発明の第2実施形態の化粧シートの断面図を示す。本実施形態の化粧シートは、着色顔料5を添加した高密度ポリエチレン又はアイソタクチックポリプロピレン、ゴム及び無機充填剤を含有する透明基材シート層1上に、木目絵柄層2を設け、その上に、接着剤層7を介して透明アクリル系樹脂シート層3を積層し、該透明アクリル系樹脂シート表面にエンボス加工と、該エンボス凹部にワイピングインキ6を充填するワイピング加工を行い、さらに、最表面にオーバコート層8を被覆したものである。
【0050】
本実施形態の化粧シートは、高密度ポリエチレン又はアイソタクチックポリプロピレン、ゴム及び無機充填剤を含有する透明基材シート上に、透明アクリル系樹脂シートを積層したものである。透明性、耐衝撃性及び耐候性に優れた化粧シートである。また、前記透明基材シート又は透明アクリル樹脂系シートの少なくともいずれかのシート表面に木目絵柄を施し、木質板上に貼着した場合には、天然木の外観意匠、特に、木質板固有の表面光沢等を活かし、且つ、天然木で不足している木目模様を化粧シートの木目絵柄で補っている化粧シートである。
【0051】
さらに、本実施形態の化粧シートは、その表面にワインピング加工が施され、最表面がオーバコート層で被覆されたものであるため、耐擦傷性に優れた化粧シートである。また、特に意匠効果に優れるので、希望する木目模様の化粧シートを得ることができる。
【0052】
第3実施形態
図1(c)に本発明の第3実施形態の化粧シートの断面図を示す。本実施形態の化粧シートは、着色顔料5を添加した高密度ポリエチレン又はアイソタクチックポリプロピレン、ゴム及び無機充填剤を含有する透明基材シート層1上に、層間密着性を向上させる目的でプライマー層9を設け、その上に木目絵柄層2を設けている。そして、透明アクリル系樹脂シート層3を積層し、該透明アクリル系樹脂シート表面にエンボス加工と、該エンボス凹部にワイピングインキ6を充填するワイピング加工を行い、さらに、最表面にオーバコート層8を被覆したものである。
【0053】
本実施形態の化粧シートは、高密度ポリエチレン又はアイソタクチックポリプロピレン、ゴム及び無機充填剤を含有する透明基材シート上に、透明アクリル系樹脂シートを積層したものである。透明性、耐衝撃性及び耐候性に優れた化粧シートである。また、基材シート層1と木目絵柄層2との間にプライマー層9を設けているので、特に層間密着性に優れている。
【0054】
さらに、前記透明基材シート又は透明アクリル樹脂系シートの少なくともいずれかのシート表面に木目絵柄を施し、木質板上に貼着した場合には、天然木の外観意匠、特に、木質板固有の表面光沢等を活かし、且つ、天然木で不足している木目模様を化粧シートの木目絵柄で補っている化粧シートである。
【0055】
さらにまた、本実施形態の化粧シートは、その表面にワインピング加工が施され、最表面がオーバコート層で被覆されたものであるため、耐擦傷性に優れた化粧シートである。また、特に意匠効果に優れるので、希望する木目模様の化粧シートを得ることができる。
【0056】
第4実施形態
図2に、本発明の第4実施形態である本発明の木質化粧板の断面図を示す。本実施形態の木質化粧板は、高密度ポリエチレン又はアイソタクチックポリプロピレン、ゴム及び無機充填剤を含有する透明基材シート層1上に、木目絵柄層2を設け、その上に透明アクリル系樹脂シート層3を積層し、該透明アクリル系樹脂シート表面にエンボス加工と、該エンボス凹部にワイピングインキ6を充填するワイピング加工を行い、さらに、最表面にオーバコート層8を被覆した化粧シート10に、接着剤層9を介して木質板11を貼着したものである。
【0057】
本実施形態の木質化粧板は、木質板固有の表面光沢等を活かし、且つ、天然木で不足している木目模様を化粧シートの木目絵柄で補っている木質化粧板である。また、化粧シート表面にワインピング加工が施され、最表面がオーバコート層で被覆されたものであるため、耐擦傷性に優れた化粧板である。また、特に意匠効果に優れるので、希望する木目模様の化粧シートが貼着した化粧板を得ることができる。
【実施例】
【0058】
次に、実施例により、本発明の化粧シート及び木質化粧板を、更に詳細かつ具体的に説明する。
実施例1(化粧シートの製造)
高密度ポリエチレン60重量部、水素添加スチレンブタジエンゴム30重量部、及び炭酸カルシウム10重量部及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.2重量部とヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を0.2重量部を含有する樹脂からなり、厚さ0.1mmの基材シートの表裏両面にコロナ放電処理を施し、ポリエステルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとからなる二液硬化型ウレタン系インキを塗工してプライマー層を形成し、次いで、アクリルウレタン系樹脂をバインダーとし、これに顔料としてキナクリドンとイソインドリノンとカーボンブラックとを添加したインキで、厚さ1μmの着色透明ベタ層及び杉板目の年輪の冬材部からなる木目絵柄層を形成した。
【0059】
更に、前記木目絵柄層の上に、熱可塑性ウレタン系インキを10μm厚塗工してヒートシール層を設けたのち、ポリメチルメタアクリレートからなり、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を0.2重量%添加した厚さ50μmの透明アクリルフィルムを熱融着した。このとき同時に表面にエンボス加工を行い、エンボス凹部のみにワイピングインキを充填することによりワイピング加工を施した。次いで、最表面をアクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートからなる2液硬化型アクリルウレタン系樹脂で厚さ2μmグラビアコートして、図3に示すような本発明の化粧シートを得た。
【0060】
実施例2(木質化粧板の製造)
実施例1で得た化粧シートの裏面に、ポリエステルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとからなる2液硬化型ウレタン系樹脂インキを塗布することにより、厚さ2μmの木質板接着用プライマー層21を設け、さらに、該プライマー層上に、2液硬化型アクリルウレタン系樹脂からなる接着剤を全面に、40g/m2 の割合で塗工して接着材層22を形成して、厚さ5mmの木質基板23を接着し、1週間養生させて、図4に示すような本発明の木質化粧板を得た。実施例2で得た木質化粧板は、天然木本来の表面光沢に加え、天然目で不足している木目模様を化粧シートの木目模様で補ったものである。従って、意匠効果に優れるので、希望する木目模様に化粧シートが貼着した化粧シートを得ることができる。
【0061】
耐候性試験
実施例2で得た木質化粧板に対し、促進耐候性試験機としてカーボンアーク燈型サンシャインウェザーオメータを用い、ブラックパネル温度63℃、降雨時間が120分中18分の条件で1000時間照射した後における木質化粧板の表面変化を目視観察により確認したところ、変色や褪色は殆ど認められなかった。従って、本発明の木質化粧板は、耐候性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の化粧シートの断面図である。(a)は、第1実施形態の化粧シートの断面図、(b)は、第2実施形態の化粧シートの断面図、(c)は、第3実施形態の化粧シートの断面図をそれぞれ示す。
【図2】本発明の木質化粧板の断面図である。
【図3】実施例1で製造した本発明の化粧シートの断面図である。
【図4】実施例2で製造した本発明の木質化粧板の断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1,12 透明基材シート層
2,16 木目絵柄層
3,18 透明アクリル樹脂層
4 エンボス加工
5,15 着色顔料
6,19 ワイピングインキ
7,22 接着剤層
8 オーバーコート層
9,13,21 プライマー層
10,20 本発明の化粧シート
11,23 木質板
14 着色ベタ層
17 ヒートシール層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木目意匠を有する木質板上に接着剤層を介して化粧シートが貼着された木質化粧板であって、前記化粧シートが透明基材シート上に透明アクリル樹脂シートが積層され、前記透明基材シート又は前記透明アクリル樹脂シートの少なくとも一方のシート表面に裏面が透視可能に木目絵柄層が設けられており、かつ、前記透明基材シートには平均粒径が0.1〜10μmの微粒子からなる無機充填材が樹脂分100重量部に対して5〜50重量部添加されてなるシートであり、前記化粧シートの前記透明アクリル樹脂シート側から見た際に、化粧シートに設けられた前記木目絵柄層を通して木質板表面の木目意匠が見えることを特徴とする木質化粧板。
【請求項2】
前記化粧シートの前記透明基材シートおよび前記透明アクリル樹脂シートのいずれにも紫外線吸収剤が含有されていることを特徴とする請求項1記載の木質化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−326369(P2007−326369A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190331(P2007−190331)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【分割の表示】特願平10−42631の分割
【原出願日】平成10年2月24日(1998.2.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】